那覇市　O157散発事例（観光客）

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しほこにばし
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1 観光施設で発生したさとうきびジュースを原因とする EHEC O157 の広域食中毒事例沖縄県衛生環境研究所衛生生物班久髙潤平成 29 国立感染症研究所

2 腸管出血性大腸菌感染症 (EHEC) EHEC(Vero 毒素を保有する大腸菌 ) の感染によって起こる急性胃腸炎または全身性疾病潜伏期は 2~7 日 ( 中央値 3-5 日 ) 主症状は腹痛水様性下痢および血便嘔吐や 38 台の高熱を伴うこともある毒素の作用により血小板減少溶血性貧血急性腎不全をきたし溶血性尿毒症症候群 (HUS) を引き起こし小児や高齢者では脳症などを併発して死に至ることがある HUS を発症した患者の致命率は 1 5% EHEC は少量の菌数 (10~100 個程度 ) でも感染が成立し人から人への経路または人から食材食品への経路で感染が拡大しやすい

3 報告の内容 2016 年 7 月 20 日 ~8 月 9 日にかけて沖縄を訪れた観光客 35 名が O157 に感染し胃腸炎を発症 18 名が入院 4 名が HUS を発症した原因食品は観光施設で販売された間食のさとうきびジュースであったことに加え 17 自治体にまたがり調査が困難であった食品や従業員などから菌は証明できなかったものの 3 食以外の追加調査と各自治体の連携により原因施設および原因食品を特定できた

4 その後おさまったように思われたが 2016 年 8 月 1 日 ~4 日探知および初動の対応沖縄県外の 5 自治体から沖縄旅行歴のある方が O157VT2 発症している旨の報告が沖縄県と那覇市にあった北部中部南部及び那覇保健所が利用施設等の調査 5 事例に共通した食事や飲食店宿泊施設の利用無し利用した宿泊施設飲食店に同様の苦情無し発生時期が集中し通常とは異なる発生状況と判断できるが各自治体の調査から共通点は見いだせず関係各県の衛研へメールで IS-Printing の情報提供依頼

5 第 1 報探知から半月後に第 2 波が 8 月 15 日那覇市立病院より HUS 疑い例 ( 旅行者 ) の報告 8 月 17 日 ~23 日他県より同様の調査依頼が相次ぐ ( 中略 ) 8 月 23 日時点計 13 自治体より調査依頼または情報提供あり

6 調査途中経過のまとめ (8 月 23 日時点 ) 自治体数 :13 訪問期間 :7 月 20 日 ~8 月 9 日発症期間 : 第 1 波 :7 月 25 日 ~7 月 28 日第 2 波 :8 月 6 日 ~8 月 9 日患者数 :24 名喫食者数 :50 名 ( 患者及びその家族の人数 ) 食事に利用した施設数 ( 延べ ):88 施設食事のメニュー :109 品

7 各自治体が行った調査票から見えてきた共通施設及び共通食 (13 自治体が利用した延べ 88 施設 109 食事の共通点 ) A 観光施設さとうきびジュース自治体 A 観光施設訪問日食事 A 市 8 月 2 日さとうきびジュースソフトクリーム B 県 8 月 2 日マンゴーかき氷ヤシの実ジュース C 市 8 月 4 日さとうきびジュース D 市 8 月 2 日さとうきびジュース E 自治体 8 月 3 日さとうきびジュースヤシの実ジュース 8 月 5 日サーターアンダギー F 県 ( 疑 ) 8 月 2 日さとうきびジュース 8 月 2 日ソフトクリーム G 県 ( 疑 ) 8 月 3 日さとうきびジュース?

