私の生物学は朱鷺から始まった

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STAP現象の検証の実施について

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資料3-1_本多准教授提出資料

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

小守先生インタビューHP掲載用最終版

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難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

Transcription:

東京大学大学院総合文化研究科 最終講義 動物の発生の仕組みを探し続けて 40 年 東京大学大学院総合文化研究科浅島誠 2007 年 3 月 3 日於 : 駒場キャンパス 900 番教室 : このマークが付してある著作物は 第三者が有する著作物ですので 同著作物の再使用 同著作物の二次的著作物の創作等については 著作権者より直接使用許諾を得る必要があります

私の生物学は朱鷺から始まった

自然と生き物に学ぶことから生物学生物学は始まる

生き物の現場を見 観察することによって 新しい感動が生まれる 百聞は一見にしかず ( 約 40 年間同じ場所で採集している )

採集と保護の共存 新潟県の北部で 40 年間 両生類などの採集と調査を行っているが その数はほとんど変化せず 最近ではむしろ増えている 同じ場所で採集し 同じ場所に戻すことは苦労を伴うが これによって学生たちも新しいことを学ぶ

イモリ採集から学んだ例の一部 1 イモリの癌は冬眠している間に治癒する 癌の低温療法 2 イモリの求愛行動 相思相愛で成立 3 イモリの腹の模様は遺伝する 模様で地域がわかる 4 イモリは厳冬の川の中にいる時はイモリ玉 ( 約 500~1500 匹の集合体 ) を作って動き回っている 5 イモリの手足や目やレンズは切除してもまた生えてくる 再生能力の強さ 6. イモリには地震予知能力があるか? これらはすべて自然の中で見られることで これによって生物の美しさ 面白さ 不思議さが感じられる

? など

実験発生学の祖ルー 動物胚 ( 卵 ) に人手を加え 実証主義的な実験発生学を創始 胚誘導の発見者シュペーマンとマンゴールド 形づくりのセンター ( 形成体 ; オーガナイザー ) を発見し 胚発生における 誘導 の存在を最初に確認 現代発生生物学の流れを作り出した Wilhelm Roux (1850-1924) Hans Spemann (1869-1941) Hilde Mangold (1898-1924) "Int J Dev Biol, vol 40, No.1, 1996" p10-fig.2(klaus Sander), p60-fig.1 (Viktor Hamburger), p54-fig.8 (Peter E. Faessler)

Über Induktion von Embryonalanlagen durch Implantation artfremder Organisatoren Von H.Spemann und Hilde Mangold Mit 25 Textabildungen Sonderdruck aus dem Archiv für Mikroskopische Anatomie Und Entwicklungsmechanik Herauagegeben von Wilhelm Roux unter Mitwrikung von H.Braus und H. Spemann 100.Band 3./4. Heft Berlin Julius Springer 1924

水野丈夫 浅島誠共編 理解しやすい生物 IB II 改訂版 p161- 図 45, 2001 文英堂

著作権処理の都合で 著作権処理の都合で この場所に挿入されていた シュペーマンの写真 を省略させていただきます この場所に挿入されていた シュペーマンのノーベル賞の写真 を 省略させていただきます 1935 年ノーベル生理医学賞受賞

Frog カエル Human ヒト Newt イモリマウス Fertilized egg 受精卵 共通のシステム Common system CNS 神経 Notochord 脊索 Brain 脳 Heart 心臓 Liver 肝臓 Gonad 生殖腺 Common organ 共通の臓器

両生類の初期発生と胚誘導

動物の形づくりにおける誘導因子の濃度勾配説 重複ポテンシャル理論 二重勾配説 中村治 川上泉編 オーガナイザー p33- 図 1-13, p34- 図 1-14 1977 みすず書房

脊椎動物胚における多能性幹細胞 アニマルキャップ 胚盤葉上層 内部細胞塊 animal cap epiblast inner cell mass yolk 卵黄 アフリカツメガエルイモリ ( 両生類 ) ニワトリ ( 鳥類 ) ハツカネズミヒト ( 哺乳類 )

