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遺伝子治療 遺伝子を外から補充 付加する治療法 体内 In vivo 遺伝子治療 遺伝子を組み込んだベクターの投与 ベクターの例 直接投与 体外 ex vivo 遺伝子治療 遺伝子導入細胞の投与 標的細胞を取り出す (自己 同種) ウイルスベクター 造血幹細胞 T細胞 等 培養 増幅 ベクターによる遺 伝子導入 レトロウイルス アデノウイルス AAV 等 レンチウイルス プラスミドベクター プラスミドDNA リポフェクション 腫瘍溶解性ウイルス 腫瘍内 筋肉内 眼内 肝臓 内 脳内 皮内 等 培養 増幅 投与 遺伝子導入細胞 遺伝子の変異が原因の病気では 正常な遺伝子を補充することで治療効果 がんなどの難病に対しても開発が進んでいる 欧米では既に計7品目が上市 4

遺伝子治療の対象疾患 心血管疾患 7% 感染症 7% 単一遺伝子疾患 11% 神経疾患 2% 眼疾患 1% その他 7% がん 65% *J Gene Medicine 2017.11 data がん ( メラノーマ B 細胞性白血病 ) 前立腺癌 肺癌 脳腫瘍 頭頸部癌など 単一遺伝子疾患 : 先天性免疫不全症 (ADA 欠損症 ) レーバー病 LPL 欠損症 血友病 β サラセミア 副腎白質ジストロフィーなど ウイルス感染症 :HIV/AIDS B 型肝炎ウイルス C 型肝炎ウイルスなど 心血管疾患 : 閉塞性動脈硬化症 狭心症 心筋梗塞等 神経疾患 : パーキンソン病 アルツハイマー病 ALS など 眼疾患 : 網膜色素変性 加齢黄斑変性など 遺伝子疾患だけでなく様々な疾患を対象として開発研究が行われている 5

遺伝子治療の歴史 創世期 1970 年代 : 組換え DNA 技術の発展 1990 年 : 世界で初めての遺伝子治療実施 ( 米 ):ADA 欠損症 1995 年 : 日本で初めての遺伝子治療実施 :ADA 欠損症 停滞期 再興期 実用化 1999 年 : アデノウイルスベクターの大量投与による死亡事故 ( 米 ) 2000 年 :X-SCID 遺伝子治療で初めての成功例が報告される ( 仏 ) 2002 年 :X-SCID 遺伝子治療の副作用で白血病発症 ( 仏 ) 2008 年頃から単一遺伝子疾患を中心に成功例の報告が相次ぐ 2012 年 :ASGCT が Target 10(5-7 年以内に実用化が期待される遺伝子治療対象疾患 ) を発表 2012 年 : 先進国で初めての遺伝子治療製品 (AAV) が欧州で承認 2015 年 : 欧米で初めての腫瘍溶解性ウイルス製品 (HSV) が欧米で承認 2016 年 : 欧州で遺伝子導入細胞製品 2 品目承認 (ADA 欠損症 GVHD 予防 ) 2017 年 : 米国でCAR-T 細胞製品 2 品目 遺伝子治療製品 ( レーバー病 )1 品目承認 6 6

欧米で承認された遺伝子治療用製品 製品名 ( 会社名 ) 製品の種類導入遺伝子適応症承認国 Glybera (UniQure) AAV1 リホ 蛋白質リハ ーセ (S447X バリアント ) LPL 欠損症 欧州 2012 (2017 承認整理 ) Imlygic (Amgen) Strimvelis (GSK) 腫瘍溶解性 HSV1 GM-CSF メラノーマ米 欧 2015 レトロ - 造血幹細胞 ADA ADA 欠損症欧州 2016 Zalmoxis (MolMed) レトロ -T 細胞 HSV-TK Mut2 /ΔLNGFR ハプロ一致造血幹細胞移植の GVHD 予防 欧州 条件付承認 2016 Kymriah (Novartis) レンチ -T 細胞 (CAR-T 細胞 ) 抗 CD19 キメラ抗原受容体 B 細胞性急性リンパ芽球性白血病 米国 2017 Yescarta (Kite Pharma) レトロ -T 細胞 (CAR-T 細胞 ) 抗 CD19 キメラ抗原受容体 B 細胞性リンパ腫 米国 2017 Luxturna (Spark Therapeutics) AAV2 RPE65 レーバー先天性黒内障 米国 2017 7

