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2 SR Live for HDR とはなにか Ver.1.0

目次 はじめに... 4 4K HDR/HD SDR 番組のサイマル制作 ( 同時制作 ) ワークフロー... 5 HD SDR 画像でのアイリスフォローおよびペインティング... 6 S-Log3 を中間フォーマットとした HDR/SDR サイマル制作... 7 見た目 の基準 OOTF... 9 中間フォーマットとしての S-Log3 の特色...11 HDRC-4000 の活用方法...13 むすびに...14 3

はじめに 4K HDR ( ハイダイナミックレンジ ) コンテンツ制作の技術を 現在主流の HD SDR ( スタンダードダイナミックレンジ ) ライブ制作現場に導入することは これまでの番組制作の歴史的改革にも匹敵するような技術的チャレンジです 一番の鍵は 新しい 4K HDR 技術を HD SDR ライブ制作での知識 技術 ワークフローといった現行環境を継承しながら投入することでした 4K HDR 制作のために新たに機材やスタッフを増員することは予算的に厳しい場合が多く 現実的でありません 仮に 予算面での問題がクリアできても 技術面での課題が残ります 白レベルやハイライト シャドウレンジ等をどこに合わせたらよいのか SDR での制作とは異なり HDR によるライブ制作には 頼りとする操作経験も 推奨される撮影条件も確立していません これらの課題に対応するソリューションを見つけ出すために ソニーは幅広い技術リサーチと 放送およびプロダクション関係の皆様のご協力のもと 数々の HDR 制作トライアルを行なってきました 本ホワイトペーパー SR Live for HDR とは は トライアルを通して得た貴重な知識と経験をご紹介しつつ HDR ライブ制作技術およびワークフローについて具体的なご提案をするものです 4

4K HDR/HD SDR 番組のサイマル制作 ( 同時制作 ) ワークフロー 今日テレビが HD 解像度から UHD (Ultra HD 4K/8K) 解像度へ移行していく中 多くのコンテンツ制作会社が 将来を先取りし 4K カメラなどスタジオ内外の撮影機材に予算を投じています ソニーは 2015 年 2/3 インチ 3 板式 4K イメージセンサー搭載 HD 8 倍速 4K 2 倍速のハイフレームレート撮影を実現したカメラ HDC-4300 を業界で初めて導入しました お陰様で 本カメラシステムは世界中の HD/4K スタジオおよびスポーツ撮影システムとして 大変好評をいただいております このカメラシステムの大きな特色の一つは デジタル信号処理エンジンをマルチに搭載したベースバンドプロセッサーユニット (BPU) の存在です HDC-4300 ( カメラヘッド ) に BPU を組み合わせることで 4K 信号と HD 信号の同時出力が可能になります また BPU は異なる出力フォーマット信号それぞれに 異なる色域と OETF (Opto-Electrical Transfer Function) を設定することができます これにより 一台のカメラシステムから 4K HDR 映像と HD SDR 映像を同時出力し サイマル制作を可能としています 一台のカメラから複数のコンテンツをサイマル制作する大きな利点の一つは 異なる出力信号間であっても映像のトーンやルックなどが保たれる点です 一方で明るさに関しては VE さん ( ビデオエンジニア ) が HDR と SDR を それぞれに最適な輝度レベルに調整したいシーンが多々あります たとえばカメラのアイリスを SDR 信号の 100% の白レベル (Reference White) になるよう調整しておきます すると HDR 映像を再現した際には 全体に暗く コントラスト感のない不満足な映像となってしまいます 一方 HDR 信号の白レベル (Diffuse White) を 300% にすれば 高いコントラスト感のあるパンチの効いた映像が得られます しかし そのように HDR に合わせてアイリス調整をしますと 今度は SDR 映像が白飛びし 高輝度部分の映像は失われてしまいます そこで弊社では BPU のマルチデジタル信号処理エンジンに加えて 独自技術である SDR Gain 調整 機能を導入しました 本機能は HDR/SDR 各経路に適当な Gain 差を設定することにより 4K 信号および HD 信号それぞれを最適な輝度レンジに調整します ( 図 1) 5