アニマルキャップ アッセイ

1950 年頃までは発生の研究と言えば その約半数は誘導に関するものであったといっても過言ではない それが たとえば1981 年に開催された 国際発生生物学会議 において直接に誘導を取り扱った講演題数はわずか 2 題となっている( この少なさはいささか異常の感はある ) ともかくも 誘導研究の衰退はおおい隠すべきもない テーマとしての重要性は 今もって自明であるにかかわらず 何故 研究者の関心はかくも速やかにこの問題から離れていったのだろうか? 岡田節人著 からだの設計図 ープラナリアからヒトまでー 岩波新書 358 より

形成体と胚誘導の研究の歴史は 大げさにいうと不幸な 汗と努力のドキュメントである 不幸な研究歴史にもかかわらず 発生における形成体の働き 誘導作用の存在の重要性はなんら変わるところはない 形成体とか胚誘導の問題に真正面から取り組んで研究し かくかくのやり方で実験すれば理解できた というような事態はひょっとしたら将来にも期待できないかもしれない まったく別の側面で かつ別の概念によって研究を進めていくうちに 形成体の働きとは ああじつはこういうことだったんだなあ ということになってこの問題の決着がなんとなくついてしまうのではないだろうか? 岡田節人著 からだの設計図 ープラナリアからヒトまでー 岩波新書 358 より

ドイツベルリン自由大学分子生物学研究所

ベルリン自由大学分子生物学研究所の研究員の頃のイモリ採集 From International Journal of Developmental Biology (Vol. 40, 113-122, 122, 1996)

著作権処理の都合で この場所に挿入されていた H.Spemann Experimentelle Beitrage Zu Einertheorie Der Entwicklung 中村治 川上泉 オーガナイザー O.Nakamura and S.Toivonen Organizer それぞれの表紙を省略させていただきます 1936 年刊 1977 年刊 1978 年刊 この当時胚誘導の研究はどん底の状態にあった

アクチビン Aの構造の模式図

アクチビンが中胚葉誘導因子であることを発表した論文 1. 1989 Sept. Asashima et al. MI factor (Japan) 2. 1990 Feb. Asashima et al. MI factor (Japan) 3. 1990 June J. C. Smith et al. MIF factor (U.K.) 4. 1990 June A. J. M. Van den Eijnden et al. MIF factor (The Netherland) 5. 1990 Aug. D. A. Melton et al. PIF factor (U.S.A.) 6. 1990 Aug. H. Tiedemann, Asashima Vegetalizing factor (Germany, Japan) これによって 約 75 年間世界中で探し続けていた誘導物質がアクチビンというタンパク質に集約された

しかし この文章に私の書いたシニカルな態度は 全く捨てたものでもないと今も考えている というのは 昔と変わらず復活された現今の研究ででも誘導のた めの役者 ( 遺伝子である!) はすでに多過ぎるほどリ ストアップされているのだ もちろん 中胚葉誘導の方 はいわゆる成長因子が 神経誘導 ( 形成体作用 ) の方 はホメオ遺伝子の産物が 役割を担うことはほぼ確か らしい とくに前者でのアクチビンの働きは際立ってい る 岡田節人著 からだの設計図 ープラナリアからヒトまでー 岩波新書 358 より

アクチビン処理したアニマルキャップの濃度依存的中胚葉分化

アクチビン処理したアニマルキャップの伸長運動と筋肉分化 この運動を通して 筋肉が出来るための全ての遺伝子が規則正しく発現してくることが分かってきた

同じ筋肉器官形成モデル 正常細胞 因ろいろなアニマルキャップ マウス等 ES 細胞い子アクチビン Black Box レチノイン酸

ツメガエルの未分化細胞 ( アニマルキャップ ) から試験管内で作った器官や組織 ( 浅島研 ) 脳 目 耳胞脊髄 前腎管 ( 腎臓 ) 脊索 軟骨 セメント腺 心臓 肝臓血球赤血球白血球リンパ球 胃 膵臓 小腸 筋肉 これまでに未分化細胞から 22 の器官や組織をつくった

