バッテリーの研究開発拠点に関する整理メモ

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日本市場における 2020/2030 年に向けた太陽光発電導入量予測 のポイント 2020 年までの短 中期の太陽光発電システム導入量を予測 FIT 制度や電力事業をめぐる動き等を高精度に分析して導入量予測を提示しました 2030 年までの長期の太陽光発電システム導入量を予測省エネルギー スマート社

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力率 1.0(100%) の場合 100% の定格出力まで有効電力として発電し 出力できます 力率 0.95(95%) の場合は 定格出力の 95% 以上は有効電力として出力できません 太陽光発電所への影響 パワコンの最大出力が 95% になるので 最大出力付近ではピークカットされます パワコンの出

リチウムイオン二次電池を用いた再生可能エネルギーの系統連系円滑化システムの開発,三菱重工技報 Vol.48 No.3(2011)

第 2 章各論 1. フェーズ 1( 水素利用の飛躍的拡大 ) 1.2. 運輸分野における水素の利活用 FCV は 水素ステーションから車載タンクに充填された水素と 空気中の酸素の電気化学反応によって発生する電気を使ってモーターを駆動させる自動車であり 一般ユーザーが初めて水素を直接取り扱うことにな

今回の調査の背景と狙いについて当社では国のエネルギー基本計画の中で ZEH 普及に関する方針が明記された 200 年より 実 邸のエネルギー収支を調査し 結果から見えてくる課題を解決することが ZEH の拡大につなが ると考え PV 搭載住宅のエネルギー収支実邸調査 を実施してきました 205 年


1 タウンメガソーラーの実現 7 2 街の発展を想定したメガソーラー整備及び連結 8 3 北九州水素タウン 9 4 風の道に沿った小型風力発電の導入 10 5 工場廃熱の活用 ( 工場廃熱の植物工場等利用 ) 11 6 工場廃熱の活用 ( バイナリー発電 ) 12 7 次世代 BDF の開発などバイ

お知らせ


( 出所 ) 中国自動車工業協会公表資料等より作成現在 中国で販売されている電気自動車のほとんどは民族系メーカーによる国産車である 15 年に販売された電気自動車のうち 約 6 割が乗用車で 約 4 割弱がバスであった 乗用車の中で 整備重量が1,kg 以下の小型車が9 割近くを占めた 14 年 8

新とする理由⑴ 政策目的 車体課税については 平成 23 年度税制改正大綱において エコカー減税の期限到来時までに 地球温暖化対策の観点や国及び地方の財政の状況を踏まえつつ 当分の間として適用される税率の取扱いを含め 簡素化 グリーン化 負担の軽減等を行う方向で抜本的な見直しを検討 することとされて

次世代エネルギーシステムの提言 2011 年 9 月 16 日 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター Copyright (C) 2011 The Japan Research Institute, Limited. All Rights Reserved.[tv1.0]

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目次 1. 策定の趣旨 2 2. 水素利活用による効果 3 3. 能代市で水素エネルギーに取り組む意義 5 4. 基本方針 7 5. 水素利活用に向けた取り組みの方向性 8 6. のしろ水素プロジェクト 10 1

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H28秋_24地方税財源

熱効率( 既存の発電技術 コンバインドサイクル発電 今後の技術開発 1700 級 ( 約 57%) %)(送電端 HV 級 ( 約 50%) 1500 級 ( 約 52%

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(2) 制度の目標 1 過去の取り組みとその評価本事業は 前述の米国のSBIRをモデルに 再生可能エネルギー分野等の技術シーズを提案公募により新規に実施するものである 2 本事業の目標中小企業等 ( ベンチャー含む ) の保有する潜在的技術シーズを活用した技術開発の推進を支援するとともに 新事業の創

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4 本事業のねらい中小企業等 ( ベンチャー企業を含む ) の保有する潜在的技術シーズを活用した技術開発の推進を支援するとともに 新事業の創成と拡大等を目指した事業化 ビジネス化を支援することを目的とする そのため 新エネルギーの分野における技術の選択肢を拡大するとともに 中小 ベンチャー企業等の革

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これは 平成 27 年 12 月現在の清掃一組の清掃工場等の施設配置図です 建替え中の杉並清掃工場を除く 20 工場でごみ焼却による熱エネルギーを利用した発電を行っています 施設全体の焼却能力の規模としては 1 日当たり 11,700 トンとなります また 全工場の発電能力規模の合計は約 28 万キ

参考資料3(第1回検討会資料3)

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バイオマス比率をめぐる現状 課題と対応の方向性 1 FIT 認定を受けたバイオマス発電設備については 毎の総売電量のうち そのにおける各区分のバイオマス燃料の投入比率 ( バイオマス比率 ) を乗じた分が FIT による売電量となっている 現状 各区分のバイオマス比率については FIT 入札の落札案

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1 平成 22 年度の取組み結果 平成 22 年度の取り組み結果は 下記のとおりです 温室効果ガスの総排出量 平成 22 年度 温室効果ガス総排出量 (t-co2) 26,876 27, % 具体的取り組み 平成 22 年度 電気使用量 (kwh) 37,334,706 38,665,4

競争優位の獲得

POCO 社の EDM グラファイト電極材料は 長年の技術と実績があり成形性や被加工性が良好で その構造ならびに物性の制御が比較的に容易であることから 今後ますます需要が伸びる材料です POCO 社では あらゆる工業製品に対応するため 各種の電極材料を多数用意しました EDM-1 EDM-3 EDM

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2 表 1 電池特性評価一覧 クル寿命特性評価と同様の分析をすると共に,X 線 CT 撮影を実施した. 5フロート特性評価は 60 雰囲気下において CC 充電で SOC=100%( 終止電圧 4.2 V) とした電池を 4.2 V で 168 時間の期間,CV 充電することにより行った. 評価前後

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目 次 1. トップランナー制度について 1トップランナー制度の概要について 3 2トップランナー基準に関する基本的な考え方について 5 3トップランナー基準に関する主な規定について 8 4トップランナー基準策定及び運用の流れについて 9 2. ラベリング制度について 1ラベリング制度の概要について

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はじめに 本書は NEDO 技術委員 技術委員会等規程第 32 条に基づき研究評価委員会において設置された 太陽光発電多用途化実証プロジェクト ( 事後評価 ) の研究評価委員会分科会 ( 平成 29 年 10 月 16 日 ) 及び現地調査会 ( 平成 29 年 9 月 4 日於株式会社カネカ未来

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AISIN GROUP REPORT 2011

Transcription:

NEDO 二次電池技術開発ロードマップ (Battery RM2010) 平成 22 年 5 月 NEDO 燃料電池 水素技術開発部蓄電技術開発室 - 0 -

< 目次 > 目次 1 NEDO 二次電池技術開発ロードマップ (Battery RM2010) の策定について 2 はじめに 3-4 二次電池の用途分類について 5-9 NEDO 二次電池技術開発ロードマップ (Battery RM2010) 10-17 NEDO 二次電池技術開発ロードマップ (Battery RM2010) 技術マップ 18-32 NEDO 二次電池技術開発ロードマップ (Battery RM2010) 検討スケジュール 委員名簿 WG 委員名簿 33-36 - 1 -

