概要制御器は電気機器の操作 制御を行う機器でその種類も多く, ここでは低圧 (600V 以下 ) の回路に使用される電磁開閉器の基本的な構造, 適用について示します 1. 電磁開閉器電磁開閉器はモータの始動 停止, 正逆運転, 焼損保護などの制御 保護用として工場, ビル, 空調機器, 荷役機械, 工作機械などに広く使われています また, モータ以外では電熱, 照明などの開閉にも使用されています 1.1 電磁開閉器を使用する利点図 1.1 に電磁開閉器の回路構成を示します 以下に, 電磁開閉器を使用する利点を示します 1 押しボタンスイッチなどで, 電磁開閉器を動作させて集中的に何台かのモータを遠隔操作することができます 2 シーケンサなどの制御機器と組合せて自動運転ができます 3 開閉耐久性が長く, 頻繁な開閉が可能です 4 停電してモータが停止したとき, 電源が復電してもモータがいきなり始動しないようにできます 押しボタンスイッチの再操作により始動します 5 モータの過負荷, 拘束, 欠相などによる焼損を防止できます 図 1.1 電磁開閉器の回路構成 1.2 構造電磁開閉器とは電磁接触器とサーマルリレーを組合せたもので, その構成を図 1.2 に示します 箱入 開放形 電磁接触器 非可逆形 サーマルリレー 可逆形 電磁開閉器 ( マグネットスイッチ ) 図 1.2 電磁開閉器の構成 1
1.2.1 電磁接触器電磁接触器は操作コイル, 固定鉄心, 可動鉄心で構成される電磁石と負荷電流を入 切 (ON OFF) するための固定接点, 可動接点及び引外しバネなどの主要部品で構成されています 操作コイル OFF( 無励磁 ) では引外しバネにより固定接点と可動接点は開離 (OFF) しており, 電流が負荷に流れない状態となっています 次に, 操作コイル ON( 励磁 ), 即ち, コイルに電圧を加えると可動鉄心が吸引され, これに連結された可動接点が固定接点に接触して回路を閉じる (ON) 動作をします 操作コイルの励磁を解除すると, 引外しバネにより可動鉄心が開放し, 同時に可動接点が開離 (OFF) して負荷電流が遮断されます 電磁接触器の接点には, モータなどの負荷電流を開閉する主接点と制御回路に使用する補助接点があります 主接点には大電流の開閉に伴う高温度のアークに耐え, 長期間負荷電流の開閉に使用できる銀合金を使用しています 補助接点は制御回路の機器の制御用に使用されるため, 低電圧 小電流でも接触信頼性を良好にするためツイン接点が一般に採用されています 補助接点には a 接点 ( 主接点 ON と同時に ON する接点 ) と b 接点 ( 主接点 OFF 時に ON する接点 ) があり, 通常電磁接触器 1 台に 1 ~ 4 個付いています 図 1.3 電磁接触器の構造 動作 2
小形機種 電磁石構造鉄心は E-E 形構造とし, 円錐形引外しバネで可動部のバランスを取り, 動作の安定化, 寿命の増大を図っています 図 1.4 小形機種の構造 中 大形機種 (50A 以上 ) 接点と消弧室の構造アークランナでアークをいち早く駆動して消滅させ, 遮断性能を向上し, 接点消耗を少なくしています 図 1.5 中 大形機種の構造 AC 操作 DC 励磁の電磁石 DC 励磁により消費電力の低減, うなり音の防止, コイル定格のワイド化を実現しています サージ吸収器を内蔵し, コイルの開閉サージが外へ出ません 3
