日本金属学会誌第 74 巻第 6 号 (2010)345 350 Co フェライト複合ナノ粒子の作製 深町七奈 1, 手束展規 1 杉本諭 1,2 1 東北大学大学院工学研究科知能デバイス材料学専攻 2 東北大学未来科学技術共同研究センター (NICHe) J. Japan Inst. Metals, Vol. 74, No. 6 (2010), pp. 345 350 2010 The Japan Institute of Metals Preparation of Composite Nanoparticles Based on Cobalt Ferrite Nana Fukamachi 1,, Nobuki Tezuka 1 and Satoshi Sugimoto 1,2 1 Department of Materials Science, Graduate School of Engineering, Tohoku University, Sendai 980 8579 2 New Industry Creation Hatchery Center (NICHe), Tohoku University, Sendai 980 8579 Recently, materials composed of both soft and hard magnetic phases have been attracting a lot of attention. This paper describes the preparation of composite nanoparticles by the reduction and oxidation of cobalt ferrite (CoFe 2 O 4 ) nanoparticles. Neither the composite nanoparticles of hard ferrites and soft magnetic materials nor the hydrogen reduction of ferrite nanoparticles has been reported. Therefore, investigation of the relationship between their microstructure and magnetic properties is needed. Our study revealed the cobalt ferrite powders prepared by the coprecipitation method showed the highest coercivity H c = 750 ka m -1 in the case of ternary cobalt ferrite. After the cobalt ferrite powders were reduced by heat treatment at 450 C for15 min in hydrogen, the reduced powders were shown to consist of a Fe Co (bcc) phase and XRD analysis of the lattice parameter suggests the composition was around Fe 67 Co 33. After oxidization of the reduced powder by heat treatment at 300 C for15minin air, the powders consisted of a Fe Co(bcc) phase and a spinel type phase. TEM analysis revealed that the oxidized particles had acore shell structure and the shell was shown to have a spinel type phase, with some amorphous structures. Therefore the magnetic properties of the core shell powders were shown to exhibit low coercivity H c =120.4 ka m -1 and low saturation magnetization s s =80.2 Am 2 kg -1. (Received January 18, 2010; Accepted February 26, 2010) Keywords: cobalt ferrite, coprecipitaion method, core shell 1. はじめに 永久磁石はモータやスピーカー, 記録メディアや医療用機器など様々な製品に使用されており, 私たちの生活にはなくてはならない存在になっている. さらに近年では省エネルギー化などの観点から, 先端産業を担う機能性材料としての価値を高めている. 永久磁石には希土類磁石やフェライト磁石, 鋳造磁石などの種類がある. そのなかでもフェライト磁石は, 小型モータやセンサなど幅広い用途で使用されており, そのコストパフォーマンスの高さから生産量の最も多い磁石となっている. しかし, さらなるモータの効率向上などによる省エネルギー化のため, その磁気特性の向上が求められている. 