1 HIV 感染症の臨床経過 1 HIV 感染症の臨床経過の全体像 HIV(humanimmunodeficiencyvirus) 感染症の臨床経過は (1) 感染初期 ( 急性期 ) (2) 無症候期 (3)AIDS(acquiredimmunodeficiencysyndrome) 発症期の3

Size: px
Start display at page:

Download "1 HIV 感染症の臨床経過 1 HIV 感染症の臨床経過の全体像 HIV(humanimmunodeficiencyvirus) 感染症の臨床経過は (1) 感染初期 ( 急性期 ) (2) 無症候期 (3)AIDS(acquiredimmunodeficiencysyndrome) 発症期の3"

Transcription

1 目 次 1. HIV 感染症の臨床経過 2. HIV 感染症の検査 / 診断 3. 抗 HIV 療法 4. HIV 薬剤耐性とその検査 5. HIV 感染症と肝炎 6. 血友病患者の診療 7-1.AIDS 関連症候群 (ARC) の診断と治療 7-2. カンジダ症 7-3. クリプトコックス症 7-4. クリプトスポリジウム症 7-5. サイトロメガロウィルス (CMV) 感染症 7-6. 非結核性抗酸菌症 7-7. ニューモシスチス肺炎 7-8. 結核症 7-9. サルモネラ感染症 イソスポラ症 リンパ性間質性肺炎 (Lymphoidinterstitialpneumonitis:LIP) 本邦ではまれなARC 7-13.HIV-1 消耗性症候群 原発性リンパ腫 7-15.HIV-1 脳症 進行性多巣性白質脳症 (PML) トキソプラズマ脳症 (Cerebraltoxoplasmosis) 8. HIV 感染者の皮膚症状 9. 妊娠 新生児のHIV 10. 小児のHIV 感染症 11. 眼科のHIV 感染症 12. HIV 感染血友病患者の関節症の治療 13. HIV 感染症患者のリハビリテーション 14. HIV 感染症の口腔病変と歯科治療 15. HIV 感染症患者の心理的支援 16. HIV 感染症患者の看護 17. 外科領域での安全対策 18. 検査部領域での安全対策と検査項目 19. 病理診断領域での安全対策 20. 汚染事故時の対応 21. 医療福祉制度のてびき 22. HIV 感染症と医療情報 23. 相談室について 24. 抗ウィルス薬 25. 治験薬 国内未販売薬 付 録

2 1 HIV 感染症の臨床経過 1 HIV 感染症の臨床経過の全体像 HIV(humanimmunodeficiencyvirus) 感染症の臨床経過は (1) 感染初期 ( 急性期 ) (2) 無症候期 (3)AIDS(acquiredimmunodeficiencysyndrome) 発症期の3 期に分けられる HIV に感染すると多くの症例では2~3 週間後にインフルエンザ様の急性期症状があり その後長期間の無症候期に入る この間に HIV は宿主内で盛んに増殖し CD4 陽性リンパ球数は徐々に減少していく CD4 陽性リンパ球数の減少により細胞性免疫不全が進行していくと 表在リンパ節が腫脹したり発熱や下痢を繰り返したり 体重の減少がみられるようになる さらに CD4 陽性リンパ球数が減少していき 200 個 /μ 渥以下となると様々な日和見感染症を発症する 表 1に我が国における AIDS 診断の診断基準を示すが ここにあげた23 の指標疾患のどれかが現れたときはじめて AIDSと診断する 図 1 HIV 感染症の経過 ( 模式図 ) 2 HIV 感染症の臨床症状 (1) 急性期 HIV に感染すると HIV は宿主内で急速に増殖し CD4 陽性リンパ球数は一過性に減少する この時期には感染者の約 90% に何らかの急性レトロウイルス症候群の徴候を認めるが ( 表 2) 多くの症状はインフルエンザ様で非特異的であるため HIV 感染と認識されないことが多い 問診などから積極的に HIV 感染を疑い HIV-RNA の増加が確認できれば 急性 HIV 感染症 と診断可能である その後 宿主の免疫反応により血中ウイルス量は低下し 2~3 週間で急性感染の症状は消退する CD4 陽性リンパ球数も回復し 抗 HIV 抗体が陽性となり (seroconversion) 無症候期に移行する 低下した血中ウイルス量は感染約 6ヶ月後にはある一定のレベルに保たれるようになる ( セットポイント ) HIV 感染症の臨床経過 1

3 (2) 無症候期急性期を過ぎた後 5~15 年 ( 平均 8 年 ) の症状のない時期をさし 一般に潜伏期とも呼ばれる時期である この間も HIV は盛んに増殖を繰り返しているが 宿主の免疫反応により長期間の平衡状態が保たれる CD4 陽性リンパ球数は徐々に減少していくが その減少スピードは HIV のウイルス量に依存している (3)AIDS 発症期 HIV の増殖と宿主の免疫反応による平衡状態が破綻すると急速に HIV-RNA が増加し CD4 陽性リンパ球数も減少し細胞性の免疫不全が顕著となってくる CD4 陽性リンパ球数が200 ~500/μ 渥の時期は細菌性肺炎 肺結核 帯状疱疹 口腔カンジダ症 口腔毛状白板症やカポジ肉腫などを合併する 更に CD4 陽性リンパ球数が200/μ 渥以下に低下すると消耗が進行し 様々な日和見感染症 悪性腫瘍や神経症状を合併するようになり ( 表 1) AIDS と診断される AIDS 指標疾患を発症した時の CD4 陽性リンパ球数の中央値は60~70/μ 渥である AIDSの診断基準を満たす日和見感染症などの症状や診断 治療法については各論に詳述する 適切な抗 HIV 療法が行われなかった場合 CD4 陽性リンパ球数が200/μ 渥以下に低下してからの生存期間中央値は3.7 年 AIDS を発症してからの生存期間中央値は1.3 年と報告されている しかしHAART(highlyactiveantiretroviraltherapy) の導入により 例え AIDSを発症しても適切な治療により免疫系の再構築が成され 感染症の回復 社会生活への復帰が可能となっている 実際に HAART 後に CD4 陽性リンパ球数を 500/μ 渥以上に維持できた患者は 健常者と同じ生命予後を得ることも報告されている 表 2 急性 HIV 感染症の症状と徴候 症 状 割 合 発 熱 96% リンパ節腫脹 咽頭炎 74% 70% 発 疹 70% 筋肉痛と関節痛 下痢 54% 32% 頭 痛 32% 悪心 嘔吐肝脾腫体重減少口腔カンジタ神経症状 27% 14% 13% 12% 12% 発疹 : 顔面及び体幹の他 ときに手掌 足底を含む四肢に病変を有する紅斑性丘疹ときに口腔 食道または生殖器に及ぶ皮膚粘膜潰瘍を形成神経症状 : 髄膜脳炎または無菌性髄膜炎末梢神経障害または神経根障害 / 顔面神経麻痺ギラン バレー症候群 / 上腕神経炎認知障害または精神障害 2 HIV 感染症の臨床経過

4 表 1 AIDS 診断のための指標疾患 A. 真菌感染症 1 カンジダ症 ( 食道 気管 気管支または肺 ) 2 クリプトコッカス症 ( 肺以外 ) 3 コクシジオイデス症 1 全身に播種したもの 2 肺 頚部 肺門リンパ節以外の部位に起こったもの 4 ヒストプラズマ症 1 全身に播種したもの 2 肺 頚部 肺門リンパ節以外の部位に起こったもの 5 ニューモシスチス肺炎 B. 原虫症 6 トキソプラズマ脳症 ( 生後 1ヶ月以後 ) 7 クリプトスポリジウム症 (1ヶ月以上続く下痢を伴ったもの) 8 イソスポラ症 (1ヶ月以上続く下痢を伴ったもの) C. 細菌感染症 9 化膿性細菌感染症 (13 歳未満で ヘモフィルス 連鎖球菌等の化膿性細菌により以下 のいずれかが2 年以内に 2つ以上多発あるいは繰り返して起こったもの ) 1 敗血症 2 肺炎 3 髄膜炎 4 骨関節炎 5 中耳 皮膚粘膜以外の部位や深在臓器の膿瘍 10 サルモネラ菌血症 ( 再発を繰り返すもので チフス菌によるものを除く ) 11 活動性結核 ( 肺結核叉は肺外結核 ) 12 非結核性抗酸菌症 1 全身に播種したもの 2 肺 頚部 肺門リンパ節以外の部位に起こったもの D. ウイルス感染症 13 サイトメガロウイルス感染症 ( 生後 1ヶ月以後で 肝 脾 リンパ節以外 ) 14 単純ヘルペスウイルス感染症 11ヶ月以上持続する粘膜 皮膚の潰瘍を呈するもの 2 生後 1ヶ月以後で気管支炎 肺炎 食道炎を併発するもの 15 進行性多巣性白質脳症 E. 腫瘍 16 カポジ肉腫 17 原発性脳リンパ腫 ( 年齢を問わず ) 18 非ホジキンリンパ腫 LSG 分類により 1 大細胞型 免疫芽球型 2Burkit 型 19 浸潤性子宮頸癌 F. その他 20 反復性肺炎 21 リンパ性間質性肺炎 / 肺リンパ過形成 :LIP/PLHcomplex(13 歳未満 ) 22 HIV 脳症 ( 痴呆叉は亜急性脳炎 ) 23 HIV 消耗性症候群 ( 全身衰弱叉はスリム病 ) C11 活動性結核のうち肺結核および E19 浸潤性子宮頚癌については HIV による免疫不全を示唆する症状および所見がみられる場合に限る HIV 感染症の臨床経過 3

5 参考文献 1) HIV 感染症治療研究会編. HIV 感染症 治療の手引き 第 12 版.2008 年 12 月 2) BartletJG etal.medicalmanagementofhiv Infection 2007Edition.Publishedby JohnsHopkinsMedicineHealthPublishingBusinessGroup,2007 3) DHHS.GuidelinesfortheUseofAntiretroviralAgentsinHIV-1-InfectedAdultsand Adolescents.November3,2008 4) 平成 20 年度厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業服薬アドヒアランスの向上 維持に関する研究班編. 抗 HIV 治療ガイドライン.2009 年 3 月 5) LewdenC,CheneG,MorlatP,RafiF,DuponM,DelamonicaP,PelegrinJL,KatlamaC, DabisF,LeportC;ANRSStudyGroup.HIV-infectedadultswithaCD4celcountgreater than500cels/mm3onlong-term combinationantiretroviraltherapyreachsamemortalityratesasthegeneralpopulation.jacquirimmunedeficsyndr.46:72-77,2007. ( 第二内科遠藤知之 ) 4 HIV 感染症の臨床経過

6 2 HIV 感染症の検査 / 診断 1 HIV 関連検査の種類と特徴 (1) スクリーニング検査酵素抗体法 (ELISA 法 ) 粒子凝集法(PA 法 ) 免疫クロマトグラフィー法(IC 法 ) により HIV-1 及び HIV-2 に対する抗体を測定または同定する 感度は高いが 特異度は低いため 0.1 ~1% 程度の疑陽性が生じる 一方 感染してから抗体が検出されるまで通常 3~4 週間かかるため (window period(wp)) 結果が陰性でも急性感染を否定できない 感染初期数週間はHIV 抗原 (p24 抗原 ) が上昇し ELISA 法で検出可能となる WPを短縮するため現在 北海道大学病院ではスクリーニング用検査として HIV-1 2 抗体価と HIV-1 抗原同時測定検査 ( 第 4 世代検査キット アボット社の HIVAg/AbCombo,CLIA 法 ) を使用している (2) 確認検査 Westernblot 法 (WB 法 ) 間接蛍光抗体法(IFA 法 ) により HIV-1 とHIV-2 それぞれに対する特異的な抗体タンパクの存在を確認する検査である 院内では HIV-1WBと HIV-2WBの検査が可能 特異度は高いが 感度は低いため 感染初期には検出できない HIV-1WBと HIV-2WB の間には交叉反応が生じるため判定には注意を要する (3)HIV 抗原検査 HIV-1RNA 定量 PCR 法と核酸 hybridization 法を組み合わせて HIV-1 の RNA を高感度に検出できる検査で 従来は AmplicorHIV-1Monitorv1.5(RT-PCR) を使用していたが 北大病院では2008 年 2 月からロシュダイアグノスティクス社のコバス TaqManHIV-1 オート (TaqManPCR 法 ) を導入している HIV-RNA の定量は急性感染の診断に不可欠であるが HIV-2 は検出できない 病勢 治療効果のモニタリングとしても有用である TaqManPCR 法による HIV-1RNA コピー数の測定範囲は コピー /mlで 従来の Amplicor 法よりも高感度となっており さらに 40 コピー /ml 以下の場合に定性法での評価も可能となっている しかし TaqManPCR 法では従来の方法よりも結果が高値に測定される傾向があると指摘されており 結果の解釈に注意を要する HIV-1proviralDNA リンパ球を検体として PCR 法にて細胞内の proviraldna を検出する検査であり 極めて感度は高いが 測定系が標準化されていないため普及していない 抗体検査での判定困難例や WP 時期での感染確認 治療中の潜伏感染ウイルスの評価に用いられる 本邦では母子感染の早期診断として保険適応がある p24 抗原 HIV-1 のコアタンパクであるp24 を ELISA 法で検出する 特異度は高いが 感度が低いため 感染初期数週間と感染後期にしか検出できない 前述の抗体価測定と組み合わせてスクリーニングで用いられる (4) 簡易迅速抗体検査キット前述の IC 法により抗 HIV 抗体を同定するキット 本邦ではダイナスクリーン HIV-1/2 が使用されている 15 分で結果が得られるため 即日検査として保健所 各種医療機関で2001 年以降導入され 自発検査や早期発見 感染不安をもつ人への利便性により普及している 偽 HIV 感染症の検査 / 診断 5

7 陽性が約 1% あるため 結果が陽性の場合 通常のスクリーニング検査と同様に確認検査の追加が必要である 院内では針刺し等の緊急時にのみ用いられる (5)HIV 薬剤耐性検査血液中に存在する HIV の抗 HIV 薬に対しての耐性 感受性を調べる検査であり genotype 検査 ( 遺伝子型解析 ) と phenotype 検査 ( 表現型解析 ) の2 種類がある 院内では genotype 検査が可能 検査の詳細については 4.HIV 薬剤耐性とその検査 の項を参照 2 HIV 感染症診断法の実際 (1) スクリーニング検査院内では HIV-1 2 抗体価と HIV-1 抗原同時測定検査 (HIVAg/AbCombo) に加えて 追加スクリーニング検査としてアボット社のダイナスクリーン HIV-1/2(IC 法 ) バイオラッド富士レビオ社のジェネディア HIV-1/2 ミックス PA(PA 法 ) の異なる2 法を実施 初期スクリーニング検査を含めた3 法中 2 法以上が陰性の場合に 陰性 2 法以上が陽性の場合に 陽性 と判定する 陽性 または 保留 と判定された場合 確認検査を行う 陰性 と判定された場合 感染のリスクが無い場合には 感染無し と診断する 感染のリスクがある場合や急性感染を疑う場合には RT-PCR による HIV-1RNA 定量検査を行う この結果が 陰性 でも期間を空けて再検査を行う (2) 確認検査日本エイズ学会では確認検査として HIV-1WB 法と HIV-1RNA 定量検査を同時に行うことを推奨している ( 表 1) HIV-1WB 法が 陽性 HIV-1 の感染者と判定する 但し HIV-1RNA 定量検査が陰性の場合は高感度法で再検査を行う 高感度法でも陰性であれば HIV-2WB 法を実施し 陽性 であれば HIV-2 の感染を否定できない HIV-2WB 法が 陰性 または 保留 であれば HIV-1proviralDNA の測定を行う HIV-1WB 法が 陰性 または 保留 で HIV-1RNA 定量検査が 陽性 HIV-1 急性感染者と考えるが 確定診断には後日 HIV-1WB 法の 陽性 を確認する必要がある HIV-1WB 法が 陰性 または 保留 で HIV-1RNA 定量検査が 測定感度以下 HIV-2WB 法を実施し 陽性 であれば HIV-2 の感染者と判定 HIV-2WB 法が 陰性 または 保留 であれば 2 週間後にスクリーニングからの再検査を勧める (3) 母子感染の診断母親から児へ抗体が移行するため 抗体検査は有用でない HIV-1 抗原 (p24 抗原 ) HIV- 1RNA 定量検査 HIV-1proviralDNA を実施し判定を行う 6 HIV 感染症の検査 / 診断

8 3 HIV 感染者の検査 (1) 進行を把握するための指標 CD4 陽性リンパ球数 HIV により破壊された宿主の残存免疫力を反映し 病態の進行度や治療開始を考慮する重要な指標となる 測定はフローサイトメトリーを用いて行われ 健常人では500~1400/μ 渥であり HIV 感染者で200/μ 渥未満になると種々の日和見疾患のリスクが高まる 未治療者では3~6ヶ月毎 治療中の患者では初期は毎月 その後は 2~4ヶ月毎に検査を行う 測定値の変動が大きいため複数回の検査で評価する 血中 HIV-RNA 定量 血中のウイルス量は CD4 の低下速度と相関しており 予後予測の指標となる また治療効果を判定するのにも重要な指標となる 男性に比べ女性では低値となる 未治療者では3 ~4ヶ月毎 治療開始または変更した患者では開始 2~8 週後とその後は4~8 週毎に測定し 検出限界以下に到達したら3~4ヶ月毎に測定する 2 倍または0.3log10 コピー /ml 以上の変動は有意な変化と見なされる 感度以下に低下しても体内から HIV が消失したことにはならない (2) 初回時に必要な検査 末梢血一般( 白血球分画も ) 生化学(ART 施行前には空腹時血糖値および血清脂質値 ) T 細胞サブセットおよび CD4 陽性リンパ球数 HIV-1RNA 定量 肝炎ウイルスマーカー (HAV 抗体 HBs 抗原 HBs 抗体 HBc 抗体 HCV 抗体 ) 梅毒血清反応(RPR TPHA) サイトメガロウイルス IgG トキソプラズマ IgG 水痘 帯状疱疹ウイルス IgG ツベルクリン反応( 結核の既往 BCG 接種後の結果が不明の場合 ) 胸部レントゲン写真 子宮頚部 Papanicolau 塗末細胞診 ( 女性のみ ) HIV 感染症の検査 / 診断 7

9 表 1 HIV-1/2 感染症診断のためのフローチャート ( HIV-1/2 感染症の診断法 2003 年版 ( 日本エイズ学会推奨法 ) より抜粋 ) * ** *** **** ***** 注 1 注 2 明らかな感染のリスクがある場合や急性感染を疑う症状がある場合は RT-PCR による確認検査を行う必要がある ( ただし 現時点では保健適応がない ) HIV-1 感染者とするが 高感度 RT-PCR 法による再検査を推奨する 高感度 RT-PCR 法も測定感度未満の場合は HIV-2WB 法を実施し 陽性であれば HIV-2 の感染者であることが否定できない ( 交差反応が認められるため ) HIV-2WB 法も陰性または保留の場合は HIV-1 プロウイルス DNA(PCR 法 ) を測定する この様な症例に遭遇した場合は 専門医に相談することを推奨する 後日 WB 法の陽性を確認する必要がある 2 週間後の再検査において スクリーニング検査が陰性であるか HIV-1/2 の確認検査が陰性 / 保留であれば 初回のスクリーニング検査は疑陽性であり 非感染 ( 感染はない ) と判定する 感染のリスクがある場合や急性感染を疑う症状がある場合は保留として再検査が必要である また 同様な症状を来たす他の原因も並行して検索する必要がある 急性感染症を疑って検査し HIV-1/2 スクリーニング検査と WB 法が陰性または保留で RT-PCR 法の陽性により感染と診断した場合は 後日 HIV-1/2 スクリーニング検査と WB 法にて陽性を確認する 母子感染の診断は 移行抗体が存在するため抗体検査は有用でなく 児の血液中の HIV- 1 抗原 HIV-1RNAまたは HIV-1 プロウイルス DNA の検査により確認する必要がある 8 HIV 感染症の検査 / 診断

10 参考文献 1) BartletJG etal.medicalmanagementofhiv Infection2007 Edition.Publishedby JohnsHopkinsMedicineHealthPublishingBusinessGroup,2007 2) 日本エイズ学会.HIV-1/2 感染症の診断法 2003 版 ( 日本エイズ学会推奨法 ). 日本エイズ学会誌 5: ,2003 3) DHHS.GuidelinesfortheUseofAntiretroviralAgentsinHIV-1-InfectedAdultsand Adolescents.November3,2008 4) 平成 20 年度厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業服薬アドヒアランスの向上 維持に関する研究班編. 抗 HIV 治療ガイドライン.2009 年 3 月 5) HIV 感染症治療研究会編.HIV 感染症 治療の手引き 第 12 版.2008 年 12 月 ( 第二内科遠藤知之 ) HIV 感染症の検査 / 診断 9

11 3 抗 HIV 療法 1 治療開始時期 現在行われている多剤併用での抗 HIV 療法 (antiretroviraltherapy=art) による HIV 増殖抑制効果は強力であり 治療開始早期に HIV ウイルス量を測定感度以下に押さえ込み 徐々に CD4 リンパ球数を回復させ 免疫機能を回復 維持することが可能である しかしながら HIV が潜伏感染している休止期 CD4 リンパ球の半減期が極めて長いために ART の継続によっても HIV の体内からの完全な排除には平均 73.4 年かかると推定されており 事実上 一度治療を開始すれば 生涯に渡り治療を継続する必要がある また 十分な服薬遵守 ( アドヒアランス ) が維持できなければ 薬剤耐性ウイルスが誘導され 結果的に治療の失敗に繋がる また ART の長期継続により軽視できない種々の副作用が出現してくる 以上の理由から 以前は ART の開始をできるだけ遅らせるという考え方が主流であった しかし 最近の大規模試験において ART を早期に開始することにより CD4 陽性リンパ球数を高く維持できる HIV 増殖によってもたらされる可能性のある心血管疾患や腎 肝疾患のリスクを減らせる CD4 陽性リンパ球数が高くても発症する可能性のある HIV 関連疾患のリスクを減らせるなど 早期治療が予後をより改善することが示され さらに飲みやすく副作用の少ない薬剤が増えたことなどの理由から CD4 陽性リンパ球数 <350/μ 渥 の患者で治療開始が推奨されることとなった 米国保健福祉省 (DepartmentofHealthandHumanServices=DHHS) InternationalAIDSsociety-USA(IAS-USA) BritishHIVAssociation(BHIVA) のガイドラインでは以下のような開始基準を推奨している 治療開始に際しては患者の状態 服薬アドヒアランスへの意識 理解度 副作用および薬物相互作用なども考慮し 入念なカウンセリングや教育を行った上で判断を下す必要がある ART 開始基準 1AIDSおよび HIV に関連する重篤な症状がある場合 CD4 陽性リンパ球数 血中ウイルス量の数値にかかわらず 治療開始 2 無症状の場合 CD4 陽性リンパ球数 350/μ 渥以下 治療開始 (CD4 陽性リンパ球数が200/μ 渥以下の場合はより推奨度が強い ) 350/μ 渥以上 一部の患者では治療を考慮すべきだが その妥当性については結論がでていない CD4 陽性リンパ球数にかかわらず 妊婦 治療開始 HIV 腎症の患者 治療開始 HBV 重複感染者で HBV 感染治療を必要とする場合 治療開始 10 抗 HIV 療法

12 治療を早期に開始した場合の利点と欠点 利 点 免疫機能の保持 ( 無症候期の延長 ) 他人への伝播のリスクを低下出来る可能性 CD4>350 でも発症する可能性のある HIV 関連合併症 ( 結核 非ホジキンリンパ腫 カポジ肉腫 末梢神経障害 HPV 関連悪性腫瘍 HIV 関連認識機能障害等 ) のリスクを減らすことができる HIV 増殖により発症 増悪する可能性のある疾患 ( 心血管系疾患 腎疾患 肝疾患 非 AIDS 関連悪性腫瘍 感染症等 ) のリスクを減らすことができる 欠 点 服薬による QOL の低下 重篤な副作用 将来の治療選択肢の範囲が狭まる 内服不十分による耐性獲得の危険 ( 耐性ウイルス伝播のリスク ) アドヒアランス維持のために必要な服薬開始前の準備期間が短くなる 将来さらに強力で低毒性の ART 開発の可能性 2 初回抗 HIV 療法 1995 年より導入されたいわゆる Highlyactiveantiretroviraltherapy=HAART は数種類の抗 HIV 薬を併用することにより 薬剤耐性ウイルスの出現を極力抑えることを目標としている 豊富な臨床データの蓄積により現在支持されている併用療法は 1 種類の非核酸系逆転写酵素阻害剤薬 (NNRTI)+2 種類の核酸系逆転写酵素阻害薬 (NRTI) または 1~2 種類のプロテアーゼ阻害薬 (PI)+2NRTI である 以下に DHHS IAS-USA BHIVA のガイドラインで推奨される初回治療 regimen を示すが 患者のライフスタイル 合併症 他の薬剤との薬物相互作用 薬剤耐性検査の結果などを総合して個々の患者に最も適切と考えられる regimen を選択すべきである またガイドラインは最新の臨床データに基づいて定期的に更新されるため 治療も最新の情報に基づいて決定されるべきである 抗 HIV 薬の種類 左から略号 一般名 商品名 核酸系逆転写酵素阻害剤 (NRTI) AZT zidovudine レトロビル ddi didanosine ヴァイデックス 3TC lamivudine エピビル d4t stavudine ゼリット ABC abacavir ザイアジェン TDF tenofovirdf ビリアード FTC emtricitabine エムトリバ AZT/3TC コンビビル ABC/3TC エプジコム TDF/FTC ツルバダ 非核酸系逆転写酵素阻害剤 (NNRTI) NVP nevirapine ビラミューン EFV efavirenz ストックリン DLV delavirdine レスクリプター ETR etravirine インテレンス プロテアーゼ阻害剤 (PI) IDV indinavir SQV saquinavir RTV ritonavir NFV nelfinavir LPV/RTV lopinavir/ritonavir ATV atazanavir FPV fosamprenavir DRV darunavir インテグラーゼ阻害剤 RAL raltegravir 侵入阻害剤 (CCR5 阻害剤 ) MVC maraviroc クリキシバンインビラーゼノービアビラセプトカレトラレイアタッツレクシヴァプリジスタアイセントレスシーエルセントリ 抗 HIV 療法 11

13 (1)DHHS ガイドライン (2008 年 1 月版 ) で推奨される初回療法の組み合わせカラムAと Bから一つずつ選択 * 推奨療法 代替 ~ 推奨療法 カラムA(NNRTIorPI) NNRTI PI EFV * ATV+ RTV(1 日 1 回 ) DRV+ RTV(1 日 1 回 ) ** FPV+ RTV(1 日 2 回 ) LPV/RTV(1 日 1 回又は 2 回 ) *** NNRTI PI NVP ***** ATV(1 日 1 回 ) ****** FPV(1 日 2 回 ) FPV+ RTV(1 日 1 回 ) SQV+ RTV(1 日 2 回 ) カラムB(NRTI) TDF/FTC **** ABC/3TC ****,******* ddi+ 3TCorFTC AZT/3TC **** EFV は妊娠第一期または避妊していない妊娠の可能性がある女性には推奨されない ** DRV は本邦では 他の抗 HIV 薬にて十分な効果が期待できない場合 忍容性に問題が あると考えられる場合に限り使用すること となっている *** LPV/RTV は1 日 2 回が基本 米国でのみ初回療法で1 日 1 回投与が認可されている **** 3TC と FTC は代替可能 ***** CD4 値が女性で250/μ 渥以上 男性で400/μ 渥以上の場合は使用しない ****** TDF との併用時は ATV の AUC が低下するので RTV 併用が必要 ******* HLA-B * 5701 が陰性の患者に対してのみ (2)IAS-USA ガイドライン (2008 年 8 月版 ) で推奨される初回療法の組み合わせ 1NNRTI+2NRTIまたは RTV-boosted1PI+2NRTIを推奨 推奨される薬剤 2NRTI NNRTI PI TDF/FTC EFV LPV/RTV ABC/3TC ATV+ RTV FPV+ RTV DRV+ RTV SQV+ RTV (3)BHIVA ガイドライン (2008 年 10 月版 ) で推奨される初回治療の組み合わせカラムAとBとC から一つずつ選択 * ** 推奨 代替 特定の集団で推奨 カラム A(NNRTIorPI) EFV LPV/RTV FPV+ RTV ATV+ RTV SQV+ RTV NVP * ATV ** カラム B(NRTI) TDF ABC ddi AZT CD4 値が女性で 250/μ 渥未満 男性で 400/μ 渥未満の場合のみ使用 心血管合併症の高リスク患者で PI を使用する場合 カラムC(NRTI) 3TC FTC 12 抗 HIV 療法

14 (4) 推奨されない治療 初回治療に推奨されない薬剤 組み合わせ NRTI ABC/3TC/AZT(NRTI3 剤治療 ; 効果不良 ) ABC+ ddi(data 不足 ) ABC+ TDF(Data 不足 ) ddi+tdf( 効果不良 ) d4t+ 3TC( 副作用 ) NNRTI DLV( 効果不良 錠数多 ) ETR(Data 不足 ) 融合阻害剤 T-20 * (Data 不足 不便 ) MVC(Data 不足 ) インテグラーゼ阻害剤 RAL(Data 不足 ) PI UnboostedDRV(Data 不足 ) IDV( 錠数多 尿路結石 ) NFV( 効果不良 ) RTV 単剤 ( 錠数多 消化器症状 ) UnboostedSQV( 効果不良 ) TRV ** ( 効果不良 ) * ** T-20(enfuvirtide): 国内未承認 注射剤で 1 日 2 回の皮下注射を要す TRV(tipranavir): 国内未承認 常に推奨されない治療法 組み合わせ 薬剤 治療法 組み合わせ NRTI または NNRTI 単剤 ( 妊婦への AZT 以外 ) NRTI2 剤 NRTI3 剤 (ABC+ AZT+3TCorTDF+ AZT +3TC 以外 ) 何れも耐性誘導し治療失敗のリスク 薬剤 妊娠初期 妊娠可能性への EFV( 催奇形性 ) CD4 高値 * への NVP( 急性肝障害 ) PI として DRV,SQV,TRV 単剤 ( 効果不良 ) ATV+IDV( 高ビリルビン血症 ) ddi+d4t( 末梢神経障害などの毒性 ) NNRTI2 剤 ( 副作用 ) 3TC+FTC( 単剤と同じ効果 ) ETR+UnboostedPI( 副作用 ) ETR+boostedATV,FPV,TRV( 副作用 ) d4t+azt(hiv に対する拮抗作用 ) * CD4 値が女性で 250/μ 渥以上 男性で 400/μ 渥以上 (5)1 日 1 回療法血中または細胞内半減期の長い薬剤の開発により 1 日 1 回投与可能な薬剤のみの組み合わせで ART を組み立てることが可能となり アドヒアランスの向上さらには患者の QOL 改善が期待されている 但し 1 日 1 回療法と同薬剤の1 日 2 回療法の治療効果を比較した長期臨床試験はまだ十分に行われていない また飲み忘れによる耐性誘導のリスクが上昇することが懸念されるため 服薬指導が従来以上に重要となる 1 日 1 回投与が可能な薬剤 ( ) 内は投与剤数 2NRTI TDF/FTC(1) ABC/3TC(1) ddi * +3TCorFTC(2) EFV(1or3) NNRTI PI ATV±RTV ** (2~ 3) FPV+ RTV *** (3~ 4) LPV/RTV **** (4) * ** *** **** カプセル剤 ( ヴァイデックス EC) のみ TDF との併用時は ATV の AUC が低下するので RTV 併用が必要 1 日 1 回投与は国内では初回療法のみの適応 米国でのみ初回療法で1 日 1 回投与が認可 消化器症状の発現頻度が上昇 抗 HIV 療法 13

15 3 抗 HIV 薬の副作用 全ての抗 HIV 薬で副作用が報告されており 治療の変更や中止 アドヒアランスの低下の重要な要因となっている 副作用の中には継続することで徐々に軽減するものから重篤となり死に至るものまで様々であるが 各薬剤の副作用の種類と発現時期 その対処法について十分熟知し 患者にも投薬前に十分説明して理解を得る必要がある 以下に発現時期別に主要な副作用について概説する 個々の薬剤の副作用については 24. 抗ウイルス薬 の項を参照 (1) 開始直後から出現 消化器症状 AZT,TDF,ddI とすべての PI で悪心 嘔吐 腹痛が出現することがある また NFV, LPV/RTV,ddI では下痢の頻度が高い いずれも継続と共に軽快することが多いので 初期は制吐剤や止痢剤などで対応する EFV による中枢神経症状 EFV の投薬により半数以上の症例で眠気 不眠 異常夢 めまい 集中力低下が出現するが 2~4 週で減弱消失する 症状が持続する場合には薬剤の変更を考慮する 高ビリルビン血症 ATV と IDV の内服により高率に間接型ビリルビンの上昇が認められるが これは肝臓でグルクロン酸包合に係わる酵素を薬剤が阻害するためであり 臨床的に問題となることはほとんど無く継続投与が可能である (2) 開始後数日 ~ 数週で出現 皮疹 NNRTIでの発現頻度が高い PI では ATV,FPV,NFV で発現頻度が高い 多くは軽 ~ 中等度であるが 稀に Stevens-Johnson 症候群や中毒性表皮壊死症などの重症型薬疹に進展することがあるため 発熱や粘膜の潰瘍を伴う場合には直ちに投与を中止する ABC による過敏症 投与から 6 週間以内に高熱を伴う皮疹 全身倦怠感 消化器症状 呼吸困難などを呈す 発症の中央値は9 日目 発現時は全ての抗 HIV 薬を中止し ABC の再投与は禁忌である 発症と HLA-B * 5701,DR7,DQ3 と関連があると報告されており 日本人ではこの遺伝子型は少ないため発症頻度は低いと考えられている NVP による過敏症 急性肝障害 発現時期は投与開始から16 週以内で 多くは 6 週以内に出現 症状は消化器症状 黄疸 発熱 皮疹で 急速に肝壊死が進行し肝不全に至る可能性がある CD4 値が女性で250/μ 渥以上 男性で400/μ 渥以上で有意に発現率が高いため投与は避ける 発現時は全ての抗 HIV 薬を中止する必要があるが 肝障害が進行する場合もある 再投与は禁忌である (3) 開始後数週 ~ 数ヶ月で出現 AZT による骨髄抑制 AZT 投与から数週から数ヶ月後で貧血や好中球減少が認められる 高度の場合は多剤への変更を考慮する 腎障害 TDF 投与後に腎尿細管障害が出現することがあり 多くは無症候性だがまれに急性腎不全を生ずる場合があるため 既に腎障害のある場合は投与を避ける IDV では薬剤の結晶により高率に腎結石を生じ さらに膿尿を伴う腎不全を合併することがあるため 予防的に1 14 抗 HIV 療法

16 日に2L 程度の水分摂取の継続が必須となる 膵炎 ddi 単独投与で1~7% に合併の報告があり d4t や TDF との併用では更に頻度が上昇する 直ちに ddi を中止し 適切な管理を行う PI による出血傾向 すべての PI によって 特に血友病患者で出血傾向増強が認められることがある 凝固因子製剤の使用頻度を高めるか 高頻度であれば NNRTIへの変更も考慮する 免疫再構築症候群 厳密には薬剤の直接的な副作用ではないが ART による免疫回復に伴い 軽快していた日和見感染症 (OI) が逆に増悪したり 新たな OI が顕在化する現象を指す ART 開始から数ヶ月以内 ( 多くは8 週間以内 ) に発症し ART 開始前の CD4 数は通常 50/μ 渥未満である 頻度の多いものは CMV 網膜炎 MAC 感染症 結核であるが B 型や C 型肝炎の報告もあり注意を要する ART は原則継続し OI に対する治療と NSAIDs の投与で対応するが 炎症所見が高度であれば PSL30~60mg/ 日の併用による過剰免疫の抑制も考慮する ART の中止を余儀なくされる場合もある (4) 開始後数ヶ月 ~ 数年かけて出現 乳酸アシドーシス / 肝脂肪変性 NRTIによるミトコンドリア障害が原因で 非特異的な消化器症状を前駆症状として呼吸困難 ギランバレー症候群様の症状が進行する重篤な副作用である 発症頻度は % 程度であるが 一度発症すればその死亡率は高い 理論的には全ての NRTIで起きる可能性があるが とりわけ d4tと ddi での報告が多い (AZT ではまれ ) 血清乳酸値 5mM(45mg/dl) 以上では直ちにすべての ART を中止する必要があるが 回復までは4~48 週必要とされる ビタミン B1,B2 などの投与が有効とする報告もある 但し 無症候性の高乳酸血症 (2mM(18mg/dl) 以上 ) は8~20% に認められるため ルーチンの測定は推奨されない lipodystrophy/ インスリン抵抗性 / 高脂血症 ART の長期継続により引き起こされる代謝異常 体幹と内臓に脂肪は蓄積する一方で 四肢と皮下の脂肪は萎縮する 更にインスリン抵抗性と高脂血症も合併し 結果的に心筋梗塞などの心血管イベントのリスクが高まることが報告されている 原因としては NRTI PI との関連が報告されているが その作用は各薬剤間でも異なり NRTIの中では d4t で脂肪萎縮や中性脂肪の上昇の頻度が高く 一方 PI では ATV は代謝への影響が少ない 治療方針は確立していないが 運動 食事療法 薬物療法 影響の少ない治療 regimen への変更などが有効とされる 骨壊死 / 骨粗鬆症 ART の長期継続により0.08~1.33% に症候性の骨壊死が合併 さらに MRI で確認される無症候性の骨壊死は1.33~4.4% に合併すると報告されている 多くは大腿骨頭病変を有す アルコール 高脂血症 糖尿病 ステロイド使用などの関与が疑われているが 特定の抗 HIV 薬との関係は明らかでない 骨密度の低下は ART 導入前の HIV 感染者でも報告がある (5) 薬物相互作用について NNRTIと PI はすべて肝のチトクロームP450(CYP) により代謝を受けるため 抗 HIV 薬同士 または同じ CYP で代謝される薬剤との併用では相互作用が生じる可能性がある また NRTIでも同様の薬物相互作用が報告されている 代謝低下により抗 HIV 薬の濃度が上昇すれ 抗 HIV 療法 15

17 ば 副作用の出現や増強が生じ 一方 代謝促進により抗 HIV 薬の濃度が低下すれば 十分なアドヒアランスが維持できていても 治療の失敗に繋がる可能性があるため 投薬に際しては薬物相互作用に十分な注意が必要である 薬物相互作用が疑われる場合には後述する TDM が有用である 個々の薬剤の薬物相互作用について DHHSguideline の Table15 を参照 (6)ART の治療中断について種々の抗 HIV 薬の副作用やその他の理由で ART の中断を余儀なくされる場合には 薬剤耐性の発現を阻止するために すべての抗 HIV 薬を原則 同時に中止する 但し NNRTIの EFV と NVP は半減期が極めて長いため 同時に中止すると 事実上 NNRTIの単剤治療を行っていることとなり NNRTIに対する耐性変異を誘導する結果となる このため EFV と NVP 中止時には NRTIを 1 週間長く継続してから中止するか 代わりの PI を1 週間追加投与してから 全ての薬剤を中止する方法が推奨される ART を計画的に中止したり再開したりすることで HIV 特異的免疫反応を刺激し ウイルス抑制能を高め 結果的に ART による長期毒性を回避する目的で計画的治療中断法 (Structuedtreatmentinterruptions=STI) が試みられてきたが 大規模な study である SMARTstudy の中間解析では 治療継続群に比較し STI 群で有意に OI 発症率と死亡率が増加し 試験は中止された この結果からも 現時点では治療安定期における STIは推奨されないと考えられる 急性 HIV 感染症治療後 妊婦における ART 後の治療中断についても有益性は確立していず 現時点では推奨されない 4 特別な状況での抗 HIV 薬療法 (1) 急性 HIV 感染症急性感染期中に治療を開始することによる長期的な有益性は現時点で不明であるため 急性感染での治療開始は任意と考えるべきである もし 治療を開始した場合には慢性感染の治療と同様に HIV-RNA 量を 50 コピー /ml 以下に到達させるのが目標となる また治療開始前の薬剤耐性検査の実施を考慮する 急性感染症の適切な治療期間についても明確な結論は得られていない (2) 妊婦に対する抗 HIV 療法児への感染を予防するために 基本的には CD4 数に係わらず全ての妊婦に対して治療を行う HIV 感染妊婦からの母子感染予防は 以下の3つの治療で構成される 1 母体に対する ART による子宮内感染の予防 2 分娩中の AZT 点滴投与 + 選択的帝王切開術による産道感染の予防 3 人工栄養による母乳感染の予防と児に対する AZT 投与 妊婦が ART を行っていない場合で HIV の治療適応がある場合は 緊急性がない限り妊娠 14 週から AZT を含んだ HAART を開始し 分娩中や出産後も継続する HIV の治療適応がない場合でも母子感染予防の観点から妊娠 14 週から AZT を含んだ HAART を開始する ウイルス量が1000 コピー /ml 未満の症例については AZT の単剤投与を検討しても良い 分娩時は抗 HIV 療法を継続するが 出産後は治療継続の必要性を再検討する 妊娠判明以前から ART を行なっている場合は 一般的に器官形成期の間 ( 妊娠 14 週まで ) も ART を中止すべきではない 妊婦に使用する抗 HIV 薬については以下の表を参照 16 抗 HIV 療法