1.2.2 サーマルリレーサーマルリレーはヒータとバイメタルを組合せた熱動部分と, これにより作動する機構部分, 及び制御回路の開閉を行う接点から構成されています ヒータにはモータの電流が流れ, モータが過負荷状態になって電流が増大するとヒータの発熱量も増え, バイメタルが加熱されて湾曲し, 図 1.6 に示す押し板を動かします これが機構部の作動レバーに作用し機構部が反転して b 接点を開きます この b 接点で電磁接触器の操作コイルの励磁を解き, 主接点を開路してモータを停止させます サーマルリレーが動作した後は, モータの過負荷原因を調査し, 解決してからサーマルリレーのリセットバーを押してリセットします サーマルリレーには電磁接触器の操作コイルを OFF するための b 接点のほかに a 接点を持っているので, この a 接点を表示灯などの回路に使用することによってモータの過負荷表示をすることができます 図 1.6 サーマルリレーの構造 4
1.3 規格と性能電磁開閉器は JIS あるいは JEM の規格に準拠して定格や性能を表示しています 選定をする場合にも, 規格をもとにして判断すると判り易いので以下に説明します 1.3.1 電磁接触器 (JISC8201-4-1) 性能は, 以下の級, 号, 種の 3 項目で規定されています 級 : 接点で閉路 ( 投入 ), 遮断できる電流容量を表します 表 1.1 閉路 遮断電流容量 ( 定格使用電流に対する倍数 ) 区分級別代表的適用例閉路遮断 1.5 流接触器AC-1 無誘導又は低誘導負荷, 抵抗炉 1.5 AC-5a 放電灯制御装置の開閉 3 3 AC-2 (1) 巻線形誘導電動機の始動 (2) 運転中の巻線形誘導電動機の停止 4 4 AC-3 (1) かご形誘導電動機の始動 (2) 運転中のかご形誘導電動機の停止 10 8 (1) かご形誘導電動機の始動 AC-4 (2) かご形誘導電動機のプラッギング 12 10 (3) かご形誘導電動機のインチング AC-6a AC-6b た時の突入電流は始動電流よりさらに大きくなります 交AC-5b 変圧器の開閉コンデンサバンクの開閉白熱灯の開閉 ー - 1.5 1.5 ー - インチング : 寸動またはジョギングともいいモータのチョイ回しを頻繁に行うことで, 始動電流を開閉す ることになり過酷な責務となります プラッギング : 正転中のモータを急激に逆転に切り換え, 制動または逆転させることをいい, 逆転に投入し 5
一般的に使用されるかご形モータでは AC-3 級, すなわち閉路が定格使用電流の 10 倍, 遮断が 8 倍の電流容量が要求されます これはモータの始動電流が全負荷電流 ( 定格電流 ) の約 5 ~ 8 倍流れるため, これを開閉する性能が要求されるからです また, 電熱など始動時の突入電流がほとんど無い抵抗負荷には AC-1 級を適用しますが, 白熱電灯, 蛍光灯, 水銀灯などは閉路時に突入電流や始動電流が流れるため, モータ負荷の場合と同様に AC-3 級で選定することを推奨します このように級別は電磁接触器に適用できる負荷の種類を示すことになります また, 逆に同一の電磁接触器でも定格を変えることにより各種の負荷に適用できます なお, 後述の電気的開閉耐久性試験の時の試験責務もこの級別によって決めています 号 :1 時間あたりの可能な開閉頻度を表します この場合は電流の開閉動作を 1 回としています 号別と開閉頻度の関係を表 1.2 に示します 種 : 機械的及び電気的耐久性を表します 機械的耐久性は, 接点には通電しないで操作コイルに通電して電磁接触器を動作させます 電気的耐久性は主回路に表 1.4 の級別に応じた電流を流し, 閉路, 遮断を繰り返して行います AC-3 級では定格使用電流の 6 倍を閉路し,1 倍を遮断して試験しますが, これはかご形モータを想定したものです 機械的耐久性と電気的耐久性はそれぞれ別々に表示されます ( 例 :1-0 種 機械的耐久性 500 万回以上, 電気的耐久性 100 万回以上 ) 表 1.2 開閉頻度 表 1.3 開閉耐久性 表 1.4 電気的耐久性 0 1 2 3 4 5 6 回 / 時 1800 1200 600 300 