クラウドを利用したスピン洗浄装置の気流解析 CFD of Spin Cleaning Equipment using HPC Cloud 山崎修 Osamu Yamazaki 芝浦メカトロニクス株式会社 1 / 30
目次 1. 会社紹介 2. 背景 3. 解析の目的と発表の内容 4. クラウドについて 5. テスト1~3 ( モデル 解析結果 クラウド調査結果 ) 6. まとめ 7. 謝辞 発表時間 :25 分質疑応答 :5 分 2 / 30
会社紹介 横浜事業所 解析グループは 6 人 3 / 30 芝浦メカトロニクス株式会社 HP より抜粋
会社紹介 : 事業内容 FPD: フラットパネルディスプレイ 4 4 / 30 芝浦メカトロニクス株式会社 HP より抜粋
会社紹介 : 半導体製造装置 ( スピン洗浄装置 ) 5 / 30 5 芝浦メカトロニクス株式会社 HP より抜粋
背景 : スピン洗浄装置について 半導体デバイスを製造するためには円板状のウエハを 数百台の加工装置で連続して 処理する必要がある 加工中に付着したダストなどを 次の加工の前に除去する必要がある スピン洗浄装置は付着物除去のために使用される装置である ウエハ 加工装置 洗浄装置 加工装置 洗浄装置 洗浄装置 加工装置 洗浄装置 加工装置 数百工程 スピン洗浄装置の気流設計のポイント デバイス不良の原因になる ウエハへのミスト ( 微小液滴 ) 付着を防止する 半導体デバイス 6 / 30
500mm 背景 : スピン洗浄装置の構造 (a) 立体図 給気フィルター (b) 断面図 ウエハ ダウンフロー チャックピン ( 円筒 :6 個 ) 液ノズル ( 解析では省略 ) カップ 中板 回転テーブル 排気 回転テーブル 回転 排気 排気口 注 ) 今回の発表では わかりやすさを重視してあえてミストの発生しやすい構造としている 7 / 30
1 ウエハ設置 背景 : ミスト付着問題 断面 カップ チャックピン ウエハ 回転テーブル 8 / 30
背景 : ミスト付着問題 2 洗浄液供給 カップ チャックピン 洗浄液供給 回転 ウエハ 回転テーブル 洗浄液排出 洗浄液排出 9 / 30
背景 : ミスト付着問題 3 リンス液供給 洗浄液を止める カップ チャックピン 純水などのリンス液供給 回転 ウエハ 回転テーブル 洗浄液 リンス液排出 洗浄液 リンス液排出 10/ 30
背景 : ミスト付着問題 4 乾燥開始 中心部から乾燥 カップでミストを受け止める リンス液を止める 高速回転 回転テーブル ミスト排出 液の振り切りでミスト発生 ミスト排出 11 / 30
ミスト付着問題 5 乾燥中 乾燥後 カップ ミスト再付着 高速回転 ミスト再付着 回転テーブル ミスト排出 ミスト排出 乾燥したウエハに付着したミストは除去できないためデバイス不良の原因になる 12/ 30
解析の目的と発表の内容 解析の目的 : チャンバ内の液体や気体の流れを調べることにより ミストがどこから発生し どのように輸送されてウエハまで到達するかを調べる 非定常の解析かつ複雑なモデルが必要であるため計算時間が非常に長い (1 計算に 1 か月以上 ) 1 年前の STAR Japanese Conference 2016 でクラウドについて知る クラウドの調査を開始 ( 今回はその成果 ) 発表の内容 : 流体解析をスピン洗浄装置へ適用した事例を 単純なモデルから複雑なモデルへと順を追って 3 種類紹介する 同時にそれぞれのモデルに対してクラウドを適用した場合の計算速度向上を示す 13/ 30
