58 広島商船高等専門学校紀要第 40 号 (2018) ばな ) が訛ったもので, サンスクリット語の ullambana( 逆さまに吊るされた苦しみ ) を語源とするという説が定説となっている一方で, ゾロアスター教を信仰するイラン系民族であるソグド人の言葉で,uruvan( 死者の霊魂 )

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ありあはなだて
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1 57 大崎上島の盆踊りについて *1 木下恵介 A Study on Bon Dance at Osakikamijima Island Keisuke KINOSHITA This study is carried out the research about Bon event and Bon Dance at Osakikamijima Island. Especially, field study for Bon Dance is carried out by collaborators at Yayumi, Kinoe, and Harada. KEYWORDS:Bon Dance, Osakikamijima Island 1. はじめに大崎上島では, 毎年 8 月 15 日になると島内の各地区で盆踊りが催される筆者は, 数年前から矢弓区盆踊り保存会の一員となり, 音頭取りや太鼓の役割で盆踊りに参加しているそのような活動をしていく中で, そもそも盆とは何なのか, 他の地区ではどのように盆踊りが行われているのか, など, 盆にまつわる様々なことに興味を持つようになり, いくつかの調査を行なった本報告は, 盆についての筆者自身の勉強を兼ねた調査の結果をまとめたものである 2. 盆とは 2.1 盆の由来盆行事の由来は, 仏教の経典の一つである盂蘭盆経 1) の教えがもとになっている盂蘭盆経を要約すると, 次のようになるお釈迦様の弟子の目連は神通力を持っており, *1 商船学科世の中の様々なものを見通すことができたある時, 目連は亡くなった母が餓鬼道に堕ちて苦しんでいる様を見た目連は母に食べ物を与えようとするが, 母の口に入る前に食べ物は燃えてしまった目連は嘆き悲しみ, お釈迦様に救いを求めたお釈迦様は母の罪は重く, また目連は修行を始めて日が浅いので, 目連一人の力ではどうすることもできないしかし僧自恣の日 ( たくさんの僧が一堂に集まり自らの罪を懺悔する日で 7 月 15 日をさす ) にご馳走を用意して衆僧を供養すれば, 生みの父母だけでなく過去七世の父母までも救われるだろうと教えた目連は盂蘭盆の法会と称して 7 月 15 日に衆僧の供養を行なった目連の母はその功徳によって餓鬼の苦しみから救われたさらにお釈迦様は毎年 7 月 15 日には同じ法会を営み, 父母の恩に報いるようにと教えたそれ以降, 人々はその教えを実践するようになった盂蘭盆経の原型となるものがいつどこで撰述されたのかは, はっきりとは分かっていないが, 経典の内容として中国的色彩が強いことから, 中国で撰述されたものであるとされている 1) 盂蘭盆という言葉については, 烏藍婆拏 ( うらん平成 29 年 12 月 22 日受理