18 HIV 感染妊婦における抗 HIV 薬の使用 推奨度 NRTI NNRTI PI その他 第一選択 AZT 3TC NVP LPV/RTV 第二選択 ddi FTC d4t ABC IDV+RTV NFV RTV SQV+RTV データ不十分 TDF ATV FPV DRV RAL MVC 推奨できない EFV DLV 具体的な治療方針については 9. 妊婦 新生児の HIV の項を参照 HIV 母子感染予防対策マニュアル第 5 版 (htp://api-net.jfap.or.jp/ から download 可能 ) 米国 CDCのガイドライン PublicHealthServiceTaskForceRecommendationsforUseof AntiretroviralDrugsinPregnantHIV-1-InfectedWomenforMaternalHealthandInterventionstoReducePerinatalHIV-1TransmissionintheUnitedStatesOctober12,2009 (htp://aidsinfo.nih.gov/contentfiles/perinatalgl.pdf) も参考になる (3)HIV と HBV の重複感染時の抗 HIV 療法抗 HIV 薬の内 3TC,FTC,TDF は抗 HBV 活性も併せ持つ薬剤であり 3TC は単剤で HBV 治療薬としても使用される HIV/HBV 重複感染患者に HBV 治療目的に3TC が単剤で投与された場合には 2 年で40% 5 年で 90% に3TC 耐性が誘導されたと報告されている このためHIV/HBV 重複感染患者に ART を行う場合には 3TC,FTC,TDF を単独で含む regimen は避け TDF+ FTCまたは TDF+3TCを NRTI2 剤として用いることが推奨される 3TC, FTC,TDF の単剤使用が避けられない場合には entecavir( バラクルード 抗 HBV 活性のみ有す ) の併用を考慮する また何らかの理由で3TC,FTC,TDF を含む ART を中止する場合には HBV の再活性化による肝炎の急性増悪に注意が必要であり 予防的な entecavir や adefovir( ヘプセラ 抗 HBV 活性のみ有すが TDF の耐性誘導の可能性有り ) の投与を考慮する しかし entecavir はHIV に対する活性も有し 重複感染者に単独で使用すると M184V を誘導する可能性がある また adefovir は抗 HBV 活性のみ有するが TDF の耐性誘導の可能性があるとされている 治療開始時の CD4 数が低値の場合には 免疫再構築症候群による肝炎の増悪が起きる場合がある 詳細は 5.HIV 感染症と肝炎 の項を参照 (4)HIV と HCV の重複感染時の抗 HIV 療法 HIV/HCV 重複感染患者では HCV 単独感染患者に比較し 肝炎の進行が急速であり早期に肝硬変 肝癌への進展がみられ 主要な死因となっている このため HIV/HCV 重複感染患者では肝疾患の進行を阻止するために より早期に ART を導入することを推奨する意見もある また CD4 数が低下していると抗 HCV 療法の有効率が低下するため CD4 数が200/μ 渥未満では 先に ART を開始し 免疫能を回復させてから抗 HCV 療法を導入する 現在 ペグインターフェロンとリバビリン (RBV) の併用療法が標準的な抗 HCV 療法であるが ddi やd4T はRBV との併用で乳酸アシドーシスや膵炎 急性肝不全などの重篤な副作用の報告があり またAZT は RBV による貧血が高度となる可能性があるため これらの薬剤との併用は避けることが推奨される 当院では HIV HCV 重複感染症診療ガイドライン第 3 版 (2008 年 11 月改訂 ) を作成しており 詳細はこちらを参照(htp://aidsweb.med.hokudai.ac.jp から download 可能 ) 抗 HIV 療法 17

19 (5) 結核合併時の抗 HIV 療法活動性結核の合併時には速やかに結核治療を開始する必要があるが 結核では ART による免疫再構築症候群の合併頻度が高く また使用薬剤による副作用の発現頻度も高いことから 結核の治療を先行することが望ましい DHHS ガイドラインでは CD4 数が100 未満の場合に抗結核治療開始から2 週間遅らせて ART を開始し CD4 数が350 以上の場合は抗結核療法開始から8~24 週後または抗結核治療終了後に ART を開始することを推奨している BHIVA のガイドラインでは CD4 数が100 未満と低下している場合には可能な限り早期に ART を開始し 反対に CD4 数が200 以上に保たれている場合には 6ヶ月の結核治療を完遂してから ART を開始することを推奨している また結核治療に重要な薬剤である rifampicin は CYP 誘導作用があるため 全ての PI または NNRTIと薬物相互作用を生じる 薬物相互作用のため rifampicin の使用が困難な場合には rifabutin( エイズ治療薬研究班 htp:// から入手可能 ) への変更を検討する またこれらの薬剤の併用時には投与量の調整が必要であり 具体的な投与量については DHHSguideline のTable15 を参照 具体的な治療法については 7-8. 結核症 の項を参照 5 治療効果判定と薬剤変更 (1) 治療反応性のモニタリング HIV-RNA 量 治療開始時と開始 2~8 週後に測定する 十分な治療効果とアドヒアランスが維持されていれば少なくとも月に1.0log10 コピー /ml 以上の減少が期待出来る その後は 4~8 週毎に測定し 開始 16~24 週後に50 コピー /ml 以下に到達させるのが目標となる 検出限界以下に到達したら3~4 ヶ月毎に測定する CD4 リンパ球数 治療開始時と開始後は初期は毎月 その後は2~4ヶ月毎に測定する 通常は上記 HIV- RNA 量と同時に測定する HIV の抑制が十分であれば通常 年に100/μ 渥の割合で上昇がみられる (2)ART 失敗の定義 ウイルス学的失敗 治療開始 24 週後の HIV-RNA400 コピー /ml 以上 治療開始 48 週後の HIV-RNA50 コピー /ml 以上 * 一度抑制後に再び持続して HIV-RNA400 コピー /ml 以上に上昇 *50~500 コピー /mlの一過性の上昇で 治療の変更無く 4~6 週以内に50 コピー /ml 以下に戻る一過性のウイルス血症の場合は blip であり 治療失敗とは関連無いと考える 免疫学的失敗 治療開始 1 年後に治療前から CD4 数が25~50/μ 渥の上昇を示さない 治療中に CD4 数が治療前以下に低下 臨床的進行 少なくとも3ヶ月の治療実施後に HIV に関連症状の出現 再発 ( 免疫再構築症候群は除外 ) (3)ART 失敗時のアプローチ ART 失敗の原因を究明することが重要であり 以下の評価を行う アドヒアランス アドヒアランスが不十分な場合にはその根本的な原因 ( 服薬方法 副作用など ) を特定し 18 抗 HIV 療法

20 それに対処する 可能であれば1 日 1 回療法の様な処方の簡略化を行う 副作用 副作用が原因でアドヒアランスの低下が生じる可能性も考慮する 薬物血中濃度モニタリング(TherapeuticDrugMonitorig=TDM) 服薬時間の非遵守 ( 食後投与など ) や薬物相互作用 遺伝学的な個体差などにより抗 HIV 薬の濃度が目標レベルに到達していないことが予想される場合に行う 本邦では 抗 HIV 薬の血中濃度に関する臨床研究 班 ( ホームページ htp:// を通して測定が可能である ( 測定可能な薬剤は DLV 以外の NNRTIと PI) NRTIについては細胞内濃度が重要であり 細胞内濃度と血漿中濃度の関係が確立していないが 上記研究班では TDF のみ血中濃度測定が可能である 薬剤耐性検査 ウイルス学的失敗が認められた患者において 治療方針を決定する際には 特に薬剤耐性検査が有用である 薬剤非存在下では野生株が優勢となり 変異株が検出されなくなるため 検査は治療中または治療中止後 4 週間以内に実施する HIV-RNA が1000 コピー /μ 渥未満では実施できない 検査の詳細については 4.HIV 薬剤耐性とその検査 の項を参照 ART 治療歴 現在は服用していないが 過去に使用した抗 HIV 薬に対しては 薬剤耐性検査では耐性が検出されなくても耐性株が存在している可能性があることを念頭に置く必要がある (4) 薬剤変更の実際 薬剤耐性が認められない場合 少数の変異株の存在を完全に否定は出来ないが アドヒアランスと服薬について再評価を行い この結果に基づいて必要があれば薬剤の変更を行う 変更後は早期に薬剤耐性検査を再検する 薬剤耐性検査の結果と過去の治療歴から少なくとも二つ以上の有効な薬剤が存在する場合 少なくとも2 種類 ( 可能なら3 種類 ) の薬剤を含んだ治療法に速やかに変更し これ以上の耐性変異の拡大を抑え HIV-RNA50 コピー /ml 以下に到達することを目標とする 初回治療失敗時の推奨される薬剤変更を以下に示す 初期治療 2NRTI+1NNRTI 2NRTI+1PI± RTV 推奨される変更時の組み合わせ 有効な2NRTI+1PI± RTV 有効な2NRTI+1NNRTI 有効な2NRTI+ 有効な代替 1PI+RTV 有効な NRTI+1NNRTI+ 有効な代替 1PI+ RTV 上記の様な変更の他に RAL などの新規作用機序の薬剤の使用も検討する 薬剤耐性検査の結果と過去の治療歴から二つ以上の有効な薬剤が存在しない場合 この場合の治療の目標は免疫機能を維持し 疾患の進行を防ぐことである 薬剤の変更は行わずに 現行の治療を継続し 将来の有効な薬剤の出現を待つことが推奨されている 治療の中止 短期間の中断は疾患の進行に繋がるため推奨されない 1 種類の有効な薬剤の追加は急速な耐性の誘導を促すため一般的には推奨されないが CD4 数が100/μ 渥未満で臨床的進行のリスクが高い場合には 一時的な効果を期待して行われる 他の可能な治療選択を以下に示す 抗 HIV 療法 19

21 non-boostedpi(nfv を除く ) の場合は RTV-boosted を考慮 以前に使用していたが 副作用などで中止した( 現在は対処可能 ) 抗 HIV 薬に変更 経験的な多剤併用療法( 最大 3PI 2NNRTI を含む ) 新規薬剤の投入(TRV RAL MVC T-20)~ 但し最低 1 種類以上の他の有効薬剤と併用する ウイルス学的には安定だが 免疫学的に失敗した場合 ウイルス量がコントロールされていれば治療の変更は行わない HIV-2 HTLV-1 の重複感染や薬剤毒性などの評価も必要である TDF+ddI で治療されている場合にはこれらの薬剤の変更を考慮する 参考文献 1) DHHS.GuidelinesfortheUseofAntiretroviralAgentsinHIV-1-InfectedAdultsand Adolescents.November3,2008(htp://aidsinfo.nih.gov/) 2) HammerSM etal.antiretroviraltreatmentofadulthiv infection:2008 Recommendations of the InternationalAIDS Society-USA panel.jama 300: ,2008 (htp://jama.ama-assn.org/cgi/reprint/300/5/555) 3) GazzardBetal.BritishHIVAssociation(BHIVA)guidelinesforthetreatmentofHIV- 1-infected adults with antiretroviral therapy HIV Med 9: ,2008 (htp:// 4) BartletJG etal.medicalmanagementofhiv Infection2007 Edition.Publishedby JohnsHopkinsMedicineHealthPublishingBusinessGroup,2007 5) HIV 感染症治療研究会編.HIV 感染症 治療の手引き 第 12 版.2008 年 12 月 6) StrategiesforManagementofAntiretroviralTherapy(SMART)StudyGroup.CD4+ count-guidedinterruptionofantiretroviraltreatment.nengljmed355: ,2006 7) McMahonM etal.theanti-hepatitisbdrugentecavirinhibitshiv-1replicationandselectshiv-1variantsresistanttoantiretroviraldrugs.14thconferenceonretroviruses andopportunisticinfections,losangeles,abstract136lb, ) 平成 19 年度厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業周産期 小児 生殖医療における HIV 感染対策に関する集学的研究班編. HIV 母子感染予防対策マニュアル第 5 版. ( 第二内科遠藤知之 ) 20 抗 HIV 療法

22 4 HIV 薬剤耐性とその検査 1 薬剤耐性 HIV はなぜ出現するのか? 抗 HIV 薬剤が効かない HIV を薬剤耐性 HIV という HIV は逆転写酵素により自身のゲノム RNA を DNA に変換し それを宿主細胞遺伝子に組み込むことにより子孫の HIV を作り出す その際に働く逆転写酵素は間違った塩基を取り込んでも それを校正する機能を持たないため変異 HIV が生じる 複製エラーは高率 (10-4 ~ 回の複製につき1カ所変異する ) に起き 生体内では一日に10 9 ~10 10 もの HIV が産生されるため高度の多様性が獲得され かつ 薬剤による選択圧により薬剤耐性 HIV が出現する 薬剤耐性 HIV は抗 HIV 薬剤治療中に出現し 特に不十分な抗 HIV 薬剤療法により出現する危険性が高い 近年では新規未治療感染者からも薬剤耐性 HIV が検出され 増加していることから注意が必要である 2 HIV 薬剤耐性検査とは? (1) 薬剤耐性検査の特徴と意義 HIV 薬剤耐性検査とは血液中に存在するHIV が どの薬剤に感受性があるかを推定する検査であり 適切な治療を進める指標として必要な検査である その意義については多くのコホート研究で 薬剤耐性検査の実施が良い治療効果を得る上で有効であることを報告している 薬剤耐性検査には genotype 検査 ( 遺伝子型解析 ) と phenotype 検査 ( 表現型解析 ) の2 種類があり それぞれに長所 短所がある ( 表 1) 方 法 表 1 HIV 遺伝子の塩基配列を決定し 逆転写酵素 プロテアーゼ インテグラーゼ領域のアミノ酸変異から耐性薬剤を推定する ( 表 2) genotype 検査と phenotype 検査の特徴 genotype 検査 ( 遺伝子型解析 ) 特 phenotype 検査に比べ検査方法が簡便で 短時間 (3~4 日 ) で結果が得られる 標的酵素のアミノ酸変異から耐性を推測するには専門的な知識 経験が必要である データ蓄積の少ない新薬などの未知の耐性変異は判定できない 徴 方 法 患者から分離した HIV を培養 増殖させ そのウイルスの増殖を阻止するのに必要な抗 HIV 薬の濃度を測定する方法で 通常 薬剤に対する感受性はウイルス増殖能 50% 阻止濃度 (IC50) 等で表現される phenotype 検査 ( 表現型解析 ) 特 細菌に対する感受性に類似した判定が行える 交差耐性が確認できる 徴 検査方法が複雑で検査に長時間を要する HIV 薬剤耐性とその検査 21

23 (2)genotype 検査 ( 遺伝子型解析 ) について genotype 検査は簡便かつ比較的短時間で結果が得られ 薬剤と変異に関するデータベースも充実しているため世界的に実施されている検査である 薬剤はいくつかの決まった変異を誘導するため 誘導された変異をみることによって 耐性を示す薬剤の判定が可能となる 具体的な方法は血清中 HIV より抽出した RNAを RT-nestedPCR にてプロテアーゼ 逆転写酵素 インテグラーゼ領域を増幅し DNAsequencing により塩基配列を決定し アミノ酸変異を判定する genotype 検査をおこなう際には 以下の事を知っておく必要がある 1) 長期間の薬剤使用により耐性変異が集積された場合 変異同士の相互作用により変異と薬剤の対応関係が崩れ genotype 検査による評価と実際の臨床経過の間に乖離が生じる場合がある 2) 血液中に優位に存在する HIV の耐性変異しかみることができない 3) 検査可能なウイルス量の目安としては1000 コピー /ml 以上である 4) 抗 HIV 薬投与中止後は野生株が増殖し 薬剤耐性 HIV の割合が減少しているため正確な結果が得られないことがある 5) 治療継続中であってもかつて投与したことがある抗 HIV 薬に対する耐性株は検出できないことがある 3 薬剤耐性検査をいつおこなうか 薬剤耐性検査は 抗 HIV 薬剤を変更する際に有効である しかし 保険収載されたことにより高額な自己負担が生じるため 必要以上の検査の実施を防ぎ 適切なタイミングで検査を行うことが重要である 我が国での薬剤耐性検査ガイドライン ( で示された実施のタイミングを以下に示す 1) HIV 感染の新規診断時 ( 急性感染例を含む ) 2) 治療開始時 3) 治療開始後十分な治療効果が認められない時 4) 治療中薬剤耐性の出現が疑われた時 5) 治療中何らかの理由で薬剤を変更する時 6) 治療の中断と再開時 7) 母子感染において予防投与を行う時捕捉 : 針刺し事故など感染者血液への暴露があった場合の予防的措置 4 薬剤耐性変異の判定 判定は耐性変異と薬剤との関係が記載されている耐性変異表を基におこなう 判定表には IAS-USA(InternationalAIDSSociety-USA) が作成している DrugResistanceMutationsin HIV-1 とStanfordHIVDrugResistanceDatabase が広く用いられている 詳細は HP (IAS-USA:htp:// StanfordHIVDrugResistanceDatabase:htp://hivdb. stanford.edu/) を参照 どちらも 主要な耐性変異の判定は同じであるが マイナー変異の解釈が微妙に違うため 両耐性変異表を参照し 判断する必要がある 多くの耐性変異が集積して解 22 HIV 薬剤耐性とその検査

24 釈が困難な場合については専門医に相談することが望ましい 5 HIV 薬剤耐性検査の依頼方法 HIV 薬剤耐性検査は2006 年 4 月 1 日より保険適用となり 抗 HIV 薬の選択および再選択の目的で行った場合に 3カ月に1 回を限度として6,000 点が算定できる 依頼はオーダリングシステムから行う (1) 依頼方法依頼画面は [6. 感染 ] [HIV 確認検査 ] [ 薬剤耐性検査 ] 依頼種は2 種類あり 担当医の判断で選択する 1 HIV 薬剤耐性検査 ( 保険適用 ) 治療薬剤選択および再選択を目的とする場合 2 HIV 薬剤耐性検査 ( 受託研究費 ) 3 カ月に2 回以上おこなうとき 治療選択目的以外でおこなうとき( 含初診時 ) HIVRNA 定量検査済の残余検体は検査終了後も5 年間は凍結保存しているので 薬剤耐性検査の後追い検査が可能である 保存検体で薬剤耐性検査を行いたい場合は遺伝子検査室 ( 内 5714 藤澤) に連絡する 必要量あることが確認できたらオーダリングシステムで依頼し バーコードのみを検査室に提出する (2) 検体採取採血管は EDTA2Na( 紫シール栓 細長 7ml 用 ) に5ml 以上採血し 採血後はよく転倒混和する (3) 検査と結果報告薬剤耐性検査には HIVRNA 量のデータが必要なため HIVRNA 定量検査を経てから検査を実施する そのため所要時間は HIVRNA 定量検査終了後 約 10 日を要する ただし所要日数は短縮できることもあるので もし結果を急ぐ場合は遺伝子検査室 ( 内 5714 藤澤) に連絡する 結果は電子報告書 (PDF 形式 ) での報告となり 画像情報システム (PACS) で参照可能である また ウイルス量が少ない等により検査ができなかった場合にはオーダリングシステムで測定不可の報告となり 報告書はない 報告書は IAS-USA と StanfordHIVDrugResistanceDatabase での判定を報告する ( 北海道大学院保健科学研究院吉田繁 検査 輸血部藤澤真一 ) HIV 薬剤耐性とその検査 23

25 表 2 薬剤耐性変異リストと見方 核酸系逆転写酵素阻害剤 (NRTIs) アミノ酸番号 AA(WT) 多剤耐性 (TAMs) 多剤耐性 (69ins) 多剤耐性 (151) ABC DDI FTC 3TC d4t TDF AZT 結果 41 M L L L L L 62 A V V - 65 K R R R R R - 67 D N N N T K R ins R R E R - R 74 L V V - 75 V I - 77 F L - 15 Y F F Y - Q M - M V VI VI - L W W W W W T K YF QE YF QE YF QE YF QE YF - 囎 券献献献元犬献献 献献鹸 囎 野生株のアミノ酸 (1 文字表記 ) 耐性に関わるアミノ酸変異 検体中 HIV のアミノ酸 変異なし 変異アミノ酸 (1 文字表記 ) 2 種類の変異アミノ酸が混在 非核酸系逆転写酵素阻害剤 (NNRTIs) アミノ酸番号 AA(WT) EFV ETR NVP 結果 90 V I A L K K V V E Y Y G P M I N M I CI L SA H G I EHP I A DFT CIV SA L I N AM I CICLH A YC プロテアーゼ阻害剤 (PIs) アミノ酸番号 AA(WT) L V I G K L D V L E E M K M I G I F I ATV+/-RTV IFVC E RMITV I I IFV Q ILV IL V L LY LVMTA FPV/RTV FIRV I IL V V LVM DRV/RTV I I F V V ML IDV/RTV IRV MR I I I IL V LPV/RTV FIRV MR I I F IL VA V L VLAMTS NFV FI N I IL SQV/RTV IRV I V VL TPV/RTV V V MR F G I T L V AMV 結 果 I HIV 薬剤耐性とその検査

26 アミノ酸番号 AA(WT) Q D I L I H A G T L V V N I I N L L I ATV+/-RTV E V LMV VITLCSTA ATFI V V S M LM FPV/RTV S V AFTS V M DRV/RTV P V V V IDV/RTV VT SA V I AFT V M LPV/RTV P VT S V AFTS V M NFV VT I AFTS V DS M SQV/RTV V VT S I AFTS V M TPV/RTV E K P LT D V M 結 果 V M - インテグラーゼ阻害剤 アミノ酸番号 AA(WT) Y Q N Raltegravir RHC HKR H 結 果 - H - 変異は majormutations( 灰色 ) と minormutations に分けられます majormutations とは薬剤特異的に最初に出現する耐性変異で 耐性化に大きく関わる変異です minormutations とは majormutations に引き続き出現する変異で この変異のみでは明らかな耐性は示しません HIV 薬剤耐性とその検査 25

27 5 HIV 感染症と肝炎 ウイルス性肝炎は 輸血後肝炎 ( 血清肝炎 ) と流行性肝炎 ( 伝染性肝炎 ) に大別できる 前者には B 型肝炎 C 型肝炎が含まれるが これらは HIV の感染経路と重複する可能性が少なからず存在する わが国の献血では 1972 年からB 型肝炎ウイルス (HBV) 1986 年から HIV に対するスクリーニングが開始されたが C 型肝炎ウイルス (HCV) が発見され わが国での献血スクリーニングが導入されたのは1989 年である したがって 1980 年前後から濃縮製剤を使用されているわが国の血友病患者などでは HIV と HCV の重感染を起こす可能性が高率にある さらに HCV 感染例では慢性化するものが多いため HIV コントロールの進歩に伴って 特に C 型慢性肝障害への対策がクローズアップされてきている また HBV 重複感染例では 抗 HBV 作用 / 抗 HIV 作用を合わせ持った薬剤があり その有効性以外に耐性出現に関する注意が必要となっている わが国では 厚生労働省科学研究費補助金エイズ対策研究事業として HIV 感染症に合併する肝疾患に関する研究 班により HIV HBV 重複感染時の診療ガイドライン (2009 年 ) HIV HCV 重複感染時の診療ガイドライン (2005 年 ) が著わされている また HIV 感染症治療研究会から HIV 治療の手引き が毎年改訂されて発行されている 当院では HCV との重複感染症例に関して HIV HCV 重複感染症診療ガイドライン第 3 版 (2008 年 ) が作成されている 1 慢性肝障害の診断 症候 (1) 慢性肝炎 6か月以上の肝機能障害とウイルス感染が持続する状態である さらに 組織学的には 門脈域はリンパ球を中心とした炎症細胞浸潤や線維増生による拡大がみられる 全身倦怠感 食欲不振 肝腫大を認める場合もあるが 一般的には自他覚所見に乏しい (2) 肝硬変病理学的に 慢性の肝細胞障害とそれに引き続く結合組織の増生および肝細胞再生の結果 線維性隔壁で囲まれた再生結節 ( 偽小葉 ) が肝全体にびまん性に形成された状態である 自他覚所見としては 全身倦怠感 食欲不振 腹部膨満感 腹水 浮腫 黄疸 肝性脳症 手掌紅斑 クモ状血管腫などを認める 2 慢性肝炎の診断のためのウイルスマーカー検査 (1)B 型肝炎ウイルスマーカー 1) HBV 関連抗原抗体系 a) HBs 抗原 :HBV 感染状態を表わす b) HBs 抗体 : 過去の HBV 感染を示す中和 ( 防御 ) 抗体 c) HBe 抗原 :HBV 量や感染力の高い状態を表わす d) HBe 抗体 :HBV 量や感染力の低い状態を表わす e) HBc 抗体 :HBV の感染の事実 ( 継続あるいは既往 ) を表わす キャリアでは CLIA 法で cutofindex10 以上のことが多い 26 HIV 感染症と肝炎

28 f) IgM HBc 抗体 : 急性肝炎あるいは慢性肝炎の急性増悪時に陽性となる CLIA 法では10 以上の高力価の場合 急性肝炎と考えられる g) HBV コア関連抗原 :HBV のプレコア コア遺伝子から転写翻訳される HBe 抗原や HBc 抗原などをまとめて定量的に測定したもの 肝細胞内の HBVcccDNA を反映するものと考えられている 2) HBV 核酸検査 a) HBV-DNA 量 (real-timepcr 法 ): 測定感度 1.8logcopies/ml 測定感度以下の場合は HBV-DNA 検出 あるいは 検出せず と表示される b) HBV 遺伝子型 : わが国では genotypec が最も多く 次いで genotypeb が多い c) HBV プレコア コアプロモーター変異 : それぞれの領域の変異の有無を測定する 3) 抗ウイルス薬の耐性遺伝子検出 a) HBV ポリメラーゼ領域変異 : ラミブジン エンテカビル アデホビルなどの核酸アナログ製剤に対する耐性変異の測定系があるが 現在は まだ保険適応外である (2)C 型肝炎ウイルスマーカー 1) HCV 関連抗原抗体系 a) HCV 抗体 ( 第 2あるいは第 3 世代 ):HCV 感染の事実 ( 継続あるいは既往 ) を表わす b) HCV 群別判定 ( グルーピング ): 抗体測定系を応用したタイプの判別法 [ 判定 ] グループ1: 本邦では type1b がほとんどであるが 血液製剤由来では type1a の場合もある グループ2: 本邦では type2a とtype2b の両者の可能性がある 判定保留 : グループ1およびグループ 2に対する抗体が共に陽性 (mixedtype) の可能性が考えられる 判定不能 : 抗体反応が陰性の場合が考えられる c) HCV コア抗原定量 :HCV のコア蛋白質量の測定系 測定感度 20fmol/L 2) HCV 核酸検査 a) HCV-RNA 量 (real-timepcr 法 ): 測定感度 1.2logIU/ml 測定感度以下の場合は HCV-RNA 検出 あるいは 検出せず と表示される b) HCV 遺伝子型 : わが国では genotype1b が最も多く 次いで 2a 2b の順となる 3) 抗ウイルス薬の効果と関連した遺伝子変異 ( 現時点では保険適応外 ) a) HCV コアアミノ酸置換 : コア領域の70 番目と91 番目のアミノ酸置換の有無を測定 b)isdr 変異 :HCVNS5a 領域のインターフェロン感受性決定領域 (interferon sensitivitydeterminingregion) のアミノ酸変異数を測定 3 HIV および肝炎ウイルスの重複感染における臨床的問題点 非加熱血液製剤を投与された血友病患者の多くや STDに伴う HIV 感染患者では 肝炎ウイルスと HIV の重複感染がみられる なかでも HIV と HCV との重複感染が多い (1)HBV 感染症と HIV 感染症の相互の関連それぞれの重複感染における影響の有無は 現段階では明らかではない (2)HCV の HIV 感染症に対する影響の有無 C 型肝炎は HIV 感染の悪化に影響しないとの報告が多い (3)HIV のC 型肝炎の進行に対する影響の有無 HIV の重複感染例の方が進行が早く 肝硬変 肝不全への進展率が高い HIV 感染症と肝炎 27

29 (4)HIV/HCV 重複感染に対する抗ウイルス療法時の問題点 1) 抗ウイルス剤の他方への影響 効果 HIV プロテアーゼインヒビターは HCV プロテアーゼへの直接効果は有さない 2) 抗ウイルス療法による肝機能障害特に HIV プロテアーゼインヒビターでは肝機能障害が高率に認められる 薬物自体の肝細胞への障害のほかに 肝病変の進展例では薬物血中濃度の上昇も考慮する必要がある 4 ウイルス性肝炎に対する治療の考え方 B 型あるいはC 型肝炎に対する治療目標は (1) ウイルスの排除 (2) 肝炎の鎮静化 (3) 長期予後の改善 肝病変進展 ( 肝硬変 肝癌 ) の抑制である 基本的にはウイルス感染症であり ウイルスの排除が達成されれば肝炎の治癒が期待できる C 型肝炎の場合 インターフェロン治療によりウイルス学的治癒が得られる症例もある ウイルスの排除が困難な場合には 肝機能の正常化を目指す B 型肝炎の場合には 短期的にウイルスが消失することは困難であるが HBe 抗原 / HBe 抗体の+/-から -/+への変化(seroconversion) が 臨床的には肝炎鎮静化に関連する指標となりうる 結果として 長期的に肝硬変への進展や肝癌発生を抑制することが最終的な目標となる (1) に関しては インターフェロン製剤 核酸アナログなどが使用される インターフェロンはB 型肝炎およびC 型肝炎に用いられる B 型に対しては6か月まで C 型に対しては1 年以上の長期投与も可能となっている B 型肝炎に対しては 平成 12 年に逆転写遺酵素阻害薬のラミブジン ( ゼフィックス ) が保険適応となり さらに 平成 16 年にラ遺ミブジンに耐性例に対するアデホビル ( ヘプセラ ) の併用が使用可能となった さらに遺平成 18 年からエンテカビル ( バラクルード ) も投与可能となった C 型肝炎に対して遺は 平成 13 年からインターフェロン α2b リバビリン ( レベトール ) 併用療法が可能となり 平成 15 年からは徐放性があり週 1 回の皮下投与が可能な ポリエチレングリ遺コール結合型の PEG-IFNα2a( ペガシス ) の使用が認められた さらに 平成 16 年遺遺からは PEG IFNα2b( ペグイントロン ) とリバビリン ( レベトール ) の併用療法が可能となった (2) に関しては グリチルリチン製剤 ウルソデオキシコール酸などの肝庇護薬が投与される 5 ウイルス肝炎の治療の実際 ウイルス性慢性肝炎 肝硬変に対する治療に関しては 厚生労働省の 肝硬変を含めたウイルス性肝疾患の治療の標準化に関する研究 班によりガイドラインが作成され 毎年 更新させている このガイドラインに関しては 日本肝臓学会のウェブサイト (htp:// などから参照可能である (1) インターフェロン (IFN) ウイルス性肝炎の治療に使用される IFN は IFN-α または IFN-β である IFN-α には天然型と遺伝子組換え (2aまたは 2b) 型がある IFN-β は天然型である 最近 徐放製剤の PEG- 28 HIV 感染症と肝炎

30 IFN(α2a とα2bの 2 種類がある ) が C 型肝炎に投与可能となった 1)B 型肝炎に対する IFN 治療現在は 1 日 300 万 ~900 万単位 ( 製剤 症例により異なる ) の6ヶ月間の投与が標準である 海外では PEG-IFNα2a の使用 1 年間の長期投与なども行われており わが国でも臨床試験中である 2) C 型肝炎に対する IFN 治療 1 日 300 万 ~1,000 万単位 ( 製剤 症例により異なる ) を 通常は初期 2~4 週間連日 以後週 3 回投与することが多い 平成 14 年から投与期間の制限が撤廃された 現在は従来型の IFNα 製剤に限って 自己注射が可能となっている 3) C 型代償性肝硬変に対するIFN 治療ウイルスの条件が 1 型高ウイルス量以外 の代償性肝硬変症例に対しては IFNβの投与 (1 回投与量は 開始 6 週目までは300 万 ~600 万単位 7 週目以降は300 万単位 ) が さらに 上記条件または 1 型かつ500KIU/ml 以下 の症例には IFNα の投与 ( 開始 2 週目までは連日 600 万単位 以後は300 万 ~600 万単位を週 3 回 ) が可能となった 4) C 型肝炎に対する PEG-IFN 治療遺平成 15 年から PEG-IFNα2a( ペガシス ) の単独投与が可能となった 通常は 週 1 回 180μg の皮下投与であるが 対象や副作用によっては 投与量の減量 投与間隔の延長などを考慮する 5) C 型肝炎に対する PEG-IFN リバビリン併用治療平成 16 年 12 月から 1 型 高ウイルス量の C 型肝炎症例に対する48 週間併用投与が可能遺遺となった PEG-IFNα2b( ペグイントロン ) とリバビリン ( レベトール ) は それぞれ体重により投与量が設定されており PEG-IFNα2b は1 回 60~150μg リバビリンは1 日 600~1000mg を投与する その後 1 型高ウイルス量以外 の症例に対する24 週間併用治療も可能となった 国内の臨床試験における著効 ( 持続ウイルス排除 ) 率は 前者で遺 47% 後者で89% である その後 平成 19 年からは PEG-IFNα2a( ペガシス ) とリバ遺ビリン ( コペガス ) 併用治療も可能となった (2) 核酸アナログ製剤 1) ラミブジンラミブジンは B 型慢性肝炎 肝硬変に対してはゼフィックス 100mg 錠の1 日 1 回の経口投与を行う 抗ウイルス効果に優れているが 投与期間が長くなると耐性株の出現率も高くなるため HBe 抗原陽性例に対する投与での seroconversion 率は経時的には必ずしも上昇しない 腎機能障害および乳酸アシドーシスの出現に注意が必要であり 腎機能により投与間隔を調節する必要がある 抗 HIV 薬としてのラミブジンには エピビル錠とコンビビル (AZT/3TC) エプジコム(ABC/3TC) などの合剤がある HBV および HIV のそれぞれの耐性出現の可能性を考慮して治療選択をする必要がある 2) アデホビルラミブジン投与中にB 型肝炎ウイルスの持続的な再増殖を伴う肝機能異常が確認されたB 遺型慢性肝炎およびB 型肝硬変に対して ラミブジンと併用する アデホビル ( ヘプセラ ) は 1 日 1 回 10mg の経口投与を行う 腎機能障害および乳酸アシドーシスの出現に注意が必要であり 腎機能により投与間隔を調節する必要がある 3) エンテカビル B 型慢性肝炎およびB 型肝硬変に対して 1 日 1 回 0.5mg の経口投与を行う 抗ウイルス HIV 感染症と肝炎 29

31 効果はラミブジンよりも強く 少なくとも開始 2 年までの耐性発現率もラミブジンより低率である ラミブジン耐性症例に対する治療では 1 回 1 回 1mgを投与する (3) 肝庇護剤 1) グリチルリチン ( 強力ネオミノファーゲン C:SNMC) 慢性肝炎では 通常 40ml/ 日を静脈内投与する 反応が不十分な場合は100ml まで増量可能である 高血圧 低カリウム血症など アルドステロン様の副作用に注意が必要 2) ウルソデオキシコール酸 ( ウルソ :UDCA) 慢性肝炎には 通常 300mg~600mg/ 日の経口投与する 6 HIV 感染者に対するウイルス性肝炎治療の実際 (1)HCV 重複感染例への IFN 治療 1) C 型肝炎に関連して HIV との重複感染者では若年から肝病変の進展をきたす例が多いため HIV 感染症の状況や合併症の有無 肝予備能の評価のうえで 基本的には積極的治療の可能性を考慮すべきである ウイルス学的検査成績や肝線維化の程度 副作用の見通しなどを考慮して 治療計画を策定する 治療効果は 単に抗ウイルス効果のみならず 生化学的有用性 (ALT の改善など ) も評価すべきである また 長期予後における治療の意義も勘案すべきである HCV- RNA 陽性で ALT 異常が3か月以上持続している場合に治療を考慮する 2) HIV 感染に関連して CD4 陽性細胞数の減少が必発であり 十分な CD4 細胞数が保持されていることが望ましい HAART 導入前の患者では350/μ 渥以上 HAART 開始後の患者では200/μ 渥以上に安定していることが望ましい 3) 血友病におけるC 型慢性肝炎に対する IFN 療法について (HIV 感染者発症予防 治療に関する研究班 HCV 小委員会 平成 8 年度報告より ) 皮下注射による出血例の報告はなかった 全例で血小板減少を認めた CD4 陽性細胞数は ほとんどの例で減少した 特に 投与前の CD4 陽性細胞数が少ない例で急激な減少をきたした例があり 厳重な経過観察を要する IFN 投与により HIV-RNA 量の増加は認めなかった 4) C 型慢性肝炎に対する IFN 療法ウイルスの遺伝子型 量と 前治療の有無 治療反応性などから 治療計画を立てる 初回投与の低ウイルス量症例は PEG-IFN 製剤の単独投与 (48 週間 ) それ以外は PEG-IFN 製剤とリバビリン製剤の併用投与 ( 1 型高ウイルス量例 は48 週間 それ以外は24 週間 ) が標準となるが 個々の症例の状態を総合的に判断して治療計画を決定する 治療終了後 6 か月間 血液中の HCV-RNA が陰性を維持していた場合 ウイルス学的著効 (SVR:sustainedvirologicalresponse) と判定し ウイルスは排除されたものと判断する 5) 重複感染例に対する抗ウイルス治療の際の注意点 リバビリンと ddi などの併用によりミトコンドリア中毒を起こし乳酸アシドーシスを起こすことがある 事前に HAART 内容を変更するか 併用を避ける必要がある 一部の逆転写酵素阻害剤や蛋白分解酵素阻害剤には肝毒性の危険があり 肝炎による肝障害との鑑別が必要となる 30 HIV 感染症と肝炎

32 AZT とリバビリンは貧血が増強するため 併用は避ける 6) 当院では HIV HCV 重複感染症診療委員会から HIV HCV 重複感染症診療ガイドライン が作成されており 参照願いたい (2)HBV 重複感染例への抗ウイルス治療 1) 治療適応の判断 HIV と HBV の重複感染者に対する治療の必要性については 以下の場合がある 1 抗 HIV 治療が必要で 抗 HBV 治療は不要 2 抗 HIV 治療は不要で 抗 HBV 治療が必要 3 抗 HIV 治療 抗 HBV 治療ともに必要同じ薬剤が 抗 HIV 治療 抗 HBV 治療に使用される場合があること それぞれのウイルスに対して耐性出現の可能性を有していること などの問題点がある 2) ラミブジン (3TC) エムトリシタビン (FTC) テノホビル(TDF) には抗 HBV 作用も認める B 型肝炎の治療薬であるアデホビル (ADV) は TDF と類似構造を有するため TDF 交叉耐性発現のリスクもある 3) さらに 現在の抗 HBV 治療の第一選択薬であるエンテカビル (ETV) にも 抗 HIV 活性を有することが明らかとなり 重複患者への単独投与は行わない 4) 免疫再構築が起こった症例では B 型肝炎の悪化を認める場合があり 注意が必要である 5) 近年の HBV 急性感染例において genotypea によるものが増加傾向にある このタイプでは 成人の急性感染にも拘わらず HBV が排除されずに持続感染化する可能性がある この場合には HBV 排除を目的とした抗ウイルス治療の検討も必要である 6) 重複感染者で HIV の治療が不要な場合に インターフェロン投与が可能であれば インターフェロン ( 保険認可後は PEG-IFN) 投与を行う 7) HAART を行う場合には TDF+3TCあるいは TDF+ FTCの 2 剤を組み入れる 8) 厚生労働省 HIV 感染症に合併する各種疾病に関する研究 班により HIV HBV 重複感染時の診療ガイドライン が平成 21 年春に報告されたので 以下に示す HIV 感染症の治療の必要性 必 不 要 要 血中 HBV 量肝炎活動性 ( 血清 ALT 値 ) 治療法の選択 TDF+3TC( またはTDF+FTC) 両者を含むHAART を行 HBVDNA 高値う ( 5Logcopies/ml) HAART のレジメンの変更時には注意が必要 ( 抗 HBV 作用薬を併用する ) TDF+3TC( またはTDF+FTC) 両者を含むHAART を HBVDNA 低値行う 肝予備能によっては両者を含まない HAART も可能 (<5Logcopies/ml) TDF+3TC( またはTDF+FTC) を含むHAART のレジメンの変更時には注意が必要 ( 抗 HBV 作用薬を併用する ) B 型肝炎治療必要 ( 血清 ALT 値異常が持続 ) B 型肝炎治療不要 ( 血清 ALT 値正常 ) IFN(PEG-IFN) ( 非 HAART 下では 原則的に B 型肝炎の治療に LAM ADV ETV を使用しない ) B 型肝炎による肝不全の危険性が高い場合は TDF+3TC ( または TDF+FTC) を含む HAART の開始も検討する 経過観察 ( 第三内科髭修平 ) HIV 感染症と肝炎 31

