地域安全学会論文集 No.24, 2014.11 被災者調査による東日本大震災から 3 年目の復興進捗状況 復興の停滞感と住宅再建における迷い - Reconstruction Progress Situation of the Third Year from the Great East Japan Earthquake by Victims Questionnaire Survey - Focusing on Sense of Stagnation in Disaster Reconstruction and Ambivalence in Housing Reconstruction - 1 1 1 2 木村玲欧, 友安航太, 矢島豊, 間嶋ひとみ 2, 2 2 2 2 古川賢作, 戸田有紀, 渡邊和明, 川原武夫 Reo KIMURA 1, Kouta TOMOYASU 1, Yutaka YAJIMA 2, Hitomi MASHIMA 2, Kensaku FURUKAWA 2, Yuki TODA 2, Kazuaki WATANABE 2 and Takeo KAWAHARA 2 兵庫県立大学大学院環境人間学研究科 Graduate School of Human Science and Environment, University of Hyogo 2 日本放送協会報道局社会部 News Department, NHK (Japan Broadcasting Corporation) We conducted a questionnaire survey of disaster victims of the Great East Japan Earthquake Disaster. We clarified victims third-year situation and problems for disaster reconstruction. The questionnaire consists of four large elements; victims situation during three years, feeling at the third year of disaster, decision about place of residence and reconstruction progress situation of affected area. We found that 1)around 80% of the respondent answered that "The speed of reconstruction is slower than their assumptions" or "I do not have a feeling that reconstruction is actually proceeding". The result is the statistically same as the result of the previous-year survey, 2)13.2% of the respondent did not determine the residence in the future. They have the dilemma of two options whether to leave the familiar region, to obtain the convenience of life or to remain in the region, to keep their ancestral land and the grave. Keywords: the Great East Japan Earthquake, life reconstruction process, housing reconstruction, economic reconstruction, victims questionnair survey, recovery and reconstruction calendar 1. 研究の背景 目的 (1) 東日本大震災発災から 3 年の現状 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は, 死者 18,958 人, 行方不明者 2,655 人, 全壊住家 127,291 棟, 半壊住家 272,810 棟という現代日本社会における未曾有の巨大地震津波災害である ( 総務省消防庁, 2014) 1). さらに地震や津波が直接的な死因ではないが, 体調や持病を悪化させて亡くなる震災関連死は, 震災から 2 年半が過ぎた 2013 年 9 月 30 日時点で 2,916 人が認定されている ( 復興庁, 2013) 2). ガレキと津波堆積物の処理の進捗率は, 震災から 3 年が過ぎた 2014 年 3 月時点で 96%( ただし原発事故の影響がある福島県の避難区域を除く ) と進んでいて ( 環境省, 2014) 3), 福島県における原発事故による住宅の除染も 2014 年 2 月末時点で 44.2% が完了している ( 環境省, 2014) 4). しかし震災からあと約 1 ヶ月で 3 年を迎えようとする 2014 年 2 月 13 日時点で, 全国の避難先で暮らしている 人は 267,419 人にのぼり, 避難者数のピークである発災 3 日後の約 47 万人の過半数が未だに避難している. また災害復興公営住宅については,2014 年 1 月末現在で, 計画の 67% の住宅が着手されているものの完了したのはわずか 4% である ( 復興庁, 2014) 5). このことから, 被災地の土地や社会基盤の復旧 整備は進んでいるものの, 避難者が被災地に戻って暮らし始めたり生計を立てたりすることができる状態には至っておらず, 被災者の住宅再建は途上であることが推察される. 住宅再建の状況は,1995 年阪神 淡路大震災と比較しても遅れている. 阪神 淡路大震災は,1995 年に現代日本社会の都市直下で発生した地震災害であり, 死者 行方不明者 6,437 人, 全壊住家 104,906 棟, 半壊住家 144,274 棟という被害を出した ( 消防庁, 2006) 6). しかし避難所の避難者数は, 震災後 6 日目にピークを迎えて 316,678 人が避難したものの, 震災から約 8 ヶ月半後の 9 月 30 日には全ての避難所が廃止された. 災害復興公営住宅も, 震災からおよそ 3 年後の 1997 年末時点で計画の 37.3% が完成しており 7), この震災から 3 年目と 233
いう時期 (1997 年 1 月 ~12 月頃 ) は仮設住宅入居者も減少をたどり, 一部仮設住宅では撤去も始まっている時期であった 8). これらの状況と比べると, 地震 津波 原発事故で広範囲にわたって被害を受けた東日本大震災の被災者の生活再建は, 阪神 淡路よりも遅く, かつ長期間にわたることが想定できる. (2) 長期的な生活再建過程と震災後 3 年目調査の実施長期に渡って被災者 被災地に影響を与える大災害では, 災害によって創られた新しい環境の中で, 被災者や被災地社会が適応しながら生活を建て直していく過程 を明らかにし, 被災者や被災地の 今 の現状と課題 をモニタリングすることが, 被災者 被災地の全体像把握や適切な支援には必要である. この過程は 生活再建過程 もしくは 災害過程 と呼ばれていて, 時間経過とともに 5 つの段階によって構成されている ( 例えば木村他, 2006 および 2010, 木村, 2012) 9-11).5 つの段階とは以下の通りである ( 図 1). Ⅰ 失見当期 : 災害の衝撃から強いストレスを受けて, 自分の身のまわりで一体何が起こっているかを客観的に把握することが難しくなり, 視野が狭くなる状態 Ⅱ 被災地社会の成立期 : 被害の全体像が明らかになるにつれ, 災害によるダメージを理性的に受け止め, 被災地社会という新しい秩序に則った現実が始まったことに適応しようとする段階 Ⅲ 災害ユートピア期 : 社会基盤の物理的破壊やライフラインの途絶など従来の社会機能のマヒにより, 通常とは異なる社会的価値観に基づく世界が成立する段階 Ⅳ 現実への帰還期 : ライフラインなどの社会フローシステムの復旧により, 被災地社会が終息に向かい, 人々が生活の再建に向け動き出す段階 V 創造的復興期 : 上下水道や都市ガスなどの社会基盤が再構築され もう被災者 / 被災地ではない と人々が感じ, 新たな社会への持続的発展を目指す段階 東日本大震災の被災者の状況に関する既往研究としては, 吉森他 (2012) の仙台市マンション住民の地震発生後の避難行動調査 12), 執行 (2011) のネットユーザーを対象としたメディア利用調査 13), 佐藤他 (2012) の福島県双葉郡からの避難者の精神的健康の調査 14), 村上他 (2013, 2014) の岩手県釜石市の仮設住宅居住者の健康調査 15-16), 平山他 (2012) の岩手県釜石市の仮設住宅入居世帯の居住者実態調査 17), 森他 (2013) の福島県いわき市内を対象とした居住地選択調査 18),NAGAMATSU(2013) の福島県の絆づくり応援事業の参加者へのアンケート結果から CFW(Cash for Work) を検討したもの 19), などがある. しかし災害発生から日が浅いこともあり, いずれもある限定した災害対応行動や調査対象者にしぼった調査であった. そこで本研究では, 阪神 淡路大震災などの過去の質問紙調査項目 知見を用いながら, 調査対象地域として岩手県 宮城県 福島県の 3 県をまたいだ被災者の生活再建の現状について質問紙調査を行うこととした. 