平成 27 年度 (2015 年度 ) 課程博士学位論文 夫婦間顕在的葛藤が青年期の子どもの 精神的健康に及ぼす影響に関する研究 日本と中国の比較を通して 張新荷

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3 要旨 夫婦間顕在的葛藤が青年期の子どもの精神的健康に及ぼす影響 に関する研究 日本と中国の比較を通して 本研究の目的は, 日本と中国において夫婦間顕在的葛藤が青年期の子どもの精神的健康に及ぼす影響を明らかにすることであった 子どもの精神的健康に影響を与えるプロセスについて, 夫婦間顕在的葛藤が親の養育行動や家族機能などを媒介する間接的プロセスや, 夫婦間顕在的葛藤にさらされることが直接影響を与える直接的プロセスが指摘されている (C u m m i n g s e t a l., ) 日本と中国において, 前者の間接的プロセスに関しては数多くの研究がなされてきたが, 後者の直接的プロセスについての研究は不十分である また, 後者の直接的プロセスに関して, 情緒安定性仮説 (D a v i s & C u m m i n g s, ) や認知状況的枠組み (G r y c h & F i n c h a m, ) の有用性, つまり認知 情動 行動から夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの主観的体験を捉える必要性が述べられている 夫婦間顕在的葛藤下における青年期の子どもの精神的健康のメカニズムが定かではないため, 本研究では青年期の中期にあたる日本と中国の高校生を対象に, 直接的 間接的の 2 通りのプロセス及び認知 情動 行動の 3 つの側面を統合する視点からそのメカニズムを解明することとした 直接的プロセスについては, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応を取り上げ, 間接的プロセスでは, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚を取り入れた 青年の精神的健康の指標には, 心理的ストレス反応を用いた 本研究の目的を達成するために, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚と心理的ストレス反応との関連を検討した 第 1 部の問題と目的は, 第 1 章と第 2 章からなる 第 1 章では, 夫婦間顕在的葛藤の定義を述べた上で, 夫婦間顕在的葛藤にさらされる

4 子どもの精神的健康に関する理論や先行研究を整理し, 問題点を示した 第 2 章では, 本研究の目的と各実証研究の意義を提示した 第 2 部の実証研究は, 第 3 章から第 7 章で構成される 第 3 章 ( 研究 Ⅰ ) では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応尺度を作成し, 日本と中国での因子不変性を検証した上で, 各因子の得点を比較した その結果, 日中ともに同様な因子構造が確認された 夫婦間顕在的葛藤にさらされた時, 日本の高校生は中国の高校生より, 自分が落ち着いていられるという認知が強く, 葛藤場面を回避する傾向が強かった 一方で, 中国の高校生は, たとえ両親間の葛藤が最終的に解決すると判断しても, 親と自分のことを心配し, 情緒的反応が強く, 葛藤場面に介入する傾向が強いことが示された 第 4 章 ( 研究 Ⅱ ) では夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの行動反応に焦点を当て, その背景にある子どもの認知 情動反応を把握するために, 認知 情動反応と行動反応の関連を日中で検討した その結果, 両国の共通点として, 夫婦間顕在的葛藤におかれた時, 積極的に介入的行動を取るほど, 両親間の葛藤が解決できるという認知と抑うつ 不安の情動がより強かった 一方で, 積極的に回避的行動を取るほど, 自分への心配や自分が落ち着いていられるという認知がより強いことが示された 両国の相違点として, 中国の高校生のみにおいて, 積極的に回避的行動を取るほど, 抑うつ 不安の情動や両親間の葛藤が解決できるという認知が弱いことが明らかになった 第 5 章 ( 研究 Ⅲ ) では, 子どもが夫婦間顕在的葛藤にさらされた時, 親子関係が子どもの反応に与える影響を日中で検討した 日中ともに見られた結果として, 父子関係かつ母子関係が良好であるほど, 両親間の葛藤が解決できると認識し, 介入的行動を取る傾向が強いことが示された 中国の高校生のみに見られたのは, 父子関係かつ母子関係が良好であるほど, 回避的行動を取らない傾向が強いことであった その一方, 日本の高校生のみに見られたのは, 父子関係かつ母子関係が良好であるほど, 抑うつ 不安が強いこと, また, 父子関係が良好であるほど, 親の葛藤解決認知が強く, 抑うつ 不安が弱いこと

5 であった 第 6 章 ( 研究 Ⅳ ), 第 7 章 ( 研究 Ⅴ ) では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚と心理的ストレス反応の関連を検討した これは, 直接的 間接的の 2 通りのプロセスを統合する観点から, 日本と中国における夫婦間顕在的葛藤が青年期の子どもの精神的健康に影響を及ぼすメカニズムを明らかにするためであった その結果, 日本と中国ともに, 夫婦間顕在的葛藤は子どもの反応や親の養育行動を通して青年の心理的ストレス反応に影響を及ぼすと示された 日本においては, 自分の状況を心配し, 自分が脅かされるような自分に関する恐れ認知, 情動反応, 夫婦間顕在的葛藤後の母の温かさ 信頼, 中国においては, 自分に関する恐れ認知, 夫婦間顕在的葛藤後の父の温かさ 信頼が心理的ストレス反応と関連することが示された 第 3 部の討論は, 第 8 章と第 9 章からなる 第 8 章では, 第 2 部の実証研究から, 日中の高校生の夫婦間顕在的葛藤に対する反応の特徴について, 心理的ストレスモデルや事象が起こった時の説明スタイルの観点から考察した また, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚と心理的ストレス反応の関連について, 両国における感情表出や親子関係の特徴に基づいて考察を行った 第 9 章では, 測定尺度, 性差の検討やメカニズムの精緻化から今後の課題と展開の可能性について記述した 加えて, 本研究で得られた結果に基づき, 夫婦間顕在的葛藤を減らす視点ではなく, たとえ葛藤が起きても, 子どもはどうすれば自分自身を能動的に守れるか, また親 援助者はどうすれば夫婦間顕在的葛藤が子どもに与えるネガティブな影響を低減できるかに関する臨床的示唆を提示した

6 目次 序文...1 第 1 部 問題と目的...4 第 1 章 先行研究の概観と問題点の整理...5 第 1 節 夫婦間葛藤と夫婦間顕在的葛藤...6 第 2 節 家族システムの中の夫婦間顕在的葛藤...9 第 3 節 夫婦間顕在的葛藤が子どもに影響を及ぼすメカニ ズム 第 4 節 子どもの視点から捉える夫婦間顕在的葛藤に関す る尺度 第 5 節青年の心理的ストレス反応 第 6 節日本と中国を比較する必要性 第 2 章本研究の目的と実証研究の構成 第 1 節本研究の目的と実証研究の構成 第 2 節 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認 知 情動 行動反応尺度の作成 場面想定法を用いて 第 3 節 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認 知 情動反応と行動反応の関連 第 4 節 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応 に影響を与える要因 親子関係を中心に 第 5 節 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応 と心理的ストレス反応 直接的プロセスの検討... 44

7 第 6 節 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚と心理 的ストレス反応 間接的プロセスの検討も加えて 第 2 部実証研究 第 3 章 研究 Ⅰ 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子ど もの認知 情動 行動反応尺度の作成 第 1 節 目的 第 2 節 方法 第 3 節 結果 第 4 節 考察 第 4 章 研究 Ⅱ 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子ど もの認知 情動反応と行動反応の関連 第 1 節 目的 第 2 節 方法 第 3 節 結果 第 4 節 考察 第 5 章 研究 Ⅲ 親子関係と夫婦間顕在的葛藤に対する青 年期の子どもの反応の関連 第 1 節 目的 第 2 節 方法 第 3 節 結果 第 4 節 考察

8 第 6 章 研究 Ⅳ 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子ど もの反応と心理的ストレス反応の関連 第 1 節 目的 第 2 節 方法 第 3 節 結果 第 4 節 考察 第 7 章 研究 Ⅴ 夫婦間顕在的葛藤が青年の心理的ストレ ス反応に影響を及ぼすプロセスの統合 第 1 節 目的 第 2 節 方法 第 3 節 結果 第 4 節 考察 第 3 部討論 第 8 章総合考察 第 1 節本研究の目的 第 2 節 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応 について 第 3 節 夫婦間顕在的葛藤が青年の精神的健康に影響を及 ぼすメカニズム 第 9 章本研究の課題と意義 第 1 節今後の課題と展開

9 第 2 節本研究の意義 第 3 節臨床的示唆 引用文献 付記 謝辞 資料

10 序文 平成 25 年度に, 全国 207 か所の児童相談所が 1 年間で対応した児童虐待相談件数は 7 3, 件 ( 速報値 ) で, これまでで最多の件数となっている ( 厚生労働省, 2014) 児童虐待は 4 種類に分類され, 子どもの目の前で家族に対して暴力をふるうこと ( ドメスティック バイオレンス : DV) はそのうちの心理的虐待に含まれる ( 厚生労働省, 2015) 内閣府男女共同参画局 (2006) の調査では, 配偶者からの暴力被害を受けたことのある人 ( 全体の 3 割 ) のうち, 約 3 割が被害について子どもも認識していたと回答している つまり全体の 1 割程度の子どもが何らかの形で夫婦間の暴力にさらされていたことになる しかし, 日本における心理的虐待への関心は,1980 年代の欧米の状況にすら達しておらず, 非常に低い ( 池, ) 夫婦間葛藤や夫婦間暴力の問題に関して日本でこれまで重視されてきたことは, 夫婦関係や被害者である女性 妻への影響であり, 心理的虐待としての子どもへの影響についての研究はあまり注目されてこなかった 家族を 1 つのシステムとして見なす場合, 夫婦間葛藤, 特に子どもにも認識されている夫婦間顕在的葛藤が子どもに影響を与える可能性が十分あり, 子どもの精神的健康を考える上で考慮すべき要因だと考えられる 夫婦中心主義と言われる欧米では, 夫婦の関係が子どもに影響を与えるという指摘が, まず, 心理療法に携わる臨床家から報告され始めた ( Minuchin, 1974; 山根常男,1984) そして, そうした知見を検証するために, 主に欧米において, 実証的な研究が行われてきた これまでの研究の傾向として特に乳幼児期あるいは児童期の子どもがいる家庭を対象とするものが多い ( D a v i s & C u m m i n g s, 1994) しかし, 青年期以降の子どもを対象とした研究も存在し, そこでは, 夫婦間顕在的葛藤と青年 1

11 の内在化型 外在化型問題 1 が関連することが明らかにされている ( G r y c h, R a y n or & F o s c o, 2004) また, 日本の研究者も青年期に両親間の葛藤にさらされることは, 子どもの心理的適応や将来への展望に否定的な影響を及ぼす可能性があると指摘している ( 宇都宮, 2005) このように, 両親間の葛藤は, 子どもの発達段階に関わらず, 一貫してネガティブな影響をもたらすことが報告されている 本研究では議論の蓄積が少ない青年期の子どもを対象に, 子どもが両親間の葛藤とどのように関わり, 葛藤からどのような影響を受けるかを検討する 若島 花田 駒場 斉藤 松崎 小林 宇佐美 ( 2010) によると, 日本と中国は同じ東アジアに位置する国でありながら, 家族関係と子どもの心理的適応との関連に異なる特徴がある また, 日本と中国の婚姻率や離婚率 2 から見ると, 人口統計資料集 ( 2014) では, 2012 年の婚姻率について日本が 5. 3( /1000 人 ) であり, 中国が 9. 6 (/1000 人 ) であるのに対し, 離婚率について日本が 1. 9 (/1000 人 ) であり, 中国が 1. 8 (/1000 人 ) である つまり, 両国の結婚率の差に対し, 離婚率が変わらないことになる 中国では一人っ子政策のため, 唯一の子どもに直接暴力をふるうことが少ない一方, たとえ夫婦間の問題があっても子どものために我慢して離婚を選ばない親が多くいると考えられる このような現状から, 中国では, 夫婦間顕在的葛藤が子どもに心理的虐待として害を及ぼす可能性が高いことが推察される さらに, 日本と中国はともに少子高齢化の急速な進展や両親と子どもだけの核家族の増加により, 子どもが夫婦間顕在的葛藤にさらされている時, 親戚やきょうだいのサ 1 D a v i s o n & N e a l e ( 1994) は幼児期後半から青年期までの子どもの状態を外在化型問題 (e x t e r n a l i z i n g p r o b l e m ) と内在化型問題 ( i n t e r n a l i z i n g p r o b l e m ) の 2 つに大別している 外在化型問題 ( e x t e r n a l i z i n g p r o b l e m ) は, 注意欠陥 多動傾向, 反社会的 攻撃的な問題行動などを指し, 内在化型問題 ( i n t e r n a l i z i n g p r o b l e m ) は, 過度の不安や恐怖, 心身症状, 抑うつなどの神経症的問題などを指す 2 ここで婚姻率及び離婚率は, 人口千人当たりのそれぞれの件数である 2

12 ポートが得られず 1 人で抱え込む傾向があると予想される 国の違いによる夫婦間顕在的葛藤が子どもに与える影響の差異と国を超えた一般的特徴を実証的な方法で明らかにする必要性が考えられる ここまで述べたように, 夫婦間葛藤と青年期の子どもの精神的健康の関連は注目すべき領域であると言える 本研究では, 青年期の中期にあたる日本と中国の高校生を対象に, 子どもに認識されている夫婦間顕在的葛藤に注目して, 青年の精神的健康に及ぼす影響を検討していく 3

13 第 1 部 問題と目的 4

14 第 1 章 先行研究の概観と問題点の整理 5

15 第 1 節夫婦間葛藤と夫婦間顕在的葛藤大渕 ( 2002) によれば, どのような関係においても対人葛藤は起こり得るものであるものの, 特に親密な関係においては対人葛藤が多く生起するとされている また, 藤田 ( 2009) は, 夫婦は, あらゆる人間関係のなかでも, 最も葛藤が生じやすく, 葛藤により容易に関係がこじれやすいと述べている ここから, 日頃から多くの時間を共有する夫婦においては, 葛藤が頻繁に起こり得ると考えられる そもそも, 夫婦間葛藤とは何なのだろうか? 夫婦間葛藤の定義は対人葛藤から援用される場合が多い 対人葛藤に関する研究が蓄積され, これまでさまざまな研究者によって定義がなされてきているが, 顕在的葛藤と潜在的葛藤の両方を葛藤として捉える立場と, 顕在的葛藤のみを葛藤として捉える立場が見られる 当事者が双方ともに対立があることを認識している状態は顕在的葛藤と呼ばれる これに対して, 潜在的葛藤とは, 当事者の一方が心の中で不満を持ち, 相手は対立があることに気づかないような状態である ( 大渕, 2015) 大渕 ( 1992) は, 日本人とアメリカの大学生を対象に葛藤解決について検討を行い, 日本人学生では葛藤の 3 分の 2 において潜在化を選んだが, 反対に, アメリカの学生は葛藤の 4 分の 3 において顕在化を選んだと示している この研究を受けて, 日本人と英語圏の外国人を対象にして同文化葛藤と異文化葛藤の解決方略を検討した大渕 菅原 Ty l e r L i n d ( 1995) は, 多様な方略を用いた葛藤を対象者に報告させるため, 葛藤経験を 人と表立って対立した経験 と定義し, 葛藤には不満に思っただけで表には出さない潜在的葛藤もあるとしつつも, 表面化した顕在的葛藤のみを取り上げている 夫婦間葛藤の定義として, 東海林 ( 2013) は, 夫婦間葛藤を 個人の行動, 感情, 思考の過程が, 配偶者によって妨害されている状態 と定義している 川島 ( 2013) は, 夫婦間葛藤を 6

16 夫婦の間に何らかの心理的 ( 認知的 情緒的 ) 対立のある状態 と定義している また, 川島 ( 2013) はこの定義に基づいて, Ya h o o! 知恵袋 に見る夫婦間葛藤の実態を顕在的 潜在的側面から検討し, 夫婦間葛藤の方略について整理したところ, 話し合い 口げんか, 暴力, 関係性攻撃 ( 無視 ) など観察可能なものもあれば, 内面に不満を抱えていても我慢したり, 何事もなかったように振る舞ったりする観察可能ではないものもある これらの知見は, 夫婦間葛藤を認知 情緒など個人の内的反応が個人間で対立する状態を指しており, 表出された行動上の対立である顕在的葛藤だけでなく, 外に現れない潜在的葛藤も含めて夫婦間葛藤を捉える立場である 欧米における夫婦間葛藤 ( m a r i t a l c o n f l i c t ) の定義について, B u e h l e r, K r i s h n a k u m a r, S t o n e, A n t h o n y, P e m b e r t o n, G e r a r d & B a r b e r ( 1998) は, 夫婦間葛藤 ( m a r i t a l c o n f l i c t ) を 高レベルの不一致が存在し, 配偶者に対する軽視や言葉の乱用が見られる夫婦間の緊張的で敵対的な相互作用 と定義している また,C u m m i n g s ( 1998) は, 夫婦間葛藤 ( m a r i t a l c o n f l i c t ) を ポジティブであったか, ネガティブであったかに関わらず, 夫婦間の意見の対立が存在するあらゆる相互作用 と定義している これらの定義は, 夫婦間葛藤 ( m a r i t a l c o n f l i c t ) を夫婦間の相互作用だと捉え, 表面化した顕在的葛藤のみを取り上げた立場である 欧米においての夫婦間葛藤 (m a r i t a l c o n f l i c t ) の定義は日本で使われている夫婦間葛藤の意味合いより範囲が狭く, 夫婦間顕在的葛藤により近いと考えられる また, 日本と中国における夫婦間葛藤と子どもの精神的健康に関する実証研究は, 欧米の知見を参考にするものが多いため, 夫婦間葛藤が表面化した顕在的葛藤を指す場合が多い K i t z m a n n ( 2003) は, 夫婦間葛藤 ( m a r i t a l c o n f l i c t ) が子どもの友人関係に与える影響を検討する際, 両親が報告した夫婦間葛藤 ( m a r i t a l c o n f l i c t ) より, 子どもによる報告の有用性 7

17 がより高いと指摘している このことから, 子どもに気づかれている夫婦間葛藤は気づかれていないものより, 精神的健康につながると考えられる また, 潜在的葛藤に対して, 子どもはそれが存在するか存在しないかわからない可能性もある 以上の内容を踏まえ, 子どもを対象とする本研究では, 夫婦間葛藤の領域で数多くの研究が蓄積されてきた欧米と一致する視点で, 両親の表面化した顕在的葛藤に注目して検討を進める 以下より, 夫婦間葛藤と区別し, 夫婦間顕在的葛藤を使用していく 8

18 第 2 節家族システムの中の夫婦間顕在的葛藤これまで, 日本において夫婦間葛藤に関する研究には, 夫婦間の問題として二者関係に焦点を当て, 葛藤生起場面の夫婦間コミュニケーション, 夫婦間葛藤解決方略などを検討するものがある ( 岩藤, ; 川島, 2013; 東海林, 2009) しかし, 家族システム論の視点に立てば, 夫婦間顕在的葛藤はただ夫婦の問題というだけでなく, 子どももまたシステムの成員として夫婦間顕在的葛藤から影響を受け, また両親の問題に影響を及ぼすことが考えられる そこで, 夫婦間顕在的葛藤を 父 母 子 という成員からなるシステム内での 父 母 特定の関係内の葛藤として理解する必要があるだろう 第 1 項家族システム論の視点家族は青年の心理社会的発達を支える最も重要な社会的文脈の 1 つであると言われている ( G r o t e v a n t, 1997) 家族というものは, 相互交流パターンを通じて作用する 1 つのシステムを構成する ( 板倉, 2013) 長谷川 ( 1987) は, 家族システムにおいては 全体性, 自己制御性, 自己変換性 という 3 つの特性があることを論じている まず, システムは部分の総和以上のものとして存在するため, 部分だけを見ても分からないものであり ( 全体性 ), 安定を保つためにシステム自体が逸脱を減らそうとする ( 自己制御性 ) そして, 自己制御ではバランスが保てなくなると, システムは自らを維持するためにシステム自体を変化させる ( 自己変換性 ) すなわち, 家族システム論においては, 家族あるいは家族成員のうちの 1 人が, 情報から切り離されて独立して存在しているのではなく, 上位システムと下位システムの間, あるいはシステム内において複雑な相互作用がなされていると考え, システムは 1 つの意味を持ったまとまりであると見なす ( 森川, 2015) 家族関係は夫婦関係, 親子関係, きょうだい関係などのようにメンバー間の 2 者関係の 9

19 単位で切り取って理解することも可能であるが, システム全体の中でそれらの関係 ( サブシステム ) を位置づけ, その全体的な意味を理解することが重視される また, 夫婦間顕在的葛藤と家族システムについて, 飛田 ( 1997) は, 多くの研究は葛藤を経験している個人とその葛藤を引き起こしている他者という 2 者間の関係だけに焦点を当ててきたが, 家族関係における葛藤も 父 母 子 という成員からなるシステム内における特定の関係内の葛藤として理解される必要があるとしている また, 大坊 ( ) は 2 者間のコミュニケーションに対して第三者は当事者ではないからといってただ成り行きを見ている傍観者でいることはできず, そのコミュニケーション行動に影響を受け, かつその場を共有する者として 2 者間のコミュニケーション行動に影響を及ぼしているとしている 臨床場面においても関連する知見がある 例えば, 家族療法家の M i n u c h i n( ) は, 子どもが両親との三角関係化 3 に巻き込まれるのは, 両親間の葛藤を解決しようとして努力することや, その葛藤から生ずる緊張を緩和したいと考えるからであると三角関係化について説明している また, 両親間の葛藤に巻き込まれて三角関係化することは, 思春期や青年期の子どもにとっては危険因子であると述べている 特に夫婦間顕在的葛藤が生じる時, 子どもが巻き込まれる可能性が高いと考えられる したがって, 家族システム論の視点から, 子ども, また, 親子サブシステムは夫婦間顕在的葛藤など夫婦サブシステムの問題から切り離されることができないと考えられる 第 2 項 夫婦間顕在的葛藤と青年期の子ども 幼児期 児童期の子どもを対象とする先行研究では, 夫婦間 3 三角関係化とは, 二者で構成される感情システムは不安定になり, 第三者を引き込み三者でシステムを構成することである 例えば, 妻が夫に対する苦情を子どもに言うなどが挙げられる 10

20 顕在的葛藤と子どもの精神的健康の関連が様々な側面から実証されている 例えば, 夫婦間顕在的葛藤の深刻さと子どもの外在化型 内在化型問題との短期 長期的な関連が示されている ( C u m m i n g s, D a v i e s & C a m p b e l l, 2000) また,Buehler, L a n g e & F r a n c k( 2007) の縦断的研究によれば, 1 年目の夫婦間顕在的葛藤が 2 年目の子どもの夫婦間顕在的葛藤に対する認知と情動を媒介して 3 年目の外在化型 内在化型問題と関連することが示されている さらに, 攻撃的な夫婦間顕在的葛藤と子どもの自尊心の低下や外在化型 内在化型問題との関連が示されている ( O ' B r i e n, B a h a d u r, G e e, B a l t o & E r b e r, 1997) 日本においても, 前島 小口 ( ) は, 子どもが父母の関係に不和があると感じることが子どもの自尊心や攻撃性に影響を与え, さらに親子関係の不和につながることに言及している 一方で, 夫婦間顕在的葛藤の肯定的側面も明らかとなっている K u r d e k( ) は, 夫婦間顕在的葛藤解決方略に, 同意, 妥協, ユーモアのような建設的なものと対決, 後退, 防衛のような破壊的なものがあると指摘している また, 葛藤状態における夫婦間での建設的な話し合いは, 子どもが適切に対人関係の困難さに対処する方法を学習する機会となり, 必ずしも子どもにとって否定的な影響を及ぼすものではないとされている ( C u m m i n g s & Wi l s o n, 1999; E a s t e r b r o o k s, C u m m i n g s & E m d e, 1994) さらに, 夫婦間顕在的葛藤にさらされることのみが子どもの発達やメンタルヘルスに影響を与えるということではなく, 葛藤の量 ( 例えば, 頻繁である, 長期にわたる, など ), 葛藤の質 ( 例えば, 深刻である, 暴力を伴う, 解決不可能である, など ) とそれらについての子どもの認知や情動が子どもの外在化型 内在化型問題に影響を与えると指摘されている ( C u m m i n g s e t al., 2000) 子どもが青年期に入ると, 単に両親を父母として評価するだ 11

21 けでなく, 夫婦関係や夫婦の不和など両親の夫婦としてのあり方についても敏感に感じ取るようになる ( D a v i s, D u m e n c i & Wi n d l e, 1999) また, 藤田 ( 2009) は, 幼い頃, 葛藤場面に多く居合わせるほど, 子どもたちは両親の機嫌に敏感になり情動的に混乱する可能性が高くなり, そのような子どもたちは, 年齢が高くなっても同じように反応する傾向が強かったと指摘している さらに,K a r l t e r ( , カルター,E., 北川玲訳,2009) は, 中学 高校に在学する青年期の子どもたちは両親の関係については敏感であり, 両親間の不和や離婚後の争いごとなどによって非常に感情をかき乱されるために, ある者は暴力的になり, またある者は抑うつ的に反応すると述べている 青年期の子どもを対象とする実証研究が少ない中でも, 夫婦間顕在的葛藤と青年の精神的健康との関連が示されていることから, 青年期の子どもを対象に, 夫婦間顕在的葛藤が及ぼす影響及びそのメカニズムを明らかにする必要性があるだろう 12

22 第 3 節夫婦間顕在的葛藤が子どもに影響を及ぼすメカニズム C u m m i n g s e t a l. ( 2000) によれば, 夫婦関係が子どもの発達やメンタルヘルスに及ぼす影響には 2 通りのプロセスがある 1 つは夫婦関係が親の養育行動や家族機能を媒介して間接的に子どもの発達やメンタルヘルスに影響を与えるというものであり, もう 1 つは夫婦間顕在的葛藤が直接的に子どもの発達やメンタルヘルスに影響を与えるというものである 例えば, F a u b e r, F o r e h a n d, T h o m a s & Wi e r s o n ( 1990) は, 夫婦間顕在的葛藤の発生により, 子どもに対して拒否的な態度で接するといった養育行動を介して, 子どもの内在化型 外在化型問題の双方に影響を与える一方, 夫婦間顕在的葛藤が, 直接的には子どもの外在化型問題のみに影響を与えることを示している 前者を家族システム理論の観点から見れば, 夫婦サブシステムの問題が親子サブシステムや家族システムに影響を与えることで子どもの精神的健康につながっていると考えられる 日本と中国においては, このプロセスに関して数多くの研究がなされてきた 一方で, 欧米においては, 夫婦間顕在的葛藤が直接的に子どもの発達やメンタルヘルスに影響を与えるという点に関する研究が盛んであるが, 日本と中国においてはほとんどなされていない 近年, 日本において, ようやくそのような研究の萌芽が見られるものの ( 柏木, ), まだ十分とはいえない 本節ではこの 2 通りのプロセスの詳細をまとめていく 第 1 項夫婦間顕在的葛藤が子どもに影響を及ぼす間接的プロセス夫婦間顕在的葛藤が子どもに影響を及ぼす間接的プロセスの先行研究を概観する際, 夫婦関係と親子関係の関連性に対する 2 つの理論が参考になる 1 つ目は夫婦関係と親子関係が正の相関を示す スピルオーバー仮説, 2 つ目は夫婦関係と親子関係が負の相関を示す 補償仮説 である ( E n g f e r, 1988) 13

23 スピルオーバー仮説 の先行研究について, 1990 年代の研究では, F a u b e r e t a l. ( 1990) は, 夫婦間顕在的葛藤が否定的な養育行動を媒介して子どもの内在化型 外在化型問題と関連することを示している その反面, L u t z k e, Wo l c h i k & B r a v e r ( 1996) は, 親子関係の高い質は, 夫婦間顕在的葛藤が子どもの心理的適応問題に与える影響を緩和する役割があることを明らかにしている 2000 年以降の研究においても, 夫婦間顕在的葛藤は, 親子間の敵意, 親子間葛藤, 否定的な養育行動, 親子の愛着と親子関係の悪化を媒介して子どもの精神的健康に影響を与えることが示されている ( El-Sheikh & E l m o r e - S t a t o n, ; G e r a r d, K r i s h n a k u m a r & B u e h l e r, 2006; K a c z y n s k i, L i n d a h l, M a l i k & L a u r e n c e a u, 2006; S t o c k e r, R i c h m o n d, L o w, A l e x a n d e r & E l i a s, 2003) 日本においても, スピルオーバー仮説 に関する研究が見られ, 例えば, 菅原 八木下 詫摩 小泉 瀬地山 菅原 北村 ( ) は, 夫婦間の愛情関係が家族機能を媒介として子どもの抑うつ傾向と関連するかを検討した結果, 両親間の愛情の強固さと家族機能の良好さとが, また家族機能の良好さと子どもの抑うつ傾向とが関連することを明らかにしている 補償仮説 について,B e l s k y, Yo u n g b l a d e, R o v i n e & Vo l l i n g ( 1991) は, 夫婦関係の悪さと母親の子どもへの関わりの頻度との間に関連があることを示している このような補償仮説は家族システム理論における 三角関係化 の概念と類似している この三角関係化は 2 者の緊張状態を和らげるが, 意味のある問題解決を阻止する ( 若島 佐藤 三澤, ) L i n d a h l, C l e m e n t s & M a r k m a n ( 1997) の縦断的調査によれば, 葛藤の頻度が多い夫婦は, 世代交差的な親子同盟や, 夫婦の問題に関する話し合いに子どもが巻き込まれることが多い また, B e l l, B e l l & N a k a t a ( 2001) は, 夫婦間顕在的葛藤が子どもを巻き込んだ三角関係化を生成することを示唆しており, さらには日 14

24 米において三角関係化のプロセスが類似することを明らかにしている 臨床現場においても, 家族療法家の M i n u c h i n( 1974) は, 子どもが両親間の葛藤に巻き込まれるのは, 葛藤を解決しようとして努力することや, 葛藤から生ずる緊張を緩和したいと考えるからであると三角関係化について説明している 一方, 板倉 ( ) は, スピルオーバー仮説 や 補償仮説 の観点から青年期の親子関係と父母関係の関連性について検討している その結果, 父母の結びつきと父子の結びつきとの間に有意な正の相関が示されている 一方, 父母の結びつきと母子の結びつきとの間に有意な相関は示されなかった 加えて, 父母の結びつきの低群は, 高群と比較して青年の父親に対するイメージや, 母親の夫に対するイメージがともに否定的であることが示されている このことから, 父母関係と父子関係は スピルオーバー仮説 を支持する一方で, 父母関係と母子関係は 補償仮説 を支持することが示唆されている このように, 父母関係 母子関係と父母関係 父子関係では関連のメカニズムが異なるため, 夫婦間顕在的葛藤が子どもに影響を及ぼす間接的プロセスについても父子や母子別々に検討する必要性が考えられる 第 2 項夫婦間顕在的葛藤が子どもに影響を及ぼす直接的プロセス夫婦間顕在的葛藤が直接的に子どもの精神的健康に影響を与えるというプロセスに関して, これまで注目されている理論には, G r y c h & F i n c h a m ( ) の認知状況的枠組み ( c o g n i t i v e - c o n t e x t u a l f r a m e w o r k ) と, D a v i s & C u m m i n g s ( 1994) の情緒安定性仮説 (e m o t i o n a l s e c u r i t y h y p o t h e s i s ) がある 15

25 ( 1 ) 認知状況的枠組み ( G r y c h & F i n c h a m, ) G r y c h & F i n c h a m ( 1990) は, 夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの認知に焦点を当てており, 認知状況的枠組みを提唱している ( 図 1-1 ) G r y c h & F i n c h a m( 1990) は子どもを受動的な存在ではなく, 活動的な主体と見なし, 子どもが夫婦間顕在的葛藤をどのように認知 理解するかによって, 子どもの精神的健康の問題が異なると考えている 認知状況的枠組み ( G r y c h & F i n c h a m, ) では, 夫婦間顕在的葛藤にさらされる子どもの認知的評価には 2 つの段階があり, それぞれ一次処理 ( p r i m a r y p r o c e s s i n g ) と二次処理 ( s e c o n d a r y p r o c e s s i n g ) と呼ばれる 一次処理では, 子どもは葛藤の性質 ( 肯定的 / 否定的など ), 自分に与える脅威感, 自分との関連性について評価する 子どもが葛藤について, 否定的と評価しない, あるいは重要であると考えない場合, 注意が葛藤から離れる 一方で, 子どもが葛藤について, 否定的であり, また自分と関連していると判断すれば, 二次処理が生じる 二次処理では, 子どもは原因帰属 (c a u s a l a t t r i b u t i o n s ), 責任帰属 ( a t t r i b u t i o n s o f r e s p o n s i b i l i t y ), 非難 ( b l a m e ), 効力期待 ( e f f i c a c y e x p e c t a t i o n ) などに関して評価する その後, 子どもは一次処理と二次処理を行った上で, 情緒的反応を示し, また認知的評価と情緒的反応によって, 対処行動を行う さらに, 子どもの対処行動は両親の葛藤に影響を与える 一次処理と二次処理に影響を及ぼす葛藤の要因として, 葛藤の強度 (i n t e n s i t y ), 内容 ( c o n t e n t ), 持続時間 ( d u r a t i o n ) と解決 ( r e s o l u t i o n ) などが挙げられている 一次処理と二次処理に影響を与える文脈の要因として, 過去の葛藤の経験 ( p r e v i o u s e x p e r i e n c e w i t h c o n f l i c t ), 認知された情緒的雰囲気 ( p e r c e i v e d e m o t i o n a l c l i m a t e ), 気質 ( t e m p e r a m e n t ), ジェンダー ( g e n d e r ), 葛藤の経過の予測 ( e x p e c t a t i o n s f o r t h e c o u r s e o f c o n f l i c t ), 現在の気分 16