33 6 血友病患者の診療 1 血友病患者の病態と症状 (1) 先天性凝固因子欠乏症である血友病には 第 V I 因子欠乏の血友病 Aと 第 IX 因子欠乏の血友病 Bとがある 検査は APTT の延長が特徴であり 出血時間 血小板数 PT は正常である ただし 軽症血友病の場合には APTT が正常のこともあるため注意を要する (2) 遺伝形式は X 染色体連鎖伴性劣性遺伝であり 原則として男性にのみ発症し 女性は保因者になりうる 血友病男性と血友病保因者女性が結婚すると 1/4 の確率でホモ接合体の女性血友病が生まれ 現在までに15 例以上の報告がみられる また 遺伝形式とは無関係に単独発症する孤発例が 血友病全体の約 30% を占めるといわれる 2006 年の国内での実態調査では血友病 Aあるいは血友病 Bの生存患者数は それぞれ 4,100 人 900 人である (3) 血友病の重症度は凝固因子欠乏レベルによって分類され 正常人の活性と比較した凝固因子活性の低下程度により重症度を分類している 近年 血漿 1ml 中に含まれる凝固因子活性を 1 国際単位 (IU) と定義し 1IU/mlの濃度の凝固因子活性が従来の100% に相当する 重 症 中等症 軽 症 凝固活性が1% 未満 0.01IU/ml 未満 1~5% IU/ml 5% 以上 0.05IL/ml 以上 (4) 特徴的な出血症状は関節出血であり 繰り返す出血による関節の硬直変形 ( 血友病性関節症 ) を約 80% の患者に見る その他に頭蓋内出血 筋肉内出血 血尿外傷性出血などが重要である これらの臨床症状は血友病 Aと Bに共通である 2 治療 : 欠乏した凝固因子の補充療法 (1) 標準的投与量 血友病 Aの場合 : 第 Ⅷ 因子製剤を 10~20 単位 /kg 投与する 血友病 Bの場合 : 第 Ⅸ 因子製剤を 20~40 単位 /kg 投与する (2) 定期的補充療法関節出血を起こさないように 週 2~3 回投与を継続する 足関節 膝関節など加重関節の出血では 凝固因子活性を高めに維持した方がよい (3) 手術などの緊急時の補充方法 補充療法の目安 出血部位 目標とする凝固活性値 筋肉内 鼻出血 軽度の関節出血 血尿 消化管出血 大手術 頭蓋内出血 交通事故 抜歯 10~20% 30~50% 70~100% 通常患者体重 1kg あたり凝固因子 1 単位を輸注した場合 約 1~2% の上昇が得られる 製剤の血中半滅期は第 V I 因子製剤で約 12 時間 第 IX 製剤では約 24 時間である 従って大出血 大手術の場合は 血友病 Aでは初回に第 V I 因子製剤を40~50 単位 /kg 投与し 以後 8 時間ごとに1/2 量の25 単位 /kg を投与しながら欠乏している凝固因子活性を3 日間は 32 血友病患者の診療

34 50% 以上に維持する 血友病 Bでは初回に第 IX 因子製剤を75 単位 /kg 投与し 以後 12 時間ごとに40 単位 /kg を投与する 3 血液製剤の副作用 (1) 製剤の補充療法中に出血症状の十分な改善が得られない場合には インヒビターの存在を疑い 凝固因子に対する自己抗体を検査する必要がある 重症例で補充療法を繰り返している患者の5~10% にインヒビターが発生する インヒビターの発生した場合には バイパス療法の適応を判断するため 血液専門医に紹介のこと (2)HIV に感染している血友病患者の99% は HCV に重複感染しているため HIV 陽性血友病患者の場合には 必ず HCV の検査を要する HIV HCV 重複感染者では HCV 単独感染者に比較して肝炎の進行が早いとする報告もあり HCV 陽性の場合には第 3 内科肝臓グループへ紹介し その病態を把握し治療の有無について検討する ( 肝炎の章を参照 ) 4 包括医療 整形外科血友病関節外来の利用 血液専門医 小児科医 整形外科医 リハビリテーション医 臨床心理士 ケースワーカー カウンセラーなどとの協力で 医療チームとしての包括医療が必要である 特に血友病関節に関する診療は 整形外科血友病関節症外来 との連携により より専門的観点からの診療が可能である 5 社会福祉関連の利用について 血液製剤により HIV に感染し 健康被害を受けた方の救済等については HIV 相談室に資料があるので 相談室の MSW に連絡し ( 内線 7025) 適切な救済法の検討が可能である 6 プロテアーゼ阻害剤等使用による出血傾向の増悪症状について HIV 治療目的で投与されるプロテアーゼ阻害剤等による 出血傾向の増悪が報告されている 詳細は未だ明らかではないが それまで出血を認めなかった部位における出血の報告もあり プロテアーゼ阻害剤等使用開始後に血液製剤の使用頻度が高くなった場合には 薬剤変更や減量も検討する必要がある 報告されているほとんど ( 平均で投与開始後 22 日に発症 ) は関節出血や軟部組織の出血だが一部には重篤な頭蓋内出血や消化管出血もあるため 製剤の使用頻度が多くなっているような症例にはプロテアーゼ阻害剤等の影響を十分に考慮する必要がある 血友病患者の診療 33

35 参考文献 1) HIV 研究班 HIV 治療マニュアル 2) 今日の内科学 3) 臨床検査法提要 4) エッセンシャル内科学第 6 版 5) GuidelinesfortheuseofantiretroviralagentsinHIV-1-infectedaduiltsandadolescents( 版 ) 6) 血友病などの凝固因子欠乏症. 血液内科診療マニュアル p197-p201. 日本医学館発行 第 1 版 7) HIV HCV 重複感染について.HIV HCV 重複感染症診療ガイドライン p2. 北海道大学病院 HIV HCV 重複感染症診療委員会発行 第 2 版 8) 立浪忍 滝正志 :HIV 感染血友病患者における HCV 感染にいて. 日本エイズ学会誌 7: ) 抗 HIV 薬の主な副作用.HIV 感染症 治療の手引き.HIV 感染症治療研究会発行 2006 年 12 月第 10 版 10) 血友病今昔. 日本臨床 66: , ( 第三内科橋野聡 ) 34 血友病患者の診療

36 AIDS 関連症候群 7-1 (ARC) の診断と治療 1 症候による診断手順 (J.G.Bartlet の MedicalManagementofHIVInfection を翻訳したものである) (1) 中枢神経 (CNS) 症状 頭痛 AIDS 関連症候群 (ARC) の診断と治療 35

37 (2)HIV 感染進行期 精神症状 ( 性格変化 ) 痙攣 頭痛または局所徴候 36 AIDS 関連症候群 (ARC) の診断と治療

38 (3) 咳嗽 発熱 呼吸困難 AIDS 関連症候群 (ARC) の診断と治療 37

39 38 AIDS 関連症候群 (ARC) の診断と治療

40 (4) 急性下痢 AIDS 関連症候群 (ARC) の診断と治療 39

41 (5) 慢性下痢 (CD4<300/mm 3 ) 40 AIDS 関連症候群 (ARC) の診断と治療

42 (6) 不明熱 (FUO) AIDS 関連症候群 (ARC) の診断と治療 41

43 参考文献 1) BartletJGetal.MedicalManagementofHIVInfection Edition.Publishedby JohnsHopkinsMedicineHealthPublishingBusinessGroup,2001 2) BartletJG etal.medicalmanagementofhiv Infection2004 Edition.Publishedby JohnsHopkinsMedicineHealthPublishingBusinessGroup,2004 ( 第二内科遠藤知之 ) 42 AIDS 関連症候群 (ARC) の診断と治療

44 7-2 カンジダ症 カンジダは口腔内 消化管に常在し通常は病原性を発揮しない しかし HIV 感染後の免疫不全状態で CD4 リンパ球が 250/μ 渥未満の患者では 多臓器に渡る深部 ( 肺 心内膜 脳 髄膜 腎 眼など ) 及び表在性 ( 口腔 食道 胃 腸 膣 気管支 皮膚など ) 感染症の原因となりうる HAART 療法施行後 発症頻度は以前に比較して著明に減少した 侵襲性カンジダ症は患者転帰に重大な影響を及ぼすとともに 医療費増加の大きな原因となるので 診断後速やかに治療する 1 臨床症状 ( 感染臓器により異なる ) (1) 消化管 : 本邦の HIV 患者の約 50% に合併する 口腔咽頭カンジダ症 : 紅斑を伴う白斑 ( 初発症状に多い ) 口角炎や舌炎を来すこともある HIV 感染者に併発する日和見感染症として最も頻度が高い 食道カンジダ症 : 嚥下痛 嚥下困難 胸焼け 胸骨下痛 (2) 呼吸器気管支炎カンジダ症 : 咳 痰を伴う慢性気管支炎 肺炎 : 肺膿瘍に移行することもある (3) 腎 尿路系腎盂腎炎 : 発熱 側背部痛 膀胱炎 : 頻尿 血尿 (4) 心内膜炎 : 発熱 心雑音 脾腫を認め 血栓塞栓症を合併しやすい (5) 髄膜炎 脳炎 : 頭痛 項部硬直 うっ血乳頭 神経症状 (6) 敗血症 : 悪寒 高熱 ショック症状 (7) カンジダ性眼内炎 : 高度の視力障害 2 診断方法 (1) 主として Candidaalbicans による感染症で 分離培養検査で診断する 分離されても それが 病因であると診断できない場合が多い 分離同定後 追加で抗真菌剤の感受性試験 (MIC の測 定 ) が院内検査部で施行可能 臓器別診断法 口 腔 内 : 発赤と白苔を確認し KOH 処理で鏡検する 毛状白板症と異なり 白苔は容易に剥離できる 食 道 : 内視鏡検査で 孤立性または融合性びらんと 粘膜面のクリーム状の白苔 白苔表面に潰瘍形成を認めることもある 胃 : 偽膜形成や多発性小潰瘍を認め 生検にてカンジダ菌を証明 呼 吸 器 : 口腔内常在菌のため 喀痰にての検出のみでは不十分で TBLB なども時に必要 腎 尿路系 : 膀胱鏡下生検や 腎生検 膿汁吸引が必要の場合がある 中枢神経系 : 髄液検査にてカンジダの証明 カンジダ症 43

45 敗 血 症 : 血液培養で診断するが 50% は陰性である 眼 内 炎 : 眼底検査で 硝子体に綿球様変化 (2) カンジダ抗原検査 : 院内で可能 ( カンジテック ) (3)β-D グルカン : 院内で可能 ( カンジダ感染に特異的ではない ) 3 治療法 フルコナゾール耐性の C.albicans やnonalbicansCandida 属 (C.glabrata,C.krusei など ) が問題になりつつあり 注意が必要である (1) 口腔 / 食道炎などの表在性感染症 ( 口内炎では7~14 日間投与 食道炎では14~21 日間投与 ) 1) フルコナゾール50~200mg/1x~2x 内服 : 副作用が少なく 長期投与が可能 2) アムホテリシン Bシロップ 400mg(4ml) を含んだ滅菌水含嗽 (1 日 3~4 回 ) のうがい 3) クロトリマゾール トローチ5T/5x: 口腔カンジダ症に対し オーファンドラッグ 4) イトラコナゾール内用液 20ml/1x: 口腔 咽頭 食道にも直接作用し 主として消化管から吸収 口腔咽頭カンジダ症は 抗真菌薬投与により速やかに改善するが 再発率は高い (2) 吸器感染症 / カンジダ血症などの深部感染症 1) アムホテリシン Bリポソーム製剤 2.5mg/ kg /day 点滴静注 : アムホテリシン Bと同等の有効性を有し アムホテリシン Bより腎機能障害 低カリウム血症 発熱などが少ない 2) フルコナゾール100~400mg/1x 内服またはホスフルコナゾール100mg/day 点滴静注 1 日 1 回 : 時に不整脈 3) ボリコナゾール300~400mg/2x 内服または3~4mg/kg/ 点滴静注 1 日 2 回 : 時に副作用で羞明 霧視 視覚障害 4) ミカファンギン 50~300mg/1x 点滴静注深在性カンジダ症または難治性カンジダ症に対してイトラコナゾールやボリコナゾールを長期間 (4 週間以上 ) 投与している患者では 薬物血中濃度モニタリングが有用である 特にイトラコナゾールでは患者間の血中濃度の変動が大きい イトラコナゾールの血中濃度の測定は必ず定常状態到達後 ( 投与開始から2 週間以上 ) に行うべきである 血中濃度を測定することで 十分吸収されているかどうかを確認するとともに 用量変更の影響や相互作用を有する併用薬の影響を調べ アドヒアランスも評価すべきである 4 予 防 CD4 陽性細胞数の減少により開始する予防を一次予防と呼び これに対し発症後に開始する予防を二次予防として区別している カンジダ症は カリニ肺炎や MAC 感染症と異なり 日和見感染症予防についてのガイドラインはないので 基本はあくまで早期発見 早期治療である ただ 食道カンジダ症は ニューモシスティス肺炎に次いで AIDS 発症指標疾患の第二位であるため 日常診療においては注意深い問診と身体所見の観察が必要である また 反復性食道カンジダ症に対する維持療法としてフルコナゾール100~200mg/ 日の内服を推奨する報告もあるが 長期のアゾール内服や CD4 リンパ球が 50/μ 渥未満の進行期患者では 耐性菌の発育に注意を払う必要がある 44 カンジダ症

46 参考文献 1) 治療学 HIV 感染症 (2001.1) 2) 日本臨床 HIV/AIDS 研究の進歩 (2002.4) 3) MedicalmanagementofHIVinfection 4) HIV 感染症とその合併症 : 診断と治療のハンドブック.HIV 研究班 (2005.3) 5) TheSanfordguidetoHIV/AIDStherapy (2006.7) 6) 日本化学療法学会一般医療従事者のための深在性真菌症に対する抗真菌薬使用ガイドライン (2009.1) 7) Clinicalinfectiousdisease48: ,2009(2009.3) ( 第三内科橋野聡 ) カンジダ症 45

47 7-3 クリプトコックス症 1 概説 クリプトコックス症は Cryptococcusneoformans という酵母状真菌の感染によって 髄膜炎 肺疾患 皮膚病変などを呈する真菌感染症である この真菌は鳥糞の豊富な土中に認められ ほこり等とともに体内に入り感染する 免疫能の正常な患者では 感染は局所的にコントロールされるが CD4 100/μ 渥以下である HIV 患者では 肺を通って侵入した後に全身に播種し 髄膜炎を合併することが多い このため HIV 患者で肺病変を認めた場合には 例え無症状であっても血液 髄液の検索が必要となる 治療が行われない場合の死亡率は100% であるが 適切な治療が行われた場合の死亡率は10% 以下である 2 臨床症状 (1) 肺クリプトコックス症発熱 咳嗽 呼吸困難 体重減少などの非特異的な症状を呈するのが一般的だが 無自覚に経過することも多い (2) クリプトコックス髄膜炎初発症状は軽度の頭痛 発熱 倦怠感である 本症のほとんどが髄膜脳炎を主な臨床病型とする 病型が完成すれば 頭痛 悪心 嘔吐 意識障害などの脳圧亢進症状 項部硬直 Kernig 徴候などの髄膜刺激症状を示す 精神症状 髄液圧の上昇がある症例では有意に予後不良と報告されている (3) 皮膚症状本症の10% 以下にみられる 病変は0.2~1.0cm の肌色 ( または白色 ) の丘疹で 顔面に多発することが多い 膿疱病変 潰瘍病変を呈することもある 3 診断方法 鏡検 培養検査法と 血清クリプトコックス抗原検出による血清学的診断法 ( 菌体夾膜多糖体の主要成分であるグルクロノキシロマンナンをラテックス凝集反応で検出する ) がある 後者は結果が判明するまで3~5 日間かかる ( クリプトコックス ネオフォルマンス抗原 ( ラテックス凝集法 ) BML 190 点 ) (1) 肺クリプトコックス症喀痰の鏡検 培養で本菌を確認できる頻度は低く 本症を疑うときは BAL( 気管支肺胞洗浄 ) やTBLB( 経気管支肺生検 ) を施行する 胸部 X 線では中下肺野 胸膜直下に直径 2~3cm の孤立結節影が認められることが多い 空洞形成 多発結節影 浸潤影 粟粒陰影 リンパ節腫脹が認められる場合もある (2) クリプトコックス髄膜炎髄液所見として圧の上昇 (75% で 200mmH2O 以上 ) 単核細胞数の増加 蛋白の増加(50 ~150mg/dl) 糖の正常 ~ 軽度減少などが認められる 確定診断には髄液の培養検査 (95% 以上で陽性 ) と共に墨汁染色 (60~80% で陽性 ) が有用である 95% 以上で髄液と血清のクリ 46 クリプトコックス症

48 プトコックス抗原も陽性となる 軽度の頭痛でも症状の経過によっては積極的に髄液検査を施行する以外 本症の早期発見はない (3) 皮膚病変皮膚生検の組織診と培養で診断する 4 治療法 遺クリプトコックス髄膜炎の初期治療の第一選択薬は amphotericinb( ファンギゾン ) とflucy- tosine( アンコチル ) の併用である 併用療法は amphotericinb 単独治療に較べ再発率を低下遺遺させる LiposomalamphotericinB( アンビゾーム ) も初期治療で amphotericinb 単独治療よりも良好な成績の報告がある 治療を中止すると 65~85% が再燃するため 維持療法が必要と遺なる 維持療法は髄液移行性の良好な fluconazole( ジフルカン ) が itraconazole( イトリゾー遺ル ) や amphotericinb よりも再発率が低く 第一選択薬として使用される Micafunginsodium( ファンガード ) は髄液移行性が不良であり 選択すべきではない 髄液圧亢進が持続す遺る場合は予後不良であるため 積極的に圧を低下させる処置が推奨される 髄膜炎以外のクリプトコックス感染症の場合は fluconazole による初期治療が一般的である 維持療法の必要性は確立していない 初期療法 推奨療法 AmphotericinB0.7mg/kg/day 点滴 (0.25mg/kg から開始し 徐々に増量 ) Flucytosine100mg/kg/day/4 内服上記 2 剤を2 週間投与後 Fluconazole400mg/day を8 週間または髄液が無菌化するまで内服した後 維持療法に移る 代替療法 1 AmphotericinB mg/kg/day 点滴または LiposomalamphotericinB4mg/kg/day 点滴を2 週間投与後 Fluconazole400mg/day を 8-10 週間内服した後 維持療法に移る 代替療法 2 Fluconazole mg/day 内服 Flucytosine100mg/kg/4 内服上記 2 剤を6~10 週間投与後 維持療法に移る Flucytosine 長期内服による副作用 ( 骨髄抑制 消化器症状 ) に注意が必要頭蓋内圧亢進の管理初回の髄液圧が250mmH2O 以上の場合は200mmH2O 以下あるいは初圧の 50% 以下に圧を低下させる ( 明らかな脳圧亢進症状がある場合は施行しない ) 髄液圧上昇が持続する場合は腰椎穿刺を反復する 治療抵抗性または髄液圧 400mmH2O 以上の場合は持続ドレナージまたは V-P シャントを考慮する 維持療法 免疫能が回復しない状況では基本的に生涯継続する 但し HAART により6 ヶ月以上 CD4 が100~200/μ 渥以上を維持しており 初期治療を完遂し無症状であれば 維持療法を中止して良い 推奨療法 Fluconazole200mg/day 内服代替療法 Fluconazole 無効または副作用で使用できないときに クリプトコックス症 47

49 Itraconazole400mg/day 食後内服 髄膜炎以外の治療 腰椎穿刺を施行し髄膜炎の合併を否定する必要がある 治療抵抗性の肺 骨 病変に対しては外科的切除を考慮する 推 奨 療 法 Fluconazole200~400mg/day 内服免疫能が回復するまで継続 代 替 療 法 Itraconazole400mg/day 食後内服 または AmphotericinB mg/kg/week 週 1 回 or2 週に一回点滴 5 感染予防 クリプトコックスは自然界に広く存在し 特にハトの糞からは高率に検出されるが ハトの糞への暴露がクリプトコックス症の感染リスクを増大させるという確証はない 原則的にはクリプトコックス症の発症予防を目的とした抗真菌剤の予防投与は推奨されないが CD4 数が50/μ 渥以下の患者で 他の真菌症の予防も必要と考えられる場合には Fluconazole mg/day の予防内服を行う 参考文献 1) SpachDH,HootonTM. 矢野邦夫監訳.HIV マニュアル. 日本医学館,1997 2) BartletJG etal.medicalmanagementofhiv Infection2007 Edition.Publishedby JohnsHopkinsMedicineHealthPublishingBusinessGroup,2007 3) SaagMSetal.Practiceguidelinesforthemanagementofcryptococcaldisease.InfectiousDiseasesSocietyofAmerica.ClinInfectDis30: ,2000 4) BensonCA etal.treatingopportunisticinfectionsamonghiv-infectedadultsand Adolescents.Recommendationsfrom CDC,theNationalInstitutesofHealth,andtheHIV MedicineAssociation/InfectiousDiseasesSocietyofAmerica.MMWR Recomm Rep53 (RR-15):1-112,2004 5) KaplanJEetal.GuidelinesforpreventingopportunisticinfectionsamongHIV-infected persons-2002.recommendationsoftheu.s.publichealthserviceandtheinfectiousdiseasessocietyofamerica.mmwrrecomm Rep51(RR-8):1-52,2002 6) 厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業 HIV 感染症の医療体制の整備に関する研究班編. 診断と治療ハンドブック第二版 (2006 年 3 月改訂版 ) ( 第二内科遠藤知之 ) 48 クリプトコックス症

50 7-4 クリプトスポリジウム症 1 概説 クリプトスポリジウム症は Criptosporidium(C.parvum 他 ) の感染によって 激しい水溶性下痢と腹痛をきたす原虫感染症である この原虫は 多くの哺乳類の小腸に寄生し 糞便といっしょにオーシストと呼ばれる形で体外へ排出され 他の個体へ飲料水や食品を介して経口感染する HIV 感染者で CD4 陽性リンパ球数が低下している場合に 持続性で強い下痢を起こし 難治性である場合にはイソスポラ症と本症を疑う 免疫不全状態の患者では 下痢が長期間持続して死亡することも稀ではない 2 臨床症状 潜伏期間は4~10 日 激しい水溶性の下痢と嘔吐 腹痛が主症状で 約 1/3 で発熱を伴う 血便はない 免疫能が正常であれば大半は1~2 週間で自然治癒するが 免疫不全患者では 下痢が長期間持続し 吸収不全による低栄養 消耗 体重減少を伴って死に至ることも少なくない AIDS 患者での病像パターンは不顕性感染 (4%) 2ヶ月以内に自然軽快する下痢症 (29%) 2 ヶ月以上持続する慢性下痢症 (60%) 1 日 2L 以上に及ぶ致死的下痢症 (8%) と報告されている また 免疫不全患者では 慢性的腸症状に加えて胆嚢 胆管炎 膵炎 呼吸器症状を併発することもある 3 診断方法 糞便虫のオーシストの検出で診断する クリプトスポリジウムのオーシストは 4~6μm と小型である 通常の原虫 虫卵検査法では検出できず 簡易迅速ショ糖浮遊法 ショ糖遠心沈殿浮遊法により集オーシストを行った後に 抗酸染色法 直接蛍光抗体法などで検出する そのため本症を疑った場合には クリプトスポリジウム症疑い と明記して検体を提出する必要がある また 原虫は便中 腸管粘膜などに付着し 間欠的に便に出るため 特に軽症例では複数回の検査が必要である 腸生検の HE 染色標本でも診断可能である 4 治療法 現在 このクリプトスポリジウム症に対して確実に奏功する薬剤はないことから 輸液などの対症療法で脱水症状の改善や栄養補給を図ることが中心となる CD4 数 100/μ 渥以下で 下痢が持続する場合には HAART により免疫力を回復させることで症状の改善が期待できるため HIV 患者では本症の初期治療として HAART の開始を第一に考慮すべきである 治療薬としては 遺遺 paromomycin(humatin ) や azithromycin( ジスロマック ) がある程度有効とする報告もあ遺るが 否定的な報告もあり有効性は確立していない Nitazoxanide(Alinia ) は 成人と小児を対象とした複数の臨床試験で有効性が確認されており 現在 米国 FDA により小児への使用が認可されている Paromomycin nitazoxanide は国内で販売されていないが 熱帯病 寄生虫 クリプトスポリジウム症 49

51 症に対する稀少疾病治療薬の輸入 保管 治療体制の開発研究 班から入手可能である (htp:// 但し paromomycin の適応疾患は赤痢アメーバ症である 処方例 1 Paromomycin 2000mg/4 または 日間内服し その後 1000mg/2 で内服 処方例 2 Nitazoxanide 1-2g/2 14 日間内服 処方例 3 Paromomycin 2000mg/2 Azithromycin(600mg)1T /1 上記 2 剤を 4 週間内服した後 Paromomycin 単独でさらに8 週間内服 処方例 4 Azithromycin(600mg) 初日のみ 4T /2 その後 2T /1 で27 日間内服した後 1T /1 で内服 5 感染予防 クリプトスポリジウムのオーシストは 水中では低温で長期間生存するが 熱や凍結には弱いため 食中毒予防の一般的な原則がクリプトスポリジウムの感染予防にも役立つとされている 水道水のクリプトスポリジウムによるエイズ患者等の感染防止対策について 平成 9 年 8 月 厚生省保健医療局エイズ疾病対策課から 以下の文書が各ブロック拠点病院長あてに配布された HIV 感染者 / AIDS 患者の皆様へエイズ患者さんを含め 特に免疫力の低下している状態の方は クリプトスポリジウムの感染予防について 以下の点に注意を払われるようおすすめします 1. 手を良く洗うこと 2. 性行為の際は便等に触れないよう注意すること 3. 畜産動物をさわらないこと 4. ペットの便をさわらないこと 5. 野菜などの生ものはよく洗うか熱をとおして食べること 6. 湖 川 プール等で泳ぐときには水を飲まないように注意すること 7. より安全な水を飲むこと飲み水については 煮沸したものを飲むことが最も良い方法です また 煮沸後時間をおかずに飲むことが重要です ( 出典 ) 米国 CDC のインターネットホームページに掲載されていた情報に基づき作成したものです (htp:// 50 クリプトスポリジウム症

52 参考文献 1) SpachDH,HootonTM. 矢野邦夫監訳.HIV マニュアル. 日本医学館,1997 2) BartletJG etal.medicalmanagementofhiv Infection2007 Edition.Publishedby JohnsHopkinsMedicineHealthPublishingBusinessGroup,2007 3) BensonCA etal.treatingopportunisticinfectionsamonghiv-infectedadultsand Adolescents.Recommendationsfrom CDC,theNationalInstitutesofHealth,andtheHIV MedicineAssociation/InfectiousDiseasesSocietyofAmerica.MMWR Recomm Rep53 (RR-15):1-112,2004 4) KaplanJEetal.GuidelinesforpreventingopportunisticinfectionsamongHIV-infected persons-2002.recommendationsoftheu.s.publichealthserviceandtheinfectiousdiseasessocietyofamerica.mmwrrecomm Rep51(RR-8):1-52,2002 5) FarthingMJ.Treatmentoptionsfortheeradicationofintestinalprotozoa.NatClinPract GastroenterolHepatol3:436-45,2006 6) 厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業 HIV 感染症の医療体制の整備に関する研究班編. 診断と治療ハンドブック第二版 (2006 年 3 月改訂版 ) ( 第二内科遠藤知之 ) クリプトスポリジウム症 51

53 7-5 サイトメガロウイルス (CMV) 感染症 日本人の90% 以上が既感染で 体内に潜伏感染しているが 通常は正常な免疫能でコントロールされている HIV 感染後の免疫不全による再活性化や新たな感染により 重篤な病変 ( 肝 脾 リンパ節以外 ) を惹起する CMV 感染の早期診断 治療はきわめて重要であるが AIDSにおいてはいずれも非常に困難であるのが現状である HAART 療法そのものにも CMV 血症の抑制効果がみられることが報告されている一方 HAART 施行後免疫機能の回復に伴い 一気に重度の炎症が惹起される場合があることも報告されている ( 免疫再構成症候群 ) 1 臨床症状 初発症状は 網膜炎 ( エイズ患者の約 20~30% が罹患し 失明率が高い ) や間質性肺炎が多いが 食道炎 腸炎 脳炎なども見られる CMV 消化器感染 : 食道 胃 小腸 大腸等の感染により 疼痛 下痢 発熱 食欲不振 大量出血 穿孔等が出現する CMV 肺炎 : 間質性肺炎の形で発症し 発熱 頻呼吸 呼吸困難 乾性咳嗽等が出現する P. carini 肺炎との合併が多い CMV 脳炎 : 神経障害 知能低下等が出現し HIV 脳症との鑑別が重要である CMV 網膜炎 : 初期は無症状であるが まれに暗点や視野欠損 視力低下 血液やその他の検体から CMV 再活性化が確認されるが臨床症状を伴わない CMV 感染 (CMV infection) は 臨床症状 異常所見を伴う CMV 感染症 (CMV disease) から区別して扱う 2 診断方法 網膜炎 : 眼底検査で特徴的な網膜血管に沿った病変 ( コッテージチーズとケチャップ像 ) 消化器感染 :GIS CS による病変部の組織診断 ウイルス学的検査 肺炎 : ペンタミジンの予防投与にもかかわらず出現する間質性肺炎の時に疑う BALや TBLB などが必要 脳炎 : 髄液からのウイルス分離 PCR 法による診断 CMV アンチゲネミア : 院内検査部を通じて提出 CMV アンチゲネミアは 感度 特異度とも高く 定量性もある点から CMV 感染症のモニタリング 抗ウイルス剤の効果判定及び中止時期の指標として広く用いられている CMVアンチゲネミアは肺炎以外の CMV 感染症では先行性があまり期待できず また発症時でさえも陽性化しない症例が散見され その評価には注意が必要である 3 治療法 臨床症状があって 活性化された CMV がその原因と考えられる場合は 速やかに抗ウイルス剤を投与する 逆に 生体内から CMV を完全に消滅させることは不可能なので CMVアンチゲネミアの推移や臨床的改善度などを参考にして 治療の効果判定と抗ウイルス剤の中止を判断す 52 サイトメガロウイルス (CMV) 感染症

54 る また CD4 リンパ球数が 50/μ 渥以下の患者の場合は維持療法が必要であるとする報告も見られる (1) ガンシクロビル点滴静注用 5mg/kg を1 日 2 回点滴静注 (2~3 週間 ) * 現時点で CMV 感染症に対して効果の認められる最も強力な抗ウイルス剤である *CMV アンチゲネミアなどを参考にして 必要であれば再発予防に1 日 1 回でさらに維持投与する * 主たる副作用は 骨髄抑制と腎障害 ( ガンシクロビルの骨髄抑制による好中球減少に対して : G-CSF50~100μgsc が有効 ) (2) ホスカルネットナトリウム 90mg/kg を1 日 2 回点滴静注 (2~3 週間 ) *CMV 網膜炎に対し適応 * 腎機能障害が現れやすいので 水分補給を十分に行い利尿を確保する (3)CMV 高力価 γグロブリン * 中和抗体価の高いものを選択する (4) バルガンシクロビル塩酸塩錠 1800mg/2x(3 週間 ): *CMV 感染症に対し 初期治療として3 週間使用 * 維持療法 再発予防は900mg/1x * ガンシクロビルのプロドラッグ化 (5) シドフォビア 5mg/ kgを1 日 1 回点滴静注 ( 国内未発売 ) 4 予 防 一次予防に関しては 確立したガイドラインはない 早期発見が重要なので CD4 が100/μ 渥以下になったら 定期的な眼底検査を行うべきである 二次予防は CD4が 100~150/μ 渥を6ヶ月以上維持した場合に中止することが多いが 50/μ 渥以下で CMV 網膜炎が再燃することが多いので CD4が 50~100/μ 渥以下になったら二次予防を再開すべきである 参考文献 1) AIDSClinicalCare2000;12:54 2) AIDS2000;14:173 3) 治療学 HIV 感染症 (2001.2) 4) 日本臨床 HIV/AIDS 研究の進歩 (2002.4) 5) MedicalmanagementofHIVinfection 6) HIV 感染症とその合併症 : 診断と治療のハンドブック.HIV 研究班 (2005.3) 7) TheSanfordguidetoHIV/AIDStherapy (2006.7) 8) みんなに役立つ造血幹細胞移植の基礎と臨床 (2008.9) ( 第三内科橋野聡 ) サイトメガロウイルス (CMV) 感染症 53

55 7-6 非結核性抗酸菌症 HIV 感染者の非結核性抗酸菌症の感染部位は 主に肺と腸管だが 全身播種型をとることも多い 最も多い肺病変の発症様式は 肺結核のそれと異なり HIV ウィルス感染のために免疫能低下が進行した後 新たに非定型抗酸菌の感染が成立し発症に至ると考えられている AIDSに伴う感染症の中では ニューモシスチス サイトメガロウイルス カンジダに次いで多い 起炎菌の圧倒的大多数は Mycobacterium avium-intracelularecomplex(mac) で HIV 非感染者の非結核性抗酸菌症の内訳とは若干異なる HIV 感染症の病初期から合併してくる結核症とは異なり MAC 症は病気が進行し免疫能が低下 (CD4 陽性 Tリンパ球数が100/μ 渥以下 ) した状態で高頻度に合併する 1 診断のアプローチ (1) どのようなときに疑うか持続する発熱 咳嗽 喀痰 下痢 腹痛が出現したとき (2) 胸部 X 線写真にて中下葉の非特異的浸潤影 リンパ節腫大など 典型的な肺尖 背部の分布を示すことは稀で 空洞形成も比較的稀 他の日和見感染症との鑑別は困難なことが多い 肺結核との鑑別も困難である 一方で他の肺感染症を合併することもある (3) 胸部 CT 検査では 多彩な浸潤影 不整形陰影 リンパ節腫大や胸水の貯留が確認しやすい 腹部 CT では 後腹膜 腸間膜リンパ節の腫大 肝腫 脾腫 腹水 MAC による消化管病変が最も多いのは十二指腸であり 小白色結節が特徴である (4) 喀痰 胃液 血液 便の抗酸菌塗抹 培養 時に骨髄液 髄液の培養が必要である 培養後コロニーが形成されたら 本院では DDH マイコバクテリア法により 抗酸菌種の同定が行われる 迅速な診断には PCR 法を用いる 血液培養の場合は 専用の容器 ( 胸水の場合にも感度が上がる ) を用いて提出する 専用容器は細菌検査室に常備している MAC 以外の非結核性抗酸菌の PCR 法による検査は 現在のところ実施できない (5) 気管支肺胞洗浄 (BAL) により 病巣部より回収した液の抗酸菌塗抹 培養 (6) 経気管支肺生検 (TBLB) あるいは消化管内視鏡により 病巣の組織学的検索と抗酸菌染色 培養 (7) 上記の方法で診断がつかない場合 診断的治療として薬を投与し 症状の改善や陰影の変化を観察する 補 ) 播種性 MAC 症について CD4 陽性 Tリンパ球が 50 未満の患者で注意が必要である 長期にわたる発熱が必発で 体重減少を伴う 腹痛や下痢を訴える患者もいる 貧血を伴うことが多く 多くの患者でヘマトクリットは 25% 未満である 診断は血液培養によって行われるが MAC の菌血症は持続性であり 一回の血液培養検査の感度は90% 近い 2 治 療 HIV 感染者における非結核性抗酸菌症のほとんどは 各種の抗結核薬に抵抗性がある MAC であり その治療法は現在も種々試みられている 感受性検査の結果から ストレプトマイシン 54 非結核性抗酸菌症

56 (SM) カナマイシン (KM) エタンブトール(EB) イソニアジド (INH) エチオナマイド (TH) サイクロセリン (CS) リファンピシン(RFP) の中から4 剤を選び併用する また一般の抗菌 薬の中では アミカシン クラリスロマイシン アジスロマイシン スパルフロキサシン シプ ロキサシンなどに感受性を示す プロテアーゼ阻害剤使用中であれば リファンピシンをリファ ブチン (RFB) に変更する必要がある ( 結核の項参照 ) MAC 感染症に対し 処方例 1 リファジン (RFP) 1 日量 450mg 分 1 朝食前内服 クラリス (CAM) 1 日量 800mg 分 2 内服 エブトール (EB) 1 日量 15mg/kg 分 1 内服( 結核症より投与期間が長期に及ぶので視力障害の発生により注意する ) 硫酸ストレプトマイシン 1 日量 15mg/kg 以下を ( 年齢による ) 3) 筋注 ( 週 2 回または週 3 回 ) 治療期間は菌陰性化後 1 年以上 米国では AIDS 患者の MAC 菌血症に対し 以下の治療法の有効性が報告されている 処方例 2 リファブチン (RFB) 1 日量 300mg 分 1 内服 エブトール (EB) 1 日量 15mg/kg 分 1または分 2 内服 クラリス (CAM) 1 日量 1000mg 分 2 内服 RFB 特有の副作用であるブドウ膜炎に注意する ( 結核の項参照 ) RFB は CAM と併用した場合 血中濃度が1.5 倍以上に上昇し ブドウ膜炎の頻度も高くなる 従って CAM 併用時の RFB 初期投与量は1 日量 150mg とし 6ヶ月以上の経過で副作用がな い場合は300mgまで増量する 播種性 MAC 症の予防 :CD4 陽性細胞が75/μ 渥になった時点で開始する 処方例 1 ジスロマック (AZM) 週 1 回 1200mg 分 1 内服 処方例 2 クラリス (CAM) 1 日 1000mg 分 2 内服 本邦では 1のみ予防投与として保険適応である M.kansasi 症は非結核性抗酸菌症の中で抗結核薬による化学療法が最も有効な感染症である 処方例 リファジン (RFP) 1 日量 450mg 分 1 朝食前内服( 蛋白合成阻害剤内服患者では リファブチン 300mg またはクラリス800mg/ 日 ) エブトール (EB) 1 日量 15mg/kg 分 1-2 内服 イソニアジド (INH) 1 日量 400mg 分 1 治療期間は18 ヶ月 ( ただし 少なくとも培養陰性が12 ヶ月続くこと ) 参考文献 1) NEnglJMed 1996;335: ) 非定型抗酸菌症の治療と予後 結核 ( 第 2 版 ) 久世文彦 泉 孝英 編 ページ 医 学書院 1992 年 東京 3) 結核 非結核性抗酸菌症診療ガイドライン 米国胸部疾患学会 医学書院 2002 非結核性抗酸菌症 55

57 4) 結核 UptoDate 毛利昌史ほか編 南江堂 1999 年 東京 5) htp:// 感染症一般の予防投与法について日本語で解説 powerpoint でダウンロード可能 ) ( 医療安全管理部南須原康行 ) 56 非結核性抗酸菌症

58 7-7 ニューモシスチス肺炎 従来カリニ肺炎と呼ばれていた疾患は 正式にはニューモシスチス肺炎と呼称されることになった これは 病原体の名前が Pneumocystiscarini から Pneumocystisjiroveci と名称が変更になったことに伴うものである AIDS 患者におけるニューモシスチス肺炎は 幼小児期の不顕性感染の再燃の形で発症し 経過中約 70-80% の患者に見られ 最も多い合併症のひとつである CD4 陽性 T 細胞が200 個 /μ 渥以下になると発症することが多い 1 診断のアプローチ (1) どのようなときに疑うか体動時の息切れ 咳嗽 発熱 呼吸困難が出現したとき 胸部 X 線写真の陰影が出現する以前に 肺拡散能や動脈血酸素分圧が低下することもある これらはその後の経過をみる上でも鋭敏な指標である (2) 胸部 X 線写真では 症状が出現してもごく早期では陰影を認めないことがある その後淡い間質性陰影が出現し 次第に肺門中心の網状 粒状 索状陰影となり さらに進行すると広汎なスリガラス状陰影および濃い浸潤影を呈してくる 時に限局性陰影 空洞 気胸を呈する 肺門 縦隔リンパ節腫脹 胸水は通常認めない (3) 確定診断は Pneumocystisjiroveci の証明である 高張食塩水ネブライザー吸入後採取した喀痰や 気管支肺胞洗浄液 (BALF) を用いてグロコット染色 ( シストを染色 ) か Giemsa 染色 ( 栄養体を染色 ) にて証明する ニューモシスチス肺炎では高張食塩水を用いても喀痰が得られないことも多く 患者の状態が許せば気管支肺胞洗浄による検体採取が望ましい ( 第一内科に依頼 ) PCR 法 ( 保険適応外 ) は非常に感度が高く 喀痰検査でも十分に検査が可能であるが 免疫抑制状態では 肺炎の発症が見られない場合でも陽性になることがあり ( 感染未発症と考えられる ) PCR 法のみでの診断は危険である 血清 β-d グルカンは従来真菌のマーカーであったが ニューモシスチス肺炎でも高値となり 参考になる (4) 経気管支肺生検 (TBLB) では 肺胞腔内の好酸性泡沫状の浸出物に混じってニューモシスチス嚢胞が認められる ( グロコット染色 ) 2 治 療 ニューモシスチス肺炎は全身感染症の要素も含むので 治療は全身投与が原則 選択薬として ST 合剤 ( バクタ バクトラミン ) とペンタミジン ( ベナンバックス ) がある CD4 陽性細胞が 200 個 /μ 渥以下となったときや ニューモシスチス肺炎の既往がある場合には必ず予防策を講ずる 処方例 1 バクタ1 日量 12.0g 分 3 経口 21 日間連続投与し その後予防投与に移行するのが標準投与法 皮疹 発熱 白血球減少 肝障害などの副作用に注意 投与が長引く場合にはロイコボリン 3~5mg/ 日 または葉酸 4mg/ 日を併用する 中等 ~ 重症例 (PO2< 70torr) では ステロイドを併用する プレドニン 80mg 分 2 を5 日間 40mg 分 1を5 日間 20mg 分 1を11 日間が標準 ニューモシスチス肺炎 57

