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よりとしさどひら
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1 スポーツ産業学研究,Vol.24,No.2(2014),211 ~ アジアサッカーにおける代表成績と年代別代表成績との関係に関する研究 * 杉原海太平田竹 ** 男 ** 久保谷友哉 Study on the Relationship between the Performance of the National Team and the National Youth Team on Football in Asia Kaita SUGIHARA *, Takeo HIRATA ** and Tomoya KUBOTANI ** Abstract The purpose of this paper is to clarify the linkage between performance of the national team and that of the national youth team on football in Asia and make suggestions which should be useful from the operational viewpoint of the member associations of the Asian football confederation (AFC). This paper examines the linkage between them for the 39 member associations of the AFC which participated the AFC under 19 championships between 1994 and Statistical analysis was made by means of correlation analysis and single regression analysis. With regard to correlation analysis, Spearman's rank correlation coefficient was found to be and Kendall tau rank correlation coefficient was found to be Both results show that there is correlation. With regard to single regression analysis, R-square was found to be This shows that the performance of the national youth team was linked with the performance of the national team with regard to football in Asia to some extent. In the meantime, member associations of AFC were divided into four groups, based on performance of the national youth team and performance of the national team, and regression formula and practical suggestions were made for each group. Key words: Asian Football, National Team, Youth Team, Performance 1. 緒言国際サッカー連盟 ( 以下,FIFA) が主催するFIFAワールドカップ本大会が2014 年 6 月及び7 月に行われたが, 大会に参加した32の国地域は, 国地域としての特徴の観点からもサッカーの観点からも非常に多様であった. 国地域としての特徴の観点から見た場合, アメリカ合衆国, ドイツ, 日本といった人口も多く経済的に発展している先進国も存在すれば, ボスニアヘルツェゴビナの様に人口が少なく経済的に発展途上である国も存在する. サッカーの観点から見た場合, ブラジルやアルゼンチンの様に多くの代表選手が国外でプレーしている国も存在すれば, スペインの様に自国クラブの選手が多数代表に選ばれる国も存在する. 過去の研究を見ると, 国地域の社会的経済的文化的要因及びサッカーに関する要因原稿受付 2014 年 5 月 27 日原稿受諾 2014 年 7 月 7 日 * FIFA コンサルタント東京都足立区千住東 ** 早稲田大学大学院スポーツ科学研究科東京都新宿区西早稲田 * FIFA Consultant, , Senjuazuma, Adachi-ku, Tokyo, Japan ( ) ** Graduate School of Sport Sciences, Waseda University, 1-6-1, Nishi-Waseda, Shinjuku-ku, Tokyo ( )