クラウドについて 今回調査したクラウドの概要 企業 団体名クラウド名システム名仮想マシン CPU ノード間通信備考 A システムー Intel Xeon L5640 2.26GHz InfiniBand QDR 40Gbps 古めの CPU 公益財団法人計算科学振興財団 FOCUS D システムー Intel Xeon E5-2670v2 2.5GHz InfiniBand FDR 56Gbps F システムー Intel Xeon E5-2698v4 2.2GHz InfiniBand FDR 56Gbps 株式会社電通国際情報サービス Amazon Web Services, Inc. (EC2) PLEXUS CAE c4.8xlarge Intel Xeon E5-2666v3 2.6GHz 10Gbps 仮想マシンノード間通信遅い ティーモスインテリジェンス株式会社 Microsoft Corporation (Azure) ihab CLUSTER H16r Intel Xeon E5-2667 3.2 GHz InfiniBand FDR 56Gbps 仮想マシン 富士通株式会社 TC クラウド q24common ー未公開 InfiniBand FDR 56Gbps 14/ 30
テストモデル : 共通項目 装置条件ミストがウエハ付着している乾燥時を想定 ダウンフロー流量 :2.2 m 3 /min ウエハ テーブル回転数 :1200rpm( 毎秒 20 回転 ) 解析条件 STAR-CCM+ V12.02.11 混合精度 3 次元 陰解法非定常解析 密度一定 ( 非圧縮モデル ) 乱流 (k-εモデル) 空気物性 : デフォルト値 ポリヘドラルメッシュ使用 メッシュ数 320 万メッシュ程度 給気フィルターダウンフロー 2.2 m 3 /min 回転数 :1200rpm 回転テーブル 排気 排気 15/ 30
テストモデル : 共通項目 テスト手法 定常に近くなるまで解析した結果を初期条件として利用 計算時間は 5 分 ~20 分程度になるようにサイクル数を決定 計算速度は弊社ワークステーション (Xeon E5-2687W v4) シングル動作との比較 計算時間の測定方法を工夫 開始 終了 解析の流れ データロード計算準備計算データセーブ 時間 画像出力 時間を計測 画像出力 16/ 30
TEST1 モデル 回転する面の 物理条件 - 接線方向速度の設定 を 局所回転速度 に設定する手法で回転を表現 (STAR-CCM+ の設定 ) ( 物体は回転せず 物体に接触する空気に回転の速度を与える手法 ) 給気フィルター 断面図 カップ 排気口 回転部 チャックピン (6 本 ) ウエハ テーブル メッシュ数 :323 万メッシュ 17/ 30
TEST1 解析結果 流速ベクトル図 ウエハ上 0.5mm 断面 x-z 平面断面 チャックピン ウエハ 給気フィルター 拡大 カップ カップ ウエハ このモデルの問題点 : 同心円でない物体の回転は正しく解析できない 流れに大きな影響を及ぼしているチャックピンの影響を正しく解析できない 18/ 30
計算速度 TEST1 クラウド調査結果 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 FOCUS-Aシステム FOCUS-Dシステム FOCUS-Fシステム PLEXUS CAE(AWS) ihab CLUSTER(Azure) TCクラウド-q24Common 0 200 400 600 800 1000 1200 並列数計算速度はXeon E5-2687W v4 シングル動作との比較 1000 並列近くまで計算速度は上昇傾向 計算速度は Xeon E5-2687W v4 シングル動作の 400 倍の計算速度 FOCUS-A システムを除いたクラウドでは 300 並列程度まではほぼ同等の計算速度 19/ 30
TEST2 モデル スライディングメッシュモデルで回転を表現 給気フィルター ウエハ上 0.5mm 断面図 スライド面 カップ カップ 排気口 20/ 30 ウエハ
TEST2 解析結果 流速ベクトル図 ウエハ上 0.5mm 断面 TEST1( 物体固定表面の空気に回転運動 ) 結果 TEST2( スライディングメッシュモデル ) 結果 チャックピン ウエハ スライド面 ウエハ カップ カップ TEST2 ではチャックピン近傍の流速を正確に計算できている 21/ 30
TEST2 解析結果 流速ベクトル図 ウエハ上 0.5mm 断面 x-z 平面断面 給気フィルター 拡大 カップ ウエハ このモデルの問題点 : 空気の流れだけではミストの挙動を正確に求めることができない 22/ 30