59 ステロイドの併用は以下の処方例も同じ 処方例 2 注射剤 ( バクトラミン ) を用いる場合は経口剤の3/4 量程度とする バクトラミン 1 日量 9A(45ml) 分 3 毎回 1~2 時間かけて点滴静注 (1Aあたり125ml の5% ブドウ糖液に混合し 1~2 時間かけて投与する ) 処方例 3 ベナンバックス3mg/kg/ 日 1 日 1 回注射用蒸留水 5mlに溶解後 250ml の5% ブドウ糖液溶解し 1~2 時間でゆっくり点滴静注 処方例 4 ベナンバックス吸入 300mg 1 日 1 回注射用蒸留水 または生理食塩水 10~20ml に溶解し 超音波ネブライザーにて 30 分間で吸入 エロゾルが到達しにくい上葉の病巣には効きにくい 副作用として気道刺激 予防投与処方例 1( 予防 ) バクタ1 日量 2.0g 分 2を週 3 回または1.0g 分 1を毎日処方例 2( 予防 ) ベナンバックス3mg/kg/ 日 2 週に1 回点滴静注処方例 3( 予防 ) ベナンバックス300mg 2 週に1 回吸入 気道収縮の誘発や肺内分布の差異など問題が多い ニューモシスチス肺炎の既往が無く HAART 療法導入により CD4 数が上昇し 200 個 /μ 渥以上を3~6ヶ月以上維持できている患者では HIV-RNA 量が良くコントロールされている場合予防投薬を終了して良い 参考文献 1) HIV 感染者発症予防 治療に関する研究班 班長山田兼雄 HIV 治療マニュアル p ) 味澤篤 ニューモシスチス カリニ肺炎 治療 78 巻増刊号 標準処方ガイド 96 p ) 1999USPHS/IDSA GuidelinesforthePreventionofOpportunisticInfectionsinPersons InfectedwithHumanImmunodeficiencyVirus (htp:// 4) htp:// 感染症一般の予防投与法について日本語で解説 powerpoint でダウンロード可能 ) ( 医療安全管理部南須原康行 ) 58 ニューモシスチス肺炎

60 7-8 結核症 HIV ウイルスに感染することにより 肺結核の発症率は約 100 倍になると言われており HIV 非感染者が結核菌に感染した場合の生涯発病率は5~10% であるが HIV 感染者では年間に5~ 10% の率で結核を発病する AIDS に伴う感染症の中では ニューモシスチス サイトメガロウイルス カンジダ 非結核性抗酸菌症に次いで多い 他の感染症と異なり HIV 感染後比較的早期で CD4 陽性細胞があまり減少していない時期 ( /μ 渥 ) にも発症し AIDS 発症に先立つことも多い 従って他の日和見感染症が目立たない時期にも 原因不明の発熱がある場合には本症を疑う必要がある 肺結核の発症様式は 既感染の再燃の形が多いとされている しかし免疫能が高度に低下した患者では たとえ治療中でも多剤耐性菌による外因性の再感染がありうる また 肺外結核が多いのも HIV 感染の特徴である ( 非 HIV 感染者に対して2 倍 ) 1 診断のアプローチ (1) どのようなときに疑うか持続する発熱 咳嗽 喀痰が出現し 胸部 X 線写真で異常影を認めたとき 肺外結核も多く 消化器 泌尿器 神経系の症状にも留意する (2) 病変は多彩で CD4 陽性細胞数が保たれている時は通常の結核のように上肺に結節性病変の散布を認める程度であるが 免疫能が低下した状態では 病変は経気道性に肺内に広がって下肺の広範な浸潤病巣など非典型像を示す (3) 胸部 X 線写真にて中下葉の非特異的浸潤影 リンパ節腫大など 典型的な肺尖や背側部の分布をとらず 空洞形成も比較的まれで 他の日和見感染症との鑑別は困難なことが多い リンパ節結核や播種型の肺外結核頻度が高い また他の肺感染症を合併することもある (4) 胸部 CT 検査では 多彩な浸潤影や不整形陰影が主体である またリンパ節腫大や胸水の貯留を認めることもある (5) 喀痰 気管支肺胞洗浄液 胃液 血液の抗酸菌塗抹と培養 時に骨髄液 髄液の培養が必要である 本院では 液体培地にて2-4 週間後に増殖がみられたら小川培地に移し さらに増殖した後 ( 約 1 週間 ) DDH マイコバクテリア法により 抗酸菌 18 種の同定が行われる また 液体培地で増殖した菌を直接用いて簡便法にて結核菌の同定が可能である ( キャピリア TB) 迅速な診断には PCR 法を用いる 経気管支肺生検 (TBLB) により 病巣の組織学的検討と抗酸菌染色 培養 組織では典型的な類上皮細胞肉芽腫が形成されにくいので やはり抗酸菌の検出が最も重要である (6) ツベルクリン反応は CD4 陽性 T 細胞が減少していると陽性とならないことが多く 診断の参考としにくい 最近 末梢血リンパ球を結核特異抗原で刺激し インターフェロン γの産生をみることによって結核感染を判定するクオンティフェロンが臨床にて利用可能になったが HIV 陽性患者における有用性は定かではないが 本邦の検討で 70~80% 程度の感度との報告がある 免疫が正常な活動性結核患者での感度は約 90% であり HIV 陽性患者においても クオンティフェロン検査はある程度有用であろう ただし CD4 陽性細胞数の影響はわかっておらず 解釈の際には注意が必要である さらには 免疫正常者においても クオンティフェロン検査は活動性結核と潜在性結核を区別する目的としては有用性が低く HIV 陽性者においても同様である 結核症 59

61 (7) 上記の方法で診断がつかない場合 診断的治療として抗結核薬を投与し 症状の改善や陰影の変化を観察する (8) 臨床症状や画像所見のみより 正確に非結核性抗酸菌症と鑑別することは不可能である 菌の同定結果を待つ必要がある 2 治 療 HIV 感染に合併する結核では まず 結核の治療を優先する 検体の抗酸菌塗抹や PCR 法の結果が陰性でも 臨床的に結核症が疑わしい場合には 培養の結果 ( 通常 4~8 週間 ) を待たずに治療を開始する 治療薬は 抗 HIV 療法としてプロテアーゼ阻害剤や非核酸系逆転写酵素阻害剤を併用するか否かで異なる リファンピシン (RFP) は肝臓のチトクローム P450 を誘導し これらの薬剤の代謝を速め 血中濃度を著しく低下させる また逆にプロテアーゼ阻害剤は RFP の代謝を阻害し その副作用を増強する 従って RFP とこれらの薬剤の併用は禁忌とされる INH を使用する場合には 神経傷害を防ぐためにビタミン B6を1 日量 25~50mg 投与する 近年 強力な抗 HIV 療法を併用した場合 発熱や一過性の胸郭内病変の悪化が見られることが報告された これは抗ウイルス療法により CD4 陽性細胞の機能が回復した結果の反応で 軽症であれば対症療法のみで良いが 重篤な反応の場合には 一時的に副腎皮質ステロイド剤を使用する INH または RFP が耐性や副作用などの理由で使用できないときは 少なくとも全治療期間を18 ヶ月あるいは排菌陰性化後 12 ヶ月間とすべきである また AIDS 患者では薬剤の副反応が起こり易いので注意が必要である プロテアーゼ阻害剤を開始していない場合 処方例 1 イスコチン (INH) 1 日量 mg 分 1~3 内服 リファジン (RFP) 1 日量 450mg 分 1 朝食前内服 エタンブトール (EB) 1 日量 mg 分 1~2 内服 ピラマイド (PZA) 1 日量 2.0g 分 2 内服 上記を2ヶ月間毎日 その後 INH と RFP のみを毎日 7ヶ月間 (CDC 日本結核病学会とも に 原則として非 HIV 患者と同様の治療で良い ( 計 6ヶ月 ) としているが CDCは空洞を有する 肺結核 肺外結核の合併は計 9ヶ月の治療が望ましいとしている 日本結核病学会は免疫低下を 考慮して3ヶ月間の延長が望ましいとしている よって HIV 陽性者の結核治療については 全 例合計 9ヶ月間の治療とするのが実用的であろう ) プロテアーゼ阻害剤を使用している場合 1) プロテアーゼ阻害剤を結核治療の間は中断し 処方例 1を行う 2) プロテアーゼ阻害剤を初期強化期間の2ヶ月間中断する その後の治療期間を処方例 1の INH RFP ではなく INH EB とする 3) 処方例 2 イスコチン (INH) 1 日量 mg 分 1~3 内服リファブチン (RFB) 1 日量 5mg/kg 分 1 1 日最大量 300mg 朝食前内服 ( 抗 HIV 薬 特にエファビレンツ等の使用によりリファブチンの血中濃度の低下が予想される時は 1 日最大量 450mg まで増量を検討する ) 60 結核症

62 エタンブトール (EB) 1 日量 mg 分 1~2 内服ピラマイド (PZA) 1 日量 2.0g 分 2 内服上記を2ヶ月間毎日 その後 INH と RFB のみを毎日 7ヶ月間 ( 計 9ヶ月間 または排菌陰性化後 6ヶ月間の長い方 ) リファブチンの副作用であるブドウ膜炎については特に注意が必要である ブドウ膜炎の症状は 充血 目の痛み 飛蚊症 霧視 視力の低下 物がゆがんで見える 視野の中心部が見えづらいなどであり EB の視神経炎の症状とは区別可能である 多くの報告では RFB 投与開始後 2ないし5ヶ月で発症が見られている 発症機序はアレルギー性ではなく中毒性とされ 発症頻度は体重あたりの投与量に依存する 発症した場合は薬剤の中止 ステロイド点眼薬などの投与にて軽快する 3 予防的投与 HIV 感染者で 結核患者との接触歴などより結核に感染した可能性が高い場合には 以下の予防的投与を行う なお HIV 患者では播種性の M.bovis 症を合併した症例があるので BCG による予防は禁忌である 処方例イスコチン (INH) 1 日量 300mg 分 1~3 内服 12 ヶ月毎日 参考文献 1) 結核 非結核性抗酸菌症診療ガイドライン 米国胸部疾患学会 医学書院 ) 永井英明 :AIDS/HIV 合併結核の現状と治療 日本医師会雑誌 121: , ) Preventionandtreatmentoftuberculosisamongpatientsinfectedwithhumanimmunodeficiencyvirus:principlesoftherapyandrevisedrecommendations.CentersforDiseaseControlandPrevention.MMWRMorbMortalWklyRep47(RR-20):1-58, ) 結核 UptoDate 毛利昌史ほか編 南江堂 1999 年 東京 5) CDC 勧告 (MMWR45 巻 42 号 )htp:// 6) htp:// 感染症一般の予防投与法について日本語で解説 powerpoint でダウンロード可能 ) ( 医療安全管理部南須原康行 ) 結核症 61

63 7-9 サルモネラ感染症 Salmonelaenteriditis と Salmonelatyphimurium による菌血症が多く 移植患者や免疫抑制剤投与患者にも見られる日和見感染である 欧米では HIV 感染者の急性下痢の5~15% が Salmonela による 1 臨床症状 発熱を初め 水様下痢 全身倦怠感 食欲不振 体重減少など非特異的症状が主体 Salmonela 菌のキャリアでは再燃を繰り返すものが多い 2 診断方法 菌血症 : 血液培養腸炎 ( 急性下痢の定義は3 日間以上持続する1 日 3 回以上の下痢 ): 便培養 ( 感度は90% 程度 ) 3 治療方法 1シプロフロキサシン 300mgx2DIV もしくは600mg/3x の経口 2ピペラシリンナトリウム 2gx2DIV 3ホスホマイシンナトリウム 2gx2DIV 4イミペネム シラスタチンナトリウム 0.5gx2DIV など以上を軽症や菌血症でないものは1~2 週間 CD4 リンパ球が 50/μ 渥未満の患者や菌血症のある患者は4~6 週間継続する 下痢のある場合は 初期治療として輸液と電解質補給も大切である 稀ではあるが シプロフロキサシン耐性の場合は ST 合剤を投与する AZT は多くの Salmonela 菌に対して有効で 予防薬として作用している場合がある 参考文献 1) JInfectDis 1999;179:1553 2) ClinInfectDis2001;32:331 3) NEnglJMed 2001;344:1572 4) MedicalmanagementofHIVinfection 5) TheSanfordguidetoHIV/AIDStherapy (2006.7) ( 第三内科橋野聡 ) 62 サルモネラ感染症

64 7-10 イソスポラ症 1 概説 イソスポラ症は 寄生性原虫 Isosporabeli が小腸上皮細胞に感染し 下痢を引き起こす原虫感染症である 汚染水や感染動物 あるいは感染しているヒト由来の cyst を経口摂取することにより感染する 熱帯 亜熱帯地域で広く流行するが 国内での発生例は少ない 免疫不全患者や海外旅行者の下痢症の原因として重要である 2 臨床症状 水様性下痢 腹痛 発熱 嘔吐 倦怠感などの症状のあるときは糞線虫症 クリプトスポリジウム症 CMV 腸炎などとともに本症を疑う 健常人が感染した場合は2~3 週間の一過性の下痢で自然治癒するが AIDS 患者では重篤かつ持続性の下痢から吸収不良症候群を呈し死亡することもある イソスポラ症では末梢血での好酸球増多を認める場合が多く クリプトスポリジウム症との鑑別上参考になる 3 診断 集卵法により採取した糞便中にイソスポラの特徴的なオーシスト oocyst を検出することで診断する 糞線虫症 クリプトスポリジウム症との鑑別が必要であるが 抗酸染色変法あるいはヨード染色により30 15μm 大の長楕円形の特徴的な oocyst が確認できれば診断は容易である 4 治療 イソスポラ症は Sulfamethoxazole/Trimethoprim 合剤 (ST 合剤 ) によく反応し2~3 日で軽快する事が多いが 再発が多いので維持療法が必要である 症状の改善 再発防止のために HAART の導入も推奨される HAART により3~6ヶ月以上 CD4 が200/μ 渥以上を維持できれば 維持療法を中止して良い 初期治療 遺推奨療法 ST 合剤 ( バクタ ) 4T/2 (4g/2 ) または8T/4 (8g/4 ) 10 日間代替療法 1 Pyrimethamine50-75mg/day 遺 Folinicacid( ロイコボリン ) 5-10mg/day 10 日間遺 2 Ciproflaxin( シプロキサン ) 1000mg/2 10 日間 再発予防 遺推奨療法 ST 合剤 ( バクタ ) 2-4T または g/1 連日または週 3 回投与 代替療法 1 2 遺 Pyrimethamine/Sulfadoxine 合剤 ( ファンシダール )1T/1, 週 1 回投与 Pyrimethamine25mg/day 遺 Folinicacid( ロイコボリン ) 5mg/day 連日 イソスポラ症 63

65 参考文献 1) SpachDH,HootonTM. 矢野邦夫監訳.HIV マニュアル. 日本医学館,1997 2) 神谷晴夫. イソスポーラ症. 別冊日本臨床領域別症候群シリーズ No.24 感染症症候群 Ⅱ: ,1999 3) BartletJG etal.medicalmanagementofhiv Infection2007 Edition.Publishedby JohnsHopkinsMedicineHealthPublishingBusinessGroup,2007 4) BensonCA etal.treatingopportunisticinfectionsamonghiv-infectedadultsand Adolescents.Recommendationsfrom CDC,theNationalInstitutesofHealth,andtheHIV MedicineAssociation/InfectiousDiseasesSocietyofAmerica.MMWR Recomm Rep53 (RR-15):1-112,2004 5) GilbertDN etal.thesanfordguidetohiv/aidstherapy,17thedition,2009 ( 第二内科遠藤知之 ) 64 イソスポラ症

66 リンパ性間質性肺炎 7-11 (Lymphoidinterstitialpneumonitis:LIP) 1 LIP とは 肺間質におけるびまん性の小リンパ球 ( リンパ球 形質細胞 免疫芽細胞 ) 浸潤に特徴づけられる間質性肺炎 HIV に感染した小児や自己免疫性疾患に罹患した患者で多くみられる 肺病変は多様であり 肺実質の巣状リンパ球浸潤から肺胞中隔浸潤 (LIP) を経て 最終的には腫瘍性のリンパ増殖腫瘍性疾患 (polyclonalpolymorphicb-cellymphoproliferativedisorder) に及ぶ B 細胞の反応性増殖と考えられている 胚中心を伴うリンパ濾胞の増生が認められるものは 肺リンパ過形成 (pulmonarylymphoidhyperplasia;plh) と言われる 現在 LIP/PLH complex として扱われ 小児 AIDS の診断基準の一項目に取り入れられている 2 病 因 原因は不明であるが 慢性的なウイルス抗原 (EBV や HIV など ) への暴露またはサイトカインが関与する 肺におけるリンパ増殖性の免疫反応と考えられている HIV 関連の LIP では B 細胞では polyclonal T 細胞では oligoclonal な増殖がみられている 3 頻 度 米国では小児 HIV 感染患者の肺疾患の22~75% を占めるが 成人の HIV 関連の肺疾患では3% 程度にすぎない 母子感染小児 (HIV 垂直感染 ) の約 40% に発症し 生後 1~2 年が最も多く 報告例は5 か月から5 歳に集中している HIV に関連した LIP はアフリカ系の小児に多く遺伝的素因の関与も示唆されている 4 臨床症状 たまたまレントゲン検査で見つかることがあり初期は無症状である 発症は潜行性であり 咳 ばち状指 低酸素血症が緩徐に進行する 唾液腺腫脹 全身リンパ節腫大がほぼ100% にみられるが 多呼吸や発熱は約 9% にみられるにすぎない 鼻づまりや口呼吸 時に睡眠時無呼吸を呈する 免疫グロブリン値は高値を示し 時に過粘調度症候群を呈する 予後が比較的良く LIP のみられる患者では CD4 陽性 Tリンパ球の減少が緩やかで LIP のみられない患者よりも生存期間が長い 診断からの平均生存期間は6 年といわれている LIP に関連した臨床症状 レントゲン所見 呼吸機能などは HIV 感染の進行度や重症度とは独立して 時間の経過と共に著しい改善をみることがある 年長になるにつれ 細菌 真菌 CMV などによる二次感染がおこり 一部は慢性肺疾患や気管支拡張症へと進行する ( ニューモシスチス肺炎の合併はまれ ) リンパ性間質性肺炎 (Lymphoidinterstitialpneumonitis:LIP) 65

67 5 診 断 確定診断は肺生検であるが 臨床的には胸部 X 線で両側性の網状小結節状の間質性肺陰影が2 か月以上認められ 病原体が同定できず 抗生物質療法が無効の場合は LIP/PLHcomplex と診断する 胸部聴診所見 : 呼吸器感染症を合併しなければ正常である 胸部 Ⅹ 線 : 両側に網状 小結節状の陰影がびまん性にみられる 進行とともに肺門 傍気管リンパ節腫大がみられるようになる ( 正常の時との比較が重要 ) 肺 CT: びまん性に網状 小結節陰影がみられる 呼吸機能検査 : 拘束性障害を示す 肺容積および一酸化炭素拡散能 (DLco) は減少し, 気流量は保たれている Ga シンチ : 取り込みがみられる 診断的有用性はないが 肺生検の部位決定には有用である BAL: 診断的価値は小さいが除外診断上有用である 6 治 療 無症状の場合の治療は不要 症状が見られるときは対症療法 ( 喘鳴に対する気管支拡張剤 ステロイド吸入 低酸素血症に対する酸素吸入など ) や免疫抑制療法 ( 主にコルチコステロイド ) が必要なことがある 併存する細菌感染症に対して抗菌療法を行う ジドブジンの投与や HAART 療法により LIP の症状が改善する例もある ( 病原微生物学分野遠藤理香 感染制御部石黒信久 ) 66 リンパ性間質性肺炎 (Lymphoidinterstitialpneumonitis:LIP)

68 7-12 本邦ではまれな ARC 以下の2 疾患は本邦においては 極めてまれな ARC であるので 概説のみにとどめる 診断 治療法については成書を参照されたい 1 コクシジオイデス症 米国南西部 中米 メキシコに発生する風土病のひとつで 二形態真菌である Coccidioidesimmits の分節型分生子の吸入で感染する ヒトからヒトへの伝播は起こらないが 初感染から数ヶ月後に発症することも稀ではないため 流行地域への渡航歴が重要である 本邦では本症は4 類感染症に定められており 診断した場合は直ちに保健所へ届け出る必要がある 国内で1999 年から2007 年までに 22 例の報告がある CD4 が250/μ 渥以下では限局性の肺炎と全身播種性のどちらの病像も来すが HIV 感染患者では全身播種性または髄膜炎を呈するのが一般的である 以下の症状を有する場合に本症を疑う 1 呼吸器症状としては ニューモシスチス肺炎と同様 発熱 咳嗽 呼吸困難がみられ 両者が合併することもまれではない 胸部 X 線像では約 60% にびまん性網状結節影 約 40% に局所的浸潤影がみられる 胸部 X 線上 肺門リンパ節の腫脹があれば本症の可能性が高い ニューモシスチス肺炎とサイトメガロウイルス肺炎では肺門リンパ節の腫脹はまれである 2 呼吸器以外の症状 1) 全身リンパ節腫脹 2) 皮膚結節 潰瘍を伴った腫瘤の多発融合 ( コクシジオイデス肉芽腫 ) 3) 進行性嗜眠状態 ( 髄膜炎 : 髄液中リンパ球増多 糖 <50mg/dl 蛋白正常 ~ 軽度増加 ) 4) 肝障害 5) 骨 関節炎 (HIV 患者ではまれ ) 診断は培養 組織診断 血清 髄液抗体価の測定により行われる 治療はびまん性肺病変や全身播種性には amphotericinb0.5~1mg/kg の点滴静注が第 1 選択である 軽症例では fluconazole400~800mg/ 日 itraconazole400mg/ 日の内服を行う 髄膜炎例には fluconazole400~800mg/ 日の投与を 難治例には amphotericinb の髄腔内投与を追加する 再発が高率なため長期に渡り fluconazole や itraconazole の予防内服を必要とする 2 ヒストプラスマ症 コクシジオイデス真菌症と同様 一種の風土病であり 二形性真菌である Histoplasmacapsulatum の胞子の吸入で感染する 米国中央部 ( オハイオ ミシシッピ河川流域 ) メキシコ カリブ海 アフリカなどが汚染地域であるが 非汚染地域でもこれらの汚染地域に在住した既往がある人に発症がみられ 本邦でもこれまでに人獣併せて約 50 例の報告がある CD4 が150/μ 渥以下である HIV 感染症患者ではほとんどが全身播種性の病態を呈する 全身播種性のヒストプラスマ症では多くの場合 発熱 疲労感 体重減少のみが主症状となる 本邦ではまれな ARC 67

69 咳や呼吸困難などの呼吸器症状は50% にみられ 20-30% で肝脾腫を呈す 敗血症性ショック 口腔内潰瘍や皮膚の多発性紅斑性結節 消化器病変 髄膜炎や脳膿瘍などの中枢神経浸潤がそれぞれ10% 以下の症例に合併する また副腎に感染し 副腎不全を呈することがある 血液検査では骨髄抑制と肝酵素 LDH フェリチンの上昇がみられる 診断は血液 骨髄液 BAL 液の培養 尿や血清 髄液中の抗原同定 組織診断 抗体価の測定により行われる β-d グルカンも上昇すると報告されている 全身播種性あるいは髄膜炎に対しては amphotericinb または liposomalamphotericinb の点滴静注を3~10 日間 ( 髄膜炎では12~16 週 ) 行い その後 itraconazole の内服治療を12 週間行うのが効果的である Fluconazole には耐性の場合が多く itraconazole と比較し明らかに治療効果が不良である 維持療法として itraconazole の内服治療を長期に継続する必要がある 1 年以上の治療を継続し HAART で CD4 が150/μ 渥以上に回復し 尿 血清の抗原が低下した症例では維持療法を中止できる 参考文献 1) SpachDH,HootonTM. 矢野邦夫監訳.HIV マニュアル. 日本医学館,1997 2) BartletJG etal.medicalmanagementofhiv Infection2007 Edition.Publishedby JohnsHopkinsMedicineHealthPublishingBusinessGroup,2007 3) BensonCA etal.treatingopportunisticinfectionsamonghiv-infectedadultsand Adolescents.Recommendationsfrom CDC,theNationalInstitutesofHealth,andtheHIV MedicineAssociation/InfectiousDiseasesSocietyofAmerica.MMWR Recomm Rep53 (RR-15):1-112,2004 4) AmpelNM.CoccidioidomycosisinpersonsinfectedwithHIVtype1.ClinInfectDis41: ,2005 5) WheatLJ.Histoplasmosis:areview forcliniciansfrom non-endemicareas.mycoses49: ,2006 ( 第二内科遠藤知之 ) 68 本邦ではまれな ARC

70 7-13 HIV-1 消耗性症候群 1 臨床症状 体重減少は HIV 感染者でよく見られる症状である (30% 程度といわれている ) ここでは 合併する日和見感染や悪性腫瘍によらない 10% 以上の不自然な体重減少 30 日以上続く慢性の発熱 30 日以上続く1 日 2 回以上の下痢症状を呈することを HIV-1 消耗性症候群と定義する または 過去において HIV 感染症によると考えられる体重減少が認められ BMIが 20 未満の患者を指す 2 診断方法 合併する感染症や腫瘍の否定 : 特に鑑別を要する疾患として クリプトスポリジウム MAC 感染症 結核 ヒストプラズマ カポジ肉腫 非ホジキンリンパ腫などが挙げられる 3 治療方法 経腸栄養剤 : エレンタール6~8 袋 / 日 エンシュアリキッド 6~9 缶 / 日 止 痢 剤 : タンニン酸アルブミン 3~4g/ 日ロペラミド塩酸塩 2C/ 日 (6Cぐらいまで増量して有効な症例もある) 遺伝子組み換え型ヒト成長ホルモン製剤 : セロスティム5mg/ 日連日皮下注 12 週間作用機序 : 窒素バランスの改善 蛋白同化作用 脂肪異化作用臨床成績 : 除脂肪体重の増加 体脂肪の減少による患者 QOL の改善臨床的意義 : 治療後の体重及び除脂肪体重増加とエイズ発症率 死亡率との関連は不明副作用 : 体液 Na 貯留により浮腫 関節痛 筋肉痛 高血圧が見られることがある 欧米ではこれら以外に 合成プロジェスティン アナボリックステロイドやサリドマイドも試みられている 参考文献 1) AnnInternMed 1998;129:18 2) AIDS 1999;13:1195 3) ClinInfectDis 2003;36:S69 4) ClinInfectDis 2003;36:S74 5) MedicalmanagementofHIVinfection 6) TheSanfordguidetoHIV/AIDStherapy (2006.7) ( 第三内科橋野聡 ) HIV-1 消耗性症候群 69

71 7-14 原発性リンパ腫 HIV 感染後に起こる原発性リンパ腫は AIDS 関連リンパ腫といわれ 持続性全身性リンパ節腫脹 (PGL) との鑑別が必要で 種々の画像診断と病理組織診断が重要である HIV 感染それ自体は直接的な発癌性はないと考えられているので EBV HHV8 など種々のウイルス再活性化やサイトカインの産生異常 あるいは癌遺伝子の活性化が 病因の一つに考えられている AIDS 関連非ホジキンリンパ腫の発生頻度は HIV 感染者では一般人に比較して200~600 倍高いとされ AIDS 患者の生涯で約 5~20% に合併するため 患者の長期予後を規定する最重要因子といえる 他の日和見疾患は HAART 採用後その発症頻度が減少してきたが 非ホジキンリンパ腫の発症は減少していないとする報告が多い HIV 感染の診断がされておらず AIDS 関連リンパ腫で発症して病院を訪れる いきなりエイズ 症例もあるが 施設当たりの症例経験数が少なく 難治性かつ再発性で エイズ特有の合併症も多く 標準的治療の早期確立が望まれている 1 臨床症状 (AIDS 関連リンパ腫の特徴 ) (1) 臨床的特徴 1) 悪性リンパ腫で頻用される AnnArber 分類の B 症状 ( 発熱 盗汗 体重減少 ) を呈することが多く (75~85%) 同時多発性のものが多い 2) 節外性リンパ腫 ( 中枢神経系 消化器系 骨髄浸潤など ) の形態をとるものが多く 診断時に stageiv のものが多い 3) CNS リンパ腫が高頻度にみられ しかも無症状のものも多い また 画像上トキソプラズマ症との鑑別が困難である (2) 病理学的特徴 1) リンパ腫細胞の帰属が B 細胞性のものが多い 2) 組織学的には immunoblastic difuselarge Burkit に分類される 悪性度の高いものが70~90% と多い 2 診断方法 画像診断 (X-P CT MRI GIS CS 67 Ga-Scinti FDG-PET など ) と病理組織診断 ( 生検 骨髄穿刺 腰椎穿刺など ) が主体となる 3 治療方法 (1) 治療の原則 1) 治療することによる骨髄抑制 免疫不全の進行が原疾患に与える影響と 治療困難な CNS 原発が多いことが問題となる 2) 多剤併用化学療法を施行する場合 doseatenuation や G-CSF の使用などに工夫が必要である 3) 日和見感染予防対策を 十分に並行して施行する必要がある 4) HAART:HAART 導入により化学療法後の骨髄抑制や日和見感染症がコントロールしや 70 原発性リンパ腫

72 すくなり 結果として AIDS 関連リンパ腫の完全寛解率が有意に上昇した 化学療法併用時の HAART 薬剤選択には 抗腫瘍薬の血中濃度に影響を与える CYP3A 阻害作用が少なく 骨髄障害の弱いものを組み合わせるとよい (2) 治療の実際 CHOP 療法 (3~4 週間毎に 4~6サイクル ) CY750mg/ m2 ivday1 ADM50mg/ m2 ivday1 VCR1.4mg/ m2 ivday1 PSL60mg/ m2 poday1~5 1) CHOP 療法がスタンダードレジメンと考えられるが HIV 非感染者と異なり 高度免疫不全状態では潜在的な骨髄機能が低下しており 上記の薬剤をそのまま使用できないことが多い CDE EPOCH 療法で良好な成績を得たとする報告もある 2) non-aids で CD4 陽性細胞が200/μ 渥以上であれば通常量を AIDSの状態もしくは CD4 陽性細胞が100/μ 渥以下であれば減量を考慮し 日和見感染の既往歴のあるものは さらに減量する 3) 非 HIV 感染者における R-CHOP といった標準的治療が確立しておらず rituximab はCD4 陽性細胞が50/μ 渥以下の場合には治療関連死亡が生じやすくなるので使用しない場合が多い 4) CNS 原発のものは 40Gy 程度の放射線照射がファーストチョイスのことも多い 4 予 後 HAART 時代に入って AIDS 関連リンパ腫の予後は幾分改善し 平均生存期間の中央値は 2 年となった (HAART 導入以前は1 年以内 ) 治療抵抗性あるいは再発症例に対しても 自家末梢血幹細胞移植により長期寛解を得られる症例がある 参考文献 1) 治療学 HIV 感染症 (2001.1) 2)BrJHaematol2001;112:863 3)JClinOncol2004;22:1491 4)HIV 感染症とその合併症 : 診断と治療のハンドブック.HIV 研究班 (2005.3) 5) 医学のあゆみ AIDS 治療 : ( ) 6) MedicalmanagementofHIVinfection 7) エイズ関連非ホジキンリンパ腫 (ARNHL) 治療の手引き ver0.9.hiv 研究班 ( ) ( 第三内科橋野聡 ) 原発性リンパ腫 71

73 7-15 HIV-1 脳症 認知機能障害 運動および行動の異常を中核とし 亜急性ないしは慢性に進行し 末期には四肢麻痺 高度の認知障害を呈する脳症である 本症の病態には HIV-1 が直接関与している 日常生活に支障をきたす程の重度な認知機能障害 行動障害を認め 小児においては行動上の発達障害がみられる 本症においては特異的検査所見に乏しく 診断は除外診断となり HIV-1 感染以外に説明可能な他の疾患や原因がみられないときに HIV-1 脳症と診断される AIDS 診断時にすでに認知機能障害がみられ HIV-1 脳症を合併している症例もある 1996 年以降 核酸系逆転写酵素阻害薬 (nucleosidereversetranscriptaseinhibitor:nrti) とプロテアーゼ阻害剤 (proteaseinhibitor:pi) あるいは非核酸系逆転写酵素阻害薬 (non-nucleosidereversetranscriptase inhibitor:nnrti) との組み合わせからなる高活性抗レトロウイルス療法 (highlyactiveantiretroviraltherapy:haart) がHIV 感染の治療として導入された HAART は血液中のウイルス負荷量を著明に減少させ HIV 脳症の発生数を 40~50% 減少させた しかしながら 現在でも HIV 脳症は主要な死亡原因の一つである 1 症 状 初期には動作や言葉遣いが緩慢となる 初期の神経学的診察では 知能検査で異常が見出せないこともあるが 問いかけなどに対する反応スピードが遅いのが特徴的である 神経学的には 病初期には運動失調や錐体路徴候がみられ 進行すると認知機能障害や行動障害をきたす 健忘 集中力の低下 せん妄も高頻度にみられ 運動失調は高度となり 歩行困難となる 無関心 無気力になりうつ病と誤診される症例もある これらの精神 神経症状は緩徐に進行するが なかには急速に進行するものもある 急速進行例の過半数は全身疾患 特に低酸素血症を合併することの多い呼吸器系の日和見感染症 ( ニューモシスチス肺炎など ) の際にみられる 2 診断 (1) 脳脊髄液検査細胞数 ( 単核球 ) や蛋白の軽度増加がみられる 髄液 HIV-1 RNA 定量値は増加している (2) 画像診断 CTや MRI では大脳皮質の萎縮や脳室の拡大など萎縮所見が主であるが 時に広汎な白質脳症の所見を呈する 脳血流 SPECT では大脳皮質びまん性の血流低下を認める (3) 脳波基礎波が進行性に徐波化する 一方 局所性や突発性の変化はあまりみられないのが特徴である (4) 確定診断 HIV-1 脳症を確定診断することのできる特徴的な検査所見はなく あくまで除外診断である 従って 二次性の脳症 ( 単純ヘルペス脳炎 進行性多巣性白質脳症 帯状疱疹ウイルス脳炎 トキソプラズマ脳症 クリプトコッカス髄膜脳炎 脳悪性リンパ腫など ) を除外診断することが重要である 72 HIV-1 脳症

74 3 予 後 症状は増悪進行し 重度の認知機能障害や他のさまざまな神経症状 ( 錐体路症状 パーキンソン症状 運動失調 ) を呈する また認知障害は高度となり 動作も極端に遅くなる このような重度の状態になると平均 2ヶ月 長くとも6ヶ月以内に死に至るとされる 死因は 嚥下性肺炎や他の日和見感染によることが多い 4 治療法 HIV-1 脳症の治療法は未だ確立されてはいないが HAART 導入により変化がみらている Sacktor らは2002 年に HAART 導入以前のコーホート研究と比較することで HAART 療法が認知機能障害の発症率を減少させる可能性を示している 同様の報告は Suarez らによっても報告されている ジドブジン (zidovudine レトロビル 経口 保険適応あり) は脳血液関門を通過する薬剤である 本剤の投与により髄液中の HIV-1 抗原の減少を認め 神経症状の改善が期待されるとの報告がある 成人では400~600mg を一日 4~6 回に分けて経口投与する 副作用としては 造血障害 消化器症状 ( 嘔気嘔吐 胃部不快感 食欲不振 ) がみられる 高用量の zidovudine(1000~2000mg) 投与も推奨されているが 臨床効果は一過性であり 長期間にわたる調査では HIV 脳症発症の予防効果は認められなかった Sacktor らは2001 年に髄液移行の良い薬剤を多剤含む HAART でも 単剤のみの HAART でも認知障害に対する治療効果は同等であったとも報告している また Tozzi らは 認知機能障害の存在はウイルス抑制ができていない患者にとっては 生存率を減少させる方向に働くが 抑制されている患者では生存率に影響しないと報告している 参考文献 1) 味沢篤 :HIV-1 脳症 松田重三編 HIV 治療マニュアル HIV 感染者発症者予防 治療に関する研究班 ( 班長山田兼雄 )p ) 岸田修三 : 神経系の感染症 : 診断と治療の進歩 Ⅳ. 重要な神経系の感染症 7.AIDS における神経系感染症 日本内科学会雑誌 85 5:79-83,1996 3) 矢野雄三 根岸昌功 :AIDS の神経症状 神経内科 39:12-21,1993 4) 平野朝雄 馬原孝彦 :AIDS の神経病理 伊藤正夫 楢林博太郎編 神経科学レビュー 7: 13-26,1993 5) CliqueP,etal:Diagnosisandclinicalmanagementofneurologicaldisorderscausedby cytomegalovirusinaids.jneurovirol4: ,1998 6) JelingerK,etal:NeuropathologyandgeneralautopsyfindingsinAIDSduringthelast 15years.ActaNeuropathol100: ,2000 7) MocroftA,etal:EuroSIDA studygroup:declineintheaidsanddeathratesinthe EuroSIDA study:anobservationalstudy.lancet362:22-29,2003 8) SacktorN,etal:HIV-associatedcognitiveimpairmentbeforeandaftertheadventof combinationtherapy.jneuroviol8: ,2002 9) SuarezS,etal:OutcomeofpatientswithHIV-1-relatedcognitiveimpairmentonhighly activeantiretroviraltherapy.aids15: ,2001 HIV-1 脳症 73

75 10)SactorN,etal:CSFantiretroviraldrugpenetranceandthetreatmentofHIV-associated psychomotorslowing.neurology57: , )TozziV,etal:NeurocognitiveimpairmentandsurvivalinacohortofHIV-infectedpatientstreatedwithHAART.AIDSResHum Retroviruses21: ,2005 ( 神経内科緒方昭彦 矢部一郎 佐々木秀直 ) 74 HIV-1 脳症

76 7-16 進行性多巣性白質脳症 (Progressive maultifocalleukoencephalopathy;pml) 進行性多巣性白質脳症 (progressivemultifocalleukoencephalopathy;pml) は JC ウイルスによる中枢神経の日和見感染症であり slow virusinfection の一つである JC ウイルスは常在ウイルスであり ヒトに不顕性感染しており 特に腎臓に持続感染している JC ウイルスが宿主の免疫能低下によりゲノム調節領域に変異を生じた結果 中枢神経親和性を獲得する この変異した JC ウイルスが oligodendrocyte に感染することにより その蛋白合成を阻害し 二次的に脱髄病巣を多発するものと考えられている 1 疫 学 HIV-1 感染者における PML の合併頻度は0.5~4.0% 程度 HIV-1 感染者に合併した PML28 例からの分析によれば 発症年齢は22~58 歳 ( 平均 39 歳 ) で男性 25 例 ( 多くは homosexual) 女性 3 例と報告されている また HIV-1 感染者以外の基礎疾患に合併した PML 多数例の分析では 性差はなく 40 歳以上で好発し20 歳以下の発症はまれと報告されている 2 臨床症状 HIV-1 感染者が進行性の神経症状を呈した場合に本症を疑う AIDS 関連 PMLでは非 AIDS 関連 PML に比較して前頭葉 頭頂葉病変が多く 初発症状は運動障害が多い (1) 主な初発症状視力障害 片麻痺 認知機能障害の頻度が比較的高く さらに言語障害 人格変化 歩行障害 意識障害 頭痛などがあげられる (2) 経過中の主要症状臨床症状は多彩であり 片麻痺 ~ 四肢麻痺 失語 失行 認知機能障害 視覚障害 ( 半盲 ~ 全盲 ) などを認める 3 診 断 (1) 一般臨床検査特徴的な所見はない (2) 脳脊髄液検査ほとんど異常はみられず 細胞数の増加も認められない ( 蛋白量は軽度増加を示すことがある ) (3) 脳波特徴的な所見はなく 非特異的な徐波をみる (4) 血清 JC ウイルス抗体価成人の70% 以上は JC ウイルス不顕性感染を起こしており 血清の抗体価の測定に診断的価値はない また 髄液の JC ウイルス抗体価は上昇しないと報告されている (5) 画像診断 PML では主として大脳の皮質下白質に大小不同の 融合して不整な形状の病巣が多数認められる この所見は脳 MRIT2 強調画像や FLAIR 画像にて確認される この MRI 病巣は通常 進行性多巣性白質脳症 (PML) 75

77 ガドリニウムでは造影されない (6) 確定診断診断的価値が最も高い検査は脳生検であり 得られた脳組織において PML に特徴的な病理組織像と組織内に JCV 抗原またはゲノムの存在を確認することにより確定診断される 髄液における JCV ゲノム解析が PML の確定診断に有効であるとも報告されている これは JC ウイルスゲノムの調節領域を含む部位を PCR にて増幅し 得られた PCR 産物より調節領域をシークエンスすることにより PML 型 JC ウイルスであることを確認するものであり臨床診断の一助となる 本方法は北海道大学医学研究科分子細胞病理学分野にて施行可能である 鑑別疾患として HIV-1 脳症 悪性リンパ腫 脳腫瘍などがあげられる 4 経過と予後 神経症状はいったん発症すると亜急性に進行し 多くは, 発症後 1 年以内に死亡する 5 治 療 現在のところ PML に対して確立された有効な治療法はなく 対症療法が主である その中で 高活性抗レトロウイルス療法 (highlyactiveantiretroviraltherapy;haart) は PMLに対しても一定の効果が期待できる治療法である JC ウイルスに対する抗ウイルス薬としては cytarabine とcidofovir があるが 治療成績の報告はは一定しておらず 無効例の報告も多い 参考文献 1) 川杉和夫 松田重三 : 進行性多発性白質脳症 (PML) 松田重三編 HIV 治療マニュアル HIV 感染者発症予防 治療に関する研究班 ( 班長山田兼雄 )p ) 越智博文 小林卓朗 : 神経系の感染症 : 診断と治療の進歩 Ⅳ. 重要な神経系の感染症 8. 進行性多発性白質脳症 (PML) 日本内科学会雑誌 855:79-83,1996 3) 矢野雄三 根岸昌功 :AIDS の神経症状 神経内科 39:12-21,1993 4) 平野朝雄 馬原孝彦 :AIDS の神経病理 伊藤正夫 楢林博太郎編 神経科学レビュー 7: 13-26,1993 5)SugimotoC,etal:AmplificationofJCvirusreguratoryDNA sequencesfrom spinalfluid: diagnosticvalueforprogressivemultifocal leukoencephalopathy.archvirol143: ,1998 6) 松井尚子他 : 進行性多巣性白質脳症と考えられた症例の拡散テンソル画像による経時的検討 臨床神経 46: ,2006 7) EpkerJL,etal:Progressivemultifocalleukoencephalopathy,areview andanextended reportoffivepatientswithdiferentimmunecomprom.eurjinternmed.20: ,2009 8) 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業プリオン病および遅発性ウイルス感染に関する調査研究班 : 進行性多巣性白質脳症 (PML) の診断および治療ガイドライン htp://prion.umin.jp/guideline/guideline_pml.html ( 神経内科緒方昭彦 矢部一郎 佐々木秀直 ) 76 進行性多巣性白質脳症 (PML)

