NMR ソフトウェア Delta における定量 NMR 解析 2014 年 4 月 近年注目されている定量 NMR は 内部標準法 (AQARI) や外部標準法 (PULCON, QUANTAS など ) 様々な方法が提案され 目的に応じて使用されています Delta V5 ではこれらの解析を支援するために 定量 NMR 解析機能を新たに追加しました AQARI は分析サンプル内に存在する基準物質を使って定量を行います PULCON は別途用意した基準物質サンプルを使って定量を行います また QUANTAS は別途用意した基準物質サンプルの情報から分析サンプルのスペクトル内に人工信号を作成し これを基準として定量を行います このマニュアルは それぞれの方法でデータを取得した後の Delta 上での解析方法を説明しています AQARI: Accurate quantitative NMR with Internal reference substance ( 内部標準法 ) PULCON: Pulse length-based concentration measurement ( 外部標準法 ) QUANTAS: Quantification using an artificial signal ( 人工信号を使った外部標準法 ) 定量 NMR 解析機能 定量 NMR 解析を行うために 主に以下の機能が追加されています 定量解析機能 :PULCON 支援 (AQARI/QUANTAS にも適用 ) 標準物質データと分析対象データの積分から 濃度と純度を算出します 積分の濃度換算表示 :PULCON AQARI QUANTAS 支援 1D Processor や Data Slate 上で各積分にプロトン数と濃度のパラメータを設け GUI 上で濃度を表示します 人工ピーク生成機能 :QUANTAS 支援定量基準となる人工信号を生成することで 濃度を算出します 濃度および純度計算 ここで各変数は c ( 濃度 ), I ( 積分値 ), H ( プロトン数 ), T ( 絶対温度 ), d (360 度パルス幅 ), R ( デジタル分解能 ), n ( 積算回数 ), G ( レシーバゲイン ), P ( 純度 ), M ( 分子量 ), V ( 体積濃度 ) です machine_factor はレシーバゲインの線形性からのずれを補正する係数で 装置固有値 なお AQARI では 内部標準であるため T, d, R, n, G が無視できる M および V は純度計算でのみ使用されます 1
1. モル濃度計算 1.1 1D_Processor で計算する場合 (AQARI, QUANTAS 対応 ) 1) 解析する FID データを処理します 積分までしておきます ( ただし 積分範囲の移植ツールでテンプレートを使う場合は除きます ) 2) [ 積分範囲の移植 ] ウィンドウを開きます Delta ウィンドウから開く : 解析ツール- 積分範囲の移植 1D_Processor から開く : 解析ツール - 積分範囲の移植 [ 積分範囲の移植 ] 3) [ 積分範囲の移植 ] ウィンドウに処理したデータ上の積分範囲を読み込み パラメータを設定します 1 積分範囲を読み取るボタン 2 プロトン数を入力 3 スロープとオフセットをリセッする積分を指定 (R) 4 規格化する積分を指定 (N) 5 積分を規格化する値 ( モル濃度 ) を入力 2
パラメータを設定したものはテンプレートとして保存できます 従って すでに解析用のテンプレートがある場合はこれを利用することができます 4) 解析するデータに反映させます 積分範囲を反映させるボタン 指マークを選択しておくと 画面上に表示されているデータに 直接反映させることができます 1D_Processor のスペクトル上に結果が表示されます 表示の切り替えは [Alt] + [Shift] +[ I ] または 画面右下のオプション内にある ンで可能です ボタ プロトン数とモル濃度 3
1.2 Data Slate で計算する場合 (AQARI, QUANTAS 対応 ) 操作は 1.1 1D_Processor で行う場合と同様です Data Slate においても [ 積分範囲の移植 ] の機能を使ってモル濃度計算を実行できます 1.3 定量解析機能で計算する場合 (PULCON, AQARI, QUANTAS 対応 ) 1) 基準物質と分析試料の FID データを処理します 2) 定量解析ウィンドウを開きます Delta ウィンドウから開く : 解析ツール- 定量解析 1D_Processor から開く : 解析ツール - 定量解析 4
