第14回税制調査会 総14-4

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このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

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目次 第 1 章調査概要 調査の目的 調査の方法... 1 第 2 章分析内容 世帯主年齢階級別の世帯数割合 世帯主年齢階級別の等価可処分所得 世帯主年齢階級別の等価所得 拠出金の内訳 世帯主年齢階級別

3 世帯属性ごとのサンプルの分布 ( 両調査の比較 参考 3) 全国消費実態調査は 相対的に 40 歳未満の世帯や単身世帯が多いなどの特徴がある 国民生活基礎調査は 高齢者世帯や郡部 町村居住者が多いなどの特徴がある 4 相対的貧困世帯の特徴 ( 全世帯との比較 参考 4) 相対的貧困世帯の特徴とし

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2. 年金額改定の仕組み 年金額はその実質的な価値を維持するため 毎年度 物価や賃金の変動率に応じて改定される 具体的には 既に年金を受給している 既裁定者 は物価変動率に応じて改定され 年金を受給し始める 新規裁定者 は名目手取り賃金変動率に応じて改定される ( 図表 2 上 ) また 現在は 少

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第17回税制調査会 資料1-3

欧米危機と東アジア経済

ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に

構成 Ⅰ 所得税改革 下向きジェットコースターの不安 格差への対応 - 所得税の四位一体改革 日本の所得税 - 負担の実態 税額控除制度の効果 Ⅱ 納税者番号制度 適正課税と利便性のための基盤整備 ドイツ ( 税務識別番号 ) イギリス ( 国民保険番号 NINO) オランダ ( 市民サービス番号

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1.マクロ 動 向 日 本 の 潜 在 成 長 率 は 低 下 傾 向 にある 成 長 戦 略 が 掲 げる 名 目 3% 実 質 2% 成 長 の 達 成 には 相 当 の 努 力 が 必 要 潜 在 成 長 率 は 労 働 資 本 TFP( 全 要 素 生 産 性 )の 寄 与 に 分 けられる

いずれも 賃金上昇率により保険料負担額や年金給付額を65 歳時点の価格に換算し 年金給付総額を保険料負担総額で除した 給付負担倍率 の試算結果である なお 厚生年金保険料は労使折半であるが 以下では 全ての試算で負担額に事業主負担は含んでいない 図表 年財政検証の経済前提 将来の経済状

図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

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第 7 章財政運営と世代の視点 unit 26 Check 1 保有する資金が預貯金と財布中身だけだとしよう 今月のフロー ( 収支 ) は今月末のストック ( 資金残高 ) から先月末のストックを差し引いて得られる (305 頁参照 ) したがって, m 月のフロー = 今月末のストック+ 今月末

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社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

第12回税制調査会 総12-1(案とれ)


資料9

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< 現行 > 対象者医療区分 Ⅰ(Ⅱ Ⅲ 以外の者 ) 1 * 医療の必要性の低い者医療区分 Ⅱ Ⅲ 1 2 * 医療の必要性の高い者 ( 指定難病患者を除く ) 3 指定難病患者 2 生活療養標準負担額のうちにかかる部分 1 日につき32 1 日につき 1 日につき < 見直し後 > 対象者医療区

2. 改正の趣旨 背景税制面では 配偶者のパート収入が103 万円を超えても世帯の手取りが逆転しないよう控除額を段階的に減少させる 配偶者特別控除 の導入により 103 万円の壁 は解消されている 他方 企業の配偶者手当の支給基準の援用や心理的な壁として 103 万円の壁 が作用し パート収入を10

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平 2 7. 7.17 総 1 4-4 所得格差 貧困 再分配政策 2015 年 7 月 17 日 一橋大学経済研究所小塩隆士

お話しする内容 1. 最近の所得格差 貧困の動き 2. 現行の再分配政策の問題点 3. 再分配政策をどう見直すか 4. まとめ

1. 最近の所得格差 貧困の動き (1) ジニ係数の動き ( 世帯ベース 所得再分配調査 (2011 年 )) 0.600 0.550 0.526 0.532 0.554 0.500 0.472 0.498 0.450 0.441 当初所得 再分配所得 0.400 0.361 0.381 0.381 0.387 0.376 0.379 0.350 0.300 1996 1999 2002 2005 2008 2011

ジニ係数の動きからわかること 再分配所得ベースで見ると 所得格差は 2000 年代に入ってから明確な拡大傾向を見せていない しかし この統計はどうも実感とは異なる 所得分布の変化の様子をもう少し詳しく見てみると

