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1 標準的神経治療 : 不眠 過眠と概日リズム障害

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3 緒 言 日本神経治療学会の治療指針作成委員会が編集する 標準的神経治療 シリーズの一つである 不眠 過眠と概日リズム障害 がここに完成した. 多くの人間にとって人生の1/3は睡眠に費やされるし, それは生きてゆく上で必要なものであることは明白である. 最も睡眠時間が短い国といってよい日本においては当然のことかもしれないが, まさに今問題となっているのが神経疾患の一つが 不眠 過眠と概日リズム障害 である. 不眠を訴える患者は人口の5 人に1 人, 不眠 過眠による生産効率の低下と事故, 概日リズム障害による不登校やうつ病の発症など, 現代社会に与える影響ははかりしれない. 第一線のプライマリケアでもこれを見過ごすわけにはいかないのである. 神経内科や精神科の専門医が多くなった現在でも 不眠 過眠と概日リズム障害 の患者が最初に受診するのは, 脳疾患を専門としない一般医家である場合も少なくない. 不眠 過眠と概日リズム障害 の患者が来た時には, いわゆる不眠について問診と診察を先ず行う. それらを的確, かつ迅速に処理するには, 永年の経験に裏付けられた知識とコツがものを言ってくる. また, 不眠に対して対症的な薬をただ漫然と使うのではなく, 使い方のコツを心得ておくことは日常診療に大切なことである. 本指針では, 最初に睡眠学会前理事長のお立場から清水徹男先生に 不眠症の概念 についてまとめてもらった. 続いて, 内山真先生に 不眠症の疫学とメカニスム, 宮本雅之 宮本智之先生に 中枢性過眠症 (Narcolepsy 特発性過眠症, 症候性過眠症含む ) について, また, 脳血管障害と睡眠異常 については竹川英宏先生に, 変性疾患と睡眠 については1 認知症と不眠を野村哲志先生に,2 多系統萎縮症と睡眠異常を下畑亨良先生にお願いした. 最後に 治療 について,1 薬物治療は稲田健先生に,2 非薬物療法 ( とくにCBT I) は岡島義先生にお願いした. このように, それぞれ神経内科, 精神科のなかでとくに睡眠を専門とする 第一人者に不眠 過眠と概日リズム障害をまとめていただいたので, 本疾患を多面的な視点で理解するのに役立つ指針になったと自負している. 本指針 不眠 過眠と概日リズム障害 により, 本疾患の診療に役立つ実践的な知識が整理され, これが臨床医の一助となって不眠に悩まれているたくさんの患者さんのために役立つことを期待して序にかえたい 年 5 月 平田 幸一 575

4 執筆担当者一覧 緒言平田幸一 ( 獨協医科大学神経内科 ) I 不眠症の概念 DSM5 時代の不眠症 清水徹男 ( 秋田大学精神科 ) II 不眠症の疫学とメカニズム 降籏隆二 ( 日本大学医学部精神医学系 ) 内山真 ( 同上 ) III 中枢性過眠症 ( ナルコレプシー, 特発性過眠症, 症候性過眠症を含む ) 宮本雅之 ( 獨協医科大学看護学部看護医科学 ( 病態治療 ), 獨協医科大学病院睡眠医療センター ) 宮本智之 ( 獨協医科大学越谷病院神経内科 ) IV 脳血管障害と睡眠異常竹川英宏 ( 獨協医科大学神経内科 ) 鈴木圭輔 ( 同上 ) 平田幸一 ( 同上 ) V 変性疾患と睡眠 V 1 認知症と不眠野村哲志 ( 鳥取大学脳神経内科 ) 中島健二 ( 国立病院機構松江医療センター ) V 2 多系統委縮症と睡眠異常下畑享良 ( 新潟大学脳研究所神経内科 ) 西澤正豊 ( 同上 ) VI 治療 VI 1 薬物療法稲田健 ( 東京女子医科大学精神科 ) 石郷岡純 ( 同上 ) VI 2 非薬物療法岡島義 ( 早稲田大学人間科学学術院 ) 井上雄一 ( 公益財団法人神経研究所, 東京医科大学睡眠学講座, 睡眠総合ケアクリニック代々木 ) 576

5 標準的神経治療 : 不眠 過眠と概日リズム障害 目次 I 不眠症の概念 DSM5 時代の不眠症はじめに 1 原発性不眠から不眠障害へ 2 DSM5の不眠障害 3 慢性不眠を治療することの意義おわりに II 不眠症の疫学とメカニズムはじめに 1 不眠の疫学 1) 不眠の有病率 2) 疫学調査でみられる不眠の特徴および合併症 2 不眠のメカニズム 1) ストレスモデル (Spielmanの3Pモデル) 2) 過覚醒 3) 学習理論モデル 4) 認知情報処理モデル III 中枢性過眠症 ( ナルコレプシー, 特発性過眠症, 症候性過眠症を含む ) はじめに 1 ナルコレプシー 2 特発性過眠症 3 クライネ レビン (Kleine Levin) 症候群 4 症候性過眠症 5 Parkinson 病に続発する過眠症 6 筋強直性ジストロフィーに続発する過眠症おわりに IV 脳血管障害と睡眠異常はじめに 1 閉塞性睡眠時無呼吸の症状と診断 2 閉塞性睡眠時無呼吸と脳血管障害リスク因子の関連 3 独立した脳血管障害発症リスクである閉塞性睡眠時無呼吸 4 中枢性睡眠時無呼吸と脳卒中 5 不眠, 睡眠時間と脳血管障害との関係 6 概日リズム障害と脳血管障害 7 覚醒の障害 過眠 8 レストレスレッグス症候群 / 周期性四肢運動 9 睡眠障害の治療 V 変性疾患と睡眠 V 1 認知症と不眠はじめに 1 高齢者の不眠 1) 高齢者不眠の特徴 VI 2) 高齢者の不眠に対する治療 2 認知症の不眠 3 ADの不眠 4 VaDの不眠 5 DLBの不眠 6 前頭側頭型認知症 (FTD) の不眠おわりに V 2 多系統委縮症と睡眠異常はじめに 1 睡眠障害の特徴 1) 睡眠構造の変化 2) RBD 3) RLS 4) 睡眠時周期性四肢運動症 (periodic leg movements in sleep;plms) 5) SDB 6) EDS 2 睡眠と突然死 1) SDB, 喀痰, 食物による窒息 2) 中枢性呼吸調節障害 3) Floppy epiglottis(fe) 4) 心臓自律神経障害 5) 突然死防止を目指した治療アルゴリズム治療 VI 1 薬物療法はじめに 1 不眠症の治療 1) 不眠症治療薬の分類と概要 2) BZ 系薬および非 BZ 系薬の選択方法 3) 睡眠薬を処方する際のポイント 4) 休薬トライアル 2 過眠症の治療 1) ナルコレプシー a 中枢神経刺激薬 b レム睡眠抑制薬 2) 特発性過眠症 3 概日リズム障害の治療 VI 2 非薬物療法はじめに 1 不眠の非薬物療法の重要性 2 不眠に対する認知行動療法の効果 3 睡眠薬減量効果 4 併存不眠症へのCBT Iの適用 5 他の睡眠障害への効果 577