1 分析試料データを読み込むボタン 2 基準物質データを 読み込むボタン [ 定量解析 ] 3) 基準物質及び 分析試料データを読み込み パラメータを入力します 基準物質の試料調製情報を 基準物質の情報 入力します 5
<Scale factor> 基準物質と異なった RG で測定したデータは自動的に補正されます モル濃度計算の場合 分子量や秤量値 液量は必要ありません 分析試料の情報 基準物質と分析資料の情報はそれぞれ 保存しておくことができます 1.4 ファイルの保存を参照ください 4) 濃度 / 純度計算タブをクリックし 各信号のプロトン数を入力します 計算結果が表示されます 平均値を計算する値に チェックをいれます プロトン数 計算結果 ( モル濃度 ) 6
<AQARI, QUANTAS について> AQARI と QUANTAS の場合は基準物質 分析試料のデータ共に同じものを入れます その際 積分はそれぞれ対象となるところだけ設定しておきます 分析対象の信号のみ積分を設定しておきます 基準物質の信号のみ 積分を設定しておきます 計算結果 ( モル濃度 ):AQARI / QUANTAS の場合 1.4 ファイルの保存基準物質と分析試料のデータは別々に保存することが可能です 1) 保存したいファイルを選択します 2) ファイル- 保存から保存あるいは別名で保存を選びます 7
3) 別名で保存を選ぶとファイル名がきかれます このとき どちらのデータが選ばれているのかは 保存ウィンドウで確認できます 基準物質を選んでいる場合 分析試料を選んでいる場合 尚 分析試料データと基準物質データを紐付けする場合には かならず基準物質データを保存後 分析試料データの保存を実行してください ファイルの読み込みに関しては 3. その他の機能をご参照ください 1..5 分析結果の印刷解析が終了したらデータを分析結果として印刷することができます 1) ボタンを押すと印刷画面ダイアログがでますので 任意の出力方法を選びます 印刷されます 分析結果出力画面 8
1.6 レポートの作成 スペクトルは出力せずに数字だけの分析結果はレポートとして作成 出力できます 1) レポート作成をするデータ ( 基準物質と分析試料のいずれか ) を選択します 2) ボタンを押すことにより レポートが作成されます 3) ボタンを押すことにより 作成されたレポートが確認できます 1.7 その他の出力 3.5 定量解析ツールにおける便利な機能をご参照ください 9
2. 純度計算 2.1 定量解析機能で計算する (PULCON, AQARI, QUANTAS 対応 ) 1) 基準物質と分析試料の FID データを処理します 積分までしておきます 2) 定量解析ウィンドウを開きます Delta ウィンドウから開く : 解析ツール- 定量解析 1D_Processor から開く : 解析ツール - 定量解析 1 分析試料データを読み込むボタン 2 基準物質データを 読み込むボタン [ 定量解析 ] 10
3) 基準物質及び 分析試料データを読み込み パラメータを入力します 基準物質の試料調製情報を 基準物質の情報 入力します <Scale factor> 基準物質と異なった RG で測定したデータは自動的に補正されます 分析試料の試料調製情報を 分析試料の情報 入力します 基準物質と分析資料の情報はそれぞれ 保存しておくことができます ファイルー選択されたデータを情報と一緒に保存します - 11
4) 濃度 / 純度計算タブをクリックし 各信号のプロトン数を入力します 計算結果が表示されます 平均値を計算する値に チェックをいれます プロトン数 計算結果 ( 純度 ) <AQARI, QUANTAS について> AQARI と QUANTAS の場合は基準物質 分析試料のデータ共に同じものを入れます その際 積分はそれぞれ対象となるところだけ設定しておきます 分析対象の信号のみ 積分を設定しておきます 基準物質の信号のみ 積分を設定しておきます 12
2.2 ファイルの保存基準物質と分析試料のデータは別々に保存することが可能です 1) 保存したいファイルを選択します 2) ファイル- 保存から保存あるいは別名で保存を選びます 3) 別名で保存を選ぶとファイル名がきかれます このとき どちらのデータが選ばれているのかは 保存ウィンドウで確認できます 基準物質を選んでいる場合 分析試料を選んでいる場合 尚 分析試料データと基準物質データを紐付けする場合には かならず基準物質データを保存後 分析試料データの保存を実行してください ファイルの読み込みに関しては 3. その他の機能をご参照ください 13