150 30 6 種別 0 1 2 3 4 5 6 機械的耐久性 1000 万回以上 500 万回以上 250 万回以上 100 万回以上 25 万回以上 5 万回以上 0.5 万回以上 電気的耐久性 100 万回以上 50 万回以上 25 万回以上 10 万回以上 5 万回以上 1 万回以上 0.1 万回以上 交流接触AC-2 2.5 2.5 AC-3 6 1 区分器号別 級別 閉路 遮断 AC-1 1 1 AC-4 6 6 1 定格使用電流に対する倍数 2 AC-5a ~ AC-6b は規定なし 現在, 国内で使用されている電磁接触器の大部分は,AC-3 級 1 号 1-1 種 ( 名板に AC-3 1 1-1 と表示 ) 以上の性能を持っており, また, これにより定格表示を行っています 電磁接触器はこの性能を持たせることにより, ほとんどの負荷に使用できます 6
1.3.2 サーマルリレー (JISC8201-4-1) サーマルリレーは保護の対象が, 主にかご形モータですのでモータの熱的な特性に合わせて動作特性が規定されています 表 1.5 動作特性の規格値 図 1.7 サーマルリレーの動作特性 整定電流の倍数 1.05 1.2 1.5 7.2 注 1. 上表は周囲温度補償付の基準周囲温度 20 における規定値 t1 :7.2 倍電流のときのサーマルリレー動作時間 ( 最大 ) t2 :7.2 倍電流のときのモータ巻線許容時間 ( 最小 ) t2-t1 : 保護の余裕時間 動作時間 トリップクラス 5 10A 10 20 30 動作しない 2 時間以内 2 分未満 5 秒以内 2 分未満 2 秒を超え 10 秒以内 4 分未満 8 分未満 12 分未満 4 秒を超え 10 秒以内 6 秒を超え 20 秒以内 9 秒を超え 30 秒以内 モータの保護の主目的は巻線の焼損保護です モータの巻線に流れる電流と, 巻線が許容温度に達するまでの時間の関係は図 1.7 に示すモータ熱特性のようになっています このモータを保護するためには, サーマルリレーの動作特性がこれより下側にあって早く動作する必要があります これについて JISC8201-4-1 では表 1.5 のように規定しています この表で,1.2 倍と 1.5 倍は連続的な過負荷を想定し, ホットスタート (100% 電流通電温度飽和状態 ) で規定しています また 7.2 倍はモータの始動電流が流れ続ける拘束状態を考えた値で, コールドスタート ( ヒータが周囲温度と同一 ) で規定しています サーマルリレーはこのような特性で, かご形モータの過負荷, 拘束, 欠相運転などによる焼損を防止します 1.3.3 各種モータ保護リレー (1) モータ保護リレーの分類モータ保護リレーを保護, 動作時間, 加熱素子数 ( 検出素子数 ), 復帰方式などによって分類すると, 次のようになります a. 保護による分類 過負荷保護形 (1E) TH- 形 過負荷 欠相保護形 (2E) TH- KP/KF 形 過負荷 欠相 反相 ( 逆相 ) 保護形 (3E) ET 形 b. 動作時間による分類 標準形 ( トリップクラス :10A 又は 10) TH- /KP 形 速動形 ( トリップクラス :5) TH- KF/FS 形 遅動形 ( トリップクラス :30) 飽和リアクトル方式 TH- SR 形 飽和 CT 方式その他 c. 加熱素子数 ( 検出素子 2 素子形 TH- 形 数 ) による分類 3 素子形 TH- KP 形 d. 復帰方式による分類手動復帰式自動復帰式手動 自動復帰切換式 e. 周囲温度補償装置による分類 周囲温度補償装置付周囲温度補償装置無 f. 過負荷耐量による分類標準 ( 整定電流の最大値の 8 倍 ) 短絡保護専用遮断器と組合せて使用するもの ( 整定電流の最大値の 13 倍 ) 7