<NEDO 二次電池技術開発ロードマップ (Battery RM2010) の策定について > 資源に乏しい我が国が 将来にわたり持続的発展を達成するため 革新的なエネルギー技術の開発 導入 普及によって 各国に先んじて次世代型のエネルギー利用社会の構築に積極的に取り組んでいくことは極めて重要である 我が国の政策的にもプラグインハイブリッド自動車 電気自動車 燃料電池自動車及び高性能電力貯蔵技術が Cool Earth- エネルギー技術革新技術計画 において 重点的に取り組むべきエネルギー革新技術として選定されるなど 重要性も高い このような情勢の中 NEDOは産学官の総力を結集し リチウムイオン二次電池を中心とする二次電池技術開発事業及び基準 標準等の基盤整備事業等の推進機関として活動を展開している 技術開発事業を効率的 効果的に推進するためには 常にステークホルダー ( 関係者 ) 間で 技術開発シナリオ を共有する必要がある そこで 2009 年 6 月には 最も将来の普及が期待される自動車用の二次電池について 次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発ロードマップ2008 を策定し 我が国が取り組むべき技術課題を明確にするとともに産官学の有識者で情報を共有することで 効率的かつ的確な研究開発へ先導する取組を開始した しかし 二次電池の用途は自動車以外にも 新エネルギー導入拡大のために必要とされる電力貯蔵蓄電システムの他 パーソナルコ ンピューターや携帯電話などの民生品 フォークリフトやクレーン バックアップ電源などの産業機械など多岐に渡る ここで求められる二次電池の性能はそれぞれの用途によって異なることから その都度各仕様に合わせて製品化開発を行っているのが現状である また 特に高性能が求められる自動車用二次電池に技術開発力が集中している反面 その他自動車以外の用途の二次電池については要求される性能すらも広くは知られていない このような背景の下 二次電池の用途ごとに求められる性能を整理し 共通化可能な技術領域を明確にした上で技術開発課題の方向性をまとめ 今般 二次電池技術開発ロードマップを策定した なお 本ロードマップに示した自動車用途 (EV, HEV, PHEV) の二次電池のロードマップは 次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発ロードマップ2008 の内容をそのまま踏襲している 本ロードマップの策定により 二次電池における技術開発課題とターゲットを共有化し 我が国の産学官の総力を結集した効率的かつ的確な研究開発により様々な二次電池が開発され 二次電池産業の成長が促進されると共に産業基盤の裾野が一層広がることを期待する - 2 -

< はじめに > 2007 年 5 月に安倍元総理のイニシアティブ 美しい星 50( クールアース50) が発表され 世界全体の温室効果ガス排出量を現状に比して2050 年までに半減する という長期目標が提案された この目標は 従来の技術の延長では実現が困難であり 革新的技術の開発が不可欠である このため Cool Earth-エネルギー革新技術計画 - として 2050 年を見通した上でエネルギー分野における革新的な技術開発の具体的な取組の方針が図 1のとおり取りまとめられた エネルギー源ごとに供給側から需要側に至る流れを俯瞰しつつ 効率の向上と低炭素化の両面から CO 2 大幅削減を可能とする 2 1 の革新技術が選定されている 大幅削減を実現するには 既に実用化されている技術の改良と普及が重要であることは言うまでもないが ここでは 既存技術の延長線上にない革新的な技術が検討の対象とされた 2050 年の大幅削減に向けて 効果的 効率的にエネルギー技術開発を推進するため 我が国が重点的に取り組むべきエネルギー革新技術開発 21 の課題の一つとして運輸部門ではプラグインハイブリッド自動車 電気自動車が また 部門横断の課題として 高性能電力貯蔵が選定されている 図 1 重点的に取組むべきエネルギー革新技術 ( 出典 : 経済産業省 Cool Earth- エネルギー技術革新技術計画 ) 更に 低炭素社会づくり行動計画 (2008 年 7 月閣議決定 ) では 2030 年頃に太陽光発電を5300 万 kw 導入する目標を掲げるなど 新エネルギーの開発や導入の促進が我が国の政策として進められている 太陽光 風力などの再生可能エネルギーはエネルギー源の多様化や地球温暖化対策の観点から重要ではあるものの - 3 -

現時点では経済性や出力安定性 余剰電力の発生といった 普及へ向けての課題が存在し それらの解決に向けた技術開発の推進が重要である 特に 再生可能エネルギーの発電電力を一時的に貯蔵できる蓄電システムは 出力安定や余剰電力対策に資する技術の一つとして期待されている また エネルギー消費量の増加が著しい運輸部門における石油依存度はほぼ100% の状況であり 今後 エネルギーの効率的な利用 石油代替エネルギーへの移行により 石油依存度を低減していく必要性が指摘されている それゆえ 石油依存度を低減し 多様なエネルギーで しかも低環境負荷で走行することが可能なプラグインハイブリッド自動車 電気自動車及び燃料電池自動車等の次世代クリーンエネルギー自動車の開発 普及が期待されている このような中 NEDOでは次のような二次電池の技術開発を2 010 年度に実施する 1 系統連系円滑化蓄電システム技術開発 (2006 年度 ~2010 年度 ) 風力発電及び大規模太陽光発電の出力変動を緩和するために必要な大型 安価 長寿命の蓄電システムを開発する 2 次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発 ( 通称 Li-EAD) (2007 年度 ~2011 年度 ) 次世代のハイブリッド自動車や電気自動車に使用する高性能リチ ウムイオン電池や新しい原理の二次電池 およびモーター等の周辺機器を開発する 3 革新型蓄電池先端化学基礎研究事業 ( 通称 RISING) (2009 年度 ~2015 年度 ) 産学官が集中して研究する拠点を整備し 最先端の評価 分析技術を駆使して電池の基礎的な反応原理 反応メカニズムを解明することで既存の二次電池の信頼性向上等の性能向上および革新型二次電池の実現に向けた基礎技術を確立する 4 蓄電複合システム化技術開発 (2010 年度 ~2014 年度 ) 分散電源の大量導入を可能にするため 需要側に設置する二次電池及びその利用技術の開発 二次電池技術を用いたエネルギーマネージメントシステムの実証 国際展開も視野に入れたシステムとしての評価技術開発 標準化等に取り組む 5 蓄電池材料共通評価技術開発 (2010 年度 ~2014 年度 ) 高性能二次電池を実現するために開発される新材料の性能や特性について 的確かつ迅速に評価できる技術を開発する これらの研究開発成果が 多様な二次電池の用途ごとの高性能化や早期実用化の促進に直接的に貢献するのみならず その他多くの波及効果により 今後も我が国が二次電池分野において国際的に主導的な役割を果たすことを期待している - 4 -

< 二次電池の用途分類について > 1. 二次電池の種類二次電池にはいろいろな種類があり 現在主に使用されているものとしては 鉛電池 ニッケルカドミウム電池 ニッケル水素電池 ナトリウム硫黄電池 リチウムイオン電池が挙げられ これら各種二次電池は 今後も技術が進展し持続的に普及するものと考えられる この中でもリチウムイオン電池は コンパクトで軽く 大きな出力が得られるという利点から 民生品を中心に近年急速に普及し 更に今後 電気自動車 (EV) 等をはじめ 産業機器や電力貯蔵用途に使用するような大きな蓄電システムへの適用も期待されている このような背景から 本ロードマップはリチウムイオン電池の更なる高性能化 普及を想定しつつ さらにはその先にある革新的な二次電池の登場を想定して描いた 2. 二次電池の用途本ロードマップを策定するに当たり まず二次電池が使われている主な用途を 運輸部門 民生部門 産業部門 の分野からそれぞれ選定した ( 表 1 参照 ) これら選定した用途は ある程度の二次電池生産量規模が期待され 技術的に具体性をもって検討されているものであるが 当然ながらその他の用途につい 表 1. 対象用途 運輸部門 産業部門 EV 電気自動車 ATM 用バックアップ HEV ハイブリッド自動車 エレベーター ( バックアップ ) PHEV フ ラク インハイフ リット 自動車 ハイブリット照明 電動二輪 セキュリティ用防犯システム ディーゼルHEV 鉄道車両 直流電源装置 民生部門 投光機 ノートパソコン 溶接機 携帯電話 フロアマシン デジタルビデオカメラ 放送用カメラ スピーカー ハンディーターミナル 道路用警告 案内標識 コードレス電話 道路鋲 デジタルオーディオプレーヤー 業務用ロボット ( 警備 ) 携帯ゲーム ゴルフカート 携帯 TV DVD AGV 業務用ハンディプリンタ 高所作業車 電動歯ブラシ シェーバー 除雪機 (HEV) ロボット ( 介護 機能 ペット型 ) 電動式車椅子 ( シニアカー ) 電動式玩具 UPS 掃除機 無線基地局 AED( 院内使用 ) 通信ビル用バックアップ電源 電動アシスト自転車 施設 工場向け蓄電システム 住宅用蓄電システム 出力変動緩和 ( 風力発電など ) 充電式電動工具 ( 一般用 ) 充電式電動工具 ( プロ用 ) 油圧式 HEVショベル フォークリフト - 5 -