26 ( c u r r e n t m o o d ) などが挙げられている 認知状況的枠組み ( G r y c h & F i n c h a m, ) では, 情緒的反応や対処行動よりも認知的評価に焦点を当て, 子どもの認知的評価としては葛藤の深刻さ ( c o n f l i c t p r o p e r t y ), 恐れ ( p e r c e i v e d t h r e a t ), 自己非難 ( s e l f - b l a m e ) が主に取り扱われている これらの要因が子どもの内在化型 外在化型問題と夫婦間顕在的葛藤との関連の媒介メカニズムであると主張されている ( G r y c h & F i n c h a m, 1993; G r y c h, S e i d & F i n c h a m, 1992) 文脈 過去から : 葛藤の経験 葛藤の要因強度内容持続時間解決 今現在 : 一次処理 認知された情緒的雰囲気気質ジェンダー葛藤の経過の予測気分二次処理 対処行動 情緒的反応 図 1-1 夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの認知状況的枠組み ( G r y c h & F incham, 1990) ( 2 ) 情緒安定性仮説 ( D a v i s & C u m m i n g s, ) D a v i s & C u m m i n g s ( 1994) は, B o w l b y の愛着理論と認知 17

27 状況的枠組み ( G r y c h & F i n c h a m, ) に基づき, 夫婦間顕在的葛藤が子どもや家族の情緒安定性 (e m o t i o n a l s e c u r i t y ) を脅かすことによって子どもの精神的健康に影響を及ぼすという媒介メカニズムを主張している 具体的には, 子どもが夫婦間顕在的葛藤にさらされている時の情動反応, 介入的 回避的行動を情緒的安定性の指標とし, 夫婦間顕在的葛藤と子どもの内在化型 外在化型問題との関連について検討を行っている まず情動反応について, 夫婦間顕在的葛藤にさらされることが子どもの警戒, 不安, 怒りなどのネガティブな情緒的反応を喚起し, 情緒の統制と表出に影響を与える そして, 行動反応について, ネガティブな情緒的反応を軽減するために, 子どもは自分から葛藤への暴露を調整する 子どもの中には, 両親間の葛藤に巻き込まれて必死に葛藤を止めようとする者もいれば, 背負いきれないプレッシャーから, 回避を選択する者もいる このような経験が繰り返されると, 子どもの情動 行動反応が固定され, 父母関係に対してネガティブな表象が形成され, 精神的健康の問題につながると考えられる C u m m i n g s, S c h e r m e r h o r n, D a v i e s, G o e k e - M o r e y & C u m m i n g s ( ) はこの仮説に基づき 2 年間の縦断的研究を行い, 情緒安定性の不全が夫婦間顕在的葛藤と子どもの内在化型 外在化型問題との関連の媒介変数であることを示している ( 3 ) 両理論の有用性一方, Tu r n e r & B a r r e t( 1998) は情緒安定性仮説 ( D a v i s & C u m m i n g s, ) と認知状況的枠組み ( G r y c h & F i n c h a m, 1990) の両者が子どもの精神的健康を説明するプロセスにおいて重要であると主張し, 夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの認知と子どもの両親に対する情緒的安定性 ( 葛藤の際の情動反応, 介入的 回避的行動 ) がそれぞれ独自に子どもの精神的健康と関連すると指摘している また, S i f f e r t & S c h w a r z( ) も 18

28 情緒安定性仮説 ( D a v i s & C u m m i n g s, ) と認知状況的枠組み ( G r y c h & F i n c h a m, ) が互いに補い合い, どちらも有用な理論であると述べている 夫婦間顕在的葛藤が子どもに影響を及ぼす直接的プロセスにおいて, 認知反応のみならず, 情動反応と行動反応も含めて検討することは重要だと言える 以上より, 夫婦間顕在的葛藤が子どもに影響を及ぼすプロセスについて, 夫婦間顕在的葛藤が親の養育行動や家族機能などを媒介して間接的に子どもの精神的健康に影響を与えるプロセスと, 夫婦間顕在的葛藤にさらされることが直接的に子どもの精神的健康に影響を与えるプロセスとの両方から検討する研究は少ない また, 後者の直接的プロセスに関して, 情緒安定性仮説 ( D a v i s & C u m m i n g s, ) や認知状況的枠組み ( G r y c h & F i n c h a m, ) の両方の有用性が指摘されているにも関わらず, 認知 情動 行動の三つの側面から子どもの主観的体験を検討する研究が見当たらないという課題も残っている 19

29 第 4 節子どもの視点から捉える夫婦間顕在的葛藤に関する尺度夫婦間顕在的葛藤と子どもの精神的健康に関する研究では質問紙法と観察法が利用されている しかし, 観察法の制限が多いため質問紙が主に用いられ, それは両親による報告と子どもによる報告に分けられる ( 杨, ) G r y c h & F i n c h a m( 1993) は, 実際の夫婦関係よりも子どもの目に映る夫婦関係の方が, 子どもの発達にとって重要な意味をもつと指摘している 近年の欧米における夫婦間顕在的葛藤と子どもの精神的健康との関連に関する先行研究を概観すると, 夫婦間顕在的葛藤についての子どもの個人的体験を重視するものが多くなっている ( D a v i s & C u m m i n g s, ; G r y c h & F i n c h a m, ; K i t z m a n n, 2003) このように, 子どもから両親間の葛藤を評価するという文脈で, 最もよく用いられ, かつ信頼性と妥当性が検証されているものに,G r y c h e t a l.( 1992) による C h i l d r e n s P e r c e p t i o n o f I n t e r p a r e n t a l C o n f l i c t( 以降,C P I C ) という尺度がある C P I C は子ども自身が夫婦間顕在的葛藤をどう認知しているかを測定する尺度である 下位尺度として, 葛藤の次元を表す頻度 ( f r e q u e n c y ), 強度 ( i n t e n s i t y ), 葛藤解決 ( r e s o l u t i o n ) と, 子どもの葛藤に対する反応あるいは解釈を表す恐れ ( t h r e a t ), 対処効力感 ( c o p i n g e f f i c a c y ), 内容 ( c o n t e n t ), 自己非難 ( s e l f - b l a m e ), 安定性 ( s t a b i l i t y ), 葛藤によるストレス理解に重要と思われる三角関係 ( t r i a n g u l a t i o n ), が想定され, それぞれ 4 項目から 7 項目で構成される G r y c h e t a l. ( 1992) は そのとおり から ちがう の 3 件法で評定させ, 下位尺度合計得点を用いて因子分析を行った その結果, 3 因子を抽出し, 葛藤の深刻さ因子には頻度と強度と葛藤解決, 恐れ因子には恐れと対処効力感, 自己非難には内容と自己非難が含まれるとしている しかし, これらの下位尺度のみでも 42 項目と 20

30 多く, 内容的に重複した項目もある この C P I C は当初, 学童期の子どもを対象として検討されてきたが, その後大学生を対象とした研究にも適用できることが示されている ( B i c k h a m & F i e s e, ) また, O ' B r i e n, M a r g o l i n & J o h n ( 1995) は, 幼児や児童に対して, 両親間の葛藤に対する対処行動を測定する児童用夫婦間顕在的葛藤対処行動 インタビュー ( C h i l d r e n s M a r i t a l C o n f l i c t S t r a t e g i e s I n t e r v i e w ) の標準化を試みた O B r i e n e t a l. ( 1995) の面接では, 幼児や児童の言動を 10 の対処行動にコード化 記録をしている 10 の対処行動とは, 葛藤から逃げようとする行動 ( a v o i d ), 自分を落ち着かせようとしたり, 気を紛らわせようとしたりして, 自分を頼りにする行動 ( s e l f - r e l y ), 友人やきょうだいに助けを求める行動 ( s e e k p e e r / s i b l i n g s ), 大人に仲裁を求める行動 ( s e e k a u t h o r i t y ), けんかを止めるように言う ( v e r b a l i n t e r v e n t i o n ), 自分を責める (s e l f - b l a m e ), 体を張ってけんかを止める ( p h y s i c a l i n t e r v e n t i o n ), けんかの理由を両親に尋ねる行動 ( q u e s t i o n p a r e n t ), 泣いたり, 感情を表に出したりする行動 ( e x p r e s s f e e l i n g s ), 何もしない ( h e l p l e s s ) である さらに, D a v i e s, F o r m a n, R a s i & S t e v e n s ( 2002) は, 情緒安定性仮説 ( D a v i s & C u m m i n g s, ) に基づき父母関係安定性尺度 ( S e c u r i t y i n t h e I n t e r p a r e n t a l S u b s y s t e m S c a l e ; S I S S c a l e ) を作成した この尺度には 7 因子が含まれる それは, 情動反応 ( e m o t i o n a l r e a c t i v i t y ), 行動の失調 ( b e h a v i o r a l d y s r e g u l a t i o n ), 介入 ( i n v o l v e m e n t ), 回避 ( i n v o l v e m e n t ), 建設的な家族の表象 (c o n s t r u c t i v e f a m i l y r e p r e s e n t a t i o n s ), 破壊的な家族の表象 ( destructive f a m i l y r e p r e s e n t a t i o n s ), 葛藤のスピルオーバーの表象 ( c o n f l i c t s p i l l o v e r r e p r e s e n t a t i o n s ) であり, 37 項目をそれぞれ る 4 件法で測定す 21

31 子どもの視点から見た夫婦間顕在的葛藤に関する既存の尺度には次の2つの問題が考えられる 第一に, これらの尺度は欧米人を対象に作られた尺度である 日本と中国では, 夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの認知反応を測る尺度として C P I C の翻訳や検討に関する研究が存在するが ( 池 俞, 2008; 川島 眞榮城 菅原 酒井 伊藤, ; 森光 高橋, 2007; 山本 伊藤, 2012; 赵 莫,2006; ), 子どもの情動 行動反応に関する検討が少なく, 測定する尺度の翻訳もなされていないのが現状である 第二に, これまでの研究では, 子どもに実際の両親間の葛藤について報告を求めてきたが, それによって子どもに心理的な負担をかける可能性がある 前述したように, 夫婦間顕在的葛藤にさらされることが心理的虐待になり得るため, このような体験のある子どもに対して実際の葛藤場面を思い出してもらうと, 二次被害になる可能性が考えられる 22

32 第 5 節青年の心理的ストレス反応この節では, 青年の心理的ストレスに言及する 古屋 佐々木 音山 坂田 ( 2007) の高校生の心理社会的ストレッサーに関する研究では, 家族間でもめごとがあったり, 家族内の仲が良くないこと や 自分のことで家族がもめたり, ぐちを言われたこと などが家庭ストレッサーとして挙げられている そのため, 子どもにとって夫婦間顕在的葛藤にさらされることはストレッサーであり, 心理的ストレスモデルの適用が可能だと考えられる また, 本章の第 3 節で述べたように, 先行研究では夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの認知的評価や対処行動の重要性が紹介されており, ストレス研究における理論体系や構成概念が浸透している L a z a r u s & F o l k m a n ( 1984) は, 心理的ストレスモデル と呼ばれる, 心理社会的ストレスの認知的評価 対処行動理論を提唱し, 今日の心理的ストレス研究の理論的基礎を構築した L a z a r u s & F o l k m a n ( 1984) によれば, ストレスは日常生活で遭遇する外的な刺激 ( s t r e s s o r : ストレッサー ) に対して, その刺激自体がどの程度脅威で負担となるものであるかという個人の判断過程 ( 一次評価 ), 及び, 脅威場面に対して直接的な反応ができるかどうかという判断過程 ( 二次評価 ) という 2 つの認知的評価 ( a p p r a i s a l : アプレイザル ) を経て生じる さらに, こうした判断過程の結果に基づいて, ストレッサーに対する何らかの対処行動 ( c o p i n g : コーピング ) が発動される 対処行動を行った結果, ストレッサーが低減されれば不快な心理的反応 (p s y c h o l o g i c a l s t r e s s r e a c t i o n : 心理的ストレス反応 ) が生じることはないが, 対処行動がストレッサーの低減にふさわしいものでなければ不快な心理的反応が生じてしまう L a z a r u s が提唱した心理的ストレスモデルでは, 認知的評価や対処行動といった, ストレッサーとそれによって引き起こされる反応の媒介要因を想定している点に特徴がある 23

33 心理的ストレス反応について, ストレッサーにさらされると, 短期的には不安, 怒り, 抑うつなどの情動変化, 及び心拍数の増加などの生理的な変化が生じる 長期的には, 認知 行動的変化, 身体的症状, 社会的機能の低下などの二次反応も見られる 認知 行動的変化には, 自信喪失, 思考力の低下, 無気力, 引きこもりなどが含まれる 身体的症状は, 生体のホメオスタシス 4 を調節している自律神経系, 内分泌系, 免疫系の機能が低下することによって生じるさまざまなストレス関連性疾患を意味している 社会的機能の低下では, 社会的に不適応な状態に至ったり, 生活の質 ( Q O L : q u a l i t y o f l i f e ) が低下したり, 社会的生活を営む上で何らかの障害が生じたりする このように, ストレス反応の概念は幅広い意味で用いられ, そのような意味において, 心理 社会的ストレス研究では, ストレス反応の総称として精神的健康という用語を用いる傾向が強い ( 加藤, 2008) 心理的ストレス反応については, 情動を中核とする研究がなされてきた 例えば, 坂野 嶋田 三浦 森 小田 猿渡 ( 1994) は, 心理的ストレス反応に関する先行研究を踏まえ, いずれの心理的ストレス反応尺度においても 無気力反応, 不機嫌 怒り, 抑うつ 不安 の各因子が抽出されている これらの反応は年齢や発達段階に関わらず表出される, 一般的な心理的ストレス反応であると指摘している 心理的ストレス反応を測定する質問紙として, P S R S ( P s y c h o l o g i c a l S t r e s s R e s p o n s e Scale; 新名 坂田 矢冨 本間, ), P O M S( P r o f i l e o f M o o d S t a t e s; 横山 荒記,1994),S R S - 18( S t r e s s R e s p o n s e S c a l e - 18; 鈴木 嶋田 三浦 片柳 右馬楚 坂野, 1997 ) などが, 日本で開発されている 心理的ストレス反応に含まれる情動反応の不安と夫婦関係の 4 生体のホメオスタシスとは, 生体内の環境を常に一定に保とうとする 機能 24

34 関連について見ていきたい 山崎 ( 2005) は, 青年期を前期 ( 中学生 ), 中期 ( 高校生 ), 後期 ( 大学生 ) に分けて青年期の不安の変化を検討し, 性別を問わず, 状態不安, 特性不安ともに高校生で極めて高い値を示すことを明らかにしている また, 青年の不安は両親の夫婦関係や家庭環境などの家族の要因と密接に関連していると指摘されている これを裏付ける研究として, 宇都宮 ( 2005) は, 両親の結婚生活に対するコミットメントの認知と女子青年の不安との関連性を検討し, 両親の 存在の全的受容 代替性 を高く認知している娘ほど不安は弱まり, 社会的圧力 無力感 が高い娘ほど不安は強まることを明らかにしている さらに, 鈴山 徳田 ( 2009) は, 夫婦関係が家族システムの機能状態を媒介として間接的に青年の不安 身体症状に影響を及ぼすことを示している 以上から, 夫婦間顕在的葛藤が青年期の子どもの精神的健康に及ぼす影響を検討する際, 心理的ストレスモデルの知見を参考にすることができ, 精神的健康を表す変数として心理的ストレス反応を取り上げることが適切だと考えられる 25

35 第 6 節日本と中国を比較する必要性これまでの心理学の学説は, 人間の心性の普遍性が自明のものとされてきた 一方, この 30 年 ~40 年の間に, やはり人間の心性が文化によって構成されている可能性が指摘されている ( 石井, 2010) 夫婦間顕在的葛藤と子どもの精神的健康の領域においても, 文化的影響を考慮する先行研究が見られる 例えば, K r i s h n a k u m a r, B u e h l e r & B a r b e r ( 2003) によれば, 夫婦間顕在的葛藤と子どもの抑うつ症状との関連は, ヨーロッパ系とアフリカ系アメリカ人で異なっている ヨーロッパ系の子どもでは, 夫婦間顕在的葛藤から親行動への影響, また抑うつ症状に対する親行動の媒介効果が示されている アフリカ系の子どもでは抑うつ症状への親行動の媒介効果が認められず, 夫婦間顕在的葛藤から親行動への影響は部分的にしか示されていない このことから, 夫婦間顕在的葛藤と子どもの抑うつとの関連に文化的要因が関与していると考えられる なぜ日本と中国を比較するのか, その理由を述べていきたい これまで文化心理学の領域において, 東洋対西洋のような大きな括り, 日本とアメリカや中国とアメリカのようなやや小さな括りで比較研究が行われてきた 例えば, M a r k u s & K i t a y a m a ( 1991) によれば, 心理プロセスの根幹をなす文化的自己観は, 相互独立的自己観と相互協調的自己観に大別される 相互独立的自己観は, 西洋で一般的な信念とされている 自己 = 他から切り離されたもの を反映している 一方, 相互協調的自己観は, 東洋文化で一般的な信念とされている 自己 = 他と根元的に結びついているもの を表している また,H a l l( 1976) は, 英語など西洋の言語では, 情報伝達の主な経路が言語そのものであるが, 日本語や中国語など東洋の言語では, その経路として文脈的手がかりの果たす役割が相対的に高いことを指摘し, 前者を低コンテクストの言語, 後者を高コンテクストの言語と呼んでいる このことに関して,N a d a m i t s u, C h e n & F r i e d r i c h 26

36 ( 2001 ) は, 東洋 = 集団主義 = 相互協調的自己観 = 高コンテクスト という図式の中で, 中国人と日本人の文化的自己観, コミュニケーションスタイルなどがあたかも, 同質であるかのような印象を与えてきた恐れがあると指摘している このような指摘から研究者は東洋が一括りで説明されることに対して疑問を持ち, 検討を進めている 例えば, 日本 韓国 中国 ベトナムにおける子どもたちのお金 お小遣いをめぐる生活世界を捉えた呉 竹尾 片 高橋 山本 サトウ ( ) によると, 子どもの消費生活への参与度は, 日本, 韓国, 中国, ベトナムの順で低くなる また, 日本の子どもは, 友達関係においても, 親子関係においても, 所有の領域を分化した形で認識し, 行動する傾向が最も強いと示されている つまり, 比較的日本は相互独立的自己観に近く, ベトナム, 中国, 韓国は相互協調的自己観により近いと示唆されている 対人葛藤の領域の先行研究も, 個人主義的文化圏では主張的な葛藤解決がなされる傾向にあり, 集合主義的文化圏では回避的な葛藤解決がなされる傾向があると指摘している ( Tr u b i s k y, T i n g - To o m e y & L i n, 1991) しかしながら, 日本人と中国人を集合主義的文化圏としてまとめて扱うことは正確ではなく, 実はそれぞれに異なる特徴があると考えられる 対人葛藤の領域で日本と中国が異なる特徴を表す理由として, まず日本と中国の家族観から考えてみたい E A S S 東アジアの家族 ( F a m i l i e s i n E a s t A s i a )( 岩井 保田, 2014) では家族観, 結婚観 離婚観, 家族行動など 6 つの分野に関して日本 中国 韓国 台湾を対象に調査を行っている ここでは, 日本と中国を中心にいくつかの結果を挙げながら, それぞれの家族の実態を見たい 自分の幸福よりも, 家族の幸福や利益を優先するべきだ という設問について, 賛成の対象者が日本において % であり, 中国において % である 親の誇りとなるように, 子どもは努力するべきだ では, 賛成の人が日本 27

37 において % であり, 中国において % である さらに, 家族行動に関する質問 あなたの家では, あなたを含めて家族一緒に夕食をとることがどのくらいありますか では, ほぼ毎日一緒に夕食をとる人は日本において % であり, 中国において % である 以上の結果から, 国全般の特徴として明らかにされたのは, 日本に比べて, 中国の方が, 個人より家族を優先する意識, 親子の一体性, 家族のまとまりが強いということである このような傾向は他の実証研究においても示されている 例えば, 親子関係について, 高校生の親子関係に関する日中比較研究では, 日本の高校生よりも中国の高校生の方が親との関係をより親密であると評定している ( 飛田 畢,2003) また, 賀 永久 ( 2013) は, 自分と親の関係を一体と捉えるか個人と個人と捉えるかという家族の一体感についての日中比較を行った結果, 中国の大学生は日本より家族の一体感を感じていることを明らかにしている 中国では 年代末から 一人っ子政策 が実施されているため, たとえ夫婦間における暴力の問題が起きても唯一の子どものために我慢して離婚を選ばない親が多くいると推測できる 日本と中国の婚姻率や離婚率 5 から見ると, 人口統計資料集 ( 2014) では,2012 年の婚姻率について日本が 5. 3 (/1000 人 ) であり, 中国が 9. 6 (/1000 人 ) であるのに対し, 離婚率について日本が 1. 9 (/1000 人 ) であり, 中国が 1. 8 (/1000 人 ) である このような現状があるため, 中国の子どもは夫婦関係が悪くても自分のために離婚しない親に対して責任を感じ, 夫婦の問題に巻き込まれやすい傾向があると予想できる 一方で, 日本の子どもは中国の子どもより, 自分と親の関係を個人と個人と捉えるという文化的背景のため, 両親間の葛藤と距離を置くことができると思われる 5 ここで婚姻率及び離婚率は, 人口千人当たりのそれぞれの件数である 28

38 夫婦間顕在的葛藤に関する領域において, 桐原 高見 徳田 水野 賀 横山 横山 ( 2000a, b ) の夫婦げんかが子どもに与える影響に関する日本と台湾のアンケート調査では, 夫婦げんかに対する子どもの反応に関して, けんかを止めようとした者は日本では 2 5 %, 台湾では 4 6 % であり, 台湾の方が多かった また, 夫婦げんかについて感じたことでは, 客観的に親の考えを知ることができる を選んだ者は日本では 10%, 台湾では 3 3 % と, 自分の意見を相手に伝えることの重要性を感じる を選んだ者は日本では 10%, 台湾では 25% という結果である すなわち, 台湾の子どもは, 両親間の葛藤に肯定的な側面を見出していると示されている 子どもの関わりや夫婦間顕在的葛藤の影響について, このような違いは台湾と同じ中華文化圏の中国本土と日本との比較においても見られる可能性がある 以上より, 心理学の領域であたかも同質であるように扱われてきた日本と中国において, 比較研究を行う必要性が考えられる 29

39 第 2 章 本研究の目的と実証研究の構成 30

40 第 1 節本研究の目的と実証研究の構成近年,DV に子どもが巻き込まれ, 子どもの心身に大きなダメージを与えている事実が注目されている 例えば母子ともに暴力にさらされている場合や, 殴られている母親が子どもを殴るといった場合はもちろん, 子どもが夫婦間の暴力を目撃しているという場合であっても, 子どもへの影響は子ども虐待同様に非常に深刻である DV のような深刻な夫婦間問題に至らない, 夫婦不仲, 夫婦げんかなど夫婦の問題と子どもの関係についても関心が高まっていると思われる インターネット投稿サイト Ya h o o! 知恵袋 ( 2015 年 7 月 12 日 19 時 30 分 ) で 夫婦関係 子ども と検索すると, 1 2, 件の質問が見られ, 夫婦仲 子ども では 9, 件の質問が投稿され, DV 子ども では 5, 件, 夫婦げんか 子ども では 5, 件, 夫婦不仲 子ども では 706 件の結果が表示されている 夫婦関係が子どもに影響を及ぼす という原因 結果の直線的なつながりが素朴なレベルで知られていたとしても, 夫婦間顕在的葛藤など夫婦の問題の発生は日常生活においては避けられないことである 本研究では, 夫婦の葛藤を減らす視点ではなく, たとえ葛藤が起きても, 子どもはどうすれば自分自身を能動的に守ることができるか, また, 親 援助者はどうすれば夫婦間顕在的葛藤が子どもに与えるネガティブな影響を低減することができるかに関する知見を提示したい 川島 ( 2014) は, 子どもが幼いほど両親の葛藤による影響が大きいとはいえず, 青年期になっても, 夫婦間顕在的葛藤は家庭の雰囲気の悪さとして認識される可能性があることを指摘している また, 青年期の子どもは両親から一方的に影響を受けるというよりは, 自身の主観的な評価が親 家族イメージや子どもの精神的健康に影響を与えると示唆されている ( 若原, ) 本研究では, 青年が夫婦間顕在的葛藤を如 31

41 何に体験するかということを重視し, 青年の視点から検討を進めていく 主に乳幼児期あるいは児童期の子どもがいる家庭を対象とした先行研究では, 夫婦間顕在的葛藤が子どもに影響を及ぼすプロセスについて, 葛藤が親の養育行動や家族機能などを媒介して子どもの精神的健康に影響を与える間接的プロセスや, 夫婦間顕在的葛藤が子どもの精神的健康に影響を及ぼす直接的プロセスが指摘されている ( C u m m i n g s e t a l., 2000) また, 直接的プロセスに関して, 情緒安定性仮説 ( D a v i s & C u m m i n g s, 1994) や認知状況的枠組み ( G r y c h & F i n c h a m, 1990) の有用性, つまり認知 情動 行動から夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの主観的体験を捉える必要性が述べられている ( Tu r n e r & B a r r e t, 1998; S i f f e r t & S c h w a r z, ) 夫婦間顕在的葛藤下における青年期の子どもの精神的健康のメカニズムが定かではないため, 本研究では青年期の中期にあたる日本と中国の高校生を対象に, 直接的 間接的の 2 通りのプロセス及び認知 情動 行動の 3 つの側面を統合する視点からそのメカニズムを解明していく 直接的プロセスについては, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応を取り上げ, 間接的プロセスでは, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚を取り入れる 青年の精神的健康の指標には, 心理的ストレス反応を用いる 以上のことから, 本研究では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚と心理的ストレス反応との関連を検討することを目的とする この目的を達成するために以下の 5 つの実証研究を行う まず, 第 3 章では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応尺度を作成し, 日本と中国の尺度の因子不変性を検証した上で, 各因子の得点の比較を行う ( 研究 Ⅰ ) 第 4 章では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期 32

42 の子どもの行動反応に焦点を当て, その背景にある子どもの認知 情動反応を把握するために, 認知 情動反応と行動反応の関連を日中両国で検討する ( 研究 Ⅱ ) 第 5 章では, 葛藤の当事者ではなく, 第三者としての子どもが夫婦間顕在的葛藤にさらされている時, 基本属性や親子関係などが子どもの反応に与える影響を日中両国で検討する ( 研究 Ⅲ ) ここまでの研究では, 夫婦間顕在的葛藤と子どもの精神的健康との関連を説明するために重要だと思われる変数, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応を検討するが, 子どもの反応がどのように精神的健康とつながっているのかという直接的プロセスの影響を明らかにする必要があると考えられる 第 6 章では, 精神的健康を表す変数に心理的ストレス反応を取り上げ, 子どもの反応との関連及びその関連における日中両国の特徴を解明する ( 研究 Ⅳ ) 第 7 章では, 前述した間接的プロセスの影響も加え, 直接的 間接的の 2 通りのプロセスを統合する観点から, 日本と中国における夫婦間顕在的葛藤が青年期の子どもの精神的健康に影響を及ぼすメカニズムを検討する ( 研究 Ⅴ ) 本章の第 2 節から第 6 節まで, 各研究の目的と意義について具体的に述べる 本論の実証研究の構成を図 2-1 に示す 33

43 図 2-1 本論の実証研究の構成 34

44 第 2 節夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応尺度の作成 場面想定法を用いて本研究では, 実際の両親間の葛藤場面を思い出してもらうことで子どもに心理的な負担をかける可能性に最大限の配慮をし, 研究者が設定した夫婦間顕在的葛藤場面を想定してもらうことにする さらに, 調査を実施する前に, 想定してもらう場面の内容や深刻さなどについて, 日本と中国の大学院生に評定を求め, 回答者に与える心理的な負担を把握し, 場面の選択を工夫する 夫婦間顕在的葛藤場面には, 家事分担に関して, 夫婦が互いに主張する口げんかの場面を設定する その理由について以下のような国際調査など先行研究の結果を参考に述べていく E A S S 東アジアの家族 ( F a m i l i e s i n E a s t A s i a ) ( 岩井 保田, 2014) の中に家事に関する質問項目があり, 例えば あなたは, どのくらいの頻度で家事をしていますか では, いずれの国 地域 ( 日本 中国 韓国 台湾 ) でも, 妻は家事をほぼ毎日している場合が多く, 週に数回している場合も含めると 7 ~ 9 割に達する これに対して, 夫の家事頻度は低く, 週に数回以上家事をしている割合はそれぞれ 2 ~ 3 割程度にとどまる 中国人の夫は比較的家事を負担しており, 5 割程度の夫が掃除や夕食の用意を週に数回以上行っている この結果の背景に中国においては共働きの夫婦が多いという事情があると考えられる 逆に最も家事をしていないのは日本人の夫であり, 週に数回以上行っている割合は 1 割程度にすぎない 一方で, 男性はもっと家事をするべきだ という項目について, 日中ともに, 賛成派が反対派を大きく上回っており, 一見すると男性の家事参加が望ましく考えられているように見える しかし, 賛成派の大部分は どちらかといえば賛成 という消極的な意見である 調査ではこれらの結果について, 東アジアの人々が, 男性の家事を増やすことが 35

45 必要だと感じながらも, 現実的には強く主張することができないようであると考察している これらのことから, 日本と中国において家事分担の実態に違いが見られたが, 共通するのは家事分担に関する夫婦の考えのずれが存在し, 葛藤のもとになり得るということである 夫婦間顕在的葛藤には, 夫婦が互いに主張するもの, 一方が主張し, もう一方が回避するものなど, 様々なパターンが存在するが, 本研究では夫婦が互いに主張し対立する場面を設定する 中国では, 张 方 戴 ( 2009) が夫婦間顕在的葛藤時のコミュニケーションパターンについて検討し, 主張 主張, 主張 回避, 回避 回避の三種類の中, 主張 主張が最も多く使われていることを示している 一方で, 日本では, 川島 ( 2013) が夫婦間葛藤解決方略の実態を検討したところ, 話し合い 口げんかが最も一般的であると示している 内容を検討すると, 一方が強く批判し, もう一方が逃避する, という主張 回避のパターンが多いと明らかにしている さらに, 内容からは, 理路整然と相手の問題を指摘することや言語的な攻撃などの主張的な方略が夫婦関係にとって否定的な影響を及ぼすと示唆している 以上より, 葛藤の際, 日本では中国に比べて夫婦が互いに主張するパターンが少ないが, 夫婦関係にとってのネガティブな影響が強いと思われる 中国では葛藤の頻度, 日本では葛藤の影響力という違う視点から夫婦間顕在的葛藤の主張 主張パターンを取り入れることが, 意味のあることだと考えられる 第 1 章第 3 節では夫婦間顕在的葛藤にさらされることが直接的に子どもの精神的健康に影響を与えるプロセスを検討するために, 認知 情動 行動の三つの側面から子どもの反応を検討する有用性を述べた ここから, 子どもの認知 情動 行動反応をどのように捉えていくべきかについて述べる 子どもが夫婦間顕在的葛藤をどのように認知しているのか 36

46 という認知反応に対して多くの関心が寄せられている 前章で紹介した G r y c h e t a l. ( ) の C P I C ( C h i l d r e n s P e r c e p t i o n o f I n t e r p a r e n t a l C o n f l i c t ) は多くの研究者によって用いられている 中国において, 赵 莫 ( ) は C P I C の妥当性と信頼性を検討した結果, 葛藤の深刻さ, 葛藤解決, 恐れ, 対処効力感, 自分に関する葛藤, 三角関係, 葛藤の帰属の 7 因子が確認されている 池 俞 ( 2008) と武 邓 张 孔 ( 2014) は, 葛藤の頻度, 葛藤の強度, 葛藤解決, 恐れ, 対処効力感, 自己非難の 6 因子で子どもの認知を捉えている 日本において, 川島ら ( 2008) は, C P I C の内容的に重複した項目を削除し, 葛藤の深刻さ, 恐れ, 自己非難の 3 因子を用いている 山本 伊藤 ( 2012) は C P I C を参考に, 親側の要因である葛藤の激しさ, 葛藤の持続性, 葛藤の解決の 3 因子, 子側の要因である恐れ 身体反応, 巻き込まれの 2 因子で子どもの認知を捉えている 本研究では子どもへの心理的な負担を考慮するために場面想定法を使用することで, 葛藤の深刻さをある程度統制することができると考えられる そこで, 先行研究の認知反応に関する項目をそのまま使用せず, それらの項目を参考にしながら, 親側に関連する反応 影響の 3 領域 ( 親の葛藤解決, 親に関する恐れ, 親への対処効力感 ), 子側に生じている反応 影響の 3 領域 ( 自己非難, 自分に関する恐れ, 自分への対処効力感 ) を認知反応の因子として取り入れる また, 設定した葛藤場面の深刻さや頻度など夫婦間顕在的葛藤の特徴について, チェック項目で尋ねることとする 情動反応については, 心理的ストレス反応の情動ストレス反応に関する項目を使用できる なぜなら, 心理的ストレスモデルによって, ストレッサーにさらされると, 短期的には不安, 怒り, 抑うつなどの情動変化が起こるためである また, ストレッサーによって認知と行動反応の内容が変わるが, 37

47 情動反応の構成はおおよそ同じであると考えられる これらのことから, 子どもが夫婦間顕在的葛藤というストレッサーにさらされている時の情動反応を, 心理的ストレス反応の 不機嫌 怒り, 抑うつ 不安 で捉えるのが適切であろう 不快な心理的ストレス反応を低減するために, 子どもは自分から夫婦間顕在的葛藤への暴露を調整すると考えられる 具体的に見ると, 宇都宮 ( 2009) は, 青年の両親間の葛藤へのあり方を 葛藤の相互調整過程に直接的に参入するか否か という観点から質的に検討した結果, 葛藤に巻き込まれて必死に止めようと介入する者もいれば, 背負いきれないプレッシャーから, 回避を選択する者もいることを示している また, 杨 方 林(2010) の研究では, 小学生や中学生, 高校生を対象に検討した結果, 夫婦間顕在的葛藤にさらされている時, 子どもには直接的な対処行動と間接的な対処行動の 2 種類が見られている 直接的な対処行動には葛藤を止めようとする, 両親の注意をそらすなどがあり, 間接的な対処行動には無視する, 自分の注意をそらすなどが含まれている 萧 李 ( 2010) は中学生の夫婦間顕在的葛藤に対する対処行動について検討し, 直接問題解決 ( 葛藤を止めようとする ), 間接問題解決 ( 両親の注意をそらす ), 回避 ( 自分の部屋に戻る ), 助けを求める ( 親戚に電話する ) のような行動を挙げている このように, 先行研究では対処行動の分類と名称に違いが見られたが, 共通する部分として, 葛藤を止めようとする, 両親の注意をそらすなど葛藤に介入するという介入的行動と自分の部屋に戻る, 無視するなど葛藤から回避するという回避的行動が重要であると考えられる 日本と中国における夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの認知 情動 行動反応を詳細に検討するためには, まず妥当性と信頼性を備えた尺度の開発が必要であり, この点については第 3 章 ( 研究 Ⅰ ) で扱う 38