6 I 不眠症の概念 DSM5 時代の不眠症はじめに不眠症に対する有効な治療法として認知行動療法 (cognitive behavioral therapy for insomnia:cbt I) がある.CBT I は, 本来は不眠症, 即ち, 基礎疾患や病態を持たない慢性不眠に対する治療法である. ところが,CBT Iが様々な心身の疾患による不眠( 続発性ないし二次性不眠 ) に対しても有効であることが明らかになった結果, 不眠を原発性と続発性 ( 二次性 ) を区別することに疑問が投げかけられるようになった.2014 年に改訂となった米国精神医学会による精神疾患の診断 統計マニュアルDSM 5ではDSM IVTR まで使われていた原発性不眠 (primary insomnia) という用語を廃し, 不眠障害 (insomnia disorder) という新たな診断カテゴリーを設けた.DSM 5では慢性不眠はひとつのものであり, 独立して他のすべての心身の疾患に併存しうるという立場が明確に打ち出されたのである. 以下にその様なパラダイムシフトが生じた経緯を紹介し, DSM5における不眠障害の診断基準について解説する. 1. 原発性不眠から不眠障害へ DSM IVTR の原発性不眠 (primary insomnia),icd 10 の非器質性不眠 (non organic insomnia) は基礎疾患や病態を持たない慢性不眠であり, 日常語の不眠症に相当する病名である. 以下, それを不眠症と呼ぶことにする. Spielmanによると, 慢性不眠の成り立ちの背後には, 慢性不眠症の 3P という3つの因子がある. 3P とは,predisposing factor( 準備因子 ),precipitating factor( 結実因子 ),perpetuating factor( 永続化因子 ) の3つのPで始まる因子のことである 1). 不眠症の患者は, 元々, 不眠を来しやすい素質を持っている. 些細な出来事や, 環境の影響で眠りが悪くなりやすい素質の持ち主であることが多い. この素質が準備因子に相当する. 一時的なストレス, 例えばけがや病気による短期間の入院, 受験勉強, 手形が落ちるかどうかを心配する などの経済的問題などの出来事に曝されると, 普通の人でも睡眠が妨げられやすいのだが, 上述の準備因子の持ち主がストレスに曝された場合には一層に明らかな不眠が出現する. この不眠の契機となる出来事が不眠症の 結実因子 に相当するものである. 従来は二次性不眠の原因に相当する5つのP, すなわちPhysiological factor( 生理学的要因 : 環境, 時差, 交代勤務など ),Physical factor( 身体的要因 : 疼痛, かゆみ, 咳, 頻尿など ),Pharmacological( 薬理学的要因 : 薬剤, アルコールなど ),Psychological( 心理学的要因 : ストレスなど ),Psychiatric( 精神医学的要因 : うつ病, 不安性障害など ) を重視してきたが 2), 不眠症の3Pの理論に従えば5Pはprecipitating factor( 結実因子 ) に過ぎない. 普通であれば, ストレスの消失とともに不眠も改善する. しかし, 不眠症の患者の場合にはストレスと不眠が持続している間に, 後述する 永続化因子 :perpetuating factor が働いて, ストレスが去った後にも不眠が遷延化することになる. 不眠の遷延化をもたらす原因, すなわち, 永続化因子 は, 身体化された緊張 と, 学習された睡眠妨害的連想 という二つの要因の相互強化の結果であると考えられている. ところで, 不眠症の治療として 不眠症治療のためのCBT I 3) が注目を集めている.CBT Iは前述した慢性不眠症の永続因子, す なわち, 身体化された緊張 と, 学習された睡眠妨害的連想 という二つの要因の相互強化を解消して睡眠を改善させることを目指す.Koffelらは,CBT Iの原発性不眠に対する有効性に関する8 本の RCTに基づいてメタ解析を行い,CBT Iは原発性不眠において入眠潜時の短縮, 睡眠効率の改善, 中途覚醒時間の短縮をもたらすことを示した 4). また, そのeffect size も medium からlarge と, 極めて大きいものであった. さらに, その効果は治療終結後にも最長 1 年にわたって持続することも確かめられている. 従って,CBT Iは原発性不眠の治療法として強くすすめられるものである (evidence level:1a, 推奨度 A). ところが,CBT I は原発性不眠のみならず身体疾患に伴う不眠 ( 慢性疼痛, 癌など ) や, 精神障害に伴う不眠 ( うつ病の不眠など ), 続発性, あるいは二次性不眠の治療にも有効であることが近年明らかにされてきた. このことは, 慢性不眠は本質的には一つであり, 精神障害や身体疾患など不眠の原因と考えられてきたものはSpiel- manによる慢性不眠の 3P のうちのprecipitating factor( 結実因子 ) に過ぎないことを示唆している. また, 続発性, あるいは二次性不眠の経過を見ると, うつ病の残遺不眠 9) のように, 原疾患の改善によって必ずしも不眠が改善するとは限らないという事実も上述の考えを支持するものである.DSM IVTRでは原発性と二次性ないしは続発性不眠は明瞭に区別されていたが,DSM Vではその境界が取り払われたのである. なお,CBT Iが二次性不眠に有効な治療法であることについてはGeoger Brown らが二次性不眠に対する CBT I の効果を検討したRCTの報告 23 論文 (1397 名の二次性不眠患者が含まれる ) をメタ解析し, 報告している 5). 従って,CBT Iは二次性不眠の治療法としても強くすすめられるものである (evidence level:1a, 推奨度 A). 2. DSM5の不眠障害 Table 1にDSM5に基づく不眠障害の診断基準を示す 6). まず, 当然のことながら不眠症状があることが必須である. しかし, 不眠症状から熟眠障害が除外された点に注意が必要である. その理由は明確には記載されていない. おそらく, 熟眠障害のみが単独で現れることは希であること, 定量化が困難であること, 慢性疲労との境目が不明瞭であることなどがその理由であろうと推測される. 次いで昼間の生活上の支障があることが求められる. 夜に不眠症状があっても, 昼間の生活に支障が無ければ不眠障害ではない, すなわち, 不眠障害は昼間の病気であるという側面が記載されている. これはDSM IVTRの基準を引き継いだものである. 頻度と持続が明示されている点も重要である.DSM IVTRの基準では1ヶ月以上であったものが, 不眠障害では3ヶ月以上に変更された. 持続が 1 3ヶ月のものにはSpielmanの 3P のうち, 結実因子の占める比重が高い者が多く含まれるので, このような基準の変更がなされたのかもしれない. 最後に睡眠をとる機会が十分にあるという前提条件が示されている. 長時間労働に従事する勤労者は慢性的に睡眠不足であるのも関わらず, 貴重な睡眠をとることが出来る時間にはかえって不眠を呈することが多いということが報告されているので 7), この基準は意味深いものであると思われる. 3. 慢性不眠を治療することの意義過去においては心身の疾患に伴う慢性不眠はそれぞれの疾患の症状による二次性不眠であり, その場合には原疾患の治療こそが不眠 578

7 Table 1 DSM 5の不眠障害の診断基準 A. 睡眠の量または質の不満に関する顕著な訴えが, 以下の症状のうち 1つ ( またはそれ以上 ) を伴っている : (1) 入眠困難 ( 子どもの場合, 世話をする人がいないと入眠できないことで明らかになるかもしれない ) (2) 頻回の覚醒, または覚醒後に再入眠できないことによって特徴づけられる, 睡眠維持困難 ( 子どもの場合, 世話をする人がいないと再入眠できないことで明らかになるかもしれない ) (3) 早朝覚醒があり, 再入眠できない. B. その睡眠の障害は, 臨床的に意味のある苦痛, または社会的, 職業的, 教育的, 学業上, 行動上, または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている. C. その睡眠困難は, 少なくとも1 週間に3 夜で起こる. D. その睡眠困難は, 少なくとも3カ月間持続する. E. その睡眠困難は, 睡眠の適切な機会があるにもかかわらず起こる. F. その不眠は, 他の睡眠 覚醒障害 ( 例 : ナルコレプシー, 呼吸関連睡眠障害, 概日リズム睡眠 覚醒障害, 睡眠時随伴症 ) では十分に説明されず, またその経過中にのみ起こるものではない. G. その不眠は, 物質 ( 例 : 乱用薬物, 医薬品 ) の生理学的作用によるものではない. H. 併存する精神疾患および医学的疾患では, 顕著な不眠の訴えを十分に説明できない. 該当すれば特定せよ非睡眠障害性の併存する精神疾患を伴う, 物質使用障害を含む他の医学的併存疾患を伴う他の睡眠障害を伴う 該当すれば特定せよ一時性 : 症状は, 少なくとも1カ月持続するが,3カ月は超えない. 持続性 : 症状は少なくとも3カ月以上持続する. の治療として重要であると考えられていた. 二次性不眠に対する睡眠薬の投与はあくまで対症療法であり, それは現疾患の改善までの一時しのぎであると考えられてきたのである. しかし, 先にも述べたように, 現在では慢性不眠はそれのみで単独で起こることもあれば, 他の心身の疾患に併存することもある独立した疾患であるとの考えが有力である. しかも, 慢性不眠を治療することで併存する心身の疾患の予防や改善がもたらされる可能性が指摘されている. 例えば, 不眠は大うつ病の患者の9 割近くにみられるうつ病の基本症状 ( 大うつ病の診断基準にも含まれる ) なのであるが, 抗うつ剤による治療に加えて睡眠薬 (eszopiclone) 8),CBT I 9) を併用すると不眠が改善するばかりではなく大うつ病の改善が加速されることが示されている. また, うつ病の残遺症状の代表として不眠が高い頻度でみられるが, その不眠をCBT Iを用いて治療すると, 不眠のみではなくうつ病の他の症状も改善することが示されている 10). 残念ながら, 慢性不眠のみが単独でみられる患者を治療することで将来のうつ病発症を予防できるか否かについては目下のところ未解明である. 身体疾患に併存する不眠を治療することは患者の quality of life (QOL) を改善させるために有効であるが, そればかりではなく身体疾患の改善にもつながる可能性がある. 例えば, 高血圧の患者に併存する不眠を治療することで血圧が低下することも十分考えられるのである. 一般的な睡眠薬はGABA A 受容体上にあるベンゾジアゼピン受容体に作用するが, その種の薬物は中枢性の機序によって降圧作用を発揮すること 11) が報告されている. また, 同じくベンゾジアゼピン系の抗不安薬が高血圧の治療に有効であるという報告や, メラトニンが夜間高血圧の治療に有効であるとの報告もある 12, 13). それらの薬物の降圧効果は直接的な薬理作用に加えて不眠の解消によってもたらされている可能性も考えられよう. 同様に, 糖尿病患者に併発する不眠を睡眠薬を用いて治療することでHbA 1C の改善をみたという報告も散見される 14, 15). おわりに不眠と心身の疾患との間には密接な関係があることを述べた. 様々な心身の疾患に併存する不眠は患者のQOLを低下させるばかりではなく, 併存する心身の疾患のコントロールにも悪影響を及ぼすものと考えられる. 今後, 不眠を治療することで, 心身の疾患の発症を予防することができるのかという点について, 今後コホートを用いた縦断的研究がすすめられることを期待したい. 文献 1)Spielman AJ, Caruso LS, Glovinsky PB : A behavioral perspective on insomnia treatment. Psychiatr Clin North Am 10 : , ) 清水徹男 : 不眠. 総合臨 52 : , ) 山寺亘 : 睡眠障害の非薬物療法. 日精協誌 31 : 19 24, )Koffel EA, Koffel JB, Gehrman PR : A meta analysis of group cognitive behavioral therapy for insomnia. Sleep Med Rev 19 : 6 16, )Geiger Brown JM, Rogers VE, Liu W et al : Cognitive behavioral therapy in persons with comorbid insomnia : A meta analysis. Sleep Med Rev 23C : 54 67, )American Psychiatric Association. 高橋三郎, 大野裕 ( 監訳 ), 不眠障害 DSM 5 精神疾患の診断 統計マニュアル, pp , 医学書院, 東京,2014 7)Virtanen M, Ferrie JE, Gimeno D et al : Long working hours and sleep disturbance : The Whitehall II prospective cohort study. Sleep 32 : , )Fava M, McCall WV, Krystal A et al : Eszopiclone co administered with fluoxetine in patients with insomnia coexisting with major depressive disorder. Biol Psychiatry 59 : , )Manber R, Edinger J, Gress JL et al : Cognitive behavioral therapy for insomnia enhances depression outcome in patients with comorbid major depressive disorder and insomnia. Sleep 31 : , )Watanabe N, Furukawa TA, Shimodera S et al : Brief behavioral therapy for refractory insomnia in residual depression : an assessor blind, randomized controlled trial. J Clin Psychiatry 72 : , )Kitajima T, Kanbayashi T, Saito Y et al : Diazepam reduces both arterial blood pressure and muscle sympathetic nerve activity in human. Neuroscience Letters 355 : 77 80,

