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2008年6月XX日

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援 GHGインベントリ策定にかかる技術移転等 気候変動対策を推し進めるための包括的な支援を実施した 同プロジェクトの成果として 国家気候変動緩和行動計画 (RAN-GRK) に基づき州気候変動緩和行動計画 (RAD-GRK) の策定が進められるとともに 国家気候変動適応行動計画 (RAN-API)

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欠であり 運輸交通分野を中心に膨大なインフラ投資が必要になると見込まれる これらのインフラ整備にあたっては 案件ごとにマスタープランから工事まで段階を踏んで検討 建設が進められるが 対象地の地形などを確認 把握するため 検討段階に応じた精度の地図が必要となる 現在 同国では基本的な測地基準点網が整備

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令 (2006 年 5 号 ) では 2025 年までの国家エネルギー政策の数値目標を設定し エネルギー供給量に対する新 再生可能エネルギーの目標値を 17%( うち地熱エネルギーは 5 %) に定めた また 2010 年の Vision 25/25 において 新 再生可能エネルギーの目標値を 25

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事業事前評価表

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支援 及び 不均衡の是正と安全な社会造りへの支援 の中で重点分野として掲げており また JICA も国別分析ペーパーの協力プログラムにおいて 首都圏の都市基盤整備プログラム や 地方開発 拠点都市圏整備プログラム の中で開発課題として位置づけている 上水道セクターにおいては 日本は下記 3.(9)

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20 21 The Hachijuni Bank, LTD.

の理解と参加を促進し, 開発協力を支える社会的基盤をより一層広げ, 強化するために, NGO/ 市民社会 (CSO) との連携が推進されるべきことが謳われたところである 以上の経緯と背景の下に NGO と ODA の連携に関する中期計画 ~ 協働のための 5 年間の方向性 ~ が策定されることとなっ

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0528事業事前評価表(円借款+附帯技プロ)final.doc

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事業事前評価表_新様式

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平成18年度標準調査票

架鉄道三路線 ( うち 二路線は軽量 ) の総延長は 50km にとどまっている 首都圏南方については マニラ市ツツバンからカブヤオ市ママティッドまでの区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみである 首都圏北方は 居住エリアが拡大しているものの 十分な公共交通手段が確保されていないた

01 【北海道】

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区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみであり 十分な公共交通手段が確保されていないため 同エリアと周辺に住む住民はバスや自動車等により通勤しているが 道路の混雑により 通勤に大きな支障が出ている 加えて 南北鉄道事業南線 ( 通勤線 ) ( 以下 本事業 という ) の対象区間には


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と衝突して沈没し 147 人が死亡 2014 年 8 月にはパドマ川で約 250 人を乗せたフェリーが荒天のため転覆し 110 人が死亡等の大事故が発生している また 同国は 雨季には大型サイクロンが度々ベンガル湾から来襲し 沿岸部で遭難事故が多発するなど 地理的に自然災害の影響を受けやすい地域であ

変更履歴 バージョン日時作成者 変更者変更箇所と変更理由 RIGHTS R ESER VED. Page 2

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を余儀なくされている発表されている このような状況下 当国 NGO カサ アリアンサは 1988 年の設立以来 メキシコ市において路上生活を営む子供の保護 心身のケア 家族との再会支援 社会的自立に向けた教育支援に取り組んできた JICA は 2000 年 12 月から 3 年間 カサ アリアンサを

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08 年 月 日 バングラデシュ 地理情報標準策定計画 / GIS 計画 サモア ジェンダー分析 平和構築 国家地理空間情報整備支援プロジェクト詳細計画策定調査 ( 地理情報標準策定計画 / GIS 計画 ) 09 年 月中旬 ~ 現地派遣渡航留意 09/0/9 ~ 09/0/08 09 年 月下旬

(2) 当該国における保健医療セクターおよび科学技術セクターの開発政策と本事業の位置づけ インドネシア保健省は 国家長期保健開発計画 およびその具体的な施策となる 保健セクター戦略計画 において感染症対策を重点項目の一つに位置づけている また インドネシア研究