ても二次電池の使用は考えられている 例えば 既に実用化しているものとして 体内に埋め込む医療用小型電池や人工衛星用途などがあり 研究開発中のものでは 電動小型船舶やライトレールを含む電動鉄道車両 急速充電器用電力貯蔵バッテリーなど具体化されているもののほか 介助ロボットなど将来への適用拡大も期待される 表 1に記載されていないバスやトラック クレーンなどのディーゼル車両や建設機械などの用途は 同じディーゼルハイブリッド用途の油圧式 HEVショベルや除雪機 (HEV) ディーゼルH EV 鉄道車両を代表として記載した 3. 用途分類本ロードマップを作成するにあたり 用途ごとに求められる性能を調査のうえ分類し 二次電池のタイプを決定した 具体的には まず 対象用途それぞれに要求される性能値を明確化し 次にその結果から 要求性能が厳しい用途や市場規模の大きい用途を抽出して それらを主用途と定め 表 2のとおり7つのタイプに分類した また これら7つのタイプは その求められる性能から大きく エネルギー密度指向型 出力密度指向型 寿命指向型 と3つの特性に分けることが出来ることも示した 図 2では上記 7つのタイプを 縦軸 出力密度 横軸 重量エネルギー密度 にプロットして 俯瞰的に示した 表 2に示した用途ごとの要求性能による二次電池の分類では 主用途の他に 展開可能用途 が記されている これは主用途の要求性能が満たされれば展開可能となる別の用途を示しているが その場合は適用する二次電池がオーバースペックとなるケースがあり得る 以下に ぞれぞれのタイプごとの特徴を記す タイプ1 EVなどを主用途としたグループである エネルギー密度向上 出力密度向上 カレンダー寿命向上 コストの削減が主として求められる 7つのタイプの中で最もエネルギー密度の向上が求められている タイプ2 フォークリフトを主用途としたグループである エネルギー密度向上 サイクル寿命向上 コスト削減が主として求められる タイプ1に比べエネルギー密度が小さくてよいが サイクル寿命の向上が求められている タイプ3 PC 携帯電話 デジタルビデオカメラを主用途としたグループである 主に民生部門の用途全般がこのグループに属する 二次電 - 6 -

池に求められる要求性能は現状でほぼ満たされているものの エネルギー密度などがより向上すれば製品力の更なる強化につながるものもある タイプ4 HEV/PHEV ディーゼルHEV 鉄道車両 油圧式 HEVショベルを主用途としたグループである エネルギー密度向上 出力密度向上 コスト削減が主として求められる 7つのタイプの中で最も出力密度の向上が求められている タイプ5 UPS( 無停電電源装置 ) を主用途としたグループである カレンダー寿命 コスト削減が求められる タイプ4に比べ出力密度が小さくてよいが カレンダー寿命の向上が求められる タイプ6 無線基地局用バックアップ 通信ビル用バックアップを主用途としたグループである カレンダー寿命向上 コスト削減が主として求められる用途である 7つのタイプの中で最もカレンダー寿命の向上が求められている タイプ7 負荷平準化を目的とした施設工場向け蓄電システム 住宅向け蓄電システム 風力発電などの出力安定化用のほか 太陽光発電大量普及時の余剰電力対策の1つとして 次世代送配電ネットワーク研 究会 ( 経済産業省 2010 年 4 月報告 ) で検討された系統安定化用を主用途としたグループである これらは 今後新たに二次電池が普及する事が期待される用途である サイクル寿命向上 カレンダー寿命向上 コスト削減が求められており 7つのタイプの中で最もサイクル寿命の向上が求められている - 7 -

表 2. 用途ごとの要求性能による二次電池の分類 指向する電池性能 分類 主用途 展開可能用途 タイプ 1 エネルギー密度向上 出力密度向上 カレンダー寿命向上 コスト削減 EV 電動二輪 フォークリフト / UPS / 無線基地局用バックアップ / 通信ビル用バックアップ / エレベーターバックアップ / 投光機 / 溶接機 / フロアマシン / 放送用カメラ スピーカー / 道路鋲 / ゴルフカート / 高所作業車 エネルギー密度指向型 タイプ 2 エネルギー密度向上 サイクル寿命向上 コスト削減 フォークリフト UPS / ATM 用バックアップ / 無線基地局用バックアップ / 通信ビル用バックアップ / エレベーターバックアップ / 投光機 / 溶接機 / 高所作業車 / フロアマシン / 放送用カメラ スピーカー / 道路鋲 / ゴルフカート タイプ 3 現状で要求性能はほぼ満たされており 特定の開発要素はない PC 携帯電話 デジタルビデオカメラ ハンディーターミナル / コードレス電話 / デジタルオーディオプレーヤー / 携帯ゲーム / 携帯 TV DVD / 業務用ハンディプリンタ / 電動歯ブラシ / ロボット ( 介護 ) / 電動式玩具 / 電動アシスト自転車 / 業務用ロボット ( 警備 ) / 電動式車椅子 ( シニアカー ) 出力密度指向型 タイプ 4 エネルギー密度向上 出力密度向上 カレンダー寿命向上 コスト削減 タイプ 5 カレンダー寿命 コスト削減 HEV/PHEV ディーゼル HEV 鉄道車両 油圧式 HEV ショベル 電動工具 ( プロ使用 ) / 除雪機 (HEV) / UPS / ATM 用バックアップ / ハイブリット照明 / セキュリティー用防犯システム / 直流電源装置 / AGV/AED( 院内使用 ) / 電動工具 ( 一般使用 ) UPS ATM 用バックアップ / ハイブリット照明 / セキュリティー用防犯システム / 直流電源装置 / AGV / 電動工具 ( 一般使用 ) 寿命指向型 タイプ 6 カレンダー寿命向上 コスト削減 タイプ 7 サイクル寿命向上 カレンダー寿命向上 コスト削減 無線基地局用バックアップ 通信ビル用バックアップ 出力安定化 ( 風力発電等 ) 系統安定化 施設工場向け電力蓄電システム ( 負荷平準化 ) 住宅向け蓄電システム ATM 用バックアップ / エレベーターバックアップ / 投光機 / 溶接機 / フロアマシン / 放送用カメラ スピーカー / 道路鋲 / ゴルフカート / 高所作業車 フォークリフト / エレベーターバックアップ / 投光機 / 溶接機 / フロアマシン / 放送用カメラ スピーカー / 道路鋲 / ゴルフカート / 高所作業車 - 8 -

3,000 出力密度指向型 タイプ 4 HEV/PHEV/ 油圧式 HEV ショベル / ディーゼル HEV 鉄道車両 2,000 タイプ 5 UPS 出力密度 [W/kg] 1,000 寿命指向型 タイプ 7 住宅向け / 出力安定化 / 系統安定化 / 施設工場向け タイプ 6 無線基地局用バックアップ / 通信ビル用バックアップ エネルギー密度指向型 タイプ 2 フォークリフト タイプ 3 PC/ 携帯電話 / テ シ タルヒ テ オカメラ タイプ 1 EV/ 電動二輪 100 200 300 重量エネルギー密度 [Wh/kg] 図 2. 用途ごとの要求性能による二次電池の分類 ( 俯瞰図 ) - 9 -