2 212 代表成績に影響を及ぼす要因に関する実務的考察と代表チームの成績との相関関係を明らかにしようとした研究が複数見られる.Hoffmannら 1) は世界 76の国地域に関して,FIFAランキングにおけるポイントと1 人当たりGDP, 年間平均気温, 世界人口に占める当該国地域の人口割合, ラテン系の国家地域か否か, といった主に社会的文化的要因との関連を分析した.Leedsら 2) は世界 178の国地域に関して,FIFAランキング及びFIFAランキングにおけるポイントと複数の社会的政治的要因 ( 国民 1 人あたりGDP, 人口,Freedom house reportにおける自由度指数, 共産主義及び旧共産主義国家であるか否か,OECDメンバーであるか否か, 産油国か否か, 旧植民地国であるか否か, 等 ) 及び複数のサッカー的要因 ( 大陸連盟主催のクラブチャンピオンシップにおいて準々決勝に進出している当該国クラブ数, 等 ) との関連を分析した. またBaurら 3) は,2006 年 FIFAワールドカップ本大会に出場した32の国地域に関して, サッカー選手の国際移籍と代表チームの成績の関連を分析し, 国際移籍が活発な国地域の代表チームが好成績を残している事を明らかにした. 筆者はアジアサッカー連盟 ( 以下,AFC) 在籍時にAFC 加盟協会支援に携わってきたが, 多くの加盟協会において最大の関心事の1つが代表チームの成績であった. もし代表チームの成績に影響する要因を明らかにし, それが協会の実務に反映できるようになれば,AFC 加盟協会にとって非常に有益であると考えられる. しかし上記の先行研究は,AFC 加盟協会における実務の観点から見ると, 下記の理由により些か不十分であると考えられる. 第一に, 人口, 国民 1 人あたりGDP, 国家体制などの社会的政治的要因は, 代表チームの成績との関連性が明らかになったとしても, 協会における短期中期的施策によって解決する事は難しい. 第二に, サッカー的要因と代表チームの成績との関連に関する研究においても, 研究対象に含まれるアジアの国は一部に限定されている. 例えば,Leedsら 2) は大陸連盟主催のクラブチャンピオンシップ ( アジアにおいてはAFC Champions Leagueが該当する ) において準々決勝に進出している当該国クラブ数と代表チームの成績の相関を分析しているが, 分析対象となった2006 年 AFC Champions Leagueに参加できる協会は12 協会のみであった為,2/3 以上のAFC 加盟協会は分析対象外となっている. またBaurら 3) の研究は,2006 年 FIFAワールドカップ本大会に出場した32の国地域が分析対象であり, アジアの多くの国地域は分析対象外となっている. では, アジアの代表チームの成績に影響を及ぼし且つ協会の実務に反映できる要因にはどの様な要因が考えられるのであろうか? サッカークラブに関しては, 選手人件費が成績を決定する重要な要因の1つであると考え, それらの関係について多くの研究が行われている. 例えば欧州においては,Szymanskiら 4) が, イングランドのサッカーリーグの1 部から4 部に所属するクラブにおける選手賃金と成績との関係を検証するために,1978/79から1998/99 シーズンの20 年間と1997/98シーズンの1 年間の2つの期間を対象として, 成績と選手賃金について単回帰分析を行い, 選手賃金への支出がより多いクラブがより良い成績を残していることを明らかにした. また, 国内では内田ら 5) が1997 年から2006 年までのJ1クラブのデータを用いて単回帰分析を行い,Jリーグにおいても同様の関係が見られることを明らかにしている. 選手人件費がサッカークラブの成績を決定する要因の1つとなるのは, 高い選手人件費により, 勝利の為に必要となる高い競技力を有する選手を保持できる為と考えられる. 同様の考え方を国の代表チームに適用した場合, 国の代表チームが高い競技力を有する選手を保持する為の施策の1つとして年代別代表チームの強化が考えられる事から, 年代別代表チームの成績が, 国の代表チームの成績の決定要因の1つである可能性が考えられる. また選手人件費とクラブ