78 トキソプラズマ脳症 7-17 (Cerebraltoxoplasmosis) トキソプラズマ症 (Toxoplasmosis) は人畜共通感染症で Toxoplasmagondi(T.gondi) の感染によって発症する T.gondi は胞子虫類に属する細胞内寄生性の原虫である ネコ科の動物の腸上皮で有性生殖を行い 糞便中に排出されたオーシスト (oocyst) あるいは食肉中の嚢子の経口摂取から感染が起こる T.gondi 感染は通常無症候性感染であるが 先天性感染や免疫不全状態では様々な重篤な症状を引き起こす AIDS 患者の場合 大部分は CD4 陽性リンパ球数が100/μ 渥未満に低下したときに 慢性潜在性に感染していた T.gondi が再活性化して発症する T.gondi は中枢神経系においてもっとも再活性化しやすく AIDS 患者でみられる中枢神経系の日和見感染症のうち もっとも頻度が高いものがトキソプラズマ脳症である 1 臨床症状 発症の様式は 急性のものから亜急性 慢性の経過をとるものまで様々である 初発症状も様々だが 頭痛 意識障害および発熱の頻度が高く それぞれ55% 52% 47% であったとの報告がある このような非局在症候の他 局在症候としては片麻痺 小脳性運動失調 脳神経麻痺の頻度が高く その他 感覚障害 失語症 視野障害 複視 けいれん 人格変化 錐体外路症候などの症候が病変部位に応じて出現する ほとんどの AIDS 患者のトキソプラズマ症は脳に限局するが 脳以外の臓器では眼と肺が侵される率が高い 2 診 断 (1) 血清学的検査免疫能正常者では 2 回の検査で IgG 抗体価が4 倍以上に上昇した場合や1 回の検査でも IgM 抗体が陽性であれば 急性感染と考えられる しかし AIDS 患者の場合は本症を発症していても抗体陰性の患者が存在し 臨床的および病理学的に本症と診断された患者のうち それぞれ16% 22% が IgG 抗体陰性であったとする報告がある したがって IgG 抗体価の上昇が見られない場合や IgM 抗体が陰性の場合でも 本症を否定することは出来ないため注意が必要である なお 当院ではトキソプラズマ IgG および IgM(EIA 法 ) を BML トキソプラズマ抗体 (PHA 法 ) を SRL にそれぞれ委託している (2) 脳脊髄液検査脳脊髄液中の蛋白は軽度から中等度上昇 糖は正常から低下する傾向を示す 多くの例で細胞数は単核球優位に軽度増加する 脳脊髄液中の抗体価測定は本症の診断に有用である PCR 法による脳脊髄液中の T.gondiDNA の検出については報告により様々であるが いずれも感度は低いものの診断に対する特異度は100% と高い 保険適応外であり当院では外注 ( 三菱化学 BCL) になるが 海外 ( 米国 ) に委託しているため検査日数が2~3 週間かかること及び検査費用が問題となる (3) 画像診断病巣の検出には CT より MRI の方が感度が高いので 本症を疑った場合 MRI を施行すべきである また CT MRI いずれにしても 造影 / 増強が必要である 病変は3 分の2の症例で多発性であり 約 90% の症例でリング状の造影または増強効果がみられる 病変は浮腫及 トキソプラズマ脳症 (Cerebraltoxoplasmosis) 77

79 び占拠効果を伴い 皮質 皮質 - 髄質境界部 基底核などに認められることが多い また T1 強調画像において高信号を呈する症例も複数例報告されている AIDS 患者においてこのような画像所見を呈する疾患としては本症の他 クリプトコッカス症 cryptococcosis ヒストプラズマ症 histoplasmosis アスペルギルス症 aspergilosis 結核症 tuberculosis トリパノゾーマ症 trypanosomiasis などの感染症 原発性および転移性脳腫瘍 悪性リンパ腫などを鑑別に挙げる必要がある そのうち本症と中枢神経系の悪性リンパ腫の頻度がもっとも高く それぞれ50% 30% であったとする報告があり 特にこれらの鑑別が問題となる AIDS に伴う悪性リンパ腫の場合 CT または MRI にてリング状の造影または増強効果を呈し本症の所見と類似するが 悪性リンパ腫の場合は病変が単発性のことが多い点が参考になる 201 TlSPECT では 早期像にて 201 Tlの集積亢進がなければ悪性リンパ腫は否定的である 早期像にて 201 Tlの集積亢進があり さらに retentionindex も高い場合は悪性リンパ腫 早期像にて 201 Tlの集積亢進があっても retentionindex が低い場合は本症を含む非悪性病変の可能性が高いとされている (4) 確定診断確定診断は脳生検による病理学的検討によるが 生検に伴う合併症の危険性もあり 全例に行われるわけではない 抗 T.gondi 抗体陽性 予防薬の投与を受けていない 画像上脳内に多発性のリング状に造影 / 増強される病変を認める という三点を満たす場合 90% の可能性で本症と考えられ 本症として治療を開始するのが一般的とされている 3 治 療 AIDS 患者では本症と悪性リンパ腫との鑑別が困難な例が多いが 上述のように本症を疑った場合 まず本症として積極的治療を行う 本症の場合 通常治療開始後 2 週間以内に90% 以上の症例で臨床的および画像上の改善が得られるが 改善がみられない場合は脳生検が推奨される 治療は一般にピリメタミン pyrimethamine とスルファジアジン sulfadiazine( サルファ剤 ) の併用経口投与が行われる いずれも本邦では発売されていない薬剤だが ヒューマンサイエンス振興財団 政策創薬総合研究事業輸入熱帯病 寄生虫症に対する希少疾病治療薬を用いた最適な治療法による医療対応の確立に関する研究班における薬剤使用機関において 投薬可能である 詳細は同研究班のホームページ (htp:// を参照されたい 具体的には 初期治療としてピリメタミンを初日 200mg/1x 2 日目から 50~75mg/1x スルファジアジン 4~6g/4x 葉酸 10~20mg/1~2x を6 週継続し その後維持療法としてピリメタミン25~50mg/1x スルファジアジン2~4g/4x 葉酸 10~25mg/1x を投与するのが標準的である サルファ剤に対するアレルギーなどで使用できない場合には スルファジアジンをクリンダマイシン 2,400mg/4x に変更してもよい 本症の場合 通常治療への反応は良好であるが 皮疹 骨髄抑制 ( 好中球減少 貧血 血小板減少 ) 嘔気 嘔吐 発熱 肝障害 腎障害などの副作用のために 薬剤の変更や治療の中断を余儀なくされることが多い けいれんの既往のある場合には抗てんかん薬を 脳浮腫が強い場合にはステロイドを併用する 4 予 防 HAART(highlyactiveantiretroviraltherapy) が行われるようになってから 本症も含めた日和見感染症の頻度は激減したが CD4 陽性リンパ球数 100/μ 渥未満および抗 T.gondiIgG 抗 78 トキソプラズマ脳症 (Cerebraltoxoplasmosis)

80 体陽性者は ST 合剤 trimethoprim-sulfamethoxazole(tmp-smx) 倍力価錠 1 錠 (160mg TMP/800mgSMX)/1x 内服にて一次予防を行うことが推奨されている 一次予防投与は HAART を受けている患者で CD4 陽性リンパ球数 200/μ 渥以上を3ヶ月間維持できる場合 安全に中止できる また 二次予防 ( 上述の維持療法 ) については 以前は生涯継続することとされていたが 最近の報告では一次予防と同じ基準で安全に中止可能とされている 血清学的に T.gondi 陰性の免疫不全者の場合 トキソプラズマの暴露を最小限にするため ネコの糞の処理や庭仕事のとき 食肉を扱うときには手袋をする 肉は良く加熱したものを食べるなどの予防策が必要である 1) 参考文献 1) 岸田修三. トキソプラズマ症. I. 炎症性疾患. 原虫感染症. 別冊日本臨牀領域別症候群シリーズ26. 神経感染症 I: ,1999 2) PorterSB,SandeMA.Toxoplasmosisofthecentralnervoussystem intheacquiredimmunodeficiencysyndrome.nengljmed1992;327: ) RobertsTC,StorchGA.MultiplexPCR fordiagnosisofaids-relatedcentralnervous system lymphomaandtoxoplasmosis.jclinmicrobiol1997;35: ) TachikawaN,GotoM,HoshinoY,etal.DetectionofToxoplasmagondi,Epstein-Barrvirus,andJCvirusDNAsinthecerebrospinalfluidinacquiredimmunodeficiencysyndrome patientswithfocalcentralnervoussystem complications.internmed1999;38: ) CiriciloSF,Rosenblum ML.UseofCT andmrimagingtodistinguishintracraniallesionsandtodefinetheneedforbiopsyinaidspatients.jneurosurg1990;73: ) KoralnikIJ.ApproachtoHIV-infectedpatientswithCNSmasslesions.UpToDateon line ) Lorberboym M,WalachF,EstokL,etal.Thalium-201retentioninfocalintracraniallesionsfordiferentialdiagnosisofprimarylymphomaandnon-malignantlesionsinAIDS patients.jnuclmed1998;39: ) HelerHM.ToxoplasmosisinHIV-infectedpatients.UpToDateonline ) BensonCA,KaplanJE,MasurH,PauA,HolmesKK.TreatingOpportunisticInfections amonghiv-infectedadultsandadolescents:recommendationsfrom CDC,theNational InstitutesofHealth,andtheHIV MedicineAssociation/InfectiousDiseasesSociety of America.ClinInfectDis2005;40Suppl3:S )KovacsJA,MasurH.Prophylaxisagainstopportunisticinfectionsinpatientswithhumanimmunodeficiencyvirusinfection.NEnglJMed2000;342: ) MiroJM,LopezJC,PodzamczerD,PenaJM,AlberdiJC,MartinezE,DomingoP,CosinJ, ClaramonteX,ArribasJR,SantinM,RiberaE;GESIDA04/98 StudyGroup.DiscontinuationofprimaryandsecondaryToxoplasmagondiprophylaxisissafeinHIV-infectedpatientsafterimmunologicalrestorationwithhighlyactiveantiretroviraltherapy:resultsof anopen,randomized,multicenterclinicaltrial.clininfectdis2006;43: )MaedaT,etal.AIDS-related cerebraltoxoplasmosiswith hyperintensefocion T1- weightedmrimages:acasereport.jinfect.2006;53:e ( 神経内科田代淳 矢部一郎 佐々木秀直 ) トキソプラズマ脳症 (Cerebraltoxoplasmosis) 79

81 8 HIV 感染者の皮膚症状 HIV 感染者では 様々な日和見感染症 薬疹 悪性腫瘍などの多彩な皮膚症状が高頻度に出現するため HIV 感染者に出現しやすい皮膚病変を理解することはとても大切である 以下に HIV 感染者の皮膚症状を1.HIV 初感染時の皮膚症状 2. 皮膚 粘膜感染症 ( 性感染症を除く ) 3. 性感染症 4. 薬疹 5. 悪性腫瘍 6. その他の皮膚病変に分け概説する 1 HIV 初感染時の皮膚症状 HIV 感染が成立した初期 ( 初感染後 2~4 週 ) に 発熱 咽頭炎 リンパ節腫脹 関節痛 下痢などとともに 紅斑丘疹性の発疹が 全身 左右対称性に約 75% の患者に生じる 口内炎などの粘膜疹を生じることもある これらの皮疹は 他の急性ウイルス感染症と視診上は鑑別困難である しかも 通常 急性症状発症から数週後に抗 HIV 抗体が陽転するため 皮疹出現時には抗 HIV 抗体が陰性であることが多い 診断 : 皮疹出現時には 抗 HIV 抗体が陰性であることが多いため 診断は困難であるが 皮疹軽快後に 抗 HIV 抗体を再度チェックするとよい 治療 : ステロイド剤外用 通常 2-3 週間以内に皮疹は自然消退する 2 皮膚 粘膜感染症 ( 性感染症を除く ) HIV に感染すると 細胞性免疫が低下し 免疫不全が徐々に進行していくため 種々の感染症を生じる (1) 口唇ヘルペス口唇ヘルペスは 主に HSV-1 による感染症で 口唇や口囲に 紅斑や小水疱を形成する 通常 数日の経過で 徐々に水疱は痂皮化していくが HIV 感染者のように細胞免疫能が低下すると 水疱の痂皮化が起きず 深い潰瘍を形成して激痛を伴いやすい 診断 : 多くの場合 既往歴と臨床所見から診断は可能であるが 他のウイルス疾患との鑑別が困難なこともある そのような場合 水疱内容液 潰瘍底ぬぐい液をとり Tzank test を行い 巨細胞や空胞細胞を確認する また HSV-1 および HSV-2 VZV は特異抗原検査法 (FA 法 :SRL で施行 ) による検出も可能である 本法は極めて特異度が高く しかも簡便である この他 血清抗体価も参考にする 遺遺治療 : バルトレックス 1,000mg2X 内服 (5 日間 ) アラセナ A 軟膏外用 3~5 日間で効果を評価し 治癒傾向があれば 完全に治癒するまで継続 治癒傾向がない場合はバ遺ルトレックス 3000mg3X に増量または アシクロビル持続静注 1-2mg/kg/ 時間投与して 5~7 日間治療する さらに再評価して 治癒傾向がない場合は TK( チミジンキナーゼ ) 活性を欠損する遺伝子変異である ACV 耐性の TK 欠損株 (ACV 耐性株の 90% を占める ) を考慮して ホスカルネット (PFA) の使用を考慮する 再発を繰り返遺す症例には バルトレックスの予防投与 mg1-2X 内服 ( 毎日 ) が推奨される (2) 水痘 帯状疱疹水痘 帯状疱疹ウイルスに HIV 感染者が初感染すると 重篤な水痘となる その後 水痘 帯状疱疹ウイルスが再活性化すると帯状疱疹となるが 健常人で発症した場合と比べ 全身皮 80 HIV 感染者の皮膚症状

82 膚への汎発化など 重症化しやすい また 潰瘍化しやすく 疱疹後神経痛を残しやすい 帯状疱疹は HIV 感染症の帯状疱疹は CD4 陽性リンパ球が保たれていても発症するが 300/ 葦以下になると発症しやすくなるとされる 診断 : 臨床所見から診断は容易である 水痘では 全身にかゆみを伴う紅斑 小水疱 痂皮を生じ 新旧混在した皮疹を認める 帯状疱疹は 神経分節に沿って 通常は片側性に 浮腫性紅斑と集簇した小水疱 潰瘍を認め 疼痛を伴う 汎発化した場合 水痘に似る 遺遺治療 : バルトレックス 3,000mg3X を7 日間内服 あるいは ゾビラックス 250mg を1 遺遺日 3 回 7 日間点滴 外用は 水痘ではカチリ 帯状疱疹ではバラマイシン軟膏を用いる 治癒が遷延する場合や重篤化した場合は1 週間を超えても痂皮化するまで治療を続ける 2 回以上の再発などアシクロビルに耐性が疑われる場合は ホスカルネット 40mg/kg1 日 3 回点滴静注または60mg/kg1 日 2 回の使用を考慮する また同様の作用機序でビダラビンやシドフォビルが効果的である場合もある (3) サイトメガロウイルス潰瘍頻度は少ないが 難治性肛門周囲潰瘍のときに疑う 診断 : 皮膚生検にて 封入体と巨細胞を確認し 抗サイトメガロウイルス抗体での染色性を確認する また 採血で C7HRP 陽性を確認する 遺治療 : デノシン点滴 (4) 伝染性軟属腫伝染性軟属腫は ポックスウイルスによる感染症で 皮疹は半米粒大までの淡褐色ないし常色の丘疹で 典型例では中心臍窩を認める 通常は健康な乳幼児の体幹に好発するが HIV 感染者 ( 特に CD4+ 細胞が100 個以下の場合 ) では 年齢を問わず発症し 顔面や陰部など体幹以外にも好発する また 重症化して ときに皮疹が数百個に及ぶこともあり 治療に難渋することが多い 診断 : 通常 視診にて容易に診断でき トラコーマ摂子で圧すると 白色の粥状物が排出されるのが特徴である クリプトコッカス症など他疾患との鑑別が困難な場合には皮膚生検を施行する 治療 : トラコーマ摂子で摘出する 健康な小児では自然治癒を期待して 経過観察することもあるが 細胞性免疫低下を伴う場合 自然治癒はほとんど期待できず 放置することで多発することが予想されるため 積極的に摘出したほうがよい 液体窒素による凍結療法を行うこともある (5) 尋常性疣贅尋常性疣贅は ヒトパピローマウイルス感染によって生じ HIV 感染者では多発しやすく 治療に難渋することが多い 皮疹は 手足に好発する 灰色ないし褐色で 表面が乳頭腫状の丘疹ないし結節を特徴とする 診断 : 視診により 診断は容易である メスで削ると易出血性であることも診断の一助となる 治療 : 液体窒素による凍結療法を行い 病変が厚い部分はメスで削る ヨクイニンエキスの内服を併用することもある (6) 口腔毛状白板症口腔毛様白板症は EB ウイルス関連の粘膜病変で 舌側縁の毛状の白色斑として観察される 通常 無症候性であるが 軽度の疼痛や灼熱感を生じることがある HIV 感染者に特異性 HIV 感染者の皮膚症状 81

83 が高い症状であり また HIV 感染の比較的早期から出現するため 見逃してはならない疾患である 診断 : 真菌検査を行い 口腔内カンジダ症が除外されれば 臨床所見から診断は容易 治療 : 通常 無症候性で 自然消退もあるため 無治療で経過を見ることが多いが 痛みなどの自覚症状が強い場合や整容的に問題となる場合には 液体窒素を用いた凍結療法などを考慮する 海外では アシクロビルなどの抗ヘルペス薬も使用されている (7) 口腔内カンジダ症免疫不全の進行した患者で頻発し 口腔内に白苔を認める また 食道カンジダ症を合併することも多く 口腔内カンジダ症のある HIV 患者が嚥下困難や嚥下痛を訴えた場合 食道カンジダ症の存在が強く疑われる 診断 : 白苔の直接鏡検 (KOH 法 ) でカンジダの胞子や仮性菌糸を証明する 遺遺治療 : フロリードゲル外用 ファンギソンシロップ含嗽 食道カンジダ症を併発している際には 外用ないし含嗽後に嚥下させる (8) 白癬症白癬症は HIV 感染者ではかなり高率に認められ 難治性のことが多い 診断 : 直接鏡検法での菌要素の確認が必須である 菌要素を確認できない場合は 原則として抗真菌剤は用いない 遺治療 : 抗真菌剤外用 爪白癬や角質肥厚型の足白癬では抗真菌剤内服 ( ラミシールないしイ遺トリゾール ) を行う (9) その他の感染症毛嚢炎 せつ 膿痂疹 蜂窩織炎 結核 非定型抗酸菌症などの細菌感染症 真菌では クリプトコッカス症 ヒストプラズマ症 コクシジオイド症などが皮膚に出現することがある 3 性感染症 近年 異性間あるいは同性間の性交渉による HIV 感染者が増加している このような患者で は 他の性感染症も高率に認めるため 代表的な性感染症を理解しておく必要がある (1) 梅毒梅毒は 梅毒トレポネーマの感染により発症し そのほとんどが性感染である 梅毒トレポネーマは性交時に皮膚 粘膜の微小な傷口から進入し まず感染局所に特有の病変をきたし ( 第 1 期梅毒 ) やがて血行性に全身に広がり( 第 2 期梅毒 ) その後 諸臓器を侵すようになる ( 第 3 期梅毒 第 4 期梅毒 ) 診断 : 特徴的な臨床症状と梅毒血清反応検査 (STS TPHA 必要に応じて FTA-ABS をオーダーする ) により診断は比較的容易である 病期ごとの臨床像は以下の通りである 第 1 期梅毒 : 感染後 3 週頃にトレポネーマが進入した局所に初期硬結を作り 速やかに潰瘍化する ( 硬性下疳 ) 臨床像と比して 痛みは少なく 無痛性横痃と呼ばれる所属リンパ節腫脹を併発することが多い 第 2 期梅毒 : 感染後 3ヶ月頃 ( トレポネーマが全身に広がる頃 ) から梅毒性バラ疹 梅毒性丘疹 扁平コンジローマ 梅毒性脱毛 粘膜疹を生じる 第 3 期梅毒 第 4 期梅毒 : 無治療で経過した場合 感染後数年してからゴム腫 心血管梅毒 神経梅毒を発症することがある しかし 抗生物質の投与が広く行われている昨今 このような病期の梅毒を見ることは少ない 82 HIV 感染者の皮膚症状

84 治療 : ペニシリン系抗生剤を通常 4 週間投与するが HIV 感染者の場合 神経梅毒の投与量に準じて 通常の3 倍量とし 8 週間投与するのがよいとする報告もある なお 治療開始後に Jarisch-Herxheimer 反応と呼ばれる一過性の発熱を生じることがある旨 患者に説明しておくとよい ( 急激にトレポネーマが死滅するためと考えられている ) 治療後の経過観察 治癒判定には STSを用いる (2) 疥癬疥癬は ヒゼンダニが皮膚の角質に外寄生感染した結果 生じる 性感染症の一つであるが 現在は 高齢者入所施設内での感染のほうが多くなっている 寄生するヒゼンダニの数が少ない通常型の疥癬と ダニが無数に寄生するノルウェー疥癬の2つがある HIV 患者では 重症で感染力の強いノルウェー疥癬を発症しやすいため 注意が必要である 診断 : そう痒の強いステロイド抵抗性の丘疹に加え 指間に線状皮疹 ( 疥癬トンネル ) を認めた場合 本症を強く疑う ノルウェー疥癬では 通常の疥癬と比して桁違いのヒゼンダニが寄生し 厚い鱗屑や痂皮が全身の広い範囲に付着する 指間などの疥癬トンネルを切除し 直接鏡検法にて疥癬虫や虫卵を証明する 遺遺治療 : イベルメクチン内服 オイラックス軟膏やγ BHC( 白色ワセリン軟膏と混合して1% にしたもの ) の外用を適宜併用する なお 通常の疥癬であれば 隔離は不要であるが 感染力が極めて強いノルウェー疥癬の場合は 個室隔離する必要がある (3) 性器ヘルペス (genitalherpes:gh) 性器ヘルペスは HSV による感染症で 外陰部や肛囲に 紅斑や小水疱を形成し HIV 患者では 口唇ヘルペスの場合と同様 難治性潰瘍を形成しやすい 何度も再発を繰り返すことが多い 現在では HIV 感染症における GH の再発抑制療法が一般的となり その有効性を示すエビデンスも多い 診断 : 口唇ヘルペスと同様 多くの場合 既往歴と臨床所見から診断は可能である 水疱内容液 潰瘍底ぬぐい液をとり Tzanktest を行い 巨細胞や空胞細胞を確認し 血清抗体価を参考にする 遺遺治療 : バルトレックス錠 1,000mg2X 内服 (5 日間 ) アラセナ A 軟膏外用 3~5 日間で効果を評価し 治癒傾向があれば 完全に治癒するまで継続 治癒傾向がない場合はバルトレックス3000mg3Xに増量または アシクロビル持続静注 1-2mg/kg/ 時間投与して 5~7 日間治療する さらに再評価して 治癒傾向がない場合は TK( チミジンキナーゼ ) 活性を欠損する遺伝子変異である ACV 耐性の TK 欠損株 (ACV 耐性株の90% を占める ) を考慮して ホスカルネット (PFA) の使用を考慮する 再遺発を繰り返す症例には バルトレックスの予防投与 mg1-2X 内服 ( 毎日 ) が推奨される (4) 尖圭コンジローマ尖圭コンジローマは 主に HPV-6/11 感染により発症する 外陰部の疣贅状病変を特徴とする性感染症である 診断 : 臨床症状から診断は容易であるが 診断に迷う場合は皮膚生検を施行し 免疫酵素抗体法で HPV 陽性を確認する 治療 : 液体窒素を用いた凍結療法を行う 2007 年 12 月よりわが国でも保険適応となった遺 5% イミキモドクリーム ( ベセルナクリーム ) は HIV 感染症があっても有効であったとの報告がある HIV 感染者の皮膚症状 83

85 (5) ケジラミ症ケジラミ症は ケジラミが陰毛や肛囲の毛に寄生して生じる性感染症の一つである 診断 : ケジラミの虫体 虫卵を検鏡で確認する 遺遺治療 : スミスリンパウダー あるいは スミスリンシャンプーを薬局で購入してもらい 数日おきに塗布する ( スミスリンは虫卵には効果がないため 孵化する頃に再度塗布する ) 剃毛は必ずしも必要ではない (6) 軟性下疳軟性下疳は ヘモフィリスによる性感染症の一つで 外陰部に疼痛の強い潰瘍を生じ 有痛性リンパ節腫脹 ( 有痛性横痃 ) を伴う 硬性下疳と違い 硬結を触れない 診断 : 上記臨床症状に加え 培養でヘモフィリスを同定すれば 診断は確実であるが 培養で検出されないことも多く 確定診断に苦慮することがある 治療 :CDCのガイドラインでは アジスロマイシン 1g 経口単回 セフトリアキソン 250mg 筋注単回 シプロフロキサシン1g 分 2 経口 7 日間 エリスロマイシン 2g 分 4 経口 7 日間などが推奨されている (7) 淋病淋病は 淋菌感染により発症し 尿道炎 女性では子宮頚管炎 子宮内膜炎などを発症し 不妊の原因にもなる 通常 感染機会から数日後に急性尿道炎を発症し 膿の排泄 排尿時痛などを認める 診断 : 問診 臨床症状 尿沈渣中の白血球の証明 グラム染色 ( 淋菌はグラム陰性双球菌 ) などにより確定診断される 治療 : キノロン耐性淋菌が増えており セフェム系が推奨されている (8) 非淋菌性尿道炎非淋菌性尿道炎は クラミジア感染によるものがほとんどであり 淋菌性尿道炎と比べると潜伏期間が1-3 週と長く 排尿痛も軽いことが多い 診断 : 問診 病歴 尿沈渣所見 ( 白血球は認めるものの グラム陰性双球菌 ( 淋菌 ) は認めない ) などから確定診断する 治療 : テトラサイクリン マクロライド キノロンを用いる 4 薬疹 HIV 感染者は免疫能の異常のため 種々の薬剤による薬疹を生じやすい なかでも最も多いのはカリニ肺炎の治療に用いられる ST 合剤 ( バクタなど ) で ほぼ半数に中毒疹を起こす 多くは紅斑丘疹型薬疹であるが 重症型の多形紅斑型薬疹や中毒性表皮壊死症 (TEN) の報告もある また 抗 HIV 薬に特徴的な副作用を認めることがあり 例えば プロテアーゼ阻害薬によるリポジストロフィー ジドプシンによる爪甲の色素沈着などが挙げられる 治療 : 被疑薬の中止とステロイド剤外用 重症例では ステロイド内服を併用 5 悪性腫瘍 (1) カポジ肉腫全身のあらゆる部位に発生し 多中心性に発生するが 初発は下肢に多く認められる 初めは 数 mm 程度の紫紅色から黒褐色の斑が生じ 次第に隆起 増大して腫瘤を形成する 皮膚 84 HIV 感染者の皮膚症状

86 以外にも消化管 リンパ節 肺にも発生する 発症には HHV-8 が関与する 診断 : 皮膚生検により確定診断する 治療 : 症状が軽度である場合 抗 HIV 療法で経過を見る 症状が強い場合や肺病変などの全身病変を認める場合には 放射線療法や化学療法を考慮する (2) 非 Hodgkin リンパ腫非 Hodgkin リンパ腫のうち B 細胞由来のことが多く 節外浸潤を高率に認め 中枢浸潤も多いとされる 治療 : 化学療法 放射線療法を行うが AIDS による免疫力低下を伴っており 治療に苦慮することが多い 6 その他の皮膚病変 (1) 脂漏性皮膚炎 乾癬 HIV 感染者では 脂漏性皮膚炎や乾癬が重症化しやすく 治療に抵抗することが多い 治療 : ステロイド外用 乾癬ではビタミンD3 製剤外用が有効 成書には 紫外線療法は in vitro の実験で HIV 複製を促すことが確認されているため 慎重に考慮するよう記載がある (2) 好酸球性毛包炎好酸球性毛包炎は 従来比較的稀であったが HIV 患者に多く見られることが報告されている 通常の好酸球性毛包炎 (eosinophilicpustularfoliculitis:epf) とは臨床像が異なるため HIV-associatedeosinophilicfoliculitis:HIV-AEF) と呼ばれる 個疹は 直径数 mm 大のかゆみの強い毛孔一致性丘疹で 体幹 上腕 顔面 頚部に多発 皮疹の融合傾向は認めない 診断 : 皮膚生検で 毛包への好酸球の浸潤を証明する 治療 : インドメタシン内服 外用 ステロイド外用など (3) その他 HIV 患者では そう痒性丘疹 光線過敏性皮膚炎 晩発性皮膚ポルフィリン症 環状肉芽腫 毛孔性紅色粃糠疹 アフタ性口内炎 血管炎 持久性隆起性紅斑 血小板減少性紫斑病 脱毛症 色素沈着など 多彩な皮膚病変の報告があるが HIV 感染との関連の詳細は不明である ( 皮膚科山根尚子 ) HIV 感染者の皮膚症状 85

87 9 妊婦 新生児の HIV 1 HIV 感染と妊娠 国連合同エイズ計画による推計では 2007 年現在での世界の HIV 陽性者総数は約 3,300 万人である そのうち15 歳以下の子どもの数は2001 年の160( ) 万人から 2007 年の 200( ) 万人と増加しており その約 90% がアフリカ地域からの報告である 2003 年以降 治療の拡大と母子感染予防サービスにより エイズで死亡する子どもの数は減少している また 2007 年に新たに HIV に感染した15 歳以下の子どもの数は推定 37(33-41) 万人であり 母子感染予防サービスが拡大されたため 新たに HIV に感染する子どもの数は2002 年以降減少している エイズ動向委員会報告 (htp://api-net.jfap.or.jp/) によると 日本における 2009 年 3 月 29 日時点での HIV 感染者 1,0788 人のうち母子感染による感染者は32 人 AIDS 患者 5,024 人のうち母子感染は17 人であり ともに1% 以下である これは 母子感染防止対策の成果と考えられる 一方で 我が国では若年層の HIV 感染者数が増加傾向にあり 今後 HIV 感染妊婦数が増加することが危惧されている 平成 20 年度厚生労働省 HIV 母子感染全国調査研究報告書 によると 産婦人科病院における妊婦の HIV 抗体検査実施率は 平成 18 年度の95.3% から98.5% に上昇している 産婦人科と小児科施設に対する調査結果の統合から 累計 595 例の HIV 感染妊娠が報告されている HIV 感染妊婦の報告数は 平成 18 年度の54 例が最高であり 平成 19 年度は32 例に減少している また 日本国籍症例の割合が増加しており 平成 11 年以降は報告される HIV 感染妊婦のほぼ半数が日本国籍である HIV 感染妊婦の大半に選択的帝王切開分娩が行われているが 年に1~3 例が緊急帝王切開あるいは経腟分娩となっている 選択的帝王切開の母子感染率は0.5% であった HIV 感染と妊娠の間には 医学的 社会的に特有の問題が存在する 妊娠を契機に HIV 感染が判明する機会が多い事 妊娠が母体の病勢に影響を与える可能性があること 抗 HIV 療法が妊娠経過に影響する可能性があること 垂直感染の防止が必要であること 母体 新生児への抗 HIV 療法が胎児 新生児の健康に影響を与える可能性があること 児のフォローアップの必要性 児への生ワクチン接種の可否などがその例である また 妊娠 分娩管理においては 医療者が妊産婦の体液に接触する機会が多いため 感染制御という観点からも注意が必要である 2 HIV 感染妊婦に対する対応 (1)HIV 感染妊婦の診断日本産科婦人科学会は HIV 感染妊婦の早期治療開始と 母子感染防止 配偶者への感染防止 医療従事者への感染防止を目的に 妊婦健診時の HIV 抗体検査を強く推奨している 説明と同意の上で 全ての妊婦に対する HIV 抗体スクリーニングが行われるべきである スクリーニング検査結果が陽性であった場合は ウエスタンブロット法および RT-PCR 法による確認検査を行う また 感染から抗体出現までにタイムラグがあることから ハイリスク妊婦においては最初の結果が陰性であっても再検査を必要とすることがある 86 妊婦 新生児の HIV

88 (2)HIV 感染妊婦の自己決定支援 HIV 感染妊婦が HIV 感染症の病態や治療の概要を理解し 今後の療養の見通しのもとに妊娠を継続するか否かを自己決定できるよう支援することが必要である HIV 感染妊婦に対する自己決定支援のポイント HIV 母子感染予防対策マニュアル第 5 版 ( (1) 告知と情報提供 (2) パートナーへの対応 (3) 提供した情報に対する理解の確認と個別的な問題に対する助言 (4) 支援体制 ( パートナー 家族など ) の調整 (3) 診療チームとケース カンファランス HIV 感染妊婦管理のケースが発生した場合には HIV 担当看護師 産科担当医師 助産師 新生児担当医師 内科担当医師 フォローアップ担当小児科医師 手術部担当者 輸血部担当者からなる診療チームを編成し ケース カンファランスを開催する 必要に応じて 薬剤部 関連診療科にもカンファランスへの参加を依頼する カンファランスでの検討結果を議事録としてまとめ その内容を参加者で共有する (4) 外来での対応 1) 担当産科医師の役割 妊婦に HIV 陽性が判明した際は HIV 担当看護師 新生児担当医師 病棟師長に連絡する 妊娠 23 週までに HIV 感染妊婦の帝王切開の予定があることを手術部看護師長に連絡する 手術の日程が決まったら 再度連絡する 内科担当医師 HIV 担当看護師と連携をとりながら 妊娠中に必要な検査と治療 選択的帝王切開 断乳などについて患者 家族に十分に説明し 承諾を得る 妊娠中の HIV に関する検査 (HIV-RNA 定量 CD4) は 月に1 回担当内科で行う 2) 助産師の役割 当該妊婦の状況を産科病棟に詳細に報告する HIV 担当看護師と連携をとる 当該妊婦に破水 陣痛発来の判断について指導する 当該妊婦に入院後の生活と帝王切開について説明する 3) 外来での注意事項 血液 体液は スタンダードプリコーションに基づいて扱う 内診時には サージカルグローブあるいはプラスチックグローブを使用する 経腟エコープローブにも サージカルグローブあるいはプラスチックグローブを使用し 使用後にはプローブをアルコール綿で消毒する プライバシーに十分配慮しカルテを管理する (5) 病棟での対応 1) 産科入院時の対応 妊婦 新生児の HIV 87

89 産科担当医師は 内科担当医師に当該妊婦が入院したことを連絡する 原則として妊娠 37 週の陣痛発来前 破水前の選択的帝王切開とする 予定帝王切開時の入院は 手術の5~7 日程度前の入院とする 原則として個室管理とする 患者本人に プライバシーの確保 血液 体液の処理を配慮しての個室管理であること 個室使用料金が発生することを説明し承諾を得る 切迫早産などの分娩前の管理入院時は HIV 感染を理由として個室とする必要はない 予定入院前に破水 陣痛発来等があれば AZT 点滴静注後に帝王切開とする 産科担当医師と新生児担当医師から母体と新生児の検査 治療などについて説明し 同意を得る 入院後の HIV に関する検査 (HIV-RNA 定量 CD4) は産科病棟では行わず 担当外来受診時に行う 採血 静脈路確保は 通常通り助産師が行う 2) 個室の準備 個室内に感染性廃棄物容器 プラスチックグローブ フェイスシールド付きマスク 手術用手袋ロング 滅菌ガウン (G4) アルコール綿を準備する ベッドの白シーツと横シーツの間に防水シートを1 枚敷く 清掃業者による室内の清掃は通常通り行う 3) 病棟での注意事項 厳重な装備で処置する可能性があることを説明し 理解を得る 破棄できる体液付着物は すべて感染性廃棄物容器に破棄してもらう 血液 乳汁が身の回りに付着した場合はアルコール綿で拭いて手洗いするように指導する 個人の洗濯物は ビニール袋に入れて自宅で洗濯していただく 家族の協力が得られない場合は 個室内の洗面台を使用してもらい 使用後の洗面台はアルコール綿で拭く 家族の面会は通常通りとする 採血時は プラスチックグローブを使用する 陣発前 破水前で血液や体液による汚染がない場合には 胎児心拍モニター装置装着 検温は通常通り行う 針刺し事故の際の対応法について予め確認しておく 4) 診察時の注意事項 当該妊婦が医療者の外見から不快 不安にならないよう十分に声かけをする 診察時はアルファマット ( 大 ) を敷く 診察時は 状況に応じフェイスシールド付マスクを装着しガウンを着用 サージカルグローブあるいはプラスチックグローブを二重に装着する 体液汚染物は全て感染性廃棄物容器に入れる 診察時はいつでも破水の可能性があることに留意する 破水時の診察には手術用手袋ロングを使用する 88 妊婦 新生児の HIV

90 診察の際に用意する物品 アルファマット ( 大 )( 大衛 75cm 75cm) 手術用手袋ロングサージカルグローブ / プラスチックグローブフェイスシールド付マスク滅菌ガウン (G4) (6) 妊産婦に対する抗 HIV 療法 1) 妊婦に対する抗 HIV 療法の原則 HIV 母子感染防止の骨子は 妊婦に対する AZT を含む抗 HIV 療法 選択的帝王切開 児に対する AZT の予防投与および母乳栄養の禁止である 妊婦に対しては積極的に HAART を行い 分娩時には AZT の点滴を行う PediatricAIDSClinicalTrialGroup(PACTG)076 の原則 妊娠 14~34 週に AZT600mg 分 2を開始し 全妊娠期間を通じて継続する 分娩開始とともに静注用の AZT 2mg/kg を1 時間で静脈内投与し 引き続き出産まで 1mg/kg/ 時を持続的に静脈内投与する 出産後 8~12 時間より 新生児に対して AZT シロップ2mg/kg を6 時間毎に投与し 生後 6 週間まで続ける 経口投与できない場合は 1.5mg/kg を 6 時間毎に静脈内投与する 2005 年 11 月に発表された CDCのガイドラインの概要 (PublicHealthServiceTaskForceRecommendationsforUseofAntiretroviralDrugsin PregnantHIV-1-InfectedWomenforMaternalHealthandInterventionstoReducePerinatalHIV-1TransmissionintheUnitedStatesNovember17,2005) 抗 HIV 薬を選択 開始する際には 患者の CD4 値 HIV ウイルス量 今までの治療歴の有無 妊娠週数を考慮する 妊婦であっても非妊婦の治療適応基準(CD4 値 <350/μ 渥 ウイルス量 10,000 コピー以上 ) と同様に治療を行う 治療薬には AZT を含んだ2 剤の核酸系逆転写酵素阻害薬とプロテアーゼ阻害薬 または非核酸系逆転写酵素阻害薬を組み合わせた HAART を選択する 催奇形性のある Efavirenz( ストックリン ) や乳酸アシドーシスをおこしやすい d4t( ゼリット )+ ddi( ヴァイデックス EC) といった組み合わせは避ける 治療基準を満たさない場合でもウイルス量が 1,000 コピー以上の妊婦に対しては垂直感染予防として HAART を選択する 1,000 コピー未満では 状況に応じて HAART 投与を検討する 治療薬の選択にあたっては患者と十分に相談のうえ決定する 2) 抗 HIV 薬を内服していない妊婦で HIV 感染が判明した場合妊娠 14 週までは抗 HIV 薬を内服せずに待ち それ以降に AZT を用いた抗 HIV 薬を開始する ウイルス量が 1,000 コピー以上の症例については AZT を含んだ HAART を選択する 妊婦 新生児の HIV 89