NEDO 二次電池技術開発ロードマップ (Battery RM2010) - 10 -

NEDO 二次電池技術開発ロードマップ (Battery RM2010) 開発段階の中間的な目標スペック値より一層の向上が求められるスペック普及に必要なスペック値 ( もしくは普及に向けた開発目標値 ) 二次電池の用途分類 現状 2015 年頃 現状では現 LiB の転用を想定し その値を明記 2020 年頃 2030 年頃 2030 年以降 用途例 容積エネルギー密度 重量エネルギー密度 250Wh/L 400Wh/L 600Wh/L 1000Wh/L 1500Wh/L 100Wh/kg 150Wh/kg 250Wh/kg 500Wh/kg 700Wh/kg 主用途 EV/ 電動二輪 タイプ 1 エネルギー密度向上 出力密度向上 カレンダー寿命向上 コスト削減 出力密度サイクル寿命 カレンダー寿命 コスト ( ユーザー要求値ベース ) 1,000W/kg 現状値 5~8 年 100~200 円 /Wh 1,200W/kg 8~10 年 30 円 /Wh 1,500W/kg 10~15 年 20 円 /Wh 1,000W/kg 10 円 /Wh 革新的二次電池 1,000W/kg 現状値の 1.5 倍 10~15 年 5 円 /Wh 生産規模 1,440,000MWh 6,000 万台電動化の場合 展開可能用途 フォークリフト /UPS/ATM 用バックアップ / 無線基地局用バックアップ / 通信ビル用バックアップ / エレベーターバックアップ / 投光機 / 溶接機 / フロアマシン / 放送用カメラ スピーカー, / 道路鋲 / ゴルフカート / 高所作業車 エネルギー密度指向型 タイプ 2 エネルギー密度向上 サイクル寿命向上 コスト削減 容積エネルギー密度 重量エネルギー密度 出力密度 サイクル寿命 カレンダー寿命 コスト ( ユーザー要求値ベース ) 250Wh/L 100Wh/kg 1,000W/kg 現状値 5~8 年 100~200 円 /Wh 400Wh/L 150Wh/kg 現状値の2 倍 30~60 円 /Wh 600Wh/L 250Wh/kg 1,000W/kg 現状値の 4 倍 8 年 20~80 円 /Wh 生産規模 71,000MWh 現状のエネルギー密度でも対応可能だが 稼働時間延長のためには よりエネルギー密度の向上が求められる 長寿命化による電池交換回数の削減ができる場合 電池交換回数の多い競合製品に対しては 競合価格 20 円に対し 最大 80 円でも優位性を出せる可能性がある 主用途 フォークリフト 展開可能用途 UPS/ATM 用バックアップ / 無線基地局用バックアップ電源 / 通信ビル用バックアップ / / エレベーターバックアップ / 投光機 / 溶接機 / フロアマシン / 放送用カメラ スピーカー / 道路鋲 / ゴルフカート / 高所作業車 容積エネルギー密度 重量エネルギー密度 550Wh/L 200Wh/kg 550Wh/L 200Wh/kg 主用途 PC/ 携帯電話 / デジタルビデオカメラ タイプ 3 現状で要求性能はほぼ満たされており 特定の開発要素はない 出力密度 サイクル寿命 カレンダー寿命 コスト ( ユーザー要求値ベース ) 400W/kg 現状値 5 年 50 円 /Wh 400W/kg 現状値 5 年 50 円 /Wh 生産規模 26,800MWh 現状で要求性能はほぼ満たされており 特定の開発要素はない より高密度 長寿命などが実現すれば尚良い 展開可能用途 ハンディーターミナル / コードレス電話 / デジタルオーディオプレーヤー / 携帯ゲーム / 携帯 TV DVD / 業務用ハンディプリンタ / 電動歯ブラシ / ロボット ( 介護 )/ 電動式玩具 / 電動アシスト自転車 / 業務用ロボット ( 警備 ) / 電動式車椅子 ( シニアカー ) 出力密度指向型 タイプ 4 エネルギー密度向上 出力密度向上 カレンダー寿命向上 コスト削減 容積エネルギー密度 重量エネルギー密度 出力密度 サイクル寿命 カレンダー寿命 コスト ( ユーザー要求値ベース ) 200Wh/L 250Wh/L 500Wh/L 70Wh/kg 2,000W/kg 現状値 5~8 年 100~200 円 /Wh 100Wh/kg 2,000W/kg 8~10 年 30 円 /Wh 200Wh/kg 2,500W/kg 現状値 10~15 年 20 円 /Wh 生産規模 47,500MWh 電動工具などでは 特に現状値でロードマップ以上の性能が必要になる ディーゼルHEV 鉄道車両では 3,500W/kg 程度までが望まれる 主用途 HEV/PHEV/ 油圧式 HEV ショベル / ディーゼル HEV 鉄道車両 展開可能用途 除雪機 (HEV)/ 電動工具 ( プロ仕様 ) / ハイブリット照明 /UPS/ATM 用バックアップ / セキュリティー用防犯システム / 直流電源装置 /AGV/AED( 院内仕様 ) / 電動工具 ( 一般仕様 ) サイクル寿命の現状値 = 約 1000 回 : DOD=100% 1C 放電 初期容量に対して残容量が 85% に達する回数 カレンダー寿命とは 電池に求められる寿命のこと - 11 -

二次電池の用途分類 現状 2015 年頃 2020 年頃 2030 年頃 2030 年以降 現状では現 LiB の転用を想定し その値を明記 用途例 容積エネルギー密度 重量エネルギー密度 200Wh/L 70Wh/kg 200Wh/L 70Wh/kg 主用途 UPS 出力密度指向型 タイプ 5 カレンダー寿命向上 コスト削減 出力密度 サイクル寿命 カレンダー寿命 コスト ( ユーザー要求値ベース ) 2,000W/kg 現状値 5~8 年 100~200 円 /Wh 10~15 年 30~60 円 /Wh 2,000W/kg 現状値 15 年 20~60 円 /Wh 生産規模 37,000MWh 長寿命化による電池交換回数の削減ができる場合 電池交換回数の多い競合製品に対しては 競合価格 20 円に対し 最大 60 円でも優位性を出せる可能性がある 展開可能用途 ATM 用バックアップ / ハイブリット照明 / セキュリティー用防犯システム / 直流電源装置 /AGV / 電動工具 ( 一般使用 ) 寿命指向型 タイプ 6 カレンダー寿命向上 コスト削減 タイプ 7 サイクル寿命向上 カレンダー寿命向上 コスト削減 容積エネルギー密度 重量エネルギー密度 出力密度 サイクル寿命 カレンダー寿命 コスト ( ユーザー要求値ベース ) 容積エネルギー密度 重量エネルギー密度 出力密度 サイクル寿命 カレンダー寿命 コスト ( ユーザー要求値ベース ) 250Wh/L 100Wh/kg 1,000W/kg 現状値 5~8 年 100~200 円 /Wh 250Wh/L 100Wh/kg 1,000W/kg 現状値 5~8 年 100~200 円 /Wh 10 年 30~40 円 /Wh 現状値の2 倍 10~15 年 40 円 /Wh 250Wh/L 100Wh/kg 1,000W/kg 現状値 15 年 20~40 円 /Wh 生産規模 41,500MWh 現状値の 4 倍 長寿命化による電池交換回数の削減ができる場合 電池交換回数の多い競合製品に対しては 競合価格 20 円に対し 最大 40 円でも優位性を出せる可能性がある 250Wh/L 100Wh/kg 1,000W/kg 現状値の 6 倍 生産規模 2,800MWh 系統安定化 事務所 家庭向けなどでは よりエネルギー密度の向上が実現すると尚良い 主用途 無線基地局用バックアップ電源 / 通信ビル用バックアップ 展開可能用途 ATM 用バックアップ / エレベーターバックアップ / 投光機 / 溶接機 / フロアマシン / 放送用カメラ スピーカー / 道路鋲 / ゴルフカート / 高所作業車 15 年 20 年 展開可能用途 住宅向け等に関しては 20 円 /Wh 15 円 /Wh 蓄電することで顧客メリッ トがでる価格設定が必要 主用途 出力安定化 ( 風力発電など )/ 系統安定化 / 施設工場向け電力蓄電システム ( 負荷平準化 ) / 住宅向け蓄電システム フォークリフト / エレベーターバックアップ / 投光機 / 溶接機 / フロアマシン / 放送用カメラ スピーカー / 道路鋲 / ゴルフカート / 高所作業車 電池系の市場割合の移り変わり ( イメージ図 ) 既存二次電池 ( 鉛電池 ニッケル水素電池など ) リチウムイオン電池 革新的二次電池 全固体電池 金属 - 空気電池 多価カチオン電池などの革新的二次電池が実用化される リチウムイオン電池と既存二次電池 ( 鉛電池 ニッケル水素電池 ) が並存する 二次電池全体として電池の市場規模は拡大していく サイクル寿命の現状値 = 約 1000 回 : DOD=100% 1C 放電 初期容量に対して残容量が85 % に達する回数 カレンダー寿命とは 電池に求められる寿命のこと - 12 -