本調査では,2014 年 1 月, 東日本大震災からまる 3 年が経過しようとしながらも被災者が避難生活を余儀なくされている現状をふまえ, 被災者の 震災から 3 年が経過するまでの状況 現在の心境 今後の生活拠点 地域の復興 を明らかにするために,2,780 人の被災者に対して質問紙調査を実施した. 本研究では, 質問紙調査の結果を詳述し, 阪神 淡路大震災など過去の災害知見とも比較しながら, 震災 3 年における被災者の 災害発生 Ⅰ 失見当 10 h 初動 緊急対応期 現状と課題について, 特に 復興の停滞感 と 住宅再建における迷い に焦点をあてながら考察した. 2. 方法 被災者心理 行動から見た災害過程 Ⅱ 被災地社会の成立 応急期 10 2 h 10 3 h Ⅲ 災害ユートピア ( ブルーシートの世界 ) 復旧期 Ⅳ 現実への帰還 行政計画から見た災害過程 図 1 生活再建過程の 5 段階 10 4 h 再建 復興期 time Ⅴ 創造的復興 (1) 調査の経緯本研究で用いるデータは,2014 年 1 月 6 日 ~2 月 5 日までに NHK 報道局が実施した NHK 東日本大震災 3 年アンケート から得られたものである.NHK 報道局では, 震災直後からできる限り多くの被災者の声を集めて報道することを心がけてきた. そのため, 被災者へのインタビューなどの質的調査だけでなく, 質問紙 ( アンケート ) を用いた量的調査も行ってきた. 被災者を対象とした量的調査は, 東日本大震災の発災後 2 週間で第 1 回目を実施して以降,1 ヶ月後,2 ヶ月後,3 ヶ月後, 半年後,1 年後,2 年後と, 本調査 (3 年後 ) を行う前に計 7 回の質問紙調査を行ってきた. 特に発災からまる 2 年を迎えた前回調査では すまいの再建 人と人とのつながりの状態 に焦点をあてた大規模調査を行い学術論文としてまとめている ( 木村他, 2014) 20). 前回調査では すまいの再建 の見通しがたたないことが 想定よりも遅れている 進んでいる実感がわかない という復興実感につながり, 家族関係などの 人と人とのつながりの状態 にも影響を及ぼしていることを明らかにした. また, すまい再建と復興状況との関係を経過観察し, すまい再建以外の経済再建 地域再建 生活再建も見据えながら復旧 復興過程についても総合的に測定する必要性があることが考察された. そして, これまでの質問紙調査結果を吟味した上で, 震災 3 年を迎えた被災者の現状と課題 を知るための質問紙調査を実施することとなった. 特に本調査では, 阪神 淡路大震災など過去の現代日本巨大災害における研究成果をもとにした測定手法 復旧 復興カレンダー などについても取り入れることとなった. (2) 調査対象者 調査期間調査対象者は, 被災時に岩手県 宮城県 福島県の 3 県に居住していた人である. 調査方法は, 理想としては住民基本台帳や選挙人名簿などからのランダムサンプリング調査が望ましいが, 東日本大震災は被災者の県内外への避難生活が長期にわたり, 震災からまる 3 年を迎え 234
る調査時点においても住民基本台帳等では所在を把握することが難しい被災者が多数存在する. そのため, 調査対象者について, これまでに全国の NHK 記者が取材を行い住所や連絡先を教えていただいた被災者のリスト (n=2,780 人 ) を活用した. このリストをもとに, 質問紙の郵送配布 郵送回収を行い,1,103 人 ( 有効回答率 39.7%) から回答を得た. またこれとは別に, 新たな取材等を通して質問紙への回答を承諾いただいた被災者 98 人について, 対面による質問紙配布 回収を行った. その結果, 震災前の居住地 ( 県 ) がわかる有効回収数は 1,201 票 ( リストをもとにした郵送 1,103 票, 現地等での対面 98 票 ) となった. 調査期間は,2014 年 1 月 6 日 ~2 月 5 日であった. (3) 調査項目調査では,1 個人属性 ( 名前 年齢 性別 職業等 ), 2 現在までの状況について,3 現在の心境について,4 今後の生活拠点について,5 地域の復興について,6 震災からまる 3 年を迎えた今の気持ちなど思っていること ( 自由記述 ) の 6 点について全 27 問を尋ねていった. 質問順については, 回答者がその時のことや現在のようすなどを地震 津波発生からの時間経過に沿って思い出して回答することができるように配慮した. 本論文では, この質問順に従い, まず個人属性から見える回答者特性について明らかにした後, 震災 3 年を迎える被災者の現状と課題について明らかにした. 3. 調査回答者の特性 回答者特性について, 性別, 年齢, 震災前の居住地, 住居形態, 家族の人的被害, 家屋被害について尋ねた. なお本章内では, 特に記述のない場合には 有効回収数である 1,201 票を 100% とした時の割合 (%) を記載している. 回答者の性別は, 男性は 58.3%(n=700), 女性は 41.4%(n=497) であった ( 欠損値 =4). 年齢を見ると,10 歳から 91 歳までのレンジがあり, 平均年齢は 61.0 歳 (SD=13.5 歳 ) であった ( 欠損値 =20). また年齢と性別の関係を見ると, 男性は 63.0 歳, 女性は 58.0 歳であり, 統計的な有意差が見られた (t(897.2)=6.14, p<.01). 回答者の震災前の居住地は, 岩手県 31.5%(n=378), 宮城県 34.1%(n=410), 福島県 34.4%(n=413) であった. このことから全体 (n=1201) の結果は 3 県の状況がバランスよく反映されており, ある県の特徴が突出しないような回答傾向にある (χ 2 (2)=0.77, n.s.). また 3 県における回答者の年齢構成 (39 歳以下,40~64 歳,65 歳以上 ) の違いも見られなかった (χ 2 (4)=2.88, n.s.). ただし 3 県における県単位の比較であり, それぞれの県の被災者人口を反映した被災者像ではないことは結果を読み取る上で注意すべき点である. 震災前の居住地が現在どのような地域になっているかについて尋ねたところ, 災害危険区域が 32.9%, かさ上げが必要な地域が 12.2%, 避難指示区域 ( 警戒区域 帰還困難区域 居住制限区域 避難指示解除準備区域 計画的避難区域 特定避難勧奨地点を含む ) が 24.3%, 自治体による除染の対象区域が 4.1%, そのまま居住可能な地域が 22.9% であった ( 無回答 3.6%). 回答者の約 8 割について, 震災時の場所がそのまま居住することができない地域であることも, 本論文の分析結果に影響を与え 岩手県 N=378 宮城県 N=410 福島県 N=413 震災前と同じ場所 21.7 29.8 20.8 震災前と同じ市町村の別の場所 19.4 る要素である. 家屋被害を見ると, 全壊が 59.5%, 大規模半壊が 3.2%, 半壊が 5.2%, 一部損壊が 20.5%, 被害なしが 10.9% であった ( 無回答 0.7%). 現在 ( 調査時点 ) の住居形態を見ると, 震災時の場所にある自宅が 20.5%, 別の場所に再建した自宅が 8.7% であったのに対し, 仮設住宅が 49.1%, みなし賃貸が 9.2%, 復興住宅 災害公営住宅が 0.9%, 自分で借りた賃貸住宅が 5.4%, 親族 知人の家が 1.0%, その他が 4.7% であった ( 無回答 0.5%). クロス集計をすると, 家屋が一部損壊した回答者の約 4 割, 家屋被害がない回答者でも約 3 割が, 仮設住宅 みなし賃貸に居住しており, 家屋被害程度によらず 自分の自宅に戻れる状況でない ことを推察することができる. 