重心が左にシフトし 尖がり度を高める日本の所得分布 所得分布の比較 ( 再分配所得ベース )( 所得再分配調査 (2011 年 )) 世帯構成 (%) 18 16 14 1999 年 2011 年 12 10 8 6 4 2 0 再分配所得 ( 年額 万円 )

日本の所得分布の変化 ( 少なくともアベノミクスが登場するまでは ) 日本の世帯はおしなべて貧乏に そのため ジニ係数も ( 再分配所得で見る限り ) むしろ横ばいで推移 問題は 格差 拡大や二極分化ではなく 貧困 リスクの高まりではないか では 貧困の度合を示す相対的貧困率はどう変化しているか 相対的貧困率 = 貧困線 ( 中央値の 50%) を下回る世帯の比率

(2) 相対的貧困率の動き ( 国民生活基礎調査 (2013 年 )) % 万円 18 250 16 14 13.2 13.5 13.7 14.6 15.3 14.9 15.7 16.0 16.1 相対的貧困率 200 12 10 12.0 135 144 貧困線 ( 名目値 ) 149 137 貧困線 ( 実質値 =1985 年基準 ) 150 8 108 108 114 113 123 127 130 120 130 127 125 122 116 114 112 111 100 6 4 50 2 0 1985 1988 1991 1994 1997 2000 2003 2006 2009 2012 0

相対的貧困率の動きからわかること 緩やかな上昇傾向 その一方で 貧困線が 1997 年以降 低下傾向 所得水準の全般的な低下を反映 貧困線を 1997 年で固定すれば 貧困率はもっと上昇していたはず 貧困問題は 一般的な貧困尺度が示唆するより深刻では

(3) 世帯タイプによって大きく異なる貧困の状況 50 % 44.6 勤労世代 (20~64 歳 ) 男性勤労世代 (20~64 歳 ) 女性 40 33.3 35.1 高齢男性高齢女性 30 29.3 29.4 30.2 23.2 23.1 20 10 14.2 14.8 12.7 12.7 10.8 11 10.7 9.7 12.3 12.5 11.0 8.4 20.4 16.1 15.3 13.4 0 単独夫婦のみ夫婦と未婚子のみひとり親と未婚子のみ三世代その他 ( 出所 ) 阿部彩 (2014) 相対的貧困率の動向 :2006 2009 2012 年 貧困統計ホームページ より作成

世界的に見ても 日本の貧困状況は特異 ( 出所 )OECD (2009), Growing Unequal より作成

多元的貧困 (multidimensional poverty) の考え方 貧困は所得面だけでは十分把握できない 例えば 4 つの次元における貧困に注目 1 所得 : 貧困線を下回る 2 教育 : 高校卒未満 3 セーフティ ネット : 公的年金に非加入 4 健康 : 健康面で日常生活に支障あり

多元的貧困の概念 1. 所得 2. 教育 4. 健康 3. セーフティ ネット

非正規雇用 一人親世帯は所得以外の貧困にも同時に直面 貧困に直面している人の比率 (%) (20~59 歳 ) 貧困の次元 全体 正規雇用者 非正規雇用者 一人親世帯 1. 所得 7.6 4.8 13.7 39.1 2. 教育 4.3 3.5 5.9 6.4 3. セーフティ ネット 2.1 0.6 5.5 6.4 4. 健康 10.0 9.7 10.6 13.9 1~4のうち 1つ以上 21.1 17.0 30.1 50.0 2つ以上 2.6 1.5 5.1 12.9 3つ以上 0.2 0.1 0.5 2.5 4つ 0.0 0.0 0.1 0.5 サンプル数 17,631 12,151 5,480 202 ( 注 ) 厚生労働省 国民生活基礎調査 (2010 年 ) に基づき 筆者推計

2. 現行の再分配政策の問題点 (1) 税 社会保障による再分配は効果的に見えるが 0.60 35 % 0.55 当初所得 再分配所得 30 社会保障による再分配 税による再分配 0.50 25 0.45 20 0.40 15 10 0.35 5 0.30 0