実用化が期待される遺伝子治療対象疾患 Target 10 January 6, 2012 From: the American Society of Gene & Cell Therapy and all the Society s past Presidents To: NIH Director, Francis S Collins 2012 年に発表されたTarget 10 中 Target 10 group of disease and disorders 4 品目が2017までに承認 1. レーバー先天性黒内障 Spark 米国で承認 (2017) 2. ADA-SCID GSK 欧州で承認 2016 3. 血友病 B Baxter Spark Phase I/II 4. X-SCID(Phase I/II) 5. パーキンソン病 (Phase I) 6. 加齢黄斑変性 Sanofi-Genzyme (Phase I) 7. 副腎白質ジストロフィー Bluebird Bio (Phase II/III) 8. サラセミア ( 溶血性貧血 ) Bluebird Bio (Phase II/III) 9. リンパ腫 Novartis, Kite Pharma 米国で承認 (2017) 10. メラノーマ Amgen 欧米で承認 2015 朝日新聞記事より 8

主な遺伝子治療用ベクターの特徴 ベクターの種類 染色体組込み 遺伝子導入 分裂細胞 遺伝子導入 非分裂細胞 遺伝子発現期間 野生型ウイルスの病原性 主な投与法 その他の特徴 レトロウイルスベクター レンチウイルスベクター 長期あり ex vivo 挿入変異リスク 大量生産が容易 長期あり ex vivo 挿入変異リスク 大量生産が難しい アデノウイルスベクター 低頻度 短期あり in vivo 高力価 免疫原性 細胞傷害性 アデノ随伴ウイルス (AAV) ベクター 低頻度 長期 ( 非分裂細胞 ) なし in vivo ゲノムサイズに制限 <4.7kb 大量生産が難しい プラスミドベクター 低頻度 短期 - in vivo 非ウイルス性 細胞傷害性 導入効率が低い 9 9

遺伝子治療用製品の開発動向 遺伝性疾患の遺伝子治療 単一遺伝子欠損症で多くの成功例 ex vivo 遺伝子治療の主流は造血幹細胞遺伝子治療で 利用するベクターはレトロウイルスからレンチウイルスに移行 in vivo 遺伝子治療は AAV ベクターが主 いずれも 1 回の投与で数年単位の長期有効性が確認 遺伝子の染色体組込部位はランダムで レトロウイルスベクターでは対象疾患によっては挿入変異によるがん化が認められる がんの遺伝子治療 腫瘍溶解性ウイルス 遺伝子導入 T 細胞療法 ( 特に CAR-T)( レトロ レンチ ) ゲノム編集技術を用いた次世代遺伝子治療 10

がんの最新遺伝子治療法 CAR-T 細胞療法 がん細胞を認識する抗体と T 細胞を活性化させる分子を結合したキメラ分子 CAR(Chimeric Antigen Receptor) 遺伝子を T 細胞に導入 CAR-T 細胞はがん抗原を認識してがん細胞を攻撃 CAR ( キメラ抗原受容体 )-T 細胞 ) 攻撃指令を伝える部位 がん抗原を認識する抗体がん細胞 がん抗原 T 細胞 CAR がん細胞を見つけて攻撃 難治性急性白血病で 80% 以上の奏効率 米国で 2017 年に 2 品目承認 日本でも治験を実施中 11

遺伝子治療の課題 染色体への遺伝子挿入による発癌の可能性 ( レトロウイルスベクターで特定の疾患を対象とした造血幹細胞に遺伝子導入した場合に起きる リスクはゼロではなく長期フォローアップが重要 ) 生殖細胞への遺伝子導入されるリスク (in vivo 遺伝子治療 ) ウイルス ベクターが増殖能を獲得する可能性 ( 増殖性ウイルスの出現 ベクター設計により改善されている ) 遺伝子治療を受けた患者からのウイルスやベクターの排出 (shedding) 家族や医療従事者への伝播リスク 治療費が高額 ( ただし 1 回の投与で長期間効果があれば 医療経済的には低減化も期待される ) 12

本日の話題 1. 遺伝子治療 1 総論 ( 現状と課題 ) 2 日本の動向 ( 現状と課題 ) 2. ゲノム編集 1 総論 ( 現状と課題 ) 2 日本の動向 ( 現状と課題 ) 13

遺伝子治療臨床試験の国別承認件数 全世界合計 2597 件 * 順位 国名 件数 * 1 USA 1643 2 UK 221 3 Multi-Country 130 4 Germany 92 5 China 84 6 France 59 7 Switzerland 50 8 Japan 44* (66**) 9 Netherlands 34 10 Australia 32 *J Gene Medicine 2017.11data ** 衛研調べ 多施設共同研究は施設毎にカウント 2018.1 14