4K-HDR & SDR Simultaneous Production BPU-4000/4500 HDR HDR Processor Applying Gain Differential HDC-4300 SDR Processor SDR 図 1: BPU における SDR Gain 調整 では その適当な Gain 差とは? ですが トライアル結果から 高輝度条件下での撮影においては Gain 差に比較的大きな値を 夜間など暗い条件下では小さめの値を設定することが基本になります 実際の値はケースバイケースで設定する必要がありますが おおむね -6dB から -10dB の範囲が推奨値です なお カメラを複数台使用時の SDR Gain 調整 機能で留意すべき点は以下のとおりです すべてのカメラの SDR Gain を同値に設定する 撮影中に SDR Gain 値を変更しない ( 従来の SDR ライブ制作同様 輝度調整はアイリスフォローで行なう ) HD SDR 画像でのアイリスフォローおよびペインティング BPU は カメラマンが現行 HD ライブ制作での映像と同様のフレーミングやフォーカス合わせができるよう SDR 出力をビューファインダーにフィードバックします SDR Gain 調整 機能を使用することの大きな利点の一つは 撮影の前に SDR 信号および HDR 信号経路の Gain 差を適切に設定することで 通常の SDR 撮影と変わらないアイリスフォローやペインティング操作が可能になることです この技術によって VE さんは HD 制作用モニターやWFMを活用し これまでに培われた撮影技術や ご経験をそのまま活用いただいて 画作りすることができます HDR に比較し 限られたダイナミックレンジおよび色域 (BT.709) の範囲で SDR の映像を最適化いただくことで 同時生成される HDR 映像も SDR の画作りに連動して 自動的に最適化されるのです 6

以上をまとめると SDR および HDR のサイマルライブ制作における SDR Gain 調整 取り扱いの要点は 以下となります 撮影の開始前に SDR Gain 調整 を適切な値に設定しておく 上記は複数のカメラ間で同じ一つの値に固定し 撮影の間中動かさない S-Log3 を中間フォーマットとした HDR/SDR サイマル制作 ( 図 2) このドキュメントを通してご提案するワークフローを 具体的なライブ制作システムに表してみます HDR & SDR Simultaneous Production (Parallel System) BPU 4K-HDR 4K-HDR D Field Synchronous 4K Truck CCU HD HD TD VE D: Director TD: Technical Director VE: Video Engineer Studio HD Truck 図 2 ご覧いただけるように BPU からは異なるフォーマットの 2 つの信号 4K HDR と HD SDR がそれぞれ出力されます その意味で HDR と SDR それぞれ独立した制作システムでオペレートすることも可能です ですが 弊社提案の骨子一点目は 4K HDR 出力は本線用として最終段でのみ必要なフォーマットに変換することとし 撮影時のオペレーション用には BPU からの HD SDR 出力を使用することです このようなアプローチを取り入れることで ワークフローの観点からも大変シンプルな制作システムとなり かかる費 7

用も大幅に抑えられます 提案骨子の二点目は HDR 信号の処理を S-Log3 に統一して行なうことです ライブ制作ワークフローの最終段で求められる変換プロセスは高精度である必要がありますが HLG (Hybrid Log Gamma) や PQ (Perceptual Quantization) への変換を S-Log から行なうことで 本線出力に求められる高画質を保つことができます ( 図 3) これまでに行なったトライアルからも S-Log3 を中間フォーマットにもっとも適した OETF としてお勧めします HDR & SDR Simultaneous Production (Conversion at the end) BPU 4K-HDR (S-Log3) 4K-HDR (S-Log3) Converter 4K-HDR (HLG) TD Field CCU HD D HD VE D: Director TD: Technical Director VE: Video Engineer Studio 4K Truck 図 3 8