2 58 広島商船高等専門学校紀要第 40 号 (2018) ばな ) が訛ったもので, サンスクリット語の ullambana( 逆さまに吊るされた苦しみ ) を語源とするという説が定説となっている一方で, ゾロアスター教を信仰するイラン系民族であるソグド人の言葉で,uruvan( 死者の霊魂 ) を語源とするという説もある 1), 2) あるいは, 精霊への供物を載せる器を 2), 意味するという説 8) もあり, 盂蘭盆の語源については論争が絶えない盆という言葉は, 盂蘭盆経の中に登場する盂蘭盆の法会 ( 盂蘭盆会 ) が省略されたものであると考えられる盂蘭盆会は, 盂蘭盆経の教えのとおりに, 父母や祖先の霊を救うために, 毎年 7 月 15 日にご馳走を用意して衆僧を供養することであった日本においては, 日本書紀に 606 年から 7 月 15 日の法会が行なわれるようになったとの記述があり, さらに 657 年には盂蘭盆の会を設けきという言葉が見られることから, この頃に盂蘭盆会が成立したと考えられる 1), 2) 2.2 盆の時期盂蘭盆会は 7 月 15 日に行なわれるが, 旧暦 7 月 15 日 ( 旧盆 ) に合わせて行なわれる場合や,7 月 15 日 ( 新暦の盆 ) を中心として行なわれる場合,8 月 15 日 ( 月遅れ盆 ) を中心として行なわれる場合などがあり, 地域によって違いがある現在, 盆の時期としては,8 月 15 日の月遅れ盆に行なわれる地域が多い旧暦では 7 月 15 日に行なっていたが, これを新暦で行なおうとすると毎年日付が変わってしまうので, 新暦に合わせながらも利便性を考慮し, ちょうど 1 ヶ月ずらした 8 月 15 日を盆としていると考えられるまた, 盆とは 7 月 15 日あるいは 8 月 15 日の 1 日だけでなく, それを中心としたある一定の期間を言うことも多い 3. 盆踊り 3.1 盆踊りの由来盆踊りは, 老若男女が参加して盂蘭盆会に踊られ, あの世から精霊を迎え, また再び送り返すための踊りである盆踊りは, 空也や一遍によって庶民に広められた踊念仏から派生したとされ, 伊勢踊りや小町踊りなどの影響を受けて風流化していき, 室町時代から江戸時代にかけて全国に普及したと言われている 3) もともとは宗教儀礼のような意味合いが強かったと考えられるが, 次第に娯楽的な要素が強くなっていった室町時代から明治時代にかけて何度も禁止令が出される程 4) であったが, 盆踊りは現代に至るまで踊り継がれてきた近年は宗教的な意味合いが薄れた盆踊りも多いが, 全国各地で催される非常に大衆性の高い民俗芸能であると言える盆踊りは, 伝統系の盆踊りと, 戦後に発展した民謡踊りの 2 つに大きく分けることができる 3.2 伝統系の盆踊り伝統系の盆踊りは, 地域ごとの文化風習を反映し, 実に多様であり, 例えば徳島県の阿波踊りのように独自性の強いものも数多く存在するため, これらを一括りに論述することが難しいここでは伝統系の盆踊りについて一般的であるとされている事柄を述べる伝統系の盆踊りの唄には, 念仏や和讃を唱える地域もあるが, 口説 ( くどき ) が用いられる場合が多く見られる口説とは, ごく短い決まった節を繰り返しながら, 長い物語を唄うものであるその歌詞は, 五七五句, 七七七五句, 七七句, 七五句などの決まった音律数を反復して唄われる口説は, 庶民によって創作された, 農民の労働や恋愛を小唄としたものが原型とされ 5), その代表的なものとして江戸時代の民謡集山家鳥虫歌に収録された唄が挙げられる後に, 浄瑠璃を題材とした物語が全国的に普及し, 盆踊りに口説かれるようになった有名なものとして阿波の鳴門順礼くどき中将姫雪責めくどき鈴木主水白糸くどき八百屋お七小姓吉三くどき番町皿屋敷お菊怪談くどきなど 5) が挙げられる一方で, 柳田國男はクドクという日本語の起りはまだはっきりとしないが, 内容は何か大切な誰にも知らせて置きたい事実を, 記憶し易く又語り易い形で, 叙述することを意味したらしいとも述べている 5) このように, 実際に起きた記憶に留めておきたい出来事や, 地域の情景などを唄にしたものもある地震による災害の記憶として地震くどきが伝わる地域もある伝統系の盆踊りで使用される楽器については, 唄だけで楽器は使用しないもの, 唄に太鼓を加えたもの, 唄と太鼓に加え篠笛や鉦を使用するもの, 酒樽を主楽器とするものなど, 様々な形態 3) があり, いずれも基本的には生演奏である - 2 -