8 12)Matsuo H, Watanabe S, Ishiguro M et al : The efficacy of additive use of etizolam in patients with essential hypertension and unspecified complaints. Int J Clin Pharmacol Ther Toxicol 30 : 51 56, )Grossman E, Lauden M, Yalcin R et al : Melatonin reduces night blood pressure in patients with nocturnal hypertension. Am J Med 119 : , ) 小路眞護, 迎徳範, 内村直尚 : 糖尿病における睡眠障害. Prog Med 24 : , ) 野崎剛弘, 横山寛明, 松村直ほか : 不眠のある2 型糖尿病患者に睡眠導入薬を用いた介入研究. 心身医 51 : 536, 2011 II 不眠症の疫学とメカニズムはじめに不眠は有病率が高い疾患として知られているが, 本邦における疫学調査の結果から, おおよそ5 人に1 人が不眠症状を有していると考えられている. 日本や諸外国で行われた疫学調査からは, 不眠は様々な社会的要因が関与することや, 多くの身体疾患および精神疾患を合併することが明らかとなっている. こうしたことから不眠は現代社会において重要な問題であると考えられている. 不眠のメカニズムについては, 現在の不眠症研究やその治療の理論的背景と位置付けられている, ストレスモデル (Spielmanの3Pモデル), 過覚醒, 学習理論モデル, 認知情報処理モデルを概説する. 1. 不眠の疫学 1) 不眠の有病率不眠は, 入眠障害 ( 寝つきが悪い ), 中途覚醒 ( 途中で目覚める ), 早朝覚醒 ( 早朝に目覚め, 二度寝ができない ), 熟眠困難 ( 寝た気がしない, 休養がとれた感じがしない ) などを症状とする睡眠障害の代表的な病態である. その頻度は高く, プライマリケアにおいても最も訴えの多い愁訴の一つであると報告されている 1~3) 年代後半から世界各国において不眠に関する様々な疫学調査が実施され, その有病率の検討がなされてきた. 成人を対象とした疫学調査結果をまとめると, 何らかの不眠症状の存在は, 約 30 48%, それが週の半分を超えてまたはしばしばあるとすると16 21%, 昼間のquality of life(qol) の低下と関連した不眠症状は約 10 15%, アメリカ精神医学会の Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th ed., Text Revision(DMS IV TR) あるいはアメリカ睡眠医学会のInternational Classification of Sleep Disorders Second Edition(ICSD 2) の診断基準を満たす不眠症は約 5 10% にみられると報告されている 4~7). これまでに日本において行われてきた不眠症の有病率に関する疫学調査は, 不眠症状の有訴率を調査したものが多い. 健康 体力づくり事業財団によって行われた 平成 8 年度健康づくりに関する意識調査 では, 全くない, めったにない, 時々ある, しばしばある, 常にある の五者択一形式の回答で症状の有無を調査し, 3,030 名の対象者のうち, 入眠困難, 中途覚醒, 早朝覚醒の有訴率は 8.3%,15.0%,8.0% であり, いずれかの不眠症状の有訴率は21.4% であった 8).2000 年に厚生労働省が行った 保健福祉動向調査 では, ある, ない の二者択一式の回答で症状の有無を調査し, 28,714 名の対象者のうち, 入眠困難, 中途覚醒, 早朝覚醒の有訴率は20.0%,23.4%,20.6% であった 9).2009 年に日本大学の研究チームが行った全国調査では, ない, 1 週間に 1 回未満, 1 週間に 1~2 回, 1 週間に3 回以上 の四者択一式の回答で 1 週間に3 回以上 症状があるものを不眠とすると,2,559 名の対象者のうち, 入眠困難, 中途覚醒, 早朝覚醒の有訴率は 7.2%,15.2%,5.2% であり, いずれかの不眠症状の有訴率は 18.8% であった 10, 11). 疫学調査の結果は, 不眠をどのように定義するかにより, 有病率は異なる特徴がある 5). これまで日本で行われてきた疫学調査もそれぞれ異なる定義で不眠の有病率を調査しているため, 一概に比較することはできないが, おおよそ5 人に 1 人が週に半分以上の頻度あるいはしばしば不眠症状を有していることが報告されており, 諸外国との調査と同程度の割合を示している. また, これらの疫学調 580

9 査の結果から, 定義により結果のばらつきはあるものの, 不眠はきわめて有病率が高く, 社会において大きな問題であることが分かる. 2) 疫学調査でみられる不眠の特徴および合併症不眠の有病率は加齢とともに増加するが, これはほとんど全ての疫学調査で共通してみられる特徴である 5). 性差については女性で多くみられ, メタ解析では, 女性では男性の約 1.4 倍みられることが報告されている 5, 12). その他, 社会的要因として, 配偶者との別離, 低収入, 低学歴, 無職, 運動習慣がない, 心理的ストレスなどの要因が不眠と関係していることが報告されている 5, 8, 12). また, 不眠には家族歴がみられることが報告されている 13). 不眠は他の身体疾患および精神疾患の合併率が高く, 身体的健康感, 精神的健康感とも密接な関連をもつことが知られている 10). 身体疾患としては, 高血圧症, 糖尿病, 心疾患, 脳血管疾患, 肥満, 呼吸器疾患, 胃潰瘍などの消化器疾患, 神経変性疾患, 関節炎, がん, 慢性疼痛などとの関連が報告され 5, 14, 15), 精神疾患としては, うつ病, 双極性障害, 不安障害, 摂食障害, 適応障害などとの関連が報告されている 5, 15, 16). 精神疾患と不眠の合併率は高いが, フランスで行われた5,622 名を対象としたコホート研究では,17.7% に不眠がみられ, その90.9% において, 抑うつ, 不安がみられたことが報告されている 16). さらに, 不眠と精神疾患との関連は前向き調査で検討されており, 不眠はうつ病, 不安障害といった他の精神疾患発症のリスクであることが報告されている 17). 精神疾患の中でも, 不眠とうつ病との関連は最も多くの調査がなされており, 不眠とうつ病の関係を調べた前向き研究のメタ解析においては, 不眠のあるものがうつ病を発症するリスクは約 2 倍になると報告されている 18). 近年の研究では, うつ病患者において, 将来の不眠の発症リスクが増加することも報告され 19~21), うつ病と不眠の関連については, 相互に原因にも結果にもなる双方向性の関連を持っていると考えられている 19, 21). 2. 不眠のメカニズム 1) ストレスモデル (Spielmanの3Pモデル) 急性不眠はライフイベントや, 時差を伴う移動や交代勤務のような睡眠スケジュールの変化と関連してみられることが多く, 原因が消失すると不眠も改善することが多い 21). しかし, 原因が消失した後も不眠が持続することが知られており, 前向きコホート研究ではベースライン調査で不眠がある場合,1 年後は70%,3 年後は50% に不眠が持続していたことが報告されている 20, 23). Spielmanらは不眠症の慢性経過をストレスの関与により説明する 3Pモデルを提唱した 24, 25) (Fig. 1). このモデルでは不眠のストレス因子を a) 前提要因 (predisposing factors),b) 促進要因 (precipitating factors),c) 永続要因 (perpetuating factors) に分け, この 3P 因子の合計が閾値を越えると発症すると考える. ストレスに対する脆弱性などの前提要因を持つ者が, ライフイベントなどの促進要因の影響を受けて急性不眠となり, さらに誤った睡眠習慣などの永続要因が形成されると, 慢性不眠が形成されるというモデルである. 前提要因としては, 年齢, 性別, 過敏性, 不安になりやすい性格, 不眠の既往, 家族歴などが挙げられる. 促進要因としては, 疾患や離別のようなライフイベントや, 時差を伴う移動や交代勤務のような睡眠スケジュールの変化, 環境変化などが挙げられる. 永続要因 Fig. 1 Spielmanの3Pモデル ( 文献 25, 26より改変 ) としては, 不眠に対する誤った対処行動, 不適切な治療などが挙げられる. このモデルは不眠症の臨床におけるアセスメントにおいて有用であると考えられており, 臨床経過において, 心理的あるいは行動的要因が関与している場合, その点を対象とした治療的介入が重要となる 26). 2) 過覚醒不眠の生理学的変化として, 睡眠中および覚醒時の過覚醒が重要と考えられている 26, 27). ストレスや葛藤によって不眠が生じるが, これは情動的過覚醒と呼ばれる. さらに情動的過覚醒が遷延すると, 生理的過覚醒と呼ばれる状態に至る 28). 不眠症者における過覚醒状態での生理学的変化として, 交感神経系の亢進による心拍数, 代謝率, 体温などの増加,HPA 系 (hypothalamic pituitary adrenal axis) の亢進, ノルエピネフリン分泌の増加がみられる 27, 29). 睡眠脳波のスペクトル分析では, 速波の増加, 徐波の減少が報告されている 30).PET(positron emission tomography) を用いた研究では, 睡眠時および覚醒時において, 脳全体の代謝の増加していること, 睡眠覚醒領域における代謝が, 睡眠中に増加し, 覚醒中の低下していることが報告されている 31). 不眠になると過覚醒を生じるため, 脳局所における睡眠 覚醒時の変動が減少することを示していると考えられている. 3) 学習理論モデル学習理論では, 不眠症は 就寝環境と, さまざまな原因による一過性の身体的覚醒が, 学習により結びついた状態 と考えられている 32). 一時的な不眠は多くの人が経験するが, これが就寝環境と結びつき, 就寝環境 = 覚醒する場所 という学習が成立することで, 不眠が持続するとする考え方である. この理論に基づき, 就寝環境 = 眠る場所 という再学習することを目的として行動療法が開発されており, 代表的なものとして刺激制御法 (stimulus control therapy) 32, 33), 睡眠制限法 (sleep restriction therapy) 33, 34), リラクセーション法 (relaxation) 33) などが挙げられる. 4) 認知情報処理モデル認知理論では, 気分や感情の変化をもたらすものは, 出来事そのものではなく, 出来事に対する認知の仕方である と考えられている 35). 不眠症者は, 毎日 8 時間寝たいといった非現実的な希望を 581