家族の人的被害を見ると, 死亡 行方不明になった家族 親族がいる回答者が 20.3% であった. 調査対象者が, NHK の取材によって構築されたデータベースを基としているために, 人的被害が大きい回答者の回答, 仮設住宅居住者の回答が強く反映されている調査結果であることにも回答者特性として注意が必要である. 4. 調査時点までの状況 72.2 57.8 震災前と同じ県の別の市町村無回答 3.7 2.4 0 3.9 0.2 (1) 居住場所の変化回答者の現在までの状況を知るために, 居住場所の変化, 仕事の変化, 心身への影響について尋ねた. 現在住んでいる場所を尋ねたところ (n=1201), 震災前と同じ場所場所 24.1%, 震災前と同じ市町村の別の場所 49.7%, 震災前と同じ県の別の市町村 18.1%, 震災前と別の都道府県 7.7%, 無回答 0.4% となった. これを県別で見ると ( 図 2), 岩手県では震災前と同じ場所が 2 割, 同じ市町村の別の場所が 7 割, 宮城県では震災前と同じ場所が 3 割, 同じ市町村の別の場所が 6 割と, それぞれ約 9 割が震災前と同じ市町村内に住んでいることがわかった. 一方, 福島県では震災前と同じ場所, 同じ市町村の別の場所がそれぞれ 2 割で, 同じ県の別の市町村が 4 割, 震災前と別の都道府県が 2 割となっており, 県内外に広く分散していた (χ 2 (6)=366.13, P<.01). また年齢構成では,39 歳以下について震災前とは別の都道府県に移っている割合が 16.2% と,40~64 歳の 8.2%,65 歳以上の 5.8% と比べて高かった (χ 2 (6)=12.69, P<.05). 福島県に特化して詳しく見ると, 震災時の居住場所について, そのまま居住可能な区域 (n=46) の 7 割 (69.6%), 自治体による除染の対象区域 (n=47) の 5 割 (53.2%) が現在も震災前と同じ場所に居住し, 災害危険区域 (n=42) の 7 割 (66.7%), かさ上げが必要な地域 (n=8) の 9 割 8.3 40.9 18.2 X 2 (6)=366.13, p<.01( 無回答除く ) 図 2 居住場所の変化 ( 県別 ) 震災前と別の都道府県 1.0 235
39 歳以下 N=95 40~64 歳 N=477 65 歳以上 N=343 震災が原因震災以外が原N=46 同じ仕事 N=612 震災前と同じ仕事 震災前と同じ場所 32.4 震災が原因で 震災以外が原因で 転職 転業 転職 転業 退職 廃業 退職 廃業 2.1 1.1 63.2 27.4 69.8 62.4 震災前と同じ市町村の別の場所 51.6 X 2 (8)=72.43, p<.01 (87.5%) が震災前と同じ市町村の別の場所に居住しているのに対し, 避難指示区域 ( 帰宅困難区域 居住制限区域 避難指示解除準備区域 )(n=251) については, 震災前と同じ場所 8.0%, 同じ市町村の別の場所 13.9%, 同じ県の別の市町村 59.8%, 別の都道府県 18.3% となっていた. 避難指示区域の存在が, 他の地域に比べて震災前の居住場所との物理的距離を大きくしていることが考えられる (χ 2 (12)=223.80, P<.01). (2) 仕事の変化仕事の変化を尋ねたところ (n=1201), 震災前と同じ仕事である 51.0%, 震災が原因で転職 転業した 8.3%, 震災が原因で退職 廃業した 12.3%, 震災以外が原因で転職 転業した 1.6%, 震災以外が原因で退職 廃業した 3.9%, その他 ( 職に就いていないなど )22.9% となった. 年齢による違いを見ると ( 図 3), どの年代も 6~7 割程度が同じ仕事であったが,39 歳以下の 3 割が震災が原因で転職 転業,65 歳以上の 2 割が震災が原因で退職 廃業しており, 被災を契機に高齢者が職を諦める現実がうかがえる (χ 2 (8)=72.43, P<.01). 仕事の変化が, 現在の居住場所とどのような関係にあるかを見たところ ( 図 4), 震災前と同じ仕事についている人, 震災以外が原因で転退職 転廃業した人はその 8 割が震災前と同じ市町村以内に留まっていた. 一方, 震災が原因で転職 転業した人の 2 割が同じ県の別市町村, 2 割が別の都道府県, 震災が原因で退職 廃業した人の 3.5 割が同じ県の別市町村,2 割が別の都道府県に移動していた. 震災が原因でなければ退職 転廃業しても同じ市町村に留まっていたのに対し, 震災が原因によって市町村外 都道府県外へ移動せざるを得ない状況が考え 4.4 図 3 仕事の変化 ( 年齢別 ) 11.7 23.6 6.3 2.3 3.8 12.4 1.7 7.9 震災前と別の都道府県 震災前と同じ県の別の市町村 2.9 13.1 転職転業 11.0 52.0 18.0 19.0 N=100 退職廃業 N=146 4.8 39.7 34.9 20.5 0 転職転業 31.6 52.6 15.8 N=19 4.3 退職廃業 58.7 因21.7 15.2 図 4 仕事の変化と居住場所との関係 X 2 (12)=152.24, p<.01 表 1 心身への影響 ( カイ自乗検定による有意差 ) 項目 県別 年齢別 居住場 所変化 られる (χ 2 (12)=152.24, P<.01). 仕事の変化 1よく眠れない ** ** ** 2 気分が沈みがち ** ** ** 3 飲酒や喫煙の量が増えた * ** 4 薬が必要になった ** ** ** ** 5 歩きにくくなった ** ** * 6 意欲がわかない ** ** ** 7 血圧が上がった ** ** ** ** 8 体重が5kg 以上増減した * ** ** ** 9 介護が必要になった 重度化した ** ** **:p<.01, *: p<.05 福島県 65 歳以上震災時とは同じ県の別市町村 震災時とは別都道府県 震災が原因で転職 転業 震災が原因で退職 廃業 薬が必要になった意欲がわかない血圧が上がった介護が必要 重度化した歩きにくくなった薬が必要になった歩きにくくなった意欲がわかない血圧が上がった体重が 5kg 以上増減した介護が必要 重度化した飲酒 喫煙の量が増えた薬が必要になった意欲がわかない血圧が上がった介護が必要 重度化した体重が 5kg 以上増減した介護が必要 重度化したよく眠れない気分が沈みがち薬が必要になった歩きにくくなった 意欲がわかない震災以外が原因で転職 転業血圧が上がった震災以外が原因で飲酒 喫煙の量が増えた退職 廃業介護が必要 重度化した 4.6 4.1 6.5 33.7 37.3 33.9 23.3 35.9 23 37.3 36.9 39.6 (3) 心身への影響居住場所や仕事の変化が心身にどのような影響を与えているかを知るために,9 項目の心身への影響に関する項目をあげて, あてはまるものすべてに〇をつけてもらった. 回答が多い順に見ていくと (n=1201), 気分が沈みがち 38.6%, よく眠れない 34.9%, 体重が 5kg 以上増減した 29.6%, 意欲がわかない 28.1%, 薬が必要になった 24.7%, 血圧が上がった 24.3%, 飲酒や喫煙の量が増えた 19.2%, 歩きにくくなった 16.1%, 介護が必要になった 重度化した 2.2% となった. この 9 項目について, 県別, 年齢別, 現在の居住場所の変化別, 仕事の変化別でカイ自乗検定を行ったところ, 統計的に有意差のある項目が多く, それぞれの状況の違いが心身へ何らかの影響を与えていることがわかった ( 表 1). この結果を基に, 3 4.3 25 37 40.2 35.9 42 45.9 53.4 40.5 20.9 43.2 40.5 26.3 0 10 20 30 40 50 60 図 5 心身への影響 ( 平均値の 1.3 倍以上のもの ) 236