3 大崎上島の盆踊りについて ( 木下 ) 民謡踊り民謡踊りは, 大正から昭和初期にかけて日本中で流行した民謡曲を唄として踊られ始めたものである当時の有名な曲として炭坑節 ( 月が出た出た, 月が出た~) や, 東京音頭 ( 踊り踊るならチョイと東京音頭 ~) が挙げられるこれらはレコードを音源として盆踊りで活用され, 全国に普及していった現在でもアラレちゃん音頭やおそ松くん音頭など, 新しい曲が作られ続け,CD を音源とした盆踊りが全国各地で行なわれているさらに愛知県と岐阜県の一部の地域では, 荻野目洋子のダンシングヒーローなどの最近の J-POP によって盆踊りが踊られ, たいへん盛り上がっている民謡踊りは, 盆踊りの宗教的な意味合いは薄まり, 地域交流のための催し物といった傾向が強いが掛けられ, 周囲には提灯が飾られるヤグラの上には盆踊りの拍子を取るための太鼓が置かれる大崎上島の盆踊りで使用される楽器は太鼓のみで, 盆踊りは音頭取りの口説きと太鼓の生演奏によって進行する口説きを行なう音頭取りが 1 名から 2 名, 太鼓が 1 名から 2 名, これらの役を何人かで交代しながら行なう音頭取りは, かつては傘をさしながら口説いていたようである傘をさすのは声が散らないためとも, 仏のよりましの意味とも言うが 6), 現在では見られない口説きは肉声のみではなく, マイクを通して行なわれる踊り子はヤグラの周りを輪になって踊る踊りの歩みの方向は, ヤグラを中心とする時計回りである踊り方にも様々な型があったとされるが, 明治期や第二次大戦中に盆踊りが禁止となる度にその姿は変わっていったと言われている 4. 大崎上島の盆踊り 4.3 大崎上島の盆踊り唄 4.1 大崎上島の盆踊りの一般大崎上島の盆踊りは, 伝統系の盆踊りである盆踊りは地区ごとに行なわれる島内の多くの地区では, 月遅れ盆である 8 月 15 日に盆踊りが催される盆踊りの会場には祭壇が置かれ, 初盆を迎える方々の遺影が置かれるまた祭壇には果物などの供物も並べられ, 供養が行なわれるそのため, 盆踊りの目的として, 御霊を供養するためのものであることがはっきりとしている初盆を迎える方がいなかった場合 ( 亡くなった方がいなかった場合 ) には, 盆踊りを行なわないとする地区と, 盆踊りの保存活動のために毎年行なうとする地区があるまた初盆を迎える方がいる場合でも, その家族が盆踊りでの供養を辞退する場合もある金銭的な理由であったり, あるいは遠慮をしてしまうようなこともあると思われる初盆を迎える方の供養のための盆踊りであることがはっきりしている分, その家族が気を遣うことも多いようである 4.2 大崎上島の盆踊りの形態盆踊りの場所は, 各地区の集会所や公園, 駐車場などの広場で行なわれる広場の中心にはヤグラが組まれるヤグラはそれぞれの地区の住民による手作りの物がよく見られるが, 組み立て式の足場材を使用している地区もあるヤグラには紅白の垂れ幕大崎上島の盆踊りでは口説きが唄われる口説きとは, 決まった節を繰り返しながら物語を唄うものである大崎上島の場合は, 七七句が繰返される口説きである次に示すのは, 島内で口説かれる阿波の鳴門巡礼くどき 7) の一節であるここに憐れな巡礼口説き ( ヨイヨーイヨヤサノサー ) どこ国は何処よと尋ねて聞けばとくしままち阿波の鳴門の徳島町よ ( ヤーットセーヤーットセサッサヨヤサノサー ) このように七七句を 3 つ合わせたものを 1 節として, 長い物語が構成される ( ) 内は合いの手である合いの手は踊り子が入れるものとされるが, 実際には太鼓打ちが合いの手を入れたり, 合いの手を入れる役の音頭取りが別にいる場合もある口説きは, もともとは口伝や手書きの資料によって受け継がれてきたと考えられるが, 宮本博氏の手によって, これらがまとめられ, 盆踊り音頭本 7) として発行されているこの本には, 多くの口説きが掲載されているが, 一度の盆踊りで口説かれるのは, 時間の都合上,2 つか 3 つくらいであると思われるかつては, 盆踊りは一晩中踊られ, 時には即 - 3 -