11ページから12ページに二次電池技術開発ロードマップを示した 展開可能用途に示してある用途例は 主用途の要求性能を満たすセルを開発することで 主用途以外にも適用可能な用途である ただし 展開可能用途に該当する場合でも 用途側に求められる性能と二次電池の性能の間に多少なりともギャップがあり オーバースペックとなる場合があることを理解しておく必要がある 本ロードマップでは それぞれのタイプに求められる要求性能から電池性能ごとに目標値を示し NEDOが自主的に目標とすべき時間軸を設定した 現状の電池性能は 現状のEV 用 HEV 用 民生用のリチウムイオン電池の転用を想定し記した 以下に各電池性能について解説する 容積エネルギー密度 重量エネルギー密度 出力密度容積エネルギー密度 重量エネルギー密度 出力密度は 全てモジュール ( 或いはパック ) として必要な数値を記している サイクル寿命サイクル寿命は 運用方法や運用環境により大きく変わってくる 例えばHEVの場合 SOC50% を中心に ±15~20% 程度の幅にて運用している この様な運用方法では電池に対する負荷は少なく サイクル寿命は大きく向上する 一方 EVで想定されている運用方法はSOC 幅がHEVよりも幅広く 一般的にサイクル寿 命は短くなる またEOL(End of Life) の定義も用途毎に曖昧であり 電池が使えないと判断する基準については議論の余地がある この様な背景から 本ロードマップでは 現状値を調査し サイクル寿命の現状値 = 約 1000 回 (DOD=100% 1C 放電 常温 初期容量に対して残容量が 85% に達する回数 ) とした上で 各タイプについて現状に対して何倍のサイクル寿命が要求されるかの目標値を示した カレンダー寿命カレンダー寿命に関しても 運用方法や使用環境により寿命が大きく変わる 特に温度環境に大きく依存し 40 を超える温度環境下では電池の劣化が激しくなるといわれている またリチウムイオン電池の場合 普及されはじめてから現在に至るまでの期間が短いことからカレンダー寿命の実測データも少なく 明確に寿命の現状値を定義することが困難である そこで本ロードマップに於けるカレンダー寿命の定義は 一義的に 常温環境 満充電の状態で 残容量が85% 以下になるまで かつ用途ごとに必要とされる出力値を維持できなくなるまで と定義した コストコストの目標値は タイプごとの主用途に要求される値を設定した 従来 電池の劣化に伴い電池交換を行っていた用途では サイ - 13 -

クル寿命やカレンダー寿命を向上することにより 電池交換の回数を減らせる 或いは交換する必要が無くなる このため 二次電池を使う機器の全使用期間で必要となるトータルの電池コストを考えると 寿命が長い電池ほど高価なイニシャルコストを設定することが可能となる場合もある そのため 電池の交換が想定される用途については コスト目標値に幅を持たせて記載した また従来 レート特性を下げるために電池を余分に搭載していた用途では 出力密度の向上を実現する事で余分搭載量を削減でき 結果としてイニシャルコストを従来よりも高く設定できる場合もある 二次電池を使用する上で必要なコストとしては 二次電池の設置に掛かるコストやパワーコンディショニングシステムなどの補機にかかるコスト 廃棄にかかるコストなどもあるが 本ロードマップではこれらのコストは含めない 本ロードマップでは 7つのタイプごとに目標値を設定している 各々のタイプについて解説する タイプ1 タイプ1の主用途であるEVや電動二輪では 本格普及のために航続距離の更なる延長が必要であることから 要求性能の第一はエ ネルギー密度の向上としている また 現在のガソリン車の代替として普及するには 電池を含めた車体価格を従来と同等程度に設定する必要があり それを実現するために更なるコスト削減が求められる タイプ1では サイクル寿命以外の全ての電池性能の向上が求められており 7つのタイプの中で最も電池に対する要求が厳しいタイプである タイプ1のロードマップは NEDO 次世代自動車用蓄電池技術開発ロードマップ2008 を踏襲したものであり そちらに詳述するため参考にして頂きたい タイプ2 タイプ2の主用途はフォークリフトである これは鉛電池を搭載した1.5t クラスのバッテリー式フォークリフトが主流で サイクル寿命が短く数年に1 度のペースで電池の交換が行われている そのため サイクル寿命の向上が電池に求められる要求性能の一つである また2~3 年に1 度のペースで鉛電池を交換している稼働率の高い職場が存在することからも 現状のリチウムイオン電池のサイクル寿命に対し3~4 倍程度の性能を実現できれば 電池交換無しで継続的に利用することができ 結果としてトータルコストで優位性を出すことができる また稼働率の高い職場では 鉛電池では十分な稼働時間を満たせ - 14 -

ず業務中に電池交換を行うケースもあり エネルギー密度の向上が求められている さらに エネルギー密度が大きい革新的二次電池が実用化された場合 このような理由からフォークリフトに搭載することが考えられ さらには4tクラスのフォークリフトのバッテリー化なども期待できる タイプ3 タイプ3はPC 携帯電話 デジタルビデオカメラを主用途とする民生用機器に求められる二次電池のタイプである 民生用途では必要とされる性能はほぼ満たされている しかし ユーザーの使い勝手を考えると 更なるエネルギー密度の向上やコスト削減が望まれ 今後の企業努力に委ねたい タイプ4 タイプ4の主用途であるHEV 等は 自動車の駆動アシスト用として活用されるため 瞬時に大きなパワーが必要となることから出力密度の向上が主として求められる 特に主用途の一つであるディーゼルHEV 鉄道車両では車体重量が大きい上に電池の搭載スペースが少ないことから 自動車以上にアシスト用のパワーが必要である そのため ディーゼルHEV 鉄道車両については HEV 以上の出力密度である 3,500W/kg を目標値として設定した またプロ用の電動工具においても 瞬時に大きなパワーを必要とする一方で 機器本体のスペースに制限があることから電池搭載容量が少なく 結果として機器によっては HEV 以上の出力密度が必要とされる場合もある HEVは発車時 停車時に充放電を繰り返す運用方法で電池に対する負荷は小さく サイクル寿命が問題になる事は少ないと考えられる カレンダー寿命に関してはタイプ1(EV 等 ) と同様に 自動車の耐用年数だけ電池寿命を維持することが必須であることから 更なる向上が必要である タイプ4のロードマップは NEDO 次世代自動車用蓄電池技術開発ロードマップ2008 を踏襲したものであり そちらに詳述するため参考にして頂きたい タイプ5 タイプ5の主用途であるUPSでは 現在鉛電池の採用が主流であり 常に満充電状態を維持するためトリクル / フロート充電を行っている 設置環境によっては ( 特に高温環境 ) 電池の劣化が急速に進み 5 年程度で電池交換をする場合もある その様な場合はカレンダー寿命を向上することで電池交換の削減が可能となる UPSでは 通常 設置スペースに余裕があることからエネルギー密度はそれほど求められていないが 放電レートが高く電池に対する負荷が大きくなる それを避けるため 補償時間以上の電池を搭載し 電池に対する負荷を軽減する対策が打たれている リチウムイオン電池を用い出力密度を向上させることで 電池に対する負 - 15 -

荷を軽減することでき 電池の搭載量削減が可能となる 風力発電などの出力安定化用などで設置スペースに対する制限が タイプ6 少ないときには エネルギー密度は問題にならないが 住宅向け蓄タイプ6の主用途である無線基地局用バックアップ 通信ビル用電システムを屋内に設置する場合などでは 小型化のために高いエバックアップでは 現在主に鉛電池を採用している しかしタイプネルギー密度が必要となる 更に 系統安定化用では数 MWhから数 GWh 5(UPS) 同様 設置環境によっては電池劣化が急速に進み 電の容量の蓄電システムになることも想定され 設置の自由度を持た池交換を実施する場合がある カレンダー寿命を向上させることで せるためにはできるだけ高いエネルギー密度が必要である 電池交換回数の削減につながる このように低コスト 長寿命で大型にしても安全な二次電池を実タイプ6では補償時間が数時間と長いことから大きな出力は必要現するためには 全固体電池などの革新的二次電池の開発も必要ととされていない される タイプ7 タイプ7の主用途である施設工場向け蓄電システム 住宅向け蓄今後の研究開発によって リチウムイオン電池の更なる高性能化電システム 風力発電などの出力安定化 余剰電力対策のための系と低コスト化がすすめば 使用される電池系も変わってくると考え統安定化用途などでは 深い充放電を繰り返すためサイクル寿命がられる 現在 鉛電池やニッケル水素電池などの既存二次電池が使求められる 同時に長期間使用する用途であるためカレンダー寿命われている用途にリチウムイオン電池が使われるようになり リチも求められるほか 長期にわたる蓄電システム全体の安全性 信頼ウムイオン電池の占める割合が広がっていく 但し 全ての既存二性が重要である 次電池が置き換わるわけではなく 既存二次電池の特長が活かされ施設工場向け蓄電システムや住宅向け蓄電システムでは 電力をた用途については残るだろう 貯蔵することによって経済メリットが得られる蓄電システムの価格さらに リチウムイオン電池の次世代を担う革新型二次電池が実設定が必要であり また出力安定化や系統安定化のような大型の蓄用化されれば 徐々にリチウムイオン電池から置き換わっていくこ電システムにおいては設置コストを現実的なものにするために 電とが想定される 池の低コスト化が強く望まれている 革新型二次電池は 例えば高エネルギー密度のものの場合 金属 - 16 -