3 スポーツ産業学研究,Vol.24,No.2(2014),211 ~ の成績に関する分析がクラブ運営の実務において意義があると考えられるのと同様, 年代別代表チームの成績と代表チームの成績に関する分析も協会運営の実務において意義があると考えられる. そこで, 本研究では,AFC 加盟協会におけるサッカー代表チームの成績と年代別代表チームの成績との関係について統計的に明らかにし, 協会運営の実務に反映できる様な考察を行う事を目的とする. 2. 研究手法 2.1 分析対象本研究では, 代表チームの試合が4 年周期でスケジュールされている事を考慮し,AFC 加盟協会のサッカー代表チームの成績 ( 以下, 代表成績 ) として,2006 年 FIFAワールドカップ本大会直後から2010 年 FIFAワールドカップ本大会終了時までの4 年間の成績を対象とした. またサッカー年代別代表チームの成績 ( 以下, 年代別代表成績 ) に関しては,2010 年 FIFAワールドカップ本大会におけるチーム最高齢選手の平均年齢が35 歳, チーム最年少選手の平均年齢が21 歳であることを考慮し,1994 年から2008 年における19 歳以下のアジアサッカー連盟 ( 以下, AFC) 主催の年代別選手権の成績を対象とした. なおAFCは22 歳以下の大会も4 年に1 回主催してきたが,2 年に1 回開催される19 歳以下の大陸選手権 ( 以下,AFC U-19 選手権 ) の方がより試合数が多くなり分析対象として適切であると考えた. 分析対象となる加盟協会は,AFC46 加盟協会から,AFC 加盟が 1992 年以降でありAFC U-19 選手権参加が1998 年以降であるAustralia, Bhutan, Guam, Mongolia, Timor, Palestine 及び当該期間におけるAFCU-19 選手権において 2004 年大会しか参加をしていないAfghanistan を除外した39 加盟協会である. 2.2 分析データ代表成績については,FIFA 公式サイト内の FIFA/Coca-Cola World Ranking 6) において 2010 年 FIFAワールドカップ本大会終了直後の 2010 年 7 月 14 日付に発表されたアジア内ランキング ( 以下,FIFA Ranking) を用いる. なお FIFA/Coca-Cola World Rankingは, 過去 4 年間の代表チームの試合結果に基づき算出されたポイントを基に決定されている. 年代別代表成績については,The Rec. Sport. Soccer Statistics Foundation. 7) から,1994 年から2008 年に開催されたAFC U-19 選手権の成績を用い, 各大会において優勝した協会の数値が 39( 当該加盟協会数 ), 準優勝協会の数値が38, ベスト4 進出協会の数値が37, と順位毎に1つずつ減少し ( 同順位は同数値とした ), 最下位 ( 不参加失格の協会が存在する場合はそれらの協会を最下位と扱った ) の協会の数値が最低値となるように数値化し, 分析期間の8 大会におけるそれら数値の合計に基づくアジアにおけるランキング ( 以下,Youth Ranking) を用いる. なお1994 年及び1998 年のAFCU-19に関しては予選ラウンドの結果が完全に入手できなかった為, 予選ラウンド敗退協会全てを同じポイントとして扱った. 2.3 分析手法各協会の代表成績と年代別代表成績との関係を検証するために, 相関分析及び単回帰分析を行った. 相関分析に関しては,FIFA Rankingと Youth Rankingに関してスピアマンの順位相関係数及びケンドールの順位相関係数を求めた. また, 単回帰分析に関しては, 従属変数に FIFA Ranking, 独立変数をYouth Rankingとして分析を行った. また,39 加盟協会をFIFA Ranking,Youth Ranking 及び算出された回帰式に基づき下記 4グループに分類した. グループA: 残差 ( 実際のFIFA Rankingと回帰式及びYouth Rankingから算出される値の差 ) が負の値であり,Youth Ranking の偏差 (Youth RankingとYouth Ranking の平均値の差 ) が正の値である協会

4 214 代表成績に影響を及ぼす要因に関する実務的考察グループB: 残差,Youth Ranking の偏差が共に負の値である協会グループC: 残差,Youth Ranking の偏差が共に正の値である協会グループD: 残差が正の値であり,Youth Ranking の偏差が負の値である協会なお, 相関分析及び回帰分析を行うにあたっては,IBM SPSS Statistics 19を用いた. 3. 研究結果表 1に本研究で対象とした全ての協会の FIFA RankingとYouth Rankingを示した. 相関分析の結果, スピアマンの順位相関係数は0.763, ケンドールの順位相関係数は0.559と両者共に1% 水準で有意であった. 図 1はFIFA RankingとYouth Rankingの関係について, 縦軸にFIFA Rankingを横軸に Youth Rankingを取り ( 両軸の交点はそれぞれの平均値 ), 各協会の値を散布図にプロットし, 回帰直線を示したものである. 単回帰分析の結果, 決定係数 (R2) は0.579 で有意な値を示した. これは独立変数である年代別代表成績変数が, 従属変数である代表成績変数に約 58% 結びついていることを意味している. 