4 60 広島商船高等専門学校紀要第 40 号 (2018) 興で口説きが作られることもあったと言う現在, 口説かれる物語の内容は幾つかあるが, 大きく分けると, 浄瑠璃など既存の物語に由来するもの, 大崎上島の伝承, 手拭い踊り, 音頭の引継ぎ切り替えの 4 つの種類がある既存の物語に由来する口説き浄瑠璃や歌舞伎など江戸時代に流行した物語を題材とした口説きである代表的なものに阿波の鳴門巡礼くどき 7) がある阿波の鳴門巡礼くどきは, 江戸時代に近松半二によって作られた浄瑠璃で傾城阿波の鳴門という阿波藩のお家騒動を題材にした長い物語の一部分であるそれを要約すると次のようになる阿波藩の藩主である玉木家にお家騒動が起こったそのさなか, 玉木家の家宝である刀が何者かに盗まれてしまった玉木家の家臣であった十郎兵衛は, 盗まれた刀を探すために盗賊に身分を変え, 妻のお弓とともに大阪の玉造で暮らすことになった十郎兵衛とお弓には, お鶴という幼い娘がいたが, 盗賊を名乗る以上, 一緒に暮らすことはできないので, 国もとに置いてきていたそれから七年が経ち, 十歳になったお鶴は両親に会うために, 西国三十三霊場の巡礼者となって旅に出たある時, お弓のもとへ巡礼者が訪れたお弓は巡礼者の話を聞いているうちに, その巡礼者が自分の娘のお鶴であると確信したお鶴は, 幼い頃に両親と別れているので, 両親の顔は覚えていないが, お弓をまるで本当の母親のようだと言い, そばに置いて欲しいと言ったしかしお弓は, 今は盗賊をしているので, 母親だと名乗りたくても名乗ることは出来ず, お鶴に国へ帰るように言い, 路銀だけを渡して追い返すことしか出来なかった一方, 十郎兵衛はお金の工面のために巡礼者を殺してしまった殺した巡礼者の懐に手を入れると, お弓がお鶴に渡したお金と, 探していた刀の在り処が書かれた書状が出てきた十郎兵衛は, 殺した巡礼者が自分の娘のお鶴だったことに気付き, お弓とともに途方に暮れたこうして十郎兵衛とお弓は, 娘のお鶴の死と引き換えに, 刀を見つけて阿波に戻った阿波の鳴門巡礼くどきはこのような悲話であるが, これ以外にも男女の心中ものなど, 悲しい物語が口説きの題材になっているものが多い 6) これは, 盆の供養に臨む人々の気持ちの現れではないかと思われる大崎上島の伝承の口説き浄瑠璃などの既存の物語を題材としたものとは別に, 大崎上島のオリジナルの口説きもいくつかあるその一つに紫雲丸遭難くどき 7) があるこれは紫雲丸遭難事故により, 島内の木江町立南小学校の児童と教員の合わせて 25 名が犠牲となった事実をもとに作られたものであるこれはまさに, 柳田國男の口説きに対する解釈である何か大切な誰にも知らせて置きたい事実を, 記憶し易く又語り易い形で, 叙述することに当てはまる口説きは紫雲丸遭難事故の顛末がそのまま語られる内容であるが, 非常に悲しい話であるその最後の一節を次に紹介する紫雲丸なる遭難くどき愛と涙で筆とめまする愛と涙で筆とめまする他にも, 地域の歴史や風景などを題材にした詩でつづる東野町史や大崎口説など 7), 大崎上島のオリジナルの口説きが作られている手拭い踊り手拭い踊り 7) は, 盆踊りの最後に踊られる盆踊りが終盤に差し掛かると, 踊り子に手拭いが配られるこの手拭いを用いて踊るため, 踊り方も独特である口説きの内容も, 御霊があの世に帰っていく様を唄ったものとなっている大崎上島の盆踊りの口説きは, 七七句を 3 つ合わせたものを 1 節として構成されるが, 手拭い踊りだけは七七句を 2 つ合わせて 1 節として構成されるまた, 口説きのリズムや合いの手の入れ方も異なる手拭い踊りの一節を次に紹介する ( ) 内は合いの手であるもはやみほとけ最早御仏の御出発おたちの時刻 ( ドッコイショ ) ひがんじょうど彼岸浄土へ旅立ち姿 ( ヤサエーンエーンヤートナ ) - 4 -