見た目 の基準 OOTF 弊社は来春 (2017 年 3 月 ) HDR プロダクションコンバーターユニット HDRC-4000 の発売を予定しています 本コンバーターは AIR Matching (Artistic Intent Rendering) 機能を備え HDR フォーマットを 見た目 基準 (Scene Referred) でリアルタイム変換します ここで AIR Matching の説明に入る前に まず 映像の 見た目 というのは何で決まってくるのかを説明したいと思います カメラで捉えられた光は リニア空間上のデジタル電気信号に変換されます しかしカメラの出力信号は 暗部と中間調を持ち上げ ハイライト側を圧縮した ノンリニアな ( 非直線的の ) ガンマカーブ特性 (OETF: Opto-Electrical Transfer Function) を有しています 一方 ディスプレイ / モニター側では ちょうど逆特性のガンマカーブを (EOTF: Electro-Optical- Transfer Function) 適用することで 元のリニア特性の光に再変換されます これは元々 限られた S/N 比しか持たなかったアナログテレビチャンネル信号の伝送を可能にし CRT (Cathode Ray Tube ブラウン管) の持つノンリニアな入出力特性 (2.2) に対応するためのものでした それぞれ カメラガンマ(OETF) および ディスプレイガンマ (EOTF) カーブとして知られています その後 ディスプレイデバイスが民生用も業務用も CRT から液晶パネルに代表される固定画素フラットパネルに変わりました 新しい表示デバイスの特性に対応するガンマカーブを定義する必要が出てきます ディスプレイのガンマ値は現在 ITU-R-BT.1886 標準で 2.4 と新たに定義されています しかし 実はカメラガンマは ITU-R-BT.709 で規定された 0.45 (1/2.2) のまま変わっていません 結果として現状 信号の入口から出口 ( カメラからディスプレイ表示まで ) はわずかにノンリニア ( 値にして 1.1) 映像の暗部と中間調でわずかに下に凸なカーブが生じています このような カメラから入った光がディスプレイ上の光として表示されるまで システム全体を通して見た特性のことを OOTF (Opto-Optical Transfer Function) または システムガンマ と呼びます 上で述べたように 現状の HD OOTF の特性は 表現領域において暗部で黒が少し沈み 明部で白を少し突き上げるノンリニアな特性になっているため 全体としてコントラスト感のある メリハリの利いた映像が得られる方向に作用しています さて 2016 年 7 月に HDR の画作りのための国際標準リコメンデーション ITU-R-BT.2100( 以下 BT.2100) が発効されました BT.2100 では いわゆる UHD 信号 (Ultra HD 4K/8K) に加え HD プログレッシブ信号 (1080-50p/60p) を含めて HDR 制作のスペックを規定しています 大変興 9

味深いのは HDR 制作に関して 2 つの異なるアプローチを提示していることです 次の図をご覧ください ( 図 4) 図 4: レコメンデーション ITU-R BT.2100-0 (2016 年 6 月 ) BT.2100 でのアプローチの一つが PQ (Perceptual Quantization) です これは ディスプレイ基準 の規定で ディスプレイ側に 新たに定義した EOTF を組み込んでいます すべてのデジタル値がそのままディスプレイ上の光の輝度レベルを表し デジタル信号からディスプレイ上の光へと変換するための情報は 絶対的 に定まります OOTF は撮影側 ( カメラ側 ) で施します もう一つのアプローチは HLG (Hybrid Log Gamma) です カメラ側に新たに定義した OETF を組み込み OOTF はディスプレイ側に仕込みます HLG のアプローチは現行のテレビシステム (HD SDR) と同じ 相対的 なシステムです HLG では 撮影から映像表示までの光の見え方を相対的に捉え 受け側のディスプレイが持つ輝度範囲の実力に合わせ そのピーク輝度の差による見え方の差が最小限になるよう表示されます HLG システムの OOTF は表示デバイスのピーク輝度に合わせて可変できるので 撮影側からのメタデータ伝送を必要としません コンテンツの制作 あるいはこれら 2 つの HDR フォーマットの相互変換を考える際には それぞれの OOTF のアプローチの違いに留意することが 特に重要となります 弊社は リアルタイム性を要するライブコンテンツ制作のオペレーションに このような複雑な変換プロセスを導入するのではなく 後述の HDR プロダクションコンバーターユニット HDRC-4000 の AIR Matching 機能の活用を ご提案いたします 10