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1) 3 層構造による進捗管理の仕組みを理解しているか 持続可能な開発に向けた意欲目標としての 17 のゴール より具体的な行動目標としての 169 のターゲット 達成度を計測する評価するインディケーターに基づく進捗管理 2) 目標の設定と管理 優先的に取り組む目標( マテリアリティ ) の設定のプ

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事業事前評価表 産業開発 公共政策部ガバナンスグループ法 司法チーム 1. 案件名国名 : インドネシア共和国案件名 : 市民警察活動全国展開プロジェクトフェーズ 2 Project on Nationwide Capacity Development of Police Officers for POLMAS - Indonesian Civilian Police Activities Phase 2 2. 事業の背景と必要性 (1) 当該国における警察分野の現状と課題インドネシア共和国 ( 以下 インドネシア という ) の治安責任は国軍 ( 陸 海 空 警察 ) が担ってきたが 2000 年 8 月の国民協議会の決定により警察は国軍から正式に分離独立し 大統領の直轄機関であるインドネシア国家警察 ( 以下 INP という ) として再編された 発足以降 民主的な警察の確立に向け改革を進め 住民との対話を通じ 国内治安の確保を目指す 市民警察 として国内治安を維持するとともに国内で多発する一般犯罪に対応して市民の安全を確保し 市民に信頼される市民警察としてのサービスを提供することが大きな課題となっている インドネシア政府における警察改革の基本方針は コミュニティ ポリーシング ( 市民警察活動 ) であり 様々な政策が策定されている 1 我が国は 我が国の経験を通じ 警察機能の近代化と行政能力の向上を支援すべく 2001 年の長官アドバイザー派遣から開始した 2004 年に POLMAS(INP におけるコミュニティ ポリーシングの取組み ) のモデル確立にフォーカスを当てた技術協力プロジェクトを 2 フェーズに渡りジャカルタに隣接するブカシにて実施し 2012 年度からは同モデルの本格的な全国展開を目指した技術協力 市民警察活動 (POLMAS) 全国展開プロジェクト ( 以下 前プロジェクト という ) による協力を実施するに至った 前プロジェクトにおいては INP 長官が指定する州において POLMASモデルの確立したブカシにおける研修 (ICT In-Country Training) を実施するとともに ここで得た 1 12005 年 10 月にはインドネシア国家警察長官決定通達 (SKEP/737/X/2005) により POLMAS の基本方針が示された 22008 年には INP より 市民 地域社会に信頼される警察を造り上げ 安全と秩序に対する障害に対処し 市民の平穏を確保するにあたって INP に進んで協力する地域社会を作り上げることを目標とした インドネシア国家警察の責務遂行における POLMAS モデルの運用に関する政策及び戦略 ( 長官通達第 7 号 ) が発出され 警察と市民の信頼関係を築くために 各地方 / 州警察本部幹部がコミュニティにおける POLMAS 実践者となることを明記した重要な政策となっている 32014 年にはインドネシア国家警察長官決定通達 (No.ST/884/IV/2014) で全州に対して POLMAS の実践が指示され 2015 年には POLMAS に関する国家警察長官規則 2015 年第 3 号 ( 以下 長官規則 2015 年第 3 号 という ) によって POLMAS 関連規則や通達を一本化し POLMAS の指令 方針を定めている 1