両生類の未分化細胞 ( アニマルキャップ ) からの心臓形成と移植

アニマルキャップからつくられた心臓の拍動 100 ng/ml のアクチビンで処理してつくった心臓

アニマルキャップから分化誘導した拍動組織を移植した胚

異所性の心臓移植幼生

in situ ハイブリダイゼーションによる心臓関連遺伝子の探索 Nkx2.5 MA6 MA12 MA20 MA27 MA32 MA1 MA7 MA15 MA21 MA28 MA33 MA2 MA8 MA16 MA22 MA29 MA34 MA3 MA9 MA17 MA23 MA30 MA35 MA5 MA10 MA19 MA26 MA31 MA36

MA35 遺伝子の機能阻害による心臓形成の不全 1 Nkx2.5 Nkx2.5 ctni control MO injected st. 34 st. 34 section st. 42

MA35 遺伝子の機能阻害による心臓形成の不全 2 対照 ( 正常胚 ) MA35 機能阻害胚 ( 心臓欠損 )

両生類の未分化細胞からの 腎臓形成と移植

腎臓の発生 前腎 ( ネフロン 1 個 ) オタマジャクシ 中腎 ( ネフロン約 30 個 ) 成体のカエル 後腎 ( ネフロン約 100 万個 ) ヒトなど

アニマルキャップからの試験管内での前腎形成

前腎構造の試験管内 (A+B) と正常胚 (C+D) での形成

両生類 ( カエル ) の腎臓発生と遺伝子発現

哺乳類 ( ヒト マウス ) の腎臓発生と遺伝子発現

著作権処理の都合で この場所に挿入されていた朝日新聞夕刊の記事を省略させていただきます 朝日新聞夕刊 2007.2.14

腎臓形成過程で発現する遺伝子群 発生段階 9 15 20 23 28 31 33 35 37 マーカー遺伝子原腸胚神経胚幼生 腎細管導管 腎細管 導管 糸球体 Xpax-8 Xwnt-4 Delta-1 Notch-1 XTRAP-γ MLK-2 XSMP-30 3G8 (antibody) Xlim-1 Id2 Xpax-2 XC3H-3b 3b NDRG1 Na + -K + ATPase α Subunit Xsal-3 Dullard xclc-k Id4 Xlcaax-1 Xfz8 Gremlin 4A6 (antibody) XWT1

マウス胎児の腎臓 正常 (+/+) ノックアウト (-/-) ノックアウト (-/-) Nishinakamura R. et al., Development, vol 128, p3110-fig.4, 2001

試験管内でつくった腎臓の移植実験 蛍光色素で標識した移植片

両生類の未分化細胞からの 眼球形成と移植

ツメガエル未分化細胞から誘導した眼球 : 組織切片の観察 外形切片 HE 染色 ステージ 42 幼生 試験管内で作った眼 試験管内で作った眼は正常な眼と同じ構造をしている

試験管内でつくった眼球を移植 両眼を切除

移植した眼球と脳の視蓋との神経の接続 真上からの像 真横からの像

10-4 M

試験管内で幼生の頭部と胴尾部をつくり分ける実験系 生理食塩水 サンドイッチ培養 アクチビン 短時間 (0-6 h) 胴尾部を形成 100 ng/ml 1 h 長時間 (12-24 h) 頭部を形成

頭部構造 胴尾部構造

組織切片図 頭部胴部尾部 頭部胴部尾部 サンドウィッチ外植体 正常胚

Head structure Time flow Organizer Trunk and tail structure Blood cells Coelomic epidermis Muscle Activin Pronephros Notochord Pancreas Liver Pharynx Heart

Antivin Activin Activin TypeIIR TypeIR Follistatin Cell membrane P P P P Smad2 P P ARIP1 Smad4 ARIP2 Smad2 Smad4 Smad2 P P P P Smad2 SARA アクチビンがどのようにして働くかを示した模式図 Nucleus P P P Smad2 P Smad4 Smad2 FAST-1 ARE FAST-1 XSIP1 Mix 2 Mig30 Xbra