現在, 磁気特性の向上の方法として, ソフト磁性相とのナノコンポジット化が注目を集めている. ソフト磁性相とハード磁性相をナノメートルオーダーで複合化させると, 両相間に交換相互作用が働き, 単相の磁石のように振舞う. その結果, ソフト磁性相から高い磁化を, ハード磁性相から保磁力を得た磁化曲線が実現され, 高い磁気特性を有した材料が得 東北大学大学院生 (Graduate Student, Tohoku University) られるようになる 1). このように高い磁気特性を有する材料を得るためにはソフト磁性相とハード磁性相間に交換相互作用をうまく働かせる必要がある. そのためには L=p(A/K) 1/2 で示される交換結合長内に両相が存在しなければならない. ここで A は交換スティフネス係数,K は結晶磁気異方性定数である. 交換結合長は, 選択する物質によって異なるが, およそ数十 nm 2) であると報告されており, 優れた磁気特性を得るためには, 非常に微細な組織から構成される材料が必要である. そこで本研究では磁性ナノ粒子に注目した. 磁性ナノ粒子は機能性材料としての研究が盛んに行われており, 種々の方法で作製された粒子について, その微細構造とそれに伴う磁気特性の変化に注目が集まっている. 液相法はその代表的な合成方法の一つであり, フェライトナノ粒子の作製には共沈法が広く用いられている.Jayadevan ら 3) は粒成長アシスト型溶液反応プロセスを用いて H c =371 ka m -1 で平均粒径が 40 nm である Co フェライト粒子を作製しており, 共沈法を用いることで高保磁力なフェライト微粒子を作製できることが分かる. 我々のグループでは以前, 共沈法で作製した平均粒径 30 ~50 nm の Ni 置換型 Co フェライト粒子と, ポリオール法にて作製した平均粒径 30~50 nm の Co ナノ粒子を混合す
346 日本金属学会誌 (2010) 第 74 巻 ることで, ソフト磁性材料とハード磁性材料の混合粉末の作製を試みた 4). このときヒステリシスループは単相のように振る舞ったが, 零磁場付近で急激に磁化が減少していた. 作製された粉末の TEM 像を見ると, 同種粒子同士が隣接して存在している部分が存在しており, このことが原因で, 交換相互作用が働かない部分が存在し, 磁気特性の低下をまねいたと考えられる. よってソフト磁性材料とハード磁性材料を混合する際には組織形態を改善する必要がある. そこで本研究ではコアシェル構造の複合ナノ粒子の可能性について検討した. これは粒子自体にコアシェル構造をとらせることで, ソフト相とハード相が分散して存在させられると考えたからである. ハード磁性相には液相法での粒子の作製が容易で, 結晶磁気異方性の大きい Co フェライト (CoFe 2 O 4 ), またソフト磁性相にはスレーターポーリング曲線より, 最大の飽和磁化を有することが知られている Fe Co 合金に注目した.Fe Co/Co フェライトコアシェル複合ナノ粒子では, コア部が Fe Co でシェル部が Co フェライトの構造, コア部が Co フェライトでシェル部が Fe Co の二つの構造が考えられるが, 本研究では前者の構造を検討した. これは後者の構造だと, シェル部がソフト磁性相になることから, 外部磁場の影響を受けやすくなり, 磁気特性の低下が想定されたためである. 一方,Fe Co/Co フェライトコアシェル構造の複合ナノ粒子の作製方法については, 本研究では以下の方法を採用した. まず共沈法により得られた Co フェライト粒子を水素還元し,Fe Co 粒子を作製する. その後この粒子に酸化処理を施すことで, 粒子表面にフェライト相を形成させ, コアシェル構造の複合ナノ粒子とすることを試みた. ハードフェライトのコアシェル構造を有するナノ粒子の報告, またフェライトナノ粒子に対する水素還元に関する報告はなく, まずは上記のような操作を行ったときの組織と磁気特性の変化における関係を調査する必要があると考えられる. よって本論文では, ナノ粒子に種々の処理を施したときの組織変化を観察し, それに伴う磁気特性の変化を調査することを目的とした. 以下にその詳細を記す. 間乾燥させ Co フェライト粉末を得た. この粉末 0.14 g に対して,450 C で 15 分間の水素還元を施し,Fe Co 粉末を得た. 得られた Fe Co 粉末 0.03 g に対して 200~900 C で 15 分間, 大気中で酸化処理を行い, 粒子表面にフェライト相を形成させた. 試料の組織観察は透過電子顕微鏡 (Transmission Electron Microscope, TEM 日立製作所製 H 800 または JEOL 製 JEM 2000EXII ) と走査電子顕微鏡 (Scanning Electron Microscope, SEM: JEOL 製 JSM 6060A) により行い,SEM に付属するエネルギー分散型 X 線分光器 (Energy Dispersive Spectroscopy, EDS) を用いて組成分析も行った. 