8 (O157 遺伝子解析 )IS-Printing の結果 1 st primer set 2 nd primer set eae hly A Stx.2 Stx

16 16 1 3 5 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18

9 IS-Printing の結果事例は同一クローン 2016/8/16 沖縄 A 市 B 市 C 県

10 合同対策会議日時 :8 月 23 日場所 : 沖縄県庁参加者 ( 県 ) 保健医療統括監生活衛生課健康長寿課南部保健所衛生環境研究所 ( 市 ) 那覇市保健所 ( 生活衛生課保健総務課 )

11 今後の調査方針さとうきびジュースに関する追加調査調査担当調査対象調査内容生活衛生課健康長寿課関係する 13 自治体 ( 8 月 25 日保衛第 611 号 ) 各都道府県市特別区あて (8 月 25 日保健第号 ) 沖縄県生活衛生課南部保健所 A 観光施設の B フルーツバー (8 月 23 日 ) B フルーツバー利用さとうきびジュースの喫食の有無沖縄関連 O157 の 1 感染症患者票の提供 2IS- Printing 情報提供の可否従業員検便原材料さとうきびジュース調理場圧搾機拭取り機械洗浄指示衛生環境研究所各自治体の担当者から IS-Printing の結果を入手解析検便食品等の O157 検査那覇市保健所患者情報の取り纏め及び疫学調査解析等

12 A 観光施設 (B フルーツバー ) 追加調査内容保衛第 611 号平成 28 年 8 月 25 日 ( 沖縄県生活衛生課 ) 観光施設 A 観光施設 A フルーツハー B

13 健康長寿課全国の衛生主管課長あて IS-Printing 結果の提供依頼

14 別紙様式腸管出血性大腸菌感染症による患者由来分離菌株等の提供について菌株等の提供 : 可 IS-printing の結果のみ可不可菌株等を提供可能な自治体につきましては手続きについて本県衛生環境研究所の感染症担当者より連絡をさせていただきますのでご担当者様をご教示下さい担当者氏名所属所属住所所属電話番号所属 FAX 番号メールアドレス

15 沖縄衛研から各自治体の衛研へ IS-Printing 情報提供依頼各自治体からの文書の回答を受け沖縄衛研から各自治体の担当者へメールで連絡 IS-Printing の結果と電気泳動の写真の提供または菌株の提供依頼または感染研へ MLVA 解析提出依頼

16 厚労省から各自治体へ速やかな調査を指示し感染研の MLVA 調査を後押し

17 疫学調査の症例定義 2016 年 7 月 20 日 ~8 月 23 日まで沖縄県内在住者または県外在住で沖縄旅行歴のある者で以下を満たしたもの (* 消化器症状 : 下痢血便腹痛嘔吐 ) 確定例 : 少なくとも一つの消化器症状 * を呈しかつ便の培養検査で EHEC O157VT2 が陽性となった者または抗 O157 抗体陽性者疑い例 : 確定例の旅行同行者または接触者で少なくとも一つの消化器症状 * を呈した者 ( ただし便の培養検査で O157VT2 が陽性となった者を除く ) 保菌例 ( 無症状病原体保有者 ): 確定例の旅行同行者または接触者で無症状かつ便の培養検査で O157VT2 が陽性となった者仮説 : 沖縄滞在中に観光施設 A を訪問しフルーツバー B で飲んださとうきびジュースが原因食品

18 事例の規模まとめ (8 月 30 日現在 ) 事例 ( グループ ) 数 : 自治体数 : 18 グループ 17 自治体症例数 ( 発症率 ) : 35 名 * 確定例 ( 症状 + 菌 +) 25 名疑い例 ( 症状 + 菌ー) 4 名保菌例 ( 症状 - 菌 +) 6 名 * 全て県外からの旅行者

19 症状臨床症状と HUS の症例合併症下痢血便腹痛嘔吐発熱 HUS 脳症腸重積死亡入院人数 % 備考性差なし ( 男性 45%) 年齢 :1-78 歳 ( 中央値 11 歳 ) HUS を発症した症例症例旅行期間 ( 日数 ) 年 / 性備考 1 8/M 家族 5 人 25 日に発症兄弟 2 名が 7 月 21 日 ~27 日 HUS 34 歳母 ( 無症状 ) および1 歳弟 2 (7) 4/F ( 軟便 ) からも菌検出 3 8 月 2 日 ~5 日 (4) 6/F 家族 3 名 6 日発症 4 8 月 1 日 ~9 日 (9) 16/F 家族 4 日 9 日発症 ( 確定例疑い例 n=29)