平均値の 1.3 倍以上だった項目を調べると,8 つの状況下の計 26 項目があり ( 図 5), 福島県, 震災前の市町村外への移転, 震災が原因による転退職 転廃業の状況が, 心身の様々な側面へ影響していることである. 特に震災が影響で退職 廃業した人について, 気分が沈みがち 53.4%, よく眠れない 45.9%, 意欲がわかない 43.2% となっており, 安定した仕事が得られるよう支援することが, 震災後の心身のケアに結びつくことが考えられる. 5. 復旧 復興カレンダーによる生活再建過程の全体像 (1) 復旧 復興カレンダー手法復旧 復興とは, あるタイミングで一斉に成し遂げられるような 点 の概念ではなく, 少しずつ変化をしていく時間経過を伴った 線 のようなものである. そこで, 回答者の現在までの状況について, 木村他 (2004), Kimura(2007) によって開発された, 復旧 復興カレンダーと呼ばれる測定手法で被災者 被災地の復旧 復興状況を明らかにした 21)-22). 具体的には, 質問紙の中で復旧 復興のマイルストーンとなるようなイベントを挙げ, そのイベントがいつ起こったのかについて尋ねる質問項目を設け, 回答を整理する手法である. 質問項目のマイルストーン 100 % 1 被害の全体像がつかめた (n=1091) 2% もう安全だと思った (n=1077) 100 3 不自由な暮らしが当分続くと覚悟した (n=1075) 4 仕事がもとに戻った (n=907) 5 すまい問題が最終的に解決した (n=1046) 90 6 家計への災害の影響がなくなった (n=1033) 7 毎日の生活が落ち着いた (n=1098) 8 地域の活動がもとに戻った (n=1049) 80 9 自分が被災者だと意識しなくなった (n=1040) 10 地域経済が災害の影響を脱した (n=1061) 7011 地域の道路がもとに戻った (n=1035) 12 地域の学校がもとに戻った (n=930) は,1995 年阪神 淡路大震災,2004 年新潟県中越地震などを対象としたエスノグラフィーインタビュー調査等の中から, 多くの被災者が経験している 復旧 復興の節目となるようなイベント である. (2) 東日本大震災の復旧 復興カレンダー図 6 が本調査における東日本大震災の復旧 復興カレンダーである. 横軸は, 地震津波発生後の時間経過を対数軸で表し, 横軸左端の 10 0 は発生後 1 時間, 以降,10 時間,10 2 時間 (100 時間 : 災害発生後 2~4 日間 ),10 3 時 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 60 50 40 30 20 10 0 1 被害の全体像がつかめた (n=1091) 2% もう安全だと思った (n=1077) 3 不自由な暮らしが当分続くと覚悟した (n=1075) 4 仕事がもとに戻った (n=907) 5 すまい問題が最終的に解決した (n=1046) 6 家計への災害の影響がなくなった (n=1033) 7 毎日の生活が落ち着いた (n=1098) 8 地域の活動がもとに戻った (n=1049) 9 自分が被災者だと意識しなくなった (n=1040) 10 地域経済が災害の影響を脱した (n=1061) 11 地域の道路がもとに戻った (n=1035) 12 地域の学校がもとに戻った (n=930) H: 阪神 淡路大震災 災害から 1 か月経過してようやく被害の全体像がつかめた 阪神 淡路大震災より大幅に遅れている 1 3H 1H 2H 4H 災害から 3 か月以上が経過して不自由な暮らしが当分続くことを覚悟した 7H 3 5H 6H 9H 3 91.7 1 89.7 仕事は半数 4 47.7 学校は 4 割 12 41.4 2 40.7 7 37.8 11 32.9 5 31.0 6 24.5 9 21.8 8 20.1 10 7.6 ない 9 割以上が 地域経済が戻っていない 2011/3/11 3 月中旬 4 月上旬 6 月上旬 2012/3 2013/3 2014/1 10 0 10 10 2 10 3 10 4 hours 失見当被災地社会の成立災害ユートピア現実への帰還創造的復興 X=log 震災発生から経過した時間 図 6 東日本大震災の復旧 復興カレンダー ( 震災から約 3 年 ) 3 91.7 1 89.7 4 47.7 12 41.4 2 40.7 7 37.8 11 32.9 5 31.0 6 24.5 9 21.8 8 20.1 10 7.6 安全 落ち着いたは4 割すまい 道路は3 割家計は4 分の1 8 割が 被災者意識 地域活動が戻ってい 2011/3/11 3 月中旬 4 月上旬 6 月上旬 2012/3 2013/3 2014/1 10 0 10 10 2 10 3 10 4 hours 失見当被災地社会の成立災害ユートピア現実への帰還創造的復興 X=log 震災発生から経過した時間 図 7 復旧 復興カレンダー ( 東日本調査 ( マーカー付太線 ) 阪神 淡路大震災 ( 細線 )) 10H 間 (1,000 時間 : 災害発生後 2 ヶ月 ),10 4 時間 (10,000 時間 : 災害発生後 1 年 ), 右端が 10 5 時間 (100,000 時間 : 災害発生後 10 年 ) を表している. 縦軸は, 各項目について 横軸の時点までにおいて, それらの気持ち 行動 状況が発生した と回答した人の割合を示している. 各質問項目は, 累積の折れ線グラフで表しており, この割合が 50% を超えた ( 過半数の ) 時期を, それらの気持ち 行動 状況が発生した 時期と定義して分析をしている ( 無回答を除く ). 最初に過半数を超えた項目は 被害の全体像がつかめ 237
た 1 であった. 災害発生から 1 ヶ月が経過してようやく被害の全体像がつかめたことがわかる. また災害から 3 ヶ月以上が経過して 不自由な暮らしが当分続くことを覚悟した 3 と回答していたことがわかった. 震災から約 3 年 (2 年 10 ヶ月 ) が経過した時点では, 先述の 2 項目以外は全て 50% 以下であった. 仕事がもとに戻った 4 のは半数の 47.7%, 地域の学校がもとに戻った 12 もう安全だと思った 2 毎日の生活が落ち着いた 7 のは 4 割 (1241.4%,240.7%,737.8%), 地域の道路がもとに戻った 11 すまいの問題が最終的に解決した 5 は 3 割 (1132.9%,531.0%), 家計への災害の影響がなくなった 6 のは 2.5 割 (24.5%) だった. さらに 自分が被災者だと意識しなくなった 9 地域の活動がもとに戻った 8 は 2 割 (921.8%,8 20.1%) で, 裏を返せば, 震災からまもなく 3 年が経過しようとしている時点において回答者の約 8 割が 地域活動は震災前の状態には戻っておらず 自分は被災者 だと認識していることが明らかになった. (3) 阪神 淡路大震災との比較図 7 が東日本大震災と阪神 淡路大震災の復旧 復興カレンダーを重ねたものである. 太線でマーカー ( 実測値を線上の 印などで表したもの ) が東日本大震災, 細線で項目番号に H という文字が付記しているものが阪神 淡路大震災である. 阪神 淡路大震災の復旧 復興カレンダーは, 震災当日に震度 6 弱の揺れに襲われた被災地などを対象地域とした, 無作為抽出の質問紙調査から作られたものである (KIMURA, 2007) 22). なお東日本大震災における本論文の調査は, 無作為抽出調査を実施することが困難な災害後の時点における, ある特定の層に関する事実を反映していることとして意味をもっている点に注目すべきである. 本調査結果は, あくまでも本標本における結果であって, 東日本大震災の被災者の全体像を必ずしも正確に反映しているわけではないこと, また阪神 淡路大震災の無作為抽出調査結果と直接的に比較することはできないこと, について注意が必要である. それでも現時点で把握することができる東日本大震災の被災者の状況を, 阪神 淡路大震災における科学的信頼性の高い結果と比較することは, それぞれの災害の相違点や特性を知る上で重要であり, 下記に考察をする次第である. 阪神 淡路大震災では震災当日前後に過半数が回答していた 被害の全体像把握 1 や 不自由な暮らしへの覚悟 3 は, 東日本大震災では大幅に遅れていることがわかる. これは中山間地で発生して孤立集落の被害状況の判明に時間がかかった 2004 年新潟県中越地震でも, 不自由な暮らしへの覚悟 3 は震災当日, 被害の全体像把握 1 は震災から 4 日目には過半数を超えていることから ( 木村他, 2010) 23), 津波による広域にわたる地域全体の機能が失われるような壊滅的被害や, 原発事故の被害 影響の全体像が不明なまま時間が経過したことが 災害に立ち向かうための前提条件となるような認識 の遅れにつながっていることが考えられる. 更に広域に渡る壊滅的な被害は, 他の項目の復旧 復興の早さにも影響を与えていることがわかった. 阪神 淡路大震災では, 災害ユートピアの時期 ( 震災後 4 日 ~2 ヶ月 ) に過半数を超えた もう安全だと思った 2 仕事 学校がもとに戻った 4 については, 東日本大震災では震災から約 3 年が経過した時点で約 4~5 割程度であった. また 現実への帰還の時期 ( 震災後 2 ヶ月 ~1 年 ) に過半数を超えた 毎日の生活が落ち着いた 7 すまいの問題が最終的に解決した 5 は, 東日本大震災では震災から約 3 年が経過した時点で約 3 割であった. さらに 震災後 1 年前後 で過半数を超えた 家計への震災の影響がなくなった 6 自分が被災者だと意識しなくなった 9 は, 東日本大震災では震災から約 3 年が経過した時点で約 2 割であった. そして阪神 淡路大震災では, 震災から 3 年時点で 26.1% がもとに戻っていた 地域経済が災害の影響を脱した 10 については, 東日本では 7.6% であった. 