48 第 3 節夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動反応と行動反応の関連夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの認知を重視する認知状況的枠組み ( G r y c h & F i n c h a m, 1990) では, 子どもが認知の一次処理と二次処理を行った後に情緒的反応が生じ, また, 認知的反応と情緒的反応によって対処行動を行い, さらに, 子どもの対処行動は葛藤に影響を与えると指摘されている また, S h e l t o n, H a r o l d, G o e k e - M o r e y & C u m m i n g s ( 2006) は, 夫婦間顕在的葛藤にさらされている時の子どもの認知と行動の関連を検討した結果, 子どもは両親間の葛藤が自分のせいで引き起こされ, 自分が葛藤解決に責任を感じる時, 介入的行動を取る傾向を示している さらに, 臨床の視点から見ると, 認知行動療法では, 患者がどのような環境の中で, どのように振る舞い, どのような動機づけで問題を持ち, どのように考え, 同時に彼らがどのような感情や情緒の問題を抱えるかという観点から患者の訴えを整理する その時, 問題や症状のどれか 1 つが変わるとその次には何が変わりやすいかという, 問題解決の連鎖を起こしやすくするように考える ( 坂野, ) 以上の内容を踏まえ, 夫婦間顕在的葛藤におかれている時, 子どもの認知 情動 行動反応を個々に取り扱うのではなく, 一連のプロセスとして相互的に捉え, その関連性を見る必要がある コミュニケーション派家族療法 ( M R I グループ ) では, 家族システムは逸脱をできるだけ小さくしようとする自己制御性によって, ある問題が生じた際に, 家族がその問題を解こうとする解決行動を取る 夫婦間の葛藤など家族に生じる多くの問題はこの家族の自己制御性によって, おそらく解決されているはずである しかしながら, 心理療法を受けに来る家族は, そのような自己制御性でも解決できなかった家族であり, 別の言い方をすると, この自己制御性こそが問題を維 39

49 持している ( 若島ら, 2002) このことから, 夫婦間顕在的葛藤にさらされている時, 子どもの対処行動は自分自身の精神的健康の問題, あるいは葛藤の問題を維持している可能性があると推測される さらに, 行動反応については, 親が直接観察できること, また援助者がアセスメントする際, 認知 情動反応より聞き出しやすいことがあるため, 子どもを援助するために有用な情報だと考えられる そこで, 本研究では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの行動反応に焦点を当て, 子どもの解決行動としての 行動反応への理解を深めるために, 第 知 情動反応との関連性を検討する 4 章 ( 研究 Ⅳ ) で認 40

50 第 4 節夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応に影響を与える要因 親子関係を中心に夫婦間顕在的葛藤が起こり, 第三者としての子どもの反応に影響を与える要因を検討する際, 対人葛藤プロセスにおいて当事者の反応がどのような要因に影響されるかに関する研究が参考になると思われる 例えば, 加藤 ( ) は, 対人葛藤の対処行動に影響を及ぼす要因として, 対人ストレッサーの質, 性別, 当事者間の関係性, 対処行動行使者の発達段階などを挙げている ここから, 対人葛藤研究の知見を参考にしつつ, 夫婦間顕在的葛藤におかれている子どもの反応はどのような要因によって影響されるかについて述べていく 性別について, 対人葛藤の対処方略に関して, 性差があることが多数の研究で報告されている 例えば, 女性は男性よりも, 問題から距離をおいたり, 解決を諦めたりする 消極的 問題回避型対処方略 を多く使用していることが示されている ( 和田, ) さらに, こうした対処方略は, 思春期までに獲得されることが多く, 青年期にはすでに性差が認められるという主張も見られる ( 大竹, 2004) 両親間の葛藤と子どもの精神的健康の領域において, 宇都宮 ( 2005) は, 女子のサンプルを用いて検討を行い, 両親間の葛藤の直接的影響は支持されないことを示している D a v i s & L i n d s a y( 2004) は, 夫婦間顕在的葛藤が, 青年期の男子よりも青年期の女子において内在化型問題の強力な予測因子となることを示している また, 夫婦間顕在的葛藤への子どもの巻き込まれに関する認知では, 男子より女子の方が葛藤への巻き込まれ感が高く, 女子の方が家族間の問題に対して敏感であることが示された研究 ( A m a t o & Ta m a r a, ) がある一方で, そのような性差はなかったとする研究もある ( 川島ら,2008) よって, 本研究では性別による夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の違いを探索的に検討する 41

51 次に, 夫婦間顕在的葛藤の特徴について, 山本 伊藤 ( 2012) の青年期の子どもを対象とした研究では, 夫婦間顕在的葛藤の激しさが巻き込まれ認知 6 に影響を与えることが示されている この葛藤の激しさとは葛藤の頻度や強度を表すものである また中国において, 王 范 周 陈 ( 2014), 池 俞 ( 2008) の研究では, 夫婦間顕在的葛藤の強度や頻度を含む葛藤のレベルと, 恐れや自己非難を含む認知評価との関連が明らかにされている 本研究では, 認知の側面はもちろん, 情動や行動反応も含め, 夫婦間顕在的葛藤の特徴が子どもの反応に与える影響を検討する 最後に, 親子関係について述べる 家族システムの中で, 夫婦間顕在的葛藤といった夫婦サブシステムの問題が起こる時, 子どもがそれをどのように捉え, どのように対処するかといった反応は, 親子サブシステムに影響されると思われる ここで行動反応をメインに, 対人葛藤解決方略に関する先行研究を参考にしながら述べていきたい 人は, 対人葛藤に対処する際, その葛藤解決方略は, 固定されたものではなく, 対人葛藤の生起している文脈など様々な要因に依存している L a u r s e n & C o l l i n s ( 1994) の社会的関係モデル ( S o c i a l R e l a t i o n a l M o d e l ) では, 対人葛藤解決方略の選択を規定する要因として, 関係の性質, つまり, 親密さと関係の安定性を挙げている また, 対人的な文脈の違いが青年の葛藤解決方略の選択に及ぼす影響をメタ分析によって検討した L a u r s e n ( 1993) は, 親密な仲間関係では主張や回避を使わず, 交渉が好まれ, 逆に親との関係では主張が有力な方略として用いられていることを指摘している 涂 方 刘 ( 2008) は, 親密で互いに感情を直接表現できる家族関係であるほど, 6 巻き込まれ認知は一方の親が子どもに対して配偶者の愚痴や悪口を言うなど, 本来夫婦間で解決すべき情緒的問題が, サブシステムである子どもにまで影響するということを表す 42

52 親子間葛藤が生じた時, 子どもは自分の気持ちを素直に表し, 積極的に解決しようとすることを報告している 親子関係において重要な要因の 1 つとして信頼関係が挙げられている ( 浜崎 田村 吉田 吉田 岡本 安藤 倉成, 2012) 前出 ( 2005) は, 親との葛藤場面における関係性を相互調整 ( 互いの意見を取り入れて葛藤を解決する ) と意味づけ ( 葛藤体験に対する肯定感 ) の 2 側面から捉え, 親子間の信頼感との関連を検討している その結果, 親との信頼感が高い者ほど親との関係性の相互調整と意味づけがともに高いことが示されている 葛藤の当事者ではなく, 第三者としての子どもが夫婦間顕在的葛藤に遭遇する時, 対処行動を含む子どもの反応は両親との関係からどのような影響を受けるのだろうか 上記を踏まえて, 親子関係を中心に, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応に影響を与える要因を第 5 章 ( 研究 Ⅲ ) で検討する 43

53 第 5 節夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応と心理的ストレス反応 直接的プロセスの検討第 1 章第 3 節で述べたように直接的プロセスの視点から夫婦間顕在的葛藤が青年期の子どもの精神的健康に及ぼす影響を検討する際, 情緒安定性仮説 ( D a v i s & C u m m i n g s, 1994) や認知状況的枠組み ( G r y c h & F i n c h a m, 1990) に基づき, 夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの反応を認知 情動 行動の 3 つの側面から捉える必要があるだろう 本節では, はじめに, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の各側面が子どもの精神的健康に及ぼす影響についての先行研究を踏まえつつ, 子どもの反応の各側面を統合して検討する意義を述べる まず, 欧米では認知反応に関する数多くの研究が存在し, 日本と中国においても認知状況的枠組み ( G r y c h & F i n c h a m, 1990) に基づく研究がいくつかある 例えば, 日本において, 川島ら ( 2008) は夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知と抑うつとの関連を検討し, 男女ともに葛藤が深刻なほど葛藤への巻き込まれ感が強まり, さらに自己非難や恐れの認知につながることを明らかにしている 男子については, 自己非難や恐れの認知が抑うつに関連するが, 女子については, こうした相関は見られなかった また, 川島 ( 2014) は青年期の子どもを対象に検討した結果, 青年期の男子では, 妻 ( 母親 ) の葛藤指標は子どもの自己非難を媒介して外在化型問題と関連し, 青年期の女子では, 葛藤指標と自己非難の関連が見られなかったが, 自己非難は外在化型問題と関連することを示している 中国においても, 池 俞 ( 2008) は中学生と高校生を対象に検討した結果, 夫婦間顕在的葛藤が認知的評価を媒介して青少年の自尊感情に影響を及ぼすことを示している これらのことから, 夫婦間顕在的葛藤と子どもの精神的健康との関連性を見る際, 認知反応は見逃せない変 44

54 数であると言える 情動反応について,G o e k e - M o r e y, C u m m i n g s & P a p p( 2007) は 8 歳 ~16 歳の子どもを対象に夫婦間顕在的葛藤にさらされている時の情動反応と内在化型 外在化型問題についての実験を行っている その結果, 怒り 悲しみなどの情動反応と内在化型 外在化型問題との正の相関が見られ, 夫婦間顕在的葛藤の終わりに感じた幸福感と内在化型 外在化型問題との間に負の相関が示されている 日本では夫婦間顕在的葛藤に対する情動と精神的健康の研究は見当たらないが, 高校生の心理的ストレス過程に関する研究を参考にできる 例えば, 古屋 音山 坂田 ( 2009) によると, ネガティブな情動と逸脱行動との関連を検討した結果, 引きこもりと無気力は抑うつ 不安と怒りの両方の情動反応によって, 攻撃は怒りによって引き起こされていることが示されている つまり, 夫婦間顕在的葛藤というストレッサーによって引き起こされるネガティブな情動反応は精神的健康と関連すると予想できる 行動反応について,N i c o l o t t i, El-Sheikh & W h i t s o n( 2003) は 8 歳 ~11 歳の子どもを対象に夫婦間顕在的葛藤に対する対処行動を検討している その結果, アクティブな対処行動とサポート的な対処行動の併用が女子の抑うつや自尊心の問題の軽減と関連し, 回避的な対処行動と男子の内在化型 外在化型問題との正の相関が示されている さらに性別と関係なく, 気晴らし対処行動が子どもの抑うつの軽減に関連することが明らかにされている また,R u b e n s t e i n & F e l d m a n( 1993) は, サンフランシスコの高校生を対象に, 夫婦間顕在的葛藤に対する対処行動, 子どもの問題行動, 学業成績などを調査している その結果, 腹を立てたり, 皮肉を言ったり, 物を投げたりするような対処行動を選択した高校生は, 不安や抑うつ, 非行傾向が高く, 自制心が低い 加えて, 学業成績や宿題への取り組みの程度も低い また, 両親間の葛藤につい 45

55 て話をすることを避けたり, 無口になったりする対処行動を選択した高校生は, 抑うつやストレス反応が高く, 宿題への取り組みが低い 一方, 両親の言うことを聞こうとしたり, 理解しようとしたり, 合理的に考えようとしたりした高校生は, 抑うつや不安傾向が低く, 自制心は高い また, 学業や宿題への取り組みも高い 中国において, 杨ら ( 2010) は中国の小学生から高校生までの子どもを対象に, 夫婦間顕在的葛藤に対する対処行動と心理的適応との関連を検討している その結果, 子どもには葛藤を止めようとする, 両親の注意をそらすなどを含む直接的な対処行動の高群は低群より不良行為が少なく, 主観的幸福感が強い また, 無視する, 自分の注意をそらすなどを含む間接的な対処行動の高群も低群より不良行為が少なく, 抑うつが弱く, 主観的幸福感が強いことが示されている 日本では子どもの対処行動と精神的健康との関連についてほとんど検討されておらず, 行動反応が心理的ストレス反応とどのようにつながっているのかを検討することには意義があると言える 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の認知 情動 行動の 3 つの側面がそれぞれ精神的健康に影響を与えることが明らかにされている 海外では, F o s c o & G r y c h ( 2008) は子どもの反応を認知と情動の 2 側面から捉え, 夫婦間顕在的葛藤が認知のうちの恐れと自己非難, 情緒的反応, 三角関係型の巻き込まれを媒介して子どもの内在化型 外在化型問題に影響を及ぼす 3 つのモデルを想定して検討している その結果, 自己非難や情緒的反応は内在化型 外在化型問題の両方と関連し, 恐れは内在化型問題, 三角関係型の巻き込まれは外在化型問題と関連することが示されている ゆえに, 両親間の葛藤にさらされることが直接的に子どもの精神的健康に与える影響を検討する際, 3 つの側面を統合した方がより全体像を捉えられると思われる 46

56 最後に心理的ストレスモデルに基づいて認知 情動 行動から検討する必要性を述べる 心理的ストレスモデルでは, 潜在的ストレッサーによる健康への影響力が, 両者の間に介在する認知的評価と対処行動によって左右されると考えられている 具体的には, 夫婦間顕在的葛藤という潜在的ストレッサーは, 心理的ストレスの 候補者 に過ぎず, 次の 認知的評価 で無関係 無害かストレスフルかと評定される 心理的ストレスとなった場合, 対処行動 は, ストレッサーやそこから生起した情動を処理するための過程であり, 一般的にはこの対処行動が成功し, ストレッサーや情動が適切に処理されれば, 健康上の問題は生起しないか, たとえ生起したとしてもその程度は低いと考えられる ( 小杉, ) 認知 情動 行動は夫婦間顕在的葛藤というストレッサーとストレス反応との間のプロセスにおいて, いずれも重要であると言えるだろう 以上より, 第 6 章 ( 研究 Ⅳ ) では精神的健康を表す変数として心理的ストレス反応を取り入れ, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応との関連を検討することが目的である 47

57 第 6 節夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚と心理的ストレス反応 間接的プロセスの検討も加えて F o s c o & G r y c h ( 2010) によれば, 青年期の子どもが夫婦間顕在的葛藤に取り込まれた状況への反応として大きな脅威や不安を経験している場合には, 両親との三角関係化が却って長引き, 青年の側に自責や嫌悪が増大する結果, 親との関係が困難になる つまり, 夫婦間顕在的葛藤に巻き込まれる三角関係化のプロセスにおいて, 子どもの主観的反応が重要であり, 親両方の影響を考慮する必要があるだろう 夫婦間顕在的葛藤が青年期の子どもに影響を及ぼすメカニズムをより立体的に把握するため, 本章の第 5 節で提示した直接的プロセスに加え, 夫婦間顕在的葛藤が親の養育行動などを媒介して青年の精神的健康に影響を与える間接的プロセスの検討も必要であろう 第 1 章第 3 節で述べたように, 間接的プロセスについてはすでに検討されており, 夫婦関係と親子関係の関連に対する スピルオーバー仮説 と 補償仮説 が参考になる また, 父母関係 母子関係と父母関係 父子関係では関連のメカニズムが異なるため, 父子と母子それぞれで検討することが望ましい ここから, 間接的プロセスを検討する際, 子どもの視点から夫婦間顕在的葛藤後の親行動を捉える意義について述べる 夫婦間顕在的葛藤と子どもの発達や精神的健康との関連についての研究を概観すると, 乳幼児期あるいは児童期の子どもがいる家庭を対象とした研究が最も多くあり, 方法として親による報告が主流である 青年期の子どもがいる家庭の場合, 子どもと親の両方の報告による研究が見られたが, 両者の報告は必ずしも一致しないことが示されている 例えば, B u e h l e r & G e r a r d( 2002) は 2 ~ 1 8 歳の子どもがいる親 2541 名を対象に検討した結果, 幼児 児童期の子どもがいる家族において, 夫婦間顕在的葛藤が親の養育行動を通して子ども 48

58 の発達に影響を与えることが示されたが, 青年期の子どもがいる家族には養育行動の媒介効果が示されなかった 他方, A m a t o ( 1986) では, 青年期の男子においては, 子どもが親子関係を不良だと報告した場合, 夫婦間顕在的葛藤のネガティブな影響が最も強く, 女子においては, 親子関係と関係なく, 夫婦間顕在的葛藤と自尊心との負の相関が示されている このように, 報告の主体によって研究の結果が左右される 子どもの視点から夫婦関係や親子関係を捉える必要性について, 日本においてもいくつか参考になる知見がある 西出 夏野 ( 1997) は, 母親の認知した家族システムの促進的な機能状態が, 彼らの予想に反して, 子どもの抑うつ感を強めるように働くことを報告している これは母親の認知した家族システムの促進的な機能状態に, 母親の 1 人よがり的評価が含まれていたためだと解釈している また, 子どもが青年期に入ると, 青年にとっての主観的な親のイメージが重要だと考えられ, 親子関係そのものに対して青年がどのように認識しているかという視点で扱うことが重要である ( 若原,2003) これらの知見から, 家族関係が子どもに影響を及ぼす際, 両親が母子関係, 父子関係, 家族システムの機能状態をどのように評価しているかより, 子ども自身の評価が重要だと考えられる 夫婦間顕在的葛藤と子どもの精神的健康の領域において子ども視点の研究がなされている 氏家 二宮 五十嵐 井上 山本 島 ( 2010) の研究では, 中学生とその両親を対象に検討した結果, 夫婦間顕在的葛藤は子どもに対する親の温かさを弱め, 冷たさを強めるように働いている そして子どもに対する親の温かさ 冷たさは, 子どもがどのように知覚するかを経由して, 子どもの抑うつ症状を予測することが示されている さらに, 中国においても子どもの視点から検討する研究が見られる 例えば, 杨 方 ( 2006) は小学校高学年か 49

59 ら高校までの子どもを対象に検討した結果, 夫婦間顕在的葛藤は直接また養育行動を媒介して子どもの学習問題や抑うつ, 不良行為に影響を及ぼすことを明らかにしている 本研究では間接的プロセスを検討する際, これらの先行研究に従って, 子どもが知覚する親の養育行動 ( 子どもの親行動知覚 ) を取り上げる さらに, 直接的プロセスを検討する際, 場面想定法を用いるように, 間接的プロセスの検討も同じ次元で進めるため, 普段の親行動ではなく, 設定した夫婦間顕在的葛藤場面が起きた直後という時点での親行動について尋ねることとする 以上を踏まえて, 第 7 章 ( 研究 Ⅴ ) では, 第 6 章 ( 研究 Ⅳ ) で検討した直接的プロセスの影響に間接的プロセスの要因も付け加え, これらが合わさると青年の心理的ストレスとどのようにつながるのかを包括的に検討する 具体的には, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚と青年の心理的ストレス反応の関連を検討する 本論の構成は, 図 2-2 の通りである 50

60 図 2-2 本論の構成 51

61 第 2 部 実証研究 52

62 第 3 章 研究 Ⅰ 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応尺度の作成 53

63 第 1 節目的夫婦間顕在的葛藤が青年期の子どもの精神的健康に影響を及ぼす直接的プロセスを検討するために, 夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの反応を取り上げる しかし, 日本と中国では, それを測定するための適切な尺度がまだ見当たらない 子どもの反応を部分的に検討する海外の尺度は存在するが ( 例えば, C P I C ), 子どもに実際の夫婦間顕在的葛藤の想起を求めているため, 子どもに心理的な負担をかける可能性が高いと考えられる したがって, この点を修正して夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応に関する尺度の開発が必要である 尺度を作成する際の着目点として, 以下の 2 点が挙げられる 第一に, 子どもへの心理的な負担を最大限に考慮し, 実際の夫婦間顕在的葛藤ではなく, 場面想定法を用いて尺度を開発する 第二に, 尺度の項目について, 海外の尺度を参考にするだけでなく, 日本と中国の有数の実証研究や周辺の研究を参考にしながら, 両国の実情に基づいた尺度の作成を進めていく 本研究では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応尺度を作成し, 日本と中国の尺度の因子構造 妥当性 信頼性を検討することを目的とする また, 比較研究のような異なる母集団を対象とする研究では, グループ間の測定モデルの不変性を配慮することが必要不可欠である ( 狩野 三浦, 2002) そこで尺度の因子不変性を検証した上で, 日中の夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応の各因子の得点を比較する 第 2 節 方法 調査対象者及び質問紙の構成について示す 54

64 第 1 項調査対象者 2012 年 9 月から 2014 年 12 月にかけて, 日本では東北地方の私立高校で, 中国では北地方と南地方の 5 つの公立高校にて質問紙調査を行った 調査対象者は高校 1, 2, 3 年生であり, 本論の第 4 章 ( 研究 Ⅱ ) から第 7 章 ( 研究 Ⅴ ) までの調査対象者全員が含まれている 両親が不在 ( 一人親も含む ) の対象者, 回答に 3 個以上の欠損値が見られた対象者, また場面想定のチェック項目で 全くイメージできなかった を選んだ対象者を除き, 有効回答数は合計 名であり, うち日本人 402 名, 中国人 908 名であった 調査対象者の平均年齢は 歳 ( SD= 歳 ) であった データ数と確認的因子分析を勘案してここでは系列平均値を代入した上で分析を進めた 調査対象者の内訳は表 3-1, 表 3-2 に示す 表 3-1 日本における調査対象者の内訳 ( 人数 ) 性別 1 年生 2 年生 3 年生 総計 男子 女子 不明 総計 表 3-2 中国における調査対象者の内訳 ( 人数 ) 性別 1 年生 2 年生 3 年生 総計 男子 女子 不明 総計

65 第 2 項質問紙の構成 ( 1 ) フェイスシート : 調査対象者の基本属性 ( 性別, 年齢, 学年 ), 及び家族構成について尋ねる項目からなる ( 2 ) 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応に関する項目 : 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応に関する項目は, 認知 情動 行動反応尺度の 3 つからなる 認知反応尺度 : G r y c h e t a l. ( ) の C P I C ( C h i l d r e n s P e r c e p t i o n o f I n t e r p a r e n t a l C o n f l i c t S c a l e ) や先行研究 ( 赵 莫, 2006; 池 俞, 2008; 武ら, 2014) を参考にし, 親側要因の親の葛藤解決 ( 4 項目 ), 親に関する恐れ ( 4 項目 ), 親への対処効力感 ( 4 項目 ) の 3 因子, 子側要因の自己非難 ( 4 項目 ), 自分に関する恐れ ( 4 項目 ), 自分への対処効力感 ( 4 項目 ) の 3 因子を想定し, 合計 24 項目を作成した これらの質問項目に対して 全く当てはまらない から 非常に当てはまる の 4 件法で尋ねた 情動反応尺度 : 高校生の心理的ストレス反応に関する先行研究 ( 坂野ら, ; 郑 陈 郑 黄, 2001) を参考にし, 不機嫌 怒り ( 6 項目 ) と抑うつ 不安 ( 4 項目 ) の 2 因子を想定し, 合計 10 項目を作成した これらの質問項目に対して 全く当てはまらない から 非常に当てはまる の 4 件法で尋ねた 行動反応尺度 : 夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの対処行動に関する先行研究 ( G r y c h & F i n c h a m, ; O B r i e n e t a l., 1995; 宇都宮, ; 杨ら,2010; 萧 李, 2010) を参考にし, 介入的行動 ( 7 項目 ) と回避的行動 ( 4 項目 ) の 2 因子を想定し, 合計 11 項目を作成した これらの質問項目に対して 全く当てはまらない から 非常に当てはまる の 4 件法で 56

66 尋ねた チェック項目 : チェック項目として, 以下 1 ~ 4 の 4 項目を用いた 1 先に示した場面をどのぐらいイメージできたか, 全くできなかった から 非常にできた の 4 件法で尋ねた 2 先に示した場面で, 両親がけんかしたのは誰のせいだと思うか, お父さんのせい, お母さんのせい, 自分のせい, どちらでもない で尋ねた 3 先に示した場面でどのぐらいの深刻さを感じたか, 全く深刻ではない から 非常に深刻だ の 4 件法で尋ねた 4 あなたの両親は先に示した場面と似ているようなけんかをするか, 全くない から 常にある の 4 件法で尋ねた 尺度作成の手続きについて, まず, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応尺度の中国語版を作成し, その後, 日本語に翻訳し, 日本語版を作成した 翻訳作業は基本的に筆者が独自に行ったが, 客観性と妥当性を高めるため, 筆者以外の心理学専攻の中国人大学院生 2 名にバックトランスレーションを依頼した その後, 臨床心理学専攻の日本人大学院生の意見を参考に, 自然な翻訳になるように修正した 調査対象者に対して, 夫婦間顕在的葛藤の仮想場面を想起してもらい, 今その場面が自分自身の家族で実際に起こっていると想像してください, と教示した上で, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応に関する項目を回答してもらった 想定してもらう場面は, E A S S 東アジアの家族 ( 岩井 保田, 2014) の調査結果に基づき, 妻が夫に家事を手伝ってほしいと言うことがきっかけとなり, 家事分担にまつわる夫婦げんかをする場面であった 調査を実施する前に, 日本と中国の大学生 大学院生それぞれ 10 名に場面内容の妥当性や回答者に与える心理的な負担についてチェックしてもらい, 修正を加え, 表 3-3 の場面を採用した 57

67 表 3-3 本研究で用いた夫婦間顕在的葛藤の場面今日は週末で, 家族みんなが家にいます もうすぐ昼食の時間で, お母さんが一人で昼食の準備をしていて, あなたはお父さんと一緒にテレビを見ています その時, お父さんとお母さんの間では以下のような会話があります 母 : たまには手伝ってよ テレビばっかり見ないで 父 : 母 : 手伝ってよ 聞こえないの? 父 : わかった わかった ちょっと待って 母 : 家の事はいつも私ばっかり, 疲れるわ 父 : ちょっとテレビを見てただけじゃん こっちも仕事で疲れてるんだから, 少しくらい休ませてくれよ! 母 : あ ~ そう, そういうこと言うの 私だって, 毎日ご飯作って, 掃除して 毎日の家事だって疲れるのよ! 父 : 君が疲れてないなんて誰も言ってないだろ! いつもグチグチとうるさいんだよ 母 : 私がいつグチグチ言ったのよ!? 第 3 項倫理的配慮質問紙調査で, 調査対象者に実際の夫婦間顕在的葛藤ではなく, 研究者が設定した葛藤場面を想定する方が子どもの心理的な負担が少ないと考え, 場面想定法を用いた また, 調査を実施する前に, 回答者の想起する場面の内容や深刻さなどについて, 日本と中国の大学生 大学院生でチェックを行い, 回答者に与える心理的な負担を考慮し, 場面の選択を工夫した さらに, 質問紙の最後には, 回答をするなかで気分が優れないと感じたり, 悩みやお困り事を誰かに相談したいと感じた方は, 下記の連絡先までお気軽にご相談ください, と教示した 調査は日本と中国の高校の協力を得て実施され 58

68 た 調査を実施する前に, 各高校の責任者に対して調査の趣旨を説明し, 調査は任意で行われること, 途中で中止できること, 回答しないことによる不利益はないこと, 統計処理を施すために個人が特定されないことについて説明し, 同意を得た その後, 先生方から生徒に上述内容を説明してもらい, 同意が得られた生徒のみを対象として調査を実施した なお, 本質問紙は本研究科の倫理委員会の承認を得た上で実施された ( 承認 ID1: ; 承認 ID2: ) 第 3 節結果第 1 項第 3 章 ( 研究 Ⅰ ) の分析について分析に入る前に, 第 3 章 ( 研究 Ⅰ ) の分析方針について説明する 本論では, 日本と中国において夫婦間顕在的葛藤が青年期の子どもの精神的健康に及ぼす影響を検討するために, まず夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応を取り上げ, 青年の精神的健康との関連を検討する 本章では夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応尺度を独自に作成した 新しく作成した尺度なので, 想定した因子構造と違うものになる可能性がある また, 国ごとの特徴を把握するために, 想定した因子構造で確認的因子分析を行わず, まず国別の探索的因子分析を実施する しかし, 本論の目的は夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応が精神的健康に影響を及ぼすメカニズムを日中両国で比較することであるため, 子どもの反応に関する項目を同様な因子構造や項目で研究を進める必要がある したがって, 国別の探索的因子分析の後, 全体のデータに基づいた探索的因子分析を実施し, これらの結果を参考に, 日本と中国において通用できる項目を選択する 採用される因子構造や項目の妥当性を検討するために, 国別の確認的因子分析を行う さらに, 日本と中国のような異なる母集団を対象とする研究 59

69 では, 構成概念の測定不変性 ( 因子不変性 ) を確認する必要があるため, 多母集団同時分析による確認的因子分析を行う 最後に, 日中の夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応の各因子の得点を比較する 第 2 項国別の探索的因子分析まず, 日本のデータのみで探索的因子分析を行った はじめに, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知反応尺度 24 項目, 情動反応尺度 10 項目, 行動反応尺度 11 項目合計 45 項目の平均値と標準偏差を算出し, 天井 フロア効果について検討を行った 検討の結果, 得点分布において歪みの著しい質問項目が見られなかったため, 認知反応尺度 親側の要因, 認知反応尺度 子側の要因, 情動反応尺度, 行動反応尺度それぞれに主因子法, プロマックス回転による因子分析を行った 因子及び項目を確定するにあたり, 各因子に負荷する項目を検討し, 不適切な項目を削除することにした 削除の基準は, 各因子に負荷する項目のうち, 負荷量が小さい項目 (.34 以下 ), 2 つ以上の因子に高い負荷を示す項目, 及び解釈不明確な項目とした その結果, 表 3-4 から表 3-7 までに示すように認知反応尺度 親側の要因で 2 因子 ( 親に関する恐れ, 親の葛藤解決 ), 認知反応尺度 子側の要因で 2 因子 ( 自分に関する恐れ, 自分への対処効力感 ), 情動反応尺度で 2 因子 ( 不機嫌 怒り, 抑うつ 不安 ), 行動反応尺度で 2 因子 ( 介入的行動, 回避的行動 ) が抽出された 各因子の内的整合性は, α =. 6 2 ~. 91 であった 60

70 表 3-4 日本における認知反応尺度 親側の要因 主因子法プロマックス回転 ( N =402) 項目 因子 1 因子 2 親に関する恐れ 親の葛藤解決 共通性 14 私は, これから両親がどうなってしまうのかと心配になる 私は, 両親に何か悪いことが起こるのではと心配になる 私は, 両親が離婚してしまうのではと心配になる 私は両親に対してどうしていいかわからなくなる 私は, 両親のどちらかが傷ついてしまうのではと心配になる 両親はけんかをしても, すぐ仲直りをする 両親は, けんかが終わった後は, 互いに友好的になる 両親はけんかをしても, 解決策を思いつく 両親はけんかを止めた後でも, 互いに腹を立てている 私はこの状況を改善する手立てを持っている 両親がけんかをすると, 私には止めようがない 回転後の因子間相関 因子 因子 信頼性係数 α 表 3-5 日本における認知反応尺度 子側の要因 主因子法プロマックス回転 ( N =402) 項目 因子 1 因子 2 自分に関する恐れ自分への対処効力感 共通性 16 例え両親が言わなくても, 両親がけんかしていると私が責められているような気がする 私は, 両親が私に八つ当たりしてくるのではと心配になる 私は, 自分に何か悪いことが起こるのではと心配になる 私は気を紛らわすためにどうしていいかわからなくなる 私は, 自分がこれまでのように暮らせないのではと心配になる 私は, これから自分がどうなってしまうのかと心配になる 両親のけんかは私の落ち度によるものだ 私は, 両親がけんかをしても, 何とか落ち着いていられる 私は, 両親がけんかをしても, マイペースでいられる 私は何かをして気を紛らわすことができる 両親がけんかをするのは, 私のせいではない 回転後の因子間相関 因子 因子 信頼性係数 α

71 表 3-6 日本における情動反応尺度 主因子法プロマックス回転 ( N =402) 項目 因子 1 因子 2 不機嫌 怒り 抑うつ 不安 共通性 2 私はイライラする 私は怒りを感じる 私は不機嫌で, 怒りっぽくなる 私は不愉快な気分になる 私は泣きたい気分になる 私は悲しくなる 私は心に不安感がある 私は気分が落ち込む 私は悔しい思いがする 回転後の因子間相関 因子 因子 信頼性係数 α 表 3-7 日本における行動反応尺度 主因子法プロマックス回転 ( N =402) 項目 因子 1 因子 2 介入的行動 回避的行動 共通性 2 私は父親あるいは母親を説得して, 何とか止めようとする 私は もう止めて と両親に言う 私は誰か ( 兄弟, 祖父母など ) と話し合ったり, 助けを求めたりする 私は何とか両親の注意をそらす 私は両親の前で悲しさを示す 私はその場に割り込んで自分に興味を持ってもらおうとする 私は状況を見極めて, 父親あるいは母親の味方をする 私はテレビを見たり, 音楽を聞いたり, ゲームをしたり, 自分の注意をそらす 私は自分の部屋へ逃げたり, 外へ出たり, 他のところに行く 私は手を出さなくて, 両親のけんかを無視する 私はいつもと変わらなく自分のことをやる 回転後の因子間相関 因子 因子 信頼性係数 α