- 空気電池や多価カチオン電池などが考えられ また長寿命 低価格な電池では 全固体リチウムイオン電池などが考えられる 前者は サイクル特性や低温特性 デンドライトの析出などが課題となっている NEDO 次世代自動車用蓄電池技術開発ロードマップ 2008 に詳しい解説があるので参考にして頂きたい 後者は 電極成分の電解液への溶出やデンドライトの成長が抑制できるため 高安全で長寿命な電池が期待でき また全固体電池ならではの生産方法の革新で低コスト化できれば タイプ7のような定置用二次電池に適した電池が期待できる 一方 固体電解質と電極界面の接合が大きな課題となっているほか 低温特性の改善も必要である これら革新型二次電池は 現在 研究段階であり 今後の活発な研究開発により早期の実用化が切望される - 17 -

NEDO 二次電池技術開発ロードマップ (Battery RM2010) 技術マップ - 18 -

技術マップタイプごとの要求性能 (1) エネルギー密度指向型 ( タイプ 1) 出力密度 [W/kg] 3,500 エネルギー密度指向型 ( タイプ 2) 出力密度 [W/kg] 3,500 サイクル寿命 (2010 年時点の現状値と比較して ) 8 倍 4 倍 2 倍 1 倍 2,500 1,500 500 2010 年時点 200 2020 年頃 400 600 容積エネルギー密度 [Wh/L] 800 サイクル寿命 (2010 年時点の現状値と比較して ) 8 倍 4 倍 2 倍 2,500 1,500 1 倍 500 2010 年時点 200 400 600 容積エネルギー密度 [Wh/L] 800 5 100 5 100 2020 年頃 10 200 10 200 15 300 15 300 カレンダー寿命 [ 年 ] 20 400 重量エネルギー密度 [Wh/kg] カレンダー寿命 [ 年 ] 20 400 重量エネルギー密度 [Wh/kg] サイクル寿命の現状値 = 約 1000 回 : DOD=100% 1C 放電 初期容量に対して残容量が 85% に達する回数 カレンダー寿命とは 常温環境にて電池に求められる寿命のこと - 19 -

技術マップタイプごとの要求性能 (2) エネルギー密度指向型 ( タイプ 3) 出力密度指向型 ( タイプ 4) 出力密度 [W/kg] 3,500 出力密度 [W/kg] サイクル寿命 (2010 年時点の現状値と比較して ) 8 倍 4 倍 2 倍 1 倍 5 2,500 1,500 500 2010 年時点 200 100 2020 年頃 400 600 容積エネルギー密度 [Wh/L] 800 サイクル寿命 (2010 年時点の現状値と比較して ) 8 倍 4 倍 2 倍 1 倍 3,500 2010 年時点 2,500 1,500 500 200 2020 年頃 400 600 容積エネルギー密度 [Wh/L] 800 10 200 5 100 15 300 10 200 カレンダー寿命 [ 年 ] 20 400 重量エネルギー密度 [Wh/kg] 15 カレンダー寿命 [ 年 ] 300 20 400 重量エネルギー密度 [Wh/kg] サイクル寿命の現状値 = 約 1000 回 : DOD=100% 1C 放電 初期容量に対して残容量が 85% に達する回数 カレンダー寿命とは 常温環境にて電池に求められる寿命のこと - 20 -

技術マップタイプごとの要求性能 (3) 出力密度指向型 ( タイプ 5) エネルギー密度指向型 ( タイプ 6) 出力密度 [W/kg] 3,500 出力密度 [W/kg] 3,500 サイクル寿命 (2010 年時点の現状値と比較して ) 8 倍 4 倍 2020 年頃 2 倍 1 倍 10 5 2,500 1,500 500 2010 年時点 200 100 200 400 600 容積エネルギー密度 [Wh/L] 800 サイクル寿命 (2010 年時点の現状値と比較して ) 8 倍 4 倍 2020 年頃 2 倍 1 倍 10 5 2,500 1,500 500 2010 年時点 200 100 200 400 600 容積エネルギー密度 [Wh/L] 800 15 300 15 300 カレンダー寿命 [ 年 ] 20 400 重量エネルギー密度 [Wh/kg] カレンダー寿命 [ 年 ] 20 400 重量エネルギー密度 [Wh/kg] サイクル寿命の現状値 = 約 1000 回 : DOD=100% 1C 放電 初期容量に対して残容量が 85% に達する回数 カレンダー寿命とは 常温環境にて電池に求められる寿命のこと - 21 -

技術マップタイプごとの要求性能 (4) 寿命指向型 ( タイプ 7) 出力密度 [W/kg] 3,500 サイクル寿命 (2010 年時点の現状値と比較して ) 8 倍 4 倍 2 倍 2,500 1,500 1 倍 500 2010 年時点 200 400 600 容積エネルギー密度 [Wh/l] 800 5 100 10 200 15 2030 年頃 300 カレンダー寿命 [ 年 ] 20 400 重量エネルギー密度 [Wh/kg] サイクル寿命の現状値 = 約 1000 回 : DOD=100% 1C 放電 初期容量に対して残容量が 85% に達する回数 カレンダー寿命とは 常温環境にて電池に求められる寿命のこと - 22 -

技術マップ 要求性能比較例 出力密度 [W/kg] 3,500 2,500 UPS に適した二次電池の開発を例にすると EV 用の既存 LiB を開発の起点とすると 出力向上とカレンダー寿命を向上させれば良いが その際 多少エネルギー密度を犠牲にできる HEV 用の既存 LiB を開発の起点とすると 他の性能値を犠牲にすることなくカレンダー寿命を向上させる必要がある サイクル寿命 (2010 年時点の現状値に対して ) 8 倍 4 倍 2 倍 1 倍 1,500 500 200 400 600 容積エネルギー密度 [Wh/L] 800 高エネルギー密度指向 ( タイプ1 EV 等現状 ) 10 高出力密度指向 ( タイプ4 HEV 等現状 ) 15 高出力密度指向 ( タイプ5 UPS 等 2020 年 ) 20 カレンダー寿命 [ 年 ] 5 100 200 300 400 重量エネルギー密度 [Wh/kg] サイクル寿命の現状値 = 約 1000 回 : DOD=100% 1C 放電 初期容量に対して残容量が85% に達する回数 カレンダー寿命とは 常温環境にて電池に求められる寿命のこと - 23 -

技術マップ技術の進展と生産規模推移の予測 (1) コスト エネルギー密度指向型 ( タイプ 1) :LiB 生産規模 主用途 EV/ 電動二輪 100~ 200 円 /Wh LiB 現在地 主要な 2 つの性能 ( エネルギー密度 コスト ) による生産規模の推移を示す 展開可能用途例 フォークリフト /UPS / 無線基地局用バックアップ電源 / 通信ビル用バックアップ / エレベーターバックアップ / 投光機 / 溶接機 / フロアマシン / 放送用カメラ スピーカー / 道路鋲 / ゴルフカート / 高所作業車 20~ 100 円 /Wh 20 円 /Wh 世界総生産規模 :95,500MWh (2020 年予測値 ) EV:24,000MWh ( 100 万台普及と仮定 ) UPS:37,000MWh 無線基地局用バックアップ :2,000MWh フォークリフト :30,000MWh その他 :2,500MWh 40Wh/kg 100Wh/kg 150Wh/kg 250Wh/kg 重量エネルギー密度 - 24 -