回帰係数 (β) は0.763であった. 図 2は, 図 1で示した散布図にFIFA RankingとYouth Rankingに基づき39 加盟協会を下記のグループ分けを加えた図である. 表 2は, 図 2で示した分類に関して, 具体的にどの協会がどのグループに属するか示したものである. 分類の結果, グループAには8 協会, グループBには10 協会, グループCには12 協会, グループDには9 協会が該当する事が明らかになった. 4. 考察相関分析の結果, スピアマンの順位相関係数は0.763, ケンドールの順位相関係数は0.559と両者共に1% 水準で有意であり, 年代別代表成績と代表成績の間に相関が存在すると考えられる. 表 1 本研究で対象とした協会のFIFA Rankingと Youth Ranking 国名 FIFA Ranking Youth Ranking Japan 1 2 Korea Republic 2 1 Iran 3 11 Saudi Arabia 4 7 Bahrain 5 19 China PR 6 3 Oman 7 17 Kuwait 8 13 Uzbekistan 9 12 United Arab Emirates 10 7 Syria 11 6 Jordan Qatar 12 9 Korea DPR Iraq 15 5 Thailand 16 4 Yemen Singapore Vietnam India Hong Kong Turkmenistan Tajikistan Indoneshia Malaysia Myanmar Maldives Lebanon Bangladesh Sri Lanka Nepal Pakistan Kyrgyzstan Chinese Taipei Philippines Laos Cambodia Brunei Darussalam Macau 一方, 単回帰分析の結果, 決定係数 (R2) は0.579であり, 年代別代表成績と代表成績の結びつきは, 自明という程度ではないが, ある程度存在していると考えられる. グループAに該当する協会の中で最も残差の絶対値が大きい北朝鮮は,2000 年,2002 年,

5 スポーツ産業学研究,Vol.24,No.2(2014),211 ~ 軸の交点 y 平均値 x 平均値 FIFA Ranking y = x R² = 軸の交点 y 平均値 x 平均値 FIFA Ranking Youth Ranking 図 1 各協会の FIFA Ranking と Youth Ranking の散布図及び回帰直線 D B y = x R² = Youth Ranking 図 2 各協会の FIFA Ranking と Youth Ranking の散布図及び回帰直線 ( グループを含む ) A C 2004 年のAFC U-19 選手権に不参加であった為 Youth Ranking が低くなっているが,2006 年大会は優勝,2008 年大会は準々決勝進出, と結果を残しており, これらの結果が2010 年 FIFA ワールドカップ本大会出場に結びついたものと考えられる. イエメンやヨルダンに関しても, 北朝鮮と同様, 年代別代表は継続的には良い成績を残していないが, 幾つかの大会では比較的好成績を残しており, その世代の選手により代表が好成績を残していると考えられる. 但し年代別代表の好成績に継続性が無いという事は, 特定の世代の好選手に比較的依存している可能性があり, 代表での成功は継続的にならない可能性がある. その点,2008 年以降も継続的に年代別代表チームで好成績を収めている北朝鮮 (AFC U-19 選手権 2010 年大会優勝, 2012 年大会最終予選グループ3 位 ) やヨルダン (AFC U-19 選手権 2010 年大会最終予選グルー

6 216 代表成績に影響を及ぼす要因に関する実務的考察国名表 2 本研究で対象とした協会の FIFA Ranking と Youth Ranking( グループを含む ) FIFA Ranking (Y) Youth Ranking (X) Youth Ranking(X) の偏差残差 (Youth Ranking(X)-Youth (Y x ) Ranking(X) の平均値 ) グループ Maldives A Hong Kong A Lebanon A Singapore A Turkmenistan A Jordan A Yemen A Korea DPR A United Arab Emirates B China PR B Korea Republic B Uzbekistan B Japan B Saudi Arabia B Kuwait B Iran B Oman B Bahrain B Laos C Nepal C Pakistan C Brunei Darussalam C Chinese