72 次に, 中国のデータのみで探索的因子分析を行った はじめに, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知反応尺度 24 項目, 情動反応尺度 10 項目, 行動反応尺度 11 項目合計 45 項目の平均値と標準偏差を算出し, 天井 フロア効果について検討を行った 検討の結果, 得点分布において歪みの著しい質問項目が見られなかったため, 認知反応尺度 親側の要因, 認知反応尺度 子側の要因, 情動反応尺度, 行動反応尺度それぞれに主因子法, プロマックス回転による因子分析を行った 因子及び項目を確定するにあたり, 日本のサンプルと同様に, 基準を満たさない項目を削除することにした その結果, 表 3-8 から表 3-11 までに示すように認知反応尺度 親側の要因で 2 因子 ( 親に関する恐れ, 親の葛藤解決 ), 認知反応尺度 子側の要因で 2 因子 ( 自分に関する恐れ, 自分への対処効力感 ), 情動反応尺度で 2 因子 ( 不機嫌 怒り, 抑うつ 不安 ), 行動反応尺度で 2 因子 ( 介入的行動, 回避的行動 ) が抽出された 各因子の内的整合性は, α =.56 ~. 8 7 であった 表 3-8 中国における認知反応尺度 親側の要因 主因子法プロマックス回転 ( N =908) 項目 因子 1 因子 2 親に関する恐れ 親の葛藤解決 共通性 20 私は, 両親に何か悪いことが起こるのではと心配になる 私は, これから両親がどうなってしまうのかと心配になる 私は, 両親のどちらかが傷ついてしまうのではと心配になる 私は両親に対してどうしていいかわからなくなる 両親は, けんかが終わった後は, 互いに友好的になる 両親はけんかをしても, すぐ仲直りをする 両親はけんかをしても, 解決策を思いつく 私はこの状況を改善する手立てを持っている 回転後の因子間相関 因子 因子 信頼性係数 α

73 表 3-9 中国における認知反応尺度 子側の要因 主因子法プロマックス回転 ( N =908) 項目 因子 1 因子 2 自分に関する恐れ自分への対処効力感 共通性 11 私は, 自分に何か悪いことが起こるのではと心配になる 私は, これから自分がどうなってしまうのかと心配になる 私は気を紛らわすためにどうしていいかわからなくなる 私は, 自分がこれまでのように暮らせないのではと心配になる 例え両親が言わなくても, 両親がけんかしていると私が責められているような気がする 私は, 両親が私に八つ当たりしてくるのではと心配になる 両親のけんかは私の落ち度によるものだ 私は, 両親がけんかをしても, 何とか落ち着いていられる 私は, 両親がけんかをしても, マイペースでいられる 両親がけんかをするのは, 私のせいではない 回転後の因子間相関 因子 因子 信頼性係数 α 表 3-10 中国における情動反応尺度 主因子法プロマックス回転 ( N =908) 項目 因子 1 因子 2 抑うつ 不安 不機嫌 怒り 共通性 7 私は悲しくなる 私は泣きたい気分になる 私は心に不安感がある 私は気分が落ち込む 私はイライラする 私は悔しい思いがする 私は不機嫌で, 怒りっぽくなる 私は怒りを感じる 回転後の因子間相関 因子 因子 信頼性係数 α 表 3-11 中国における行動反応尺度 主因子法プロマックス回転 ( N =908) 項目 因子 1 因子 2 回避的行動 介入的行動 共通性 9 私はテレビを見たり, 音楽を聞いたり, ゲームをしたり, 自分の注意をそらす 私は手を出さなくて, 両親のけんかを無視する 私はいつもと変わらなく自分のことをやる 私は自分の部屋へ逃げたり, 外へ出たり, 他のところに行く 私は何とか両親の注意をそらす 私はその場に割り込んで自分に興味を持ってもらおうとする 私は両親の前で悲しさを示す 私は もう止めて と両親に言う 私は父親あるいは母親を説得して, 何とか止めようとする 私は誰か ( 兄弟, 祖父母など ) と話し合ったり, 助けを求めたりする 回転後の因子間相関 因子 因子 信頼性係数 α

74 認知反応尺度 親側の要因において, 日本と中国では同じ 2 つの側面が示された 親に関する恐れ 因子に関して, 両国における共通の項目は 4 つあり, 私は, 両親に何か悪いことが起こるのではと心配になる など, 両親への心配を表す項目であった 親の葛藤解決 因子に関して, 両国における共通の項目は 4 つあり, 両親はけんかをしても, すぐ仲直りをする など, 両親間の葛藤が解決できるという認知を表す項目であった 認知反応尺度 子側の要因において, 日本と中国では同じ 2 つの側面が示された 自分に関する恐れ 因子に関して, 両国では同じ項目が抽出され, 私は, 両親が私に八つ当たりしてくるのではと心配になる など, 自分への心配を表す項目であった 自分への対処効力感 因子に関して, 両国における共通の項目は 3 つあり, 私は, 両親がけんかをしても, 何とか落ち着いていられる など, 自分が普段のようにいられるという認知を表す項目であった 情動反応尺度において, 日本と中国では同じ 2 つの側面が示された 不機嫌 怒り 因子に関して, 両国における共通の項目は 2 つだけであり, 私は不機嫌で, 怒りっぽくなる など, 不機嫌 怒りを表す項目であった 抑うつ 不安 因子に関して, 両国における共通の項目は 5 つあり, 私は泣きたい気分になる など, 抑うつ 不安を表す項目であった 行動反応尺度において, 日本と中国では同じ 2 つの側面が示された 介入的行動 因子に関して, 両国における共通の項目は 6 つあり, 私は父親あるいは母親を説得して, 何とか止めようとする など, 葛藤に介入する行動を表す項目であった 回避的行動 因子に関して, 両国における共通の項目は 4 つあり, 私は自分の部屋へ逃げたり, 外へ出たり, 他のところに行く など, 葛藤から離れる行動を表す項目であった 65

75 第 3 項全データの探索的因子分析日本と中国のデータを合わせ, 全データにおける探索的因子分析を行った はじめに, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知反応尺度 24 項目, 情動反応尺度 10 項目, 行動反応尺度 11 項目合計 45 項目の平均値と標準偏差を算出し, 天井 フロア効果について検討を行った 検討の結果, 得点分布において歪みの著しい質問項目が見られなかったため, 認知反応尺度 親側の要因, 認知反応尺度 子側の要因, 情動反応尺度, 行動反応尺度それぞれに主因子法, プロマックス回転による因子分析を行った 因子及び項目を確定するにあたり, 各因子に負荷する項目を検討し, 不適切な項目を削除することにした 削除の基準は, 各因子に負荷する項目のうち, 負荷量が小さい項目 (. 3 4 以下 ), 2 つ以上の因子に高い負荷を示す項目, 及び解釈不明確な項目とした その結果, 表 3-12 から表 3-15 までに示すように認知反応尺度 親側の要因で 2 因子 ( 親に関する恐れ, 親の葛藤解決 ), 認知反応尺度 子側の要因で 2 因子 ( 自分に関する恐れ, 自分への対処効力感 ), 情動反応尺度で 2 因子 ( 不機嫌 怒り, 抑うつ 不安 ), 行動反応尺度で 2 因子 ( 介入的行動, 回避的行動 ) が抽出された 各因子の内的整合性は,α =. 6 0 ~. 8 9 であった 各尺度において, 国別の探索的因子分析と同じ因子構造が得られたが, 項目構成の相違が見られた その結果をもとに, 各因子の内容と項目数を考慮した上で, 日本 中国に共通する 35 項目と日本 全データに共通する 2 項目を抽出し, 37 項目で尺度を構成した 具体的には, 認知反応尺度 親側の要因において, 親に関する恐れ 因子は 私は, 両親に何か悪いことが起こるのではと心配になる, 私は, これから両親がどうなってしまうのかと心配になる, 私は両親に対してどうしていいかわから 66

76 なくなる, 私は, 両親のどちらかが傷ついてしまうのではと心配になる の 4 項目で, 親の葛藤解決 因子は 両親はけんかをしても, すぐ仲直りをする, 両親は, けんかが終わった後は, 互いに友好的になる, 両親はけんかをしても, 解決策を思いつく, 私はこの状況を改善する手立てを持っている の 4 項目からなる 認知反応尺度 子側の要因において, 自分に関する恐れ 因子は 私は, 自分に何か悪いことが起こるのではと心配になる, 私は, 両親が私に八つ当たりしてくるのではと心配になる, たとえ両親が言わなくても, 両親がけんかしていると私が責められているような気がする, 私は, 自分がこれまでのように暮らせないのではと心配になる, 私は, これから自分がどうなってしまうのかと心配になる, 私は気を紛らわすためにどうしていいかわからなくなる, 両親のけんかは私の落ち度によるものだ の 7 項目で, 自分への対処効力感 因子は 私は, 両親がけんかをしても, マイペースでいられる, 私は, 両親がけんかをしても, 何とか落ち着いていられる, 両親がけんかをするのは, 私のせいではない の 3 項目からなる 情動反応尺度において, 抑うつ 不安 因子は 私は悔しい思いがする, 私は悲しくなる, 私は泣きたい気分になる, 私は心に不安感がある, 私は気分が落ち込む の 5 項目で, 不機嫌 怒り 因子は 私は不機嫌で, 怒りっぽくなる, 私は怒りを感じる, 私はイライラする, 私は不愉快な気分になる の 4 項目からなる 行動反応尺度において, 介入的行動 因子は 私は何とか両親の注意をそらす, 私はその場に割り込んで自分に興味を持ってもらおうとする, 私は父親あるいは母親を説得して, 何とか止めようとする, 私は もう止めて と両親に言う, 私は両親の前で悲しさを示す, 私は誰か ( きょうだい, 67

77 祖父母など ) と話し合ったり, 助けを求めたりする の 6 項目で, 回避的行動 因子は 私は手を出さなくて, 両親のけんかを無視する, 私は自分の部屋へ逃げたり, 外へ出たり, 他のところに行く, 私はテレビを見たり, 音楽を聞いたり, ゲームをしたり, 自分の注意をそらす, 私はいつもと変わらなく自分のことをやる の 4 項目からなる 表 3-12 全データにおける認知反応尺度 親側の要因 主因子法プロマックス回転 ( N =1310) 項目 因子 1 因子 2 両親に関する恐れ 両親の葛藤解決 共通性 20 私は, 両親に何か悪いことが起こるのではと心配になる 私は, これから両親がどうなってしまうのかと心配になる 私は, 両親が離婚してしまうのではと心配になる 私は, 両親のどちらかが傷ついてしまうのではと心配になる 私は両親に対してどうしていいかわからなくなる 両親はけんかをしても, 解決策を思いつく 両親は, けんかが終わった後は, 互いに友好的になる 私はこの状況を改善する手立てを持っている 両親はけんかをしても, すぐ仲直りをする 両親がけんかをすると, 私には止めようがない 回転後の因子間相関 因子 因子 信頼性係数 α 表 3-13 全データにおける認知反応尺度 子側の要因 主因子法プロマックス回転 ( N =1310) 項目 因子 1 因子 2 自分に関する恐れ自分への対処効力感 共通性 11 私は, 自分に何か悪いことが起こるのではと心配になる 例え両親が言わなくても, 両親がけんかしていると私が責められているような気がする 私は気を紛らわすためにどうしていいかわからなくなる 私は, これから自分がどうなってしまうのかと心配になる 私は, 自分がこれまでのように暮らせないのではと心配になる 私は, 両親が私に八つ当たりしてくるのではと心配になる 両親のけんかは私の落ち度によるものだ 私は, 両親がけんかをしても, 何とか落ち着いていられる 私は, 両親がけんかをしても, マイペースでいられる 両親がけんかをするのは, 私のせいではない 回転後の因子間相関 因子 因子 信頼性係数 α

78 表 3-14 全データにおける情動反応尺度 主因子法プロマックス回転 ( N =1310) 項目 因子 1 因子 2 抑うつ 不安 不機嫌 怒り 共通性 7 私は悲しくなる 私は泣きたい気分になる 私は心に不安感がある 私は気分が落ち込む 私は悔しい思いがする 私は怒りを感じる 私は不機嫌で, 怒りっぽくなる 私はイライラする 私は不愉快な気分になる 回転後の因子間相関 因子 因子 信頼性係数 α 表 3-15 全データにおける行動反応尺度 主因子法プロマックス回転 ( N =1310) 項目 因子 1 因子 2 介入的行動 回避的行動 共通性 5 私は何とか両親の注意をそらす 私は もう止めて と両親に言う 私は父親あるいは母親を説得して, 何とか止めようとする 私は両親の前で悲しさを示す 私はその場に割り込んで自分に興味を持ってもらおうとする 私は誰か ( 兄弟, 祖父母など ) と話し合ったり, 助けを求めたりする 私はテレビを見たり, 音楽を聞いたり, ゲームをしたり, 自分の注意をそらす 私は自分の部屋へ逃げたり, 外へ出たり, 他のところに行く 私は手を出さなくて, 両親のけんかを無視する 私はいつもと変わらなく自分のことをやる 回転後の因子間相関 因子 因子 信頼性係数 α

79 第 4 項因子構造の検討作成した夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応尺度の日本と中国のサンプルにおける因子不変性を検証するために確認的因子分析を行った 最初に個別分析を行い, 分析の際, モデルの識別のために誤差変数から各観測変数への係数をすべて 1 に固定した また, 各潜在変数から観測変数への係数において, 1 つの観測変数のパラメータは 1 に固定した 確認的因子分析の結果は図 3-1 から図 3-8 に示す 認知反応尺度 親側の要因に関して, 日本では,χ 2 ( 19) = , p = , G F I =. 9 4, A G F I =. 88, R M S E A =. 1 0, 中国では,χ 2 ( 19) = , p = , G F I =. 9 7, A G F I =. 94, R M S E A =. 08 となった 認知反応尺度 子側の要因に関して, 日本では,χ 2 ( 34)= ,p = ,G F I =. 9 1,A G F I =. 8 5, R M S E A =. 1 0, 中国では,χ 2 ( 34)= ,p = ,G F I =. 9 6, A G F I =. 93, R M S E A =. 07 となった 情動反応尺度に関して, 日本では,χ 2 ( 26)= ,p = ,G F I =. 9 3,A G F I =. 8 8, R M S E A =. 1 0, 中国では,χ 2 ( 26)= ,p = ,G F I =. 9 4, A G F I =. 90, R M S E A =. 09 となった 行動反応尺度に関して, 日本では,χ 2 ( 34)= ,p =.000,GFI =. 9 0,A G F I =. 8 4, R M S E A =. 11, 中国では,χ 2 ( 34)= ,p = ,G F I =. 9 3, A G F I =. 89, R M S E A =. 09 となった これらの結果から, データとモデルの適合は, いずれの尺度においても悪くないと判断した 相対的に日本においてモデルの適合がよくないが, 許容範囲の数値であったため, 因子不変性の検討に進むことにした 70

80 図 3-1 日本における認知反応尺度 親側の要因の確認的因子分析 結果 ( N = 402,χ 2 ( 19)=101.41,p =.000,GFI=.94,AGFI=.88,RMSEA=.10) 図 3-2 中国における認知反応尺度 親側の要因の確認的因子分析 結果 ( N = 908,χ 2 ( 19)=123.80,p =.000,GFI=.97,AGFI=.94,RMSEA=.08) 71

81 図 3-3 日本における認知反応尺度 子側の要因の確認的因子分析 結果 ( N = 402,χ 2 ( 34)=181.21,p =.000,GFI=.91,AGFI=.85,RMSEA=.10) 図 3-4 中国における認知反応尺度 子側の要因の確認的因子分析 結果 ( N = 908,χ 2 ( 34)=188.34,p =.000,GFI=.96,AGFI=.93,RMSEA=.07) 72

82 図 3-5 日本における情動反応尺度の確認的因子分析結果 (N = 402, χ 2 ( 26) =124.39, p =.000, GFI=.93, AGFI=.88, R M S E A =. 1 0 ) 図 3-6 中国における情動反応尺度の確認的因子分析結果 (N = 908, χ 2 ( 26) =228.89, p =.000, GFI=.94, AGFI=.90, R M S E A =. 0 9 ) 73

83 図 3-7 日本における行動反応尺度の確認的因子分析結果 (N = 402, χ 2 ( 34) =201.08, p =.000, GFI=.90, AGFI=.84, R M S E A =. 1 1 ) 図 3-8 中国における行動反応尺度の確認的因子分析結果 (N = 908, χ 2 ( 34) =300.93, p =.000, GFI=.93, AGFI=.89, R M S E A =. 0 9 ) 74

84 次に, 因子不変性を検討するため, 多母集団同時分析によ る確認的因子分析を行った その際, まずは下記に示す 3 つ のモデルのうちのどのレベルにおいて比較可能かを検討する モデル 0:2 つのモデルは共通なパス図で表すことができるが, すべてのパラメータが日本と中国で異なる モデル 1 : 潜在 変数 ( 構成概念 ) から観測変数への係数が日本 中国で等値 である モデル 2 : モデル 1 の条件に加えて, 潜在変数間の パス係数が等値である モデル 0 は制約がないモデルで, 推 定すべきすべての値が日本と中国で異なることを仮定するモ デルである モデル 1 は構成概念を測定する潜在変数からの 観測変数に対する影響指標が, 日本と中国で同一であること を表すモデルである このモデルが採択された場合には, 各 母集団で同一の構成概念を測定していることが確認される モデル 2 は, モデル 1 の制約に加え, 構成概念間の関連構造 も日本と中国で等しいことを仮定するモデルである 認知反応尺度 親側の要因, 認知反応尺度 子側の要因, 情動反応尺度, 行動反応尺度に対する主な適合度指標と情報 量基準を表 3-16 から表 3-19 に示す 認知反応尺度 親側の 要因, 認知反応尺度 子側の要因において, 適合度指標と情 報量基準について, モデル 1 は最も良好な値を示した 情動 反応尺度において, 適合度指標について, モデル 1 は最も良 好な値を示した 情報量基準の A I C と B B C について, モデ ル 0 が最も小さい値を示した 行動反応尺度において, 適合 度指標について, モデル 2 は最も良好な値を示した 情報量 基準の A I C と B B C について, モデル 0 が最も小さい値を示 した 上記の因子分析を行った上で, 各因子の内的整合性を見る ために信頼性係数を求めた 各因子の内的整合性は, α =.60 ~.89 であった ( 表 3-20) 認知反応尺度 子側の要因の 自 分への対処効力感 ( α =.60) がやや低かったが, その他は

85 以上を示した 表 3-16 認知反応尺度 親側の要因の日中間のモデル比較結果 (N =1310) モデル GFI AGFI RMSEA AIC BBC モデル モデル モデル 表 3-17 認知反応尺度 子側の要因の日中間のモデル比較結果 (N =1310) モデル GFI AGFI RMSEA AIC BBC モデル モデル モデル 表 3-18 情動反応尺度の日中間のモデル比較結果 (N =1310) モデル GFI AGFI RMSEA AIC BBC モデル モデル モデル 表 3-19 行動反応尺度の日中間のモデル比較結果 (N =1310) モデル GFI AGFI RMSEA AIC BBC モデル モデル モデル

86 表 3-20 夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの認知 情動 行動反応尺度における信頼性 (N =1310) 信頼性係数 α 認知反応尺度 親側認知反応尺度 子側情動反応尺度行動反応尺度 親に関する恐れ.74 親の葛藤解決.66 自分に関する恐れ.78 自分への対処効力感.60 抑うつ 不安.89 不機嫌 怒り.80 介入的行動.80 回避的行動.81 第 5 項日本と中国の得点の比較日本及び中国の高校生の夫婦間顕在的葛藤に対する反応の差を検討するため, 各因子について平均値を算出し, t 検定を行った ( 表 3-21) その結果, いずれの因子においても日本と中国の間に有意差が見られた 認知反応尺度 親側の要因については, 親の葛藤解決 及び 親に関する恐れ において, 日本の高校生の得点より中国の高校生の得点が有意に高かった ( 親の葛藤解決 :t( )= ,p < ; 親に関する恐れ :t( 1308) = , p < ) 認知反応尺度 子側の要因については, 自分に関する恐れ において, 日本の高校生の得点より中国の高校生の得点が有意に高かった ( t( ) = , p < ) 一方, 自分への対処効力感 において, 日本の高校生は中国の高校生より得点が有意に高かった ( t ( ) = , p < ) 情動反応尺度については, 不機嫌 怒り 及び 抑うつ 不安 において, 日本の高校生の得点より中国の高校生の得点が有意に高かった ( 不機嫌 怒り : t ( ) = , p < ; 抑うつ 不安 : t ( ) = , p < ) 77

87 行動反応尺度については, 介入的行動 において, 日本の高校生の得点より中国の高校生の得点が有意に高かった ( t ( )= ,p < ) 一方, 回避的行動 において, 日本の高校生は中国の高校生より得点が有意に高かった ( t ( ) = , p < ) 表 3-21 日本と中国の各因子の得点の t 検定の結果 (N =1310) 日本 中国 M SD M SD t 認知反応尺度 親側認知反応尺度 子側情動反応尺度行動反応尺度 親の葛藤解決 *** 親に関する恐れ *** 自分に関する恐れ *** 自分への対処効力感 *** 不機嫌 怒り *** 抑うつ 不安 *** 介入的行動 *** 回避的行動 *** * p <.05, ** p <.01, *** p <.001 第 4 節考察本章では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応尺度を作成し, 尺度の因子不変性を検証した上で, 日本と中国の各因子の得点を比較したところ, 日本の高校生と中国の高校生の得点の間に有意差が示された 第 1 項夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応尺度の因子構造国別と全データの探索的因子分析の結果に基づき, 各因子の内容と項目数を考慮した上で, 日本 中国に共通する 35 項目と日本 全データに共通する 2 項目を抽出し, 37 項目で尺度を構成した 具体的には, 認知反応尺度の 18 項目, 情動反応尺度の 9 項目, 行動反応尺度の 10 項目からなる 78

88 日中両国における夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応尺度の因子構造を検討するため, まずそれぞれのサンプルにおける確認的因子分析を行った その結果, 日本と中国において想定したモデルが当てはまっていることを確認できた その後, 多母集団同時分析の手法を用いて, 配置不変モデル ( モデル 0 ), 測定不変モデル ( モデル 1 ) と強因子不変モデル ( モデル 2 ) の 3 つを比較 検討した その結果, 認知反応尺度 親側の要因, 認知反応尺度 子側の要因において, モデル 1 の適合が最も良いと示され, 構成概念の測定不変性が確認された 情動反応尺度, 行動反応尺度について, モデル 1 とモデル 2 においても, 配置不変モデルほどではないものの, 良好な適合度が見出され, 日本と中国における因子不変性が確保できたと言える さらに, 内的整合性について, 自分への対処効力感の α 係数は. 6 0 でやや低かったが, 項目数が 3 つと少なかったため, これから尺度の精緻化において考慮すべきだと考えられる これらの結果を踏まえると, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子ども認知 情動 行動反応尺度に関して, 日本と中国の 2 つの母集団は同一の因子構造を有する可能性が高いと考えられる 第 2 項夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の日中比較因子構造を確認した上で両国の高校生の得点を比較した結果, 日本の高校生の方が中国の高校生より, 自分への対処効力感 認知が強く, 回避的行動を取る傾向が強いことが示された 他方, 日本の高校生より中国の高校生の方が, 親の葛藤解決 や 親に関する恐れ, 自分に関する恐れ 認知が強く, 抑うつ 不安 や 不機嫌 怒り 情動が強く, 介入的行動を取る傾向が強いことが示された つまり, 夫婦間顕在的葛藤 79

89 にさらされた時, 日本の高校生は中国の高校生より, 自分が落ち着いていられるという認知が強く, 葛藤場面を回避する傾向が強かった 一方, 中国の高校生は, たとえ両親間の葛藤が最終的に解決すると判断しても, 親と自分のことを心配し, 情緒的反応が強く, 葛藤場面に介入する傾向が強いことが示された 本研究の結果について, 心理的ストレスモデルに基づいて 2 つの観点から考察する 1 点目として, ストレッサーとしての夫婦間顕在的葛藤と子どもとの関連性から述べていきたい 結果より中国の子どもの方が日本の子どもより夫婦間顕在的葛藤が自分と関係し, それをストレッサーとして認識する可能性が高いと考えられる 兪 張 浅井 ( 2012) の夫婦間葛藤解決方略に関する日中韓比較研究によれば, 日本においては, 葛藤解決方略の意味づけとして, 夫婦関係の維持を目的とするものが多く挙げられている 一方で, 中国においては, 夫婦関係の維持だけではなく, 子どもに安定した家族環境を与えることなど子どもの成長の維持を目的とするものも多く挙げられている 兪ら ( 2012) の研究によると, 日本では夫婦間葛藤が夫婦の問題で子どもは比較的関与しないのに対して, 中国では夫婦間葛藤が家族に関わる問題であり, 子どもも関与するものと親側 ( 母 ) が捉えている この特徴は, 子どもの反応から見ても類似しており, 日本の高校生は中国の高校生より, 夫婦間顕在的葛藤を夫婦間システムの問題として認識し, 葛藤から受けた影響が弱く, 葛藤と距離を置くことができているという可能性を推測できる 2 点目として, 日本と中国の子どもは同程度に夫婦間顕在的葛藤をストレッサーとして捉えるが, その認知的評価と対処行動には日中の文化に基づく特徴が表れたと考えられる その特徴に関する 2 つの先行研究を参考に考察していく 李 ( ) の強迫的信念と強迫傾向の相互関連に関する日中比 80

90 較研究によると, 中国人大学生は, より強く外部の環境の完全性 信頼性を求め, その不安が強迫傾向として現れる それに対して, 日本人大学生は外部よりも個人内の調和性を強く求め, 自分で自分を追い込み, 自我違和感を強く感じる時や, うまく処理ができない場合, 強い不安が生じ, 強迫傾向が現れるというプロセスが指摘されている 本研究の結果から見ると, 夫婦間顕在的葛藤というストレッサーを体験する時, 日本の子どもは自分の個人内に目を向け, 自分への対処効力感を重視し, 葛藤場面から離れるなどの行動を行い, 個人内の調和性を保つ それに対して, 中国の子どもは外部や周囲に目を向け, 親と自分のことを心配し, 家族環境の安定性を取り戻すために葛藤場面に介入すると推測される また, 意見の対立場面での問題解決方略について, 羅 ( 2008) は中国と日本の大学生を対象に比較している その結果, 中国では男女ともに直接的主張を多く用いるが, 日本では男子が相手との関係を重視するために自分の要求や感情を抑えるという関係重視抑制を行い, 女子が間接的主張を多く用いている ゆえに, 夫婦間顕在的葛藤場面での対処行動に関しても, 中国の子どもは葛藤場面に介入し, 親に対して要求や感情を直接的に主張する 一方, 日本の子どもは親への主張を抑えるか, 回避的行動を通して間接的主張を行う可能性が高いと推察される 以上の内容をまとめ, 日本と中国の高校生が夫婦間顕在的葛藤にさらされた時の反応を心理的ストレスモデルに沿って捉えると, 日本の子どもに比べて中国の子どもの方が夫婦間顕在的葛藤をストレッサーとしてより敏感に捉えることが考えられる あるいは両国において文化的要因に基づく夫婦間顕在的葛藤に対する認知的評価や対処行動の相違があることが考えられる 81

91 第 3 項次章への示唆本章では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の因子構造を確認し, 日本と中国の異なる母集団において, 構成概念の測定不変性が支持される結果となった また, 本研究では夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの反応を認知反応 情動反応 行動反応で捉え, それぞれの因子の得点を日中比較した しかし, 心理的ストレスモデルでは, ストレッサー, 認知的評価, 対処行動, 適応などの事象を個々に取り扱うのではなく, 一連のプロセスとして主観的, 相対的に捉えることの重要性を指摘している ( L a z a r u s & F o l k m a n, 1984) したがって, 認知 情動 行動反応を一連のプロセスとして相互的に検討する必要性が考えられる 次章では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動反応と行動反応の関連を検討する 82

92 第 4 章 研究 Ⅱ 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動反応と行動反応の関連 83

93 第 1 節目的夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの認知を重視する認知状況的枠組み ( G r y c h & F i n c h a m, 1990) では, 認知の一次処理と二次処理が情動反応や対処行動に影響を与えると指摘されている また, 子どもの情動と行動を重視する情緒安定性仮説 ( D a v i s & C u m m i n g s, 1994) では, ネガティブな情動反応を軽減するために行動反応が行われ, 情動と行動の関連性が論じられている そのため, 個々の反応を検討するだけでなく, 反応間の関連性を見る必要性があるだろう 夫婦間顕在的葛藤が起きた後, どうやって子どもへのネガティブな影響を低減するかという視点から, 親が直接観察できるのが子どもの行動反応であり, 行動反応から子どもの考えや感情を推測することで子どもへのフォローが可能であると思われる また, カウンセリングの場面において, 子どもが認知や情動について表出するのが難しい時, 比較的表出しやすい行動反応から認知や情動を推測したり, 確認したりすることでアセスメントを行う場合もあるだろう したがって, 行動反応の背景にある子どもの認知 情動反応を把握するのは意義があると言える 本章では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動反応と行動反応の関連を検討することを目的とする 第 2 節方法調査対象者については, 第 3 章 ( 研究 Ⅰ ) と同じデータを用いたため, ここではそれらの記述を省略する 質問紙の構成夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応に関する項目 ( 第 3 章 ( 研究 Ⅰ )): 調査対象者に対して, 夫婦間顕在的葛藤の仮想場面を想起 84

94 してもらい, 今その場面が自分自身の家族で実際に起こっていると想像してください, と教示した上で, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応に関する項目を回答してもらった 認知反応尺度 : 親側の要因の親の葛藤解決 ( 4 項目 ), 親に関する恐れ ( 4 項目 ) の 2 因子, 子側の要因の自分に関する恐れ ( 7 項目 ), 自分への対処効力感 ( 3 項目 ) の 2 因子, 合計 18 項目である これらの質問項目に対して 全く当てはまらない から 非常に当てはまる の 4 件法で尋ねた 情動反応尺度 : 不機嫌 怒り ( 4 項目 ) と抑うつ 不安 ( 5 項目 ) の 2 因子, 合計 9 項目である これらの質問項目に対して 全く当てはまらない から 非常に当てはまる の 4 件法で尋ねた 行動反応尺度 : 介入的行動 ( 6 項目 ) と回避的行動 ( 4 項目 ) の 2 因子, 合計 10 項目である これらの質問項目に対して 全く当てはまらない から 非常に当てはまる の 4 件法で尋ねた チェック項目 : チェック項目として, 以下 1 ~ 4 の 4 項目を用いた 1 先に示した場面をどのぐらいイメージできたか, 全くできなかった から 非常にできた の 4 件法で尋ねた 2 先に示した場面で, 両親がけんかしたのは誰のせいだと思うか, お父さんのせい, お母さんのせい, 自分のせい, どちらでもない で尋ねた 3 深刻さに関するチェック項目 : 先に示した場面でどのぐらいの深刻さを感じたか, 全く深刻ではない から 非常に深刻だ の 4 件法で尋ねた 4 頻度に関するチェック項目 : あなたの両親は先に示した場面と似ているようなけんかをするか, 全くない から 常にある の 4 件法で尋ねた 本章では, 想定した場面に対する反応と実際の夫婦間顕在的葛藤におかれている時の反応は同様であるという場面想定 85

95 法の現実的妥当性を考慮するため, また本章の結果から実際に夫婦間顕在的葛藤で悩む子どもへの援助に提言するため, 調査対象者全員に対する分析と, 設定した場面と似たような葛藤が実際の家族に起きている対象者のみの分析を行う 後者については, あなたの両親は先に示した場面と似ているようなけんかをするかというチェック項目で, 時々ある や 常にある を選択した対象者のことを指し, 葛藤あり群 ( N =703) と命名する 第 3 節結果第 1 項調査対象者全員における認知 情動反応と行動反応の関連認知 情動反応と行動反応の関連を検討するために, まず調査対象者全員に対して, 認知 情動反応の各下位尺度得点を説明変数, 行動反応を基準変数とした重回帰分析 ( ステップワイズ法 ) を国別に行った ( 表 4-1, 表 4-2 ) 分析の結果, 日中とも, 親の葛藤解決 や 抑うつ 不安 は 介入的行動 に関与しており ( β=. 30~. 36, p < ), 自分への対処効力感 や 親の葛藤解決, 自分に関する恐れ は 回避的行動 に関与していることが示された ( β = -. 11~. 40, p <.05) また, 中国の高校生における特有の傾向として, 自分への対処効力感 は 介入的行動 に関与しており ( β=-. 07, p <. 0 5 ), 抑うつ 不安 や 親に関する恐れ は 回避的行動 と関わっていることが示された ( β = -. 09~ -. 12, p <.05) 日本の高校生における特有の傾向として, 親に関する恐れ は 介入的行動 に関与しており ( β =. 1 5, p <.01), 不機嫌 怒り は 回避的行動 と関わっていることが示された ( β=. 12, p <.05) 86

96 表 4-1 認知 情動反応による介入的行動反応の重回帰分析結果 ( 全員 N =1310) 介入的行動 中国 β 抑うつ 不安抑うつ 不安.36 *** 親の葛藤解決親の葛藤解決.30 *** 自分への対処効力感 -.07 * 親に関する恐れ 日本 β.35 ***.33 ***.15 ** 調整済み R * p <.05, ** p <.01, *** p <.001 表 4-2 認知 情動反応による回避的行動反応の重回帰分析結果 ( 全員 N =1310) 回避的行動 中国 β 自分への対処効力感自分への対処効力感.38 *** 親の葛藤解決 -.21 *** 不機嫌 怒り 自分に関する恐れ親の葛藤解決.32 *** 抑うつ 不安 -.12 ** 自分に関する恐れ 日本 β.40 ***.12 * -.11 *.11 * 親に関する恐れ -.09 * 調整済み R * p <.05, ** p <.01, *** p <.001 第 2 項葛藤あり群における認知 情動反応と行動反応の関連次に, 葛藤あり群に対して, 認知 情動反応の各下位尺度得点を説明変数, 行動反応を基準変数とした重回帰分析 ( ステップワイズ法 ) を国別に行った ( 表 4-3, 表 4-4 ) その結果, 日中とも, 抑うつ 不安 や 親の葛藤解決 は 介入的行動 に関与しており ( β=. 28~. 42, p < ), 自分への対処効力感 や 自分に関する恐れ は 回避的行動 に関与していることが示された ( β=. 22~. 3 7,p <.01) 87