2.3 分析結果の印刷 解析が終了したらデータを分析結果として印刷することができます 1) ボタンを押すと印刷画面ダイアログがでますので 任意の出力方法を選びます 印刷されます 分析結果出力画面 14
2.4 レポートの作成 スペクトルは出力せずに数字だけの分析結果はレポートとして作成 出力できます 1) レポート作成をするデータ ( 基準物質と分析試料のいずれか ) を選択します 2) ボタンを押すことにより レポートが作成されます 3) ボタンを押すことにより 作成されたレポートが確認できます 2.5 その他の出力 3.5 定量解析ツールにおける便利な機能をご参照ください 15
3. その他の機能 3.1 人工信号の作成 (QUANTAS 用 ) 1) 人工信号の基となる基準物質データと分析対象物のデータをそれぞれ処理しておきます 2) 分析対象物データの処理の最後に人工信号を作る処理 (Create peak) を入れます 3)Create peak のパラメータを入力します 16
Position : 人工信号を作る位置を設定 Integral: 人工信号の基となる基準信号データの積分値 ( 絶対値 ) を入力 Width: 人工信号の半値幅を設定 G/L mix: 人工信号の波形の比率を指定 1: Gaussian, 0: Lorentzian Factor : 異なった測定条件に基づく 補正係数 Factor をクリックしてファイルを指定することで 人工信号のピーク強度を自動的に補正する 4) 設定したパラメータに基づき 人工信号が作成されます 人工信号 17
3.2 混合物の解析 (AQARI の例 ) 1)1.1 または 2.1 と同様の操作でデータを定量解析に読み込みます 2) 分析試料のパラメータ設定画面で混合物を選択します 3) 計算結果画面で含まれる成分のパラメータを入力します 入力すると自動で計算されます 18
3.3 波形分離での対応 (AQARI を例に ) 1) 目的の分析試料のデータの波形分離処理をします 2)1.1 または 2.1 と同様の操作でデータを定量解析に読み込み 各パラメータを設定します 波形分離結果を読み込んだ 3) 計算結果のタブで 積分値を合算したいピークにはグループ欄に同じ番号を設定します 波形分離以外のピークもグルーピングできます 結果が表示されます 19
3.4 定量解析ツールにおけるデータの読み込み 1 標準物質と分析試料のデータを別々に読み込む場合 1) ファイルメニューから開く- 標準物質のデータファイルまたは分析試料のデータファイルを選択して読み込みます 2 分析試料のデータより標準物質のデータを一緒に読み込む場合 1) オプションメニューより [ 関連する標準データを開く ] をチェックします 常に [ 関連する標準データを開く ] 場合は環境設定で設定できます 3.7 を参照ください 2) ファイルメニューから開く- 分析試料のデータファイルを選択して読み込みます 一緒に保存されている標準物質データも同時に読み込まれます * 分析試料データを保存するときに標準物質データが一緒に保存されているデータに限ります 20
3.5 定量解析ツールにおける便利な機能 スペクトルを含む解析結果の貼り付け印刷される表示で 任意のソフトに貼り付けることができます 1) ファイルークリップボードに書き出し 2) 任意のソフトに Ctrl+V で貼り付けます abundance 0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 abundance 0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0 X : parts per Million : Proton 16.91 17.15 9.0 8.0 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0 X : parts per Million : Proton 積分位置 積分値 プロトン数 モル濃度 純度 平均計算 ----------- ---------- ---------- ------------- --------- -------- 1.743[ppm] 25.90[abn] 3.000 14.88[mmol/L] 101.43[%] * 6.443[ppm] 17.15[abn] 2.000 14.78[mmol/L] 100.74[%] * 7.086[ppm] 16.91[abn] 2.000 14.58[mmol/L] 99.37[%] * 25.90 16.45 化合物 = BTMSB-d4 積分位置 = 0.028[ppm] 積分値 (I) = 16.45[abn] 