知識と経験をもとに 州内のコアとなる警察署に対するPOLMAS 研修 (IHT In-House Training) の実施を促進 プロジェクト終盤においては 6つの州が独自にIHTを実施できる 自立警察州 と位置付けられるに至った 他方 今後 INPが自立的に本政策を実践し 全国にPOLMASを確立するには 組織として主体的に政策を推進できるようなINPの体制の構築と政策の実践 拡大に向けた能力向上と技術移転が求められる 加えて 対象州によっては 研修で学んだ理念と実際に現場でPOLMASを実践する際の活動方法や現場状況の差異 実際の制度運用面での州 警察署における格差 ( 警察署や現場警察官のやる気の差 地域特性や環境による差 ) などの問題が指摘されており 現在の対象州に加え 新たな州においてもINP 職員の市民警察活動に係る知識 意識の向上とともに 受益者である地域社会 市民への政策のメリットや受容性に関する理解促進が課題となっている (2) 当該国における警察分野の開発政策と本事業の位置づけ INP では 国家長期開発計画 (2005 年 2025 年 ) を受けて インドネシア国家基本戦略 2005 年 2025 年 を策定しており 同戦略では市民および地域社会の警察に対する信頼を構築し 地域社会の構成の確立に向けたサービス提供を実施するために 次のように 3 期に分けて警察サービスの向上に取り組んでいる 1) 市民および地域社会からの信頼構築 (2005 年 2010 年 ) 2) 市民および地域社会とのパートナーシップの構築 (2011 年 2015 年 ) 3) 卓越性を志向した警察活動の推進 (2016 年 2025 年 ) 現在は同戦略の第 3 期にさしかかっており 第 2 期に引き続き 警察サービスの向上の中で 市民警察活動の強化が全国規模で実施されている 最新の INP における計画である 国家警察 5 カ年戦略計画 (2015 年 2019 年 ) では 治安維持の分野における国家開発政策を実現するための警察分野の政策の一つとして市民警察活動を位置づけ 事件対応 ( 事件等が発生した後の措置 ) よりも防犯を重視し 一村に一人のバビン 3 を配置することによって 市民の安全を脅かす可能性のある社会状況を事前に察知することに力を入れている (3) 警察セクターに対する我が国及び JICA の援助方針と実績国家警察が国軍から分離独立した直後の 2001 年より 技術協力プロジェクト 無償資金協力 長官への政策アドバイスを行う個別専門家派遣 日本での実践型個別研修を通じ 国家警察の組織 制度 人員の改革を通じた民主的な国家警察への変革を支援する活動を継続的に実施しており 2001 年より複数のスキームを活用した協力 インドネシア国家警察改革支援プログラム を開始した 3 村レベルにおいて活動する警察官 ( 日本の駐在所や交番勤務の警察官 ) 2

特に市民警察活動に関しては 2002 年 8 月から 2007 年 7 月まで技術協力 市民警察活動促進プロジェクト を実施し 旧ブカシ警察署 4 を拠点とした組織運営 現場鑑識 通信司令塔分野を対象とした人材育成を実施した この成果を踏まえ技術協力 市民警察活動促進プロジェクト ( フェーズ 2) を 2007 年 8 月から 2012 年 7 月まで実施し 両ブカシ警察署 ( メトロブカシ署とブカシ県警察署 ) を市民警察活動推進における モデル警察署 とすべく 現場警察活動や鑑識分野等における能力向上を図るとともに 研修体制の整備 改善を進めた その後 これまでの協力を経て両ブカシ警察署において構築された市民警察活動モデル ( ブカシモデル ) の活動定着と全国に市民警察活動を普及することを目的として 2012 年 10 月から 2017 年 9 月までの計画で前プロジェクトが実施されている その他の主な事業実績は以下の通り < 技術協力プロジェクト> バリ市民警察活動促進( 観光警察 ) プロジェクト (2005 年 7 月 ~2007 年 7 月 ) バリ島 安心なまちづくりプロジェクト (2007 年 7 月 ~2012 年 7 月 ) < 個別案件 ( 専門家派遣 )> POLMAS 活動強化 (2010 年 2 月 ~2012 年 2 月 2010 年 4 月 ~2013 年 3 月 2012 年 1 月 ~2013 年 3 月 ) インドネシア国家警察長官アドバイザー 及び インドネシア国家警察長官アドバイザー / インドネシア国家警察改革支援プログラム マネージャー (2001 年 2 月 ~2019 年 7 月まで計 7 期 ) < 個別案件 ( 国別研修 )> 組織運営 ( インドネシア国家警察上級幹部等 )(2011 年 4 月 ~2013 年 3 月 ) インドネシア警察行政比較セミナー (2009 年 10 月 ~2012 年 3 月 ) (2012 年 9 月 ~2015 年 3 月 ) (2016 年度 ~2019 年度 ) < 無償資金協力 > 市民警察化支援計画 ( 交換公文 :2004 年 9 月 ) インドネシア国家警察組織能力強化支援計画 ( 交換公文 :2005 年 9 月 ) 4 2004 年 10 月にメトロブカシ警察署およびブカシ県警察署に分割され 現在に至っている ちなみに 2017 年に名称が変更され メトロブカシ署は Metropolitan Bekasi-city Police Resort ブカシ県署は Metropolitan Bekasi Police Resort となっているが 日本語ではこれまで同様にメトロブカシ署とブカシ県署と呼ぶこととする 3