技術マップ技術の進展と生産規模推移の予測 (2) コスト エネルギー密度指向型 ( タイプ 2) :LiB 生産規模 主用途 フォークリフト 100~ 200 円 /Wh LiB 現在地 展開可能用途 UPS/ 無線基地局用バックアップ / 通信ビル用バックアップ / エレベーターバックアップ / 投光機 / 溶接機 / フロアマシン / 放送用カメラ スピーカー / 道路鋲 / ゴルフカート / 高所作業車 20~ 100 円 /Wh 20 円 /Wh 鉛電池 世界総生産規模 :34,000MWh (2008 年 ) フォークリフト :12,000MWh( 2009 年 ) UPS:19,000MWh 無線基地局用バックアップ :1,500MWh その他 :1,500MWh 世界総生産規模 :71,000MWh (2020 年予測値 ) フォークリフト :30,000MWh UPS:37,000MWh 無線基地局用バックアップ :2,000MWh その他 :2,000MWh 現状値 現状値の 2 倍 現状値の 4 倍 現状値の 6 倍 サイクル寿命 - 25 -

技術マップ技術の進展と生産規模推移の予測 (3) コスト 100~ 200 円 /Wh 20~ 100 円 /Wh エネルギー密度指向型 ( タイプ 3) PC や携帯電話などは 既に十分に LiB が普及している用途であるため 性能向上による生産規模の拡大は望めない :LiB 生産規模 主用途 PC / 携帯電話 / デジタルビデオカメラ 展開可能用途例 ハンディーターミナル / コードレス電話, / デジタルオーディオプレーヤー / 携帯ゲーム / 携帯 TV DVD / 業務用ハンディプリンタ / 電動歯ブラシ / ロボット ( 介護 ) / 電動式玩具 / 電動アシスト自転車 / 業務用ロボット ( 警備 ) / 電動式車椅子 ( シニアカー ) 20 円 /Wh 世界総生産規模 :26,800MWh (2020 年予測値 ) PC:10,000 MWh 携帯電話 :14,000 MWh デジタルビデオカメラ :800MWh その他 :2,000MWh 40Wh/kg 100Wh/kg 150Wh/kg 200Wh/kg 重量エネルギー密度 - 26 -

技術マップ技術の進展と生産規模推移の予測 (4) コスト 100~ 200 円 /Wh 出力密度指向型 ( タイプ 4) 世界総生産規模 :21,500MWh (2008 年 ) HEV:2,000MWh UPS:19,000MWh その他 :500MWh LiB 現在地 :LiB 生産規模 主用途 HEV/PHEV / 油圧式 HEV ショベル / ディーゼル HEV 鉄道車両 展開可能用途 除雪機 (HEV)/ 電動工具 ( プロ仕様 ) / ハイブリット照明 /UPS / ATM 用バックアップ / セキュリティー用防犯システム / 直流電源装置 / AGV /AED( 院内仕様 ) / 電動工具 ( 一般仕様 ) 20~ 100 円 /Wh ニッケル水素電池 世界総生産規模 :47,500MWh (2020 年予測値 ) HEV:10,000MWh UPS:37,000MWh ディーゼル HEV 鉄道車両 :1MWh その他 :500MWh 20 円 /Wh 鉛電池 現在使用されている二次電池 ( ニッケル水素電池 ) の性能を向上させる事でも 同様の生産規模拡大の効果が得られる 出力密度 500W/kg 2,000W/kg 2,500W/kg 放電レート 3[C] 12[C] 15[C] - 27 -

技術マップ技術の進展と生産規模推移の予測 (5) コスト 100~ 200 円 /Wh 60~ 100 円 /Wh 出力密度指向型 ( タイプ 5) LiB 現在地 現在使用されている二次電池 ( 鉛電池 ) の性能を向上させる事でも 同様の生産規模拡大の効果が得られる 世界総生産規模 :19,000MWh (2008 年 ) UPS:19,000MWh :LiB 生産規模 主用途 UPS 展開可能用途 ATM 用バックアップ / ハイブリット照明 / セキュリティー用防犯システム / 直流電源装置 / AGV / 電動工具 ( 一般使用 ) 世界総生産規模 :37,000MWh (2020 年予測値 ) UPS:37,000MWh 20~ 60 円 /Wh 鉛電池 5~8 年 8~15 年 15 年 カレンダー寿命 - 28 -

技術マップ技術の進展と生産規模推移の予測 (6) コスト 100~ 200 円 /Wh 寿命指向型 ( タイプ 6) LiB 現在地 :LiB 生産規模 主用途 無線基地局用バックアップ / 通信ビル用バックアップ 60~ 100 円 /Wh 現在使用されている二次電池 ( 鉛電池 ) の性能を向上させる事でも 同様の生産規模拡大の効果が得られる 世界総生産規模 :3,500MWh (2008 年 ) 無線基地局用バックアップ :1,500MWh 通信ビル用バックアップ :300MWh その他 :1,700MWh 展開可能用途例 / エレベーターバックアップ / 投光機 / 溶接機 / フロアマシン / 放送用カメラ スピーカー / 道路鋲 / ゴルフカート / 高所作業車 世界総生産規模 :4,500MWh (2020 年予測値 ) 無線基地局用バックアップ :2,000MWh 通信ビル用バックアップ :450MWh その他 :2,050MWh 20~ 60 円 /Wh 鉛電池 無線基地局用バックアップ電源の屋上設置の場合 小型軽量化も望まれている 5~8 年 8~15 年 15 年 カレンダー寿命 - 29 -

技術マップ技術の進展と生産規模推移の予測 (7) サイクル寿命 現状値の 6 倍 現状値の 4 倍 寿命指向型 ( タイプ 7) 国内総生産規模 :1,600MWh (2020 年予測値 ) 施設工場向け, 住宅向け蓄電システム :270MWh 系統安定化 :1,000MWh 出力安定 ( 風力発電など ):330MWh :LiB 生産規模 主用途 出力安定化 ( 風力発電など ) / 系統安定化 / 施設工場向け電力蓄電システム ( 負荷平準化 ) / 住宅向け蓄電システム 展開可能用途例 フォークリフト / エレベーターバックアップ / 投光機 / 溶接機 / フロアマシン / 放送用カメラ スピーカー / 道路鋲 / ゴルフカート / 高所作業車 現状値の 2 倍 NAS 電池 前提 住宅や施設工場向け蓄電システムでは 電気を蓄電することで経済効果を生み出すために 初期電池価格 15 円 /Wh~ 30 円 /Wh 程度にする必要がある 現状値 LiB 現在地 世界総生産規模 :150MWh (2008 年 ) 施設 工場向け蓄電システム (NAS 電池利用 ):150MWh 5~8 年 8~15 年 20 年 カレンダー寿命 サイクル寿命の現状値 = 約 1000 回 : DOD=100% 1C 放電 初期容量に対して残容量が 85% に達する回数 - 30 -

