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Transcription:

明細書の記載がクレーム解釈に与える影響 ~Apple 社 FaceTimeに対する特許権侵害訴訟 ~ 米国特許判例紹介 (112) 2014 年 10 月 28 日執筆者弁理士河野英仁 SCIENCE APPLICATIONS INTERNATIONAL CORPORATION, Plaintiff-Appellee, v. APPLE INC., Defendant-Appellant, 1. 概要特許明細書を作成する上で悩ましいのが 従来技術 背景 発明の概要 (Summary of the Invention) 等の 実施例の前に記載する項目である これらの項目についてどこまで詳しく書けば良いのであろうか 当然詳しく書けば書くほど 審査官及び第三者も発明の特定及び理解が容易となる その一方で 権利範囲が限定解釈される危険性もある 本事件ではクレームの文言解釈に当たり 発明の背景及び発明の概要の記載が参酌さ れ これらの記載に基づきクレーム範囲が限定解釈された 2. 背景 (1) 特許の内容原告は インターネット等のネットワーク上のセキュリティを提供する技術に関する 4つの特許を所有している 特許番号は以下のとおりである U.S. Patent Nos.6,502,135 (135 特許 ) 7,418,504 (504 特許 ) 7,490,151 (151 特許 ) 及び 7,921,211 (211 特許 ) 本稿ではそのうち 211 特許及び 504 特許に関し説明を行う 504 特許及び 211 特許は 共にドメイン名を解決し 安全通信リンク secure communication links. を確立することを促進するドメイン名サービス (domain name service ( DNS )) システムを開示している 参考図 1 は 504 特許の説明図である 1

参考図 1 504 特許の説明図 クライアントコンピュータのアプリは 安全ドメイン名データベースを含む安全ドメイン名サービスへ ドメイン名を含み かつ 安全通信アドレスに対応するクエリーを送信する これにより ユーザは クライアントコンピュータと安全ターゲット通信アドレスとの間で安全な通信リンクを確立することができる 争点となったクレームは以下のとおりである 1. 安全な通信リンクを確立すべくドメイン名サービスを提供するシステムにおいて 複数のドメイン名及び対応する通信アドレスを記憶し 通信アドレスの要求を受信し ドメイン名サービスシステムが安全な通信リンクを確立することをサポートする指示を含むべく 通信網に接続されるよう構成されるドメイン名サービスシステムを備える (2) 訴訟の経緯原告は Apple( 被告 ) が提供する FaceTime が特許権を侵害するとして連邦地方裁判所に提訴した 特に 原告は FaceTime を iphone, ipod, ipad (ios デバイス ) 及び Macコンピュータを通じて実行される被告のサーバが 504 特許の 1,2,5,16,21 及び 27 211 特許のクレーム 36 37 47,51を侵害すると主張した 2

FaceTime は アップル製品間で安全な TV 電話を行うことができる FaceTime を 使用する場合 電話をかける側は 相手方の電子メールアドレスまたは電話番号を 電 話をかける側の装置 ( 例えば iphone) に入力する その後 案内が Apple の FaceTime サーバへ送信され 次いで 当該案内は受け側の 装置へ送信される 受け側は 電話の承認 または 拒否を行う 承認された場合 FaceTime サーバは 安全な FaceTime 通話を確立する 一旦通話が確立されれば 装置はパケットとして安全な通信パスを通じて FaceTime サーバを通過することなく 映像及び音声データを送信する 地裁は被告の特許権侵害を認め 損害賠償 3 億 6816 万ドル ( 約 400 億円 ) もの損害賠 償を認める判決をなした 3.CAFC での争点争点 : 発明の概要 (Summary of the Invention) の記載に限定解釈されるか争点となったのはクレームの 安全な通信リンク secure communication link である 地裁は 安全な通信リンク を データを安全に提供するダイレクト通信リンク であると解釈し 同じく安全な通信リンクを確立する FaceTime は技術的範囲に属すると判断した これに対し 被告は 安全な通信リンク は さらに傍受を防止するための匿名性 をも必要としており 技術的範囲に属さないと反論した 3