相の同定には Fe Ka 線を用いた X 線回折装置 (X ray Diffraction, XRD: BRUKER 製 D8 ADVANCE) を使用した. また磁気特性の評価には試料振動式磁力計 (Vibrating Sample Magnetometer: VSM, 理研電子 BHV 55) を使用した. また, 示差熱分析装置 (Differential Thermal Analysis, DTA: Rigaku 製 TG8120) を用いて熱分析を行った. 3. 実験結果および考察共沈法にて作製した Co フェライト粒子の XRD パターンを Fig. 1 に示す. これより作製した Co フェライト粒子はスピネル単相であることが分かる. またこのとき作製された Co フェライト粒子のヒステリシス曲線を Fig. 2 に示す. これよりこの Co フェライト粒子の磁気特性は飽和磁化 s s = 20.6 Am 2 kg -1, 保磁力 H c =750 ka m -1 であった. この H c =750 ka m -1 という値は, 我々の知る限りにおいて 3 元系の Co フェライト粒子では最高の値である.Fig. 3(a) にこ 2. 実験方法 まず, 共沈法にて Co フェライトナノ粒子を作製した.20 ml のイオン交換水に対して, 原料濃度 C が C=1.6 mol/l となるように,CoCl 2 6H 2 O と FeCl 3 6H 2 O を 1 2 のモル比で秤量した. 秤量した薬品をイオン交換水とともに三口フラスコに投入し, 薬品がよく溶けるまで 15 分間攪拌を行った. 攪拌を続けながら溶液を 80 C まで昇温し, この温度に保ったまま 3mol/l の NaOH 水溶液を 150 ml 滴下した. 滴下速度はおよそ 5ml/min であった.NaOH 水溶液の滴下終了後, 溶液温度を 100 C 以上に保って 2 時間反応させた. 反応終了後, 攪拌を続けながら室温まで冷ました後, 溶液をビーカーに移し, 約 12 時間放置した. その後上澄み液を捨て, 沈殿物を遠沈管に移し, そこに水またはエタノールを加えて 5000 rpm で 10 分間遠心分離を行い, 再び上澄み液を捨てた. この操作を繰り返すことで, 作製した粒子をよく洗浄した. こうして得られた粒子を,80 C のオーブンで 12 時 Fig. 1 Fig. 2 XRD pattern of the Co ferrite powders. Hysteresis loop of Co ferrite powders.
第 6 号 347 Co フェライト複合ナノ粒子の作製 Fig. 4 XRD pattern of the powders reduced by the heat treatment at 450 C for 15 min in hydrogen. Fig. 3 (a) TEM images of Co ferrite particles. (b) High resolution image of a Co ferrite particle. Fig. 5 Change composition. in lattice parameter into Fe Co alloy の Co フェライト粒子の TEM 像を ( b )に同粒子の高分解 能 TEM 像を示す これより この Co フェライト粒子の平 均粒径は 35 nm であり Co フェライトの単磁区粒径よりも 十分に小さいことが分かる また(b)を見るとこの粒子が単 結晶で構成されていることが分かる この像から見積もられ る格子面間隔 d はおよそ 0.48 nm であり スピネルの(111) 面の格子面間隔に相当する このように単磁区粒径以下の粒 径と一様な組織を有する Co フェライトナノ粒子を作製でき たことが高保磁力につながったと考えられる さらに Fig. 1 で示した XRD パターンより格子定数を計算した これより Fig. 6 DTA curve of the powders reduced by the heat treatment at 450 C for 15 min in hydrogen. 格子定数 a は 0.835 nm と算出され Co フェライトの文献 値 a 0.8385 nm5) と比較すると 格子がひずんでいること XRD パターンより格子定数を計算したところ a 0.286 nm が示唆される 従って今回作製した Co フェライトナノ粒子 程であり Fig. 56) に示す Fe Co 合金の組成による格子定数 が高保磁力を示したのは 単磁区粒径以下の粒径であり 単 の変化から考えると Fe70Co30 付近の組成を有する Fe Co 結晶で構成されていることだけでなく この格子のひずみも 合金のそれと一致する この結果は先の SEM EDS による 要因の一つであると考えられる 以上より 本研究で示した 組成分析の結果とほぼ一致する また Fig. 6 に示すこの試 作製条件により 高保磁力を有する Co フェライトナノ粒子 料における DTA 分析結果より 990 C 付近にピークが確認 を作製が可能であると言える され Fe Co 合金の状態図7)を見ると Fe67Co33 付近の組成 次にこの粒子に対して 450 C で 15 分間の水素還元を施し では 1000 C 近傍のキュリー温度まで変態点はなく 観察さ た このときの XRD パターンを Fig. 4 に示す これよりこ れ た ピ ー ク は キ ュ リ ー 点 で あ る と 考 え ら れ る Fe が の試料が bcc 構造を有していることが分かる また SEM 771 C 8) fcc 構 造 の Co が 1121 C 9) hcp 構 造 の Co が EDS を用いて組成分析を行った結果 この試料の平均組成 797 C 10)でキュリー点を示すことから考えても この粒子が は 67 at Fe 33 at Co であった さらに Fig. 4 で示した Fe Co 合金であることが分かる Fig. 7 の(a)にこの Fe Co