(4) 他の援助機関の対応米国と豪国等がテロ対策 薬物対策 人身売買等の分野を中心とした協力を行っている また 国際移住機関 (International Organization for Migration: IOM) は 2003 年からインドネシア政府に対して人権と市民警察分野で人材育成に焦点をあてた支援を実施している 現在は Strengthening the Indonesian National Police through Institution-Building INP 3 を実施しており INP の市民警察活動に関する戦略の実施を支援している パプア州 西パプア州 マレク州の 3 州を対象に支援を展開している アチェ州やその他の州においても市民警察活動の強化に取り組んだ経験をベースに 警察署の能力強化と警察と市民との関係強化に取り組んでいる なお IOM 実施の上記支援と 本協力との支援内容の重複はない 3. 事業概要 (1) 事業目的 ( 協力プログラムにおける位置づけを含む ) 本事業は インドネシアにおいて POLMAS の全国展開推進に向けた具体的な運用規定 制度の整備 活用 研修実施体制の強化 POLMAS モデルの強化などを通じて プロジェクトの提案を反映した POLMAS を自立的に全州で実施するための体制確立を図り もって POLMAS が全州に定着することに寄与するものである (2) プロジェクトサイト / 対象地域名ジャカルタ首都特別州 中部ジャワ州 バリ州 東南スラウェシ州 西カリマンタン州 南カリマンタン州 ( 準自立警察州が自立警察州に昇格した場合 対象州が増加する可能性はある ) (3) 本事業の受益者 ( ターゲットグループ ) ( 直接 ) INP 職員 ( 最終 ) 国民 (4) 事業スケジュール ( 協力期間 ) 2017 年 10 月 1 日 ~2022 年 9 月 30 日を予定 ( 計 60 ヶ月 ) (5) 総事業費 ( 日本側 ) 約 6 億円 ( 予定 ) (6) 相手国側実施機関 INP 4

(7) 投入 ( インプット ) 1) 日本側 : 専門家派遣 ( プロジェクト マネージャー トレーニング マネージャー 総合鑑識技能練成 業務管理 / 研修 ( 合計約 50M/M)) 研修員受入( 本邦 / 現地 分野 :POLMAS 推進 鑑識 上級幹部研修 ) ローカル人材活用のためのナショナルエキスパート雇用 その他 2) インドネシア側 : プロジェクト担当官 調整委員会メンバー 施設 ( プロジェクトオフィス等 ) 光熱費 プロジェクト担当官の配置( プロジェクト ダイレクター 副プロジェクト ダイレクター プロジェクト マネージャー 共同プロジェクト マネージャー : 詳細はプロジェクトの中で決定する ) その他 (8) 環境社会配慮 貧困削減 社会開発 1) 環境に対する影響 / 用地取得 住民移転 1カテゴリ分類 :C 2 本事業は 国際協力機構環境社会配慮ガイドライン (2010 年 4 月公布 ) 上 環境への望ましくない影響は最小限であると判断されるため 2) ジェンダー 平等推進 / 平和構築 貧困削減特になし (9) 関連する援助活動 1) 我が国の援助活動 インドネシア国家警察改革支援プログラム を構成する個別専門家 インドネシア国家警察長官アドバイザー / プログラムマネージャー ( 協力プログラム全般の総括及びプロジェクトに対する政策面からのアドバイスの提供を通じたクオリティコントロール ) 及び個別案件 ( 国別研修 ) インドネシア警察行政比較セミナー ( 本事業のカウンターパートである現場の警察官に対する本邦での実践型研修の提供を通じた能力向上 ) との連携により POLMAS 政策の実現に向けた国家警察上級幹部や中堅幹部の能力強化を促進する 2) 他ドナー等の援助活動 IOM が POLMAS 教官の育成を行ってきており 本事業で実施される研修との連携を図る予定である 4. 協力の枠組み (1) 協力概要 1) 上位目標 : POLMAS が全州で定着する ( 指標 ) 警察 POLMAS に対する地域コミュニティの信頼 協力が得られる 5