10 持っていること, 十分な睡眠をとれないと健康に悪影響があると信じていること, 眠ろうとする努力が逆に妨げとなっていること, 就寝場面で不眠を意識するような刺激 ( 時計の音や身体感覚 ) に注意を向けていること, 自身の睡眠を実際よりも悪く評価していること, などの認知特性が就寝場面で活性化することで, 不眠を引き起こしていると考えられている 33, 36). 認知療法では, 睡眠に対する認知を変化させることにより不眠症状の改善を試みることが行われる 33). 文献 1)Aikens JE, Rouse ME : Help seeking for insomnia among adult patients in primary care. J Am Board Fam Pract 18 : , )Hohagen F, Rink K, Kappler C et al : Prevalence and treatment of insomnia in general practice. A longitudinal study. Eur Arch Psychiatry Clin Neurosci 242 : , )Simon GE, VonKorff M : Prevalence, burden, and treatment of insomnia in primary care. Am J Psychiatry 154 : , )Morin CM, LeBlanc M, Daley M et al : Epidemiology of insomnia : prevalence, self help treatments, consultations, and determinants of help seeking behaviors. Sleep Med 7 : , )Ohayon MM : Epidemiology of insomnia : what we know and what we still need to learn. Sleep Med Rev 6 : , )Roth T, Jaeger S, Jin R et al : Sleep problems, comorbid mental disorders, and role functioning in the national comorbidity survey replication. Biol Psychiatry 60 : , )Ohayon MM, Reynolds CF 3rd : Epidemiological and clinical relevance of insomnia diagnosis algorithms according to the DSM IV and the International Classification of Sleep Disorders (ICSD). Sleep Med 10 : , )Kim K, Uchiyama M, Okawa M et al : An epidemiological study of insomnia among the Japanese general population. Sleep 23 : 41 47, )Kaneita Y, Ohida T, Uchiyama M et al : Excessive daytime sleepiness among the Japanese general population. J Epidemiol 15 : 1 8, )Furihata R, Uchiyama M, Takahashi S et al : The association between sleep problems and perceived health status : a Japanese nationwide general population survey. Sleep Med 13 : , ) 降籏隆二, 今野千聖, 鈴木正泰ほか : 一般成人における不眠症状と性差について. 女性心身医学 19 : , )Zhang B, Wing YK : Sex differences in insomnia : a meta analysis. Sleep 29 : 85 93, )Beaulieu Bonneau S, LeBlanc M, Merette C et al : Family history of insomnia in a population based sample. Sleep 30 : , )Taylor DJ, Mallory LJ, Lichstein KL et al : Comorbidity of chronic insomnia with medical problems. Sleep 30 : , )Pearson NJ, Johnson LL, Nahin RL : Insomnia, trouble sleeping, and complementary and alternative medicine : Analysis of the 2002 national health interview survey data. Arch Intern Med 166 : , )Ohayon MM, Caulet M, Lemoine P : Comorbidity of mental and insomnia disorders in the general population. Compr Psychiatry 39 : , )Breslau N, Roth T, Rosenthal L et al : Sleep disturbance and psychiatric disorders : a longitudinal epidemiological study of young adults. Biol Psychiatry 39 : , )Baglioni C, Battagliese G, Feige B et al : Insomnia as a predictor of depression : a meta analytic evaluation of longitudinal epidemiological studies. J Affect Disord 135 : 10 19, )Jansson Frojmark M, Lindblom K : A bidirectional relationship between anxiety and depression, and insomnia? A prospective study in the general population. J Psychosom Res 64 : , )Morphy H, Dunn KM, Lewis M et al : Epidemiology of insomnia : a longitudinal study in a UK population. Sleep 30 : , )Sivertsen B, Salo P, Mykletun A et al : The bidirectional association between depression and insomnia : the HUNT study. Psychosom Med 74 : , )Bastien CH, Vallieres A, Morin CM : Precipitating factors of insomnia. Behav Sleep Med 2 : 50 62, )Morin CM, Belanger L, LeBlanc M et al : The natural history of insomnia : a population based 3 year longitudinal study. Arch Intern Med 169 : , )Michael P, Paul JS, Georgina C et al : Models of Insomnia. In Kryger M, Roth T, Dement W, eds. Principles and Practice of Sleep Medicine. 5th ed, WB Saunders Company, Philadelphia, 2010, p )Spielman AJ, Caruso LS, Glovinsky PB : A behavioral perspective on insomnia treatment. Psychiatr Clin North Am 10 : , )Buysse DJ : Insomnia. JAMA 309 : , )Riemann D, Spiegelhalder K, Feige B et al : The hyperarousal model of insomnia : a review of the concept and its evidence. Sleep Med Rev 14 : 19 31, )Ekirch AR : Sleep we have lost : pre industrial slumber in the British Isles. Am Hist Rev 106 : , )Bonnet MH, Arand DL : Hyperarousal and insomnia : state of the science. Sleep Med Rev 14 : 9 15, )Benca RM, Obermeyer WH, Thisted RA et al : Sleep and psychiatric disorders. A meta analysis. Arch Gen Psychiatry 49 : , )Nofzinger EA, Buysse DJ, Germain A et al : Functional neuroimaging evidence for hyperarousal in insomnia. Am J Psychiatry 161 : , )Bootzin RR : Stimulus Control Treatment for Insomnia. Proceedings of the 80th Annual Convention of the American Psychological Association. Honolulu, Hawaii, , )Morin CM : Psychological and Behavioral Treatments for Insomnia I : Approaches and Efficacy. In Kryger M, Roth T, Dement W, eds. Principles and Practice of Sleep Medicine. 5th ed, WB Saunders Company, Philadelphia, 2010, p )Spielman AJ, Saskin P, Thorpy MJ : Treatment of chronic insomnia by restriction of time in bed. Sleep 10 : 45 56,