91 出産直前まで抗ウイルス薬を内服し 出産時には AZT の点滴を行ない 児には AZT のシロップを内服させる 3) 抗 HIV 薬を内服している女性で妊娠が判明した場合妊娠 14 週以降に判明した場合は抗 HIV 薬を続行する 可能であれば AZT を含んだ治療薬に変更する 妊娠 14 週以前に判明した場合は 抗 HIV 薬を継続するか 妊娠 14 週まで一時休薬するかを それぞれのリスクを十分に説明のうえ話合い 決定する いずれの場合も 出産直前まで抗 HIV 薬を内服し 出産時には AZT の点滴を行い 児には AZT シロップを内服させる (7) 選択的帝王切開 1) 原則として37 週の陣痛発来前の選択的帝王切開とするが 帝王切開時期は妊娠経過により個別に検討する 2) 術前の処置 浣腸は医師の指示のもとに プラスチックグローブとフェイスシールド付きマスクを装着して行う 手術前の AZT 点滴静注を 医師の指示のもとに行う ストレッチャーには防水シートを 2 枚敷き その上から横シーツを敷く 3) 手術室に持参する物品 ドップラー胎児心音計 診療録 分娩セット アトニン 0(5 単位 )2 アンプル 胎盤を持ち帰る時に使用するアルファマット ( 大 ) 0.1% 次亜塩素酸水溶液 (10 倍希釈ピュリファンP) で湿らせたガーゼをビニール袋にいれて数枚持参する 足背を覆うタイプの靴 手術室に準備を依頼する物品があれば 手術日決定時に産科病棟師長が手術部に連絡する 4) 手術室での対応 フェイスシールド付マスク ( ゴーグルと通常のマスクの併用でも可 ) を装着 足背を覆う形の靴をはく( 術者は膝までのシューズカバーをかける ) 手術室のインファントウォーマーに防水シートを敷く インファントウォーマーのコントロールパネルをビニールで覆う 麻酔後仰臥位に体位固定されたら ドップラーで児心音を聴取する ビニールエプロンを着用後 手洗いする 滅菌ガウン( マスク付きG3 かマスクなしG4) を着用する 手袋は 通常のサージカルグローブを重ねて2 組装着する 分娩セットを開き白い膿盆( 胎盤受けに使用 ) と防水シート ( 大 )( 児受け布として使用 ) を取る 白い膿盆は胎盤受けに使用するので器械出しの看護師に渡す 児受け布を持ち執刀医の後方に立ち 児が娩出されたら出生時間の確認を行う 新生児担当医師が児の口鼻腔吸引を行い 児の体に付着している母体血を拭き取る 90 妊婦 新生児の HIV

92 手術室では臍帯の断端は消毒しない 可能であれば母児の面会を行う 面会終了後 児は新生児担当医師が新生児室へ搬送する 搬送用保育器には 防水シートを敷く 胎盤を二重のビニールに入れ アルファマット ( 大 ) に包んで持ち帰る インファントウォーマーを10 倍希釈ピュリファンP で清拭する 学生 研修医は入室させない プロテアーゼ阻害剤との併用禁忌であるため 子宮収縮剤であるマレイン酸メチルエルゴメトリン ( パルタンMおよびメテルギン ) の使用は禁忌 オキシトシン ( アトニン ) ジノプロスト ( プロスタルモンF) は使用可 胎盤などを病理検査に提出する場合には 伝票と検体容器に HIV(+) と明示する 5) 手術中の注意 羊水 血液の術野外への流出を少なくするため イソジンが乾燥してから覆い布をかけ 完全に密着するようにする メス 持針器 注射器に対してはノータッチテクニックを使用する 縫合は すべてエチガード針 ( 鈍的縫合針 ) を使用 (0 号 48mm 45cm 0 号 36mm 45cm 3-0 号 30mm 75cm) 縫合針は ホルダーにもどさず 針固定用のスポンジに固定する 退室時のベッド移動まで ガウンを着用する( 手袋は一枚で可 ) (8) 経腟分娩の際の対応 1) 分娩様式は 原則として36~37 週での帝王切開であるが 帝王切開の不適応例や飛び込み分娩のためやむをえず経腟分娩を行うことがある 2) 入院時 ~ 分娩第 1 期の対応 LDR で分娩に対応する 医師の指示のもとに AZT 点滴静注を行う トレイにアルコール綿 駆血帯 肘枕 テープ類 内診に必要なイソジン綿球 綿棒 防水シート 針箱などの物品を準備する ベッドのマットレスパッドを防水シートで覆い その上にシーツをつける 内診時は 破水を念頭において フェイスシールドマスクを着用する 手術用手袋ロングの上にサージカルブローブを重ねて装着する 体液汚染物は全て感染性廃棄物容器に入れる 材料部管理の機材 器具は搬送用コンテナにそのまま入れる 病棟管理の機材 器具は ビニール袋に入れて材料部に提出する 滅菌のため材料部に提出する物品の一次消毒は行わない 3) 分娩第 2 期 ~ 第 3 期の対応 分娩介助は原則として産科医師が行う 原則的に人工破膜は行わない フェイスシールドマスク 滅菌ガウン(G4) ビニールエプロン 手術用手袋ロング サージカルグローブ 長靴を装着する インファントウォーマーの台の部分は 防水シートで完全に覆う コントロールパネルをビニールで覆う 妊婦 新生児の HIV 91

93 児の状態が落ち着いたらバスタオルに包み 新生児室に搬送し第一沐浴を行う 血液の付着したタオルは HIV(+) と明記して洗濯へ提出する 胎盤計測に使用した定規は 流水で血液を流した後 アルコールで清拭する 通常通りの後始末を行った後 清掃業者に清掃を依頼する 胎盤などを病理検査に提出する場合には 伝票と検体容器に HIV(+) と明示する (9) 産褥期の対応 1) 産褥乳汁分泌抑制 できるだけ 冷罨法で対処する 冷罨法のみで対処が困難な場合には 産科担当医は内科担当医とともに カベルゴリン ( カバサール ) またはブロモクリプチン ( パーロデル ) の処方について検討する これらの薬剤をプロテアーゼ阻害薬と併用すると CYP3A に対し競合的に作用するため代謝が阻害され血液中濃度が上昇する可能性がある このため 消化器症状 ( 嘔気 悪心 嘔吐 便秘 ) 精神 神経症状( 頭痛 めまい ) などの副作用には十分な注意が必要である 2) 抗ウイルス薬の変更産後 担当内科を受診し 産後 1 週間を目処に妊娠前の抗 HIV 療法に復することを検討する 3) 産褥期における注意事項 プロテアーゼ阻害剤との併用禁忌であるため 子宮収縮剤であるマレイン酸メチルエルゴメトリン ( パルタンMおよびメテルギン ) の使用は禁忌 オキシトシン ( アトニン ) ジノプロスト ( プロスタルモンF) は使用可 体液汚染以外の対応( 検温 保清 その他の日常生活 ) は通常通りとし 体液汚染物は全て感染性廃棄物容器に入れる 寝衣 寝具類はビニールに入れて HIV(+) と明記して洗濯へ提出する ウロセントは使用しない 個室内で蓄尿し バッグ内の尿は個室内のトイレに破棄する 悪露排泄中のシャワー使用後は 湯で床面を十分に流してもらう 悪露交換 ガーゼ交換 内診 抜鈎は通常通り処置室で行う 実施の際はディスポのプラスチックグローブあるいはサージカルグローブを使用する 悪露交換の際はビニールエプロンを着用する 血液の飛散が予想されるときはフェイスシールド付マスク ガウンを着用する 静脈路は ヘパリンロックをするなどにより抜き刺しの回数を少なくする 乳房の冷罨法に使用するアイスノンは ビニール袋に入れて使用し その袋は使用後感染性廃棄物として処理する アイスノンはアルコール拭きして冷凍庫に戻す 乳汁が出てきた場合 衣服につかないよう母乳パッドをあてる 3 HIV 感染妊婦より出生した新生児の管理 (1) 児への AZT 投与 1) 生後 8~12 時間までに AZT シロップの経口投与 (2mg/kg を6 時間毎 ) を開始し 生後 6 週まで継続する 92 妊婦 新生児の HIV

94 2) 児が内服困難な場合には1.5mg/kg の AZT を適量の5% ブドウ糖液に希釈し 30 分以上かけて6 時間毎に点滴静注する 3) 妊娠 35 週未満の早産児に対しては 初めの 2 週間は AZT1.5mg/kg の経静脈投与 ( または2mg/kg の経口投与 ) を12 時間毎に行う 4) 妊娠 30 週以上の児では生後 2 週以降 妊娠 30 週未満の児では生後 4 週以降 AZT 1.5mg/kg の経静脈投与 ( または2mg/kg の経口投与 ) を8 時間毎に行う 5)AZT の投与は副作用がない限り6 週間継続する 副作用としての貧血が進行して輸血の必要性が考慮される場合は AZT 投与の中止を検討する (2) 出生時の対応 1) 分娩に立ち会う新生児担当医師は滅菌ガウンを着用し フェイスシールドマスク シューズカバー サージカルグローブ (2 重 ) を使用する 2) 新生児の気道 胃内容吸引は血液を除去する程度で可とし 吸引による粘膜損傷を起こさないよう注意して行う 3) すばやく全身の血液をふき取り 温蒸留水で清拭 ( 洗浄 ) 温オリーブオイルで胎脂の除去を行う 生理食塩水で眼 耳の洗浄を行う 4) 胃内容が血性の場合は温生食による胃内洗浄を行う 5) 胎盤に付着した臍帯の表面をガーゼで拭い 臍帯血を採取する 6) 臍帯の断端は清拭後に消毒用アルコールで消毒する (3) 新生児室での管理 1) 入室時の処置 児の入室前に予想される身体状況に合わせて保育器 感染性廃棄物容器 テープ類等の個別の物品を用意しておく ビニール袋をかけた体重計で体重測定を行う その他の計測はビニール袋で覆ったインファントウォーマー上または保育器内でメジャーを用いて行い 使用後のメジャーはアルコール綿で消毒する エコリシン点眼を行う 児を搬送した保育器は0.1% 次亜塩素酸水溶液 (10 倍希釈ピュリファンP) を用いて清拭する 2) 新生児室での注意事項 全例 感染症あり の扱いで対応する 臍処置 針刺入 抜去 その他血液汚染の可能性のある処置および胃管挿入の際は 全てプラスチックグローブを使用する 洗濯物は HIV(+) と明記して提出する 破棄できる体液付着物は すべて感染性廃棄物容器に破棄してもらう 使用した哺乳瓶は0.1% 次亜塩素酸水溶液で消毒してから栄養課に返却する 保育器清掃には0.1% 次亜塩素酸水溶液を用いる レントゲン検査は 原則としてポータブル撮影とする 早産児などのため眼底検査を要する場合は 使用後の開眼器と斜視鈎を感染扱いとする 新生児室内で可能な毛細管採血による微量検体検査については通常通り実施する 新生児マススクリーニング用ろ紙検体は 6 時間以上の十分な乾燥後に 札幌市衛生研 妊婦 新生児の HIV 93

95 究所へ郵送する (4) 母児同室時の注意 1) 母の体調が回復し 児が常時監視不要の状態であれば 母児同室は可能 2) 臍部からの出血に注意し 臍消毒について説明する 3) オムツは感染性廃棄物容器に廃棄する 4) 沐浴はその日の最後に実施し 使用後の沐浴槽はヘプタゴンで洗浄後アルコール消毒する (5) 児の検査とフォローアップ 1) 新生児担当医師より今後の児に対する治療 フォローについて説明する 2) 臍帯血 生後 48 時間以内 生後 14 日 生後 1~2ヶ月 生後 3~4ヶ月および生後 18 ヶ月に抗体検査および RT-PCR による HIV-RNA の定量を行う 3) 生後 1ヵ月以降に行った2 回以上の抗原検査 (1 回は生後 4ヵ月以降 ) が陰性であった場合には HIV の感染はほぼ否定できる 生後 18 ヵ月で低ガンマグロブリン血症がなく HIV IgG 抗体陰性で かつ HIV 感染による症候がなくウイルス学的検査も陰性の場合 感染は完全に否定できる 4)HIV-RNA が陽性であった場合は 直ちに新たな検体を用いて HIV-RNA の定量と DNA- PCR を行う 母子感染が成立している場合 生後 48 時間で38% 生後 14 日目で93% の症例が診断可能と報告されている 5) 児に感染が確認された場合は 直ちに小児科担当医師に連絡し 治療開始の要否について検討を開始する 4 AZT の入手と管理 (1)AZT 注射液と AZT シロップは 感染妊婦ごとに厚生労働省エイズ治療薬研究班からの提供を受ける 班員である内科担当医師が妊娠 25 週を目処に必要量を確保し 薬剤部で保管する (2)AZT 注射液は 母体の分娩時と児がシロップ剤を内服できない場合に用いる (3) 母体への AZT 点滴は AZT2 バイアル+5% ブドウ糖液 160ml(2mg/ml) を 手術開始 3 時間前より開始し 2mg/kg/ 時間で1 時間 その後は児娩出まで1mg/kg/ 時間で継続する 例えば 体重 60kg で手術開始 1 時間後に児が娩出されると必要量は300mg と計算される (4)AZT 注射液の請求は 請求オーダーにより行う 検索名称は aztdiv 表示名称は AZT 点滴用 (200mg/20ml) 1V 単位で請求可能 (5) 注射オーダー上は5% ブドウ糖液のみ入力し コメントに AZT2V 混注と入力する (6) シロップ剤は入院 退院時の2 回に必要量をまとめて処方する 例えば 体重 2.5kg の児が 2mg/kg のシロップを1 日 4 回内服すると14 日間で350mg(10mg/mlのシロップ35ml) が必要なので 分注の際の損失を見込んで50ml を処方する シロップ剤の処方は処方オーダーに入力する 検索名称は aztsyr 表示名称は AZT シロップ10mg/ml( 研究班 ) (7) シロップ剤の1 回投与量 投与間隔 投与方法は指示連絡オーダーに入力する ( 周産母子センター水島正人 長和俊 ) 94 妊婦 新生児の HIV

96 10 小児の HIV 感染症 1 小児の抗 HIV 治療において考慮すべき重要項目 小児の感染の大部分は周産期に起きる 妊娠女性が HIV に感染しているか否かを早期に発見することが 母子感染をできる限り予防するためにも 感染小児に対する治療を適切に開始するためにも重要である 周産期感染児の多くは 子宮内や出産時/ 出産後に ZDV(AZV) 等の抗ウイルス薬への暴露を受けている 周産期の感染は免疫系の発達過程において起こるので 免疫 ウイルスマーカーの動きや臨床症状が成人とは異なる部分がある 発育への影響や神経系の異常などに注意を払う必要がある 成長に応じて薬の体内動態( 分布 代謝 排泄 ) に変化が生じるので 薬の用量や毒性を個々に評価する必要がある 投薬の際には 治療薬の剤形が小児に適切かどうかも考慮する必要がある アドヒアランスの維持には保護者も含めて十分な教育が必要となる 小児の精神的成長がアドヒアランスの変動に影響しやすいことにも注意を要する 2 HIV 感染児の臨床経過と症状 小児のHIV 感染はほとんどが周産期に起きるので 妊婦のHIV 感染を発見することが重要である これにより母子感染の予防を行うこと 感染児の早期診断 治療を行うことが可能となる HIV に感染した小児は成人より症状の進行が速く 早期診断 治療は重要である 日本では両親の感染が判明していない場合 児の日和見感染症の遷延に伴い初めて診断される可能性が高い 初期症状としてリンパ節腫脹 肝脾腫 発育不良 慢性下痢 リンパ性間質性肺炎 鵞口瘡の遷延など 特に小児では繰り返す細菌感染 ( 敗血症 重症肺炎 髄膜炎など ) 慢性の耳下腺腫脹 リンパ性間質性肺炎 早発の進行性神経障害が特徴的である これら小児の HIV 感染症は N 群 ( 無症候 ) A 群 ( 軽症 ) B 群 ( 中等症 ) C 群 ( 重症 ) に臨床分類される ( 表 1) また CD4 陽性 Tリンパ球数による免疫学的ステージング ( 表 2) と組み合わせることで 12 段階に細分類される ( 表 3) 表 1 小児 HIV 感染症の臨床分類 (CDC,1994) N 群 ( 無症候 ) A 群 ( 軽症 ) HIV 感染によると考えられる症候がない児または A 群の症状のうち 1 つしかない児 以下の症状のうちの 2 つ以上を示すが B 群または C 群の症状を欠く児 リンパ節腫脹 (2 か所以上で 0.5 cm以上 対称性は 1 か所とみなす ) 肝腫大 脾腫大 皮膚炎 耳下腺炎 反復性または持続性の上気道感染 副鼻腔炎 中耳炎 小児の HIV 感染症 95

97 B 群 ( 中等症 ) C 群 ( 重症 ) A 群または C 群以外の症状を示す児 以下は症状の例示であり これのみに限定されない 30 日以上続く貧血 (<8g/dl) 好中球減少症 (<1000/μ 狩 ) または血小板減少症 (<10 万 /μ 狩 ) 細菌性の髄膜炎 肺炎または敗血症 (1 回 ) 6 か月以上の児で 2 カ月以上続く口腔 咽頭カンジダ症 心筋症 生後 1 か月以前に発症したサイトメガロウイルス感染 反復性または慢性の下痢 肝炎 反復性単純ヘルペスウイルス口内炎 (1 年以内に 2 回以上 ) 生後 1 か月以前に発症した単純ヘルペスウイルス気管支炎 肺炎または食道炎 2 回以上または 2 つの皮膚節以上の帯状疱疹 平滑筋肉腫 リンパ性間質性肺炎 (LIP) または肺のリンパ過形成 (PLH) 腎症 ノカルジア症 1 か月以上続く発熱 生後 1 か月以前に発症したトキソプラズマ症 播種性水痘 AIDS の診断基準に含まれる症状 (LIP を除く ) 表 2 年齢に応じた HIV 感染小児の CD4 陽性 T リンパ球数 ( 全リンパ球に対する比 ) による免疫学的ステージング (CDC,1994) 児の年齢 1 歳未満 /μ 狩 (%) 1-5 歳 /μ 狩 (%) 6-12 歳 /μ 狩 (%) カテゴリー 1( 正常 ) 1500( 25) 1000( 25) 500( 25) カテゴリー 2( 中等度低下 ) (15-24) (15-24) (15-24) カテゴリー 3( 高度低下 ) <750(<15) <500(<15) <200(<15) 表 3 小児 HIV 感染症の分類 臨床分類 N( 無症候 ) A( 軽症 ) B( 中等症 ) C( 重症 ) 免疫学的分類 カテゴリー 1( 正常 ) カテゴリー 2( 中等度低下 ) カテゴリー 3( 高度低下 ) N1 N2 N3 A1 A2 A3 B1 B2 B3 C1 C2 C3 3 小児における HIV 感染症の診断 確定診断に必要な検査は生後 18 か月以上と生後 18 か月未満で異なる 生後 18 か月以上の児では成人同様にまずPA 法 ELISA 法など高感度のスクリーニング検査により抗 HIV 抗体の検査を行う 生後 18 か月未満の児では母親からの移行抗体が残存している可能性があるため ウイルス学的検査 (RT-PCR 法による HIVRNA の検出 ) を行う 96 小児の HIV 感染症

98 HIV に感染した母から生まれた新生児は 1 生後 48 時間以内 2 生後 14 日 ~21 日 3 生後 1 ~2か月 4 生後 4~6か月の4ポイントでウイルス学的検査を行うことが推奨される 母体血による汚染がありうるので 臍帯血を用いて検査を行ってはならない 新生児のウイルス学的検査の中では サブタイプ Bを検出する DNAPCR のデータが確立されており 生後 48 時間以内に約 40% の症例で DNA PCR が陽性となり 1 週目の検出率は同レベルにとどまるものの 2 週目になると検出率が上昇し 生後 14 日目には90% 以上の感染児が診断可能となる このため 生後 48 時間で陰性の場合 生後 14~21 日目に再検査を行うことが勧められる RT-PCR による検査も DNA PCR 検査に近い感度があることが示されているので RT-PCR 検査を行っても良い ウイルス学的検査で陽性と判定された場合は 速やかに 2 度目の検査を行い確認することが必要である 一方 生後 1か月以降と生後 4か月以降の2ポイントを含む 2 回以上のウイルス学的検査で陰性であれば HIV 感染はかなり否定的である ただし 母乳栄養を行っていないことが前提である 血清学的検査は 母親からの移行抗体があるため感染スクリーニングには使えないが 生後 6 か月以降で1か月以上間隔をおいた2 回以上の HIVIgG 抗体検査が陰性であり 臨床的にもウイルス学的にも感染を示唆する所見がなければ HIV 感染はほぼ否定できる 抗体陰性が確認できない場合は 母親からの移行抗体が消失する生後 12 か月以降に検査を行うが 生後 12 か月でも陽性と出る場合は さらに生後 15~18 か月で検査を行う 生後 18 か月以降の抗 HIV 抗体陽性は HIV 感染を示唆する 4 小児における HIV 感染症のモニタリング HIV 感染症のモニターとして 免疫状態の指標となるCD4 陽性 Tリンパ球数 (%) およびHI V 感染症の進行速度の指標となる血中ウイルス量 (HIVRNA 量 ) がある 1CD4 陽性 Tリンパ球数小児のCD4 陽性 Tリンパ球数の正常値は年齢によって異なる ( 表 2) 幼少児のCD4 陽性 Tリンパ球数は一般に成人よりも多く 6 歳までに徐々に減少して成人レベルとなる 5 歳未満では絶対数よりも年齢によるばらつきの少ないCD4 陽性 Tリンパ球パーセントを免疫学的マーカーとして用いるほうがよい HIV 感染が確認されたら直ちにCD4 陽性 Tリンパ球数 ( パーセント ) を測定し その後も3~4 か月毎に測定することが勧められる 2HIVRNA 量小児では成人に比べて一般に HIVRNA 量が高い 周産期に感染した場合 通常出生時は低く その後生後 2か月目まで急速に増加し ( 多くは100,000 コピー /ml 以上となる ) 1 歳以後の数年間でゆっくり減少してセットポイントに落ち着く HIVRNA 量が高い児のほうが病期の進行が速い傾向にあるが 12 か月未満では病気進行リスクを示す HIVRNA 量の閾値を決めることは難しい 12 か月以降では100,000 コピー /ml 以上が高リスクと考えられている 5 HIV 感染児の治療の方針 平成 20 年度厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究事業 服薬アドヒアランスの向上 維持に関する研究班 の抗 HIV 治療ガイドラインを引用する なお 性感染が問題となる思春期以降は成人のガイドラインが適応となる 小児の HIV 感染症 97

99 (1) 抗 HIV 療法の開始時期小児においても多剤併用治療は効果的であり ウイルス増殖を抑制し免疫系の破壊を食い止めて 日和見感染や臓器障害のリスクを減少させることができる しかしながら 抗ウイルス薬には短期的あるいは長期的な副作用の問題があり さらに小児に対する投与量や安全性に関する十分なデータがあるとはいえない また 治療に当たってはアドヒアランスの維持が確保できることが絶対条件であり 治療薬に対して耐性のウイルスがひとたび出現すれば 将来の治療法の選択が制限されることも認識しておく必要がある ヨーロッパと米国の8つのコホートと9つの臨床試験によるメタアナリシスによれば 1 歳を越えてからは CD4 パーセントが25% 以上であれば1 年以内の AIDS 発症は 10% 未満にとどまり 死亡率も2% 未満となっているが 1 歳以下の乳児の AIDS 発症 死亡のリスクは CD4 パーセントが 25% 以上あってもかなり高い また 全ての年齢層で CD4 パーセントが15~ 20% 以下となると AIDS 発症のリスクが高まる 1 歳未満の乳児では病気の進行が速く また検査値から病気進行のリスクを明確に予測できないことから 検査値にかかわらず治療が考慮される 1 歳以上の児では年齢層によって治療開始判断の根拠となる検査値が異なってくる 12 か月未満の乳児に対する抗 HIV 治療 病気進行のリスクは1 歳以下の乳児で明らかに高いことが分かっているものの この年代の乳児の病気進行リスクを判断するための信頼性のある検査値がないのが現状である CD4 パーセントが低く HIVRNA 量が高いほど進行が速い傾向はあるものの 進行群と非進行群のあいだにはかなりの重なりがみられることから これらの検査値から一概にリスクを判断することはできない 全体に AIDS 発症や死亡のリスクが高いことを考慮すれば 1 歳未満の小児に対しては 臨床症状や免疫学的ステージング HIVRNA 量にかかわらず 診断がなされたら直ちに抗 HIV 治療を開始すべきだと考えられる 1 歳未満で治療を開始し リスクの高い乳児期を乗り切ったあとに 戦略的な治療中断が可能かどうかに関しては 現時点ではデータがない 12 か月以上の小児に対する抗 HIV 治療 1 歳を越えると AIDS の進行は1 歳以下の乳児よりも遅くなってくるので 治療を遅らせるというオプションが考慮される 臨床症状を伴う場合は 免疫学的 ウイルス学的パラメーターの如何にかかわらず治療を行うのが一般的であるが 小児でどの程度の症状が出現したら治療が必要かの明確な判断材料はない 現在の米国のガイドラインでは AIDS の症状を有する ( 臨床分類 C 群 ) か 中等症の HIV 関連症状を有する ( 臨床分類 B 群 ただし LIP と1 回のみの細菌感染症を除く ) 場合には治療を開始するとしている 免疫学的パラメーターに関しては 5 歳未満ではCD4 パーセントが25% 未満 5 歳以上では CD4 数が350/μ 渥未満での治療が推奨されている CD4 パーセントが25% 以上では HIVRNA 量が10 万コピー /mlを超えない限り治療を待機する 小児に対するHIV 療法では 服薬が遵守されているかどうかに細心の注意を払う必要がある 幼少児は服薬にあたって保護者に依存する 処方内容をよく理解させるため 治療を決定するプロセスに保護者と患児をいっしょに参加させ アドヒアランスの重要性をよく説明し 治療開始後も頻回に服薬状況を観察する必要がある 98 小児の HIV 感染症

100 (2) 治療薬の選択と小児用量小児 HIV 感染症においても抗 HIV 薬 3 剤以上の併用療法を行い ウイルスの複製をできるだけ抑え込むのが基本である 現在の初回治療の原則は 成人と同様 バックボーンの NRTI 2 剤に NNRTIもしくは ritonavir でブーストした PI をキードラッグとして組み合わせる3 剤併用療法である ZDV(AZT) の単剤投与は HIV 感染の有無が不明の生後 6 週未満の新生児感染予防に限るべきであり ひとたび感染が確認された場合は直ちに多剤併用治療を開始すべきである 治療を遅らせる場合でも ZDV 単剤投与は中止すべきである 米国では治療開始前の小児が薬剤耐性ウイルスを持っている頻度が上昇してきており 初回治療を開始する前から薬剤耐性検査を行うことが推奨されている 表 4に現在推奨される治療薬の組み合わせ 表 5に各治療薬の小児用量 留意点などをまとめたものを示す 表 4 小児 HIV 感染症の初期治療に推奨される治療薬の組み合わせ 推奨される治療 非核酸系逆転写酵素阻害薬 (NNRTI) を含む組み合わせ推奨処方 :2NRTIs(*)+EFV(3 歳以上 ) 2NRTIs(*)+NVP(3 歳未満 ) 代替処方 :2NRTIs(*)+NVP(3 歳以上 ) プロテアーゼ阻害薬 (PI) を含む組み合わせ推奨処方 :2NRTIs(*)+ LPV/r 代替処方 :2NRTIs(*)+rtv ブーストの ATV(6 歳以上 ) 2NRTIs(*)+rtv ブーストの FPV(6 歳以上 ) 2NRTIs(*)+NFV(2 歳以上 ) 特別な事情でのみ選択される組み合わせ 2NRTIs+FPV(2 歳以上 ) 2NRTIs+rtv ブーストの ATV(13 歳以上かつ39 kg以上の未治療の青少年 ) 2NRTIs+ ブーストなしの SQV( 成人の用量でよい思春期以降 ) ZDV+ 3TC+ ABC (*) 核酸系逆転写酵素阻害薬 (NRTI) の組み合わせ方推奨処方 :ABC+3TCorFTC ddi+ftc ZDV+3TCorFTC (TannerStage4 以降 / 思春期以降では TDF+3TCorFTC) 代替処方 :ABC+ZDV ZDV+ddI 特殊な事情でのみ選択 :d4t+3tcorftc 推奨されないもの 単剤治療 ( 例外として ウイルス検査が陰性のHIV 暴露新生児に 感染予防として6 週間のみの使用は可 ) 2NRTIs のみの治療 ( 初回治療には勧められないが 現在この治療でウイルスを抑えられている場合は継続可 ) TDF+ABC+(3TCorFTC) TDF+ddI+(3TCorFTC) 3TC+FTC ZDV+d4T d4t+ddi( 治療失敗時のサルベージの選択肢としては考慮可 ) ブーストなしの SQV 推奨できるだけのデータがないもの ATV,FPV 以外のrtv ブーストの PI ダブルPI(LPV/r を除く ) NRTI+NNRTI+PI TannerStage1-3 でのTDF 13 歳未満や体重 39 kg未満でのブーストなしの ATV ダルナビル ラルテグラビア エトラビリン マラビロクを含む処方 小児の HIV 感染症 99

101 表 5 小児の抗 HIV 治療薬 核酸系逆転写酵素阻害薬 (NRTI) 薬剤名 ( 商品名 ) ジドブジン ( レトロビル ) AZT,ZDV ジダノシン ( ヴァイデックス ) ddi ラミブジン ( エピビル ) 3TC スタブジン ( ゼリット ) d4t アバカビル ( ザイアジェン ) ABC テノホビル ( ビリアード ) TDF エムトリシタビン ( エムトリバ ) FTC 国内で利用できる小児用剤形 注射薬 * シロップ * 粉末 * 液剤 * 液剤 * 液剤 * ( 米国では液剤あり ) 小児への投与量 未熟児 (30 週以前 ) 1.5mg/kgIV を 12 時間毎 あるいは 2mg/kgPO を 12 時間毎 生後 4 週以降は同量を 8 時間毎 未熟児 (30 週以後 ) 1.5mg/kgIV を 12 時間毎 あるいは 2mg/kgPO を 12 時間毎 生後 2 週以降は同量を 8 時間毎 新生児 ( 生後 6 週まで ) 2mg/kgPO を 6 時間毎 あるいは 1.5mg/kgIV を 6 時間毎 小児 ( 生後 6 週から 18 歳 240mg/ m2 PO を 1 日 2 回あるいは 160mg/ m2 PO を 1 日 3 回 注射薬の場合は 120mg/ m2 IV を 6 時間毎か 20mg/ m2 /h で持続投与 * 体重換算の用量調節も可能 :4-9 kgでは 12 mg / kg 9-30kg では 9mg/kg 30kg 以上は 300mg を 1 日 2 回 PO 新生児 / 乳児 ( 生後 2 週 ~4 か月 ) 50mg/ m2を 12 時間毎 乳児 ( 生後 5 か月 ~8 か月 ) 100mg/ m2を 12 時間毎 小児 (8 か月以降 ) 120mg/ m2を 12 時間毎 *6~18 歳の体重 20kg 以上の児でヴァイデックス EC を飲めるようになったら 体重 20-25kg は 200mg を 1 日 1 回 体重 25-60kg は 250mg を 1 日 1 回 体重 60 kg以上は 400mg を 1 日 1 回 新生児 ( 生後 30 日まで ) 2mg/kg を 1 日 2 回 小児 4mg/kg を 1 日 2 回 ( 体重 14kg 以上の児では 150mg 錠を半割使用などでの投与換算も可能 ) 新生児 ( 生後 13 日目まで ) 0.5mg/kg を 1 日 2 回 小児 (14 日以降 ) 体重 30kg 未満 1mg/kg を 1 日 2 回 小児 (14 日以降 ) 体重 30 kg以上 30mg を 1 日 2 回 生後 3 か月未満の児への投与は現在認められていない 小児 (3 か月以降 ) 8mg/kg を 1 日 2 回 ( 最大 300mg を 1 日 2 回まで ) * 思春期には 300mg を 1 日 2 回 ( 成人用量 ) でよい 18 歳未満での使用は現在認められていない (2 ~ 8 歳で 8mg/kg 8 歳以上で 210mg/ m2を 1 日 1 回での研究が進行中 ) 生後 3 か月未満の児への投与は現在認められていない小児 (3 か月以降 )6mg/kg を 1 日 1 回 ( 最大 240mg まで ) * 体重 33kg 以上では 200mgcap.1 日 1 回 100 小児の HIV 感染症

102 非核酸系逆転写酵素阻害薬 (NNRTI) 薬剤名 ( 商品名 ) ネビラピン ( ビラミューン ) NVP エファビレンツ ( ストックリン ) EFV デラビルジン ( レスクリプター ) DLV 国内で利用できる小児用剤形 シロップ * 小児への投与量 新生児 (14 日未満 ) 母子感染予防のために使用する場合は生後 3 日までに 2mg/kg を 1 回のみ 小児 (15 日以降 ) 150mg/ m2 ( 最大 200mg) を 1 日 1 回で 14 日間 ついで mg/ m2を 1 日 2 回 ( 最大 200mg を 1 日 2 回 )( 最初の 2 週間は半量で開始し 皮疹などの副作用がないことを確認後にフルドーズに上げる ) *150mg/ m2を 12 時間毎が標準的だが 8 歳以下ではより高用量を要するかもしれない ただし 1 日量が 400mg を超えてはならない 新生児 乳児では投与を認められていない 小児 (3 歳以上 ) 10kg 以上 15kg 未満 :200mg を 1 日 1 回 15kg 以上 20kg 未満 :250mg を 1 日 1 回 20kg 以上 25kg 未満 :300mg を 1 日 1 回 25kg 以上 32.5kg 未満 :350mg を 1 日 1 回 32.5kg 以上 40kg 未満 :400mg を 1 日 1 回 40kg 以上 :600mg を 1 日 1 回 小児への投与は認められていない プロテアーゼ阻害薬 (PI) 薬剤名 ( 商品名 ) サキナビル ( インビラーゼ ) SQV リトナビル ( ノービア ) RTV インジナビル ( クリキシバン ) IDV ネルフィナビル ( ビラセプト ) NFV ロピナビル リトナビル配合剤 ( カレトラ ) LPV/r 国内で利用できる小児用剤形 粉末 * 液剤 小児への投与量 RTV ブーストが必要小児での使用は認められていない 16 歳以上では成人用量での使用を考慮可 1 歳未満での使用は認められない 小児 (1 歳以上 ) mg/ m2を 1 日 2 回 ( 嘔吐の副作用を避けるため 250mg/ m2で始めて 5 日間かけて増量 ) 小児での使用は認められていない 2 歳未満では薬剤血中濃度に個人差が大きいため推奨されない 小児 (2 歳から 13 歳 ) 45-55mg/kg を 1 日 2 回 あるいは 25-35mg/kg を 1 日 3 回 ( 薬剤血中濃度の個人差が大きいことに注意 ) 乳児 (14 日以上 6 ヶ月未満 LPV で 300mg/ m2を 1 日 2 回 (EFV,NVP,FPV,NFV との併用はデータがなく勧められない ) 小児 (6 か月以上 18 歳以下 LPV で 230mg/ m2を 1 日 2 回 ( 最大量 400mg を 1 日 2 回 ) *NPV,EFV,FPV,NFV を併用する場合は LPV 換算で 300mg/ m2を 1 日 2 回 ( 最大量 600mg を 1 日 2 回 ) 小児の HIV 感染症 101

103 アタザナビル ( レイアタッツ ) ATV ホスアンプレナビル ( レクシヴァ ) FPV ダルナビル ( プリジスタ ) DRV 米国には液剤あり 米国には 75mg 錠あり * は厚生労働省エイズ治療薬研究班より入手可能 6 歳未満の小児への適切な投与量のデータは不十分 また 3 か月未満では高ビリルビン血症のリスクのため使用すべきではない 小児 (6 歳以上 18 歳以下 ) 下記を 1 日 1 回食事とともに 15kg 以上 25kg 未満 :ATV150mg+RTV80mg 25kg 以上 32kg 未満 :ATV200mg+RTV100mg 32kg 以上 39kg 未満 :ATV250mg+RTV100mg 39kg 以上 :ATV300mg+RTV100mg (13 歳以上かつ 39kg 以上の小児の初期治療では RTV を服用できない場合 ATV400mg も可だが RTV 併用を推奨する ) 新生児 / 乳児では使用を認められていない 小児 (2-5 歳 ) 30mg/kg( 最大 1400mg) を 1 日 2 回 小児 (6-18 歳 ) 初回治療 :30mg/kg( 最大 1400mg) を 1 日 2 回あるいは 18mg/kg ( 最大 700mg)+RTV3mg/kg( 最大 100mg) を 1 日 2 回初回以外 :18mg/kg( 最大 700mg)+RTV3mg/kg( 最大 100mg) を 1 日 2 回 6 歳以上かつ 20kg 以上の児では 75mg 錠を組み合わせて 1 日 2 回での投与が可能 (3) 治療薬の変更治療変更が考慮されるのは 治療の失敗 副作用や服薬困難 他のレジメンの方が現在のレジメンよりも優れているという新しいデータが示された場合などである このうち治療の失敗は ウイルス学的 免疫学的 臨床的の3つの指標から判断され 通常は まずウイルス学的失敗が最初に起き 続いて免疫学的な指標の低下が起きて 最終的に臨床的な失敗へとつながる しかし小児では ウイルス学的失敗の判断が成人以上に難しい これは 小児 ( 特に乳児 ) の HIVRNA 量が成人と比べると高く ウイルス量の減少に時間を要することと 強力な治療を行っていても血漿中 HIVRNA 量を検出感度以下にできないことがしばしばあることによる HIVRNA 量が1,000 から50,000 コピー /mlで検出され続けている治療児でも 高い CD4 パーセントを保てて 臨床的に良い経過をたどっていることもある しかし ウイルスの複製を十分に抑えきれていなければ 耐性変異の獲得リスクは高まると考えられ どの程度のウイルス量が持続して残存することまでを許容するかに関しては 専門家のあいだでもまだ議論がある 表 6に現在の米国のガイドラインが提唱する治療変更の判断指標を示す 治療失敗の判断は慎重に行う必要があり 1 回の検査値だけで判断してはならない 102 小児の HIV 感染症

104 表 6 小児 HIV 感染症において治療変更を考慮する場合 ウイルス量による判断 (1 週間以上の間隔をおいた 2 回以上の検査値を見て判断する ) 免疫学的側面からの判断 (1 週間以上の間隔をおいた 2 回以上の検査値を見て判断する ) 臨床的側面からの判断 治療によるウイルス量の低下が不十分治療開始 8-12 週後においてもウイルス量がベースラインから 1.0log10 以上減少しないか 治療開始後 6 ヶ月してもウイルス量が 400 コピー /ml 未満にまで減少しない場合 ウイルス量の再上昇いったん検出感度以下にまで減少した HIVRNA が たびたび検出されるようになった場合 ときに 1000 コピー /ml 未満の低いウイルス量が検出されることはよくあるので ウイルス学的失敗と考えなくてもよいが 1000 コピー /ml を超えるウイルス量が続けて検出されたときはウイルス学的失敗を疑う ( ただし 5000 コピー /ml 以下の上昇にとどまっている場合 とりわけ治療の選択肢の限られている児では 慎重に経過をみることもある 繰り返し HIVRNA が検出されたり 値が上昇したりするときは 耐性ウイルスの出現やアドヒアランス不良を疑う ) 治療による免疫の改善が不十分高度の免疫低下 (5 歳未満では CD4<15%) がある患児で 最初の 1 年間の治療で CD4 陽性 T リンパ球 % が 5% 以上改善しない場合 (5 歳以上では 絶対数で 50/μ 狩以上の改善が最初の 1 年でみられない場合 ) 免疫低下の持続 5% 以上の CD4 陽性 T リンパ球の減少が持続する場合 (5 歳以上では CD4 陽性 T リンパ球の絶対数が治療前のベースラインよりも低下する場合 ) 進行性の神経発達遅延 栄養が十分なのに成長障害 ( 体重増加速度の持続的低下 ) が認められる場合 AIDS 指標疾患の再燃 持続や 他の重大な感染症が見られる場合 (4) 変更する治療薬の内容治療が失敗した場合には アドヒアランスの不良 体内の治療薬濃度が適切な値に達していない 使用している薬がウイルスを抑えられなくなっている ( 薬剤耐性ウイルスの出現 ) などの原因が考えられ 何が原因なのかをまず検討することが必要である アドヒアランスの不良は 治療がうまくいかない場合に第一に検討すべき事項であり 最も多い原因でもある 小児では薬の体内レベルの個人差が大きいことも原因となりえる 可能ならば 薬剤の血中濃度をモニターすること (TDM) も考慮したい 副作用や服薬不良が原因で治療薬を変更する際には 異なる副作用の薬剤を選ぶ 服薬が良好であるにもかかわらず治療効果が十分でないときは 効果が不十分な原因と今までに使われた薬の種類を検討し 薬剤耐性検査を行ったうえで新たな治療薬を選択することになる 新たな処方も できるかぎり有効な薬剤を併用することで ウイルス量をしっかり抑えるようにすべきである 多剤耐性により治療が困難となり 臨床的な病期も進行している場合には 患児のQOL も考慮して治療内容を話し合うことも必要となる 治療薬を変更する際は 再度保護者も含めて処方内容を遵守についてよく話し合う必要がある また 変更後も頻回に服薬状況を確認する必要がある 小児の HIV 感染症 103