世界的に見ると 日本の再分配は効率が悪い (OECD, 2009 年 ) ジニ係数 相対的貧困率 再分配前 再分配後 再分配前 再分配後 Ireland 0.581 Chile 0.510 Ireland 0.426 Israel 0.209 Chile 0.536 Turkey 0.411 France 0.340 Turkey 0.193 Portugal 0.520 Russia 0.396 Spain 0.330 Chile 0.184 United Kingdom 0.519 United States 0.379 Austria 0.328 United States 0.165 Austria 0.507 Israel 0.373 Germany 0.321 Japan 0.160 Greece 0.507 United Kingdom 0.345 Japan 0.320 Korea 0.153 Israel 0.499 Portugal 0.341 Belgium 0.319 Spain 0.150 United States 0.499 Japan 0.336 Estonia 0.319 Australia 0.144 Italy 0.496 Australia 0.334 Finland 0.316 Russia 0.142 France 0.493 Spain 0.333 Portugal 0.313 Greece 0.130 Germany 0.493 Greece 0.332 United Kingdom 0.313 Canada 0.123 Japan 0.488 New Zealand 0.324 Luxembourg 0.307 Italy 0.120 Spain 0.487 Canada 0.320 Italy 0.305 Portugal 0.120 Luxembourg 0.481 Italy 0.315 Greece 0.300 New Zealand 0.119 Russia 0.481 Korea 0.314 Slovak Republic 0.293 Poland 0.113 Belgium 0.479 Ireland 0.312 Poland 0.287 Estonia 0.107 Estonia 0.479 Estonia 0.309 Israel 0.280 United Kingdom 0.099 Finland 0.477 Poland 0.306 Sweden 0.280 Austria 0.097 Turkey 0.477 Switzerland 0.298 Slovenia 0.277 Germany 0.095 Poland 0.471 France 0.293 United States 0.274 Switzerland 0.095 Australia 0.469 Austria 0.289 Australia 0.273 Belgium 0.094 New Zealand 0.454 Germany 0.288 Czech Republic 0.269 Ireland 0.088 Slovenia 0.452 Netherlands 0.283 Russia 0.266 Sweden 0.087 Czech Republic 0.451 Luxembourg 0.279 Canada 0.255 Slovenia 0.086 Canada 0.444 Belgium 0.269 Norway 0.253 Luxembourg 0.079 Sweden 0.444 Sweden 0.269 New Zealand 0.249 Slovak Republic 0.077 Slovak Republic 0.437 Iceland 0.266 Netherlands 0.244 France 0.075 Netherlands 0.417 Slovak Republic 0.263 Chile 0.236 Norway 0.075 Norway 0.417 Finland 0.260 Denmark 0.233 Finland 0.074 Denmark 0.408 Czech Republic 0.258 Turkey 0.224 Netherlands 0.074 Iceland 0.384 Slovenia 0.247 Iceland 0.201 Iceland 0.065 Switzerland 0.372 Norway 0.245 Korea 0.172 Denmark 0.064 Korea 0.345 Denmark 0.238 Switzerland 0.144 Czech Republic 0.059

(2) 原因 : 再分配政策の大部分が年齢階層間の所得移転 ( ( 所得再分配調査 (2011 年 )) 年齢階層別に見た純受益 年齢階層別に見たジニ係数 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0-500 -1,000 thousand yen 2,751 2,295 2,031 381-148 -283-307 -461-577 -747-771 -29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-74 75+ 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 0.811 0.711 Initial income Redistributed income 0.618 0.504 0.399 0.381 0.394 0.309 0.336 0.331 0.337 0.400 0.415 0.389 0.370 0.352 0.359 0.360 0.291 0.299 0.295 0.311-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-74 75+ 高齢層の格差縮小のほとんどは 年金受給による平均所得の 底上げ によるものであり 高齢層内の所得再分配によるものではないことにも注意

年齢階級別に見た税 社会保障負担 高齢層の負担率は現役層より低め 対総所得比 (%) 25 税 社会保障負担 20 15 10 10.4 10.1 10.5 10.4 11.0 11.1 9.2 7.5 7.3 6.4 5 7.6 7.7 8.7 9.6 9.1 10.7 10.0 8.3 7.6 9.5 0 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-74 75+ ( 注 ) 総所得 = 当初所得 + 社会保障給付 ( 公的年金等 ) 税には所得税 住民税 固定資産税 ( 事業上のものを除く ) 及び自動車税 軽 自動車税 ( 事業上のものを除く ) が含まれる 年齢階級は世帯主の年齢による区分 ( 出所 ) ( 所得再分配調査 (2011 年 ) より作成

所得階級別に見た税 社会保障の純受益 負担 高齢層は 現役層と同じ額の所得を得ていても純受取 ( 万円 ) 400 300 現役層 (20~59 歳 ) 高齢層 (60 歳以上 ) 328 200 100 0 1 17 43 70 93 130 184 225 100 200 300 10 20 62 113 153 198 227 216 193 175 45 所得階層 (10 分位 ) ( 注 ) 所得階級は総所得 (= 当初所得 + 公的年金 ) 現役層 は世帯主が 59 歳以下で高齢者のいる世帯を除いたもの 高齢層 は世帯主が 60 歳以上の世帯 ( 出所 ) 厚生労働省 国民生活基礎調査 (2013 年 ) より作成