日本の遺伝子治療臨床試験の承認件数 件数 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 66 件 ** 年 企業治験医師主導治験臨床研究 X-SCID 白血病 Glybera EU 承認 T-vec 欧米承認 医薬品医療機器法再生医療新法 ** 衛研調べ 2018.1 多施設共同研究は施設毎にカウント 15

日本の遺伝子治療臨床試験の現状 臨床試験の種類 ベクターの種類 企業治験 15% 医師主導治験 14% HSV1 10% レンチ 6% AAV 5% レトロ 32% 臨床研究 71% プラスミド 22% アデノ 25% ** 衛研調べ 2018.1 多施設共同研究は施設毎にカウント 16

日本の遺伝子治療臨床開発の課題 日本ではこれまで 60 件以上の臨床試験が実施 現在 1 品目承認申請中 承認品目はなく 欧米に比べて開発に遅れ ( 開発及び審査の経験不足 ) ベクター製造施設の不足 ( 特に AAV 治験以降 ) 遺伝子治療の研究者 研究費が少ない 欧米で開発の主流となる AAV レンチの開発が少ない 遺伝子治療の開発が主に大学等のアカデミアの研究者に担われ 企業による開発が少ない 治験と臨床研究で異なる指針に基づき異なる審査が行われている ( 欧米では治験も臨床研究も同じ IND 審査を受ける ) ウイルスベクターに対するカルタヘナ法規制 : 環境影響を含めて適用 ( 承認時のベクター使用方法の規制が課題 ) 17

本日の話題 1. 遺伝子治療 1 総論 ( 現状と課題 ) 2 日本の動向 ( 現状と課題 ) 2. ゲノム編集 1 総論 ( 現状と課題 ) 2 日本の動向 ( 現状と課題 ) 18

ゲノム編集 (Genome editing) とは 生命の設計図である遺伝情報 ( ゲノム ) の狙った場所を切断し 書き換えることができる技術 ゲノム編集酵素 : 染色体の狙った配列を切断するはさみ 標的遺伝子標的配列 染色体 DNA 細胞の二本鎖 DNA 修復機構 非相同末端結合修復時にエラー ( 変異 ) が入る 塩基の変異 相同配列 相同組換修復 欠失変異 挿入変異 遺伝子の破壊 (KO) 遺伝子の書き換え ( 修復 ) 遺伝子 修復時に遺伝子を導入 19

従来の遺伝子治療とゲノム編集治療の違い 従来の遺伝子治療ゲノム編集遺伝子治療 染色体異常遺伝子染色体異常遺伝子 遺伝子導入異常遺伝子正常遺伝子本来とは異なる場所 従来の遺伝子治療の限界 遺伝子を補充 付加する治療法 異常遺伝子は残ったまま 遺伝子の組込部位はランダム がん化のおそれ 発現調節ができない X 遺伝子の破壊 遺伝子の修復遺伝子導入 異常遺伝子や不要な遺伝子を破壊できる 異常遺伝子の変異を修復できる 安全な場所に遺伝子を組込むことができる 発現調節も可能 ゲノム編集で狙った場所を切断 相同組換え 従来の遺伝子治療では実現できない治療が可能になると期待 20

第一世代 : ZFN 1996~ (Zinc Finger Nuclease) ゲノム編集技術の種類 はさみ ( 人工ヌクレアーゼ : タンパク質 )2 種類を標的配列毎に作製して認識 切断 V 第二世代 : TALEN 2010~ (Transcription Activator Like Effector Nuclease) 植物に感染する細菌の転写因子由来 はさみ ( 人工ヌクレアーゼ : タンパク質 )2 種類を標的配列毎に作製して認識 切断 第三世代 : CRISPR/Cas 2012~ (Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats / CRISPR associated protein) ( 古 ) 細菌の獲得免疫機構を基に開発 はさみはヌクレアーゼ ( タンパク質 ) とガイド RNA の複合体標的配列毎にガイド RNA を作製して認識 切断 V 21

ゲノム編集による遺伝子治療の方法 体外 (ex vivo) ゲノム編集 体内 (in vivo) ゲノム編集 ゲノム編集のはさみを細胞に導入 ( ベクター 化学的導入法 物理的導入法 ) ゲノム編集した細胞を患者に投与 造血幹細胞 HSC, T-cell, T ips 細胞 cellips 細胞 細胞を取り出す ゲノム編集のはさみを直接体内に導入 ( ベクター ナノ粒子を利用 ) Mol. Ther. 24, 430 2016 22