105 (5) ニューモシスチス肺炎予防 HIV 感染乳児だけでなく HIV に感染した母親から生まれた児は生後 4~6 週でニューモシスチス肺炎の予防を開始し HIV 感染が完全に否定されるまで継続する 感染が判明した場合には年齢とCD4 陽性 Tリンパ球の数または % により継続の是非を判断する 1 歳未満 :CD4 陽性 Tリンパ球数 (%) にかかわらず全例 1~5 歳 :CD4 陽性 Tリンパ球数 (%)<500/μ 渥または<15% 6 歳以上 :CD4 陽性 Tリンパ球数 (%)<200/μ 渥または<15% ST 合剤をTMP として150 mg / m2 / 日 ( 最大 320 mg / 日 ) 分 2(3 投 4 休または連日 ) で内服する なお 母子感染予防としてAZT 投与中の児に対しては白血球減少の増悪を考慮し AZ T 中止後のST 合剤投与が推奨される (6) ガンマグロブリン補充療法 1 年に2 回以上の重症細菌感染症を繰り返す症例やガンマグロブリン低値 (IgG<400mg/dl) の症例では 2 次感染予防目的でのガンマグロブリン補充療法が推奨される 400mg/kg を 2 ~4 週間毎に投与する (7)HIV 感染小児の予防接種原則として生ワクチン ( ポリオ BCG) は接種しない 米国ではポリオは不活化ワクチンを接種し 麻疹 風疹 ムンプスは MMR(measles,mumps,rubela) の形で1 歳以降に高度免疫低下 ( 免疫学的ステージング3) の児以外に接種している 水痘ワクチンも1 歳以降に高度免疫低下 ( 免疫学的ステージング 3) の児以外に3か月間をあけて2 回接種している 全ての不活化ワクチン (3 種混合 (DTP) ワクチン インフルエンザワクチン B 型肝炎ワクチン Hib ワクチン等 ) はHIV に感染していない児と同様に通常のスケジュールで接種してよい 麻疹 水痘接触時には 予防接種の有無に関わらず免疫グロブリン投与による発症予防を行う ( 病原微生物学分野 : 遠藤理香 感染制御部 : 石黒信久 ) 104 小児の HIV 感染症

106 11 眼科の HIV 感染症 1 サイトメガロウイルス網膜炎 HIV 感染症 AIDS における日和見感染症の中で サイトメガロウイルス網膜炎が最も合併率が高い (20-40%) と言われている 20~50% が両眼性である 末期 特に CD4 陽性リンパ球数が50/μ 渥以下での発症頻度が高い 放置すると進行し 失明率も高い 従って HIV 感染症の治療経過中には 無症状であっても定期眼科受診が必須となる 初診時に CD4 陽性リンパ球数が200/μ 渥以下ならばできるだけ早期の眼科受診が必要である 末梢血 CD4 陽性細胞数による眼科受診のめやす CD4 陽性細胞数 CD4<50/μ 渥 50/μ 渥 <CD4<100/μ 渥 100/μ 渥 <CD4<200/μ 渥 200/μ 渥 <CD4 細胞数定期眼科受診検査毎月一回 2カ月毎 3カ月毎 6カ月毎 (1) 診断特徴的な眼底所見に加えて 前房水 硝子体液からの PCR 法によるサイトメガロウイルス DNA の検出血液中のサイトメガロウイルス抗原の検出 ( アンチゲネミア ) (2) 治療法 1) 全身投与 a) ガンシクロビル初期導入療法 5mg/kg を一日 2 回 2~3 週間維持療法 2.5~6mg/kg を一日 1 回 週に3~5 日間副作用 : 骨髄抑制 b) ホスカルネット初期導入療法 90mg/kg を一日 2 回 2~3 週間維持療法 90mg/kg を一日 1 回 継続副作用 : 腎障害 2) 局所療法全身投与の補助療法としておこなう 全身投与のみでは効果不十分な症例 全身投与が副作用により継続困難となった症例におこなわれる 眼内で有効な薬剤濃度が得られるため有効性が高い 単独では 他臓器または僚眼への CMV 感染症の発症予防 治療効果が望めない 副作用 : 網膜剥離 硝子体出血 感染性眼内炎 a) ガンシクロビル硝子体内注入ガンシクロビル 200~400μg/100μ 渥を1~3 回 / 週 b) ホスカルネット硝子体内注入ホスカルネット1200~2400μg/100μ 渥を1~3 回 / 週 眼科の HIV 感染症 105

107 c) 徐放性ガンシクロビル眼内埋植一度の眼内埋植で約 8カ月間一定の濃度が維持される 日本ではおこなわれていない 2 免疫再構築症候群 (IRS) HAART 療法 (HighlyActiveAnti-RetroviralTherapy) により CD4 細胞数の増加 免疫系の回復が見られようになったが その過程で潜伏していた病原体に対して強い免疫反応を示す症候群である 眼科的には主に網膜に感染しているサイトメガロウイルスに対する免疫反応として免疫再構築ぶどう膜炎としてみられ 硝子体混濁 嚢胞様黄斑浮腫を生じうる 治療はサイトメガロウイルスに対する抗ウイルス剤に加えてステロイド薬の全身 局所投与を行うが 確立されたものはない 重症な場合には一時的に HAART 療法を中断する必要がある 3 進行性網膜外層壊死 (PORN) 水痘帯状疱疹ウイルス (VZV) の日和見感染によって生じる 霧視 視力低下が主訴であるが 初期には自覚症状がないことも多い 両眼に発症することも多く 眼底周辺部の網膜深層 やがて網膜全層に白色 ~ 黄白色斑が多発し 進行とともに癒合拡大していく 急速に進行し治療に抵抗性で 高率に網膜剥離を合併して失明に至ることが多い 診断 : 前房水 硝子体液からの PCR 法による VZVDNA の検出治療法 : 有効な治療手段は確立されていない 以下の治療をおこなうが抵抗性である (1) アシクロビル全身投与初期療法 30mg/kg/day 24 時間持続点滴 2~3 週間維持療法 4000mg/5x 内服 (2) ガンシクロビル局所投与硝子体内注入 : ガンシクロビル 200~400μg/50μ 渥を硝子体内へ注入 4 カポジ肉腫 性状 : 眼瞼 ; 平坦な深紅色の腫瘍 結膜 ; 赤色の粘膜下腫瘤症状 : 無症状のことが多い 鑑別 : 粘膜下出血 肉芽腫 霰粒腫 病理組織学的検査が必要である 治療 : 放射線照射 化学療法 106 眼科の HIV 感染症

108 表 1.HIV 感染者にみられる眼病変 1. 微小網膜血管障害網膜綿花様白斑 網膜出血 網膜毛細血管瘤 2. 日和見感染サイトメガロウイルス ヘルペスウイルス 結核 カンジダ クリプトコッカス トキソプラズマ 梅毒 カリニ肺炎 3. 悪性腫瘍カポジ肉腫 バーキットリンパ腫 4. 神経眼科学的異常眼球運動障害 視野欠損 瞳孔異常 乳頭浮腫 視神経萎縮 ( 眼科南場研一 ) 眼科の HIV 感染症 107

109 12 HIV 感染血友病患者の関節症の治療 1 はじめに 血液製剤により多くの血友病患者が不幸にも HIV に感染した 基本的に HIV 感染血友病患者の関節症治療は HIV 感染を伴わない血友病患者に対する治療と変りはない ただし人工関節置換術などの大手術を行なう場合には感染症や免疫系への手術の影響が危惧される点が問題となる HIV 陽性患者に対する大手術の適応は CD4 陽性 Tリンパ球数が400/μ 渥以上ある症例とするという意見が多かったが 最近では200/μ 渥以上とする報告も見られる さらに最近では HIV 陽性であっても AIDS を発症していない患者においては CD4 陽性 Tリンパ球数が200/μ 渥以下であっても手術を行なう施設が本邦でも増えてきている 1) これらのことをふまえ 本稿では血友病患者の関節症治療に関して中心に述べ HIV 感染者に関する一般的取り扱い 手術管理上の対策 手術器具 手術機器等の汚染物に対する取り扱いに関しては他の項にゆずる 血友病患者における最も一般的な出血症状は関節内出血であり 血友病患者の80% 以上が経験している 関節内出血のうち最も頻度の高いのは足関節 次いで膝関節 肘関節の順である 関節内出血の3 主徴は疼痛 腫脹 運動制限である 関節内出血の初発年齢は2 歳から 6 歳の間にあり 初期症状として手足を動かすと嫌がったりする 年長児や 成人の場合には 何か引っかかる感じがする 何となくおかしい 何となくむずむずする といった自覚症状を訴えることが多い 進行していくと腫脹や疼痛を訴えるようになる 同一関節に出血を繰り返すことにより 滑膜および関節軟骨にさまざまな程度の変性や変形 破壊が混在した変形性関節症 すなわち血友病性関節症となる 幼児期から学童期に起こった関節症で骨の変形 軟骨下骨の嚢腫形成などは関節の成長によってある程度改善が見込めるが 成人の変形性関節症ではほとんど改善は期待できない 血腫は治療により消失させることができるが 再発を繰り返すことも多い この血腫の治療と予防が血友病性関節症の進行の防止であり 関節機能障害の予防である 2 関節症の評価方法 関節症の評価方法は X 線所見による DePalmaの分類や Petersson らの評価方法が用いられている DePalma の分類は日本では桧山の改定分類として多く使用されている ( 表 1) Peterson score は関節面の不整や骨粗しょう症の有無など8 項目を0~2 点 合計 13 点で評価する方法で WorldFederationofHemophilia における血友病患者の評価に用いられている 3 血友病性関節症へのアプローチ 血友病患者に関節症が起こらないようにすることが理想であり その手段として重症例では低年齢 (1~3 歳 ) より週 3 回の定期的補充療法が推奨されているが すべての症例に行うことは困難である したがって 日頃から筋力強化運動などの理学療法により関節支持組織を強化し 関節出血を予防することも重要である 図 1に関節内出血に対するフローチャートを示す 急性関節出血に対しては早期の十分な補充療法と関節の冷却と安静が基本である この際に用いる凝固因子製剤の量は第 V I 因子では10~20U/kg 第 IX 因子なら30~50U/kg を注入する すでに関節内出血が進行し腫脹 疼痛が強い場合には穿刺 排液が必要となる この場合には凝固 108 HIV 感染血友病患者の関節症の治療

110 因子製剤注入後 30 分の時点で関節穿刺を行う 急性期を過ぎれば できるだけ早期に牽引や理学療法を行い関節拘縮や筋力低下を予防する 進行例では術後感染症発症等合併症のリスクと 手術によって得られる QOL の改善の程度を十分に考慮した上で次項に述べるような観血的治療を行なう 日常生活における注意事項として 運動をきっかけに出血する場合には スポーツを制限する必要がある 表 2に米国赤十字および米国血友病協議会の示す血友病患者に対するスポーツ指導を示す 基本的にスポーツを行なうことにより関節周囲の筋肉を強化し 関節内出血を減少させる効果があるので むやみにスポーツを禁止すべきではないと考える 表 1.DePalma の改定 X 線分類 ( 桧山 1974) Grade Grade1 Grade2 Grade3A 3B 3C Grade4 X 線所見関節周囲軟部組織の陰影増強骨端部の骨萎縮と過成長下記 1~5のうち1~2 項目下記 1~5のうち3~4 項目下記 1~5のうち5 項目すべて 1 骨端部の変化 2 関節裂隙狭小化 3 軟骨下嚢胞形成 4 骨棘形成 5 関節裂隙の部分消失関節裂隙の完全消失 DePalmaの Originai では Grade1~4 に分類されているが 桧山分類では Grade3 をさらに細分化し 臨床的に評価しやすくなっている 図 1. 関節出血に対する対応のフローチャート (2) HIV 感染血友病患者の関節症の治療 109

111 表 2. 血友病患者とスポーツ ( 米国赤十字および米国血友病協議会 1994 年改定版 ) カテゴリー カテゴリー 1 大部分の患者に推奨される カテゴリー 2 身体的 社会的あるいは心理的利益が危険を上回ると考えられる場合に推奨される多くの患者に可能 カテゴリー 3 すべての患者で 利益より危険が上回ると考えられる 種 目 水泳 ( 飛び込みは避ける ) ゴルフ 卓球 ウォーキング セイリング アーチェリー 野球 バスケットボール サッカー ( ただしヘディングは避ける ) バレーボール テニス ボーリング ジョギング サイクリング 体操 アイススケート ローラースケート 水上スキー フリスビー バドミントン ウィンドサーフィン ゲレンデスキー アメリカンフットボール ラグビー ボクシング アイスホッケー レスリング 自転車レース スケートボード ロッククライミング 相撲 柔道 空手 剣道 スノーボード ハンググライダー 4 整形外科手術時の補充療法 出血の予防や処置を行なう場合と異なり 手術時に行なう凝固因子補充療法は 投与の量や期間が変わってくる 一般的に手術に際して 血中凝固因子レベルは50% 以上 術後の出血予防には20% 以上に保つ必要がある 間欠的に投与を行なう場合 次回投与前 ( いわゆるトラフレベル ) で前述した活性レベルを維持する必要性があり ピーク時には100% を超える活性を示す 厚生省の血友病研究班の基準では 人工関節置換術などの大手術では目標凝固因子レベルを術当日 術後 1 日は100% 術後 2~7 日は50~100% 術後 8 日以降は50% に維持することを推奨している 著者らは第二内科血液グループと共同で決定した以下のプロトコールで第 V I 因子製剤を補充しつつ手術を行なっている 具体的には まず術前に注入試験として V I 因子製剤 50U/kg を静注し 術後 30 分 時間後の V I 因子活性を調べる 手術当日は手術 1 時間前に V I 因子 50U/kg+α を静注する αの量は注入試験の30 分後の V I 因子活性の結果が80% 以下の場合 80% 以上になる量を計算する 術中から術後 3 日はシリンジポンプを使用して V I 因子製剤を2.5U/kg/hr で持続注入する 出血 500ml あたり500U の V I 因子製剤を術後に追加し 術直後および術後 3 時間で注入試験の結果を参考に V I 因子活性が80% 以上となるように追加輸注する 術後 3~7 日は V I 因子製剤を U/kg/hr 術後 7~14 日は V I 因子製剤を U/kg/hr で持続注入する 術後 14 日目からリハビリを開始し 週 3 回の2000U の間欠的投与を行なう リハビリ2 週後の術後 28 日目で凝固因子活性を測定し 局所所見で出血の兆候がなければ 凝固因子の間欠投与を漸減し 術前の補充レベルに戻す ( 表 3) 手術を行うに当たっては患者の HIV 感染症の病期を判断し CD4 陽性 Tリンパ球数またはウイルス量で抗 HIV 療法を開始するか否かを決定する もし患者に抗 HIV 療法が必要であれば 免疫状態が改善するまで手術を待機することが望ましい HIV 感染に伴う低栄養状態は改善可能である 待機手術の適応となる患者では Majorsurgery か Minorsurgery かを評価する 緊急手術が必要な場合は可能な限り全身状態の改善を図り 手術を行う Majorsurgery では minimalyinvasivesurgery を考慮する 治療に当たっては患者が手術で得られるメリットを一番に考えなくてはならない HIV 陽性患者に対する majorsurgery の適応は CD4 陽性 Tリンパ球数が500/μ 渥以上ある症 110 HIV 感染血友病患者の関節症の治療

112 表 3 術前手術当日術中 ~ 術後 3 日術直後 術後 3h 術後 3~7 日術後 7~14 日術後 14 日 ~ 注入試験を行い Ⅷ 因子製剤 50U/kg を静注 30 分 時間後の第 Ⅷ 因子活性を調べる 1 時間前に第 Ⅷ 因子 50U/kg+α を静注 α の量は注入試験 30 分後の Ⅷ 因子の結果が 80% 以上になるよう計算 シリンジポンプを使用し第 Ⅷ 因子製剤を 2.5U/kg/hr で持続注入出血 500ml あたり 500U の Ⅷ 因子製剤を追加 注入試験の結果を参考に第 Ⅷ 因子の活性が 80% 以上になるよう追加 第 Ⅷ 因子製剤 0.8X2.5U/kg/hr 第 Ⅷ 因子製剤 0.6X2.5U/kg/hr 週 3 回の 2000U 間欠的投与 ニーブレース除去 CPM 荷重歩行訓練開始 例とするという意見が多い Bahebeck らは人工関節置換術における術後の感染症発生率は CD4 陽性 Tリンパ球数が500/μ 渥以上であれば HIV 非感染患者と変わりがないと報告している 3) 一方 最近ではその適応を200/μ 渥以上とする報告も見られる さらに HIV 陽性であっても AIDS を発症していない患者においては CD4 陽性 Tリンパ球数が200/μ 渥以下であっても手術を行なう施設もある 1) 現時点では有効な抗 HIV 療法が報告されており その治療も CD4 陽性 T リンパ球数が350/μ 渥以下で考慮することから考えると 著者は臨床症状がなく CD4 陽性 Tリンパ球数が350/μ 渥以上であれば 手術は問題ないと考える (1) 滑膜切除術慢性の滑膜炎を呈し 関節内出血を繰り返す関節に対して一般に適応となる 関節破壊が進んでいても 疼痛よりは繰り返す関節内出血が問題となる症例では滑膜切除が行われる その方法としては 化学的滑膜切除術 関節鏡視下滑膜切除術 そして外科的滑膜切除術があげられる 化学的滑膜切除術には リファンピシン オスミウム酸 198 Au 186 Re 90 Yが関節症変化の少ない症例に使用されているが 血友病患者の早期滑膜炎は学童期を含む若年者が対象となることが多く これらの薬剤の軟骨や染色体に与える影響の可能性を考え 当科では行っていない 関節鏡視下滑膜切除術や外科的滑膜切除術に関しては 関節症のさまざまな段階で行われ 関節内出血に関しては有効であるが 関節症の進行に対する抑制効果に関しては不明である (2) 関節固定術関節固定術は主に足関節の末期関節症に対して行われている これにより疼痛はほとんど消失し 関節出血もなくなり 良好な成績が報告されている しかし血友病性関節症は多関節罹患であり 固定した関節の隣接関節の関節症が進行するため 関節機能温存という見地からその適応は限られている (3) 人工関節置換術末期関節症に対しては 現在人工関節置換術が多く行われている 人工股関節置換術 (THA 図 2) や人工膝関節置換術 (TKA 図 3) は術後 疼痛や関節内出血が抑えられることにより生活レベルが向上するので患者の満足度は高い しかし 術前にすでに関節拘縮の程度が強い症例が多いため関節可動域の改善に関しては乏しいことが問題点として指摘されている 4) 末期関節症に対する人工関節置換術は関節滑膜切除も同時に行うことで 関節内出血の HIV 感染血友病患者の関節症の治療 111

113 抑制もでき 疼痛も軽減されるため有効な治療法であるが 一般的な変形性関節症患者に比べると若年の患者に行わなくてはならない点が問題となる 人工関節は生体にとって異物であるから implant の破損や骨との界面での緩みが避けられない問題として指摘されているからである 人工関節の survivalrate は股関節の場合術後 20 年で90% 5) 膝関節の場合術後 12 年で96.8% 6) と報告されている したがって若年者に対して人工関節を行う場合には再置換術が必要となる 一般的な変形性関節症に対する人工関節置換術後深部感染発生率は股関節の場合 0.8% 7) 膝関節の場合 0.62% 8) と報告されている 荷重関節における人工関節の感染を根治させる場合には 多くは一度コンポーネントを抜去して感染を沈静化させる必要があるため その治療は患者に対して大きな負担をかけることになる HIV 感染患者で免疫力が低下している場合には感染の危険が増加するため 人工関節置換術を行なって得られる benefit と合併症のrisk を十分に勘案して手術を行なわなくてはならない 図 2 人工股関節置換術当院で行った症例の術前 ( 左 ) および術後 ( 右 ) の X 線写真 図 3 人工膝関節置換術当院で行った症例の術前 ( 左 ) および術後 ( 右 ) の X 線写真 112 HIV 感染血友病患者の関節症の治療

BA_kanen_QA_zenpan_kani_univers.indd

BA_kanen_QA_zenpan_kani_univers.indd その他 B 型肝炎 15% C 型肝炎 68% 41 706 168 66 19 12 肝 には の か 脂肪肝 の で る () という も りま の く い 肝 の肝細胞のなかに 脂肪の く がこ なにたまっ いま 類洞 正常な肝臓 腸管からの栄養や不要物が流れていく 肝細胞 正常な肝臓 脂肪肝の始まり 類洞 腸管からの栄養や不要物が流れていく 類洞 過剰な脂質 糖質の流入 肝細胞 肝細胞のなかに中性脂肪がたまり始める

More information

B型平成28年ガイドライン[5].ppt

B型平成28年ガイドライン[5].ppt 平成 27 年度日本医療研究開発機構感染症実用化研究事業 ( 肝炎等克服実用化研究事業 ) 科学的根拠に基づくウイルス性肝炎診療ガイドラインの構築に関する研究班 平成 28 年 B 型慢性肝炎 肝硬変治療のガイドライン 平成 28 年 B 型慢性肝炎治療ガイドラインの基本指針 血中 HBV DNA 量が持続的に一定以下となれば ALT 値も正常値が持続し 肝病変の進展や発癌が抑制され さらに HBs

More information

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案) 資料 1 C 型慢性肝疾患 ( ゲノタイプ 1 型 2 型 ) に対する治療フローチャート ダクラタスビル + アスナプレビル併用療法 ソホスブビル + リバビリン併用療法 ソホスブビル / レジパスビル併用療法 オムビタスビル / パリタプレビル / リトナビル併用療法 (± リバビリン ) エルバスビル + グラゾプレビル併用療法 ダクラタスビル / アスナプレビル / ベクラブビル 3 剤併用療法による抗ウイルス治療に当たっては

More information

耐性菌届出基準

耐性菌届出基準 37 ペニシリン耐性肺炎球菌感染症 (1) 定義ペニシリン G に対して耐性を示す肺炎球菌による感染症である (2) 臨床的特徴小児及び成人の化膿性髄膜炎や中耳炎で検出されるが その他 副鼻腔炎 心内膜炎 心嚢炎 腹膜炎 関節炎 まれには尿路生殖器感染から菌血症を引き起こすこともある 指定届出機関の管理者は 当該指定届出機関の医師が (2) の臨床的特徴を有する者を診察した結果 症状や所見からペニシリン耐性肺炎球菌感染症が疑われ

More information

1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを 薬生薬審発 0525 第 3 号薬生安発 0525 第 1 号平成 30 年 5 月 25 日 都道府県各保健所設置市衛生主管部 ( 局 ) 長殿特別区 厚生労働省医薬 生活衛生局医薬品審査管理課長 ( 公印省略 ) 厚生労働省医薬 生活衛生局医薬安全対策課長 ( 公印省略 ) トファシチニブクエン酸塩製剤の使用に当たっての留意事項について トファシチニブクエン酸塩製剤 ( 販売名 : ゼルヤンツ錠

More information

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝 エンテカビル トーワ を服用されている方へ B 型慢性肝疾患の治療のために 監修 国立大学法人高知大学医学部消化器内科学講座 教授西原利治先生 施設名 2017 年 10 月作成 (C-1) 肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが

More information

減量・コース投与期間短縮の基準

減量・コース投与期間短縮の基準 用法 用量 通常 成人には初回投与量 (1 回量 ) を体表面積に合せて次の基準量とし 朝食後および夕食後の 1 日 2 回 28 日間連日経口投与し その後 14 日間休薬する これを 1 クールとして投与を繰り返す ただし 本剤の投与によると判断される臨床検査値異常 ( 血液検査 肝 腎機能検査 ) および消化器症状が発現せず 安全性に問題がない場合には休薬を短縮できるが その場合でも少なくとも

More information

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります 2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にありますが 本邦の結核では高齢者結核が多いのが特徴です 結核診療における主な検査法を示します ( 図 1) 従来の細菌学的な抗酸菌の塗抹

More information

Microsoft Word - ③中牟田誠先生.docx

Microsoft Word - ③中牟田誠先生.docx RA 治療と肝炎 中牟田誠国立病院機構九州医療センター肝臓センター (2012 年 第 13 回博多リウマチセミナー ) はじめに RA 治療の基本は免疫抑制をかけることになると思われるが そのためには種々の薬剤 ステロイド メトトレキサートを代表として 特に最近は生物学的製剤と呼ばれ強力な免疫抑制効果を持つ インフリキシマブ エタネルセプトなどが使用されている これらの治療経過中に肝障害が出現してくることも稀なことではなく

More information

ダクルインザ・スンベブラの使用経験とこれからの病診連携

ダクルインザ・スンベブラの使用経験とこれからの病診連携 第 6 回大分肝疾患診療教育セミナー ~ コーディネーター育成セミナー ~ 2015 年 1 月 22 日ホルトホール大分 C 型肝炎の最新治療 大分大学医学部消化器内科 本田浩一 C 型慢性肝炎治療の歴史 インターフェロン (IFN)α 承認 IFN+ リバビリン (RBV) 併用 コンセンサス IFN 製剤承認 IFN 再投与および投与期限の撤廃 ダグラタスビル + アスナプレビル承認 IFN

More information

に 真菌の菌体成分を検出する血清診断法が利用されます 血清 βグルカン検査は 真菌の細胞壁の構成成分である 1,3-β-D-グルカンを検出する検査です ( 図 1) カンジダ属やアスペルギルス属 ニューモシスチスの細胞壁にはβグルカンが豊富に含まれており 血液検査でそれらの真菌症をスクリーニングする

に 真菌の菌体成分を検出する血清診断法が利用されます 血清 βグルカン検査は 真菌の細胞壁の構成成分である 1,3-β-D-グルカンを検出する検査です ( 図 1) カンジダ属やアスペルギルス属 ニューモシスチスの細胞壁にはβグルカンが豊富に含まれており 血液検査でそれらの真菌症をスクリーニングする 2017 年 6 月 7 日放送 深在性真菌症感染症の診断と治療 大阪市立大学大学院 臨床感染制御学教授 掛屋 弘 本日は 深在性真菌症の診断と治療のポイントを概説します カンジダ症深在性真菌症の中で最も頻度が高いのが カンジダ症です カンジダ症には カンジダ属が血液から検出される カンジダ血症 や血流を介して内臓に播種した 播種性カンジダ症 が挙げられます カンジダ血症の主な原因は 血管内留置カテーテルです

More information

針刺し切創発生時の対応

針刺し切創発生時の対応 1. 初期対応 1) 発生直後の対応 (1) 曝露部位 ( 針刺し 切創等の経皮的創傷 粘膜 皮膚など ) を確認する (2) 曝露部位を直ちに洗浄する 1 創傷 粘膜 正常な皮膚 創傷のある皮膚 : 流水 石鹸で十分に洗浄する 2 口腔 : 大量の水でうがいする 3 眼 : 生理食塩水で十分に洗浄する (3) 曝露の程度 ( 深さ 体液注入量 直接接触量 皮膚の状態 ) を確認する (4) 原因鋭利器材の種類

More information

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に 2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に伴い 肺炎におけるウイルスの重要性が注目されてきました 本日のお話では 成人におけるウイルス性肺炎の疫学と診断の現状

More information

日産婦誌61巻5号研修コーナー

日産婦誌61巻5号研修コーナー ( 表 E75)1) 性感染症の種類と病原体 細菌ウレアプラズママイコプラズマクラミジアウイルス原虫真菌寄生虫 病原体 Treponemapalidum Neisseriagonorhoeae Haemophilusducreyi Calymmatobacterium granulomatis Gardnerelavaginalis GroupB Streptococcus Shigela Salmonela

More information

全な生殖補助医療を含めて, それぞれの選択肢を示す必要がある. 3 種類の HIV 感染カップルの組み合わせとそれぞれの対応 1. 男性が HIV 陽性で女性が陰性の場合 体外受精この場合, もっとも考慮しなければいけないことは女性への感染予防である. 上記のように陽性である男性がすでに治療を受けて

全な生殖補助医療を含めて, それぞれの選択肢を示す必要がある. 3 種類の HIV 感染カップルの組み合わせとそれぞれの対応 1. 男性が HIV 陽性で女性が陰性の場合 体外受精この場合, もっとも考慮しなければいけないことは女性への感染予防である. 上記のように陽性である男性がすでに治療を受けて HIV 感染者の妊娠と出産 山本政弘 Summary 挙児希望のある HIV 感染カップルにおいては, 十分なウイルス抑制が得られている場合, 通常の性交渉による挙児でも : 二次感染のリスクはかなり軽減されていることが明らかになってきているが, 100% 安全というわけではなく, より安全な方法 ( 生殖補助医療 ) も検討する必要がある. また, 母子感染も十分な準備や対応を行えばかなりの確率で予防が可能となっている.

More information

抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性 2012 年 1 月 4 日放送 抗菌薬の PK-PD 愛知医科大学大学院感染制御学教授三鴨廣繁抗菌薬の PK-PD とは薬物動態を解析することにより抗菌薬の有効性と安全性を評価する考え方は アミノ配糖体系薬などの副作用を回避するための薬物血中濃度モニタリング (TDM) の分野で発達してきました 近年では 耐性菌の増加 コンプロマイズド ホストの増加 新規抗菌薬の開発の停滞などもあり 現存の抗菌薬をいかに科学的に使用するかが重要な課題となっており

More information

情報提供の例

情報提供の例 145 ヒアルロン酸 2( 肝硬変 ) 平成 22 年 6 月 21 日新規 平成 26 年 9 月 22 日更新 平成 30 年 2 月 26 日更新 取扱い原則として 肝硬変に対するヒアルロン酸は認められない 取扱いを定めた理由 肝硬変 では 既に肝の線維化が認められるものであり ヒアルロン酸の測定は 疾患の経過観察の参考とならない 39 リウマトイド因子 (RF)

More information

第 4 章感染患者への対策マニュアル ウイルス性肝炎の定義と届け出基準 1) 定義ウイルス感染が原因と考えられる急性肝炎 (B 型肝炎,C 型肝炎, その他のウイルス性肝炎 ) である. 慢性肝疾患, 無症候性キャリア及びこれらの急性増悪例は含まない. したがって, 透析室では HBs

第 4 章感染患者への対策マニュアル ウイルス性肝炎の定義と届け出基準 1) 定義ウイルス感染が原因と考えられる急性肝炎 (B 型肝炎,C 型肝炎, その他のウイルス性肝炎 ) である. 慢性肝疾患, 無症候性キャリア及びこれらの急性増悪例は含まない. したがって, 透析室では HBs 第 4 章感染患者への対策マニュアル 63 4. ウイルス性肝炎の定義と届け出基準 1) 定義ウイルス感染が原因と考えられる急性肝炎 (B 型肝炎,C 型肝炎, その他のウイルス性肝炎 ) である. 慢性肝疾患, 無症候性キャリア及びこれらの急性増悪例は含まない. したがって, 透析室では HBs 抗原 抗体,HCV 抗体などが陰性であった者が急性肝炎を発症し, ウイルス感染が証明された場合には届出が必要となる.

More information

1. ウイルス性肝炎とは ウイルス性肝炎とは 肝炎ウイルスに感染して 肝臓の細胞が壊れていく病気です ウイルスの中で特に肝臓に感染して肝臓の病気を起こすウイルスを肝炎ウイルスとよび 主な肝炎ウイルスには A 型 B 型 C 型 D 型 E 型の 5 種類があります これらのウイルスに感染すると肝細胞

1. ウイルス性肝炎とは ウイルス性肝炎とは 肝炎ウイルスに感染して 肝臓の細胞が壊れていく病気です ウイルスの中で特に肝臓に感染して肝臓の病気を起こすウイルスを肝炎ウイルスとよび 主な肝炎ウイルスには A 型 B 型 C 型 D 型 E 型の 5 種類があります これらのウイルスに感染すると肝細胞 わかりやすい ウイルス性肝炎のおはなし 宮崎大学医学部附属病院 肝疾患センター 1. ウイルス性肝炎とは ウイルス性肝炎とは 肝炎ウイルスに感染して 肝臓の細胞が壊れていく病気です ウイルスの中で特に肝臓に感染して肝臓の病気を起こすウイルスを肝炎ウイルスとよび 主な肝炎ウイルスには A 型 B 型 C 型 D 型 E 型の 5 種類があります これらのウイルスに感染すると肝細胞が破壊されていきますが

More information

目次 1. 肝臓の病気 2. 肝炎ウイルスとは 3. ウイルス性肝炎とは 4. 急性肝炎 5. 慢性肝炎 6. 肝硬変 7.A 型肝炎 8.B 型肝炎 9.C 型肝炎 10.B 型肝炎の治療 11.C 型肝炎の治療 12. 予防方法 13. 肝炎の医療費助成制度 14. おわりに 1

目次 1. 肝臓の病気 2. 肝炎ウイルスとは 3. ウイルス性肝炎とは 4. 急性肝炎 5. 慢性肝炎 6. 肝硬変 7.A 型肝炎 8.B 型肝炎 9.C 型肝炎 10.B 型肝炎の治療 11.C 型肝炎の治療 12. 予防方法 13. 肝炎の医療費助成制度 14. おわりに 1 健康教育テキスト No. 34 ウイルス性肝炎 肝炎治療で肝がんを予防しましょう 山口県医師会山口県医師国民健康保険組合 目次 1. 肝臓の病気 2. 肝炎ウイルスとは 3. ウイルス性肝炎とは 4. 急性肝炎 5. 慢性肝炎 6. 肝硬変 7.A 型肝炎 8.B 型肝炎 9.C 型肝炎 10.B 型肝炎の治療 11.C 型肝炎の治療 12. 予防方法 13. 肝炎の医療費助成制度 14. おわりに

More information

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or 33 NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 2015 年第 2 版 NCCN.org NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) の Lugano

More information

「             」  説明および同意書

「             」  説明および同意書 EDP( エトポシド + ドキソルビシン + シスプラチン ) 療法 説明および同意書 四国がんセンター泌尿器科 患者氏名 ( ) さん 御本人さんのみへの説明でよろしいですか? ( 同席者の氏名をすべて記載 ) ( ( はい ) ) < 病名 > 副腎がん 転移部位 ( ) < 治療 > EDP 療法 (E: エトポシド D: ドキソルビシン P: シスプラチン ) < 治療開始予定日 > 平成

More information

<4D F736F F D B A814089FC92F982CC82A8926D82E782B95F E31328C8E5F5F E646F63>

<4D F736F F D B A814089FC92F982CC82A8926D82E782B95F E31328C8E5F5F E646F63> - 医薬品の適正使用に欠かせない情報です 必ずお読み下さい - 効能 効果 用法 用量 使用上の注意 等改訂のお知らせ 抗悪性腫瘍剤 ( ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤 ) ( 一般名 : イブルチニブ ) 2016 年 12 月 この度 抗悪性腫瘍剤 イムブルビカ カプセル 140 mg ( 以下標記製品 ) につきまして 再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫 の効能追加承認を取得したことに伴い

More information

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32 白血球増加の初期対応 白血球増加が 30,000~50,000/μL 以上と著明であれば, 白血病の可能性が高い すぐに専門施設 ( ) に紹介しよう ( 図 1) 白血球増加があれば, まず発熱など感染症を疑う症状 所見に注目しよう ( 図 1) 白血球増加があれば, 白血球分画を必ずチェックしよう 成熟好中球 ( 分葉核球や桿状核球 ) 主体の増加なら, 反応性好中球増加として対応しよう ( 図

More information

されており これらの保菌者がリザーバーとして感染サイクルに関与している可能性も 考えられています 臨床像ニューモシスチス肺炎の 3 主徴は 発熱 乾性咳嗽 呼吸困難です その他のまれな症状として 胸痛や血痰なども知られています 身体理学所見には乏しく 呼吸音は通常正常です HIV 感染者に合併したニ

されており これらの保菌者がリザーバーとして感染サイクルに関与している可能性も 考えられています 臨床像ニューモシスチス肺炎の 3 主徴は 発熱 乾性咳嗽 呼吸困難です その他のまれな症状として 胸痛や血痰なども知られています 身体理学所見には乏しく 呼吸音は通常正常です HIV 感染者に合併したニ 2012 年 4 月 4 日放送 ニューモシスチス肺炎の診断と治療 東京医科大学八王子医療センター感染症科教授藤井毅はじめにニューモシスチス肺炎は Pneumocystis jirovecii( ニューモシスチスイロベチイ ) を病原微生物とする 主に細胞性免疫が著明に低下した状態で発症する日和見感染症です AIDS 関連日和見感染症の代表的疾患ですが その他にもステロイドや免疫抑制剤の長期使用 抗

More information

目 次 1. HIV 感染症の臨床経過 1 2. HIV 感染症の検査 / 診断 5 3. 抗 HIV 療法 HIV 薬剤耐性とその検査 HIV 感染症と肝炎 血友病患者の診療 AIDS 関連症候群 (ARC) の診断と治療 カンジダ

目 次 1. HIV 感染症の臨床経過 1 2. HIV 感染症の検査 / 診断 5 3. 抗 HIV 療法 HIV 薬剤耐性とその検査 HIV 感染症と肝炎 血友病患者の診療 AIDS 関連症候群 (ARC) の診断と治療 カンジダ 目 次 1. HIV 感染症の臨床経過 1 2. HIV 感染症の検査 / 診断 5 3. 抗 HIV 療法 10 4. HIV 薬剤耐性とその検査 22 5. HIV 感染症と肝炎 27 6. 血友病患者の診療 34 7-1.AIDS 関連症候群 (ARC) の診断と治療 37 7-2. カンジダ症 45 7-3. クリプトコックス症 48 7-4. クリプトスポリジウム症 51 7-5. サイトメガロウイルス

More information

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 ) toxoplasma gondii antibody-igg 連絡先 : 3764 基本情報 分析物 5E156 JLAC10 診療報酬 識別材料 023 血清 測定法 052 化学 生物発光イムノアッセイ (CLEIA) 結果識別 第 2 章 特掲診療料 D012 14 トキソプラズマ抗体 第 3 部 検査 第 1 節 検体検査料 第 1 款 検体検査実施料 ( 免疫学的検査 ) 93 点 加算等

More information

日産婦誌58巻9号研修コーナー

日産婦誌58巻9号研修コーナー α β γ α αヘルペスウイルス単純ヘルペスウイルス 1 型 (HSV1) 性器ヘルペス単純ヘルペスウイルス 2 型 (HSV2) 水痘 帯状疱疹ウイルス (VZV) βヘルペスウイルスサイトメガロウイルス (CMV) ヒトヘルペスウイルス 6 型 (HHV6) ヒトヘルペスウイルス 7 型 (HHV7) γヘルペスウイルス EpsteinBarウイルス (EBV) ヒトヘルペスウイルス 8 型

More information

B型肝炎ウイルス検査

B型肝炎ウイルス検査 概説 10 針刺し 切傷時の対応 A. 基礎的事項 1. 針刺し 切り傷などの曝露時に問題となる血液媒介微生物 曝露時において感染が問題となる微生物には HBV,HCV,HIV,HTLV-Ⅰ, 梅毒スピロヘータなどがあげられます しかし 実際には汚染源中に存在するすべての病原微生物が問題であることを認識しておく必要があります そのため 曝露事故の報告は汚染源の状態とは関係なく行うべきです 2. 感染成立頻度と潜伏期

More information

抗HIV治療ガイドライン 2012年3月

抗HIV治療ガイドライン 2012年3月 Guideline I I 1 I...4 1HIV...6 2HIV...8 1CD4T...8 2HIV RNA...8 3HIV...9 1...12 1...12 2HIV 13 3ARTHIV...13 2...16 1HIV...22 1...22 2...24 3...28 4...29 2HIVART.32 1HIV...52 1HIV...52 2 : NRTI...52 3 :

More information

スライド 1

スライド 1 1/5 PMDA からの医薬品適正使用のお願い ( 独 ) 医薬品医療機器総合機構 No.6 2012 年 1 月 ラミクタール錠 ( ラモトリギン ) の重篤皮膚障害と用法 用量遵守 早期発見について ラミクタール錠は 用法 用量 を遵守せず投与した場合に皮膚障害の発現率が高くなることが示されている ( 表 1 参照 ) ため 用法 用量 を遵守することが平成 20 年 10 月の承認時より注意喚起されています

More information

イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ 2012 年 12 月 13 日放送 第 111 回日本皮膚科学会総会 6 教育講演 26-3 皮膚病変におけるウイルス感染検査と読み方 川崎医科大学皮膚科 講師山本剛伸 はじめにウイルス性皮膚疾患は 臨床症状から視診のみで診断がつく例もありますが ウイルス感染検査が必要となる症例も日常多く遭遇します ウイルス感染検査法は多種類存在し それぞれに利点 欠点があります 今回は それぞれのウイルス感染検査について

More information

スライド 1

スライド 1 感染と CRP 感染と CRP メニュー 1.Sepsis 1 診断的 価値 Intensive Care Med 2002 2 重症度 3 治療効果 予後判定 判定 Crit Care 2011 Infection 2008 2.ICU Patients 3.VAP Crit Care 2006 Chest 2003 Crit Care Med 2002 Heart & Lung 2011

More information

消化器病市民向け

消化器病市民向け Copyright C THE JAPANESE SOCIETY OF GASTROENTEROLOGY. d 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 1 肝硬変とは 2 肝硬変の合併症 たんらくろ 流れにくくなった門脈血は 体のあちらこちらにできた短絡路 シャント を通っ て肝臓を通らずに上大静脈や下大静脈に流れ込みます

More information

untitled

untitled CDC MMWR Recommendations and Reports September 30, 2005 / Vol 54 / No. RR-9 Updated U.S. Public Health Service Guidelines for the Management of Occupational Exposures to HIV and Recommendations for Postexposure

More information

割合が10% 前後となっています 新生児期以降は 4-5ヶ月頃から頻度が増加します ( 図 1) 原因菌に関しては 本邦ではインフルエンザ菌が原因となる頻度がもっとも高く 50% 以上を占めています 次いで肺炎球菌が20~30% と多く インフルエンザ菌と肺炎球菌で 原因菌の80% 近くを占めていま