復旧 復興カレンダー項目の中でも 自分が被災者だと意識しなくなった 9 については, 被災者の最終的な復興感覚と大きな影響がある項目である. 震災から約 3 年時点で, 阪神 淡路大震災が 59.7% であったのに対し, 東日本大震災では 21.8% であった. この東日本大震災の数値は, 阪神 淡路大震災の震災約 2 ヶ月後の数値 (19.0%) とほぼ同じであった. この原因として考えられることとして, 中林 (2014) は, 東日本大震災と阪神 淡路大震災の被害 災害対応を比較し, 東日本大震災の特徴として, 海溝型地震による広域被災, 津波災害による地域全体の壊滅的被害, 自治体庁舎および自治体職員 家族の被害, 災害対応初動期の膨大な行方不明者捜索による時間と人手の使用, 避難者対応 仮設住宅設置 ガレキ処理などの膨大な災害対応業務と被災によって縮減した行政能力との不均衡, 復興都市計画の法決定の遅れなどを挙げている 24). 無作為抽出結果と単純に比較することはできないが, このような被害や災害対応の違いが, 災害に立ち向かうための前提条件となるような認識 の遅れ, すまいや仕事の再建 の遅れ, 被災者意識 の残存につながり, 東日本大震災の被災地では, ほぼ 3 年が経った今も多くの住民が 被災者 という意識から抜け出せずにいる 阪神 淡路大震災の時と比べると, 復興が遅れ 停滞している という復旧 復興カレンダーの結果と関係していることが考えられる. (4) 震災 3 年時点での 3 県の比較図 8 が東日本大震災 3 年時点での 3 県および阪神 淡路大震災 (3 年目 ) の結果をまとめたものである. これを見ると, まず 不自由な暮らしが当分続くと覚悟した 3 被害の全体像がつかめた 1 は福島県の数字がやや落ちるものの東日本大震災も阪神 淡路大震災も 8 割以上が既にそのように感じていることがわかる. 次に, 仕事がもとに戻った 4 地域の学校がもとに戻った 12 もう安全だと思った 2 については, 阪神 淡路大震災では 9 割台であったのに対し, 岩手県 宮城県は 50% 台, 福島県は 15~30% であった. 特に もう安全だと思った 2 について岩手県 宮城県と福島県で 40% 程度の差があることが, 復旧 復興の進捗状況の 3 県の差になっていることが推察される. それ以降の項目についても, 阪神 淡路大震災と東日本大震災, 東日本大震災の中でも岩手県 宮城県と福島県とのあいだに差が見られた. 毎日の生活が落ち着いた 7 すまい問題が最終的に解決した 5 は, 阪神 淡路大震災では 8 割台であったのに対し, 岩手県 宮城県は 30~40% 台, 福島県は 20% 台, 家計への災害の影響がなくなった 6 自分が被災者だと意識しなくなった 9 は, 阪神 淡路大震災では 6 割前後であったのに対し, 岩手県 宮城県は 20% 台, 福島県は 10% 台だった. このように福島県の復旧 復興が遅い理由として, 原発事故による長期避難生活という福島県の特殊性が影響し 238
ていることが考えられる. また 地域経済が災害の影響を脱した 10 については, 阪神 淡路大震災が 26.1% に対し, 宮城県 10.5%, 福島県 6.8%, 岩手県 5.4% であった. これについては, 復興予算が宮城県 福島県に集中していることなど, 何らかの原因が他の項目との復興度合いの違いに影響を与えていることが考えられる. 3 不自由な暮らしが当分続くと覚悟した 1 被害の全体像がつかめた 岩手宮城福島 阪神 淡路 3 年目 94.7 93.4 87.3 99.2 93.0 94.3 82.3 98.8 11 地域の道路がもとに戻った 5 すまい問題が最終的に解決した 岩手宮城福島 36.7 34.4 28.0 阪神 淡路 3 年目 30.0 40.6 22.0 80.1 6. 調査時点での心境 4 仕事がもとに戻った 57.3 57.4 30.8 91.2 ( 仕事 / 学校 ) 6 家計への災害の影響がなくなった 26.4 28.7 18.6 65.0 (1) 震災前に暮らしていた地域に戻りたいか現在の心境を明らかにするために, 震災前に暮らしていた地域に戻りたいかを尋ねたところ (n=1201), 戻りたい 18.7%, 戻りたいが戻れない 34.8%, 戻りたくない 18.7%, すでに戻っている 15.2%, その他 無回答 12.7% となった. これを昨年の震災 2 年に行った調査を比較すると (n=1006), 戻りたい 18.2%, 戻りたいが戻れない 37.1%, 戻りたくない 22.1%, すでに戻っている 14.5%, その他 無回答 8.2% となっ 12 地域の学校がもとに戻った た. 調査対象者は基本的に同じであり, 統計的に意味のある差は見られなかった ( その他 無回答は除く )(χ 2 (3)=2.87, n.s.). 既に戻っている人の割合が微減していることも含めて, 住まいの再建に向けての動きが停滞していることが考えられる. (2) 震災から 3 年時点での生活満足度震災から 3 年時点での生活の満足度を明らかにするために, 毎日のくらし, 自分の健康, 今の人間関係, 今の家計の状態, 今の家庭生活, 自分の仕事の 6 項目について, 大変満足 ~ 不満までの 5 段階で回答してもらった. 回答結果について, 因子分析 ( 最尤法, プロマックス回転 ) を行ったところ 1 因子が抽出され, 信頼性分析における α の値が全項目の場合に最も高かった. そのため, 6 項目で主成分分析を行い, 主成分得点を 生活満足度得点 ( 平均値は 0) として抽出した. 生活満足度に影響度を与えている変数を調べると, 県 (F(2, 986)=10.65, p<.01), 年齢 (F(2, 973)=3.89, p<.05), 現在の居住場所の変化 (F(3, 981)=18.84, p<.01), 仕事の変化 (F(4, 820)=15.19, p<.01), 被災者意識の有無 ( 復旧 復興カレンダー )(t(883)=-10.72, p<.01), 震災前の地域に戻りたいか (F(3, 859)=37.86, p<.01), 生活拠点の決定後の迷い (7. 結果 5 で詳述 )(F(3, 810)=37.86) について統計的に有意な差が見られた. また性別 (t(984)=-0.79, n.s.), 家屋被害程度 (F(3, 978)=2.39, n.s.) では差は見られなかった. 有意差のあった変数をまとめたものが図 9 である. 震災前と同じ地域に戻っていたり, その場所を生活拠点としていることに迷いがなかったり, 被災者意識がすでになかったりする人は生活満足度が高かった. 一方, 震災が原因で転退職 転廃業をしたり, 震災前とは別の市町村 ( 同じ県内 ) または別都道府県に居住したり, 決断した生活拠点に迷いがあったり, 震災前に居住していた地域 51.7 50.6 23.6 91.2 ( 仕事 / 学校 ) 2 もう安全だと思った 51.8 55.9 15.8 93.2 7 毎日の生活が落ち着いた 43.0 44.4 26.6 83.1 9 自分が被災者だと意識しなくなった 8 地域の活動がもとに戻った 10 地域経済が災害の影響を脱した 21.3 27.2 17.1 59.7 20.4 26.6 13.5 5.4 10.5 6.8 26.1 図 8 復旧 復興カレンダー (3 県 阪神 淡路大震災の状況 ) 被災者意識 すでにない生活拠点決定後 迷わない戻りたいか すでに戻っている現在居住場所 震災前と同じ仕事継続 震災以外原因の転職 転業生活拠点決定後 あまり迷わない年齢 39 歳以下仕事継続 同じ仕事県 宮城県県 岩手県戻りたいか 戻りたくない年齢 65 歳以上現在居住場所 同市町村の別場所 -0.02 年齢 40~64 歳 -0.05 戻りたいか 戻りたい -0.08 仕事継続 震災以外原因の退職 廃業 -0.09 生活拠点決定後 たまに迷う -0.10 県 福島県 -0.20 被災者意識 まだ残っている -0.20 戻りたいか 戻りたいが戻れない -0.22 現在居住場所 震災前と別都道府県 -0.26 現在居住場所 同県内の別市町村 -0.31 仕事継続 震災原因の転職 転業 -0.31 仕事継続 震災原因の退職 廃業 -0.47 生活拠点決定後 よく迷う-0.48 図 9 生活満足度得点 ( 有意水準 5% 未満 ) ( 主成分得点のため平均値は 0) 0.61 0.45 0.42 0.36 0.34 0.30 0.26 0.20 0.12 0.09 0.04 0.02 に戻りたいが戻ることができなかったり, 被災者意識が 239