ゲノム編集治療の標的組織と対象疾患の例 眼 : 眼疾患 ( レーバー黒内障 ) 骨格筋 心臓 :Duchenne 型筋ジストロフィー 肺 : 呼吸器疾患 (Cystic fibrosis) 肝臓 : 血友病 リソソーム病 チロシン血症 高コレステロール血症 ( 標的 :PCSK9) α1- アンチトリプシン欠損症 ウイルス感染症 (HBV) 皮膚 : 表皮水疱症 血液細胞 : 細菌感染症 血液疾患 (X-SCID, ADA-SCID, RS-SCID, Sickle cell disease, β- サラセミア ) 癌に対する T 細胞療法 ウイルス感染症 (HIV) Mol. Ther.24, 430 2016 遺伝子疾患に限らず 様々な病気を対象に研究開発が進められている 23

ゲノム編集治療の臨床試験登録件数 (ClinicalTrials.gov の 2017.9 のデータより ) 件 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 TALEN の開発 CRISPR/Cas9 の開発 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 年 日本ではまだ実施されていないが 海外ではゲノム編集の臨床試験が急増 CRISPR TALEN ZFN 24

ゲノム編集を利用した CAR-T 細胞療法 急性リンパ性白血病の 11 ヶ月の女児に CAR-T 細胞療法を試みようとしたが 十分量の細胞を集められず ユニバーサル CAR-T 細胞 CAR 遺伝子導入 抗がん剤 ( 抗体 ) ゲノム編集を用いて他人の T 細胞から作った CAR-T 細胞で治療に成功 T 細胞受容体を X KO X リンハ 球抗原を KO 患者の細胞を異物として攻撃しない 抗がん剤を併用できる 誰にでも投与できるので細胞を作り置きすることですぐに治療ができる 25

体内ゲノム編集の臨床試験 血友病 B: 血液凝固第 9 因子の遺伝子変異により 出血が止まらなくなる遺伝性疾患 ムコ多糖症 1 型 2 型 : 代謝酵素の欠損により 様々な臓器障害 脳の障害が進行する遺伝性疾患 現在の治療法は不足している血液凝固因子 / 欠損酵素の注射 ( 週 1 2 回 一生涯 ) 体内ゲノム編集 (2017 投与開始 ) AAV2/6 ベクターにゲノム編集コンポーネントを搭載 ZFN1, ZFN2 治療用正常遺伝子 肝臓のアルブミン遺 伝子座に正常遺伝 子が組み込まれる 1 回の投与で 肝臓から 長期間 治療用タンパク Sangamo 社資料より 質が産生 26 26

開発動向 臨床開発は現時点では遺伝子破壊か遺伝子導入のみ ( 遺伝子修復は遺伝子破壊に比べて効率が低い ) ゲノム編集酵素の導入効率から AAV やアデノが主に利用されてきた mrna やタンパク質での導入も行われている ( エレクトロポレーション ナノパーティクル等 DDS) 特異性の高いゲノム編集酵素の開発 二本鎖切断を伴わないゲノム編集法など安全性を高めたゲノム編集法の開発も進んでいる 課題 ゲノム編集の開発動向と課題 まだ臨床経験が少なく安全性に懸念 目的外の遺伝子を切断 書き換えてしてしまうオフターゲット変異リスク 染色体の切断に伴う転座のリスクや意図しない配列の挿入リスク 修復効率が低い 27

本日の話題 1. 遺伝子治療 1 総論 ( 現状と課題 ) 2 日本の動向 ( 現状と課題 ) 2. ゲノム編集 1 総論 ( 現状と課題 ) 2 日本の動向 ( 現状と課題 ) 28

日本のゲノム編集治療の現状と課題 現状 まだ基礎研究のみで臨床開発は始まっていない 新たなゲノム編集法の開発研究が行われている ウイルスベクターを用いないゲノム編集には製薬企業も興味 課題 臨床開発のための品質 安全性の指針等の整備 特許の問題 ウイルスベクターを用いるゲノム編集では従来の遺伝子治療と同様の課題 29

ままとめとめ 従来の遺伝子治療 実用化が始まっている 遺伝子疾患だけでなく癌の治療でも効果 1 回の治療で長く効果が続く 様々なベクターが利用されている 遺伝子疾患をすべて治せるわけではない ゲノム編集による遺伝子治療 遺伝子治療の可能性を広げる有望な治療法と期待 ゲノム編集技術は急速に進歩 有効性 安全性についてはさらに研究が必要 受精卵 生殖細胞のゲノム編集には科学的に未解決のリスクがあり 現時点での臨床応用は認められない 30