Taipei C Macau C Cambodia C Sri Lanka C Tajikistan C Myanmar C Kyrgyzstan C Philippines C Bangladesh D Malaysia D Thailand D Indonesia D India D Iraq D Vietnam D Syria D Qatar D グループ A: 残差 ( 実際の FIFA Ranking と回帰直線及び Youth Ranking から算出される値の差 ) が負の値であり, Youth Ranking の偏差 (Youth Ranking と Youth Ranking の平均値の差 ) が正の値である協会グループ B: 残差,Youth Ranking の偏差が共に負の値である協会グループ C: 残差,Youth Ranking の偏差が共に正の値である協会グループ D: 残差が正の値であり,Youth Ranking の偏差が負の値である協会

7 スポーツ産業学研究,Vol.24,No.2(2014),211 ~ プ4 位,2012 年大会最終予選準々決勝進出 ) は 2014 年 FIFAワールドカップアジア予選でも健闘しており ( 北朝鮮は3 次予選で敗れたものの, 日本に勝利した. 一方, ヨルダンは大陸間プレーオフまで進出した ), グループAからグループ Bに移動しつつあると考えられる. これは継続的な年代別代表チームにおける努力の結果であり, 他のグループAに属する協会の参考になるケースと考えられる. また, 北朝鮮, ヨルダン, トルクメニスタンは, 自国にプロリーグは存在しないが, 複数の代表選手が国外のプロリーグでプレーしており, そのプレー経験が代表チームの好成績に影響している可能性がある. これは後述するバーレーンの場合と類似している. グループBには, 日本や韓国を含め, 継続的に代表チームが好成績を収めているサッカー強国が多く含まれている. グループBに該当している多くの協会に共通しているのは, 年代別代表の好成績に加え, 国内にプロリーグを有している点である. プロリーグにおいて, 年代別代表チームで好成績を残した才能ある若手選手が順調に経験を積み代表チームまで上り詰めており, それが代表チームの好成績に繋がっている事が伺える. グループBに該当している協会が, 近年アジアの強豪として定着している事を考えると, 一時的ではなく安定した代表チームの好成績を達成する為には, 年代別代表チームの好成績と自国のプロリーグを持つ事の両方が重要であると考えられる. 日本の90 年代 00 年代の取り組みはその好例と考えられる. 日本は,80 年代にトレセン制度による若年層強化をスタートした後,1993 年にプロリーグであるJリーグをスタートさせ, 1995 年に初めてアジア予選を勝ち抜きFIFA ワールドユース大会 ( 現 FIFA U-20ワールドカップ ) に出場し, その後 2007 年大会まで7 大会連続出場を果たしている. この間, 代表チームも FIFAワールドカップ本大会に1998 年に初出場してから3 大会連続出場を果たしており, 年代別代表の好成績とプロリーグの存在が代表チームの好成績を生み出す仕組みを90 年代 00 年代に確立したと考えられる. 但しグループBにはプロリーグを有さない協会も存在している. バーレーンの様に国内リーグがプロリーグではなく, 代表チームの多くの選手が国外のリーグでプレーしている (2009 年 11 月 14 日に行われたFIFAワールドカップ予選大陸間プレーオフニュージーランド対バーレーンにおけるスタメン11 選手のうち,8 選手が国外のリーグでプレー ) 場合もある. オマーンも国内リーグがプロリーグではなく, バーレーンに比べると少ないが, 国外リーグでプレーする代表選手が複数存在している. プロリーグを設立する事が何らかの理由で難しい国地域においては, この様な国外リーグの活用も考慮すべきオプションであると考えられる. なお, 留意すべき点として,2010 年ワールドカップ予選を戦ったバーレーン代表チームにはU-19 代表には参加していないと思われる複数の帰化選手も含まれている事が挙げられる. この点は, グループBに該当する協会の中でもっとも残差の絶対値が大きい事の1つの理由と考えられる. 近年の日本は, 国内にプロリーグを持ちながら, 殆どの代表選手が国内リーグよりレベルの高いヨーロッパの主要リーグ ( イングランド, ドイツ, イタリア, 等 ) でプレーしており, これが近年アジアで揺るぎない地位を確立できている主要因であると推察されるが, これはグループBに該当する協会の今後の方向性の1つと考えられる. グループCには経済的に恵まれていない国地域が多く, 代表チーム及び年代別代表チームの強化に割くことのできる予算が限られている為, 良い結果を残せていない事が考えられる. この様な協会は予算が限られているので, 日本の様に年代別代表の強化とプロリーグの立ち上げの両方を行うのは現実的では無い. まずは限られた予算で, ボランティアの力を最大限活用しながら年代別代表チームの強化を継続し, 年代別代表チームでの好成績を目指す事から始め,