97 また, 中国の高校生における特有の傾向として, 自分に関する恐れ は 介入的行動 に関与しており ( β=-. 09,p <. 0 5 ), 抑うつ 不安 や 親の葛藤解決, 不機嫌 怒り は 回避的行動 と関わっていることが示された ( β=-. 24~. 1 0, p <. 0 5 ) 表 4-3 認知 情動反応による介入的行動反応の重回帰分析結果 ( 葛藤あり群 N =703) 介入的行動 中国 β 抑うつ 不安抑うつ 不安.42 *** 親の葛藤解決親の葛藤解決.28 *** 日本 β.42 ***.36 *** 自分に関する恐れ -.09 * 調整済み R * p <.05, ** p <.01, *** p <.001 表 4-4 認知 情動反応による回避的行動反応の重回帰分析結果 ( 葛藤あり群 N =703) 回避的行動 中国 β 自分への対処効力感自分への対処効力感.37 *** 自分に関する恐れ自分に関する恐れ.31 *** 日本 β.37 ***.22 ** 親の葛藤解決 抑うつ 不安 不機嫌 怒り -.21 *** -.24 ***.10 * 調整済み R * p <.05, ** p <.01, *** p <.001 第 4 節考察本章では, 第 3 章 ( 研究 Ⅰ ) で作成された夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応尺度を 88

98 用い, 認知 情動反応と行動反応の関連を検討した 第 1 項認知 情動反応と行動反応の関連について本章では, 認知 情動反応と行動反応の関連を検討するために, 調査対象者全員と葛藤あり群それぞれに対して, 認知反応と情動反応の各下位尺度得点を説明変数, 行動反応を基準変数とした重回帰分析を国別に行った はじめに, 日本と中国の共通点について見ていきたい 調査対象者全員の結果について, 日本と中国の高校生に同じ傾向として, 抑うつ 不安 や 親の葛藤解決 と 介入的行動 との正の相関が示された そして, 自分への対処効力感 や 親の葛藤解決, 自分に関する恐れ は 回避的行動 に関与していることが示された 次に, 葛藤あり群の結果について, 日本と中国のサンプルに, 抑うつ 不安 や 親の葛藤解決 と 介入的行動 との正の相関が示され, 自分への対処効力感 や 自分に関する恐れ と 回避的行動 との正の相関が示された 以上の結果をまとめると, 葛藤あり群に見られた日本と中国の共通点は調査対象者全員にも示された すなわち, 夫婦間顕在的葛藤におかれた時, 積極的に介入的行動を取るほど, 両親間の葛藤が解決できるという認知と抑うつ 不安の情動がより強かった 一方, 積極的に回避的行動を取るほど, 自分への心配や対処効力感がより強いことが明らかになった 認知 情動反応と行動反応の関連を考察する際, 認知 情動があって行動反応が生じるという考え方ではなく, どちらが先であるかに重点を置かず, 行動反応からどういう認知 情動反応を推測できるかに焦点を当てる まず, 介入的行動と親の葛藤解決の関連から, 両親の関係修復に確信を持っている子どもには, 葛藤に介入しやすいことと, 介入的行動を取ることで葛藤解決の手助けになり, 両 89

99 親が仲直りできるという認識を持っていることの 2 つの可能性が推察できる また, 介入的行動と抑うつ 不安の関連について, 情動と行動のどちらが先であるかを別にし, 両親間の葛藤に介入する際, 抑うつ 不安感情が伴うことに対して, 親 援助者が注意を払うべきであろう 次に, 回避的行動と自分に関する恐れの関連についてである 自分に関する恐れは 私は, 自分に何か悪いことが起こるのではと心配になる, 私は, 自分がこれまでのように暮らせないのではと心配になる などの項目で構成され, 両親間の葛藤からネガティブな影響を受け脅威を感じることを表すものである 加藤 ( 2001 ) は葛藤の当事者に対して, 脅威といった認知的評価とコーピングの関連性を検討している これによると, 対人ストレッサーを脅威であると認知するほど, 対人関係を放棄 崩壊するようなネガティブ関係コーピング, 及び時間が解決するのを待つような解決先送りコーピングを用いることが示されている 第三者の子どもを対象とする本研究は加藤 ( 2001) の当事者に対する研究と視点が異なるが, 似たような心理的プロセスが存在すると思われる つまり, 第三者の子どもが夫婦間顕在的葛藤にさらされて脅威を感じた時, 葛藤から離れて距離を置くように回避する また, 回避的行動と自分への対処効力感の関連について, 自分への対処効力感には 私は, 両親がけんかをしても, 何とか落ち着いていられる, 私は, 両親がけんかをしても, マイペースでいられる などの項目が含まれ, 自分を落ち着かせる確信を表すものである 森田 (2008) は, 一般的に精神的に負の影響を与えると考えられている回避型コーピングに着目し, 回避型コーピングの用いられかたによっては, むしろプラスの影響を示すことを報告している 村山 及川 ( 2005) は, 気晴らし等の回避的方略は問題解決に直結しないが, 不快情動を改善することで後の問題解決を効果的に行うことが 90

100 できると指摘している 本研究では, 回避的行動によって自分を落ち着かせることができると子どもが認知していると推察される 日本と中国の相違点について, 葛藤あり群の結果を中心に述べていく 日本の高校生の結果が中国の高校生においても示された 中国の高校生における特有の傾向として, 自分に関する恐れ と 介入的行動 との負の相関, また 親の葛藤解決 や 抑うつ 不安 と 回避的行動 との負の相関, 不機嫌 怒り と 回避的行動 との正の相関が見られた しかし, 自分に関する恐れ や 不機嫌 怒り の標準偏回帰係数は や. 10 という低い値であるため, 解釈する際は 1 つの傾向として慎重に捉えるべきである ここで注目したいのは, 親の葛藤解決 や 抑うつ 不安 と 回避的行動 との負の相関である すなわち, 夫婦間顕在的葛藤にさらされた時, 積極的に回避的行動を取る中国の高校生は, 抑うつ 不安情動が緩和されるが, 両親が仲直りするという認知が弱いことが明らかになった 回避的行動と親の葛藤解決の関連について, 中国の高校生においては, 親の関係修復に確信を持っていない子どもは葛藤から回避しやすいこと, あるいは自分が葛藤から回避することで葛藤解決が遅れてしまう意識を持っていることの 2 点が推測される また, 回避的行動と抑うつ 不安の関連については, 前述した回避的行動によって不快情動が改善されるという先行研究の結果と一致している 1 つ興味深いこととして, 中国の高校生において, 親の葛藤解決 や 抑うつ 不安 と 介入的行動 との正の相関, 回避的行動 との負の相関から見ると, 介入的行動と回避的行動は相反するものである可能性が考えられる つまり, 中国の高校生にはどちらか一種の行動を取る人が多くいる傾向が推測される 91

101 第 2 項次章への示唆第 3 章 ( 研究 Ⅰ ) と本章では, 国による夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応や反応間の関連の共通点と相違点を検討してきたが, 高校生の反応に影響を及ぼす国以外の要因を検討する必要性が考えられる G r y c h & F i n c h a m ( 1990) の認知状況的枠組みでは, 夫婦間顕在的葛藤下における子どもの認知的処理に影響を及ぼす葛藤の特徴として, 葛藤の強度 ( i n t e n s i t y ), 内容 ( c o n t e n t ), 持続時間 ( d u r a t i o n ) と解決 ( r e s o l u t i o n ) などが挙げられている それ以外の要因として, 過去の葛藤の経験 (p r e v i o u s e x p e r i e n c e w i t h c o n f l i c t ), 認知された情緒的雰囲気 ( p e r c e i v e d e m o t i o n a l c l i m a t e ), 気質 ( t e m p e r a m e n t ), ジェンダー ( g e n d e r ), 葛藤の経過の予測 ( e x p e c t a t i o n s f o r t h e c o u r s e o f c o n f l i c t ), 現在の気分 ( c u r r e n t m o o d ) などが指摘されている 認知的処理だけでなく, 情動や行動などもこれらの要因に影響されるだろう したがって, 葛藤の深刻さや家族関係などの変数を考えつつ, 夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの反応を検討していく必要があると考えられる 次章では, 親子関係を中心に, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応との関連を検討する 92

102 第 5 章 研究 Ⅲ 親子関係と夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の関連 93

103 第 1 節目的川島 ( 2005) は中学生とその両親を対象とした研究を行い, 子どもの家族機能評価が両親の相手を責めるような子どもの否定的葛藤認知と関連することを示している また, R u b e n s t e i n & F e l d m a n ( 1993) の報告では, 家族のサポートは, 夫婦間顕在的葛藤に対する対処行動の選択に影響を及ぼすと示唆されている 具体的には, 小学 6 年生時に, 家族のサポート機能が高いほど, 両親間の葛藤に対して回避的行動 ( 話を避ける, 無口になる ) を取らず, 譲歩的行動 ( 両親の言うことに耳を向け, 理解しようとする ) を選択する頻度が高いことが明らかにされている これらの研究は家族システム全体の特徴と子どもの反応を検討しているが, 張 ( 2012) では中国人中学生を対象に親子関係の類型 ( 母子関係不良群, 両方関係良好群, 父子関係不良群 ) と夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの対処効力感の関連を検討している その結果, 両方関係良好群は父子関係不良群より対処効力感が強いが, 母子関係不良群との差が示されなかった このことから, 夫婦間サブシステムの問題が起きる時, 全体の家族関係の他, 父子関係, 母子関係のサブシステムの特徴と子どもの反応の関連を検討することは意味があると考えられる 父子関係や母子関係以外の, 性別や年齢, きょうだいの有無などの基本属性及び夫婦間顕在的葛藤の深刻さや頻度などの葛藤場面の特徴が子どもの反応に影響を与えると考えられる そのため, 本章ではこれらの要因を踏まえた上で, 親子関係と夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の関連を検討することが目的である 第 2 節 方法 調査対象者及び質問紙の構成について示す 94

104 第 1 項調査対象者 2012 年 9 月から 2013 年 4 月にかけて, 日本では東北地方の私立高校で, 中国では北地方と南地方の 2 つの公立高校にて質問紙調査を行った 対象者は日本と中国の高校 1, 2, 3 年生 1058 名であった 両親が不在 ( 一人親も含む ) の対象者, 回答に 3 個以上の欠損値が見られた対象者, また場面想定のチェック項目で 全くイメージできなかった を選んだ対象者を除き, 有効回答数は合計 790 名であり, うち日本人 203 名, 中国人 587 名であった 対象者の平均年齢は 歳 ( SD= 歳 ) であった データ数を勘案してここでは系列平均値を代入した上で分析を進めた 調査対象者の内訳は表 5-1, 表 5-2 に示す 表 5-1 日本における調査対象者の内訳 ( 人数 ) 性別 1 年生 2 年生 3 年生 総計 男子 女子 総計 表 5-2 中国における調査対象者の内訳 ( 人数 ) 性別 1 年生 2 年生 3 年生 総計 男子 女子 不明 総計 第 2 項質問紙の構成 1 ) フェイスシート : 調査対象者の基本属性 ( 性別, 年齢, 学年 ), 及び家族構成について尋ねる項目からなる 95

105 2 ) 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応に関する項目 ( 第 3 章 ( 研究 Ⅰ )): 調査対象者に対して, 夫婦間顕在的葛藤の仮想場面を想起してもらい, 今その場面が自分自身の家族で実際に起こっていると想像してください, と教示した上で, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応に関する項目を回答してもらった 認知反応尺度 : 親側の要因の親の葛藤解決 ( 4 項目 ), 親に関する恐れ ( 4 項目 ) の 2 因子, 子側の要因の自分に関する恐れ ( 7 項目 ), 自分への対処効力感 ( 3 項目 ) の 2 因子, 合計 18 項目である これらの質問項目に対して 全く当てはまらない から 非常に当てはまる の 4 件法で尋ねた 情動反応尺度 : 不機嫌 怒り ( 4 項目 ) と抑うつ 不安 ( 5 項目 ) の 2 因子, 合計 9 項目である これらの質問項目に対して 全く当てはまらない から 非常に当てはまる の 4 件法で尋ねた 行動反応尺度 : 介入的行動 ( 6 項目 ) と回避的行動 ( 4 項目 ) の 2 因子, 合計 10 項目である これらの質問項目に対して 全く当てはまらない から 非常に当てはまる の 4 件法で尋ねた チェック項目 : チェック項目として, 以下 1 ~ 4 の 4 項目を用いた 1 先に示した場面をどのぐらいイメージできたか, 全くできなかった から 非常にできた の 4 件法で尋ねた 2 先に示した場面で, 両親がけんかしたのは誰のせいだと思うか, お父さんのせい, お母さんのせい, 自分のせい, どちらでもない で尋ねた 3 深刻さに関するチェック項目 : 先に示した場面でどのぐらいの深刻さを感じたか, 全く深刻ではない から 非常に深刻だ の 4 件法で尋ねた 4 頻度に関するチェック項目 : あなたの両親は先に示した場面と似ているようなけんかをするか, 全くない から 常にある の 96

106 4 件法で尋ねた 本章では, 想定した場面に対する反応と実際の夫婦間顕在的葛藤におかれている時の反応は同様であるという場面想定法の現実的妥当性を考慮するため, また本章の結果から実際に夫婦間顕在的葛藤で悩む子どもへの援助に提言するため, 調査対象者全員に対する分析と, 設定した場面と似たような葛藤が実際の家族に起きている対象者のみの分析を行う 後者については, あなたの両親は先に示した場面と似ているようなけんかをするかというチェック項目で, 時々ある や 常にある を選択した対象者のことを指し, 葛藤あり群 ( N=444) と命名する 3 ) 親子関係に関する項目 親子間の信頼感に関する尺度 ( 新川, ): 本研究では, 親子関係を測定するため, 子ども用親子間の信頼感に関する尺度高校生以上版 ( 酒井 ( 私信 ) に基づき, 新川が作成, ) を用い, 母親 父親それぞれ 8 項目である これらの質問項目に対して 全く当てはまらない から 非常に当てはまる の 4 件法で尋ねた 作成者の同意を得た上で, 中国語に翻訳し, 中国語版を作成した さらに中国語から日本語に翻訳し直すバックトランスレーションを実施した 両国における項目の翻訳を心理学 専攻の中国人大学院生 を行った 2 名と筆者で検討を行い, 表現の修正 第 3 項倫理的配慮本研究は, 相手方の同意 協力を必要とし, また個人情報の取り扱いの配慮も必要であり, 倫理観に対する姿勢が極めて重要な研究である 調査は日本と中国の高校の協力を得て実施された 調査を 97

107 実施する前に, 各高校の責任者に対して調査の趣旨を説明し, 調査は任意で行われること, 途中で中止できること, 回答しないことによる不利益はないこと, 統計処理を施すために個人が特定されないことについて説明し, 同意を得た その後, 先生から生徒に上述内容を説明してもらい, 同意が得られた生徒のみを対象として調査を実施した さらに, 質問紙の最後には, 回答をするなかで気分が優れないと感じたり, 悩みやお困り事を誰かに相談したいと感じた方は, 下記の連絡先までお気軽にご相談ください, と教示した なお, 本質問紙は本研究科の倫理委員会の承認を得た上で実施された ( 承認 ID1: ) 第 3 節 結果 第 1 項 親子関係に関する項目 親子間の信頼感に関する尺 度の主成分分析 日本と中国それぞれのサンプルにおいて, 父子間の信頼感 に関する尺度と母子間の信頼感に関する尺度それぞれについ て主成分分析を行った その結果, 父子間の信頼感に関する 尺度と母子間の信頼感に関する尺度それぞれの第 1 主成分の 寄与率は, 日本が %, % であり, 中国が %, % であった 中国のサンプルにおいてやや低かったが, ともに 1 因子構造で分析を進める また, 父子間の信頼感に 関する尺度と母子間の信頼感に関する尺度それぞれの α 係数 は, 日本が. 94,. 9 5 であり, 中国が. 87,. 88 であり, 内的整 合性は十分であった 第 2 項調査対象者全員における夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応と諸変数の関連夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応には親子関係以外の要因が関連している可能性があることから, 主な 98

108 分析に先立って夫婦間顕在的葛藤の特徴及び基本属性と子どもの反応の関連を検討した 調査対象者全員を対象に, 日本と中国それぞれにおいて, 想定した葛藤場面の深刻さ, 葛藤場面の頻度, 性別, 年齢, きょうだいの有無の計 5 変数を第 1 群, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の 8 変数を第 2 群として正準相関分析を行った ( 表 5-3 ) その結果, 日本の高校生においては 1 つの正準相関係数が有意であった ( λ =. 4 9, p < ) 第 1 群においては, 想定した葛藤場面の深刻さと頻度の係数が高かった この正準変数は夫婦間顕在的葛藤の特徴を表すものである 一方, 第 2 群においては, 自分に関する恐れ, 親に関する恐れ, 抑うつ 不安, 自分への対処効力感, 親の葛藤解決, 不機嫌 怒り, 介入的行動という順で高い係数を示した 中国の高校生においては 2 つの正準相関係数が有意であった ( λ 1 =. 4 1, p < , λ 2 =. 2 7, p < ) 第 1 正準相関係数では, 第 1 群において, 想定した葛藤場面の深刻さが最も高い係数を示し, 頻度も係数が高かった 一方, 第 2 群において, 抑うつ 不安, 自分に関する恐れ, 親に関する恐れ, 不機嫌 怒り, 介入的行動, 親の葛藤解決, 自分への対処効力感という順で高い係数を示した 第 2 正準相関係数では, 第 1 群において, 頻度が高い係数を示した一方, 第 2 群において親の葛藤解決と回避的行動の係数が高かった 99

109 表 5-3 諸変数と子どもの反応の正準相関分析の結果 ( 構造係数 )(N =790) 日本 中国 影響要因 INF1 INF1 INF2 深刻さ 頻度 性別 年齢 きょうだいの有無 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応 PRES1 PRES1 PRES2 親の葛藤解決 親に関する恐れ 自分に関する恐れ 自分への対処効力感 抑うつ 不安 不機嫌 怒り 介入的行動 回避的行動 正準相関係数.49 ***.41 ***.27 *** * p <.05, ** p <.01, *** p <.001 第 3 項調査対象者全員における親子関係と夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の関連ここでは, 親子関係と夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の関連を検討する まず調査対象者全員を対象に, 日本と中国それぞれにおいて, 父子関係, 母子関係の計 2 変数を第 1 群, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の 8 変数を第 2 群として正準相関分析を行った ( 表 5-4 ) その結果, 日本の高校生においては 2 つの正準相関係数が有意であった (λ 1 =. 55, p < ,λ2=. 3 0, p <. 0 5 ) 第 1 正準相関係数では, 第 1 群において, 母子関係と父子関係両 100

110 方の係数が高かった 一方, 第 2 群において, 親の葛藤解決が最も高い係数を示し, 次に介入的行動, 抑うつ 不安の順であった 第 2 正準相関係数では, 第 1 群において, 父子関係が高い係数を示した一方, 第 2 群において, 抑うつ 不安や親の葛藤解決の係数が高かった 中国の高校生においては 1 つの正準相関係数が有意であった ( λ =. 4 9, p < ) 第 1 群では, 父子関係と母子関係の係数が高かった 一方, 第 2 群では, 親の葛藤解決が最も高い係数を示し, 次に介入的行動, 回避的行動の順であった 表 5-4 調査対象者全員における正準相関分析の結果 ( 構造係数 )(N =790) 日本 中国 親子関係 INF1 INF2 INF1 父子関係 母子関係 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応 PRES1 PRES2 PRES1 親の葛藤解決 親に関する恐れ 自分に関する恐れ 自分への対処効力感 抑うつ 不安 不機嫌 怒り 介入的行動 回避的行動 正準相関係数.55 ***.30 *.49 *** * p <.05, ** p <.01, *** p <

111 第 4 項葛藤あり群における親子関係と夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の関連次に, 葛藤あり群を対象に, 日本と中国それぞれにおいて, 父子関係, 母子関係の計 2 変数を第 1 群, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の 8 変数を第 2 群として正準相関分析を行った ( 表 5-5 ) その結果, 日本の高校生においては 2 つの正準相関係数が有意であった (λ 1 =. 67, p < ,λ2=. 5 3, p <. 0 1 ) 第 1 正準相関係数では, 第 1 群において, 母子関係が最も高い係数を示し, 父子関係も係数が高かった 一方, 第 2 群において, 抑うつ 不安, 介入的行動, 親の葛藤解決, そして親に関する恐れの順で高い係数を示した 第 2 正準相関係数では, 第 1 群において, 父子関係が高い係数を示した 一方, 第 2 群において, 親の葛藤解決や抑うつ 不安の係数が高かった 中国の高校生においては 1 つの正準相関係数が有意であった ( λ =. 5 0, p < ) 第 1 群において, 父子関係と母子関係の係数が高かった 一方, 第 2 群において, 親の葛藤解決, 介入的行動, 回避的行動の順で高い係数を示した 102

112 表 5-5 葛藤あり群における正準相関分析の結果 ( 構造係数 )(N =444) 日本 中国 親子関係 INF1 INF2 INF1 父子関係 母子関係 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応 PRES1 PRES2 PRES1 親の葛藤解決 親に関する恐れ 自分に関する恐れ 自分への対処効力感 抑うつ 不安 不機嫌 怒り 介入的行動 回避的行動 正準相関係数.67 **.53 **.50 *** * p <.05, ** p <.01, *** p <.001 第 4 節考察本章では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応と親子関係, 夫婦間顕在的葛藤の特徴, 基本属性の関連について検討を行った その結果, 親子関係や葛藤の深刻さ及び頻度と子どもの反応の関連が見られた 第 1 項夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応と諸変数の関連調査対象者全員を対象に, 日本と中国それぞれにおいて, 想定した葛藤場面の深刻さ, 葛藤場面の頻度, 性別, 年齢, きょうだいの有無の計 5 変数を第 1 群, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の 8 変数を第 2 群として正準相関分析を行った 103

113 日中共通の結果として, 設定した夫婦間顕在的葛藤場面が深刻かつ頻繁に起こると評定した子どもは, 自分自身や親への心配などネガティブな認知が強く, 自分への対処効力感や親の葛藤解決などポジティブな認知が弱く, 情動反応が強く, より葛藤場面に介入する傾向が示された 中国の高校生のみに見られた結果として, 葛藤が頻繁であるほど, 葛藤解決認知が弱く, 回避的行動を取る傾向が強いと示された G r y c h & F i n c h a m ( 1990) では, 子どもの対応に影響を及ぼす夫婦間顕在的葛藤の要因として, 葛藤の強度 ( i n t e n s i t y ) や持続時間 ( d u r a t i o n ) などが挙げられている 本研究の葛藤場面の深刻さや頻度は, 先行研究の強度や持続時間とつながる概念であり, 夫婦間顕在的葛藤の特徴を表すものである 日中ともに, 子どもが設定した葛藤場面が深刻かつ頻繁であると認識する場合, ネガティブな反応が強く, 葛藤に対して何とかしないといけないと思うため, 葛藤に介入することが推察される 一方で, 中国に特有の結果について, 深刻さの係数が. 34 と高くはなかったが, 深刻さの影響も取り入れて解釈する 子どもが設定した夫婦間顕在的葛藤場面が深刻ではないが, 頻繁に起こると認識する場合, 両親間の葛藤は解決できず持続するものであると考え, 葛藤から離れて距離を置くという流れが推測される 第 2 項夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応と親子関係の関連調査対象者全員または葛藤あり群を対象に, 日本と中国それぞれにおいて, 父子関係, 母子関係の計 2 変数を第 1 群, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の 8 変数を第 2 群として正準相関分析を行った 日中ともに, 調査対象者全員と葛藤あり群においてほぼ同様な結果が見られたため, 104

114 共通する結果で考察を行う 結果のまとめを図 5-1 に示す 図 5-1 研究 Ⅲ の正準相関分析の結果のまとめ まず, 日中ともに見られた結果として, 父子関係かつ母子関係が良好であるほど, 両親間の葛藤が解決できると認識し, 介入的行動を取る傾向が強いと示された 親子関係と介入的行動の関連について, 両方の親子関係が良好な場合, 両親間の葛藤に関心を持ち, 家族の安定を取り戻そうとする気持ちが強いことから, 葛藤に介入するという流れが推察される また, 杉村 竹尾 山崎 ( 2007) では, 青年の葛藤解決行動は他者との関係性の文脈に埋め込まれており, 家庭内では親が許容してくれるという期待を背景にして自分の欲求を明確に主張する傾向が明らかになった 本研究においても, 両方の親子関係が良好であれば, 子どもは自分の感情や意見を直接的に表しても親に受け入れてもらえるという期待が強いた 105

115 め介入的行動を取る可能性が考えられる 親子関係と親の葛藤解決認知の関連について, 考えられる可能性として, 両方の親子関係が良好な家庭では, 子どもの介入によって葛藤の解決が加速されることがあるため, 子どもの介入的行動と親の葛藤解決認知の得点がともに高い もう 1 つは, 両方の親子関係が良好な家庭では, 夫婦関係も良好な可能性が高いため, 葛藤が起きても解決できると子どもが認識している可能性である 中国の高校生における親子関係と回避的行動の関連について述べる 親子関係が不良であるほど, 葛藤に対して無関心で何もする必要がないと感じるか, 何とかしたいが自分の行動が親に許容してもらえないと思う可能性があるため, 葛藤場面から回避するという流れが推察される これは第 4 章 ( 研究 Ⅱ ) で述べたように, 中国において介入的行動と回避的行動が相反するものである可能性とつながっており, 両方の親子関係が良好であれば, 回避的行動を取らずに最初から介入的行動を選択すると示唆される 日本の高校生は, 父子関係かつ母子関係が良好であるほど, 抑うつ 不安が強いこと, また, 父子関係が良好であるほど, 親の葛藤解決認知が強く, 抑うつ 不安が弱いことが示された ここで興味深いのは, 良好な父子関係は抑うつ 不安を緩和するが, 良好な母子関係は抑うつ 不安を強化する可能性である 本研究で設定した夫婦間顕在的葛藤場面の内容は, 自分と父親がテレビを見ている時, 母親が家事を手伝わない父親に対する不満を言うことから始まり, 母親と父親が互いに意見を主張するようなものである そのため, 母子関係が良好な場合, 子どもが母親に対する申し訳ない気持ちで抑うつ 不安になる 一方, 父子関係が良好な場合, 父親への信頼が高く, 葛藤を解決してくれるという期待が強いため抑うつ 不安が低減されることが推測される そして, 両方の関 106

116 係が良好であるほど, 抑うつ 不安が強いことから, 情動反 応に関して母子関係の影響は父子関係より強い可能性がある と言えるだろう 第 3 項次章への示唆本章まで, 夫婦間顕在的葛藤と子どもの精神的健康の関連を説明するために重要だと思われる変数, つまり夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応を中心に検討を行ってきた しかしながら, 子どもの反応がどのように精神的健康とつながっているのかについて明らかにする必要性が考えられる 川島ら ( 2008) は夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知と抑うつとの関連を検討している その結果, 男子については自己非難や恐れの認知が抑うつに関連しているが, 女子についてはこうした関連は見られなかった また, R u b e n s t e i n & F e l d m a n ( 1993) では, 大西 ( ) の定義による 主張 や 攻撃 と類似する方略を選択する子どもにおいて, 外在化型問題と内在化型問題双方に関連が示されている 同様に, 回避 や 拒否 に類似する方略を用いる子どもにおいても, 外在化型 内在化型問題との関連が示されている このことから, 葛藤の当事者ではなく, 第三者である子どもの認知や対処行動などと精神的健康との関連について検討することは重要であると考えられる 次章では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応と精神的健康を表す変数心理的ストレス反応の関連を検討する 107

117 第 6 章 研究 Ⅳ 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子ど もの反応と心理的ストレス反応の関連 108

118 第 1 節目的ここまで夫婦間顕在的葛藤が子どもの精神的健康に影響を及ぼす直接的プロセスを説明するために重要な変数, つまり夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの反応の特徴と影響要因を日本と中国で検討してきた その結果の一部として, 夫婦間顕在的葛藤にさらされた時, 日本の高校生は中国の高校生より, 自分が落ち着いていられるという認知が強く, 葛藤場面を回避する傾向が強かった 一方, 中国の高校生は, たとえ両親間の葛藤が最終的に解決すると判断しても, 親と自分のことを心配し, 情緒的反応が強く, 葛藤場面に介入する傾向が強いことが示された 個々の文化の独自性が, その文化特有の対人ストレスをもたらすこともありうる ( 橋本 吉田 矢崎 森泉 高井 O e t z e l, 2012) 日本と中国の夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの反応の特徴が, その反応に起因する精神的健康の問題と関連している可能性があるだろう 例えば, 両親間の葛藤に対する回避的行動に由来する問題は日本で生起しやすく, 介入的行動に由来する問題は中国で生起しやすいと推測される したがって, 日中両国で夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応が精神的健康に与える影響を検討することは意義のあることと考えられる 本研究では精神的健康を表す変数として心理的ストレス反応を取り上げ, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応との関連を検討することを目的とする 第 2 節 方法 調査対象者及び質問紙の構成について示す 第 1 項調査対象者 2014 年 10 月から 2014 年 12 月にかけて, 日本では東北地方の私立高校で, 中国では南地方と北地方の 3 つの公立高校 109

119 にて質問紙調査を行った 対象者は日本と中国の高校生 573 名であった 両親が不在 ( 一人親も含む ) の対象者, 回答に 3 個以上の欠損値が見られた対象者, また場面想定のチェック項目で 全くイメージできなかった を選んだ対象者を除き, 有効回答数は合計 4 97 名であり, うち日本人 名, 中国人 310 名であった 対象者の平均年齢は 歳 ( SD= 歳 ) であった データ数と確認的因子分析を勘案してここでは系列平均値を代入した上で分析を進めた 第 2 項質問紙の構成 1 ) フェイスシート : 調査対象者の基本属性 ( 性別, 年齢, 学年 ), 及び家族構成について尋ねる項目からなる 2 ) 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応に関する項目 ( 第 3 章 ( 研究 Ⅰ )): 調査対象者に対して, 夫婦間顕在的葛藤の仮想場面を想起してもらい, 今その場面が自分自身の家族で実際に起こっていると想像してください, と教示した上で, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応に関する項目を回答してもらった 認知反応尺度 : 親側の要因の親の葛藤解決 ( 4 項目 ), 親に関する恐れ ( 4 項目 ) の 2 因子, 子側の要因の自分に関する恐れ ( 7 項目 ), 自分への対処効力感 ( 3 項目 ) の 2 因子, 合計 18 項目である これらの質問項目に対して 全く当てはまらない から 非常に当てはまる の 4 件法で尋ねた 情動反応尺度 : 不機嫌 怒り ( 4 項目 ) と抑うつ 不安 ( 5 項目 ) の 2 因子, 合計 9 項目である これらの質問項目に対して 全く当てはまらない から 非常に当てはまる の 4 件法で尋ねた 110

120 行動反応尺度 : 介入的行動 ( 6 項目 ) と回避的行動 ( 4 項目 ) の 2 因子, 合計 10 項目である これらの質問項目に対して 全く当てはまらない から 非常に当てはまる の 4 件法で尋ねた チェック項目 : チェック項目として, 以下 1 ~ 7 の 7 項目を用いた 1 先に示した場面をどのぐらいイメージできたか, 全くできなかった から 非常にできた の 4 件法で尋ねた 2 先に示した場面で, 両親がけんかしたのは誰のせいだと思うか, 父 母 私の中当てはまるものを選んでもらった 3 先に示した場面でどのぐらいの深刻さを感じたか, 全く深刻ではない から 非常に深刻だ の 4 件法で尋ねた 4 先に示した場面はあなたにとってどれぐらい重要か, 全く重要ではない から 非常に重要だ の 4 件法で尋ねた 5 あなたの両親は先に示した場面と似ているようなけんかをするか, 全くない から 常にある の 4 件法で尋ねた 6 あなたの両親は先に示した場面以外のけんかをするか, 全くない から 常にある の 4 件法で尋ねた 7 両親のことでどのぐらいのストレスを感じているか, 全くストレスではない から 非常にストレスだ の 4 件法で尋ねた 本章では, 場面想定法の妥当性を考慮するため, また本章の結果から実際に両親間の葛藤で悩む子どもへの援助に提言するため, 調査対象者全員に対する分析と両親間の葛藤が実際の家族に起きている対象者のみの分析を行う 後者について, あなたの両親は先に示した場面と似ているようなけんかをするか あるいは あなたの両親は先に示した場面以外のけんかをするか のチェック項目で, 時々ある や 常にある を選択した対象者のことを指し, 葛藤あり群 ( N =320) と命名する 111

