EPA の概要と原産地規則 平成 22 年 2 月 経済産業省原産地証明室
WTO と EPA/FTA の関係 WTO は ラウンド交渉を通じて等しく貿易障壁 ( 関税など ) の削減 撤廃を目指す EPA や FTA により 締約国間のみでさらに自由化を行うことが可能 高 W T O 全ての加盟国に対し 関税を等しく削減し 適用 ( 最恵国待遇 ) EPA/FTA 締約国間のみで 関税を削減 撤廃 低 自由化のレベル 法的には WTO 協定における 最恵国待遇 の例外として 実質上全ての貿易を自由化 することを条件に認められる WTO における原則 テレビ がタイと FTA を結び 米 中は結んでいない場合 テレビ 全ての国に同じ関税率 に対してのみ関税を撤廃 0% タイ 中国 タイ 中国 米国 1 米国 1
EPA( 経済連携協定 ) とは 経済連携協定 (EPA) は 国や地域同士で 関税 サービス業を行う際の規制 投資を行う際の規制 や 出入国の制限 等の緩和を定める協定 自由貿易協定 (FTA:Free Trade Agreement) 特定の国や地域の間で 物品の関 税やサービス貿易の障壁等を削減 撤廃する協定 経済連携協定 (EPA:Economic Partnership Agreement) 自由貿易協定を柱に ヒト モノ カ ネの移動の自由化 円滑化を図り 幅広い経済関係の強化を図る協定 関税の削 減 撤廃 サービスへの外資規制撤廃 など 人的交流の拡大 投資規制撤廃 投資ル - ルの整備 各分野での協力 知的財産制度 競争政策の調和 など 2
関税の種類 基本税率 協定や別途法律で定めのない限り適用する原則的な税率 WTO 協定税率 (MFN 税率 ) WTO 加盟国 地域に適用 MFN: 最恵国待遇 一般特恵税率 (GSP 税率 ) (GSP : Generalized System of Preferences 開発途上国から輸入される一定の農水産品 鉱工業産品に対し 一般の関税率よりも低い税率 ( 特恵税率 ) を適用する制度 EPA 特恵税率 EPA 協定国 地域に適用 3
我が国の EPA の取組状況 スイス発効済 (09 年 9 月 1 日 ) GCC 諸国交渉中 湾岸協力会議 : サウジアラビア クウェート アラブ首長国連邦 バーレーン カタール オマーン EU 民間研究中 発効済 :10 ヶ国 1 地域 ( シンガポール メキシコ マレーシア チり タイ インドネシア ブルネイ フィリピン スイス ベトナム ASEAN) アセアン全体 (AJCEP) : 平成 21 年 12 月現在 ( シンガポール ベトナム ミャンマー ラオス ブルネイ マレーシア タイ カンボジア ) ( インドネシア フィリピンは未発効 ) 中国 アセアン全体 (AJCEP) 発効済 (08 年 12 月 1 日 ) 韓国交渉中断中 ( 再開に向け事務レベルで協議中 ) メキシコ発効済 (05 年 4 月 ) チリ発効済 (07 年 9 月 ) ペルー交渉中 インド交渉中 タイ発効済 (07 年 11 月 ) シンガポール発効済 (02 年 11 月 ) 改正 (07 年 9 月 ) ベトナム発効済 (09 年 10 月 1 日 ) マレーシア発効済 (06 年 7 月 ) フィリピン発効済 (08 年 12 月 11 日 ) ブルネイ発効済 (08 年 7 月 ) ASEAN+6/3 政府間での議論開始に合意 インドネシア発効済 (08 年 7 月 ) 豪州交渉中 NZ 4
EPA を利用した場合のメリット WTO に基づく原則 全ての国に同じ関税率 テレビ だけが A 国と EPA を締結している場合 に対してのみ関税を撤廃 0% テレビ A 国 B 国 A 国 B 国 C 国 C 国 メリットの具体例 EPA を利用してからマレーシアにヘッドホン (1 台 1000 円 )1 万個を輸出する場合 (2007 年 9 月現在通常税率 :5% EPA 税率 :0%) EPA を利用しない場合 : 関税率が 5% だから 1000 円 1 万個 0.05=50 万円 EPA を利用する場合 : 関税率が 0% だから 1000 円 1 万個 0= 0 円 EPA を利用すると 50 万円の関税が優遇! メリット ( 関税減免 ) を受けるためには 原産地証明書が必要 5
輸出者 原産地証明書とは 関税削減 撤廃対象となる産品について EPA 相手国内で生産 加工されたことが証明された場合に限り 原産地証明書が取得可能 我が国では 輸出者の申請に応じ 商工会議所が原産地証明書を発給 輸出者から受領した輸入者が輸入通関時に提出することにより 関税減免を享受 原産地証明書の例 ( 日タイ EPA) 輸入者 輸出数量 船積日等 インボイスの番号 日付 輸出産品名 発給機関の印章等 6