348 日本金属学会誌 (2010) 第 74 巻 Fig. 8 XRD patterns of the powders oxidized by the heat treatment 200 900 C for15mininair. Fig. 7 (a) SEM image, (b) high resolution TEM image of the nanoparticle reduced by the heat treatment at 450 C for15min in hydrogen. 粒子の SEM 像を,(b) に高分解能 TEM 像を示す.(a) よりこの粒子の平均粒径は 40 nm 程度であることが分かる. また (b) を見ると粒子内部でははっきりと格子縞が見えており, 一様な組織が伺える. この像から見積もられる格子面間隔は 0.20 nm であり, これは Fe Co(bcc) の (110) 面の格子面間隔に相当する. しかし粒子表面はアモルファス状の相で囲まれており, これは表面酸化被膜層であると考えられる. またこの試料の磁気特性は s s =190.5 Am 2 kg -1,H c =96 ka m -1 であった.Fe 70 Co 30 合金は最大飽和磁化 2.4 T を示すとされており, これを理論密度 8.02 10 3 kg/m 3 11) を用いて質量磁化に換算すると 238 Am 2 kg -1 である.Fig. 7 の (b) に示した高分解能 TEM 像より, 酸化被膜はおよそ 1.6 nm であり, この部分を差し引いて見積もられる磁化は s s = 186 Am 2 kg -1 となり, これは測定結果とほぼ一致する. 以上より,Co フェライトナノ粒子を水素還元することにより, Fe Co 合金ナノ粒子を作製することができたことが分かった. 次にこの Fe Co 粒子に対して 200~900 C で 15 分間の大気中酸化処理を行った.Fig. 8 にこのときの XRD パターンを示す. これより 200 C で大気中酸化した試料では bcc 構造の Fe Co 相からのピークのみが観察され,400 C 以上で大気中酸化した試料ではスピネル相からのピークしか観察されなかった. 一方,300 C で大気中酸化した試料では,bcc 構造の Fe Co 相とスピネル相からのピークが観察され, このとき二相が共存していることが分かった. この 300 C で大気中酸化した試料の TEM 像を Fig. 9 に示す. なお (b) と (c) は同一の場所での明視野像とスピネル相の (311) スポットからの暗視野像である.(a) を見ると, この粒子がコアシ Fig. 9 (a) and (b) TEM bright field image of the powders oxidized by the heat treatment at 300 C for15mininair,(c) dark field image corresponding to (b). ェル構造を有していることが分かる. また (b) と (c) を比較すると,(c) の暗視野像において, シェルの部分が明るく示されていることから, シェル部がスピネル相であることが分かる. よって, 大気中酸化の時間と温度をコントロールすることで,Fe Co 相とスピネル相からなるコアシェル構造の粒子を作製できることが分かった. しかし,Fig. 10 に示すこの試料のヒステリシスループより, 磁気特性が s s =80.2 Am 2 kg -1,H c =120.4 ka m -1 であることが分かり, 期待されるような高い飽和磁化と保磁力の両立はならなかった. さらに Fig. 10 の左上に減磁曲線の第二象限におけるリコイル曲線も示した. ソフト磁性相とハード磁性相間に交換相互作用が働くときにはリコイル率が大きくなる, つまり大きな
第 6 号 Co フェライト複合ナノ粒子の作製 349 Fig. 10 The hysteresis loop and recoil curve (inset) of the powders oxidized by heat treatment at 300 C for15mininair. Fig. 11 Thermomagnetic curve of the powders oxidized by the heat treatment at 300 C for15mininair. Fig. 12 High resolution TEM image of the particle oxidized by the heat treatment at 300 C for15mininair. 