121 3 ) 心理的ストレス反応尺度 ( 鈴木ら, 1997): 鈴木ら ( 1997) の S R S - 18( S t r e s s R e s p o n s e S c a l e - 18) を, この 2 週間の状態を問う形式に改変して使用する ここ 2, 3 日 の経験を問う原典の形式は直近のストレッサー イベントの有無の影響が大きく今回の使用目的には合致しないため改変した 不機嫌 怒り, 抑うつ 不安, 無気力の 3 因子, 合計 18 項目である これらの質問項目に対して 全く当てはまらない から 非常に当てはまる の 4 件法で尋ねた S R S - 18 は市販されており, ライセンスもこころネットに所有されているため, まず, 日本語版を購入した また, 作成者と業者の同意を得た上で, 中国語に翻訳し, 中国語版を作成した さらに中国語から日本語に翻訳し直すバックトランスレーションを実施した 両国における項目の翻訳を心理学専攻の中国人大学院生 2 名と筆者で検討を行い, 表現の修正を行った 第 3 項倫理的配慮当質問紙には, 親が口論することについてのイメージを尋ねる部分がある 子どもの目の前で口論を繰り広げること, 家族に対して暴力をふるうこと ( ドメスティック バイオレンス : DV) は心理的虐待になり得るため, このような体験がある生徒の心理的な負担を最大限に考慮する必要があると考えられる したがって, このような経験がない生徒のみにイメージしてもらうため, アンケートの冒頭に DV など心理的虐待に関する質問を設定することとした また質問紙を実施する際は,( 1 ) 親が口論することについてのイメージに関して尋ねる部分があること,( 2 ) 回答はあくまで任意に基づいて行われること,( 3 ) 生徒個人が特定されることがないことの 3 点について説明を行い, 同意が得られた生徒のみを対象として実施することとした 112

122 また, 本質問紙は本研究科の倫理委員会の承認を得た上で 実施された ( 承認 ID2: ) 第 3 節結果第 1 項心理的ストレス反応尺度の確認的因子分析と内的整合性の検討心理的ストレス反応尺度 ( 鈴木ら, 1997) の日本と中国のサンプルにおける確認的因子分析を行った 分析の際, モデルの識別のために誤差変数から各観測変数への係数をすべて 1 に固定した また, 各潜在変数から観測変数への係数において, 1 つの観測変数のパラメータは 1 に固定した 母数の推定方法には一般化最小 2 乗法を用いた 分析の結果, 日本では,χ ( 2 132)= ,p = ,G F I =. 8 1, A G F I =. 7 5,R M S E A =. 0 9, 中国では,χ ( 2 132)= ,p = , G F I =. 8 8, A G F I =. 8 4, R M S E A =. 0 7 となった 各因子の内的整合性は表 6-1 に示しており, いずれも十分な値が得られた 表 6-1 心理的ストレス反応尺度における信頼性 (N =497) 信頼性係数 α 日本 中国 不機嫌 怒り 抑うつ 不安 無気力 第 2 項調査対象者全員における夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応と心理的ストレス反応の関連調査対象者全員における夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応と心理的ストレス反応の関連を検討するために, 調査対象者全員を対象に, 日本と中国それぞれにおいて, 113

123 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の 8 変数を第 1 群, 心理的ストレス反応の 3 変数を第 2 群として正準相関分析を行った ( 表 6-2 ) その結果, 日本の高校生においては 2 つの正準相関係数が有意であった (λ 1 =. 64, p < ,λ2=. 3 2, p <.05) 第 1 正準相関係数では, 第 1 群において, 情動反応の不機嫌 怒りが最も高い係数を示し, 次に抑うつ 不安, 自分に関する恐れ, 親に関する恐れ, 回避的行動の順で係数が高かった 一方, 第 2 群において, 心理的ストレス反応の 3 因子が非常に高い係数を示した 第 2 正準相関係数では, 第 1 群において, 親に関する恐れ, 自分に関する恐れ, 不機嫌 怒り, 抑うつ 不安の順で高い係数を示した一方, 第 2 群において, 心理的ストレス反応の抑うつ 不安の係数が最も高かったが, 十分の値ではなかった 中国の高校生においては 1 つの正準相関係数が有意であった ( λ =. 5 3, p < ) 第 1 群においては, 自分に関する恐れが最も高い係数を示し, 次に親に関する恐れ, 抑うつ 不安, 不機嫌 怒り, 回避的行動の順で係数が高かった 一方, 第 2 群においては, 心理的ストレス反応の 3 因子がともに高い係数を示した 114

124 表 6-2 調査対象者全員における正準相関分析の結果 ( 構造係数 )(N =497) 日本 中国 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応 INF1 INF2 INF1 親の葛藤解決 親に関する恐れ 自分に関する恐れ 自分への対処効力感 不機嫌 怒り ( 情動反応 ) 抑うつ 不安 ( 情動反応 ) 介入的行動 回避的行動 心理的ストレス反応 PRES1 PRES1 不機嫌 怒り 抑うつ 不安 無気力 正準相関係数.64 ***.32 *.53 *** * p <.05, ** p <.01, *** p <.001 第 3 項 葛藤あり群における夫婦間顕在的葛藤に対する青年 期の子どもの反応と心理的ストレス反応の関連 ここでは葛藤あり群における夫婦間顕在的葛藤に対する青 年期の子どもの反応と心理的ストレス反応の関連を検討する そのために, 日本と中国の葛藤あり群それぞれにおいて, 夫 婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の 8 変数を第 1 群, 心理的ストレス反応の 3 変数を第 2 群として正準相関 分析を行った ( 表 6-3 ) その結果, 日本の高校生においては 1 つの正準相関係数が 有意であった ( λ =. 64, p < ) 第 1 群においては, 情動 反応の抑うつ 不安が最も高い係数を示し, 次に自分に関す る恐れ, 不機嫌 怒り, 親に関する恐れ, 回避的行動の順で 115

125 係数が高かった 一方, 第 2 群においては, 心理的ストレス反応の 3 因子が非常に高い係数を示した 中国の高校生においては 1 つの正準相関係数が有意であった ( λ =. 5 1, p < ) 第 1 群では, 自分に関する恐れが最も高い係数を示し, 次に親に関する恐れ, 抑うつ 不安, 不機嫌 怒りの順で係数が高かった 一方, 第 2 群では, 心理的ストレス反応の 3 因子がともに高い係数を示した 表 6-3 葛藤あり群における正準相関分析の結果 ( 構造係数 )(N =320) 日本 中国 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応 INF1 INF1 親の葛藤解決 親に関する恐れ 自分に関する恐れ 自分への対処効力感 不機嫌 怒り ( 情動反応 ) 抑うつ 不安 ( 情動反応 ) 介入的行動 回避的行動 心理的ストレス反応 PRES1 PRES1 不機嫌 怒り 抑うつ 不安 無気力 正準相関係数.64 ***.51 *** * p <.05, ** p <.01, *** p <.001 第 4 項夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の類型と心理的ストレス反応の関連まず, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の類型を検討する そのために, 子どもの反応 ( 親の葛藤解決, 116

126 親に関する恐れ, 自分に関する恐れ, 自分への対処効力感, 不機嫌 怒り, 抑うつ 不安, 介入的行動, 回避的行動 ) を変数としたクラスタ分析を行なった ( Wa r d 法 ) クラスタ数の検討には, デンドログラムを基準に各クラスタに含まれる対象者数やクラスタの解釈可能性の観点から検討し, 3 クラスタを採用した ( 図 6-1, 表 6-4 ) クラスタは, 子どもの反応の 8 変数の z 値を算出し, z 値と平均値から各クラスタを解釈した 第 1 クラスタは, 親の葛藤解決認知と介入的行動の標準得点の平均が SD 以上の値を示しており, 親 自分に関する恐れ認知, 情動反応などネガティブな反応や回避的行動の標準得点の平均が SD 以下の値を示していることから ポジティブ 介入群 と命名した ( 日本 : N = 25, 中国 : N = 11 4 ) 第 2 クラスタは, 親 自分に関する恐れ認知, 情動反応などネガティブな反応や介入的 回避的行動の標準得点の平均が SD 以上の値を示しており, 親の葛藤解決や自分への対処効力感認知の標準得点の平均が SD 以下の値を示していることから ネガティブ 介入回避群 と命名した ( 日本 : N = 92, 中国 : N = 156) 第 3 クラスタは, 自分への対処効力感認知と回避的行動の標準得点の平均が SD 以上の値を示しており, 親 自分に関する恐れ認知, 情動反応などネガティブな反応や介入的行動の標準得点の平均が SD 以下の値を示していることから ポジティブ 回避群 と命名した ( 日本 : N = 70, 中国 : N = 40) 以上の 3 クラスタを夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の 3 類型とした 117

127 図 6-1 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の類型 (z 得点 ) 表 6-4 各クラスタにおける夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の平均値と標準偏差 (N =497) ポジティブ 介入群 ネガティブ 介入回避群 ポジティブ 回避群 M SD M SD M SD 親の葛藤解決 親に関する恐れ 自分に関する恐れ 自分への対処効力感 不機嫌 怒り ( 情動反応 ) 抑うつ 不安 ( 情動反応 ) 介入的行動 回避的行動

128 次に, 国と夫婦間顕在的葛藤の有無と子どもの反応の類型を独立変数とし, 心理的ストレス反応の各下位尺度 ( 不機嫌 怒り, 抑うつ 不安, 無気力 ) 得点を従属変数とした の三要因分散分析を行った ( 表 6-5, 表 6-6 ) その結果, 心理的ストレス反応のいずれの下位尺度においても, 子どもの反応の類型と夫婦間顕在的葛藤の有無の主効果が認められ, 不機嫌 怒り において国の主効果が見られた 子どもの反応の類型の主効果について, Tu k e y 法による多重比較を行なった その結果, 不機嫌 怒り, 抑うつ 不安, 無気力 のいずれの得点も, ネガティブ 介入回避群 が ポジティブ 介入群 と ポジティブ 回避群 よりも有意に高かった 夫婦間顕在的葛藤の有無の主効果について, 心理的ストレス反応のいずれの下位尺度得点も, 葛藤あり群 が 葛藤なし群 よりも有意に高かった さらに, 国の主効果について, 不機嫌 怒り の得点は, 日本の高校生が中国の高校生より有意に高かった 交互作用はいずれの下位尺度においても見られなかった 119

129 表 6-5 各クラスタにおける心理的ストレス反応の平均値と標準偏差 (N =497) ポジティブ 介入群 ネガティブ 介入回避群 ポジティブ 回避群 M SD M SD M SD 不機嫌 怒り 抑うつ 不安 無気力 表 6-6 心理的ストレス反応における三要因分散分析の結果 ( N =497) 国 葛藤の有無 子どもの反応の類型 国 葛藤の有無 国 子どもの反応の類型 葛藤の有無 子どもの反応の類型 国 葛藤の有無 子どもの反応の類型 多重比較 F ( 自由度 ) F ( 自由度 ) F ( 自由度 ) F ( 自由度 ) F ( 自由度 ) F ( 自由度 ) F ( 自由度 ) 不機嫌 怒り 7.38 ** (1) 日本 > 中国 *** (1) 有 > 無 *** (2) ネガティブ 介入回避群 > ポジティブ 介入群ネガティブ 介入回避群 > ポジティブ 回避群.01(1).41(2).67(2).24(2) 抑うつ 不安.06(1) *** (1) 有 > 無 *** (2) ネガティブ 介入回避群 > ポジティブ 介入群ネガティブ 介入回避群 > ポジティブ 回避群.54(1).43(2).22(2).84(2) 無気力.30(1) *** (1) 有 > 無 *** (2) ネガティブ 介入回避群 > ポジティブ 介入群ネガティブ 介入回避群 > ポジティブ 回避群.04(1).16(2).04(2).95(2) * p <.05, ** p <.01, *** p <

130 第 4 節考察本章では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応と心理的ストレス反応の関連について, 日本と中国の高校生を対象に検討することを目的として行った 第 1 項夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応と心理的ストレス反応の関連調査対象者全員または葛藤あり群を対象に, 日本と中国それぞれにおいて, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の 8 変数を第 1 群, 心理的ストレス反応の 3 変数を第 2 群とした正準相関分析を行った 図 6-2 研究 Ⅳ の正準相関分析の結果のまとめ 国に関わらず, 調査対象者全員あるいは葛藤あり群で, ほぼ同様の結果が示されたため, 主に葛藤あり群の結果について考察する 結果のまとめを図 6-2 に示す 日本と中国に共通する結果として, 親 自分に関する恐れ, 情動反応の不機 121

131 嫌 怒り, 抑うつ 不安など夫婦間顕在的葛藤に対するネガティブな反応は心理的ストレス反応と関連することが明らかになった また日本においては, 回避的行動と心理的ストレス反応との関連も見られた これらの結果から, 情緒安定性仮説 ( D a v i s & C u m m i n g s, ) や認知状況的枠組み ( G r y c h & F i n c h a m, ) に基づき夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの反応を認知 情動 行動の 3 つの側面から捉える有用性が示された 日本と中国の高校生は, 親 自分への心配が強いほど, また抑うつ 不安や不機嫌 怒りの情動反応が強いほど, 心理的ストレス反応が強いことが示された G r y c h e t a l.( G r y c h, F i n c h a m, J o u r i l e s & M c D o n a l d, ; G r y c h, H a r o l d & M i l e s, ) は縦断的研究, 及び臨床群との比較研究から, 夫婦間顕在的葛藤と内在化型問題との媒介変数として恐れの認知を挙げている G o e k e - M o r e y e t a l. ( 2007) は夫婦間顕在的葛藤に対する情動反応と内在化型 外在化型問題との関連を検討している その結果, 怒り, 悲しみなどの情動反応と内在化型 外在化型問題との正の相関, 夫婦間顕在的葛藤の終わりに感じた幸福感と内在化型 外在化型問題との負の相関が認められている 本研究ではこれらの先行研究と一致する結果が得られ, ネガティブな認知 情動反応を扱うことが重要だと示唆される 行動反応と心理的ストレス反応との関連については, 中国のサンプルにおいて, 回避的行動の構造係数は で十分の値ではなかったが, 心理的ストレス反応との相関の方向は日本と同じであった つまり, 回避的行動を取るほど, 心理的ストレス反応が強い傾向が見られた この結果を第 4 章 ( 研究 Ⅱ ) の自分に関する恐れと回避的行動との正の相関といった結果から考える 私は, 自分に何か悪いことが起こるのではと心配になる, 私は, 両親が私に八つ当たりしてくるの 122

132 ではと心配になる など, 自分のことを心配しながら回避的行動を取ったパターンは心理的ストレス反応につながると推察される また, 介入的行動と心理的ストレス反応との関連が示されなかった理由として, 行動反応自体より, 行動反応と認知 情動反応の組み合わせによって, 心理的ストレス反応が異なるのではないだろうか そこで, 第 2 項では, 行動反応と認知 情動反応の組み合わせを表す子どもの反応の類型と心理的ストレス反応との関連を検討した結果について考察する 第 2 項夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の類型と心理的ストレス反応の関連夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の類型と心理的ストレス反応の関連をクラスタ分析や分散分析で検討した 子どもの反応の類型は 3 つのクラスタを採用した ポジティブな認知や介入的行動の得点が高く, ネガティブな認知 情動や回避的行動の得点が低い ポジティブ 介入群, ネガティブな認知 情動や介入的 回避的両方の行動の得点が高く, ポジティブな認知の得点が低い ネガティブ 介入回避群, ポジティブな認知や回避的行動の得点が高く, ネガティブな認知 情動や介入的行動の得点が低い ポジティブ 回避群 であった 分散分析の結果, 心理的ストレス反応の 不機嫌 怒り, 抑うつ 不安, 無気力 の全ての因子において, ネガティブ 介入回避群 が ポジティブ 介入群 と ポジティブ 回避群 よりも得点が有意に高かった つまり, ネガティブな認知 情動をしていた子どもはそうでない子どもより心理的ストレス反応が強かった これらの結果が示唆するのは, 子どもの行動反応自体よりも, 行動反応の背景にあるネガティブな認知 情動反応の方が精神的健康につながる点ではないだろうか 夫婦間顕在的 123

133 葛藤の悪影響を低減するために, 親や援助者が行動反応から子どもの認知 情動反応を推測したり ( 第 4 章 ( 研究 Ⅱ )), あるいは直接聞いたりして扱うことが重要であると考えられる 第 3 項次章への示唆本章では認知状況的枠組み ( G r y c h & F i n c h a m, ) と情緒安定性仮説 ( D a v i s & C u m m i n g s, ) に基づき, 夫婦間顕在的葛藤にさらされることが直接的に子どもの心理的ストレスに与える影響を検討してきた 川島 ( ) の研究では, 青年期の男子において, 妻 ( 母親 ) の夫婦間顕在的葛藤指標 ( パートナーによる否定的行動とパートナーに対する否定的見方 ) と夫 ( 父親 ) の養育の温かさとの負の相関が示されている また, 青年期の女子において, 夫 ( 父親 ) の夫婦間顕在的葛藤指標と夫 ( 父親 ) の養育の温かさとの負の相関が示されている つまり, 夫婦間顕在的葛藤があるほど, 子どもに対する温かい養育行動をしていない スピルオーバー パターンの可能性が指摘されている したがって, 親の養育行動など間接的な影響もあるため, より統合的なモデルの検討が望ましいと考えられる 次章では, 夫婦間顕在的葛藤が青年の心理的ストレス反応に影響を及ぼすプロセスの統合を検討する 124

134 第 7 章 研究 Ⅴ 夫婦間顕在的葛藤が青年の心理的ストレ ス反応に影響を及ぼすプロセスの統合 125

135 第 1 節目的第 6 章 ( 研究 Ⅳ ) では正準相関分析やクラスタ分析で夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの反応と心理的ストレス反応との関連を検討した いずれの分析でも子どもの反応の組み合わせといった全体の特徴と精神的健康と関連することが明らかになった 本章では, それぞれの反応が単独でどのように心理的ストレス反応と関連するかを検討していく さらに, 子どもの精神的健康に影響を及ぼすプロセスには, 夫婦間顕在的葛藤にさらされることが直接的に子どもに影響を与えるというもの以外に, 夫婦間顕在的葛藤が親の養育行動や家族機能状態などを媒介して間接的に子どもの精神的健康に影響を与えるというものもある ( C u m m i n g s e t a l., ) 本章では間接的プロセスの検討も付け加える その際, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚を用い, 父親と母親それぞれの親行動に関して報告してもらい, 心理的ストレス反応との関連を明確にする また, 第 5 章 ( 研究 Ⅲ ) では夫婦間顕在的葛藤の特徴と夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応が関連することを示した 直接的 間接的プロセスを統合して検討する際, 本章ではまず夫婦間顕在的葛藤の特徴と夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚の関連を明らかにする 本章では間接的プロセスも兼ねて, 直接的 間接的の 2 通りのプロセスを統合する観点から, 日本と中国における夫婦間顕在的葛藤が青年期の子どもの精神的健康に影響を及ぼすメカニズムをより包括的に検討することを目的とする 第 2 節 方法 調査対象者及び質問紙の構成について示す 126

136 第 1 項調査対象者第 6 章 ( 研究 Ⅳ ) と同じ調査対象者であったが, 分析の際, 本章に用いられる変数の欠損値を考慮した 両親の不在 ( 一人親の家庭も含む ) の対象者, 回答に 3 個以上の欠損値が見られた対象者, また場面想定のチェック項目で 全くイメージできなかった を選んだ対象者を除き, 有効回答数は合計 480 名であり, うち日本人 184 名, 中国人 296 名であった 対象者の平均年齢は 歳 (SD= 歳 ) であった データ数と確認的因子分析を勘案してここでは系列平均値を代入した上で分析を進めた 第 2 項質問紙の構成第 6 章 ( 研究 Ⅳ ) と同じ項目に夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚に関する項目を付け加えた 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚に関する項目 ( 氏家ら, 2010): 調査対象者に対して, 夫婦間顕在的葛藤場面を想定し, 今その場面が自分自身の家族で実際に起こっていると想像してください, と教示した上で, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応に関する項目を回答してもらった その後, 両親が想定した葛藤をした直後の時点について, 父親 母親の行動や態度に関する項目の回答を求めた これらの項目は, 父親 母親それぞれについて, 親の温かさ 信頼, 親との距離感の 2 因子で 8 項目である これらの質問項目に対して 全く当てはまらない から 非常に当てはまる の 4 件法で尋ねた 作成者の同意を得た上で, 中国語に翻訳し, 中国語版を作成した さらに中国語から日本語に翻訳し直すバックトランスレーションを実施した 両国における項目の翻訳を心理学専攻の中国人大学院生 2 名と筆者で検討を行い, 表現の修正 127

137 を行った 本章でも, 場面想定法の妥当性を考慮するため, また本章の結果から実際に両親間の葛藤で悩む子どもへの援助に提言するため, 調査対象者全員に対する分析と両親間の葛藤が実際の家族に起きている対象者のみの分析を行う 後者について, あなたの両親は先に示した場面と似ているようなけんかをするか あるいは あなたの両親は先に示した場面以外のけんかをするか のチェック項目で, 時々ある や 常にある を選択した対象者のことを指し, 葛藤あり群 ( N =309) と命名する 第 3 節 結果 第 1 項 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚に関する 項目の確認的因子分析と内的整合性の検討 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚に関する項目 ( 氏家ら, 2010) の日本と中国のサンプルにおける確認的因 子分析を行った 分析の際, モデルの識別のために誤差変数 から各観測変数への係数をすべて 1 に固定した また, 各潜 在変数から観測変数への係数において, 1 つの観測変数のパ ラメータは 1 に固定した 母数の推定方法には一般化最小 2 乗法を用いた 分析の結果, 父親の親行動について, 日本では, χ 2 ( 1 9 ) = , p = , G F I =. 9 4, A G F I =. 88, R M S E A =. 0 9, 中国 では, χ 2 ( 19 ) = , p = , G F I =. 95, A G F I =. 90, R M S E A =. 0 9 となった 母親の親行動について, 日本では, χ 2 ( 1 9 )= ,p = ,G F I =. 9 5,A G F I =. 90,RMSEA =. 0 8, 中国では, χ 2 ( 19) = , p = , G F I =. 95, A G F I =. 91, R M S E A =. 0 8 となった 各因子の内的整合性は表 7-1 に示しており, いずれも. 60 以上の値が得られた 128

138 表 7-1 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚に関する項目における信頼性 (N =480) 信頼性係数 α 日本 中国 父親 母親 温かさ 信頼 距離感 温かさ 信頼 距離感 第 2 項夫婦間顕在的葛藤の特徴と夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚の関連まず, 夫婦間顕在的葛藤の特徴と夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚の関連を検討する そのために, 日本と中国それぞれにおいて, 想定した葛藤場面の深刻さや頻度を第 1 群, 夫婦間顕在的葛藤後の両親の 温かさ 信頼 や 距離感 を第 2 群として正準相関分析を行った ( 表 7-2 ) その結果, 日本の高校生においては 1 つの正準相関係数が有意であった ( λ =. 3 1, p <. 0 5 ) 第 1 群においては, 深刻さと頻度はともに高い係数を示した 一方, 第 2 群においては, 温かさ 信頼 ( 父親 ), 距離感 ( 母親 ), 距離感 ( 父親 ) の順で係数が高かった 中国の高校生においても 1 つの正準相関係数が有意であった ( λ =. 4 0, p < ) 第 1 群では, 深刻さと頻度はともに高い係数を示した 一方, 第 2 群では, 距離感 ( 父親 ), 距離感 ( 母親 ), 温かさ 信頼 ( 父親 ), 温かさ 信頼 ( 母親 ) の順で係数が高かった 129

139 表 7-2 夫婦間顕在的葛藤の特徴と子どもの親行動知覚の正準相関分析の結果 ( 構造係数 )(N =480) 日本 中国 夫婦間顕在的葛藤の特徴 INF1 INF1 深刻さ 頻度 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚 PRES1 PRES1 温かさ 信頼 ( 父親 ) 距離感 ( 父親 ) 温かさ 信頼 ( 母親 ) 距離感 ( 母親 ) 正準相関係数.31 *.40 *** * p <.05, ** p <.01, *** p <.001 第 3 項各下位尺度の記述統計量及び相関係数日中のサンプルに対して, 各下位尺度の平均値, 標準偏差を算出し, 各下位尺度間の相関係数を算出した ( 表 7-3, 表 7-4 ) まず, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応と心理的ストレス反応との相関を示す 日中両国のサンプルでは, 親に関する恐れ, 自分に関する恐れ, 不機嫌 怒り ( 情動 ), 抑うつ 不安 ( 情動 ), 回避的行動 と心理的ストレス反応の 3 因子との弱い, あるいは中程度の正の相関が見られた ( r =. 1 5 ~. 49, p <.05) 次に, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚と心理的ストレス反応との相関について, 日中両国のサンプルでは, 温かさ 信頼 ( 父 ), 距離感 ( 父 ), 距離感 ( 母 ) と 不機嫌 怒り との弱い相関が示され ( r = -. 18~. 16, p <.05), 距離感 ( 父 ), 距離感 ( 母 ) と 抑うつ 不安 との正の相関が見られた ( r =. 1 4 ~. 20, p <.05) また 温かさ 信頼 ( 父 ), 温かさ 信頼 ( 母 ), 距離感 ( 母 ) と 無気力 との相関が見られた ( r = ~. 1 5, p <.05) 一方, 中国の 130

140 サンプルのみにおいて, 温かさ 信頼 ( 父 ) と 抑うつ 不安 との弱い負の相関が見られ ( r = , p <.01), 距離感 ( 父 ) と 無気力 との弱い正の相関が示された ( r =.15, p <.05) 日本のサンプルのみにおいて, 温かさ 信頼 ( 母 ) と 不機嫌 怒り との負の相関が示された ( r = -. 23, p <.01) 131

141 表 7-3 各下位尺度の記述統計量および相関係数 ( 日本 N =184) 相関係数 M SD F2 F3 F4 F5 F6 F7 F8 F9 F10 F11 F12 F13 F14 F15 F1 親の葛藤解決 *.33 **.46 **.30 ** F2 親に関する恐れ ** -.24 **.23 **.62 **.35 **.21 **.27 **.18 *.29 **.21 ** F3 自分に関する恐れ **.71 **.35 **.30 **.27 **.35 **.46 **.40 ** F4 自分に対する対処効力感 **.21 ** F5 不機嫌 怒り ( 情動 ) **.23 **.20 ** -.22 **.18 * -.16 *.21 **.49 **.39 **.42 ** F6 抑うつ 不安 ( 情動 ) **.19 *.29 **.35 **.45 **.44 ** F7 介入的行動 *.23 **.21 **.26 ** F8 回避的行動 *.19 *.22 **.20 ** F9 温かさ 信頼 ( 父親 ) ** -.18 * -.19 * F10 距離感 ( 父親 ) **.16 *.18 * F11 温かさ 信頼 ( 母親 ) ** -.22 ** F12 距離感 ( 母親 ) *.20 **.18 * F13 不機嫌 怒り **.76 ** F14 抑うつ 不安 ** F15 無気力 * p <.05, ** p <

142 表 7-4 各下位尺度の記述統計量および相関係数 ( 中国 N =296) 相関係数 M SD F2 F3 F4 F5 F6 F7 F8 F9 F10 F11 F12 F13 F14 F15 F1 親の葛藤解決 *.21 ** -.12 * -.16 **.20 **.33 **.34 ** F2 親に関する恐れ **.44 **.62 **.22 **.14 * -.14 *.19 **.30 **.35 **.34 ** F3 自分に関する恐れ **.60 **.15 *.18 ** -.24 **.21 ** -.28 **.25 **.43 **.46 **.46 ** F4 自分に対する対処効力感 ** F5 不機嫌 怒り ( 情動 ) **.30 **.15 **.20 **.33 **.31 **.31 ** F6 抑うつ 不安 ( 情動 ) **.22 **.30 **.30 **.33 ** F7 介入的行動 *.20 **.19 **.16 ** F8 回避的行動 * -.19 **.12 *.15 *.18 **.19 ** F9 温かさ 信頼 ( 父親 ) *.62 ** -.15 * -.16 ** -.20 ** F10 距離感 ( 父親 ) **.16 **.15 **.15 * F11 温かさ 信頼 ( 母親 ) * F12 距離感 ( 母親 ) **.14 *.15 ** F13 不機嫌 怒り **.65 ** F14 抑うつ 不安 ** F15 無気力 * p <.05, ** p <

143 第 4 項夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚と心理的ストレス反応の関連夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚と心理的ストレス反応の関連を検討するため, 両国の得点それぞれについてパス解析を行った パスモデルの作成に当たっては, 想定した夫婦間顕在的葛藤場面の特徴の影響も考慮し, 葛藤場面の深刻さと頻度が全ての変数に影響し, また夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応や夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚の各因子が心理的ストレス反応に影響し, さらに子どもの反応や親行動知覚の因子間が影響し合うという仮説を設定し分析を行った 分析の際, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応や夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚の各因子得点, 深刻さや頻度の得点を観測される外生変数とした 心理的ストレス反応を心理的ストレス反応尺度の各因子から影響を受ける内生変数として設定した 母数の推定方法には最尤法を用いた まず, 調査対象者全員を対象に分析した結果, 日本の高校生における適合度は, χ 2 ( 60) = , p =. 0 00, G F I =. 9 2, C F I =. 92, R M S E A =. 0 9 であり, 中国の高校生における適合度は,χ ( 2 60)= ,p =. 0 00,G F I =. 9 5,C F I =. 95,R M S E A =. 0 7 であり, 十分な値が示された ( 図 7-1, 図 7-2 ) 次に, 葛藤あり群を対象に分析した その結果, 日本の高校生における適合度は,χ 2 ( 60)= ,p = ,G F I =. 90, C F I =. 94, R M S E A =. 0 8 であり, 中国の高校生における適合度は,χ ( 2 60)= ,p =. 0 00,G F I =. 94,C F I =. 94,R M S E A =. 0 7 であり, 高い値が示された その結果を図 7-3, 図 7-4 に示す 134

144 親の葛藤解決 -.19 * 親に関する恐れ.50 *** 自分に関する恐れ 頻度.37 ***.29 *** -.23 ** 自分に対する対処効力感.34 **.31 *** 抑うつ 不安 ( 情動 ).32 *** 不機嫌 怒り ( 情動 ).27 *** 不機嫌 怒り.18 *.86 *** 介入的行動 心理的ストレス反応.90 *** 抑うつ 不安.21 ** -.20 **.89 *** 無気力 回避的行動 深刻さ -.22 ** 温かさ 信頼 ( 父 ) -.16 * 距離感 ( 父 ) 温かさ 信頼 ( 母 ).15 * 距離感 ( 母 ) 図 7-1 日本の調査対象者全員におけるパス図 (N=184,χ 2 (60)=153.63,p=.000,GFI=.92,CFI=.92,RMSEA=.09) 注 ) 誤差変数, 有意ではなかったパス係数及び因子間相関係数は, 図より省略した * p<.05, ** p<.01, *** p<

145 親の葛藤解決 -.15 ** -.13 *.12 *.24 *** 親に関する恐れ.15 ** 自分に関する恐れ 頻度.13 *.24 *** 自分に対する対処効力感 抑うつ 不安 ( 情動 ).28 ***.33 *** 不機嫌 怒り ( 情動 ).17 *.39 ***.87 *** 不機嫌 怒り 介入的行動 心理的ストレス反応.92 *** 抑うつ 不安 回避的行動.11 *.76 *** 無気力 -.19 ***.12 ** 温かさ 信頼 ( 父 ) 深刻さ.17 **.24 *** 距離感 ( 父 ).23 ***.15 ** -.18 ** 温かさ 信頼 ( 母 ) 距離感 ( 母 ) 図 7-2 中国の調査対象者全員におけるパス図 (N=296,χ 2 (60)=142.19,p=.000,GFI=.95,CFI=.95,RMSEA=.07) 注 ) 誤差変数, 有意ではなかったパス係数及び因子間相関係数は, 図より省略した * p<.05, ** p<.01, *** p<

146 親の葛藤解決 親に関する恐れ 自分に関する恐れ 頻度.48 ***.35 ***.21 *.24 * 自分に対する対処効力感 -.27 ** 抑うつ 不安 ( 情動 ).34 ***.33 *.36 ** 不機嫌 怒り ( 情動 ) 不機嫌 怒り.24 *.26 **.86 *** 介入的行動 心理的ストレス反応.92 *** 抑うつ 不安.21 * 回避的行動.93 *** 無気力 温かさ 信頼 ( 父 ) -.23 * 深刻さ 距離感 ( 父 ) 温かさ 信頼 ( 母 ) 距離感 ( 母 ) 図 7-3 日本の葛藤あり群におけるパス図 (N=89,χ 2 (60)=94.37,p=.003,GFI=.90,CFI=.94,RMSEA=.08) 注 ) 誤差変数, 有意ではなかったパス係数及び因子間相関係数は, 図より省略した * p<.05, ** p<.01, *** p<

147 親の葛藤解決 -.14 * -.23 ***.30 *** 親に関する恐れ 自分に関する恐れ 頻度.31 *** 自分に対する対処効力感 -.16 *.16 * 抑うつ 不安 ( 情動 ).30 ***.41 *** 不機嫌 怒り ( 情動 ).86 *** 不機嫌 怒り.34 *** 介入的行動 心理的ストレス反応.91 *** 抑うつ 不安 回避的行動 -.16 *.72 *** 無気力 温かさ 信頼 ( 父 ) 深刻さ.17 ** 距離感 ( 父 ).29 *** 温かさ 信頼 ( 母 ) 距離感 ( 母 ) 図 7-4 中国の葛藤あり群におけるパス図 (N=220,χ 2 (60)=127.54,p=.000,GFI=.94,CFI=.94,RMSEA=.07) 注 ) 誤差変数, 有意ではなかったパス係数及び因子間相関係数は, 図より省略した * p<.05, ** p<.01, *** p<

148 第 4 節考察本章は, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応, 及び夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚と心理的ストレス反応との関連について, 日本と中国の高校生を対象に検討することを目的とした 第 1 項夫婦間顕在的葛藤の特徴と夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚の関連調査対象者全員に対する正準相関分析とパス解析で, 夫婦間顕在的葛藤の特徴と夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚の関連が見られた また, 葛藤あり群におけるパス解析の結果は, 日中ともに, 夫婦間顕在的葛藤の特徴と親の温かさ 信頼の関連が見られなかった そして中国では, 葛藤場面の頻度から父との距離感に対して有意な正のパス, 深刻さから両親との距離感に対して有意な正のパスが示された 一方, 日本では, 夫婦間顕在的葛藤の特徴と親との距離感の関連が示されなかった 葛藤あり群において, 中国では, 夫婦間顕在的葛藤から親行動への スピルオーバー が確認された 一方, 日本ではこのような関連が見られなかった 本研究では, 両親間の葛藤の直後という時点での親行動について評定してもらい, 日本と中国の高校生において葛藤の直後の状況や捉え方が異なると思われる 第 3 章 ( 研究 Ⅰ ) では, 夫婦間顕在的葛藤にさらされた時, 中国の子どもは介入的行動を取るのに対して, 日本の子どもは回避的行動を取る傾向が示された 子どもの行動を踏まえ, 夫婦間顕在的葛藤の直後に子どもがどのような状況におかれているかを想像すると, 中国の子どもは親と同じ空間にいるのに対して, 日本の子どもは親と離れて別の空間にいる可能性が高いと推測できる このような状況の違いから, 夫婦間顕在的葛藤と親行動知覚の関連に差異が生じたと推察される 139