割合が10% 前後となっています 新生児期以降は 4-5ヶ月頃から頻度が増加します ( 図 1) 原因菌に関しては 本邦ではインフルエンザ菌が原因となる頻度がもっとも高く 50% 以上を占めています 次いで肺炎球菌が20~30% と多く インフルエンザ菌と肺炎球菌で 原因菌の80% 近くを占めていま 2012 年 6 月 13 日放送 小児科領域の重症感染症 慶應義塾大学感染制御センター教授岩田敏はじめに小児科領域の重症感染症としては 脳炎 髄膜炎 敗血症 菌血症 肺炎 膿胸 心筋炎 好中球減少時の感染症などがあげられます これらの疾患は 抗微生物薬の進歩した今日においても 難治性であったり予後が不良であったりすることから そのマネジメントには苦労するところであります 本日はこれらの疾患のうち

More information

B型肝炎ウイルス検査

B型肝炎ウイルス検査 針刺し 切傷時の検査 針刺し 切傷時の検査受付は事務部にて行っています 検査には被汚染者と汚染原の検体が必要です ま た HIV 感染疑いで 妊娠の可能性がある被汚染者は 尿中 hcg( 妊娠反応 ) を検査することができます 検査項目 検体 所要 日数 測定原理基準値報告値 針刺し 切創時の検査 概説 10 HBs 抗原 ( 判定値のみ ) 血清 0 0.5 化学発光法 陰性 定性 HBs 抗体

More information

顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌 2017 年 8 月 30 日放送 無菌性髄膜炎の診断と治療 川崎医科大学小児科教授寺田喜平はじめに本日は無菌性髄膜炎をテーマにお話しさせていただきます 時間も限られていますので 4 つに焦点を絞ってお話しいたします はじめに 図 1 の無菌性髄膜炎から分離 検出されたウイルスについて 2013 年から 2017 年までのデータを見ていただきましょう 2013 年は黄色のエコー 6 と青色のエコー

More information

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital 6459 8. その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May. 2017 EGFR 遺伝子変異検査 ( 院内測定 ) c-erbb/egfr [tissues] 基本情報 8C051 c-erbb/egfr JLAC10 診療報酬 分析物 識別材料測定法

More information

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4 10001 P1-089 ポスタービューイング 1 関節リウマチの治療 :DMARDs NSAIDs 4 月 26 日 ( 木 ) 13:20-14:40 - ポスター 展示会場ホール E B2 階 ホール E 10002 P2-041 ポスタービューイング 2 関節リウマチの治療評価と予測 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:40-14:00 - ポスター 展示会場ホール E B2 階 ホール

More information

Microsoft Word - 届出基準

Microsoft Word - 届出基準 第 4 三類感染症 1 コレラ (1) 定義コレラ毒素 (CT) 産生性コレラ菌 (Vibrio cholerae O1) 又は V. cholerae O139 による急性感染性腸炎である (2) 臨床的特徴潜伏期間は数時間から 5 日 通常 1 日前後である 近年のエルトールコレラは軽症の水様性下痢や軟で経過することが多いが まれに 米のとぎ汁 様の臭のない水様を 1 日数リットルから数十リットルも排泄し

More information

15,000 例の分析では 蘇生 bundle ならびに全身管理 bundle の順守は, 各々最初の 3 か月と比較し 2 年後には有意に高率となり それに伴い死亡率は 1 年後より有意の減少を認め 2 年通算で 5.4% 減少したことが報告されています このように bundle の merit

15,000 例の分析では 蘇生 bundle ならびに全身管理 bundle の順守は, 各々最初の 3 か月と比較し 2 年後には有意に高率となり それに伴い死亡率は 1 年後より有意の減少を認め 2 年通算で 5.4% 減少したことが報告されています このように bundle の merit 2011 年 11 月 30 日放送 真菌感染症 兵庫医科大学感染制御学教授竹末芳生はじめに深在性真菌症の診断 治療ガイドラインの改訂版が 2007 年に発表され それを普及させる目的で 真菌症フォーラムでは ACTIONs プロジェクトを行ってきました これは侵襲性カンジダ症の病態 診断 治療を Antifungals, Blood stream infection, Colonization &

More information

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の [web 版資料 1 患者意見 1] この度 高尿酸血症 痛風の治療ガイドライン の第 3 回の改訂を行うことになり 鋭意取り組んでおります 診療ガイドライン作成に患者 市民の立場からの参加 ( 関与 ) が重要であることが認識され 診療ガイドライン作成では 患者の価値観 希望の一般的傾向 患者間の多様性を反映させる必要があり 何らかの方法で患者 市民の参加 ( 関与 ) に努めるようになってきております

More information

第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 採択結果演題一覧

第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 採択結果演題一覧 登録番号 演題番号 日にち 時間 会場 発表形式 セッション名 10000 D-1-19 10 月 26 日 14:10 ~ 15:10 D 会場 一般演題 ( 口演 ) インフルエンザ2 10001 D-2-5 10 月 27 日 8:40 ~ 9:30 D 会場 一般演題 ( 口演 ) 予防接種 ワクチン1 10002 G-2-14 10 月 27 日 14:20 ~ 15:10 G 会場 一般演題

More information

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに 別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに最新の知見を集約し 変更される可能性がある (3) 届出基準ア患者 ( 確定例 ) 患者 ( 確定例

More information

健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2 11 1 長期にわたる大量飲酒が 引き起こす影響 脳への影響 アルコールは 脳の神経細胞に影響を及ぼし その結果 脳が縮んでいきます 脳に対 するアルコールの影響は 未成年者で特に強いことが知られています 写真B 写真A 正常な脳のCT 写真C 写真D アルコール 依 存 症 患者の脳の 正常な脳のCT Aに比べてやや CT Aとほぼ同じ高さの位置の 低い位置の断面 断面 脳の外側に溝ができ 中央

More information

免疫学的検査 >> 5F. ウイルス感染症検査 >> 5F560. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時

免疫学的検査 >> 5F. ウイルス感染症検査 >> 5F560. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時 9314 5. 免疫学的検査 >> 5F. ウイルス感染症検査 >> 5F560. HIV-1+2 antibody p24 antigen 連絡先 : 3479 2-2908 基本情報 5F560 HIV-1+2 分析物 JLAC10 診療報酬 識別 1550 HIV-1+2 抗体 p24 抗原 材料 023 血清 測定法結果識別 第 2 章 特掲診療料 D012 17 第 3 部 検査 第 1

More information

改訂後改訂前 << 効能 効果に関連する使用上の注意 >> 関節リウマチ 1. 過去の治療において 少なくとも1 剤の抗リウマチ薬 ( 生物製剤を除く ) 等による適切な治療を行っても 疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること 2. 本剤とアバタセプト ( 遺伝子組換え ) の併用は行わな

改訂後改訂前 << 効能 効果に関連する使用上の注意 >> 関節リウマチ 1. 過去の治療において 少なくとも1 剤の抗リウマチ薬 ( 生物製剤を除く ) 等による適切な治療を行っても 疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること 2. 本剤とアバタセプト ( 遺伝子組換え ) の併用は行わな - 医薬品の適正使用に欠かせない情報です 必ずお読み下さい - 警告 効能 効果 用法 用量 使用上の注意 等改訂のお知らせ ヒト型抗ヒト TNFα モノクローナル抗体製剤 ( 一般名 : ゴリムマブ ( 遺伝子組換え )) 2017 年 4 月 製造販売元ヤンセンファーマ株式会社発売元田辺三菱製薬株式会社 この度 標記製品 ( 以下 本剤 ) シンポニー 皮下注 50mg シリンジ ( 一般名 :

More information

Microsoft Word - JAID_JSC 2014 正誤表_ 原稿

Microsoft Word - JAID_JSC 2014 正誤表_ 原稿 JAID/JSC 感染症治療ガイド 2014 表 記載にりがありましたので, 下記のように追加 訂させていただきます 2016 年 9 月 JAID/JSC 感染症治療ガイド ガイドライン作成委員会 P106 Ⅶ 呼吸器感染症,A-2 院内肺炎 3 Definitive Therapy P. aeruginosa 多剤耐性の場合 CL:5mg/kg 1 回ローディング その 24 時間後に以下の維持用量を開始する

More information

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性 2018 年 10 月 31 日放送 成人 RS ウイルス感染症 坂総合病院副院長高橋洋はじめに RS ウイルスは小児科領域ではよく知られた重要な病原体ですが 成人例の病像に関しては未だ不明の点も多いのが現状です しかし近年のいくつかの報告を契機として この病原体の成人領域での疫学や臨床像 とくに高齢者における重要性が少しずつ明らかになってきています 今回は成人における RS ウイルス肺炎の病像を当施設の成績を踏まえてお話しさせていただきます

More information

染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります 2015 年 3 月 4 日放送 淋菌 クラミジア感染症の現状と問題点 産業医科大学泌尿器科講師濵砂良一主な性感染症淋菌感染症およびクラミジア感染症は 性感染症の一つであり 性感染症のなかで最も頻度の高い疾患です 性感染症とは 主に性的な行為によって病原体が感染する疾患であり この淋菌 クラミジア感染症の他に 梅毒 性器ヘルペス 尖圭コンジローマ HIV 感染症など数多くの疾患が含まれます これらの疾患の一部は

More information

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd L FO AT E VI TAMI NB12 医療関係者用 葉酸 とビタミンB ビタミンB12 アリムタ投与に際して 警告 1 本剤を含むがん化学療法に際しては 緊急時に十分対応できる医療施設において がん化学療 法に十分な知識 経験を持つ医師のもとで 本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投 与すること 適応患者の選択にあたっては 各併用薬剤の添付文書を参照して十分注意すること また 治療開始に先立ち

More information

B型肝炎

B型肝炎 B 型肝炎とは太郎丸店 B 型肝炎とは HBV(DNA ウイルス ) が血液 体液を介して感染するものであり A~C 型の中で最も多く その 80% % はアジア系が占めている 日本でも日本でもキャリア (HBV 保有者 ) は約 130~150 150 万人いるとされている HBV の潜伏期間潜伏期間は 4~20 週間であり 発症すると症状としてであり 発症すると症状として発熱 黄疸 全身倦怠感

More information

1.HBV 持続感染者の自然経過 HBV 持続感染者の病態は 宿主の免疫応答と HBV DNA の増殖の状態により 主に下記の 4 期に分類される HBV 持続感染者の治療に当たってはこのような自然経過をよく理解しておくことが必要である 1 免疫寛容期 immune tolerance phase

1.HBV 持続感染者の自然経過 HBV 持続感染者の病態は 宿主の免疫応答と HBV DNA の増殖の状態により 主に下記の 4 期に分類される HBV 持続感染者の治療に当たってはこのような自然経過をよく理解しておくことが必要である 1 免疫寛容期 immune tolerance phase B 型肝炎治療ガイドライン ( 第 3 版 簡易版 ) 2017 年 8 月 日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会編 1.HBV 持続感染者の自然経過 HBV 持続感染者の病態は 宿主の免疫応答と HBV DNA の増殖の状態により 主に下記の 4 期に分類される HBV 持続感染者の治療に当たってはこのような自然経過をよく理解しておくことが必要である 1 免疫寛容期 immune tolerance

More information

ハイゼントラ20%皮下注1g/5mL・2g/10mL・4g/20mL

ハイゼントラ20%皮下注1g/5mL・2g/10mL・4g/20mL CSL19-158 医薬品の適正使用に欠かせない情報です 必ずお読みください 効能又は効果 用法及び用量 使用上の注意改訂のお知らせ 2019 年 3 月血漿分画製剤 ( 皮下注用人免疫グロブリン製剤 ) この度 標記製品の製造販売承認事項の一部変更が承認されました それに伴い 効能又は効果 用法及び用量 及び 使用上の注意 等を改訂いたしましたので お知らせいたします 改訂添付文書を封入した製品がお手元に届くまでには若干の日時を要しますので

More information

5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350 5. 死亡 () 死因順位の推移 ( 人口 0 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 328.4 悪性新生物 337.0 悪性新生物 286.6 25 悪性新生物 377.8 悪性新生物 354. 悪性新生物 290.3 位 26 悪性新生物 350.3 悪性新生物 355.7 悪性新生物 290.3 27 悪性新生物 332.4 悪性新生物 35. 悪性新生物

More information

094.原発性硬化性胆管炎[診断基準]

094.原発性硬化性胆管炎[診断基準] 94 原発性硬化性胆管炎 概要 1. 概要原発性硬化性胆管炎 (PSC) は 肝内外の胆管の線維性狭窄を生じる進行性の慢性炎症疾患である 胆管炎 AIDS の胆管障害 胆管悪性腫瘍 (PSC 診断後及び早期癌は例外 ) 胆道の手術や外傷 総胆管結石 先天性胆道異常 腐食性硬化性胆管炎 胆管の虚血性狭窄 floxuridine 動注による胆管障害や狭窄に伴うものは 2 次性硬化性胆管炎として除外される

More information

要旨 平成 30 年 2 月 21 日新潟県福祉保健部 インターフェロンフリー治療に係る診断書を作成する際の注意事項 インターフェロンフリー治療の助成対象は HCV-RNA 陽性の C 型慢性肝炎又は Child-Pugh 分類 A の C 型代償性肝硬変で 肝がんの合併のない患者です 助成対象とな

要旨 平成 30 年 2 月 21 日新潟県福祉保健部 インターフェロンフリー治療に係る診断書を作成する際の注意事項 インターフェロンフリー治療の助成対象は HCV-RNA 陽性の C 型慢性肝炎又は Child-Pugh 分類 A の C 型代償性肝硬変で 肝がんの合併のない患者です 助成対象とな 要旨 平成 30 年 2 月 21 日新潟県福祉保健部 インターフェロンフリー治療に係る診断書を作成する際の注意事項 インターフェロンフリー治療の助成対象は HCV-RNA 陽性の C 型慢性肝炎又は Child-Pugh 分類 A の C 型代償性肝硬変で 肝がんの合併のない患者です 助成対象となる薬剤 セログループ ( ジェノタイプ ) 診断名 治療期間は以下のとおりです 薬剤名セログループ (

More information

頭頚部がん1部[ ].indd

頭頚部がん1部[ ].indd 1 1 がん化学療法を始める前に がん化学療法を行うときは, その目的を伝え なぜ, 化学療法を行うか について患者の理解と同意を得ること ( インフォームド コンセント ) が必要である. 病理組織, 病期が決定したら治療計画を立てるが, がん化学療法を治療計画に含める場合は以下の場合である. 切除可能であるが, 何らかの理由で手術を行わない場合. これには, 導入として行う場合と放射線療法との併用で化学療法を施行する場合がある.

More information

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 ) varicella-zoster virus, viral antibody IgG 連絡先 : 3764 基本情報 5F193 水痘. 帯状ヘルペスウイルス分析物 JLAC10 診療報酬 識別 1431 ウイルス抗体 IgG 材料 023 血清 測定法 結果識別 第 2 章 特掲診療料 D012 38 グロブリンクラス別ウイルス抗体価 (1 項目当たり ) 第 3 部 検査 D012 381 ヘルペスウイルス

More information

一般名 : オファツムマブ ( 遺伝子組換え ) 製剤 はじめに ( 適正使用に関するお願い )4 治療スケジュール6 投与に際しての注意事項 7 7 8 8 9 1 1 11 12 13 14 15 重大な副作用とその対策 18 18 28 32 34 36 4 42 44 45 参考資料 5 付録 55 55 55 64 3 1 はじめに4 はじめ 5 に1 2 治療スケジュール6 対象患者の選択インフォームドコンセント投与準備

More information

実践!輸血ポケットマニュアル

実践!輸血ポケットマニュアル Ⅰ. 輸血療法概論 1. 輸血療法について 1 輸血療法について (1) 輸血療法の基本的な考え方輸血療法は, 他人 ( 同種血製剤 ) あるいは自分 ( 自己血製剤 ) の血液成分 ( 血球, 血漿 ) の補充を基本とする細胞治療である. 血漿製剤を除く同種血製剤であれば, 他人の生きた細胞 ( 血球 ) を使って, 患者に不足している機能を補う治療法といえる. 輸血療法は補充療法であり, 血液の成分ごとに補う成分輸血が現代の輸血療法である.

More information

緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾 2 緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾向が強い 多剤耐性緑膿菌は5類感染症定点把握疾患 赤痢菌属 グラム陰性通性嫌気性桿菌 腸内細菌科

More information

B型肝炎ウイルスのキャリアで免疫抑制・化学療法を受ける患者さんへ

B型肝炎ウイルスのキャリアで免疫抑制・化学療法を受ける患者さんへ B 型肝炎ウイルスの既往感染例で免疫抑制 化学療法を受ける患者さんへ - 厚生労働省研究班の調査への協力のお願い - 1. B 型肝炎ウイルスの 既往感染例 とは B 型肝炎ウイルス (HBV) は血液や体液を介してヒトに感染するウイルスで, 肝炎, 肝硬変, 肝癌などの病気の原因になります 感染したウイルスは肝臓の細胞に入り込み, その遺伝子がヒトの遺伝子に組み込まれてしまいます このため, ウイルスが一旦感染すると肝臓に居続けることになり,

More information

untitled

untitled 120mg 400mg 患者向医薬品ガイド 2017 年 12 月作成 この薬は? 販売名 一般名 含有量 (1 バイアル中 ) 120mg Benlysta for I.V.infusion 120mg 400mg Benlysta for I.V.infusion 400mg ベリムマブ ( 遺伝子組換え ) Belimumab (Genetical Recombination) 120mg 400mg

More information

公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研

公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 11 月 27 日付で平成 28 年度 成育疾患克服等総合研究事業

More information

遡及調査にて77日前の献血時のHBVウイルス血症が確認できた急性B型肝炎の一例

遡及調査にて77日前の献血時のHBVウイルス血症が確認できた急性B型肝炎の一例 輸血後 HBV 感染事例とその対策 香川県赤十字血液センター 所長本田豊彦 2013 年 9 月 30 日 輸血後肝炎発症率 肝炎ウイルスと感染経路 1) 経口感染 HAV と HEV で 急性肝炎を起こし 慢性化はしない 2) 血液 体液による感染 HBV と HCV で 慢性肝炎 肝硬変 肝癌の原因となる 輸血による HBV 感染経路 1 急性 B 型肝炎のウインドウ期の献血者か らの感染 2

More information

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者 217 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 で 前年から 29 増加した HIV 感染者は前年から 3 AIDS 患者は前年から 26 増加した 図 -1 2 HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた報告数の概要として 主に以下のことが挙げられる 図 -2 3 4 外国籍男性は前年から 11

More information

り感染し 麻薬注射や刺青なども原因になります 輸血の安全性や医療環境の改善によって 医原性の感染は例外的な場合になりました 日本では約 100 万人の B 型肝炎ウイルスキャリアがいます その大部分は成人で, 昔の母子感染を含む小児期の感染に由来します 1986 年から B 型肝炎ウイルスキャリアの

り感染し 麻薬注射や刺青なども原因になります 輸血の安全性や医療環境の改善によって 医原性の感染は例外的な場合になりました 日本では約 100 万人の B 型肝炎ウイルスキャリアがいます その大部分は成人で, 昔の母子感染を含む小児期の感染に由来します 1986 年から B 型肝炎ウイルスキャリアの 2014 年 6 月 25 日放送 今後定期接種化が期待されるワクチン ~B 型肝炎ワクチン 筑波大学 小児科教授 須磨崎 亮 今日は定期接種化が期待されるワクチンとして B 型肝炎ワクチンを取り上げてお話 しさせて頂きます B 型肝炎とは B 型肝炎ウイルス感染すると いろいろな肝臓病が起こります B 型肝炎ウイルス感染 具体的には HBs 抗原陽性が 6 か月以上続くと 持続感染者またはキャリアと呼ばれ

More information

蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告 2016 年 8 月 3 日放送 ジカウイルス感染症 国立国際医療研究センター国際感染症センター忽那賢志ジカ熱とはジカ熱とは フラビウイルス科フラビウイルス属のジカウイルスによって起こる蚊媒介感染症です ジカウイルス感染症 ジカ熱 ジカウイルス病など さまざまな呼び方があります ジカ熱を媒介する蚊は 主にネッタイシマカとヒトスジシマカです ジカ熱は近年 急速に流行地域を拡大しており 2013 年のフランス領ポリネシア

More information

は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性 2012 年 9 月 5 放送 慢性気道感染症の管理 マクロライドを中心に 大分大学総合内科学第二教授門田淳一今回は 慢性気道感染症の管理について マクロライド系抗菌薬の有用性を中心にお話しいたします 慢性気道感染症の病態最初に慢性気道感染症の病態についてお話ししたいと思います 気道は上気道と下気道に分けられます 上気道とは解剖学的に鼻前庭に始まり 鼻腔 咽頭 喉頭を経て気管までの空気の通り道を指し

More information

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ 2012 年 12 月 5 日放送 尿路感染症 産業医科大学泌尿器科学教授松本哲朗はじめに感染症の分野では 抗菌薬に対する耐性菌の話題が大きな問題点であり 耐性菌を増やさないための感染制御と適正な抗菌薬の使用が必要です 抗菌薬は 使用すれば必ず耐性菌が出現し 増加していきます 新規抗菌薬の開発と耐性菌の増加は 永遠に続く いたちごっこ でしょう しかし 近年 抗菌薬の開発は世界的に鈍化していますので

More information

始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効

始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効 2016 年 11 月 30 日放送 B 型肝炎ワクチン定期接種化後の課題 筑波大学小児科教授須磨崎亮はじめに B 型肝炎ワクチン定期接種化後の課題 というテーマで解説いたします 本日は まず 定期接種の概要を確認し 次に日常診療で重要な 定期接種をスムーズに進めるためのポイント 母子感染予防との違い 任意接種の進め方について この順にお話しいたします 最後に長期的な課題 展望についても触れさせて頂きます

More information

<4D F736F F D2082A8926D82E782B995B68F E834E838D838A E3132>

<4D F736F F D2082A8926D82E782B995B68F E834E838D838A E3132> 医薬品の適正使用に欠かせない情報です 必ずお読み下さい 効能 効果 用法 用量 使用上の注意 改訂のお知らせ 2013 年 12 月 東和薬品株式会社 このたび 平成 25 年 8 月に承認事項一部変更承認申請をしていました弊社上記製品の 効能 効果 用法 用量 追加が平成 25 年 11 月 29 日付にて 下記の内容で承認されました また 使用上の注意 を改訂致しましたので 併せてお知らせ申し上げます

More information

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会 第 3 章保健指導対象者の選定と階層化 (1) 保健指導対象者の選定と階層化の基準 1) 基本的考え方生活習慣病の予防を期待できる内臓脂肪症候群 ( メタボリックシンドローム ) の選定及び階層化や 生活習慣病の有病者 予備群を適切に減少させることができたかを的確に評価するために 保健指導対象者の選定及び階層化の標準的な数値基準が必要となる 2) 具体的な選定 階層化の基準 1 内臓脂肪型肥満を伴う場合の選定内臓脂肪蓄積の程度を判定するため

More information

横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢

横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢 横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年第 46 週 ~ 第 50 週 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 週別届出状況 該当なし 平成 30 年 12 月 19 日現在 三類感染症週別届出状況 46 週 47 週 48 週 49 週 50 週累計 細菌性赤痢 1 5 1 1 3 1 125 腸チフス 1 計 1 1 3 2 0 131 四類感染症週別届出状況

More information

2)HBV の予防 (1)HBV ワクチンプログラム HBV のワクチンの接種歴がなく抗体価が低い職員は アレルギー等の接種するうえでの問題がない場合は HB ワクチンを接種することが推奨される HB ワクチンは 1 クールで 3 回 ( 初回 1 か月後 6 か月後 ) 接種する必要があり 病院の

2)HBV の予防 (1)HBV ワクチンプログラム HBV のワクチンの接種歴がなく抗体価が低い職員は アレルギー等の接種するうえでの問題がない場合は HB ワクチンを接種することが推奨される HB ワクチンは 1 クールで 3 回 ( 初回 1 か月後 6 か月後 ) 接種する必要があり 病院の Ⅵ. 職業感染対策 1. 針刺し 切創 粘膜曝露 1) 針刺し 切創 粘膜曝露対策および事例発生時の対応 職業感染を防止するためには 針刺し 切創 粘膜曝露を起こさないことが重要ではあ るが もし針刺し 切創 粘膜曝露が発生した場合は 迅速に対処することが必要となる 針刺し 切創 粘膜曝露事例発生時はフローチャートに従い行動する 表 1 感染症別の針刺しによる感染率 問題となるウイルス 感染率 備考

More information

5_使用上の注意(37薬効)Web作業用.indd

5_使用上の注意(37薬効)Web作業用.indd 34 ビタミン主薬製剤 1 ビタミン A 主薬製剤 使用上の注意と記載条件 1. 次の人は服用前に医師又は薬剤師に相談することあ医師の治療を受けている人 い妊娠 3 ヵ月以内の妊婦, 妊娠していると思われる人又は妊娠を希望する人 ( 妊娠 3 ヵ月前から妊娠 3 ヵ月までの間にビタミン A を 1 日 10,000 国際単位以上摂取した妊婦から生まれた児に先天異常の割合が上昇したとの報告がある )

More information

2012 年 1 月 25 日放送 歯性感染症における経口抗菌薬療法 東海大学外科学系口腔外科教授金子明寛 今回は歯性感染症における経口抗菌薬療法と題し歯性感染症からの分離菌および薬 剤感受性を元に歯性感染症の第一選択薬についてお話し致します 抗菌化学療法のポイント歯性感染症原因菌は嫌気性菌および好

2012 年 1 月 25 日放送 歯性感染症における経口抗菌薬療法 東海大学外科学系口腔外科教授金子明寛 今回は歯性感染症における経口抗菌薬療法と題し歯性感染症からの分離菌および薬 剤感受性を元に歯性感染症の第一選択薬についてお話し致します 抗菌化学療法のポイント歯性感染症原因菌は嫌気性菌および好 2012 年 1 月 25 日放送 歯性感染症における経口抗菌薬療法 東海大学外科学系口腔外科教授金子明寛 今回は歯性感染症における経口抗菌薬療法と題し歯性感染症からの分離菌および薬 剤感受性を元に歯性感染症の第一選択薬についてお話し致します 抗菌化学療法のポイント歯性感染症原因菌は嫌気性菌および好気性菌の複数菌感染症です 嫌気性菌の占める割合が 高くおよそ 2:1 の頻度で検出されます 嫌気性菌では

More information

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性 2019 年 5 月 1 日放送 Clostridioides (Clostridium) difficile 感染症診療カ イト ラインのホ イント 愛知医科大学大学院臨床感染症学教授三鴨廣繁はじめに Clostridioides difficile は医療関連感染としての原因菌として最も多くみられる嫌気性菌であり 下痢症や偽膜性腸炎などの多様な C. difficile infection(cdi)

More information

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを がんの診療に関連した専門外来の問い合わせ窓口 記載の有無 あり とするとデータ抽出の対象となります 記載する内容がない場合は なし としてください なし の場合は以下について記入の必要はありません 病院名 : 公立大学法人横浜市立大学附属病院 平成 9 年 9 月 1 日現在 あり がん診療に関連した専門外来の の項目は 以下の表の疾患名を用いて記載してください 表の中に 該当する病名がない場合は

More information

1)~ 2) 3) 近位筋脱力 CK(CPK) 高値 炎症を伴わない筋線維の壊死 抗 HMG-CoA 還元酵素 (HMGCR) 抗体陽性等を特徴とする免疫性壊死性ミオパチーがあらわれ 投与中止後も持続する例が報告されているので 患者の状態を十分に観察すること なお 免疫抑制剤投与により改善がみられた

1)~ 2) 3) 近位筋脱力 CK(CPK) 高値 炎症を伴わない筋線維の壊死 抗 HMG-CoA 還元酵素 (HMGCR) 抗体陽性等を特徴とする免疫性壊死性ミオパチーがあらわれ 投与中止後も持続する例が報告されているので 患者の状態を十分に観察すること なお 免疫抑制剤投与により改善がみられた 適正使用に欠かせない情報です 必ずお読みください 使用上の注意 改訂のお知らせ 注 1) 処方箋医薬品 ATORVASTATIN TABLETS AMALUET COMBINATION TABLETS 注 1) 処方箋医薬品 PRAVASTATIN SODIUM TABLETS 注 1) 注意 - 医師等の処方箋により使用すること PITAVASTATIN CALCIUM TABLETS 2016

More information

第 88 回日本感染症学会学術講演会第 62 回日本化学療法学会総会合同学会採択演題一覧 ( 一般演題ポスター ) 登録番号 発表形式 セッション名 日にち 時間 部屋名 NO. 発表順 一般演題 ( ポスター ) 尿路 骨盤 性器感染症 1 6 月 18 日 14:10-14:50 ア

第 88 回日本感染症学会学術講演会第 62 回日本化学療法学会総会合同学会採択演題一覧 ( 一般演題ポスター ) 登録番号 発表形式 セッション名 日にち 時間 部屋名 NO. 発表順 一般演題 ( ポスター ) 尿路 骨盤 性器感染症 1 6 月 18 日 14:10-14:50 ア 登録番号 発表形式 セッション名 日にち 時間 部屋名 NO. 発表順 10431 一般演題 ( ポスター ) 尿路 骨盤 性器感染症 1 6 月 18 日 14:10-14:50 アルゴスC-D P-01 1 10473 一般演題 ( ポスター ) 尿路 骨盤 性器感染症 1 6 月 18 日 14:10-14:50 アルゴスC-D P-01 2 10347 一般演題 ( ポスター ) 尿路 骨盤

More information

2012 年 11 月 21 日放送 変貌する侵襲性溶血性レンサ球菌感染症 北里大学北里生命科学研究所特任教授生方公子はじめに b 溶血性レンサ球菌は 咽頭 / 扁桃炎や膿痂疹などの局所感染症から 髄膜炎や劇症型感染症などの全身性感染症まで 幅広い感染症を引き起こす細菌です わが国では 急速な少子

2012 年 11 月 21 日放送 変貌する侵襲性溶血性レンサ球菌感染症 北里大学北里生命科学研究所特任教授生方公子はじめに b 溶血性レンサ球菌は 咽頭 / 扁桃炎や膿痂疹などの局所感染症から 髄膜炎や劇症型感染症などの全身性感染症まで 幅広い感染症を引き起こす細菌です わが国では 急速な少子 2012 年 11 月 21 日放送 変貌する侵襲性溶血性レンサ球菌感染症 北里大学北里生命科学研究所特任教授生方公子はじめに b 溶血性レンサ球菌は 咽頭 / 扁桃炎や膿痂疹などの局所感染症から 髄膜炎や劇症型感染症などの全身性感染症まで 幅広い感染症を引き起こす細菌です わが国では 急速な少子 高齢化社会を迎えていますが 基礎疾患を有する人々の増加とともに これらの菌による市中での侵襲性感染症が再び増加しており

More information

ROCKY NOTE 食物アレルギー ( ) 症例目を追加記載 食物アレルギー関連の 2 例をもとに考察 1 例目 30 代男性 アレルギーについて調べてほしいというこ

ROCKY NOTE   食物アレルギー ( ) 症例目を追加記載 食物アレルギー関連の 2 例をもとに考察 1 例目 30 代男性 アレルギーについて調べてほしいというこ 食物アレルギー (100909 101214) 101214 2 症例目を追加記載 食物アレルギー関連の 2 例をもとに考察 1 例目 30 代男性 アレルギーについて調べてほしいということで来院 ( 患者 ) エビやカニを食べると唇が腫れるんです 多分アレルギーだと思うんですが 検査は出来ますか? ( 私 ) 検査は出来ますが おそらく検査をするまでも無く アレルギーだと思いますよ ( 患者 )

More information

平成 24 年 ₇ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 555 号付録 ) 免疫血清部門 尿一般部門 病理部門 細胞診部門 血液一般部門 生化学部門 先天性代謝異常部門 細菌部門 B 型肝炎に関する最近の話題 ~ 免疫抑制によるB 型肝炎ウイルスの再活性化 を中心に~ 検査 1 科血清係 1

平成 24 年 ₇ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 555 号付録 ) 免疫血清部門 尿一般部門 病理部門 細胞診部門 血液一般部門 生化学部門 先天性代謝異常部門 細菌部門 B 型肝炎に関する最近の話題 ~ 免疫抑制によるB 型肝炎ウイルスの再活性化 を中心に~ 検査 1 科血清係 1 免疫血清部門 尿一般部門 病理部門 細胞診部門 血液一般部門 生化学部門 先天性代謝異常部門 細菌部門 B 型肝炎に関する最近の話題 ~ 免疫抑制によるB 型肝炎ウイルスの再活性化 を中心に~ 検査 1 科血清係 1. はじめに B 型肝炎ウイルス ( 以下 HBV) の感染経路は 母子感染を主とする垂直感染と 性交渉や針刺し事故を主とする水平感染とに大別されます 垂直感染の場合は 免疫寛容時に HBV

More information

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類 未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類 ( 該当するものにチェックする ) 効能 効果 ( 要望された効能 効果について記載する ) ( 要望されたについて記載する

More information

3 スライディングスケール法とアルゴリズム法 ( 皮下注射 ) 3-1. はじめに 入院患者の血糖コントロール手順 ( 図 3 1) 入院患者の血糖コントロール手順 DST ラウンドへの依頼 : 各病棟にある AsamaDST ラウンドマニュアルを参照 入院時に高血糖を示す患者に対して 従来はスライ

3 スライディングスケール法とアルゴリズム法 ( 皮下注射 ) 3-1. はじめに 入院患者の血糖コントロール手順 ( 図 3 1) 入院患者の血糖コントロール手順 DST ラウンドへの依頼 : 各病棟にある AsamaDST ラウンドマニュアルを参照 入院時に高血糖を示す患者に対して 従来はスライ 3 スライディングスケール法とアルゴリズム法 ( 皮下注射 ) 3-1. はじめに 入院患者の血糖コントロール手順 ( 図 3 1) 入院患者の血糖コントロール手順 DST ラウンドへの依頼 : 各病棟にある AsamaDST ラウンドマニュアルを参照 入院時に高血糖を示す患者に対して 従来はスライディングスケール法 ( 図 2 2) が多用されてきた スライディングスケール法は簡便で ある程度の血糖コントロールは可能である

More information

, , & 18

, , & 18 HCV と C 型肝炎 1970 142002 200234,637200334,089 5060 1991 142002 1612& 18 1 5 Q1 肝臓は どのような働きをしているのですか? Q2 C 型肝炎とはどのようなものですか? 70 Q3 C 型肝炎ウイルスはどのようにして感染しますか? Q4 C 型肝炎ウイルスは輸血 ( 血漿分画製剤を含む ) で感染しますか? 198911

More information

診療情報を利用した臨床研究について 虎の門病院肝臓内科では 以下の臨床研究を実施しております この研究は 通常の診療で得られた記録をまとめるものです この案内をお読みになり ご自身がこの研究の対象者にあたると思われる方の中で ご質問がある場合 またはこの研究に 自分の診療情報を使ってほしくない とお

診療情報を利用した臨床研究について 虎の門病院肝臓内科では 以下の臨床研究を実施しております この研究は 通常の診療で得られた記録をまとめるものです この案内をお読みになり ご自身がこの研究の対象者にあたると思われる方の中で ご質問がある場合 またはこの研究に 自分の診療情報を使ってほしくない とお 診療情報を利用した臨床研究について 虎の門病院肝臓内科では 以下の臨床研究を実施しております この研究は 通常の診療で得られた記録をまとめるものです この案内をお読みになり ご自身がこの研究の対象者にあたると思われる方の中で ご質問がある場合 またはこの研究に 自分の診療情報を使ってほしくない とお思いになりましたら 遠慮なく下記の相談窓口までご連絡ください 対象となる方 1982 年 9 月 2016

More information

2012 年 2 月 29 日放送 CLSI ブレイクポイント改訂の方向性 東邦大学微生物 感染症学講師石井良和はじめに薬剤感受性試験成績を基に誰でも適切な抗菌薬を選択できるように考案されたのがブレイクポイントです 様々な国の機関がブレイクポイントを提唱しています この中でも 日本化学療法学会やアメ

2012 年 2 月 29 日放送 CLSI ブレイクポイント改訂の方向性 東邦大学微生物 感染症学講師石井良和はじめに薬剤感受性試験成績を基に誰でも適切な抗菌薬を選択できるように考案されたのがブレイクポイントです 様々な国の機関がブレイクポイントを提唱しています この中でも 日本化学療法学会やアメ 2012 年 2 月 29 日放送 CLSI ブレイクポイント改訂の方向性 東邦大学微生物 感染症学講師石井良和はじめに薬剤感受性試験成績を基に誰でも適切な抗菌薬を選択できるように考案されたのがブレイクポイントです 様々な国の機関がブレイクポイントを提唱しています この中でも 日本化学療法学会やアメリカ臨床検査標準委員会 :Clinical and Laboratory Standards Institute

More information

h29c04

h29c04 総数 第 1 位第 2 位第 3 位第 4 位第 5 位 総数 悪性新生物 25,916 心疾患 14,133 肺炎 7,239 脳血管疾患 5,782 老衰 4,483 ( 29.8) ( 16.2) ( 8.3) ( 6.6) ( 5.1) PAGE - 1 0 歳 先天奇形 変形及び染色体異 38 胎児及び新生児の出血性障害 10 周産期に特異的な呼吸障害及 9 不慮の事故 9 妊娠期間及び胎児発育に関連

More information

Microsoft Word - C型肝炎病診連携パス施設用冊子( _.doc

Microsoft Word - C型肝炎病診連携パス施設用冊子( _.doc 東播地区肝炎病診連携パス C 型慢性肝炎インターフェロン療法 東播地区肝炎病診連携の会 Vol.2 目次 東播地区肝炎病診連携パス (C 型慢性肝炎インターフェロン療法 ) 1) 病診連携パス (C 型慢性肝炎インターフェロン療法 ) の意義 2) 病診連携パス (C 型慢性肝炎インターフェロン療法 ) の運用方法 3)C 型慢性肝炎治療の診断と専門施設への紹介基準 C 型慢性肝炎治療について 1)C

More information

, , & 18

, , & 18 HBV と B 型肝炎 1970 142002 200234,637200334,089 5060 1991 142002 1612& 18 1 5 Q1 肝臓は どのような働きをしているのですか? Q2 B 型肝炎とはどのようなものですか? Q3 B 型肝炎ウイルスはどのようにして感染しますか? 34 Q4 B 型肝炎ウイルスは輸血 ( 血漿分画製剤を含む ) で感染しますか? 11199910:

More information

学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot

学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot 学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of other disea s e a f f e c t e d b y cellular immune depression.

More information

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M 図 1 調査前年 1 年間の ART 実施周期数別施設数 図 4 ART 治療周期数別自己注射の導入施設数と導入率 図 2 自己注射の導入施設数と導入率 図 5 施設の自己注射の使用目的 図 3 導入していない理由 図 6 製剤種類別自己注射の導入施設数と施設率 図 7 リコンビナント FSH を自己注射された症例の治療成績は, 通院による注射症例と比較し, 差があるか 図 10 リコンビナント FSH

More information

肝疾患のみかた

肝疾患のみかた 肝疾患の診断 肝臓 胆のう 膵臓内科 眞柴寿枝 症例 1 症例 50 歳代男性 主訴 なし ( 肝障害精査目的 ) 既往歴 特記事項なし 家族歴 父 : 糖尿病 現病歴 生来健康 感冒様症状が出現したため近医を受診した このとき施行された血液検査にて肝胆道系酵素の上昇があり 精査 加療目的に当科紹介となった WBC RBC Hb Ht PLT Seg Eo Lymph At-ly 6950 385

More information

2017 年 9 月 画像診断部 中央放射線科 造影剤投与マニュアル ver 2.0 本マニュアルは ESUR 造影剤ガイドライン version 9.0(ESUR: 欧州泌尿生殖器放射線学会 ) などを参照し 前マニュアルを改訂して作成した ( 前マニュアル作成 2014 年 3 月 今回の改訂

2017 年 9 月 画像診断部 中央放射線科 造影剤投与マニュアル ver 2.0 本マニュアルは ESUR 造影剤ガイドライン version 9.0(ESUR: 欧州泌尿生殖器放射線学会 ) などを参照し 前マニュアルを改訂して作成した ( 前マニュアル作成 2014 年 3 月 今回の改訂 2017 年 9 月 画像診断部 中央放射線科 造影剤投与マニュアル ver 2.0 本マニュアルは ESUR 造影剤ガイドライン version 9.0(ESUR: 欧州泌尿生殖器放射線学会 ) などを参照し 前マニュアルを改訂して作成した ( 前マニュアル作成 2014 年 3 月 今回の改訂 2017 年 8 月 ) 新たなエビデンスの報告や運用上困難な場合は適宜変更を加える 1. 造影剤アレルギーの既往を有する患者への対応

More information

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 P EDTA-2Na( 薄紫 ) 血液 7 ml RNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60 氷 MINテイリョウ. 採取容器について 0

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 P EDTA-2Na( 薄紫 ) 血液 7 ml RNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60 氷 MINテイリョウ. 採取容器について 0 0868010 8. その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査 >> minor bcr-abl, mrna quantitative 連絡先 : 3664 基本情報 8C127 minor bcr-abl 分析物 JLAC10 診療報酬 識別 9962 mrna 定量 材料 019 全血 ( 添加物入り ) 測定法 875 リアルタイムRT-PCR 法 結果識別 第 2 章 特掲診療料 D006-2

More information

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル 60 秒でわかるプレスリリース 2007 年 12 月 17 日 独立行政法人理化学研究所 免疫の要 NF-κB の活性化シグナルを増幅する機構を発見 - リン酸化酵素 IKK が正のフィーッドバックを担当 - 身体に病原菌などの異物 ( 抗原 ) が侵入すると 誰にでも備わっている免疫システムが働いて 異物を認識し 排除するために さまざまな反応を起こします その一つに 免疫細胞である B 細胞が

More information