原産地証明書の発給件数の推移 協定数の増加を背景に 発給件数は増加基調 リーマン ショック以降発給数が一時減少したが 昨年夏から回復傾向 (6,000 件超 / 月 ) ( 件数 ) EPA に基づく特定原産地証明書の発給件数の推移 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 日ベトナム日スイス日フィリピン日アセアン日ブルネイ日インドネシア日タイ日チリ日マレーシア日メキシコ 1,000 0 4 月 7 月 10 月 1 月 4 月 7 月 10 月 1 月 4 月 7 月 10 月 1 月 4 月 7 月 10 月 1 月 4 月 7 月 10 月平成 17 年平成 18 年平成 19 年平成 20 年平成 21 年 7
原産地証明書の取得までの手順 Step1 Step2 Step3 Step4 輸出産品の HS 番号の確認 EPA 税率の確認 輸出産品の原産地規則の確認 輸出産品の原産性確認 EPA を利用するには まず輸出産品の 6 桁ヘ ースの HS 番号 ( 注 1) の確認が必要 HS 番号の正確な確認のため 輸入者又は最寄りの税関にも照会 HS 番号は HS2002 年版を使用することに留意 ( ベトナム スイスは HS2007 年版 ) 輸出産品の HS 番号が確認できたら EPA を使った場合の税率が現状の関税率よりも有利なのかを確認 個別の EPA 税率は 各協定の 品目別関税撤廃スケシ ュール ( 譲許表 ) や JETRO の 世界各国の関税率 で確認 輸出する産品が EPA の特恵を受ける資格があるのかを確認するための基準が原産地規則 個々の輸出産品の原産地規則は 各協定の 品目別規則 で確認 輸出する産品の原産地規則 ( 例えば CTC や VA) が把握できたら 資料 3( 注 2) を参考にしながら当該産品に原産性があるか否かを確認! Step5 原産地証明書の発給申請 取得 輸出する産品が原産性ありと確認できたら 商工会議所への発給申請手続に進むべく 商工会議所の HP にアクセス 3 段階 (1 企業登録 2 原産品判定依頼 3 発給申請 ) の手続を経て EPA 原産地証明書を取得し 輸入者に送付 ( 注 1) 関税分類番号 (HS 番号 ): 全ての貿易品目の分類に用いられる世界的に統一された番号 ( 注 2) 原産資格を立証するための基本的考え方と整えるべき保存書類の例示 (2009 年 12 月経済産業省作成 ) ( ) 上記詳細 ( 譲許表及び品目別規則含む ) は日商 HP から確認できます http://www.jcci.or.jp/gensanchi/2.html 8
原産品であることを判断する基準 輸出品が原産品であるか否かの基準 ( 原産地規則 ) は EPA 品目ごとに規定 原産地証明書は 輸出品がこの基準を満たしている場合に発給 主な基準の種類は 以下のとおり 概要 適用される産品例 (1) 完全生産品 締約国の区域内において 完全に生産される産品を原産品とするもの 農産品 動植物 鉱物資源等の天然産品 (2) 付加価値基準 (3) 関税番号変更 基準 加工の結果 産品に付加された価値が特定の比率 ( 例 :40%) 以上となる場合に 原産品とするもの 完成品の HS 番号と輸入原料 部品の HS 番号が異なれば 原産品とするもの 鉱工業品 鉱工業品の場合 付加価値基準もしくは関税分類変更基準のいずれか一方を満たすことをもって原産品とするルールが一般的 (4) 加工工程基準 各製品の 重要と認められた製造作業又は技術的な加工作業を例示し その加工作業が行われたことをもって 原産品とするもの 化学品の化学反応工程や 半導体の拡散工程など 9
付加価値基準の例 < 例 > 乗用車 (HS 8703.24) : 付加価値基準 ( 注 ) は原産品 原産材料は非原産材料 原産地規則 : 原産資格割合が 40 パーセント以上であること 原産資格割合 = ( F.O.B. 価額 - 非原産材料の価額 ) / ( F.O.B. 価額 ) = ($20,000 - $3,000) / $20,000 = 85% > 40% 特定原産品 エンジン トランスミッション サスペンション ブレーキ類 ベアリング ウインドウガラス タイヤ ホイール その他 中国 乗用車 HS 8703 総額 $3,000 カーオーディオ 灯火類 ミラー類 ワイヤハーネス その他 相手国へ $20,000 で輸出 10