2) プロジェクト目標 : プロジェクトの提案を反映した POLMAS を自立的に全州で実施するための体制が 確立する ( 指標 ) (i)(ii) 1IHT を実施した州警察の数と研修の実施回数 参加者数 2 国家鑑識検定の A 級に 人以上が合格する (ii) (i) 国家警察が独自で実施した IHT も含める (ii) 具体的な目標値は プロジェクト開始後 6 ヵ月を目処に設定し インドネシア側と合意する 3) 成果及び活動 成果 1:POLMAS が全国で推進されるための具体的な運用規定 制度が整備 活用さ れる 成果 2:POLMAS に関する研修の実施体制が強化される 成果 3: 両ブカシ警察署及びモデル警察署 (iii) において先進モデルとしての POLMAS が強化される (iii) モデル警察署は 2016 年に実施した IHT モニタリングの結果 今後独自に IHT を実施できると認定された 6 州の 6 警察署とする 成果 4: 第三国に対する POLMAS の技術移転が進展する なお 指標の具体的な数値目標については 本事業開始後 6 カ月以内にベースライン調査を行い その結果を基に日本人専門家及びカウンターパート間の協議により設定し JCC での承認を以て決定するものとする 5. 前提条件 外部条件 ( リスク コントロール ) (1) 前提条件本事業の研修受講者が頻繁に異動しない (2) 外部条件 1) 研修を受けた警察官の配属先において POLMAS 実践を阻害する要因が発生しない 例えば 連絡体制の欠如 ( 物理的な通信手段あるいは移動手段の欠如 上官の理解不足 ) など 2)POLMAS 政策に大きな変更が生じない 3) プロジェクトを通じて導入された通達や運用ルールが大幅に変更されない POLMAS の全国実施に関する予算措置が継続される 6

6. 評価結果本事業は インドネシアの開発計画 警察改革政策 公共安全ニーズ 日本の援助政策と十分に合致しており また計画の適切性が認められることから 実施の意義は高い 7. 過去の類似案件の教訓と本事業への活用インドネシア 市民警察活動 (POLMAS) 全国展開プロジェクト では 研修後の現場におけるフォローアップ活動を取り入れ 研修実施とその後のフォローアップ活動を一連の活動として実践してきた 通常 研修後の実践は相手側に委ねられることが多いが 同プロジェクトでは 専門家と INP 関係者とでフォローアップ調査団を形成して研修後の活動状況を調査し 今後の取り組み事項をフィードバックした これによって 今後実施すべき項目が明確になり POLMAS 活動の実施を推進してきた大きな原動力であったと考えられる 更に 前プロジェクトの後半には カウンターパートのみで研修を計画 実施し フォローアップ活動もカウンターパートだけで調査団を形成し JICA 専門家はフォローアップ活動調査団からの報告を受ける形を取った これによって カウンターパートはプロジェクトが推進する POLMAS に対するオーナーシップをより一層高め 主体的に指導すべき立場に立ったことで POLMAS を推進していく上での関係者の役割に関する理解を深めた 本事業において INP 本部関係者による各地への巡回調査など 活動の一部をカウンターパートに完全に任せることによって カウンターパートの主体性をより強く引き出すことにつながり 最終的には INP が完全に独自に実践できるようにしていくことが重要と考えられる 更に 主体性を強化するために INP が POLMAS を主体的に全国展開し実施監理を行うための調整委員会を INP 本部内に設置する これによって 前プロジェクトで JICA 専門家が担ってきた INP 本部内の部署間および州警察本部との調整や POLMAS 強化のための活動計画 モニタリング 評価をインドネシア側が実践できるようにする 8. 今後の評価計画 (1) 今後の評価に用いる主な指標 4.(1) 協力概要 のとおり (2) 今後の評価計画事業開始 6 ヶ月以内ベースライン調査事業終了 3 年後事後評価 以上 7