5 大崎上島の盆踊りについて ( 木下 ) 音頭の引継ぎ切り替え口説きを行なう音頭取りが他の人と交代するときには, 急に交代するのではなく, 音頭の引継ぎのための短い口説き 7) を経て交代となるその一節を次に紹介する声がしおれて音頭にゃならぬどなたここら辺りで何方か誰か音頭の代わりをお願いまするまた, 手拭い踊りが始まるときには, それを知らせるために音頭の切り替えとして短い口説き 7) が入るその一節を次に紹介するそこさん其処で若い衆よ相談が御座る相談いうのは他ではないがここらサ辺りで手拭い踊り 4.4 矢弓区の盆踊り ( 東野地区の一例 ) 筆者は, 数年前から矢弓区の盆踊り保存会の一員となり, 盆踊りに参加している盆踊りの準備や片付け, 盆踊りにおいては, 音頭取りと太鼓を交代で行なっている矢弓区の盆踊りは毎年 8 月 15 日に行なわれるヤグラなどの準備は当日の朝に行なわれ, 盆踊りは 19:30 から 21:00 頃まで,1 時間半程度行なわれる矢弓区の盆踊りで口説かれるのは阿波の鳴門巡礼くどきと手拭い踊りである阿波の鳴門巡礼くどきは一通り口説くと 40 分程度, 手拭い踊りは 20 分程度かかることを考慮して, 阿波の鳴門巡礼くどきを 1 回口説いた後, 手拭い踊りを 2 回口説き, 盆踊りを終了する流れとしているヤグラや提灯など準備したものは, 盆踊り終了後の当日に全て片付けられる盆踊り保存会のメンバーは 10 名程度である毎年 6 月の下旬から盆踊りの練習が始まり, 盆踊り当日の 8 月 15 日までの間, 毎週土曜日に 2 時間程度, 地区の集会所で練習している練習は 19:00 頃から始まるが, 練習で太鼓を叩くので, 夜間に近所への迷惑とならないよう,21:00 頃には練習を終えるようにしている練習の内容は, 口説きを唄う音頭取りと, 太鼓である練習においても, 阿波の鳴門巡礼くどきと手拭い踊りが口説かれるが, それ以外にも盆踊り音頭本を見ながらその時に口説きたいものを口説いたりする紫雲丸遭難くどきや詩でつづる東野町史などがよく口説かれる盆踊りは, 盆踊り保存会と, 当日のお世話役の婦人会とで運営される踊り子は誰が参加しても良いが, 参加者は少ないように思う初盆を迎える方の家族は, 踊り子として参加する盆踊りの興が乗ってくると, 祭壇の遺影を持ち出し, 家族が抱えて一緒に踊る生者と死者が盆踊りの中で一体となる光景である 4.5 木江地区の盆踊り ( 木江地区の一例 ) 木江地区の盆踊りは毎年 8 月 15 日に行なわれる矢弓区と同じ日に行なわれるため, 筆者は参加することが出来ず, 協力者に動画を撮影して頂くことで調査を行なった木江地区では, 宇浜, 郷, 天満, 野賀といった近隣の複数の地区が合同となり, 盆踊りが行なわれているようである撮影された動画によると, 盆踊りでは阿波の鳴門巡礼くどきが口説かれていることが確認できた歌詞も全く同じものであるが, 口説きや合いの手の音程は, 矢弓区とは少し違うようであるただし音頭取りの個性によっても, こういった違いは生じるものと思われる木江地区の盆踊りの最大の特徴は, 遺影を家族が背負って踊るということである遺影は, 背負うのにちょうど良い大きさの箱に収められる箱の内側は小さな祭壇のようになっており, 花が供えられ, 