計算速度 TEST2 クラウド調査結果 70 60 50 40 30 20 10 FOCUS-Aシステム FOCUS-Dシステム FOCUS-Fシステム PLEXUS CAE(AWS) ihab CLUSTER(Azure) TCクラウド-q24Common 0 0 100 200 300 400 500 600 700 並列数 計算速度は Xeon E5-2687W v4 シングル動作との比較 計算速度向上は 300 並列まで 最大の計算速度は Xeon E5-2687W v4 シングル動作の 57 倍程度 FOCUS-A システムを除いたクラウドでほぼ同等の計算速度 23/ 30
TEST3 モデル スライディングメッシュモデルで回転を表現液膜モデルでウエハ面とチャックピンでの液の流れを計算 ( ミスト発生源を求める ) ラグランジェ混相流モデルでミストの輸送を計算 今回計算した液体は水と仮定 実際の装置では乾燥時には液の供給を止めているが 連続してミストを発生させたかったためウエハ中央より水を 1L/min で供給 回転数 :1200rpm 液膜入口 ( 流量 :1L/min) 水は高速回転 (1200rpm) によりウエハやチャックピン上を薄く広がる 液膜モデルで解析 ウエハエッジやチャックピンまで到達した水はミストとなり飛散する ラグランジェ混相流モデルで解析 壁面に衝突したミストは消滅する 回転する部材はすべて液膜を設定する 液膜出口 24/ 30
TEST3 解析結果 水膜厚分布 ( 液膜モデル ) チャックピン部拡大 ミスト発生源 : ウエハチャック部の裏側 25/ 30
TEST3 解析結果 ミスト挙動 ( ラグランジェ混相流モデル ) チャックピンから発生したミストが跳ね飛ばされ装置上部まで到達する 重力により沈降 ウエハに付着する 26/ 30
計算速度 TEST3 クラウド調査結果 60 50 40 30 20 10 0 FOCUS-Aシステム FOCUS-Dシステム FOCUS-Fシステム PLEXUS CAE(AWS) ihab CLUSTER(Azure) TCクラウド-q24Common 0 100 200 300 400 500 600 700 並列数 計算速度は Xeon E5-2687W v4 シングル動作との比較 計算速度向上は 200 並列まで 計算速度は Xeon E5-2687W v4 シングル動作の 40~50 倍の計算速度 FOCUS-A システムを除いたクラウドでは 200 並列程度まではほぼ同等の計算速度 27/ 30
まとめ 1. 流体解析をスピン洗浄装置へ適用した事例として 3 種の解析手法を紹介した 2. それぞれの解析手法に対して クラウドを適用した場合の速度向上を調査した 単純な気流のみを解析する簡略化手法 (TEST1) では最大の計算速度はシングル動作の 400 倍以上 スライディングメッシュモデルを使用したより正確な手法 (TEST2) では 最大の計算速度はシングル動作の 57 倍程度 スライディングメッシュモデルに液膜モデルとラグランジェ混相流モデルを加えることでミスト挙動を解析する手法 (TEST3) では 最大の計算速度はシングル動作の 40~50 倍 クラウドは計算速度向上に効果的である スライディングメッシュモデルは並列効率が悪い 各クラウドの計算速度はすべての手法において FOCUS-A システムを除いて極端な差はない (CPU の動作周波数や仮想マシン ノード間通信速度の影響はほとんど見られない ) 28/ 30
謝辞 今回調査したクラウド環境の提供企業 団体 公益財団法人計算科学振興財団殿 (FOCUS) 株式会社電通国際情報サービス殿 (PLEXUS CAE) ティーモスインテリジェンス株式会社殿 (ihab CLUSTER) 富士通株式会社殿 (TC クラウド ) 多大なる協力をいただきましたありがとうございました 29/ 30
ご清聴ありがとうございました 30/ 30