マウスの未分化細胞 (ES 細胞 ) からの器官形成

胚性幹細胞 (ES 細胞 ) の由来

マウス ES 細胞と胚様体 (15% FCS, +LIF) 血清と LIF が入っている (15% KSR, -LIF) 無血清で LIF がない

マウス ES 細胞からの心筋形成 RA024 処理による心筋細胞の誘導 (1-2 日間の培養 ) 心筋特異的なマーカーであるトロポニン I の抗体による染色

マウス ES 細胞からの膵臓形成

マウス ES 細胞から形成された膵臓からのインスリンやアミラーゼの分泌 抗アミラーゼ抗体 (FITC) 抗インスリン抗体 (FITC)

胚性幹細胞からの膵臓の形成の組織切片 腺房細胞 膵導管

インスリンとアミラーゼの二重抗体染色 アミラーゼ / インスリン C ペプチド / DAPI (bar = 50 μm) 0.1 μm RA + 10 ng/ml activin 0.1 μm RA + 25 ng/ml activin マウスの膵臓 対照 ( コントロール )

マウス ES 細胞からの気管の形成

マウス ES 細胞からの気管構造と正常な気管の比較 正常なマウスの気管 ES 細胞からつくった気管

マウス ES 細胞からの繊毛の形成 繊毛細胞に特徴的な 9+2 構造がみられる

マウス ES 細胞からの神経細胞の形成 抗 -L-NF 抗体 (FITC) 抗 -H-NF 抗体 (FITC)

カエルの器官形成とマウスなど哺乳類の器官形成は同じようなシステムで制御されている

今後の研究方向 1 各人の正常組織から細胞を採取 2 脱分化させる 例 : 皮膚 脂肪細胞など 継代して幹細胞にする 4 分化誘導因子で特定の臓器を作る ( 再分化させる ) 増殖した幹細胞 3 幹細胞の状態で増殖能を高める 6 遺伝病を持つ細胞に対しては正常化する処理 ( 遺伝子導入等 ) 二次元平面の組織分化 5 様々な培養条件や培養装置の改良 三次元構造をもつ移植可能な臓器や組織を作る

研究室の哲学 ( 考え方 ) 1. 自然 (nature,( 蛙やイモリのこと ) に学べ - 彼らが先生である 2. Passion( ( 情熱を越えた熱情 ) をもって取り組め - 自分の研究としてとらえ 努力せよ 3. 物事には順序がある - 確実な技術の習得と Research first の精神 4. 予測した事実に反する結果がでたら 見のがすな - 大きな発見の糸口である 5. オリジナルな研究をし ( 内容や方法など ) 結果が出たら論文を書け

謝辞 長い間研究を支えてくださった多くの方々 とりわけ東京教育大学 横浜市立大学 東京大学の指導教官の先生方 先輩 研究仲間 学生 学会関係者 職員の方々 文部科学省 科学技術振興機構 産総研の方々に心から厚く御礼を申し上げます さらに ご多忙の中 遠くからも本日の最終講義に来て下さった多くの方々にも心から感謝申し上げます 本当にどうもありがとうございました また 今回の私の最終講義に際しては研究室の若い人たちが自発的に企画 実行してくださったことに対して 深く感謝します 浅島誠

新潟県村上市における 30 年間のイモリの採集数

共同研究者 横浜市立大学及び東京大学大学院 駒崎伸二, 中野浩, 冨樫伸, 小山洋道, 小畑秀一木下圭, 生沼勉, 浜崎辰夫, 島田和典, 別所友子有泉高史, 畑田成吾, 魚地孝聡, 高橋秀治, 横田千夏盛屋直美, 道上達男, 高野和敬, 早田匡芳, 黒田裕樹セン徳川, 小沼泰子, 種子島幸祐, 佐藤朗, 後原綾子十亀麻子, 雪田聡, 古江美保, 福井彰雅, 伊藤弓弦栗崎晃, 近藤晶子, 岡林浩嗣, 後藤利保, 長船健二生沢昌之, 大沼清, 上原真理子他多数内山英穂, 杉野弘, 江藤譲, 上野直人, 木下勉西中村隆一, 横田崇, 菊池章, 大河内仁志 Malacinski G., Mayer-Rochow V. B., Grunz H., Tiedemann H. 他