蝋燭が灯されるまた箱には背負うための紐が取り付けられており, リュックのように背負うことができるこの遺影は家族どうしで代わる代わる交代しながら背負われる遺影を背負うことで, 家族は様々に特別な思いを抱くのだとも言われている遺影を背負って踊るという風習は, 全国的にも珍しいものとされる矢弓区において遺影を持ち出して一緒に踊ることと, 根本は同じように思われるまた遺影ではなく, 位牌を背負って踊る風習は瀬戸内海一帯の島嶼部において確認されている 8) 4.6 原田区の盆踊り ( 大崎地区の一例 ) 原田区の盆踊りは毎年 8 月 15 日に行なわれる木江地区と同様に, 矢弓区と同じ日に行なわれるため, 筆者は参加することが出来ず, 協力者に動画を撮影して頂くことで調査を行なった - 5 -

62 広島商船高等専門学校紀要撮影された動画によると盆踊りでは鈴木主水白糸くどき 7)と大崎口説 7)が口説かれていることが確認できた鈴木主水白糸くどきも阿波の鳴門巡礼くどきと同じように全国的によく知られている盆踊りの口説きである鈴木主水という侍と遊女の白糸が心中するという物語で江戸時代に隅田川対高賀紋という歌舞伎として上演された

この理由として踊りが上手い人には景品が進呈されるため日頃から踊りの練習をする人が多いという話であった小さな子供でも上手に踊っている様子が確認できたさらに盆踊りに合わせてビンゴ大会も開催されるなど人を集めるための工夫がなされているようであった第40号 2018 図 1 矢弓区の盆踊り４７島外の盆踊り鞆の浦の例ここで広島県福山市の鞆の浦の盆踊りの口説き

6 62 広島商船高等専門学校紀要撮影された動画によると盆踊りでは鈴木主水白糸くどき 7)と大崎口説 7)が口説かれていることが確認できた鈴木主水白糸くどきも阿波の鳴門巡礼くどきと同じように全国的によく知られている盆踊りの口説きである鈴木主水という侍と遊女の白糸が心中するという物語で江戸時代に隅田川対高賀紋という歌舞伎として上演されたまた原田区は旧大崎町に属するということもあり大崎上島のオリジナルの口説きである大崎口説も口説かれていた大崎口説は神の峰のことや神の峰から見下ろした景色大崎地区に暮らす人々の人柄などが唄になっている口説きの音程や合いの手の言葉などは他の地区とは少し違うようである原田区の盆踊りの特徴としてはまず他の地区と比べて踊り子が多いことまた踊りが上手なことが挙げられるこの理由として踊りが上手い人には景品が進呈されるため日頃から踊りの練習をする人が多いという話であった小さな子供でも上手に踊っている様子が確認できたさらに盆踊りに合わせてビンゴ大会も開催されるなど人を集めるための工夫がなされているようであった第40号 2018 図 1 矢弓区の盆踊り４７島外の盆踊り鞆の浦の例ここで広島県福山市の鞆の浦の盆踊りの口説きについても紹介しておきたい口説きの内容は鞆の浦のオリジナルのものもあるがやはり浄瑠璃などの既存の物語を題材としたものが多いようであるその中で特筆すべきなのは巡礼お鶴の口説であるこれは大崎上島での阿波の鳴門巡礼くどきと同じ物語である鞆の浦においても盆踊りの口説きは七七句の繰り返しであるが巡礼お鶴の口説だけは七七句ではなく七五句の繰り返しで口説かれているさらに興味深い点としてはこの物語はお鶴の死という悲劇で終わるが鞆の浦の巡礼お鶴の口説は最後はお鶴と両親とが巡り会い末永く幸せに暮らすというハッピーエンドに書き換えられていることであるもともとの物語があまりにも悲しすぎる話であるために書き換えられたものと考えられその土地の人々の気質がうかがえると言える図 2 木江地区の盆踊り図 3 原田区の盆踊り -6-