分子量 (M) = 226.5 プロトン数 (H) = 18 秤量値 (m) = 1.788[mg] 液量 (L) = 5[mL] 体積濃度 (V) = 0.03576[%(w/v)] 純度 (P) = 99.8[%] モル濃度 (C) = 1.57565[mmol/L] recvr_gain(g) = 40 temp_get(t) = 303.16[K] x_pulse(d) = 6.41[us] scale factor(s) = 1 化合物 = アセトアミノフェン 分子量 (M') = 151.17 混合物 = FALSE 秤量値 (m') = 11.0893[mg] 液量 (L') = 5[mL] 体積濃度 (V') = 0.22179[%(w/v)] recvr_gain(g') = 40 temp_get(t') = 303.16[K] x_pulse(d') = 6.41[us] scale factor(s') = 1 average factor(a') = 1 normalize factor(n') = 1 テジㄇネヅㄐコト 4Q4, 平均モル濃度 = 14.75[mmol/L], モル濃度 : C' = C * I'/I * H/H' * T'/T * d'/d, 純度 : P' = C' * M' / ( 100 * V' ) 解析結果の貼り付け数字のみを任意のソフトに貼り付けることができます 1) ファイルークリップボードにコピー 2) 任意のソフトに Ctrl+V で貼り付けます 21
3.6 モル濃度計算機能 補助ツールでモル濃度を計算することができます 3.7 環境設定における qnmr 関連機能 1 ベースラインノイズの計算方法を選択できる ( 環境設定 Geometry) Histogram Baseplane が ON デフォルトは ON です Histogram Baseplane が OFF(V436 形式 ) 2 積分をする際に SLOP と OFFSET を自動調整するか 0 /0 の自動リセットするのかを設定できる ( 環境設定 Geometry) Adjust Integral Slope / Offset が ON が自動調整デフォルトは ON です Adjust Integral Sope / Offset が OFF が自動リセット 3 NMR 解析ツールの際に sample のファイルを保存する場合に standard も紐付けして保存できる ( 環境設定 Tools) Quantitative Analysis : Open Related Standard Data デフォルトは OFF です OFF になっていても定量解析ツールの画面からオプション- 関連する標準データを開くで設定できます 4 表示桁数を設定できる ( 環境設定 Tools) Quantitative Analysis :Format-Tntegral デフォルトは下 2 桁 Quantitative Analysis :Format-Misc デフォルトは下 3 桁 Quantitative Analysis :Format-Molarity デフォルトは下 2 桁 Quantitative Analysis :Format-Purity デフォルトは下 2 桁 22
5 装置のレシーバゲインファクターを設定することができる ( 環境設定 Tools) Quantitative Analysis :Receiver Gain Scale 20 PULCON など外部標準法による定量 NMR を行う場合 基準物質と分析試料の測定のレシーバゲインはこの値によって補正されます なお この値は厳密では装置依存性があるので 補正したい場合に設定することが可能です 3.8 その他の関連機能 <スプレッドシート> スプレッドシート上で モル濃度やプロトン数を確認することが可能です 23
Slope と Offset を 0 にしたい場合 Data Slate または 1D Processor 上で積分モードを選択し [Ctrl]+[R] でリセットすることが可能です 24
付録 : 目的別マニュアルの見方 求めたい単位方法使用する Delta 機能マニュアル モル濃度 AQARI 1D_Processor, Data slate 1.1, 1.2 with 積分範囲の移植定量解析 1.3 QUANTAS 1D_Processor, Data slate with 積分範囲の移植 1.1, 1.2, 3.1 定量解析 1.3 PULCON 定量解析 1.3 純度 AQARI 定量解析 2.1 QUANTAS 定量解析 2.1, 3.1 PULCON 定量解析 2.1 25