生産規模算出の前提条件 代表用途 2020 年頃での生産規模算出前提条件 タイプ1 タイプ2 タイプ3 タイプ4 タイプ5 タイプ6 タイプ7 EV フォークリフト PC, 携帯電話, デジタルビデオカメラ HEV 電動工具 (LiB 使用 ) UPS 無線基地局用ハ ックアッフ 通信ビル用ハ ックアッフ 系統安定化 施設工場向け電力蓄電システム, 住宅向け蓄電システム 出力安定化 ( 風力発電等 ) 前提条件 2020 年時点で10 万台 ~600 万台 ( 新車販売 10% 相当 ) と予測は様々 2020 年電気自動車販売台数 100 万台と仮定 前提条件 2020 年世界のフォークリフト増加数は 世界 GDP 成長率と同等 約 4% 成長と仮定 2009 年市場規模 世界フォークリフトバッテリー式 : 約 33 万台エンジン式 : 約 23 万台 フォークリフトに関しては 2009 年で需要が大幅に落ち込んだことから 2009 年をベースに計算を実施 前提条件 携帯電話 ノートPC デジタルカメラの三用途で民生用途全体の9 割を占める 2006 年から2008 年まで毎年約 10% 成長を行ってきたため 2020 年まで同様に成長すると仮定 2020 年市場規模 携帯電話 / ノートPC 2008 年時点に対し約 250% 増加すると仮定 デジタルカメラ 2008 年時点に対し約 160% 増加すると仮定 前提条件 2020 年まで 20% ずつ市場が拡大すると仮定 前提条件 2020 年まで GDP 比と同等程度 約 4% ずつ市場が拡大すると仮定 前提条件 2020 年まで GDP 比と同等程度 約 4% ずつ市場が拡大すると仮定 前提条件 2020 年まで GDP 比と同等程度 約 4% ずつ市場が拡大すると仮定 前提条件 経済産業省新導入目標より太陽光発電 (PV)2020 年 2800 万 kw 導入相当量を仮定 PV の発電電力が大幅に余る年末年始 GW や 電力需要量の少ない春秋期の週末は PV の出力を抑制 前提条件 NAS 電池市場成長率を 2020 年まで年率 5% と仮定 住宅向け蓄電池の生産規模は含めずに試算 前提条件 風力発電用途を対象 2020 年に 500 万 kw 設置されると仮定 - 31 - 前提条件は NEDO にて仮定した

1. タイプごとの要求性能 19ページから22ページに タイプごとの現在の性能と2 020 年頃の要求性能を比較したレーダーチャートを示した 現在値である2010 年時点の要求性能を実線で示し 202 0 年頃必要であると考えられる要求性能を点線で示した 開発の方向性についてタイプごとの比較が容易にできる 例えば 23ページではUPSに適した二次電池 ( タイプ5) の開発を例に取った場合 EV 用の現状のリチウムイオン電池 ( タイプ1) を開発の起点としたとき 注力して開発すべき点はカレンダー寿命と出力密度であることが分かる その際 容積エネルギー密度 重量エネルギー密度を多少犠牲にできることが示唆されている 一方 HEV 用のリチウムイオン電池 ( タイプ4) を開発の起点としたときは 注力すべき点はカレンダー寿命のみであるが そのために犠牲にできる電池性能はないことが分かる 以上を踏まえた上で EV 用とHEV 用のどちらの現状の電池を起点に開発するのが得策か 自社の強みを活かした開発戦略の策定に役立てて頂きたい 2. 技術の進展と生産規模推移の予測開発戦略を策定する上では 開発の方向性を決め詳細な技術開発項目に落とし込むのと同時に その技術開発によって期待できる市場規模の把握も必要である そのような観点から本技 術マップでは 技術の進展に伴う二次電池の生産規模 (Wh) の推移を2020 年断面で予測した 技術が順調に進展した場合 今後も二次電池を用いた製品の市場がこれまでと同様に成長すると考えたほか 系統安定化用や風力発電などの出力安定化用の蓄電システムのように これから実用化が考えられる用途については政策的側面から需要を予測し 生産規模としてまとめた 予測値の算出に用いた前提条件を31ページに示した 尚 住宅向け蓄電システムは2020 年以降に本格普及していくと考え 予測値には入れていない 24ページから30ページに タイプごとの技術の進展と生産規模推移の予測をバブルチャートで示した 縦軸と横軸に示した指標は タイプごとに特に重要とされる電池性能である グレーの円はリチウムイオン電池の現状値であり その推移を青色の円で示し 生産規模の拡大と共に円も拡大させている 主用途に鉛電池やニッケル水素電池等の既存二次電池が活用されている場合は それらの現状値を赤い円で示しており リチウムイオン電池との電池性能の比較を行えるようにした これらの技術マップの他 材料 電池技術マップ を N EDO 次世代自動車用蓄電池技術開発ロードマップ2008 に掲載しているので そちらもご覧頂きたい - 32 -

NEDO 二次電池技術開発ロードマップ (Battery RM2010) 検討スケジュール 委員名簿 WG 委員名簿 - 33 -

<NEDO 二次電池技術開発ロードマップ (Battery RM2010) 検討スケジュール > < 二次電池技術開発ロードマップ作成 WG> NEDO 調査事業として ( 株 ) 日本総合研究所にワーキング (WG) を設置しロードマップ 2010 案を検討 2010 年 1/19 第 1 回 WG 2/25 第 2 回 WG < 二次電池技術開発ロードマップ作成委員会 > NEDO 調査事業として ( 株 ) 日本総合研究所に委員会を設置し ロードマップ2010 案を審議 2010 年 3 月 1 日 : 第 1 回委員会二次電池技術開発ロードマップ2010(WG 案 ) について審議 2010 年 3 月 10 日 ~3 月 16 日 : パブリックコメント NEDOホームページにロードマップ2010( 案 ) を掲載し 広くパブリックコメントを募集 2010 年 3 月 23 日 : 第 2 回委員会二次電池技術開発ロードマップ2010 取りまとめ 2010 年 5 月 :NEDO 二次電池技術開発ロードマップ (Battery RM2010) ホームページ上で公開 - 34 -

< 二次電池技術開発ロードマップ作成委員会委員名簿 > 役職 氏名 所属 部署 役職 委員長 山木準一 九州大学先端物質化学研究所先端素子材料部門大学院総合理学府量子プロセス理工学専攻教授 委員 伊藤寿秀 日本産業車両協会フォークリフト技術委員会委員長 委員 小笠正道 財団法人鉄道総合技術研究所車両制御技術研究部駆動制御研究室長 委員 小笠原康司 社団法人日本電機工業会 UPS 技術専門委員会委員長 委員 西正貴 電気事業連合会技術開発部中央電力協議会事務局副部長 委員 美浦隆 慶應義塾大学理工学部応用科学化教授 委員 森信昭 社団法人日本電気協会常務理事 委員 森本佳成 社団法人電池工業会二次電池部会部長 ( 敬称略 : 五十音順 所属 役職は2010 年 3 月時点で記載 ) - 35 -

< 二次電池技術開発ロードマップ 2010 作成 WG 委員名簿 > 役職氏名所属 部署 役職 座長美浦隆慶應義塾大学理工学部応用化学科教授 副座長辰巳国昭独立行政法人産業技術総合研究所ユビキタスエネルギー研究部門蓄電デバイス研究グループグループ長 委員 池田登志夫 大和ハウス工業株式会社技術本部総合技術研究所フロンティア技術研究センター地球温暖化防止研究グループグループ長 委員内本喜晴京都大学大学院人間 環境学研究科教授 委員内海和明オートモーティブエナジーサプライ株式会社開発部エグゼクティブエキスパート兼日本電気株式会社環境 エネルギー事業推進室エグゼクティブチーフエンジニア委員奥山良一株式会社ジーエス ユアサコーポレーション研究開発センター第二開発部部長 委員糟谷智康株式会社マキタ電装技術部主査 委員熊谷千昭株式会社本田技術研究所二輪 R&D センター技術開発室上席研究員 委員斉藤哲夫一般社団法人日本風力発電協会企画室長 委員正代尊久日本電信電話株式会社 NTT 環境エネルギー研究所第一推進プロジェクトプロジェクトマネージャー 委員高見表吾東京電力株式会社技術開発研究所電力貯蔵ソリューショングループグループマネージャー 委員布谷貞夫株式会社小松製作所開発本部主幹先進技術シーズ調査担当 委員野元浩東日本旅客鉄道株式会社 JR 東日本研究開発センター環境技術研究所次長 委員橋本勉三菱重工業株式会社原動機事業本部新エネルギー事業推進部技術グループ主席 委員本多啓三株式会社東芝電力流通 産業システム社二次電池システム技師長 委員米津育郎三洋電機株式会社モバイルエナジーカンパニー技術企画統括部統括部長 ( 敬称略 : 五十音順 所属 役職は 2010 年 3 月時点で記載 ) - 36 -

<お問い合わせ先 > 独立行政法人新エネルギー 産業技術総合開発機構 (NEDO) 燃料電池 水素技術開発部蓄電技術開発室 212-8554 神奈川県川崎市幸区大宮町 1310 番ミューザ川崎セントラルタワー 20 階 TEL:044-520-5264 FAX:044-520-5263 HP:http://www.nedo.go.jp/nenryo 無断転載を禁じます - 37 -