関税番号変更基準の例 < 例 > パソコン (HS 8471.30): 関税番号変更基準 ( 注 ) は原産品 原産材料は非原産材料 原産地規則 : 第 8401.10 号から第 8485.90 号までの各号の最終製品への当該各号以外の号の外国製部品からの変更 台湾製部品 (CPU):HS 8542.21 パソコン :HS 8471.30 特定原産品 半導体メモリ HS 8542.21 液晶画面 HS 8471.60 ハードディスク HS 8471.70 パソコン HS 8471.30 相手国へ輸出 台湾 CPU HS 8542.21 11
関税番号 (HS コード ) とは 原産品判定のためには まず輸出産品の関税番号への確認が必要です! 一番大きい分類は 世界共通で 2 桁のコードで 1~97 類まで存在 HS:85 類 ( 電子機器及びその部分品 ) HS:8501( 電動機 ) HS:8502( 発電機 ) HS:8503( 部分品 ) HS:8504( トランスフォーマー ) 関税番号 (HS コード ) とは HS:8544 ( 電気絶縁をした線 ケーブル ) 6 桁までは全世界共通のコードが使用されます HS:8544.11( 銅の巻線 ) HS:8544.19( その他の巻線 ) HS:8544.20( 同軸ケーブル ) HS:8544.60 ( その他の電子導体 ) 一番細かい分類の桁数は 国によって異なる では 9 桁が最も細かい分類を表す HS:8544.60.010( 自動車用 ) HS:8544.60.090( その他用途 ) 2 桁 ( 類 ) 4 桁 ( 項 ) 6 桁 ( 号 ) HS コードが細かくなるにつれ 品目が特定されます 12
積送基準 発給当局 c/o 輸出者 と締約国間を直接輸送 もしくは 他の締約国又は第三国を一定条件の下に経由しないと原産資格を失うので注意! 原産地証明書 1 直接輸送 c/o 締約国 税関 c/o 輸入者 積送基準 (a) 他方の締約国から直接輸送 ; 又は (b) 一又は二以上の締約国又は第三国を経由して輸送される場合には 積替え又は一時蔵置 積卸し及び産品を良好な状態に保存するために必要な作業以外の作業が行われていないこと 2 積替え 一時蔵置 2 の場合 : 通し船荷証券の写し 又は 第三国の税関等が提供する証明書その他の情報であって 当該第三国で積卸しや保存のための作業等以外が行われていないことを証明するもの のいずれかの提出が求められ得る 保税地域 他の締約国 第三国 3 通関し加工後再輸出 13
認定輸出者自己証明制度の導入 日スイス EPA では 原産地証明書として商工会議所が発給するものに加え 認定を受けた輸出者が自ら作成できる制度を導入 これまでの制度 新たな制度 輸入国 輸入国 輸出者 3 原産地証明書の送付 輸入者 輸出者 3 原産地証明書の送付 輸入者 2 原産地証明書の作成 商工会議所 2 原産地証明書の発給 4 減免された税率の適用 1 認定 4 減免された税率の適用 1 指定 経済産業大臣 税関 経済産業大臣 税関 ( ) 認定申請は経済産業省にて受付 14
参考情報 資料 EPA とは何か EPA 活用に必要な手順について知りたい場合には http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/epa_katsuyo/index.html http://www.jcci.or.jp/international/certificates-of-origin/ EPA の原産地証明書取得手続の詳細について知りたい場合には http://www.jcci.or.jp/gensanchi/flow.html http://www.jcci.or.jp/gensanchi/epa_manual.html 認定輸出者自己証明制度について知りたい場合には http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/epa/epa_katsuyo/080616epa_origin.html お問い合わせ先 EPA 協定について 経済産業省通商政策局経済連携課 TEL:03-3501-1700 FAX:03-3501-1592 経済産業省貿易経済協力局原産地証明室 TEL:03-3501-0539 FAX:03-3501-5896 EPA 原産地証明書の発給について 商工会議所国際部 TEL:03-3283-7850 FAX:03-3216-6497 商工会議所大阪事務所 TEL:06-6944-6216 FAX:06-6944-6232 EPA 輸出全般について JETRO 東京貿易投資相談センター JETRO 大阪本部貿易投資相談センター TEL:03-3582-5171 TEL:06-6447-2307