20 7 月 21 日 7 月 22 日 7 月 23 日 7 月 24 日 7 月 25 日 7 月 26 日 7 月 27 日 7 月 28 日 7 月 29 日 7 月 30 日 7 月 31 日 8 月 1 日 8 月 2 日 8 月 3 日 8 月 4 日 8 月 5 日 8 月 6 日 8 月 7 日 8 月 8 日 8 月 9 日 8 月 10 日 8 月 11 日 8 月 12 日 8 月 13 日 8 月 14 日 8 月 15 日 8 月 16 日有症者の発生状況 ( 発症日 ) 2016 年 7 月 20 日 ~8 月 23 日, n=26* 4 3 疑い例 (n=2) (* 発症日不明の疑い例 2 例除く ) 確定例 (n=24) 患者数 2 1 0

21 症例の観光施設訪問歴とさとうきびジュース摂食歴全症例 ;n=18 事例 35 名ありなし不明 A 観光施設訪問歴さとうきびジュース喫食歴 (32 例全て A 観光施設で摂取 ) 18 グループ 35 名 (100%) 18 グループ 32 名 (91.4%) 0 0 2* 1 35 例全例で A 観光施設の訪問歴ありさとうきびジュース摂取歴なしで発症した 2 例は家族からの二次感染疑い ( 自治体調査より ) *2 例とも同居患者からの二次感染サトウキビジュースが感染源 ( 食中毒 ) の可能性

22 各事例の旅行期間とさとうきびジュース摂食及び発症日自治体 7 月 8 月発症 / 喫食 20 日 21 日 22 日 23 日 24 日 25 日 26 日 27 日 28 日 29 日 30 日 31 日 1 日 2 日 3 日 4 日 5 日 6 日 7 日 8 日 9 日 1 1/3 名 2 3/5 名 3 3/6 名 4 1/4 名 5 1/4 名 6 1/3 名 7 3/4 名 8 1/4 名 9 1/3 名 10 3/5 名キビ J キビ J キビ J キビ J キビ J 3 日 5 日発症発症 2 日発症 3 日発症 5 日発症発症 2016/8/30 #VALUE! 潜伏期間 :2~7 日 ( 平均 4.2 日 ) 現在キビ J キビ J キビ J キビ J 4 日発症 5 日発症キビ J 4 日発症 2 日発症 4 日発症 11 3 日 4 日 5 日 6 日 2/4 名キビ J 6 日発症 12 1 日 2 日 3 日 4 日 5 日 6 日 7 日 8 日 9 日日 31 日 1 日 2 日 3 日 4 日旅行期間サトウキビ J キビ J キビ J 7 日発症 4 日発症

23 症例対象研究曝露 = さとうきびジュース症例 =32 例 ( 曝露歴不明 1 例及び自治体の調査により二次感染と判断された 2 例を除く ) 対照 =38 例 ( 曝露歴不明の 1 例を除く ) さとうきびジュース症例対照合計飲んだ飲まない合計 SAS で計算した結果はオッズ比が 24.69(95% 信頼区間 : ) exact logistic regression analysis OR=19.8

24 さとうきびジュース摂食歴と IS printing/mlva 結果 13 事例 19 症例から IS 又は MLVA の解析情報を得た IS-Printing 又は MLVAComplex 一致不一致さとうきびジュース暴露あり 13 事例 (19 名 ) なし * 暴露歴不明の 1 名を除く

25 施設の調査での問題点営業許可に必要な条件は満たしている施設は裏の厨房と表の3つのブースで構成厨房及び中央のブースのみに手洗い設置さとうきびブースに手洗い無し各ブースに網戸はあるが開けっ放し害虫の侵入圧搾機の分解洗浄は月に1 回程度機械に付着した糖分で菌が増殖従業員の健康状態は良好であったが健康チェックなし

26 製造工程と問題点農家よりさとうきびを仕入れる鎌で長めにカットし冷蔵庫で保管注文に応じ冷蔵庫から取り出しさらに鎌でカットし流水で洗浄刃物の洗浄不十分? 皮のまま圧搾機で絞る ( 蛇口からジュース ) 使い捨て手袋を使用せず素手で取扱原材料の洗浄不十分氷を入れて提供 ( シークァーサーを搾って入れることもある )