7 大崎上島の盆踊りについて ( 木下 ) おわりに数多くの口説きがある中で, なぜ阿波の鳴門巡礼くどきが好んで口説かれるのかあるいは鞆の浦の例のように物語の内容を書き換えて口説くこともあるこれらのことは, 地域で盆踊りが伝承される中で, その土地に暮らす人々の気質と相まって, 盆踊りが地域に馴染んでいく中で現在の形になっていったのだと考えられる筆者は大崎上島の生まれではないが, 筆者の地元にも盆踊りというものは存在していたしかしそこでの盆踊りと言えば, 民謡踊りのことであり, そこに御霊の供養という雰囲気は無く, 夏の楽しいイベントの一つでしかなかったように思う大崎上島で初めて盆踊りに参加したとき, 遺影を抱えて踊る家族の様子を見て, 感動したことを覚えているその後, 地域の方に声を掛けて頂き, 盆踊り保存会に参加することになった盆踊りの当事者となることで, あらためて盆行事自体に興味が沸いたまた他の地区ではどのように盆踊りが行なわれているのか, 多くは同じ日 (8 月 15 日 ) にそれぞれの地区で行なわれるので, それぞれの地区で盆踊りが受け継がれていく中で, それぞれが独自の進化をしているのではないか, などと考え, 協力者に調査をお願いしたこれらのことを自分なりにまとめたものを本紀要に掲載した盆行事について調査をしてみると, 多くの先達によって様々な研究がなされており, 非常に奥が深いテーマであることが分かった全てを網羅して調査できてはいないため, 本報告を読まれた方で, もし誤りや不十分な点などを見つけられたときには, 筆者にご教示頂ければ幸いであるまた, 島内の他の地区の盆踊りの情報をお持ちの方で, 教えてやっても良いという方がいれば, 筆者まで一報を頂ければ幸いである大崎上島の盆踊りが末永く後世に受け継がれていくことを祈り, 本報告の結びとする参考文献 1) 藤井正雄 : 盂蘭盆経, 講談社 (2002) 2) 新谷尚紀ほか : 暮らしの中の民俗学 2, 吉川弘文館 (2003) 3) 通堂國廣 : 鞆の盆踊り唄, 鞆の魅力創出委員会 (2010) 4) 湘南盆踊り研究会 : 盆踊りの世界, 5) 五来重 : 踊り念仏, 平凡社 (1988) 6) 馬場宏 : 移りゆくときふるさと東野シリーズ7, 聖恵授産所 (2007) 7) 宮本博 : 盆踊り音頭本第三版, 宮本印刷 (2009) 8) 溝渕茂樹 : 中部瀬戸内位牌を背負う盆踊りの覚え書き, 瀬戸内海歴史民俗資料館紀要第 18 号, 瀬戸内海歴史民俗資料館 (2005) 9) 柳田國男 : 柳田國男全集 15, 筑摩書房 (1998) 謝辞木江地区の盆踊りの調査を引き受けてくれた大崎上島町教育委員会の御堂渓さん, 原田区の盆踊りの調査を引き受けてくれた本校 1 年 2 組の横山夏樹さん, そしていつもお世話になっている矢弓区の盆踊り保存会の皆様に, 御礼を申し上げます - 7 -

HからのつながりH J Hでは欧米という言葉が二回も出てきた Jではヨーロッパのことが書いてあったので Hにつながる内開き外開き内開きのドアというのが前の問題になっているから Hで欧米は内に開くと説明しているのに Jで内開きのドアのよさを説明 Hに続いて内開きのドアのよさを説明している

HからのつながりH J Hでは欧米という言葉が二回も出てきた Jではヨーロッパのことが書いてあったので Hにつながる内開き外開き内開きのドアというのが前の問題になっているから Hで欧米は内に開くと説明しているのに Jで内開きのドアのよさを説明 Hに続いて内開きのドアのよさを説明している段落の最初の接続のことば1 だからそれでそこでするとしたがってゆえに順接これがあったら前を受けて順当な結果が次に来るだから前を受けて順当な結果かどうかを確かめればよい段落の最初の指示語資料 8 これそれあれなどの指示語があったら前で指している内容を指示語のところに当てはめてみよう ( 代入法 ) あてはまるようならば (= 後ろに自然な形で続いていれば ) そのつながりでよい