まだ残っていたりする人の生活満足度は低かった. 特筆すべきなのは福島県に居住していたこと自体が生活満足度にマイナスの影響を与えていることである. 原発事故による長期避難生活や, 生活拠点を失ったことによる精神的なストレスが影響を与えていると考えられる. このように震災 3 年目において居住場所や仕事が生活満足度に影響を与えていることが明らかになった. 7. 今後の生活拠点 (1) 今後の生活拠点今後の生活拠点をどこにしたいかを尋ねたところ (n=1201), 震災前と同じ場所 33.1%, 震災前と同じ市町村の別の場所 36.6%, 震災前と同じ県の別の市町村 9.3%, 震災前の別の都道府県 5.4%, まだ決めていない 13.2%, 無回答 2.3% であった. これを現在の居住場所別で見たところ ( 図 10), 震災前と同じ場所以外に居住する人の 15~20% が, 震災前と同じ場所 への移転を志向していた. また震災前と同じ県の別市町村に居住する 29.7%, 別都道府県に居住する 23.6% が, 今後の生活拠点を まだ決めていない と回答していた ( 無回答は除く )( χ 2 (12)=1360.68, p<.01). さらに今後の生活拠点を決めた人 (n=1015) に対して 拠点を決めたことに関して, この場所でよかったのだろうかと迷うことはありますか と尋ねたところ, よく迷う 18.9%, たまに迷う 34.5%, あまり迷わない 13.8%, 迷わない 28.3%, 無回答 4.5% となり, よく迷う たまに迷うを含めると, 半数以上が今後の生活拠点の決断が正しかったのか迷いを感じていることがわかった. (2) 今後の生活拠点で重視すること今後の生活拠点で重視することについて尋ねた. 今後の生活拠点別で見ると ( 表 2), 震災前と同じ場所とした人 (n=398) は, 所有する土地や家 墓がある 78.6%, 家族 親戚などがいる 30.9%, 仕事がある 29.6% の順番だった. 震災前と同じ市町村の別の場所とした人 (n=440) は, 津波の危険性が低い 47.5%, 所有する土地や家 墓がある 35.7%, 新たな住まいがある 25.9%, 家族 親戚などがいる 25.9% と, 津波の危険性を避けながらも血縁 土地と繋がっていることを重視していた. 同県の別市町村とした人 (n=112) は, 買い物や交通機関の利便性 53.6%, 医療 福祉体制が充実 35.7%, 放射線量が低い 29.5% と, 生活の利便性および放射線量の影響を重視していた. これは別都道府県とした人 (n=65) でも同様の傾向で, 放射線量が低い 52.3%, 家族 親戚などがいる 36.9%, 買い物や交通機関の利便性 32.3%, 医療 福祉体制が充実 32.3% となり, 放射線量を一番の優先順位として, もともと遠くに住んでいる家族 親戚などの縁があり, かつ生活の利便性の高い土地を選択していた. 特に福島県に居住していた人 (n=413) 全体の 今後の生活拠点 まだ決めていない 点震災前と同じ場所 同市町村同県のの別場所別場所 別都道府県 0.7 2.5 震災前と同場所 N=284 83.8 7.7 5.3 2.7 0.9 同市町村の別場所 N=583 17.5 69.1 9.8 2.4 同県の別市町村 N=212 19.8 5.2 42.9 29.7 別都道府県 N=89 15.7 53.9 23.6 X 2 (12)=1360.68, p<.01 図 10 今後の生活拠点 ( 現在の居住場所別 ) 現在の生活拠3.4 3.4 表 2 今後の生活拠点で重視すること ( 今後の生活拠点別 ) 震災前と同じ場所 (n=398) 同市町村の別場所 (n=440) 同県の別市町村 (n=112) 別都道府県 (n=65) まだ決めていない (n=158) 1 所有する土地や家 墓がある 178.6 235.7 15.2 6.2 328.5 2 新たな住まいがある 4.8 325.9 24.1 15.4 11.4 3 土地勘がある 13.6 15.0 6.3 9.2 5.7 4 家族 親戚などがいる 230.9 325.9 25.9 236.9 20.9 5 近所とのつながり 27.4 17.0 6.3 6.2 10.8 6 友人 知人とのつながり 16.1 17.5 6.3 7.7 10.1 7 買い物や交通機関の利便性 13.8 23.6 153.6 332.3 140.5 8 子育て 教育環境が充実 3.3 4.3 15.2 23.1 9.5 9 医療 福祉体制が充実 8.5 11.1 235.7 332.3 231.0 10 津波の危険性が低い 14.3 147.5 22.3 30.8 18.4 11 放射線量が低い 3.5 2.0 329.5 152.3 25.9 12 仕事がある 329.6 22.5 13.4 16.9 24.1 13 生活資金の都合で 9.8 10.2 4.5 4.6 12.7 14 自治体の方針だから 2.0 8.4 1.8 0.0 1.3 15 行政サービスが充実 1.3 1.1 4.5 7.7 9.5 16 特に理由はない 5.5 5.5 5.4 0.0 7.0 表 3 今後の生活拠点で犠牲にせざるを得ないこと ( 今後の生活拠点別 ) 震災前と同じ場所 (n=398) 同市町村の別場所 (n=440) 同県の別市町村 (n=112) 別都道府県 (n=65) まだ決めていない (n=158) 1 土地や家 墓 12.6 230.2 160.7 167.7 143.7 2 家族 親戚とのつながり 11.1 13.6 31.3 349.2 20.9 3 近所とのつながり 13.8 133.4 258.0 30.8 236.7 4 友人 知人とのつながり 12.1 16.1 338.4 261.5 331.0 5 買い物や交通機関の利便性 219.6 323.4 10.7 6.2 12.7 6 子育て 教育の環境 5.5 3.4 2.7 1.5 1.9 7 医療 福祉の体制 12.8 7.5 4.5 4.6 12.7 8 津波に対する安全 安心 318.6 13.0 3.6 6.2 7.6 9 放射線量に対する安全 安心 14.6 3.9 6.3 6.2 5.7 10 仕事 10.8 8.2 14.3 15.4 17.1 11 生活資金 13.8 19.5 9.8 18.5 15.8 12 行政サービス 5.5 2.3 4.5 1.5 3.8 13 犠牲にせざるを得ないものない 128.9 22.0 8.9 4.6 13.9 240
30.5% が 放射線量が低いこと を今後の生活拠点で重視することとして挙げており ( 岩手県 (n=378):0.3%, 宮城県 (n=410):2.0%), 原発事故による長期避難生活やそのストレスが生活拠点の選択に大きく影響していることが考えられる. まだ決めていない人は (n=158), 買い物や交通機関の利便性 40.5%, 医療 福祉体制が充実 31.0%, 所有する土地や家 墓がある 28.5% であった. 決めていない人が同県の別市町村 別都道府県に多く存在している ( 前節 ) ことから, 生活の利便性ともともとの土地 家 墓との板挟みの状態になっていることが推察できる. (3) 今後の生活拠点で犠牲にせざるを得ないこと今後の生活拠点の決定にあたって犠牲にせざるを得ないことについて尋ねた. 今後の生活拠点別で見ると ( 表 3), 震災前と同じ場所とした人 (n=398) は, 犠牲にせざるを得ないものはない 28.9%, 買い物や交通機関の利便性 19.6%, 津波に対する安全 安心 18.6% の順番だった. これが同市町村でも別の場所 (n=440) になると, 近所とのつながり 33.4%, 土地や家 墓 30.2%, 買い物や交通機関の利便性 23.4% となり, 同じ市町村でも地縁が犠牲になっていることがわかる. 同県の別市町村 (n=112), 別都道府県 (n=65), まだ決めていない (n=158) では, 順位に違いはあるものの上位 4 項目は, 土地や家 墓 ( これはどれも 1 位 ), 家族 親戚とのつながり, 近所とのつながり, 友人 知人とのつながりで, 生活拠点の決定に際して血縁 地縁が犠牲になっていることがわかった. 8. 