匿名性 暗号化 匿名性 すなわち クレームにおける 安全な通信リンク は 通信するデータを暗号化することによる安全化だけを意味するのか あるいは 端末 ( 送信者 受信者 ) のアドレスを特定されないようにすべく匿名性までをも要求しているのか否かが争点となった 前者だけであれば FaceTime は侵害 後者までを含んで限定解釈された場合 非侵害となる 4.CAFC の判断結論 : 発明の背景及び発明の概要の記載により限定解釈すべきである CAFC は被告の主張を認め 安全な通信リンク は 暗号化による安全化だけではなく匿名性までをも含むと判断した CAFC は 明細書の記載から 匿名性は発明の主要なポイントの一つとして記載されていると判断した 例えば 発明の背景 には 非常に多くの方法は インターネットでの通信のために安全性及び匿名性を提供することを提案し 導入している と述べている そして これら 2つのコンセプトを インターネットを介して 2つのコンピュータ端末の通信間で起こりえる傍受に対する同等のセーフガードとして定義している 匿名性は 傍受者に参加している端末の特定を防止でき またその内容の安全を保つべく データそのものの保護にも言及している CAFC はさらに発明の概要の記載に注目した 発明の概要には TARP(Tunneled Agile Routing Protocol) として知られる 2 層暗号 フォーマット を使用することにより どのようにして発明が安全性を進化させたかが 4

記載されている 第 1に 内層 はデータそのものを保護 (secure) しており 第 2に 外層 はデータの 真の行き先 true destination を隠している 発明の概要がこれら2つの特性に対し 重要性を与えているという事実は データの安全性以上のものを必要としているということを強く示している 発明の概要の記載は 好ましい実施形態での記載よりもクレームの文言を定義するにあたり重視される 1 また実施例の記載においても 文言 安全な通信リンク と通信者 ( 送信者 受信者 ) を秘匿する VPN を交互に使用している これは 発明者が 争点となっている文言 を VPN により提供される匿名性を含むように意図していることを示唆している 例えば ソフトウェアモジュール 3309が インストールされる場合 または ユーザがオフラインの場合に ユーザは コンピュータネットワーク 3302 により確立された全ての通信リンクが 安全な通信リンクであるということを 選択的に規定することができる このように 通信リンクが確立されているときはいつでも リンクは VPN リンクである と記載されている 同様に 以降の各パラグラフでは コンピュータ 3301 のユーザはオプションで プロキシコンピュータ 3315 を通じて安全な通信リンクを選択することができる 従ってコンピュータ 3301 は プロキシコンピュータ 3315 を通じて安全なサーバコンピュータ 3320 と VPN 通信リンクを確立することができる と述べている これらの例双方において 明細書は 文言 安全な通信リンク と VPN とを同等に扱っている 以上の理由により CAFC は 504 及び 211 特許で使用されている文言 安全な通信 リンク はさらに匿名性を必要とすることから 匿名性を必要としない FaceTime は技 術的範囲に属さないと判断した 5. 結論 CAFC は 地裁の技術的範囲に関する判断を無効とする判決をなした 6. コメント 1 C.R.Bard, Inc. v. U.S. Surgical Corp., 388 F.3d 858, 862 (Fed.Cir. 2004)) 5

本事件ではクレームには 安全な通信 と広く記載されていたが 発明の背景 発明 の概要の記載に基づきさらに匿名性まで要する範囲にまで限定解釈された 米国特許法規則 1.73 は発明の概要の記載内容に関し以下のとおり規定している 規則 1.73 発明の概要発明の内容及び要旨を表示する発明の簡単な概要は, 発明の対象についての陳述を含むことができ, 発明についての詳細な説明に先行しなければならない 当該概要が記載されたときは, その概要はクレームされている発明と相応していなければならず, また, 詳述される対象は, クレームされている発明の対象でなければならない すなわち 規則で要求しているのは 発明の概要とクレーム発明とが対応していること 及び 記載内容がクレーム発明の対象であること の 2 点である クレームに記載した内容より一歩進んで詳細な技術内容 課題 目的等までも記載することを要求していない 当然詳しく記載すればクレームの意味 発明の理解の助けにはなる しかしながら 本事件で判示されたように 発明の概要部分の記載は あくまで一例として記載される 実施例よりも 権利範囲解釈にあたり重点的に参酌されることとなる 従って 発明の概要部分についてはクレームに対応させてほとんどそのまま記載する にとどめておくことが望ましい 詳細な技術内容については一例として実施例に記載す べきである 判決 2014 年 9 月 16 日以上 関連事項 判決の全文は連邦巡回控訴裁判所のホームページから閲覧することができる [PDFファイル ] http://www.cafc.uscourts.gov/images/stories/opinions-orders/13-1489.opinion.9-12- 2014.1.PDF 6