27 O157 検査結果従業員の検便 :13 名全員陰性さとうきび表面拭き取り ( 複数個所 ): 陰性さとうきびジュース絞りかす : 陰性その他 ( ヤシの実ジュース等 ): 陰性さとうきび圧搾機拭き取り (4 検体 ): 陰性施設 ( 冷蔵庫トイレ等 6 か所 ): 陰性

28 患者分離 O157 株解析 (IS-p) IS-Printing 系統樹県内で発生した O157 VT2 株との比較 7 月 11 日沖縄県内の患者さとうきびジュース関連病原性解析 Stx. 2a, Stx.2c 国立感染症研究所の結果 :MLVA comprex 16c027, Clade 8

29 課題 ( 施設 ) ブースに手洗い施設を設ける手洗いトイレには石鹸エアータオルアルコールを備え付ける網戸は空け放しにしないさとうきびは仕入れ後十分洗浄し清浄な刃物でカットするその後ビニール袋などへ小分けし冷蔵保存圧搾前の手洗い消毒圧搾の際は使い捨て手袋を使用し毎回交換する作業終了後圧搾機は十分洗浄消毒する

30 まとめ 1 原因食品は主 3 食以外のさとうきびジュース ( 間食 ) であったため調査当所 ( 第 1 波 ) において通常の調査票では共通食が判明できなかった当該患者らは県外 13 自治体から訪れた 17 グループの個人旅行客であり食中毒疑いかつ 3 類感染症であったため多くの自治体及び部所が関係したまた患者らは沖縄本島全域を旅行し喫食施設も本島内の全 4 保健所 ( 那覇市及び県立 3 か所 ) 管轄区域に及んでいたため情報の収集調査方針の決定などの点において困難であった

31 まとめ 2 7 事例に共通した利用施設及び間食からさとうきびジュースの可能性が浮かび上った (IS の結果も同一クローン ) 保健医療統括監を中心に県及び那覇市の感染症主管課食中毒主管課及び衛研で合同対策会議を開催し調査の県内関係機関の連携がなされた新たに作成した追加調査票で再度各自治体へ調査依頼し共通暴露源が判明した原因食品や従業員施設のふき取りから菌は検出されなかったが 9 月 2 日南部保健所は疫学的状況および原因菌の遺伝子型が同一であったことから原因施設を特定し行政処分を行った

32 共同発表者那覇市保健所安藤美恵赤嶺隆子細田千花山下将哉池間学岸本敦仲宗根正東朝幸沖縄県南部保健所宮本雄二郎大野惇崎山八郎沖縄県保健医療部生活衛生課平安綾子大城哲也與那原良克沖縄県保健医療部健康長寿課仁平稔山内美幸山川宗貞沖縄県衛生環境研究所髙良武俊仲間絵理喜屋武向子柿田徹也久場由真仁加藤峰史久髙潤上里林国立感染症研究所細菌第一部泉谷秀昌石原朋子伊豫田淳大西真

33 謝辞本調査にご協力頂いた各自治体の担当者の皆様ご助言を頂きました国立感染症研究所 FETP 関係者の皆様に深く感謝致します

表 2 衛生研究所保健所別菌株検出数 ( 医療機関を含む ) 内訳衛生研究所保健所試験検査課県中支所会津支所郡山市いわき市総計喫食者接触者従事者食品 3 3 拭きとり総計遺伝子型別解析遺伝子型別解析は, デンカ生研の病

表 2 衛生研究所保健所別菌株検出数 ( 医療機関を含む ) 内訳衛生研究所保健所試験検査課県中支所会津支所郡山市いわき市総計喫食者接触者従事者食品 3 3 拭きとり総計遺伝子型別解析遺伝子型別解析は, デンカ生研の病馬刺しを原因食品とした EHEC O57 食中毒事例 ) 菊地理慧冨田望菅野奈美二本松久子小黒祐子微生物課 ) 前衛生研究所 2) 県南保健福祉事務所 2) 吉田学要旨 204 年 3 月 28 日から 4 月 4 日に馬刺しによる腸管出血性大腸菌 ( 以下, EHEC とする.) O57 食中毒事件が発生した. 事件は本県を含め都県におよび, 患者は 88 名 ( うち入院 38 名, 溶血性尿毒症症候群

那覇市 O157散発事例 （観光客）

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