11 35)Beck AT : Depression : clinical, experimental, and theoretical aspects. Harper & Row, New York, )Morin CM : Insomnia, psychological assessment and management. Guilford Press, New York, 1993 III 中枢性過眠症群 ( ナルコレプシー, 特発性過眠症, 症候性過眠症を含む ) はじめに過眠とは本来起きて活動している時間帯 ( 通常は日中 ) に過剰な眠気が生じ, 居眠りを繰り返す状態で時に夜間の睡眠時間の延長を伴う. 過眠症とは過眠症状をきたす疾患の総称であり, 脳内の覚醒維持機構の障害による一次性のもの ( ナルコレプシー, 特発性過眠症などの中枢性過眠症群 ) と夜間の睡眠障害による二次性のものがある. 過眠症状が重度になると倦怠感, 焦燥感, 不安感, 集中力 作業能力の低下をきたし, 学業や仕事に多大な影響をもたらす. さらに事故のリスクの要因となり対策が必要になる. 睡眠障害国際分類第 3 版 (International classification of sleep disorders, 3rd edition:icsd 3) 1) では睡眠関連疾患のカテゴリーのひとつに中枢性過眠症群 (central disorders of hypersomnolence) があり, 中枢性過眠症群はその原因が夜間の睡眠障害や概日リズムの乱れによるものではなく, 過眠症状を呈する中枢疾患群と定義され器質性や機能性は問わずこの分類に入る. このカテゴリーには, ナルコレプシー, 特発性過眠症, クライネ レヴィン症候群, 身体疾患による過眠症, 薬物または物質による過眠症, 精神疾患による過眠症, 睡眠不足症候群, 長時間睡眠者の 8 種類が含まれる (Table 1) 1). ナルコレプシーなど中枢性過眠症群に対する診療ガイドラインは, 国内では日本睡眠学会など 2~5) から, また海外ではアメリカ睡眠医学会 (American Academy of Sleep Medicine:AASM) 6, 7) から公表されている. 睡眠医療の現場ではこれらのガイドラインを用いるため, 本邦での統一性をもたせるためにもこれらのガイドラインと近年の研究報告を含めて標準的治療を概説する. 中枢性過眠症群の診療にあたり, はじめに過眠症状を呈している患者に確認しておく項目をTable 2に示す 2, 4, 5). 症状の発症時期と経過, 平日 休日との差異, 睡眠習慣の把握, 身体疾患 精神疾患の既往, 常用している薬物などである. 過眠症状の程度の評価のため日本語版エプワース眠気尺度 (Japanese version of Epworth Sleepiness Scale:JESS), 睡眠日誌 ( 少なくとも2 週間, できれば4 週間 ) 記載する. 過眠症状の診断のフローチャートをFig. 1 に示す. Table 1 ICSD 3 1) 中枢性過眠症群 (central disorders of hypersomnolence) ナルコレプシーナルコレプシータイプ1 ナルコレプシータイプ2 特発性過眠症クライネ レヴィン症候群身体疾患による過眠症薬物または物質による過眠症精神疾患に伴う過眠症睡眠不足症候群 孤発性の諸症状, 正常範囲と思われる異型症状長時間睡眠者 583

12 Fig. 1 ナルコレプシーと特発性過眠症の診断フローチャート,,, Table 2 過眠症状を主訴とする患者に対し初診時に確認しておく 2, 4, 5) 項目 1. 問診発症時期と経過眠気の性状と程度平日のみか? 週末や休暇時期にもあるのか? 1 日の総睡眠時間 ( 平日, 休日 ) 問診による睡眠 覚醒パターンいびきの有無身体疾患 精神疾患の有無常用薬や使用物質の確認 2. 過眠症状の程度 ( 問診, 日本語版エプワース眠気尺度 JESS) JESS 総得点 11 点を目安とする 3. 睡眠日誌 ( 少なくとも2 週間, できれば4 週間記載 ) 4. 心因性要素の把握 ( 仕事 学校のある日に限って起きられないなどの現象の有無 ) 確定診断には睡眠ポリグラフ検査 (polysomnography:psg) と反復睡眠潜時検査 (multiple sleep latency test:mslt) が行われるが, 施行方法や判定方法の詳細についてはAASM scoring manual 8) と日本睡眠学会からのガイドライン 2) を参照して頂きたい. 中枢性過眠症群には睡眠不足症候群が含まれるが 1), ナルコレプシー, 特発性過眠症および反復性過眠症の診断にはいる前に, 睡眠不足症候群を鑑別する必要がある. 睡眠不足症候群とは日中に十分な覚醒度を保つために必要な睡眠量が慢性的に確保できておらず, 年齢から想定される平均的な睡眠量 9) よりも明らかに少ない睡眠しかとらない ( とれない ) ために慢性的な睡眠不足の状態に陥り日中の過度の眠気を生じるものであり, 重症化すると不安や抑うつ症状 など精神症状を伴う 4). 睡眠日誌の記載から平日は睡眠を制限した状態であるが, 起床時刻の制約のない週末や休日は睡眠時間の延長 ( 多くは平日の 2 時間以上 ) 傾向がみられる 4). 必要とされる睡眠時間の十分な確保によって症状の改善を認める. 1. ナルコレプシーナルコレプシーは睡眠覚醒中枢の機能異常に基づく狭義の過眠症である. その有病率は欧米では0.05% に対して, 本邦では0.16% と欧米に比べて有病率が高く, 人種, 民族差がみられる. 約 95% が孤発例であり, 双生児一致率は約 20% である 2). 好発年齢は 15~25 歳, 初発症状は日中の強い眠気で, 後に情動脱力発作が出現するのが典型的な経過である. 本症では遺伝子タイピングを用いた研究によりDQB1*0602のハプロタイプが人種を問わず関連し, 特に日本人の陽性率は90% 以上であるが, 一般人口での同ハプロタイプが12~38% に認められ, 家族性ナルコレプシーの約 30% は同ハプロタイプをもたないことから, HLAタイプはナルコレプシー発症の必要十分条件ではないとされている 2). さらに, 遺伝的要因以外にも環境要因や自己免疫機序などの関与も指摘されている 2). また, 本症の病態には, 後部視床下部に存在するオレキシン ( ヒポクレチン ) 神経系の異常が, 動物モデルとヒト脳脊髄液所見等より指摘されている 2). 特に情動脱力発作を伴うナルコレプシー ( ナルコレプシータイプ1) ではオレキシン産生障害があり, 約 90% の症例で髄液オレキシンA( ヒポクレチン1) 値が異常低値を示す (hypocretin deficiency syndrome) 1). ナルコレプシーではオレキシン神経系 ( 覚醒系 ) の障害により, 睡眠覚醒系の不安定化とレム睡眠の発現の異常を認めるため, 睡眠の多相化 ( 日中の過度の眠気 睡眠発作, 中途覚醒型不眠 ),REM sleep dissociationによる情動脱力発作 (cataplexy), レム睡眠関連症状 ( 入眠時幻覚, 睡眠麻痺 ) およびレム睡眠行動異常を認める 2). 本症の中核症状は通常では考えられないような状況で居眠りを繰り返すことと, 特異な情動脱力発作を示すことが中核症状である (Table 3) 1, 2). 典型的な情動脱力発作は大笑いや得意 驚きなどの陽性の情動変化をきっかけに, 抗重力筋 ( 姿勢筋 ) の緊張が数秒か 584