地域の復興の進捗状況 (1) 地域の復興の進捗震災時に暮らしていた地域の復興が進んでいると感じているかを尋ねて (n=1201), 本調査の前年に行った調査結果 (n=1006)( 木村他, 2014) 20) と比較した. その結果, 想定よりも早く進んでいる 1.8%( 前年度 0.7%), それなりに進んでいる 17.8%( 前年度 12.0%), 想定よりも遅れている 34.3%( 前年度 27.9%), 進んでいる実感が持てない 43.1%( 前年度 57.3%), 無回答 2.9%( 前年度 2.1%) となった. 復興が進んでいると感じる被災者が前年度より増加しており, 復興は着実に進捗していることが伺える. しかし 想定よりも遅れている と 進んでいる実感が持てない を合計すると, 約 8 割が依然として復興の進捗実感に対して否定的な回答であることがわかる. 県別では ( 図 11),3 県とも 進んでいる実感が持てない が減少し, それなりに進んでいる が増加して, 復興が進捗していることが伺える. ただし宮城県 岩手県の回答者の 4 割, 福島県の回答者の 5 割は 進んでいる実感は持てない と回答し, また岩手県 福島県では 想定よりも遅れている と回答した割合がこの 1 年間で 1 割前後増加していることから, その進捗状況は停滞気味か芳しくないと被災者は評価していた. (2) 復興施策の不足と進捗状況具体的な 16 の復興施策について, 特に足りていないと思うものを 3 つまで尋ね, また,16 の復興施策のス 県想定よりもそれなりに想定よりも早く進んでいる進んでいる遅れている 0.3 2013 年 N=324 14.2 29.6 1.9 2014 年 N=366 18.0 41.8 1.3 2013 年 13.5 N=318 34.0 2.8 2014 年 N=396 0.6 2013 年 9.3 N=343 21.5 22.4 34.3 1.0 2014 年 15.6 30.4 岩手県宮城県福島N=404 ピードについて遅い ~ 速いまでの 5 段階で評価してもらった. 特に足りない施策として回答者に選択された割合を x 軸 ( 範囲 :0%~100%), 施策スピードの平均値を y 軸 ( 範囲 :1 速い ~5 遅い ) として県別にプロットすると ( 図 12), 回答者の施策評価が象限ごとに明らかになった. 施策のスピードが遅く不足している施策について, 特に岩手県 宮城県の復興住宅整備 宅地供給 交通道路整備, 福島県の除染実施 原子力備え 復興住宅整備が挙げられていた. 震災から 3 年時点において住宅再建および福島の除染実施が今後の課題として認識されていた. また施策スピードは遅くはないが足りない施策として, 宮城県 岩手県の雇用資金確保といった生業 産業支援が課題として認識されていた. また不足はしていないがスピードが遅い施策として, 福島県の施策が多く挙げられていた. ガレキ処理 宅地供給 自然災害備え 商工再生 観光再生 教育環境整備 心身回復支援など住宅 生業産業 教育 心身などあらゆる面で施策が 遅い と評価されていた. 福島県は原発事故の影響により長期避難生活が続いており, これらの施策の迅速な実施が, 解決のためには喫緊の課題であることが考えられる. 9. まとめ 67.6 図 11 地域の復興の進捗 ( 県別に見た前回調査との比較 ) 進んでいる実感が持てない 55.9 51.3 53.0 38.3 41.4 本研究では, 東日本大震災から 3 年が経過した被災者の現状と課題を明らかにするために,2014 年 1 月, 被災者に対して質問紙調査を実施した. 特に被災者が避難生活を余儀なくされている現状をふまえ, 被災者の 復興の停滞感 と 住宅再建における迷い に焦点をあてながら考察した. 現在までの状況について, 震災時に岩手県 宮城県居住していた回答者の約 9 割, 福島県に居住していた回答者の約 4 割が震災時と同じ市町村内に居住していた. 福島県は避難指示区域の存在が居住場所に影響していた. 仕事の変化では,39 歳以下の 3 割が震災が原因で転職 転業,65 歳以上の 2 割が震災が原因で退職 廃業しており, 被災を契機に高齢者が職を諦める現実がうかがえる. 心身の影響では, 特に震災が原因で転退職 転廃業をした人が, 心身の様々な側面へ影響しており, 安定した仕事が得られるよう支援することが, 震災後の心身のケアに結びつくことが提案できる. 241
りない施策%( 複数回答 ) 復旧 復興カレンダーでは, 回答者の約 8 割が 地域活動は震災前の状態には戻っておらず 自分は被災者 だと認識していた. 阪神 淡路大震災と比較しても, 全ての項目で復旧 復興が遅れており, 広域に渡る壊滅的な被害が, 復興を遅れ 停滞させていることが考えられる. また宮城県 岩手県に比べて, 福島県の復興状況が遅れており, 原発事故による長期避難生活の影響が考えられること, 地域経済については岩手県において復興状況が遅れているという被災者実感がわかった. 今の心境について, 震災前に暮らしている地域に戻りたいかを尋ねると, 前年度調査と変わらない結果となり, 住まいの再建に向けての動きが停滞していた. 生活の満足度については, 居住場所や仕事が影響を与えており, 震災が原因で転退職 転廃業した, 震災前とは別の市町村 ( 同じ県内 ) 別都道府県に居住している, 決断した生活拠点に迷いがある, 震災前の地域に戻りたいが戻ることができない, 被災者意識がまだ残っている人の生活満足度は低かった. 今後の生活拠点については, 震災前と同じ場所以外に居住する人の 15~20% が, 震災前と同じ場所への移転を志向していた. また震災前と別市町村 別都道府県に居住する人の 20~30% が, 今後の生活拠点をまだ決めていないと回答していた. さらに今後の生活拠点を決めた人でも半数以上が, この決断に対する迷いを持っていた. 今後の生活拠点で重視することについては, 決断していない人は, 生活の利便性もともとの土地 家 墓の存在との板挟みの状態になっていた. 今後の生活拠点で犠牲にせざるを得ないことについては, 同じ市町村の別の場所に住む人は地縁が, 同じ県の別市町村 別都道府県 決断していない人は血縁 地縁が犠牲になっていた. 地域の復興については, この 1 年間で着実に復興実感を持つ人が増加したが, 依然として約 8 割が 想定よりも遅れている 進んでいる実感が持てない と回答し ており, 進捗は停滞気味か芳しくないと評価していた. 復興施策の不足と進捗状況では,3 県の住宅再建および福島の除染実施が不足かつスピードの遅い施策として認識されていた. またスピードは遅くはないが不足している施策として宮城県 岩手県の生業 産業支援, 不足していないがスピードが遅い施策として福島県の施策全般が挙げられた. これらの施策の迅速な実施が行われないと, 原発事故による長期避難生活からの解消も難しいことが考えられる. このような被災者の意識をもとに, 今後, どのような復旧 復興施策の展開を行っていけばよいのだろうか. 宮城県 (2014) は 2014 年 4 月に宮城県の現状 課題 取り組みについての見解を全国知事会ホームページに掲載している 25). それによると,1) 被災者の生活再建と生活環境の確保 ( 住まいの確保 ( 仮設住宅, 災害公営住宅 ), 被災者の心身のケア, 県外避難者への対応 ),2) 復興まちづくり,3) 保健 医療 福祉,4) 雇用の確保,5) 地域産業の再生 ( 第 1 次産業の早期復興, 被災事業者の事業展開 ),6) インフラの復旧,7) 産業廃棄物 ( がれき ) の処理,8) 東京電力福島第一原子力発電所事故の対応, を挙げている. 本課題は岩手県や福島県にも当てはまるものだと考えることができる. 阪神 淡路大震災では, 社会基盤の復旧の上 ( 約 2 年 ) に住まい 地域の再建 ( 約 5 年 ) があり, これらを基盤として経済の再建の段階を迎えていた 26). 今後は, 住宅再建や除染を積極的に進めていきながら, まずは 生活拠点を決定する という決断を被災者にしてもらえるような施策 環境づくりが必要である. その時に, 避難指示区域について 10 年スパンでの復帰が難しいようならば政府と被災者との交渉のもとで 新たな土地で生活をはじめる ための支援も必要ではないかと考えることができる. そのためには土地や建物を物理的に用意するだけではなく, 生業 産業支援を迅速 適切 スピードが遅い施策 施策スピード遅い スピードが遅く足りない施策 4.6 4.1 3.6 3.1 2.6 足F 自然災害備え F 原子力備え F 除染実施 I 宅地供給 I 復興住宅整備 I 原子力備え M 復興住宅整備 F 宅地供給 F 農林水産再生 M M 原子力備え宅地供給 F 復興住宅整備 F 観光再生 F 商工再生 F がれき処理 F 交通道路整備 M 自然災害備え I 自然災害備え M 除染実施 F 教育環境整備 F 雇用資金確保 M 交通道路整備 F 心身回復支援 I 観光再生 F 医療福祉整備 I 交通道路整備 0 10 20 30 40 50 60 I 除染実施 F コミュニティ構築 I 商工再生 M 雇用資金確保 M 観光再生 M 商工再生 M 農林水産再生 F 行政機能回復 I 雇用資金確保 足りない施策 I 農林水産再生 I コミュニティ構築 M コミュニティ構築 M 教育環境整備 M 心身回復支援 I 教育環境整備 M 医療福祉整備 岩手県 (I) M 行政機能回復 I 心身回復支援 I 行政機能回復 I 医療福祉整備 宮城県 (M) 福島県 (F) I がれき処理 他の施策と比べてスピードは M がれき処理 遅くなく不足していない施策 施策スピード速い図 12 復興施策 ( 県別 ) の不足と進捗状況 242