149 第 2 項夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚と心理的ストレス反応の関連パス解析の結果より, 日本の調査対象者全員において, 夫婦間顕在的葛藤の深刻さから心理的ストレス反応に対して有意な負のパスが見られた また, 頻度は情動反応の不機嫌 怒りを媒介し, 深刻さは情動反応や自分に関する恐れ認知を媒介して心理的ストレス反応に影響を及ぼすことが示された 中国の調査対象者全員において, 夫婦間顕在的葛藤の頻度は自分に関する恐れ認知や回避的行動を媒介し, 深刻さは自分に関する恐れ認知や情動反応の不機嫌 怒りを媒介して心理的ストレス反応につながることが示された 葛藤あり群について, 日本では, 自分に関する恐れ認知や情動反応の抑うつ 不安は夫婦間顕在的葛藤の深刻さと心理的ストレス反応の媒介変数であった 情動反応の不機嫌 怒りは頻度と心理的ストレス反応の媒介変数となっていた 夫婦間顕在的葛藤後の母親の温かさ 信頼から心理的ストレス反応に対して有意な負のパスが示された 中国では, 自分に関する恐れ認知は夫婦間顕在的葛藤の深刻さと心理的ストレス反応の媒介変数であった 夫婦間顕在的葛藤後の父親の温かさ 信頼から心理的ストレス反応に対して有意な負のパスが示された 以上の葛藤あり群の結果から, 子どもの反応と心理的ストレス反応の関連をまとめると, 日中ともに, 夫婦間顕在的葛藤が深刻なほど子どもは自分のことを心配し, それによって心理的ストレス反応がより強いことが示された 日中の差異として, 日本では, 夫婦間顕在的葛藤が, 深刻なほど情動反応の抑うつ 不安が強く, 頻繁なほど情動反応の不機嫌 怒りが強かった これらの情動反応によって心理的ストレス反応がより強いことが認められた したがって, 夫婦間顕在的葛藤の性質のみではなく, それについてどのように捉え, どのように感じたのかによって青年の精神的健康への影響は異なると 140

150 いうことが明らかになった 親行動と心理的ストレス反応の関連について, 主に葛藤あり群の結果を見ていく 日本では, 夫婦間顕在的葛藤の直後, 子どもが認知した母親の温かさ 信頼が心理的ストレス反応を軽減させた 一方, 中国では, 子どもが認知した父親の温かさ 信頼が強いと, 心理的ストレス反応が弱いことが示された 日中に共通する自分に関する恐れという認知反応と心理的ストレス反応との関連について見ていきたい 自分に関する恐れには, 私は, 自分に何か悪いことが起こるのではと心配になる, 私は, 自分がこれまでのように暮せないのではと心配になる, 私は, これから自分がどうなってしまうのかと心配になる, 私は気を紛らわすためにどうしていいかわからなくなる, 私は, 両親が私に八つ当たりしてくるのではと心配になる, たとえ両親が言わなくても, 両親がけんかしていると私が責められているような気がする, 両親のけんかは私の落ち度によるものだ などの 7 項目が含まれる それは夫婦間顕在的葛藤にさらされている時, 自分が脅かされるような恐れの認知を表す因子である G r y c h e t a l. ( 2000; 2003) は縦断的研究, 及び臨床群との比較研究から, 夫婦間顕在的葛藤と内在化型問題との媒介変数として恐れ認知を挙げている しかし,G r y c h e t al.( 2000; 2003) の恐れ認知は親に関する恐れと自分に関する恐れの両側面が含まれている また, 第 6 章 ( 研究 Ⅳ ) においても親や自分に関する恐れ認知がネガティブな認知として, ともに心理的ストレス反応とつながる 本章では, この両側面をそれぞれ検討した結果, 親に関する恐れと心理的ストレス反応の関連が見られず, 自分に関する恐れのみの影響が見られた さらに, 山本 伊藤 ( 2012) では, 青年期の子どもが認知した夫婦間顕在的葛藤と精神的健康との関連について検討している その結果, 両親は, 相手に対する自分の機嫌の悪さをそのまま私に向けてくる や 両親は, 相手のことで機嫌が悪い時に話 141

151 しかけると, 私に対しても当たり散らすことがある などの項目が含まれる 巻き込まれ 認知と抑うつとの正の相関が示されている 山本 伊藤 ( 2012) の 巻き込まれ と本研究の 自分に関する恐れ は, 両親間の葛藤が起こる時, 自分にまで影響するということが共通している 巻き込まれ 認知によって 自分に関する恐れ 認知が生じ, 心理的ストレス反応につながるという流れも推測できる 次に, 日本にのみ見られた不機嫌 怒りや抑うつ 不安という情動反応と心理的ストレス反応の関連について述べていく 日本の高校生において, 心理的ストレス反応は葛藤場面で体験した情動反応が繰り返し経験された場合に出現すると推察される ネガティブな情動反応が高校生の心理的適応に影響を及ぼすことについて, 古屋ら ( 2009) の高校生の心理的ストレス過程に関する研究では, 引きこもりと無気力は抑うつ 不安と怒りの両方の情動反応によって, 攻撃は怒りによって引き起こされることが示されている 中国では情動反応と心理的ストレス反応の関連が見られなかった その原因は, ネガティブな情動反応の表出と関係していると思われる 崔 新井 ( 1998) は非主張的であることやネガティブな感情表出を抑制することが低い自尊感情, 高い抑うつ傾向などの精神的な不健康に関連することを示している また, 意見の対立場面での問題解決方略について, 羅 ( ) は中国と日本の大学生を比較している その結果, 中国では男女ともに直接的主張を多く用いるが, 日本では男子が相手との関係を重視するために自分の要求や感情を抑えるという関係重視抑制を行い, 女子が間接的主張を多く用いていることが示されている ゆえに, 日本の子どもは中国の子どもより夫婦間顕在的葛藤で感じた情動反応を抑制する傾向があり, それが心理的ストレス反応につながるのであろう 最後に, 葛藤あり群において, 夫婦間顕在的葛藤の特徴と関係なく, 日本では, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもが認知した母 142

152 親の温かさ 信頼, 中国では, 父親の温かさ 信頼が心理的ストレス反応を緩和する要因であることについて考察する E A S S 東アジアの家族 ( F a m i l i e s i n E a s t A s i a )( 岩井 保田,2014) では夫婦の働き方について調べている その結果, 日本では共働きが % であり, 中国では % である ただ, 同じ共働きでも, 日本の共働きは妻の仕事が補助的である傾向があり, 中国の共働きは夫婦で自営業という形や夫婦ともにフルタイムであるケースが多い このような現状によって, 日本では父親より母親の方が子どもとの接触が多いのに対して, 中国では父親と母親が同じくらい子どもと関わる可能性が高い したがって, 日本における母親行動は父親行動よりも子どもに与える影響が強いと思われる また, 中国の親子関係について, 孙 ( 2009) によると, 小 中学校までは母親の子どもへの影響力が高いが, 反抗期を迎える高校生では, 母親よりも父親の威厳が認知され, 父親の子どもへの影響が上昇するという 中国では, 高校生時期の父子関係は子どもの精神的健康に影響を与える重要な要因であるため, 夫婦間顕在的葛藤といった出来事の後, 子どもが知覚した父親行動が心理的ストレス反応につながると示唆される 本研究で取り上げた親行動が葛藤の直後という時点について尋ねたものであるため, 子どもが知覚した親の温かさ 信頼が夫婦間顕在的葛藤後の一時的なものである場合と持続する普段の親行動を表すものである場合の両方があると推測される それを区別して検討しなかったのが本研究の課題の 1 つである 143

153 第 3 項次章への示唆ここまでの実証研究を通じて, 夫婦間顕在的葛藤が青年期の子どもの精神的健康に及ぼす影響を日中で検討してきたが, 各研究で得られた知見を総合して考察する必要がある そこで第 8 章では, 第 3 章 ( 研究 Ⅰ ) から第 7 章 ( 研究 Ⅴ ) の知見を総合して夫婦間顕在的葛藤が青年期の子どもの精神的健康に与える影響を考察する 144

154 第 3 部 討論 145

155 第 8 章 総合考察 146

156 第 1 節本研究の目的子どもの前での夫婦間暴力は児童虐待として定義されており ( 厚生労働省, ), 子どものいる家庭において, 暴力を伴うような夫婦間顕在的葛藤は, 子どもへの心理的虐待とも言える 夫婦間顕在的葛藤は子どもにまで影響を及ぼす可能性が十分あり, 子どもの精神的健康を考える上で考慮すべき要因だと考えられる 夫婦間顕在的葛藤と子どもの精神的健康について, 主に乳幼児期あるいは児童期の子どもがいる家庭を対象とした研究がなされており, 夫婦間顕在的葛藤が親の養育行動や家族機能などを媒介して子どもの精神的健康に影響を与える間接的プロセスや, 夫婦間顕在的葛藤にさらされることが子どもの精神的健康に影響を及ぼす直接的プロセスが指摘されている (C u m m i n g s e t a l., 2000) また, 直接的プロセスに関して, 情緒安定性仮説 (D a v i s & C u m m i n g s, 1994) や認知状況的枠組み ( G r y c h & F i n c h a m, 1990) の有用性, つまり認知 情動 行動から夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの主観的体験を捉える必要性が述べられている さらに, 乳幼児期から児童期までの子どもだけでなく, 青年期以降の子どもを対象とした研究においても, 夫婦間顕在的葛藤は青年の内在化型 外在化型問題と関連することが明らかになっている ( G r y c h e t a l., 2004) しかしながら, そのメカニズムは定かではない したがって, 本研究では, 日本と中国の高校生を対象に, 直接的 間接的の 2 通りのプロセス及び認知 情動 行動の 3 つの側面を統合する視点からそのメカニズムを検討した 直接的プロセスでは, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応を取り上げ, 間接的プロセスでは, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚を取り入れた 青年の精神的健康の指標には, ストレスという観点で心理的ストレス反応を用いた 本研究では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応, 夫婦間 147

157 顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚と心理的ストレス反応の関 連を検討することを目的とした 148

158 第 2 節夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応について直接的プロセスでは, 両親間の葛藤に対する子どもの主観的体験を認知 情動 行動の 3 つの側面から捉える その変数として, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応を取り上げた そして, 尺度の作成や子どもの反応に影響を及ぼす要因について検討を行った 具体的には, まず, 日本と中国では, 子どもの反応を直接測定できる尺度が存在しないため, 第 3 章 ( 研究 Ⅰ ) では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応尺度を作成した 日本と中国の尺度の因子不変性を検証した上で, 各因子の得点の比較を行った 次に, 第 4 章 ( 研究 Ⅱ ) では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの行動反応に焦点を当て, その背景にある子どもの認知 情動反応を把握するために認知 情動反応と行動反応の関連を日中両国で検討した さらに, 第 5 章 ( 研究 Ⅲ ) では, 子どもが夫婦間顕在的葛藤にさらされている時, 基本属性や親子関係などが子どもの反応に与える影響を日中で検討した 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応尺度について, 日中ともに同様な因子構造が確認された 日中共通の質問項目を用いて行った研究の主な結果を図 8-1 に示す まず, 日本と中国の夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の特徴について考察する 夫婦間顕在的葛藤にさらされた時, 日本の高校生は中国の高校生より, 自分が落ち着いていられると認知する傾向が強く, 葛藤場面を回避する傾向が強かった 一方で, 中国の高校生は, たとえ両親間の葛藤が最終的に解決すると判断しても, 親と自分のことを心配し, 情緒的反応が強く, 葛藤場面に介入する傾向が強いことが明らかになった 第 3 章 ( 研究 Ⅰ ) で考察したように, 心理的ストレスモデルに沿って考えると, 中国の子どもの方が夫婦間顕在的葛藤をストレッサーとして敏感に捉えることや, 両国におい 149

159 て文化的要因に基づく夫婦間顕在的葛藤に対する認知的評価や 対処行動の相違があると推測できる 図 8-1 第 3 章 ( 研究 Ⅰ ) ~ 第 5 章 ( 研究 Ⅲ ) の主な結果の まとめ : 日中共通の結果, : 日本のみに示された結果, : 中国の みに示された結果, 実線 : 正の相関, 点線 : 負の相関 ここで 1 つ異なる視点を取り上げたい それは, 日本と中国の高校生の夫婦間顕在的葛藤に対する説明スタイルが異なることである S e l i g m a n ( 1 991, 山村訳 (1994)) は, 説明スタイルの観点から悲観性 楽観性を捉えている 具体的には, ネガティブな出来事の原因を内的, 永続的, 普遍的な原因に帰属することを悲観的な説明スタイルとしている 反対に, 外的, 一時的, 特異的な要因に帰属することは楽観的な説明スタイルと定義している 説明スタイルの 3 次元それぞれから考察する まず, 内的 外的については, 第 1 章第 6 節で述べたように, 中国の子どもは夫婦関係が悪くても自分のために離婚しない親に対して責任を感じ, 夫婦の問題に巻き込まれやすい傾向がある それに対して, 日本の子どもは自分と親の関係を個人と個 150

160 人と捉えるという文化的背景のため, 両親間の葛藤から距離を置くことができると考えられる すなわち, 中国の高校生の方が夫婦間顕在的葛藤を自分自身と関係すると説明しやすいと推測される 次に, 永続的 一時的また普遍的 特異的については, 夫婦間顕在的葛藤に関する実態調査から見ていきたい 配偶者とのけんかから仲直りまでの平均時間について, 日本では 2 日以上何日間か必要な人は約 30.0% であるのに対して, 中国では % である また, 夫婦間顕在的葛藤の頻度から見ると, 日本では数日間の内に 1 回夫婦げんかをする人は % である一方, 中国では % である ( 株式会社結婚情報センター, 2008; 河北青年报, 2015) これらの結果は同一の調査から得られたものではなく, また対象者の年齢層が幅広いため慎重に解釈すべきである しかしながら, 1 つの参考として, 日本の高校生より中国の高校生の方が夫婦間顕在的葛藤にさらされる時間が長く続き, 夫婦間顕在的葛藤が他の理由でまた起こり得ると説明しやすいと思われる これらのことから, 夫婦間顕在的葛藤にさらされている時, 日本の子どもより中国の子どもの方が悲観的な説明スタイルを持ちやすいと推測される さらに, 伊澤 ( ) は対人ストレス過程における楽観的説明スタイルについて検討し, それが脅威評価に負の影響を及ぼすと示している 対人葛藤の当事者ではなく, 第三者として, 子どもが夫婦間顕在的葛藤という対人ストレスに遭遇する時, 子どもの認知や行動は説明スタイルに影響されると考えられる したがって, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応における日本と中国の差異を解釈するために, 文化的要因や説明スタイルに関する変数を取り入れて検討する必要があると言えよう 次に, 親が直接観察でき, また援助者がアセスメントする時に聞き出しやすい子どもの行動反応から推測できることを考察する まず, 介入的行動について, 日本と中国のいずれの高校生においても, 親の葛藤解決認知, 抑うつ 不安や親子関係は 151

161 介入的行動と関連することが明らかになった すなわち, 介入的行動の背景には, 良好な親子関係, 葛藤解決への確信といったポジティブな要因がある それと同時に, 子どもの抑うつ 不安をより喚起する可能性もある 抑うつ 不安を含め, 子どもの反応と精神的健康の関連について次節で詳しく述べるが, 第 7 章 ( 研究 Ⅴ ) の結果の一部として, 日本の高校生には, 抑うつ 不安と心理的ストレス反応に正の相関が示された これらのことから, 日本の高校生が介入的行動を取った場合, 親あるいは援助者は子どもの抑うつ 不安に注目し, 引き起こされた情動反応が適切に処理されたかどうかに注意を払うべきであろう 回避的行動について, 日本と中国の高校生ともに見られたのは, 自分への対処効力感, 自分に関する恐れと回避的行動との正の相関であった また, 中国のみに示されたのは, 親の葛藤解決認知, 抑うつ 不安, 親子関係と回避的行動との負の相関であった 両国において, 回避的行動に伴う認知として, 自分への対処効力感といったポジティブなものもあれば, 自分への心配といったネガティブなものもある ここでまた第 7 章 ( 研究 Ⅴ ) の結果の一部と照らし合わせて考えると, 日中どちらも自分に関する恐れ認知と心理的ストレス反応に正の相関が示された そのため, 子どもが回避的行動を取った場合, 親あるいは援助者は子どもの自分に関する恐れ認知に目を向け, 必要に応じて認知を扱うべきであろう 1 つ興味深いところは, 中国の高校生において, 親の葛藤解決認知, 抑うつ 不安や親子関係と介入的行動に正の相関, 回避的行動との負の相関が示されたため, 介入的行動か回避的行動のいずれかを選択する子どもが多くいると推測される その一方で, 回避的行動と介入的行動を組み合わせた子どももいるはずである 小杉 ( ) は, 積極的な方略を中心に, その他の方略を組み合わせて対処することが, ストレス反応の低減に 152

162 有効であることを指摘している 対処行動の組み合わせによって, ストレス反応が異なる可能性が考えられる 本論では行動反応の組み合わせまで検討しなかったが, 今後の研究では子どもの行動反応に焦点を当て検討を深めていくことが意味のあることであろう 153

163 第 3 節夫婦間顕在的葛藤が青年の精神的健康に影響を及ぼすメカニズムここまでの研究では, 夫婦間顕在的葛藤と子どもの精神的健康の関連を説明するために重要だと思われる変数, つまり夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの反応を複数の視点から検討してきた ただし, 子どもの反応がどのように精神的健康とつながっているのかという直接的プロセスの影響を明らかにする必要がある また, 直接的 間接的の 2 通りのプロセスを統合する観点から, 日本と中国における夫婦間顕在的葛藤が青年期の子どもの精神的健康に影響を及ぼすメカニズムを明らかにしたい そのために, 第 6 章 ( 研究 Ⅳ ), 第 7 章 ( 研究 Ⅴ ) では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚と心理的ストレス反応の関連を検討した 実際に両親間の葛藤が起きている子どもに対する主な研究結果 ( 図 8-2 ) を中心に考察する 図 8-2 第 6 章 ( 研究 Ⅳ ) ~ 第 7 章 ( 研究 Ⅴ ) の主な結果のま とめ : 日中共通の結果, : 日本のみに示された結果, : 中国の みに示された結果, 実線 : 正のパス, 点線 : 負のパス 154

164 図のように, 夫婦間顕在的葛藤の直接的, または間接的な影響が確認できた まず, 夫婦間顕在的葛藤にさらされている時の子どもの反応が精神的健康に影響を及ぼす直接的プロセスについて考察する 第 6 章 ( 研究 Ⅳ ) では夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の類型と心理的ストレス反応の関連を扱った 子どもの反応の類型については, ポジティブな認知や介入的行動の得点が高く, ネガティブな認知 情動や回避的行動の得点が低い ポジティブ 介入群, ネガティブな認知 情動や介入的 回避的両方の行動の得点が高く, ポジティブな認知の得点が低い ネガティブ 介入回避群, ポジティブな認知や回避的行動の得点が高く, ネガティブな認知 情動や介入的行動の得点が低い ポジティブ 回避群 の 3 つのクラスタを採用した 分析の結果, ネガティブ 介入回避群 が ポジティブ 介入群 と ポジティブ 回避群 よりもストレス反応が強かった 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応それぞれはどのように心理的ストレス反応と関連しているかを第 7 章 ( 研究 Ⅴ ) で検討した その結果, 日本と中国の高校生ともに自分に関する恐れ認知は心理的ストレス反応と関連していた また, 日本の高校生のみに情動反応は心理的ストレス反応と関連していることが明らかになった これらの結果に対する解釈として 2 つのことが考えられる 1 つは同様な行動を取るとしても, 行動の背景にある意図や目的が異なるために精神的健康に及ぶ影響が異なると推察される 例えば, 両親が葛藤のあと仲直りすると確信し, 葛藤場面に介入する子どもと, 両親や自分のことを心配し, 感情的に不安定になり, 葛藤場面に介入する子どもの精神的健康は異なるだろう あるいは, 両親間の葛藤があっても, それは夫婦の問題であるため両親に任せ, 葛藤場面から離れる子どもと, 両親や自分のことを心配し, ネガティブな感情が引き起こされたにも関わらず, 親に対してどうすればいいか分からないために葛藤場 155

165 面から回避する子どもの精神的健康は異なると思われる この解釈から, 夫婦間顕在的葛藤に対する行動自体より, その行動を取る個人の意図や目的とその行動が取られる文脈が重要であり, 夫婦間顕在的葛藤におかれている子どもの反応を認知 情動 行動の組み合わせで理解すべきであると示唆される もう 1 つの解釈として, 本論で扱った子どもの行動反応は主に両親間の葛藤に焦点を当てた場合の行動反応であった しかし,L a z a r u s & F o l k m a n ( 1984) は, ストレスフルな状況に対する対処行動を問題焦点型コーピングと情動焦点型コーピングと命名している つまり, 直面する問題に対する対処行動だけでなく, 問題によって生起した情動の調整を目的とする対処行動もあると指摘している したがって, 夫婦間顕在的葛藤というストレッサーを経験している子どもは, 両親間の葛藤という問題に対して行った対処行動が同様であっても, 自分自身の情動を調整するための行動が異なる可能性がある そして, それらの行動の違いはストレス反応につながると推測される ここでいくつかの知見が参考にできる 例えば, 1 人で感情表出する対処行動を行う独立的感情表出は抑うつを高めることが示されている ( 内田 貴志 山崎, ) また, 女子では, 落胆した時, 誰かに対して感情表出する対処行動を行う他者依存的感情表出が多いほど, 抑うつが低減されることが明らかにされている また, 小澤 ( 2010) は対処行動とストレス反応の関連を検討し, 高校生において 大声を上げてどなる などが含まれる行動的回避とストレス反応の関連が示されず, ひとりになる などの情動的回避がストレス反応を高めることを示している また, この解釈は, 中国に見られず, 日本のみに見られた情動反応と心理的ストレス反応との関連にも関係している 第 7 章第 4 節第 2 項で述べたように, 夫婦間顕在的葛藤下で喚起された情動反応の表出について, 日本の高校生は中国の高校生より感情表出を抑制する傾向が強いと考えられる 日本では情 156

166 動反応が強いほど, 感情表出を抑制するような対処行動によって維持され, 心理的ストレス反応につながるが, 中国では情動反応が強いにも関わらず, 感情表出によって緩和され, 心理的ストレス反応につながらないことが推察される 以上より, 夫婦間顕在的葛藤に対する対処行動だけでなく, 情動焦点など他の側面から子どもの行動反応について検討する必要がある 次に, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚と心理的ストレス反応の関連という間接的プロセスについて考察する 日本では, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもが認知した母親の温かさ 信頼, 中国では, 父親の温かさ 信頼が心理的ストレス反応を緩和することが示された まず, 親子関係から見ると, 第 7 章第 4 節第 2 項で論述したように, 日本の子育ては母親中心であり, 父親より母親が子どもと関わる時間が長い それに対して, 中国では, 両親が分担して育児に取り組むため, 子どもと関わる時間がほとんど変わらない また, 孙 ( 2009) によると, 中国において, 小 中学校までは母親の子どもへの影響力が高いが, 反抗期を迎える高校生では, 母親よりも父親の威厳が認知されており, 父親の子どもへの影響が上昇すると指摘している したがって, 日本では母親行動が高校生に与える影響が強いのに対して, 中国では父親行動の影響が強いことが存在し, このような傾向は夫婦間顕在的葛藤後においても見られたと考えられる 次に, 設定した葛藤場面から述べる 家事については, E A S S 東アジアの家族 ( F a m i l i e s i n E a s t A s i a ) ( 岩井 保田, ) によると, いずれの国 地域 ( 日本 中国 韓国 台湾 ) でも, 妻は家事をほぼ毎日している場合が多く, 週に数回している場合も含めると 7 ~ 9 割に達する これに対して, 夫の家事頻度は低いが, 中国人の夫は比較的家事を負担しており, 5 割程度の夫が掃除や夕食の用意を週に数回以上行っている 逆に最も家事をしていないのは日本人の夫であり, 週に数回以上行っている割合は 1 割程度にすぎない この 157

167 ような背景に基づいて, 本研究で設定した, 自分が父親と一緒にテレビを見ているところに, 母親が家事を手伝ってくれない父親への不満から始まる葛藤場面について考える 日本の子どもは母親の不満が合理的だと思い, その不満感情に影響され, 父親と一緒にテレビを見ている自分が母親に対して申し訳ない気持ちが生じやすい それに対して, 中国の子どもは, 父親が普段家事を手伝っているにも関わらず母親に文句を言われているため, 父親の味方になりやすい可能性が考えられる このことから, 夫婦間顕在的葛藤後, 日本の高校生は母親の温かさ 信頼に敏感であり, 中国の高校生は父親の温かさ 信頼に目を向けるようになると推察される 最後に, 直接的プロセスと間接的プロセスを比較する視点から考察する 標準化係数の値から直接的プロセスと間接的プロセスの影響力を見ると, 中国の高校生では, 自分に関する恐れの標準化係数は. 4 1 ( p < ) であり, 父親の温かさ 信頼は ( p <. 0 5 ) であった 日本の高校生では, 自分に関する恐れの標準化係数は.33( p <.05), 抑うつ 不安は. 3 6( p <.01), 不機嫌 怒りは. 2 6( p <. 0 1 ), 母親の温かさ 信頼は ( p <.05) であった 夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの反応の標準化係数は夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚より全般的に高かった そのため, 本研究では夫婦間顕在的葛藤が直接的プロセスを通して子どもの精神的健康に与える影響が強いと思われる しかし, 本研究で取り上げた夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚は両親間の葛藤の直後という時点のものであった そのため, その親行動が一時的なものなのか, 持続する普段の親行動を表すものなのかによって, 子どもの精神的健康に与える影響が異なると考えられる 直接的プロセスと間接的プロセスの影響力の差異について今後さらなる検討の余地がある 158

168 第 9 章 本研究の課題と意義 159

169 本章では, 本研究の限界を踏まえ, 今後の課題と展開の可能 性について記述する 加えて, 本研究で得られた結果に基づき, 本研究の意義及び臨床的示唆について示していく 第 1 節今後の課題と展開第 1 の課題は, 測定尺度に関する課題である 本研究で開発した, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応尺度の信頼性と妥当性, 場面想定法の限界や行動反応の精緻化の 3 つの側面から述べる まず, 妥当性と信頼性の検証についてである 第 3 章 ( 研究 Ⅰ ) では夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応尺度の因子構造を中心に検討することができた しかしながら, 再検査信頼性の検証を行っていないため, 時間を超えての信頼性の検討が求められる また, 子どもの目に映る親の夫婦関係を評価する他の尺度との関連を見ることで, 併存的妥当性の検討などを行っていく必要性が考えられる 次に, 場面想定法の限界について述べる 本研究では, 子どもに心理的な負担をかける可能性に最大限配慮するために, 実際の両親間の葛藤を思い出してもらうのではなく, 研究者が設定した夫婦間顕在的葛藤場面を想定してもらうことにした 場面想定法を用いる際, 想定した場面に対する反応と実際の両親間の葛藤におかれている時の反応が同様であることを担保する必要がある 本研究において, 日本と中国のサンプルの全員に対する分析に加え, チェック項目を通して抽出した設定した場面と似たような葛藤が実際の家族に起きていると回答した対象者のみの検討も行った これは有効な方法の 1 つであるが, 場面想定法の妥当性を検証するためにも, 子どもの目に映る親の夫婦関係を評価する他の尺度と比較する必要がある 場面想定法に関して, もう 1 つの限界がある 設定した夫婦間顕在的葛藤場面は, 家事にまつわり, 母が主張し, 父も主張するものであった しかし, 夫婦間コミュニ 160

170 ケーションのあり方として, 葛藤時における夫側の撤退行動 ( 難波,1999) や, 中年期夫婦における夫側の無視 回避, 威圧など非対等な関係性の問題が挙げられている ( 平山 柏木,2001) よって, 主張対主張の葛藤がなされていなかった夫婦の存在が予想される さらに, 家事以外に, 性格や子どもの教育, 経済的問題など葛藤のもとになり得る夫婦間問題も存在すると思われる したがって, そのような日本の夫婦関係の実情に見合った場面を作成する必要性が考えられる 最後に, 行動反応について, 前章で述べたように, ストレスフルな状況に対する対処行動には, 直面する問題を対象とするものもあれば, 問題によって生起した情動を対象とするものもある そのため, 夫婦間顕在的葛藤というストレッサーを経験している子どもは, 両方を行っていると考えられる 本研究では前者に焦点を当てて検討を行った結果, 青年の心理的ストレス反応との関連が示されなかった しかしながら, 行動反応に情動調整の対処行動も取り入れるならば, 行動反応と精神的健康の関連に異なる結果が得られると予想される 以上より, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応尺度について, 信頼性と妥当性, 葛藤場面の設定, 行動反応の概念の整理などの側面から尺度の精緻化が求められると言える 第 2 の課題は, 性差の検討に関する課題である 性別によって夫婦間顕在的葛藤が子どもの精神的健康に及ぼす影響が異なるかどうかについては, 一貫した結果が得られていない 例えば, 川島ら ( ) は夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知と抑うつの関連を検討している その結果, 男子については, 自己非難や恐れの認知が抑うつに関連しているが, 女子についてはこうした関連は示されなかった また, 山本 伊藤 ( 2012) は夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの 巻き込まれ 認知と抑うつの関連を検討している その結果, 男子では, 葛藤の激しさ から 巻き込まれ を媒介して抑うつ 161

171 に影響を与える一方, 女子では, 巻き込まれ から抑うつへの影響が有意傾向であることが示されている 本研究の第 5 章 ( 研究 Ⅲ ) では夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の性差について検討し, 有意な結果が示されなかった しかし, 子どもの反応と心理的ストレス反応の関連など, 夫婦間顕在的葛藤が子どもの精神的健康に影響を及ぼすメカニズムについて, 性別による検討が不十分であるため, 今後, 性差の検討が必要である 第 3 の課題は, メカニズムに関する課題である 本研究では, 夫婦間顕在的葛藤が青年期の子どもの精神的健康に影響を及ぼすメカニズムを解明するため, 直接的プロセスでは, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応を取り上げ, 間接的プロセスでは, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚を取り入れた これらの変数と青年の心理的ストレス反応の関連を探索的に検討した しかし, 前述したように, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの行動反応には他の側面も含まれ, 性差の検討も重要である また, 間接的プロセスについて, 本研究で取り入れた夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚は両親間の葛藤の直後という時点におけるものであった そのため, その親行動が一時的なものなのか, 持続する普段の親行動を表すものなのかによって, 子どもの精神的健康への影響が異なると考えられる したがって, 親行動の影響をより具体的に検討する必要がある これらの限界を克服してモデルの修正を行い, メカニズムの精緻化が望まれる さらに, 本研究では量的データを用いて検討を行ったが, これから個人内プロセスへの理解を深めるために, 面接法による質的データの収集と分析が重要である こうした詳細な検討を通して, 夫婦間顕在的葛藤が青年期の子どもの精神的健康に影響を及ぼすメカニズムをより明確にし, より具体的な示唆を提供できると考えられる 162

172 第 2 節本研究の意義本節では, 本研究の意義について考えたい まず, 先行研究とこれまでの理論の課題, それに対する本論における課題の克服と本論の独自性について述べる 第一に, 夫婦間顕在的葛藤が子どもの発達に与える影響について, 特に乳幼児期あるいは児童期の子どもがいる家庭を対象に研究がなされてきたが, 青年期の子どもに関する実証研究が少ない しかし, このような現状の中でも, 夫婦間顕在的葛藤と青年の精神的健康との関連が指摘されている ( D a v i s e t a l., 1999; 藤田, ; K a r l t e r, 1989) このことから, 青年期の子どもを対象に, 夫婦間顕在的葛藤が及ぼす影響及びそのメカニズムを明らかにする必要性があると考えられる また, 青年期の子どもは両親から一方的に影響を受けるというよりは, 自身の主観的な評価が親 家族イメージや子どもの精神的健康に影響を与えると指摘されている ( 若原, ) そこで, 本研究では日本と中国の高校生を対象に, 一貫して子どもの視点から夫婦間顕在的葛藤と精神的健康について捉える立場を重視した 第二に, 主に乳幼児期あるいは児童期の子どもがいる家庭を対象とした先行研究では, 子どもに影響を及ぼすプロセスについて, 夫婦間顕在的葛藤が親の養育行動や家族機能などを媒介して子どもの精神的健康に影響を与える間接的プロセスや, 夫婦間顕在的葛藤にさらされることが子どもの精神的健康に影響を及ぼす直接的プロセスが指摘されている ( C u m m i n g s e t a l., 2000) また, 直接的プロセスに関して, 情緒安定性仮説 ( D a v i s & C u m m i n g s, 1994) や認知状況的枠組み ( G r y c h & F i n c h a m, 1990) の有用性, つまり認知 情動 行動から夫婦間顕在的葛藤に対する子どもの主観的体験を捉える必要性が述べられている 夫婦間顕在的葛藤下における青年期の子どもの精神的健康のメカニズムが定かではないため, 本研究では直接的 間接的の 2 通りのプロセス及び認知 情動 行動の 3 つの側面を統合する視点から包括的な 163