13 Table 3 1) ナルコレプシーの中核症状の性状 日中の過度の眠気, 居眠り 強い睡眠不足がない限り, 朝の起床時の睡眠慣性は正常者と同じ水準であるその後, 眠気は強まり, 昼前から午睡ゾーンにおいて強度になることが多い 居眠りは断続的に複数回生じるが, 持続が短く (5~15 分程度 ) で, 居眠り後爽快感あり,1~ 数時間のうちに眠気が出現し居眠りを繰り返す 情動脱力発作 大笑いしたとき, びっくりしたとき, 怒ったとき等の強い感情の動きにより誘発される ¼ 普段と違う情動 ( 例 : ストレス, 激しい活動 運動 ) によって引き起こされる非定型の筋脱力とは区別する 部位: 抗重力筋, 膝, 下肢全体, 腰, 上肢, 顔面 持続時間 :2 分以内 ( 重積状態の場合を除くと, 数秒 ~ 長くても 1~2 分程度 ) ¼ 発作が長すぎるときは心理的要因の可能性にも注意する その他の注意点: 重症例でない限り臨床現場で観察することはほぼ不可能生涯発現回数が10 回以上であることを確認する眠くなってきて, 情動脱力発作様の脱力感を生じるものは典型例から除く顔面の情動脱力発作のために会話が不可能になることはあるが, 意識障害は生じない回復後に通常の日常行動に戻れるが, ときに睡眠へ移行することがある ら2 分以内, 一過性に喪失する. 例えば, 膝の力がカクンと抜ける, 顎が落ちて呂律が回らないなどの症状である. その発作中は意識がなくなることはなく, 覚醒状態で周囲の状況を把握できている. 情動脱力発作はナルコレプシーの随伴症状のうちの覚醒とレム睡眠の相互移行を基盤とする睡眠麻痺, 入眠時幻覚とは異なる. ナルコレプシーの診断にはPSGとMSLTが必須である.ICSD 3 に示す診断基準では情動脱力発作の有無あるいは脳脊髄液中のオレキシンAの欠乏の有無によって, タイプ1とタイプ2に分類されている (Table 4, Fig. 2) 1). ナルコレプシーの診断には, 耐えがたい睡眠欲求や日中に寝込んでしまうことが毎日, 少なくとも3か月以上続く こと ( 過眠症状 ) とMSLT 所見が必須条件である (Table 4, Fig. 2) 1). タイプ1は情動脱力発作を認めるもので, タイプ1の90% 以上の症例では脳脊髄液中のオレキシンA 濃度が異常低値であり (Table 4, Fig. 2),HLA DQB1*0602 の型をもつ症例のほとんどが脳脊髄液 (cerebrospinal fluid:csf) 中のオレキシンAの低値を示す 1). タイプ1は従来の 情動脱力発作を伴うナルコレプシー に相当するが, 従来の診断基準とICSD 3 との相違点は, 情動脱力発作の有無にかかわらずCSFオレキシン欠乏がある場合, または脳腫瘍やその他の神経疾患に伴って生じる 身体疾患による過眠症 でもCSFオレキシン欠乏があれば 身体疾患によるナルコレプシータイプ1 に分類されることにある 1). ナルコレプシーの診断基準のひとつである MSLT 基準では平均睡眠潜時が8 分以下で, かつ睡眠開始時レム期 (sleep onset REM sleep period:soremp) が2 回以上あることと 定義されている 1).SOREMP の回数は前夜の PSG で SOREMP の所見があれば,MSLT でのSOREMP の 1 回分として代替できる (Table 4) 1). タイプ2は情動脱力発作のないもので, 基準 Aに加えてMSLT 基準を満たす ( 基準 B) ことが条件であり, そのうえで, 除外項目が C, D, Eに示されている (Table 4) 1). 除外基準で重要なものは, 睡眠不足症候群 ( 前出 ), 閉塞性睡眠時無呼吸, 睡眠覚醒相後退障害, 薬物や物質の使用 離脱などがあげられる. 本症に対する主な治療は, 日中の過度の眠気 睡眠発作, 情動脱力発作とレム睡眠関連症状, 夜間の睡眠障害 ( 中途覚醒型不眠 ), レム睡眠行動異常に対してである. 治療目標は本疾患が比較的若年者に発症する慢性疾患であることを十分考慮し, 最小限の薬物で効果を得て, かつ副作用と依存形成の抑制を目指す. また, 本症では治療後の眠気の水準を正常範囲まで低減することは困難なことが多いため, 眠気による社会生活への不利益を最小限にすることである. 日中の過度の眠気や睡眠発作に対し, 薬物療法とともに生活指導も重要である. 睡眠不足は, 過眠症状を悪化させる要因となりうるため, 睡眠不足をさけることと午睡を活用することである. 規則的な睡眠習慣と短時間の午睡 (15 分 ) は, 精神刺激薬の単独治療よりも効果があり, 薬物療法ではカバーできない不測の日中の過度の眠気 睡眠発作の予防に推奨される 2, 4~6). 日中の過度の眠気や睡眠発作に対するものには, 精神刺激薬であるmodafinil,methylphenidate,pemoline がある 2, 4~6). 従来は methylphenidate や pemoline が用いられてきたが, 現在は modafinilが治療のfirst lineに位置づけられている 2, 4~6). Modafinil1 日 200~300mg を分 1, 朝食前に内服する. 同薬剤の半減期は10~14hであり, 朝 1 回あるいは1 日 2 回投与の場合は昼食時までに服用することが望ましい. Methylphenidate1 日 10~60mg, 分 2, 朝食前, 昼食前投与で用いられる. 半減期が4~6hであり, 朝と昼食時の投与で, 午後 3 時以降は避けることが望ましい. 本剤は依存性が問題となる薬物で乱用や依存が問題視されていることから, 本邦では厚生労働省から適正使用についての警告が出された.Methylphenidateの処方に関してはリタリン流通管理委員会によって, 医師, 医療機関, 処方薬局, 調剤責任者の登録制によって厳重に処方が管理されている. なお過眠症患者の依存症への発展は長期継続服用にもかかわらず少ないことや 10), 適正に診断されたナルコレプシーに対して使用する限り乱用の問題が生じることは少なく, むしろ処方された用法や用量を守らずにできるだけ服薬量を減らそうとする傾向があることが知られている 11). Pemoline1 日 25~100mg, 分 2, 朝食前, 昼食前投与で用いられるが, 半減期が8 10hであり,modafinilと同様の投与法である. 重篤な肝障害を発症することがあり, その肝毒性から海外では治療の first lineより外れている. 精神刺激薬で注意すべき副作用には,modafinilでは頭痛 嘔気 動悸など,methylphenidate,pemolineは交感神経刺激症状である神経過敏 焦燥感 頭痛 頻脈 心悸亢進 不眠 発汗 口渇 胃腸障害がある. とくにmethylphenidate では薬物依存や耐性に, pemolineでは肝障害に注意が必要である. いずれの精神刺激薬は投与時刻が夕方以降になると夜間の不眠が生じやすくなることに注意が必要である. 585

14 Table 4 1) ICSD 3におけるナルコレプシーの診断基準 ナルコレプシータイプ1 ( 基準 AとBが満たされること ) A. 耐えがたい睡眠要求や日中に寝込んでしまうことが毎日, 少なくとも 3ヵ月以上続く. B. 下記のいずれか, あるいは双方が存在する. 1. 情動脱力発作が存在, かつMSLT 基準を満たす 2.CSFオレキシンA 濃度低値 (CSFオレキシン欠乏) ナルコレプシータイプ2 ( 基準 A~Eのすべてが満たされること ) A. 耐えがたい睡眠要求や日中にも寝込んでしまうことが毎日, 少なくとも 3ヵ月以上続く. B.MSLT 基準を満たす. C. 情動脱力発作が存在しない. D.CSFオレキシン A 濃度が未測定か, 測定した場合に CSFオレキシン欠乏がない. E. 過眠症状や MSLT 所見が, 睡眠不足, 閉塞性睡眠時無呼吸, 睡眠相後退障害, 薬物 物質による影響あるいはこれらからの離脱では説明できない. 注 )1. 若年小児では, ナルコレプシーが時に過剰に長い夜間睡眠として, 注 )1. 経過中に情動脱力発作が生じた場合, ナルコレプシータイプ1と分あるいはなくなっていた日中の昼寝の再開として現れることがある. 類し直す. 2. もし臨床的にナルコレプシータイプ1が強く疑われるのに基準 B 1 2. あとの段階で CSFオレキシン A 濃度を測定し,CSFオレキシン欠のMSLT 基準が満たされない場合,MSLTを再び行うのも可能な乏が見出されたら, 診断をナルコレプシータイプ1に分類し直す. 選択肢となる. 情動脱力発作の定義 一般的には短い (2 分以内の ) エピソードで, 通常両側対称性に生じる突然の筋緊張喪失で, 意識は保持される. このエピソードは通常は強い陽性の情動を契機として生じ, ほとんどすべての患者が大笑いに伴う情動を契機に脱力エピソードが生じると報告する. 発作中にみられる一過性, 可逆性の深部腱反射の消失がもし観察できれば, 強力な診断的所見となる. 小児では( 稀に成人でも ), 発症間もない時期には情動脱力発作が顔面の ( あるいは全身の ) 筋緊張低下, 例えば, 眼瞼下垂や開口, 挺舌, 歩行不安定が, 明らかに情動とは関連なく生じることがある. 顔面や咀嚼筋の不随意な動きが生じることもある. MSLT 基準 標準化された方法に従って実施された MSLTにおいて, 平均睡眠潜時 mslが8 分以下で, かつ2つあるいはそれ以上の睡眠開始時レム期 (SOREMP) があること. 前夜のPSGでSOREMP( 入眠から15 分以内 ) があれば,MSLTでの1つのSOREMPの代替としてよい. 脳脊髄液中オレキシンA 濃度低値 (CSFオレキシン欠乏) の定義 免疫反応性を用いて測定された CSF 中のオレキシンA( ヒポクレチン 1) が,110pg/mL 以下, あるいは同一の標準化された測定において, 正常平均の 1/3 未満であること. 3 Fig. 2 ICSD 3 によるナルコレプシーと特発性過眠症の診断フローチャート MSLT msl 8 Yes No PSG+MSLT SOREMP 2 SOREMP 1 Yes No Yes MSLT 24h-PSG: TST 660 Yes CSF A HLA-DQB1*0602 msl 24h-PSG: 24 PSG TST 586