に行う必要がある. 調査時点においては, 復興が停滞しており, 仮設住宅などに代表される仮住まいが続いている回答者も, 今後, 個人属性や置かれている状況の変化によって, 保健 医療 福祉や教育など解決すべき課題が多様化していくことが考えられる. 生活再建過程の目標 ( ゴール ) は, どの被災者についても共通して 生活再建 である. しかし生活再建に至る道筋 ( ルート ) は, ライフラインの復旧やまちづくりに目処がたち新たな住まいを手に入れた後は, 個人の状況にあわせて細かく枝分かれしていくことが考えられる. 今後, 行政などの災害対応従事者は, 支援対象者 支援内容の細分化などの準備 支援を進めていき, 取りこぼしのない 支援を目指していく必要があると考えられる. 参考文献 1) 総務省消防庁 : 平成 23 年 (2011 年 ) 東北地方太平洋沖地震 ( 東日本大震災 ) について ( 第 149 報 ) (2014 年 3 月 7 日 ), 総務省消防庁資料, 2014. 2) 復興庁 : 東日本大震災における震災関連死の死者数 ( 平成 25 年 9 月 30 日現在調査結果 )(2014 年 12 月 24 日 ), 復興庁資料, 2013. 3) 環境省 : 災害廃棄物等処理の進捗状況 (3 県沿岸市町村 ( 避難区域を除く )), 環境省資料, 2014. 4) 環境省 : 福島県内市町村除染地域における平成 26 年 2 月末時点での除染実施状況等について, 環境省ホームページ, 2014. http://josen.env.go.jp/zone/details/fukushima_progress.html 5) 復興庁 : 復興の現状 ( 平成 26 年 3 月 10 日現在 ), 復興庁資料, 2014. 6) 総務省消防庁 : 阪神 淡路大震災について ( 確定報 )(2006 年 5 月 19 日 ), 総務省消防庁災害情報, 2006. 7) 国土交通省 : 災害時の賃貸住宅居住者の居住の安定確保について ( 法制審議会被災関連借地借家 建物区分所有法制部会第 4 回会議 ( 平成 24 年 11 月 12 日開催 ) 配付資料 ), 国土交通省資料, 2012. 8) 兵庫県 : 阪神 淡路大震災の復旧 復興の状況について, 兵庫県資料, 2014. 9) 木村玲欧 林春男 田村圭子 立木茂雄 野田隆 矢守克也 黒宮亜季子 浦田康幸 : 社会調査による生活再建過程モニタリング指標の開発 - 阪神 淡路大震災から 10 年間の復興のようす-, 地域安全学会論文集, No,8, pp.415-424, 2006. 10) KIMURA, R., TAMURA, K. and HAYASHI, H. "Development of the Method of Clarifying the Life Reconstruction Process Based on the Random Sampled Social Surveys of the Victims -Recovery and Reconstruction Calendar-", Proceedings of the International Emergency Management Society (TIEMS) 17th Annual Conference, pp.168-178, 2010. 11) 木村玲欧 : 災害心理と社会, 日本歴史災害事典, pp.72-77, 2012.( 北原糸子 松浦律子 木村玲欧 : 日本歴史災害事典, 吉川弘文館, 2012.) 12) 吉森和城 糸魚川栄一 梅本通孝 : マンション住民の地震発生後の避難行動とその要因に関する研究 - 平成 23 年 (2011 年 ) 東北地方太平洋沖地震における仙台市マンション住民を事例として-, 地域安全学会論文集, No.18, pp.199-209, 2012. 13) 執行文子 : 東日本大震災 被災者はメディアをどのように利用したのか~ネットユーザーに対するオンライングループインタビュー調査から~, 放送研究と調査, September, pp.18-30, 2011 14) 佐藤慶一 成田健一 丹波史紀 : 福島原発事故後の双葉地方からの避難者の精神的健康と復興施策への希求, 地域安全学会論文集, No.18, pp.189-197, 2012. 15) 村上晴香 吉村栄一 髙田和子 長谷川祐子 窪田哲也 笠岡宣代 西信雄 横山由香里 八重樫由美 坂田清美 小林誠一郎 宮地元彦 徳留信寛 : 東日本大震災被災者健康調査の質問票における身体活動関連項目の妥当性および再現性の検討, 日本公衛誌, 第 60 巻, 第 4 号, pp.222-230, 2013. 16) 村上晴香 吉村栄一 髙田和子 西信雄 笠岡宣代 横山由香里 八重樫由美 坂田清美 小林誠一郎 宮地元彦 : 仮設住宅に居住する東日本大震災被災者における身体活動量の 1 年間の変化, 日本公衛誌, 第 61 巻, 第 2 号, pp.86-92, 2014. 17) 平山洋介 間野博 糟谷佐紀 佐藤慶一 : 東日本大震災における被災者の住宅事情岩手県釜石市の仮設住宅入居世帯に関する実態調査を通して, 日本建築学会計画系論文集, 第 77 巻, 第 679 号, pp.2157-2164, 2012. 18) 森英高 山口裕敏 谷口守 : 仮のまち 構想を踏まえた転入転居者の今後の居住地選択意向, 地域安全学会論文集, No.21, pp.129-136, 2013. 19) NAGAMATSU, S.: Are Cash for Work (CFW) Programs Effective to Promote Disaster Recovery? Evidence from the Case of Fukushima Prefecture, Journal of Disaster Research, Vol.9, No.2, pp.161-175, 2014. 20) 木村玲欧 矢島豊 松井裕子 鈴木隆平 : 東日本大震災から 2 年を迎えた被災者の現状 - 被災者 1000 人調査 から見えてきた声, 災害情報, No.12, pp.114-123, 2014. 21) 木村玲欧 林春男 立木茂雄 田村圭子 : 被災者の主観的時間評価からみた生活再建過程 - 復興カレンダーの構築 -, 地域安全学会論文集, No,6, pp.241-250, 2004. 22) KIMURA, R.: Recovery and Reconstruction Calendar, Journal of Disaster Research, Vol.2, No.6, pp.465-474, 2007. 23) 木村玲欧 田村圭子 井ノ口宗成 林春男 浦田康幸 : 災害からの被災者行動 生活再建過程の一般化の試み 阪神 淡路大震災 中越地震 中越沖地震復興調査結果討究, 地域安全学会論文集, No.13, pp.175-185, 2010. 24) 中林一樹 : 大規模災害時の自治体間連携と被災地支援に関する研究 - 東日本大震災にみる都道府県間支援の実態からの考察 -, 自治体危機管理研究, Vol.13, pp.1-19, 2014. 25) 宮城県 : 平成 26 年 04 月東日本大震災の発生から 3 年 ~ 宮城県の現状 課題, 取組について ( 宮城県 ), 全国知事会ホームページ, 2014. http://www.nga.gr.jp/data/report/report26/20140401_miyagi.html 26) 田村圭子 立木茂雄 林春男 : 阪神 淡路大震災被災者の生活再建課題とその基本構造の外的妥当性に関する研究, 地域安全学会論文集, No,2, pp.25-32, 2000. ( 原稿受付 2014.5.31) ( 登載決定 2014.9. 6) 243