外部磁界にさらされた後も再び残留磁化付近の値まで戻るスプリングバック現象を示すようになる. しかし, 作製された試料のリコイル率 R( R=s r /s r ) は 0.44 と高くないことから, この試料における交換相互作用は強くないと判断される. このように保磁力が低い値に留まった理由とリコイル率が低かった原因について調べるために熱磁曲線の測定および組織観察を行った.Fig. 11 に 300 C で 15 分間の大気中酸化処理を行った試料の熱磁曲線を示す. 測定は 796 ka m -1 の磁場をかけた状態で, 室温から 800 C まで 10 C min -1 で昇温した. これより 575 C 付近に変曲点が観察され,CoFe 2 O 4 のキュリー温度が 520 C 12), マグネタイト (Fe 3 O 4 ) のキュリー温度が 585 C 13) であることから, 生成されたスピネル相は組成が Fe 3 O 4 に近いことが推察される. これは Co よりも酸化されやすい Fe が優先的に酸化されたためと考えられる. さらに Fig. 12 に示す高分解能 TEM 像より, コア部の Fe Co(bcc) 相は一様な組織をしているが, シェル部ではアモルファス相と判断される部分が存在した. これより, 300 C で 15 分間の大気中酸化処理を行った試料が高い保磁力とリコイル率を示さなかったのは, 形成されたスピネル相が, 磁気異方性の小さい Fe 3 O 4 に近い相であったためと, シェル部のスピネル相が一部で結晶構造を組んでいなかったためと考えられる. 今後さらに磁気特性を向上させるために は,CoFe 2 O 4 に近い組成を有し, さらに一様に結晶構造を組んだスピネル相を形成させる必要があると考えられる. 4. まとめ共沈法により Co フェライト粒子を作製し, それを水素還元して Fe Co 粒子とし, その後の大気酸化処理により, 粒子表面にフェライト相を形成させることでコアシェル構造の複合粒子の作製を試み, このときの組織と磁気特性の変化の関係について調査した. 結果をまとめると以下の通りである. 共沈法により作製された Co フェライト粒子は, 平均粒径が 35 nm であり,H c =750 ka m -1 と三元系の Co フェライトでは最高の保磁力を示した. これは, 粒径が十分に小さいことと, 格子のひずみによるものだと考えられる. 450 C で 15 分間の水素還元処理をした Co フェライト粒子は Fe 67 Co 33 付近の組成をもつ Fe Co(bcc) 合金相から構成され, 平均粒径が 40 nm で一様な組織形態を有している. XRD パターンより Fe Co 粒子に 300 C で 15 分間の大気酸化処理を施した試料には,Fe Co(bcc) 相とスピネル相の二相が共存していることが分かった. またこの試料の
350 日本金属学会誌 (2010) 第 74 巻 TEM 観察により, この試料がコアシェル構造を有し, シェルがスピネル相であることも分かった. しかし熱磁曲線より, スピネル相が Fe 3 O 4 に近い組成を有し, さらに高分解 TEM 像よりシェル部の一部にアモルファス状の部分が見られることが分かった. このために高い磁気特性が得られなかったと考えられる. 本研究の遂行にあたり,TEM 観察について, 東北大学工学研究科技術部の小林恒誠氏にご協力 ご助言いただいた. 文 献 1) E. F. Kneller: IEEE Trans. Magn. 27(1991) 3588 3600. 2) D. Suess, T. Schrefl and J. Filder: IEEE Trans. Magn. 37(2001) 1664 1666. 3) B.Jayadevan,K.Sato,T.Ogawa,K.TohjiandM.Takahashi:J. Magn. Soc. Jpn. 28(2004) 896 905. 4) S. Sugimoto, K. Haga, T. Kagotani and K. Inomata: IEEE Trans. Magn. 41(2005) 3871 3873. 5) G. D. Rieck and J. J. M. Thijissen: Acta Crystallogr. 24(1968) 982 983. 6) R. M. Bozorth: Ferromagnetism, (D. Van Nostrand, New York, 1951) p. 192. 7) R. M. Bozorth: Ferromagnetism, (D. Van Nostrand, New York, 1951) p. 527. 8) J.E.NoakesandA.Arrott:J.Appl.Phys.35(1964) 931 932. 9) H. P. Meyers and W. Sucksmith: Proc. R. Soc. A 207(1951) 427 446. 10) P. Weiss and R. Forrer: Ann. Phys. Paris 12(1929) S279. 11) W. C. Ellis and E. S. Greiner: Trans. Am. Soc. Met. 29(1941) 415 434. 12) D. Balz and K. Pleith: Z. Elektrochem 59(1955) 545. 13) M. Haug, M. Fahnle and H. Kronmuller: J. Magn. Magn. Mater. 69(1987) 163 170.