15 Table 5 1) ICSD 3における特発性過眠症の診断基準 ( 基準 A~Fが満たされること ) A. 耐えがたい睡眠の欲求や日中に寝込んでしまうことが毎日, 少なくとも3ヵ月以上続く. B. 情動脱力発作が存在しない. C. 標準化された方法に従って実施された MSLTにおいて,SOREMPが2 回未満, もし前夜の PSGでSOREMPがみられればMSLTでSOREMPがみられないこと. D. 下記の少なくとも1つが存在する. 1.MSLTにおいて平均睡眠潜時が8 分以下 時間 PSG 記録 ( 慢性的な睡眠不足の是正後 ) において,24 時間の総睡眠時間が 660 分以上 ( 典型的には12~14 時間 ), あるいは7 日以上, 時間制限なしで自由に眠らせた際の手首でのアクチグラフ結果を睡眠日誌と対応させて計算した場合,1 日平均の総睡眠時間が 660 分以上. E. 睡眠不足症候群の除外 ( もし必要と診断されれば, 夜間就床時間を増やす十分な試行を行い, できれば少なくとも1 週間の手首でのアクチグラフ記録で確認することが望ましい ). F. 過眠症状やMSLT 所見が, 他の睡眠障害, 他の身体疾患, 精神疾患, あるいは薬物や治療薬の使用では説明できない. 注 )1. 睡眠酩酊 ( 覚醒困難が遷延し, 何度も再入院したり, 易刺激性, 自動症, 混乱を伴うものと定義される ) として知られる, 重度で遷延する睡眠慣性や, 長く (1 時間以上 ) 爽快感のない昼寝は, 診断を支持する臨床特徴である. 2. ( 睡眠不足が除外されるならば ) 前夜のPSGで睡眠効率が高いこと (90% 以上 ) も支持的所見である. 3. 診断に必要な 24 時間の総睡眠時間の値は, 小児や若者における発達段階と関連して睡眠時間の標準値が変化することに対応できるように, またすべての年齢群について文化の多様性に対応できるように, 適合して変更させる必要が生じることがある. 4. 時にほかの特発性過眠症の診断基準を満たす患者が 8 分より長い MSLT 平均睡眠潜時, かつ24 時間の総睡眠時間が 660 分より短いという検査結果を示す場合がある. 患者が特発性過眠症に罹患していると考えるべきかの決定には, 臨床的判断を行うべきである. この障害と似る他の状態を注意深く除外すべきである. 特発性過眠症の臨床的疑いが高いままであれば, 後日 MSLTを再試行することが推奨される. 情動脱力発作とレム睡眠関連症状に対しては, 三環系抗うつ薬であるclomipramine,imipramine, セロトニン ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるmilnacipran がある 2, 4~6). なお,clomipramine はナルコレプシーの情動脱力発作に対する効能追加が公知申請によって2013 年に承認された. 情動脱力発作あるいはレム睡眠関連症状に対して,clomipramine1 日 20~60mg, 分 2~3 回, 毎食後に投与する. 三環系抗うつ薬 (imipramine,clomipramine) では, 口渇 排尿障害 消化器症状, セロトニン ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 (milnacipran) では口渇 消化器症状がある. 情動脱力発作に対し三環系抗うつ薬を長期内服している例で急な断薬は情動脱力発作の重積状態をきたすことがあるので注意が必要である. 夜間の睡眠障害 ( 中途覚醒型不眠 ) に対して, 短時間から中時間作用の睡眠薬が用いられるが 2, 4, 5), 短時間作動型のω1 受容体選択性のベンゾジアゼピン受容体作動薬であるzolpidem tartrate,eszopicloneなどが選択される. また, 本症では妊娠および授乳において安全性の確立された薬物はない. 計画妊娠が必要であり, 妊娠中のナルコレプシーに対する治療の必要性について, 個々の患者において危険性と利益のバランスを考慮する必要がある 3). ナルコレプシー患者の自動車運転の基準は, 道路交通法に記載されているように, 運転に支障が及ぶ可能性のある重度の眠気が存在する場合には, 治療によって改善するまで免許の保留 停止処分になることを, 承知しておく必要がある. 2. 特発性過眠症特発性過眠症は夜間の睡眠時間を十分とり睡眠の質に問題がないにもかかわらず, 覚醒後の熟眠感に乏しく終日睡眠に対する欲求が亢進している状態である.ICSD 3 では夜間の睡眠時間の長さは不 問であるが, 夜間の睡眠時間は心身の回復に必要な量を超えて延長し, 覚醒困難を示すことを特徴とする 1). 覚醒困難が遷延し, 何度も再入眠し, 易刺激性, 自動性, 混乱を伴う 睡眠酩酊 とも呼ばれている 1). このような重度で遷延する睡眠慣性や, 長く ( 約 1~4 時間 ) かつ爽快感のない昼寝は, 診断を支持する臨床的特徴である 1). 睡眠不足が除外された場合, 前夜のPSGで睡眠効率が90% 以上と高いことも支持所見である 1). 頭痛や自律神経症候 ( 例 : めまい, 起立症状, 体温調節障害, 末梢血管症状 ) をともなうこともある. 過眠症状をきたす他の原因を除外する必要がある. すなわち, 薬物, 嗜好品などの外的な要因, 内科疾患 ( 例 : 甲状腺機能低下症, 低血糖 ), 神経疾患 ( 例 : てんかん, 視床 視床下部病変 ), 精神疾患 ( 例 : うつ病 ), 睡眠関連疾患 ( 例 : 睡眠覚醒相後退障害, 閉塞性睡眠時無呼吸, 周期性四肢運動, ナルコレプシー ) などの内的要因が挙げられる. 確定診断には (Table 5) のようにPSG+MSLTが必須である 1). 情動脱力発作を認めず,MSLTで平均睡眠潜時 8 分以下かつSOREMPの出現回数が 1 回以下であること (Table 5, Fig. 2), または,MSLTで平均睡眠潜時が8 分超えてもPSGで総睡眠時間が 660 分以上の場合は本症と診断される (Table 5) 1). 日中の過度の眠気に対し, 海外ではmodafinilの使用が報告されているが 6), 本邦では適応拡大のための臨床治験中である. 本邦で保険適応があるのは, pemoline のみである. 本症の好発年齢は 10~20 歳台であり, 経過は不変であるが, 自然軽快する例もあるが長期に治療を要する例もある 4). 3. クライネ レヴィン (Kleine Levin) 症候群反復性過眠症 (reccurent hypersomnia) とは, ほとんど一日中眠り続ける状態が, 数日から数週間続く過眠のエピソードを繰り返すが, 間欠期には全く症状が無くなる睡眠覚醒障害であり 12), 比較的短時間の過眠症状 ( 睡眠発作 ) が繰り返しみられるナルコレプシー 587