8 218 代表成績に影響を及ぼす要因に関する実務的考察その後選手は必要に応じて国外のプロリーグで経験を積むチャンスを伺い, 代表チームの成績に繋げていく事が現実的な施策と考えられる. グループDに属する協会においては, 年代別代表チームで好成績を残した若手選手が, その後自国リーグないしは国外リーグで選手たちの更なる成長を促す様な経験を積む事が重要であり, その結果代表成績も向上させる事が期待できる. 具体的には, バングラディシュの様に経済的に恵まれない国では, 有望な若手選手が国外リーグで経験を積む事が現実的であるが, 経済成長著しいマレーシア, タイ, インドネシア, インドなどは, 国外リーグで経験を積むこと以外にも, 自国の経済力を活かし, トレーニング施設の充実優秀な外国人選手及び指導者の獲得といった施策により自国のプロリーグの環境を向上させ, 有望な若手選手が自国リーグで成長し代表チームの成績に繋げられるようにする事が考えられる. 例えば, タイプレミアリーグのクラブは近年積極的に日本人選手を獲得しているが, 彼らがリーグのレベルアップに寄与し代表チームの成績にも繋がる事が期待される. 5. 結論本研究では,AFCに加盟する39 協会におけるサッカー代表チームの成績と年代別代表チームの成績との関係について統計的に明らかにし, 協会運営の実務に反映できる様な考察を行う事を目的とした. 代表成績には FIFA/Coca-Cola World Ranking を, 年代別代表成績にはAFC U-19 選手権における成績を数値化したものを用い, 代表成績と年代別代表成績との関係について相関分析及び単回帰分析を行った. 相関分析の結果, スピアマンの順位相関係数は0.763, ケンドールの順位相関係数は0.559である事がわかった. 単回帰分析の結果, 独立変数である年代別代表成績と従属変数である代表成績の結びつきは約 58% である事がわかった. また,FIFA Ranking,Youth Ranking, 及び算出された回帰式に基づき,AFC 加盟協会を4グループに分類し, それぞれのグループに属する加盟協会に関して, 求められる施策の方向性に関して考察を行った. 参考文献 1)Hoffmann, Robert., et al.;the Socio-economic determinations of intentional soccer performance, Journal of Applied Economics, Vol. V, No.2, pp , )Leeds, Michael A. and Leeds, Eva Marikova.;International soccer success and national institutions, Journal of Sports Economics, 10.4, pp , )Baur, Dirk. and Sibylle Lehmann.;Does the mobility of football players influence the success of the national team?, IIIS Discussion Paper No.217, Available at SSRN: ssrn.com/abstract= or org/ /ssrn , )Szymanski, S. and Kuyper, T.;Winners & Losers, Penguin Books, pp , ) 内田亮, 平田竹男 : プロスポーツクラブにおける成績と選手賃金 ( 推定年俸 ) の関係 -Jリーグクラブにおける分析, スポーツ産業学研究, Vol.18, No.1, pp.79-86, )FIFA/Coca-Cola World Ranking, 7)The Rec. Sport. Soccer Statistics Foundation,

156 クラブ成績が代表成績に及ぼす影響国内リーグのレベルを上げていかないといけない.ACLでなかなか結果が出せないのに, 代表だけは勝ってくださいというのも難しい話だし 2) とコメントしている.このコメントからは, 原専務理

156 クラブ成績が代表成績に及ぼす影響国内リーグのレベルを上げていかないといけない.ACLでなかなか結果が出せないのに, 代表だけは勝ってくださいというのも難しい話だし 2) とコメントしている.このコメントからは, 原専務理スポーツ産業学研究,Vol.25,No.1(2015),155 ~ 161. 155 アジアサッカーにおける代表成績とクラブ成績との関係に関する研究 * 杉原海太久保谷友哉平田竹男政本晶生 Study on the Relationship between Performance of the National Team and