173 検討を行い, 先行研究の知見を深めることに貢献したと思われる 第三に, 子どもの視点から見た夫婦間顕在的葛藤に関する既存の尺度の問題点として, これまでの尺度は欧米人を対象に作られており, 日本と中国の実情に基づいた標準化がなされていないことや, 子どもに実際の両親間の葛藤について報告を求めることで心理的な負担をかける可能性があることの, 2 点が挙げられる これらの問題点を克服するために, 本研究では妥当性と信頼性を備えた尺度の開発に取り組んだ また質問紙調査で, 実際の場面を思い出してもらうのではなく, 研究者が設定した夫婦間顕在的葛藤場面を想定してもらうことにした このような試みは夫婦間顕在的葛藤という重要ではあるが, 研究上倫理的配慮を特に必要とする課題の研究可能性を広げたと思われる 次に, 日中比較の意義を述べる 本研究の対象となっている日本と中国の高校生は, それぞれの国の社会 文化的背景のもとで育てられてきたため, 独自の認知 情動 行動パターンを有すると考えられる 第 3 章 ( 研究 Ⅰ ) では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応の全ての因子において, 両国の高校生の得点に有意差が示された このことから, 夫婦間顕在的葛藤にさらされている子どもの認知 情動 行動が日本と中国で異なることが明確にされた 日中の相違について, 本研究では心理的ストレスモデルや説明スタイルの観点から考察を行った また, 本研究の第 6 章 ( 研究 Ⅳ ) と第 7 章 ( 研究 Ⅴ ) では, 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応, 夫婦間顕在的葛藤後の子どもの親行動知覚が精神的健康と関連するメカニズムについて検討した その結果, 自分に関する恐れ認知が心理的ストレス反応と関連するといった両国の共通点が見られた また, 日本のみに見られた情動反応や母親の暖かさ 信頼が心理的ストレス反応と関連し, 中国のみに見られた父親の暖かさ 信頼が心理的ストレス反応と関連するといった 164

174 相違点が示された 日中の差異について, 両国における感情表出や親子関係の特徴に基づいて考察を行った 以上より, 両国の高校生において, 本研究で取り上げた変数自体の特徴が異なるが, 変数間の影響関係に共通点と相違点の両方が存在すると示唆される 日中の共通点を明確にしたことで, 国によらない結論の一般化可能性が広がった それと同時に, 日中の特質を明らかにしたことによって, それぞれの国の高校生の特徴に合わせて提言できる これまで心理学の領域で西洋に比べてあたかも同質であるように扱われてきた日本と中国において, 夫婦間顕在的葛藤が青年期の子どもの精神的健康に及ぼす影響に相違点が示され, 家族関係と子どもの精神的健康の領域において日中比較研究を進めていくべきであろう 165

175 第 3 節臨床的示唆最後に, 本研究の結果を臨床場面でどのように応用できるかについて具体的に考えていく DV のような深刻な夫婦間問題に至らなくても, 夫婦不仲, 夫婦げんかなど夫婦の問題と子どもの関係についての関心が高まっている しかし, 日常生活の中, 夫婦間問題の発生は避けられないものである その中で, 本研究は, 夫婦間顕在的葛藤を減らす視点ではなく, たとえ葛藤が起きても, 子どもはどうすれば自分自身を能動的に守れるか, また親 援助者はどうすれば夫婦間顕在的葛藤が子どもに与えるネガティブな影響を低減できるかに関する知見を提示することを目指して進めてきた まず, 子どもに対する心理教育的介入の観点から述べる 日本と中国の高校生ともに夫婦間顕在的葛藤にさらされている時, たとえ両親が言わなくても, 両親がけんかしていると私が責められているような気がする, 私は, 自分に何か悪いことが起こるのではと心配になる, 私は, 自分がこれまでのように暮らせないのではと心配になる などといった自分への心配と心理的ストレス反応の関連が示された また, 日本の高校生において不機嫌 怒りや抑うつ 不安といった情動反応と心理的ストレス反応の関連が明らかになった このような結果から, 青年期の子どもに伝えることは, 両親間の葛藤にさらされている時, 自分のことを心配したり, 怒りや不安を感じたりするネガティブな反応が生じるのは当然で自然ということである 自力でネガティブな考えや感情を処理できる場合もあるが, うまく処理できずネガティブな考えや感情が持続する場合は精神的健康に負の影響を与える可能性が高い 後者の場合に関連する知見として, D a v e r n, S t a i g e r & L u k ( 2005) は, 中学生 高校生の青年期の子どもが, どのように両親間の葛藤を認識しているかがその後の心理的適応を予測することになると仮定し, 実証的な研究を行っている その結果, 青年期の子どもが早い 166

176 時期に両親間の葛藤に気がついてスクールカウンセラー等の専門家のサポートを受ける場合には, 適応が促進され予後は良好であるという結果を得ている 学校生活など自分自身に関する悩み以外に, 両親間の葛藤など家族のことで悩む時, スクールカウンセラーなど第三者のサポートを求めるのも 1 つの選択肢であると青年期の子どもに伝えることが有用だろう 次に, 親はどうすれば夫婦間顕在的葛藤が子どもに与えるネガティブな影響を軽減できるかについて述べる 前述したように, 両国の子どもの自分に関する恐れ認知, 日本の子どもの情動反応は精神的健康に影響を及ぼす重要な変数であるため, 親はこれらの反応に注意を払うべきであろう まず, 子どもにこのような反応が生じたかどうかを確認する必要がある 確認する際, 総合考察で記述したように, 日中両国において, 抑うつ 不安は介入的行動と関連し, 自分に関する恐れ認知は回避的行動と関連することが示された そのため, 親が観察できる行動反応は子どもの認知や情動を推測するヒントになると考えられる 次に, もし親が子どもにこれらの反応が生じていると確認できたら, 親なりに子どもへの働きかけが必要だと思われる 唯一の正解はないが, 例えば, 親がけんかしたのは, あなたを責めるわけでもないし, あなたに悪いことも起こらないよ など自分に関する恐れ認知を緩和するようなことを子どもに伝える あるいは, 怖かったでしょう, 不安だったでしょう など子どもの情動の表現を正当化したり, 励ましたりするようなことが有益だと考えられる 子どもの反応に注目する以外では, 本研究の結果によると, 中国の高校生が知覚した父親の温かさ 信頼, 日本の高校生が知覚した母親の温かさ 信頼は心理的ストレス反応と関連することが明らかになった そのため, 中国では父親, 日本では母親が夫婦間顕在的葛藤後の子どもに対する態度や行動に気を付けるべきであろう 最後に, 両親間の葛藤で悩む子どもがカウンセリングに来る 167

177 場合における援助者の対応への提案を記述する まず, アセスメントの視点から考えてみたい どのような側面から情報収集をするかについて, 夫婦間顕在的葛藤下の子どもの反応や夫婦間顕在的葛藤後の親行動からアセスメントしていくことが考えられる 中国の子どもから自分に関する恐れ認知や父親行動, また, 日本の子どもから自分に関する恐れ認知や情動反応, 母親行動に関連する情報が出る場合, アセスメントに重要な情報として着目すべきである また, 前述したように, 抑うつ 不安は介入的行動と関連し, 自分に関する恐れ認知は回避的行動と関連することが示された そのため, 子どもに認知や情動など内面の反応を語ってもらうことが難しい場合, 行動反応から聞き出し, そこから深めていくことが可能だと考えられる ただ, 本研究の結果を軸にアセスメントすることは便利だが, 全ての子どもに当てはまるわけではないため, 先入観にとらわれないように気を付けるべきである さらに, 本研究で扱った夫婦間顕在的葛藤と直接的に関連する要因以外, 夫婦間顕在的葛藤が起きてからしばらく時間が経った後に現れる子どもの感情対処法や問題行動の有無など, 他の要因が重要な場合もある そのため, 柔軟にアセスメントすることが望ましい 次に, 介入の観点から述べる 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの認知 情動 行動反応や夫婦間顕在的葛藤後の親行動に関する情報を整理してアセスメントした後, どこから介入するかを考える際, いくつかのパターンがあると考えられる 第一に, 自分に関する恐れ認知, 情動反応など精神的健康と直接関連する本人の要因を扱う このパターンは効率的で効果的であると思われるが, これらの反応を変えにくい場合, 関連する他の変えやすい反応も視野に入れた方がいいだろう 第二に, 子どもが認知する親行動など精神的健康につながる家族の要因を扱う このパターンは親の協力がもらえる場合, 達成しやすいだろう 第三に, 夫婦間顕在的葛藤から時間が経った 168

178 後に現れる子どもの感情対処法, 問題行動などを扱う このパターンについては本研究では検討していないため, これからの展開が望まれる 介入の際, 家族システムを意識して個人要因や関係要因の両方から考えるべきであろう 169

179 引用文献 A m a t o, P. R. ( ). M a r i t a l C o n f l i c t, t h e P a r e n t - C h i l d R e l a t i o n s h i p a n d C h i l d S e l f - E s t e e m. F a m i l y R e l a t i o n s, 3 5 ( 3 ), A m a t o, P. R., & Ta m a r a, D. A. ( ). F e e l i n g C a u g h t b e t w e e n P a r e n t s : A d u l t C h i l d r e n ' s R e l a t i o n s w i t h P a r e n t s a n d S u b j e c t i v e We l l - B e i n g. J o u r n a l o f M a r r i a g e a n d F a m i l y, 6 8 ( 1 ), B e l l, L. G., B e l l, D. C., & N a k a t a, Y. ( ). Tr i a n g u l a t i o n a n d A d o l e s c e n t D e v e l o p m e n t i n t h e U. S. a n d J a p a n. F a m i l y P r o c e s s, 4 0 ( 2 ), B e l s k y, J., Yo u n g b l a d e, L., R o v i n e, M., & Vo l l i n g, B. ( ). P a t t e r n s o f M a r i t a l C h a n g e a n d P a r e n t - C h i l d I n t e r a c t i o n. J o u r n a l o f M a r r i a g e a n d F a m i l y, 53( 2 ), B i c k h a m, N. L., F i e s e, B. H. ( ). E x t e n s i o n o f t h e C h i l d r e n ' s P e r c e p t i o n s o f I n t e r p a r e n t a l C o n f l i c t S c a l e f o r U s e w i t h L a t e A d o l e s c e n t s. J o u r n a l o f F a m i l y P s y c h o l o g y, 11 ( 2 ), B u e h l e r, C., & G e r a r d, J. M. ( ). M a r i t a l C o n f l i c t, I n e f f e c t i v e P a r e n t i n g, a n d C h i l d r e n ' s a n d A d o l e s c e n t s ' M a l a d j u s t m e n t. J o u r n a l o f M a r r i a g e a n d F a m i l y, 64( 1 ), B u e h l e r, C., K r i s h n a k u m a r, A., S t o n e, G., A n t h o n y, C., P e m b e r t o n, S., G e r a r d, J., & B a r b e r, K. ( ). I n t e r p a r e n t a l C o n f l i c t S t y l e s a n d Yo u t h P r o b l e m B e h a v i o r : A Tw o - S a m p l e R e p l i c a t i o n S t u d y. J o u r n a l o f M a r r i a g e a n d t h e F a m i l y, 6 0,

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189 育学研究科博士論文. 森光玲雄 高橋知音 ( 2007 ). C h i l d r e n ' s P e r c e p t i o n o f l n t e r p a r e n t a l C o n f l i c t S c a l e 日本語版の作成および信頼性の検討. 信州心理臨床紀要, 6, 森田美登里 ( 2008). 回避型コーピングの用いられ方がストレス低減に及ぼす影響. 健康心理学研究, 21( 1 ), 村山航 及川恵 ( 2005). 回避的な自己制御方略は本当に非適応的なのか. 教育心理学研究, 53( 2 ), N a d a m i t s u, Y., C h e n, L., & F r i e d r i c h, G. ( ). S i m i l a r o f D i f f e r e n t? : T h e C h i n e s e E x p e r i e n c e o f J a p a n e s e C u l t u r e. I n M. J. C o l l i e r ( E d s. ), C o n s t i t u t i n g C u l t u r a l D i f f e r e n c e T h r o u g h D i s c o u r s e. T h o u s a n d O a k s, C A : S a g e, p p 内閣府男女共同参画局 ( 2006). 男女間における暴力に関する調査 報告書 < 概要版 >. h t t p : / / w w w. g e n d e r. g o. j p / e - v a w / c h o u s a / i m a g e s / p d f / c h o u s a g a i y o u. p d f. 難波淳子 ( 1999). 中年期の日本人夫婦のコミュニケーションの特徴についての一考察 事例の分析を通して. 岡山大学大学院文化科学研究科紀要, 8, N i c o l o t t i, L., E l - S h e i k h, M., & W h i t s o n, S. M. ( ). C h i l d r e n ' s C o p i n g w i t h M a r i t a l C o n f l i c t a n d T h e i r A d j u s t m e n t a n d P h y s i c a l H e a l t h : Vu l n e r a b i l i t y a n d P r o t e c t i v e F u n c t i o n s. J o u r n a l o f F a m i l y P s y c h o l o g y, 1 7 ( 3 ), 新名理恵 坂田成輝 矢冨直美 本間昭 ( 1990). 心理的ストレス反応尺度の開発. 心身医学, 30( 1 ), 西出隆紀 夏野良司 ( 1997). 家族システムの機能状態の認知は子どもの抑鬱感にどのような影響を与えるか. 教育心理学研究, 45( 4 ),

190 O ' B r i e n, M., B a h a d u r, M. A., G e e, C., B a l t o, K., & E r b e r, S. ( ). C h i l d E x p o s u r e t o M a r i t a l C o n f l i c t a n d C h i l d C o p i n g R e s p o n s e s a s P r e d i c t o r s o f C h i l d A d j u s t m e n t. C o g n i t i v e T h e r a p y a n d R e s e a r c h, 2 1 ( 1 ), O ' B r i e n, M., M a r g o l i n, G., & J o h n, R. S. ( ). R e l a t i o n a m o n g M a r i t a l C o n f l i c t, C h i l d C o p i n g, a n d C h i l d A d j u s t m e n t. J o u r n a l o f C l i n i c a l C h i l d P s y c h o l o g y, 2 4 ( 3 ), 大渕憲一 ( 1992). 日本人とアメリカ人の対人葛藤. 渡辺文夫 高橋順一 ( 編 ). 地球社会時代をどう捉えるか 人間科学の課題と可能性. ナカニシヤ出版, pp 大渕憲一 ( 2002). 人間関係と攻撃性. 島井哲志 山崎勝之 ( 編 ). 攻撃性の行動科学 : 健康編. ナカニシヤ出版, pp 大渕憲一 ( 2015). 紛争と葛藤の心理学 人はなぜ争い どう和解するのか. サイエンス社. 大渕憲一 菅原郁夫 Ty l e r, T. R. L i n d, E. A. ( 1995). 葛藤における多目標と解決方略の比較文化的研究 : 同文化葛藤と異文化葛藤. 東北大学文学部研究年報, 45, 大西勝二 ( 2005). 職場での対人葛藤発生時における解決目標と方略. 産業 組織心理学研究, 16( 1 ), 呉宣児 竹尾和子 片成男 高橋登 山本登志哉 サトウタツヤ ( 2012). 日韓中越における子ども達のお金 お小遣い 金銭感覚 : 豊かさと人間関係の構造. 発達心理学研究,23 ( 4 ), 大竹恵子 ( 2004). 女性の健康心理学. ナカニシヤ出版. 小澤永治 ( 2010). 思春期における不快情動への態度とストレスの関連. 心理学研究, 81( 5 ), R u b e n s t e i n, J. L., & F e l d m a n, S. S. ( ). C o n f l i c t - R e s o l u t i o n B e h a v i o r i n A d o l e s c e n t B o y s : A n t e c e d e n t s a n d A d a p t a t i o n a l C o r r e l a t e s. J o u r n a l o f 181

191 R e s e a r c h o n A d o l e s c e n c e, 3 ( 1 ), 坂野雄二 嶋田洋徳 三浦正江 森治子 小田美穂子 猿渡末治 ( 1994). 高校生の認知的個人差が心理的ストレスに及ぼす影響. 早稲田大学人間科学研究, 7 ( 1 ), 坂野雄二 ( ). 認知行動療法の基礎. 金剛出版. S e l i g m a n, M. E. P ( ). L e a r n e d O p t i m i s m. N e w Yo r k : A. A. K n o p f. ( 山村宜子訳 (1994). オプティミストはなぜ成功するか. 講談社.) S h e l t o n, K. H., H a r o l d, G. T., G o e k e - M o r e y, G. T., & C u m m i n g s, E. M., ( ). C h i l d r e n s C o p i n g w i t h M a r i t a l C o n f l i c t : T h e R o l e o f C o n f l i c t E x p r e s s i o n a n d G e n d e r. S o c i a l D e v e l o p m e n t, 1 5 ( 2 ), S i f f e r t, A., & S c h w a r z, B. ( ). P a r e n t a l C o n f l i c t R e s o l u t i o n S t y l e s a n d C h i l d r e n ' s A d j u s t m e n t : C h i l d r e n ' s A p p r a i s a l s a n d E m o t i o n R e g u l a t i o n a s M e d i a t o r s. T h e J o u r n a l o f G e n e t i c P s y c h o l o g y : R e s e a r c h a n d T h e o r y o n H u m a n D e v e l o p m e n t, ( 1 ), 新川貴紀 ( ). 親子間の信頼感に関する尺度. 堀洋道監修櫻井茂男 松井豊 ( 編 ). 心理測定尺度集 Ⅳ, 家族と友人親子関係. サイエンス社. S t o c k e r, C. M., R i c h m o n d, M. K., L o w, S. M., A l e x a n d e r, E. K., & E l i a s, N. M. ( ). M a r i t a l C o n f l i c t a n d C h i l d r e n s A d j u s t m e n t : P a r e n t a l H o s t i l i t y a n d C h i l d r e n s I n t e r p r e t a t i o n s a s M e d i a t o r s. S o c i a l D e v e l o p m e n t, 1 2 ( 2 ), 菅原ますみ 八木下暁子 詫摩紀子 小泉知恵 瀬地山葉矢 菅原健介 北村俊則 ( 2002). 夫婦関係と児童期の子どもの抑うつ傾向との関連 家族機能及び両親の養育態度を媒介として. 教育心理学研究, 50( 2 ), 杉村和美 竹尾和子 山崎瑞紀 ( 2007). 青年 両親間の葛藤 182

192 調整過程に関する面接調査. 発達研究, 21, 孙云晓 ( 2009). 父教力度决定孩子高度 : 孙云晓谈父亲教育. 新世纪出版社. 鈴木伸一 嶋田洋徳 三浦正江 片柳弘司 右馬楚力也 坂野雄二 (1997). 新しい心理的ストレス反応尺度 ( S R S - 18) の開発と信頼性 妥当性の検討. 行動医学研究, 4( 1 ), 鈴山可奈子 徳田智代 ( 2009). 夫婦関係および家族システムの機能状態が青年期の不安に及ぼす影響. 家族心理学研究, 23( 1 ), 東海林麗香 ( 2009). 持続的関係における葛藤への意味づけの変化 : 新婚夫婦における反復的な夫婦間葛藤に焦点を当てて. 発達心理学研究, 20( 3 ), 東海林麗香 ( 2013). 夫婦間葛藤への解決に向けて. 家族心理学会 ( 編 ). 現代の結婚 離婚. 家族心理学年報, 31. 金子書房, pp Tr u b i s k y, P., T i n g - To o m e y, S., & L i n, S. ( ). T h e I n f l u e n c e of I n d i v i d u a l i s m - C o l l e c t i v i s m a n d S e l f - M o n i t o r i n g o n C o n f l i c t S t y l e s. I n t e r n a t i o n a l J o u r n a l o f I n t e r c u l t u r a l R e l a t i o n s, 1 5 ( 1 ), 涂翠平 方晓义 刘钊 ( 2008). 家庭环境类型与青少年亲子冲突解决的关系. 心理与行为研究, 6 ( 3 ), Tu r n e r, C. M., & B a r r e t t, P. M. ( ). A d o l e s c e n t A d j u s t m e n t t o P e r c e i v e d M a r i t a l C o n f l i c t. J o u r n a l o f C h i l d a n d F a m i l y S t u d i e s, 7 ( 4 ), 内田香奈子 貴志知恵子 山崎勝之 ( ). 高校生の感情表出によるストレス コーピングが抑うつに及ぼす影響. 学校保健研究, 53, 氏家達夫 二宮克美 五十嵐敦 井上裕光 山本ちか 島義弘 (2010). 夫婦関係が中学生の抑うつ症状におよぼす影 183

193 響 : 親行動媒介モデルと子どもの知覚媒介モデルの検討. 発達心理学研究, 21( 1 ), 宇都宮博 ( 2005). 女子青年における不安と両親の夫婦関係に関する認知 子どもの目に映る父親と母親の結婚生活コミットメント. 教育心理学研究, 53( 2 ), 宇都宮博 ( 2009). 青年によって語られる両親の結婚生活の質 両親間葛藤とコミットメントに着目して. 日本青年心理学会第 17 回大会発表論文集, 和田実 (2005). 男と女の対人心理学. 北大路書房. 若原まどか ( 2003). 青年が認識する親への愛情や尊敬と, 同一視及び充実感との関連. 発達心理学研究,14( 1 ), 若島孔文 花田里欧子 駒場優子 斉藤暢一郎 松崎裕康 小林智 宇佐美貴章 ( 2010). 家族構造が子どもの自己決定に与える影響に関する研究. 明治安田こころの健康財団研究助成論文集 ( 2010 年度 ), 46, 若島孔文 佐藤宏平 三澤文紀 ( 2002). 家族療法から短期療法, そして物語療法へ 家族療法の歴史と展開. 若島孔文 長谷川啓三 ( 編 ). 事例で学ぶ家族療法 短期療法 物語療法. 金子書房, pp 王明忠 范翠英 周宗奎 陈武 ( 2014). 父母冲突影响青少年抑郁和社交焦虑 基于认知 - 情境理论和情绪安全感理论. 心理学报, 46( 1 ), 武永新 邓林园 张馨月 孔荣 (2014). 父母冲突 亲子沟通对青少年自我发展的影响研究. 中国临床心理学杂志, 22( 6 ), 萧倩 李丹 (2010). 初中生对父母冲突的应对策略研究. 心理科学, 33( 6 ), Ya h o o! 知恵袋 ( ). DV 子ども, 夫婦関係 子ども, 夫婦仲 子ども, 夫婦げんか 子ども, 夫婦不仲 子ども. h t t p : / / c h i e b u k u r o. y a h o o. c o. j p /, 2015 年 7 月 12 日 19 時 184

194 30 分. 山本倫子 伊藤裕子 ( 2012). 青年期の子どもが認知した夫婦間葛藤と精神的健康との関連. 家族心理学研究, 26( 1 ), 山崎武彦 ( 2005). 青年期の不安の変化 : 12 年前との比較を通して. 盛岡大学紀要, 22, 杨阿丽 方晓义 ( 2010). 父母消极抚养方式与父母冲突和青少年社会适应的关系. 心理与行为研究,4( 4 ), 杨阿丽 方晓义 林丹华 ( 2010). 父母冲突 青少年应对策略及其与青少年社会适应的关系. 心理发展与教育,1, 杨阳 ( ). 亲子三角关系在初中生知觉父母婚姻冲突与心理健康间的中介作用. 河南大学硕士学位论文. 横山和仁 荒記俊一 ( 1994). 日本版 P O M S 手引き. 金子書房. 兪幜蘭 張新荷 浅井継悟 ( 2012). 夫婦の葛藤解決方略に関する研究 日中韓比較の視点から. 日本ブリーフセラピー協会第 4 回学術会議発表論文集, 4. 张锦涛 方晓义 戴丽琼 ( 2009 ). 夫妻沟通模式与婚姻质量的关系. 心理发展与教育, 25( 2 ), 張新荷 ( 2012). 両親の夫婦間葛藤に対する子どもの反応と親子関係との関連について 中国人中学生を対象に. 東北大学大学院教育学研究科臨床心理相談室紀要,10, 赵梅 莫忠健 ( 2006). 初中生对父母冲突的知觉结构分析. 心理科学, 29( 2 ), 郑全全 陈树林 郑胜圣 黄丽君 ( 2001). 中学生心理应激的初步研究. 心理科学, 24( 2 ),

195 付記 本論文の一部の研究は, 日本学術振興会科学研究費補助金 ( 特別研究員奨励費 ) の助成を受け実施した ( 課題番号 :15J04195, 研究代表者 : 張新荷, 助成期間 : 平成 27 年度 ~ 平成 28 年度, 研究題目 : 夫婦間葛藤が青年期の子どもの心理的適応に及ぼす影響に関する日中比較研究 ) なお, 以下に記載する公刊した論文を加筆, 修正, 改稿したものである 186

196 博士論文に該当する公表された論文との対応 第 1 章第 2 章第 3 章 研究 Ⅰ 両親の夫婦間葛藤に対する子どもの反応と親子関係との関連について 中国人中学生を対象に, 東北大学大学院教育学研究科臨床心理相談室紀要, 第 10 号, Comparative Study on Adolescents' Response to Parents' Marital Conflict in Japan and China. International Journal of B r i e f T h e r a p y a n d F a m i l y Science, 3(1), 第 4 章 研究 Ⅱ 夫婦間顕在的葛藤に対する青年期の子どもの反応に関する日中比較研究 認知 情動反応と行動反応の関連に注 目して, 東北大学大学院教育学研究科研究年報, 第 64 集第 2 号.( 掲載予定 ) 第 5 章 研究 Ⅲ 第 6 章 研究 Ⅳ 夫婦間葛藤に対する青年期の子どもの反応と心理的ストレス反応との関連 日本と中国の高校生を対象に, 東北大学大学院教育学研究科研究年報, 第 63 集第 2 号, 第 7 章 研究 Ⅴ 第 8 章 第 9 章 187

197 謝辞 本論文を書き終えるに当たり, はじめに, 貴重な時間を割いて調査に参加してくださった 名近い協力者に厚くお礼申し上げます 日本に来てから 6 年目になりました 2009 年 7 月 24 日, 現在の指導教員若島孔文先生からメールが届き, その内容は研究生として受け入れていただけるとのことです 年 10 月 8 日, 初めて若島研究室のゼミに参加し, 準備しておいた自己紹介を緊張しながら披露した様子が鮮明です 中国では, 千里の馬は常にあれども伯楽は常にはあらずという諺があります 自分が千里の馬ではないかもしれませんが, 若島先生は人生の機会をくださった伯楽に違いがありません 研究生からの 5 年間半, 若島先生に大変お世話になりました 研究の面において, 大学院に入ったばかりの時, 問題と目的を軽視して質問紙を焦って見出そうとする私に研究の基本を教えてくださったり, 実践につながるもっといい研究ができるようにゼミや博論検討会などで指導してくださったりしました 毎回の指導を通して研究を進める上で大事なヒントをいただいております 臨床活動では, 留学生として言葉が不自由で劣等感を抱いております しかし, 若島先生はいつも励ましてくださり, ケースの陪席や仮設住宅の心理支援, 高校のスクールカウンセラー, ブリーフセラピーのコンテストなどに関わらせていただき, かけがえのない貴重な体験でした 若島先生のおかげで, 私は自信を持って充実した留学生活を送ることができたと思います 副指導教員の加藤道代先生にも様々な場面でお世話になりました 加藤先生も夫婦と子どもの研究を進めていらっしゃるので, いつも腑に落ちる建設的なアドバイスをしてくださいます また, 修士の時, カンファレンスなどの授業についていけないことで加藤先生に相談したら, 資料の事前閲覧などいろいろと 188

198 工夫してくださいました 臨床や研究で挫折にあって不全感を感じた時, 温かく声を掛けていただき, 誠にありがとうございました 副査として博士論文の審査を行ってくださった長谷川啓三先生にも感謝いたします いつも長谷川先生に ジャンくん と呼ばれており, なぜか東北大の一員になっている気分になります また, 木ゼミで, 長谷川先生が昔担当された中国人夫婦のカウンセリング事例を挙げたり, 中国の事情を興味津々に聞いたり, 大きな視点から指摘したりしてくださることで, 発表の緊張感が緩和されます これから, 長谷川先生や若島先生などが広げられた家族療法やブリーフセラピーを積極的に中国に紹介しようと思っております また, 臨床心理研究コースの上埜高志先生, 安保英勇先生にも講義, 木ゼミをはじめ, 大変お世話になりました 授業の中, 自分の意見を日本語でうまく表せない時, いつも優しく励ましていただき, 心から感謝いたします 教授学習科学研究コースの深谷優子先生や岩手大学の朴賢淑先生にいろいろな面で支えていただき, 本当に心強いです 教育設計評価研究コースの柴山直先生に博論の分析で貴重な時間を割いていただき, 本当にありがとうございました 若島研究室の狐塚貴博さん ( 新作学院大学 ), 宇佐美貴章さん ( 仙台市スクールカウンセラー ), 浅井継悟さん ( 北海道教育大学 ), 小林智さん ( 東北大学大学院 ), 平泉拓さん ( 東北福祉大学 ), 森川夏乃さん ( 東北女子大学 ), 長谷川研究室の野口修司さん ( 石巻市役所 ), 板倉憲政さん ( 岐阜大学 ), 三道なぎささん ( 東北大学大学院 ), 安保研究室の佐藤修哉さん ( 東北大学大学院 ), 王暁さん ( 東北大学大学院 ) をはじめ, 多くの先輩, 後輩にもお世話になりました 特に, 三道なぎささんは, 博士論文完成を目指す仲間として, お互いに励まし合い, 年末年始も 189

199 一緒に頑張りました 本当にありがとうございました また, 学部時代の恩師である, 中国西南大学心理学部の湯永隆先生には臨床心理学の基礎を教えていただきました また日本への留学を勧めてくださったことで自分の世界が広がったと思います 誠にありがとうございました 同期の兪幜蘭さん ( 東北大学大学院 ), 竹ヶ原靖子さん ( 東北大学大学院 ), 一條玲香さん ( 東北大学大学院 ) をはじめ, 大学院の同期にお礼を申し上げます 博士論文の構想や投稿論文で苦悩する日々をともに過ごし, お互いに励まし合うことに感謝いたします 特に兪幜蘭さんは, ともに留学生であり, 学校でもプライベートでも深く関わり, 心の支えになる大事な存在です 本当にありがとうございました 論文作成にあたっては, 東北大学大学院の竹ヶ原靖子さん, 高木源さん, 清水優さん, 小林大介さん, 王丹妮さん, 東北大学の川原碧さんに丁寧な修正や的確なコメントをいただき, 大変助かりました それで博士論文の質がより良くなったと思います 厚くお礼を申し上げます いつも温かく見守ってくださっている親戚や親友にも感謝いたします 父方の祖父, 母方の祖母, 伯母, いとこなど親戚の皆さんに支えていただき, 遠く離れても大家族の絆を感じております また, 交換留学生の時期に出会った吉村昌子さん, 親友の浅沼千恵さん, 謝鴻飛さん, 徐冠男さん, 野平靖子さん, 山形千遥さん, 在日大韓基督教会仙台教会の皆様にも厚くお礼を申し上げます 最後に, 長年にわたり私を支えてくれた両親に格別の感謝を申し上げます 父張楓, 母谷虹には大変な心配をかけてきました 両親は日本語が読めないが, 自分の名前が娘の博士論文に載せてあることで喜ぶでしょう 論文作成のストレスを両親にぶつけたりしても, 温かく受け止めていただき, 本当にありが 190

200 とうございました 一人っ子の私を日本に送ることは大きな決断だったでしょう 本日は母親の誕生日です 日本に来てから 1 回もともに誕生日を過ごしたことがなくて申し訳ないです この博士論文を母親への誕生日プレゼントとして差し上げます 2016 年 1 月 12 日 張 新荷 191

201 資料 1 第 3 章 ( 研究 Ⅰ ), 第 4 章 ( 研究 Ⅱ ), 第 5 章 ( 研究 Ⅲ ) に用いた質問紙の日本語版 2 第 3 章 ( 研究 Ⅰ ), 第 4 章 ( 研究 Ⅱ ), 第 5 章 ( 研究 Ⅲ ) に用いた質問紙の中国語版 3 第 6 章 ( 研究 Ⅳ ), 第 7 章 ( 研究 Ⅴ ) に用いた質問紙の日本語版 4 第 6 章 ( 研究 Ⅳ ), 第 7 章 ( 研究 Ⅴ ) に用いた質問紙の中国語版 192

202 1 第 3 章 ( 研究 Ⅰ ), 第 4 章 ( 研究 Ⅱ ), 第 5 章 ( 研究 Ⅲ ) に用いた質問紙の日本語版 親の言い合いについてのイメージ調査 調査者 : 東北大学大学院教育学研究科 博士前期課程張新荷 准教授若島孔文 はじめに (1) このアンケートは, 皆さまが周囲の口論や言い合いについてどのようなイメージを抱いているか教えていただき, 毎日を心地よく過ごせるようにサポートすることを目的として実施されるものです アンケート用紙は表紙を含め 6 ページあり, 所要時間は約 10 分です (2) このアンケートへの回答は, 皆さまの自由な意思にもとづくものです 答えたくない, あるいは答えにくい方は無理に答える必要はありません また回答を途中でやめてもかまいません (3) このアンケートでは, 名前を書く必要はありません あなたの答えを学校の先生方やご家族, 知人等が見ることはありません あなた個人が特定されることは決してありませんので, 安心して自分の気持ちをありのままに答えてください 性別 : 男性 女性 年齢 : 歳 学年 : 高校年 1. あなたの家族構成について, 当てはまるもの全てに をつけて, 人数を記入してください 例 父 母 兄 (2) 人 姉 (1) 人 弟 ( ) 人 妹 ( ) 人 父方の祖父 父方の祖母 母方の祖父 母方の祖母 その他( ) 家族構成 : 父 母 兄 ( ) 人 姉 ( ) 人 弟 ( ) 人 妹 ( ) 人 父方の祖父 父方の祖母 母方の祖父 母方の祖母 その他( ) あなたと同居している家族 : 父 母 兄 ( ) 人 姉 ( ) 人 弟 ( ) 人 妹 ( ) 人 父方の祖父 父方の祖母 母方の祖父 母方の祖母 その他( ) 1

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