(3) 働き方も問題 : 正規労働者以外では社会保険料は逆進的 税社会保険料税 + 社会保険料 (1) 世帯主が正規規雇用者の世帯 ( 負担 / 世帯所得 %) (2) 世帯主が正規雇用者以外の世帯 ( 負担 / 世帯所得 %) 所得 ( 万円 ) 所得 ( 万円 ) ( 出所 ) 小塩 効率と公平を問う (2012 年 ) 日本評論社 国民生活基礎調査 (2007 年 ) より作成

所得階級別に見た市町村国保 保険料負担率 国保 保険料負担の逆進性 ( 出所 ) 厚生労働省 社会保障審議会医療保険部会 (2014.5.91) 提出資料 国民健康保険実態調査 (2012 年度 )

17.4 15.9 14.6 所得階級別に見た国民年金 1 号期間滞納者 比率 国年保険料は低所得層にとって重い負担 35 % 31.6 31.4 30 25 20 24.9 25.5 26.6 22.3 19.6 15 10 12.4 13.1 12.0 10.0 11.2 9.8 8.8 5 0 所得階級 ( 出所 ) 厚生労働省 国民年金被保険者実態調査 (2011)

まとめ : 現行の再分配政策の問題点 現行の再分配政策は そのかなりの部分が年齢階層間の所得移転 ( 年金 高齢者医療 介護など ) それ以外の再分配は小規模 そのため 子供の貧困 高齢層の貧困 を中心に 貧困問題が十分に解消されず 国保 国年の保険料負担はむしろ逆進的 非正規雇用者を中心として ( 最も支援されるべき ) 低所得層が十分支援されず セーフティ ネットから排除されやすい状況に

3. 再分配政策をどう見直すか 基本方針 : 困っている人を困っていない人が助ける 仕組みに 現行制度 目指すべき制度 若年層 高齢層 若年層 高齢層 困って 困って 困って 困って いない人 いない人 いない人 いない人 困って 困って 困って 困って いる人 いる人 いる人 いる人 不公平でしかも非効率

改革を進める上での重要な留意点 (1) 世代間公平 の視点は極めて重要だが 取り扱いには細心の注意を そのままでは政治的な抵抗を受けやすい 現役 高齢層それぞれの多様性に十分配慮すべき (2) 困っている人 困っていない人 の線引きは? フローの所得がやはり最大の注目点 最終的にはストックにも注目すべき

(3) 税 社会保障改革の連携 給付サイド高所得の高齢層に対する負担増は 年金給付の削減よりも諸控除の見直しで対応してはどうか 負担サイド低所得層の税 社会保険料負担について どのような配慮が必要か検討してはどうか 今後 社会保障負担は増加が必至 税制面からの支援がないと 低所得層がセーフティ ネットから排除されるリスクが一段と高まる

(4) 生物学的制約 への配慮 税や社会保障は 要するに 人々がその時点で生産した財を自分たちの間で再分配し 消費に向ける仕組みだから 当然ながら生物学的制約を受ける 国民純貯蓄 の概念を用いて考えてみる 国民純貯蓄 = 民間貯蓄 + 政府貯蓄 - 固定資本減耗 ( 注 ) 政府貯蓄は通常 赤字

ゼロからマイナスに向かう国民純貯蓄 働き手が減り 養われる者が増えつつあることの生物学的帰結 ( 出所 ) 内閣府 国民経済計算 より作成

生物学的制約 からの政策的含意 困っていない人 を助ける余裕は ほとんどなくなっている 限られた財源を 困っている人 に限定的 集中的に配分する仕組みに改めるしかない そうしないと 次世代が利用可能な資源も減少 同時に 働き手を増やし 社会全体の扶養力を高めて 生物学的制約を克服する工夫が必要 若年世帯の出産 子育て 女性の労働供給 高齢層の労働供給を促進する改革が重要に

4. まとめ 2000 年代以降 日本では全体として貧困化が進行 特に非正規雇用者 一人親世帯などの貧困リスクが上昇 しかし 現行の所得再分配は 年齢階層間の所得移転が中心 困っている人 を助けず 困っていない人 を助けるという不公平 非効率な面が浮き彫りに 困っている人を困っていない人が助ける という単純明快な方針で 再分配政策のあり方を見直すべき

ありがとうございました