中間フォーマットとしての S-Log3 の特色 S-Log 信号とは 2000 年に もともとは弊社のデジタルシネマカメラ (CineAlta シリーズ ) のために開発された Log 特性のガンマです S-Log カーブは 当時のデジタルシネマカメラに使われていたセンサーのダイナミックレンジと色調の特性を最大限引き出すように設計されました ここから発展しました S-Log3 カーブは 最大で 4000% のダイナミックレンジを定義しています 現状 弊社最先端のカメラシステムでは 1,300% 台 およそ 14-15 F Stop のダイナミックレンジに対応しています S-Log3 はこの広いダイナミックレンジを現行の 10 bit デジタルインターフェースにマッピングしています ( 将来の 12 bit にも対応 ) S-Log3 は きわめて暗い領域からハイライトの極限までの すべての映像情報を効率的かつ 最適に保持しており それを活かして CM やシネマ制作を行うポストプロダクションでは カラーグレーダーやカラーリストにより S-Log3 素材から 様々なコンテンツが作られています ポイントは 前述のようなポスト処理を伴う制作に活用されている S-Log3 が HDR ライブ制作においても最適なソリューション と言えるのか? という点です 以下に そのお答えを示します 弊社は先ごろ (2016/10)S-Log3 OOTF を定義し 4K RGB OLED リファレンスモニターである BVM-X300 V2 に S-Log3 (Live HDR) として EOTF 設定を一つ増設しました ライブ制作オペレーションで S-Log3 をもっとご活用いただくべく OLED モニタに限らず 広く放送用モニターシリーズへの S-Log3 (Live HDR) の搭載を予定しています S-Log3 OOTF のキーコンセプトは 現行 SDR OOTF の特性 ( 見た目 ) との高い互換性 親和性を保ちながら コントラスト感 のある パンチの効いた 最適な HDR 映像を再現することです 図 5 をご覧ください SDR の輝度範囲 (~100%) で PQ および HLG のカーブはいずれも輝度の低いところを通っていますが (*1) S-Log3 カーブは BT.709 OETF のトーンレンダリング特性に非常に近いことが分かります (*1) アイリスポジションなど 同一撮像条件で比較した場合 S-Log3 信号のこの特性を活かし 制作時の中間フォーマットとして使用することで これまでに培われた 制作技術や ご経験をそのままご活用いただき その延長線上に最高の HDR 映像制作の世界を描いて いただけます 11

Display Luminance (nit) OOTF Comparison (~100%) (when shot at the same exposure with SDR) Scene Light (%) 図 5 制作プロセスの最終段では 画決めしていただいた S-Log3 ベースの制作フォーマット素材を HLG や PQ もしくは SDR 等 必要に応じて送出フォーマット 見たまま変換 での変換が可能です これが HDR プロダクションコンバーターユニット HDRC-4000 の AIR Matching 機能です S-Log3 のもう一つの特徴として PQ と HLG のちょうど中間的な特性を持っており PQ HLG もしくはその逆と言った 直接的な変換を行うよりも 相互変換時のロスを最小限にできることがあります 弊社では S-Log3 の技術情報を公開しています 以下をご参照ください http://www.sony.jp/ls-camera/knowledge/pdf/technicalsummary_for_s-gamut3 Cine_S-Gamut3_S-Log3_V1_00.pdf S-Log3 を皆様の製品やサービスにご採用いただけるとしたら幸甚です 12

HDRC-4000 の活用方法 HDRC-4000 では S-Log3 から HLG や PQ への HDR-HDR 変換以外にも HDR- SDR 変換や 4K HDR から HD SDR のダウンコンバージョンが可能です ダウンコンバートして HD SDR 信号を正確に再現するために重要なのは サイマル SDR/HDR 制作のために撮影前に設定した SDR Gain 調整 の値を使用することです これが先に述べました SDR Gain 調整 の値を固定することを推奨する大きな理由の一つで HD SDR の高品位画像を実現します 実際の制作環境には 様々な素材 フォーマット 機材 ベンダーが存在し 最終的なマスター制作コンテンツを完成させるには それらを 4K S-Log3 に変換しなくてはなりません 以下の図 6 を見ると 最初の S-Log3 処理空間への変換に HDRC-4000 を用いることが非常に有効であることがわかります 4K HDR HDRC-4000 HDR Converter 4K HDR (ST2084) 4K HDR (HLG) 4K SDR SDR to HDR Conversion HDR to SDR Conversion 4K SDR 4K HDR (S-Log3/BT2020) HD SDR HD SDR 図 6: 4K S-Log3 HDR 変換 なお本ホワイトペーパーでは説明を簡単にするため割愛しましたが 実際の撮影 制作現場では色域 BT.709 と BT.2020 が混在することも当然想定されます ライブ制作中のオペレーションを一つの中間制作フォーマットに統一するためには色域の変換も必要です HDRC-4000 は HDR-HDR に加え 色域の相互変換や I/P (Interlace/Progressive) 変換 解像度変換にもフルに対応します 13

むすびに 弊社は 本ホワイトペーパーでご提案してきた 4K HDR/HD SDR のサイマルライブ制作のためのワークフローおよび技術を SR Live と名付けました SR は第一義に Scene Referred ( 見た目基準 ) の略で S-Log3 によるサイマル制作の鍵となるコンセプトです 弊社は このように撮影から送出 配信までの一連のワークフローについて 魅力的な 4K HDR による映像表現を実現し かつ従来の HD SDR の同時制作を可能とする本提案をご紹介できることを喜びとすると同時に 自信を持って皆様にお勧めさせていただきたいと思います 14