16 Table 6 ICSD 3 におけるクライネ レヴィン (Kleine Levin) 1) 症候群の診断基準 A. 患者は少なくとも2 回, 過剰な眠気と睡眠持続を示す病相期を反復するそれぞれの病相期は2 日から5 週間持続する B. 病相期は通常年 1 回以上あり, 少なくとも18ヶ月に 1 回は反復される C. 病相の間欠期には, 患者は正常な覚醒水準, 認知機能, 行動, 気分を示す D. 患者は病相期には, 少なくとも以下の1つ以上の症状を呈する 1. 認知機能障害 2. 知覚変容 3. 食行動異常 ( 食欲不振, あるいは過食症 ) 4. 脱抑制行動 ( 性欲亢進など ) E. 過眠症状とそれに関連した症状は, 他の睡眠障害, 他の身体疾患, 神経疾患, 精神疾患 ( 特に双極性障害 ) または, 薬物や治療薬の使用では説明できない に対し, 相性に反復して睡眠傾向の亢進が認められるものである 13). 間欠期の睡眠と全般的な行動は正常である. 反復性過眠症のなかで, 繰り返す過眠のエピソードの他に様々な程度の行動あるいは認知機能障害, 衝動的な食行動 ( 過食 ) や性的過剰行動 (hypersexuallity) が随伴して認められるものがクライネ レヴィン症候群 (Kleine Levin syndrome:kls) である (Table 6) 1). KLS 自体, 稀な疾患であり,Arnulfらによるとフランスでの有病率は100 万人あたり1.5 人とされている. 性別では男性 (68~87%) が多く, ほとんどが10~20 歳台の若年発症であり, 家族内発症のリスクは低い 14).ArnulfらのKLS 症例の系統的レビューの中で,110 症例の検討でKaplan Meier 解析による疾患の罹病期間の中間値は 8 年 (0.5~41 年 ) であり, 病相期の持続期間の中間値は 10 日 (2.5~80 日 ), 病相期と病相期の間隔 ( 間欠期 ) の中間値は 3.5ヶ月 (0.5~72ヶ月) であった 15). 過眠症状の誘因には, 感冒など感染症による発熱, 心身の疲労, 睡眠不足, 飲酒, 頭部外傷, 麻酔などがあり 1, 12~16), 過眠症状の経過は, 前駆期 ( 過眠状態が始まる数日前から軽い眠気, 疲労倦怠感, 頭重感, 注意 集中力低下, 胃腸症状がみられる ), 過眠期 ( 病相期 ), 反動期 回復期 ( 過眠期終了直後には睡眠時間が短縮し, 気分爽快で軽躁状態を伴う時期がみられることがある ) に分けられる 1, 12, 13). 過眠期 ( 病相期 ) は, 通常数日から数週間持続し, 年に1~10 回発現する. 頻度, 重症度, 持続時間にはばらつきがあり, 病相期の社会的, 職業的障害は深刻なことが多い. 身体所見に発汗をともなう顔面紅潮を認めることがある. 通常の眠気とは異質の強い眠気 倦怠感を認め, 初期には昼夜問わずに十数時間も眠り続ける. 病相期に強い刺激で覚醒を促されると声を出して返事することがあるが, 不明瞭であったり攻撃的であったりすることが多い. 便意のあるときは自発的に覚醒し失禁することはない. 過眠期後半になると覚醒している時間が長くなる. 過眠中の覚醒状態は知覚 理解 見当識は保たれ, 明らかな意識障害がないように見えるが, 顔貌は無欲的で感情の抑揚に乏しく, 言語動作は渋滞しがち, 周囲に対して無関心, 自発性 積極性がなく, 注意の集中 持続が困難で, 思考力 記銘力の低下が認められる. 自覚的にはもうろう感, 疲労倦怠感, 頭重感, 離人症様体験もあり, 過眠中の出来事をはっきりと思い出せないことも多く, 正常な覚醒ではなく, 背景に軽度の意識障害があると考えられている. 一般的な身体診察と神経学的診察において異常が認められることはなく, またルーチンの血液検査, 髄液検査 ( 細胞数や蛋白量 ), 頭部 CT MRI 画像では, 疾患に特異的な所見は認められない. 視床下部 下垂体機能は一般には正常であり, 特定の内分泌機能異常をきたすという報告はみられていない 17).HLA 検査や脳脊髄液オレキシンA( ヒポクレチン1) との関連について研究されているが一定の見解は得られていない. 病相期における昼間の覚醒時脳波では基礎律動の広汎性の徐波化がみられ, しばしば突発性の両側同期性で全般性の中 ~ 高振幅 θ 波 (5~7Hz) の0.5~2 秒続く群発が確認されている.PSGでは病期によって特異的な所見はなく, 病相期には総臥床時間の延長がみられるが睡眠効率の低下, 徐波睡眠の減少がみられ, 睡眠段階 2からの中途覚醒が多く, 睡眠時間は長いが質的には良くないとされている 18, 19). 脳波所見, 機能的画像診断検査あるいは剖検所見などを総合すると, 視床, 視床下部, 側頭葉, 前頭葉を含む障害が考えられており, 認知機能の変化や現実感の喪失は側頭葉の障害, アパシーや脱抑制は前頭葉の障害, 過眠症状など自律神経関連の症状は視床 視床下部の障害の可能性が考えられる 14). 反復する過眠像からは気分障害 ( 双極性障害, 季節性感情障害 ) や身体化表現性障害などが鑑別にあげられる 1). 本症の治療は,KLSは病態が不明であり, 病状経過によって薬効の判定が難しいことからも, 薬物療法においては確立された治療法はない 20). しかし過去の報告から効果が期待される治療薬はある 12~16). 病相期の再発を予防する目的で, 炭酸リチウム, 抗てんかん薬 (valproate,carbamazepine), 抗うつ薬がある. いったん病相期に入ってしまうと病相期を中断させることは通常困難である. 病相期の眠気を軽減する目的で精神刺激薬 (modafinil,pemolineなど ) が用いられることがある. しかし効果は限定的であり, 投薬によりむしろ不安, 焦燥感, 攻撃性を増強させることがあるので注意が必要である. また,amantadineが過眠症状に対し有効との報告もあり初発例では試みてもよい 14~16). 最近では, オープンラベルの前向き研究で, リチウムがKLSの頻度や持続期間を減少させたことが報告された 21). 薬物の有効性が限定的であるため非薬物療法として誘因をさけるような指導も重要である ( 例 : 過度の疲労や飲酒をさける, 感染予防 ). 4. 症候性過眠症ここでは,ICSD 3 に記載されている, 身体疾患による過眠症 (hypersomnia due to a medical disorder) について概説する. 身体疾患による過眠症 (hypersomnia due to a medical disorder) は, A. 少なくとも3か月以上みられる日中の耐え難い睡眠欲求または日中の居眠り ( 過眠症状 ), B. 日中の眠気は明らかな身体疾患または神経疾患の続発症状として生じる, C. MSLTを施行したときに平均睡眠潜時 8 分以内, かつSOREMP の出現が 1 回以下, D. 過眠症状は他の未治療の睡眠関連疾患, 精神疾患または, 治療薬や薬物によるものでないこと の全 4 項目を満たすものである (Table 7) 1). 過眠症状がナルコレプシー ( タイプ1またはタイプ2) の診断基準を満たしたときは, narcolepsy type 1 or type 2 due to a medical disorder と診断される( 前出 ) 1). すなわち, 本症では, 588

17 Table 7 ICSD 3における身体疾患による過眠症 (hypersomnia 1) due to a medical disorder) の診断基準 A. 少なくとも3か月以上みられる日中の耐え難い睡眠欲求または日中の居眠り ( 過眠症状 ) B. 日中の眠気は明らかな身体疾患または神経疾患の続発症状として生じる C. MSLTを施行したときに平均睡眠潜時 8 分以内, かつSOREMPの出現が1 回以下 D. 過眠症状は他の未治療の睡眠関連疾患, 精神疾患または, 治療薬や薬物によるものでは説明できない 過眠症の直接の原因は過眠を引き起こす身体疾患や神経疾患が同時に存在することであり, 情動脱力発作は存在しない. 原因には,Parkinson 病に続発する過眠症, 外傷後過眠症, 遺伝性疾患 (Niemann Pick 病 C 型,Norrie 病,Prader Willi 症候群, 筋強直性ジストロフィー,Moebius 症候群, 脆弱 X 症候群 ), 脳腫瘍, 感染症などの中枢神経系病変に続発する過眠症, 内分泌障害に続発する過眠症 ( 甲状腺機能低下症 ), 中毒または代謝性疾患に続発する過眠症 ( 例 : 肝性脳症, 慢性腎不全, 副腎機能不全, 膵臓機能不全, 毒物への暴露, 小児先天代謝異常 ), 十分な治療をなされた閉塞性睡眠時無呼吸 (obstructive sleep apnea:osa) の残遺眠気がある 1). 5. Parkinson 病に続発する過眠症 Parkinson 病 (Parkinson disease:pd) において日中の眠気の頻度は, 堀口ら 22) は77.2%,Garcia Borreguero らは15~50% の有症率が見込まれることを報告されている 23).Ondoは眠気と関連する因子として, 長期の罹病期間, 疾患の進行度, 男性, ドパミン作働薬をあげている 24). 日中の眠気の存在は睡眠発作の予測因子となりうることも示されている 25).PDにおいて日中の眠気を発症する要因には,PDによる脳の病理学的変化によるもの, 治療薬であるドパミン作動薬や催眠鎮静薬など薬物の関与, このほかにもPDの夜間の運動症状, 夜間頻尿, 睡眠時無呼吸, 周期性下肢運動などによる睡眠の分断化 ( 睡眠の質の低下 ) なども原因となりうる 26).PDの神経病理学的変化が背景に発症するものには, 上行網様体賦活系に関連した覚醒系の経路, 青斑核 ( ノルアドレナリン ), 脚橋被蓋核 ( アセチルコリン ), 前脳基底部 ( アセチルコリン ), 縫線核 ( セロトニン ), 中脳辺縁系ドパミン神経系, 視床下部のオレキシン神経系の関与が指摘されているがヒスタミン ドパミン覚醒系は障害されず, 日中の過度の眠気を伴うもののなかにはnarcolepsy like phenotype 例も報告されている 26). ドパミン作動薬と睡眠発作との関連については,Frucht らが非麦角系の D2/D3ドパミン受容体作動薬 (pramipexole,ropinirole) で 27), Paus らはbromocriptine, cabergoline, pergolide, pramipexole,ropinirolとすべてのドパミン受容体作動薬で睡眠発作がおこりうることを報告し 28), 薬物と日中の眠気 睡眠発作との関連が注目されている.Ondoはこれらの発現に中脳腹側被蓋野(ventral tegmental area:vta) のD2/D3ドパミン受容体から中脳辺縁系ドパミン神経系を介するものとしている 29). PDにおける日中の眠気と睡眠発作の治療指針は医師と患者自身が本症の睡眠障害のひとつに睡眠発作があることを強く認識し, 自動車運転へ注意を含めて患者教育が必要である. 原因を検索しつつ, まず良好な睡眠を確保できるように睡眠衛生指導を進める. 睡眠薬など鎮静催眠作用のある薬物を内服中であれば用量をできるだけ調整し最小用量にする. ドパミン作動薬を服用中の場合は必要最小限に調整する. なお,selegilineとamantadineは睡眠発作の発症に影響を与えないとされている 30). 夜間の睡眠が問題と考えられる場合は, 運動症状に対する抗 PD 薬の調整 (rotigotine,ropinirole 徐放剤 ) 31, 32), 閉塞性睡眠時無呼吸の重症例であればcontinuous positive airway pressure(cpap) 療法を導入するなど原因に対する処置を行う 33).PDの日中の過剰な眠気に対するmodafinilの効果は小規模ランダム化試験で2つの報告が有効であったが 34, 35),Ondoらの二重盲検試験報告ではmodafinil 群とプラセボ群の間で日中の過剰な眠気に有意な改善がみられなかった 36). カフェインは日中の覚醒度をあげるが, 夜間の不眠に注意が必要である. 国内からはMAO B 阻害薬であるselegilineを1か月間投与し睡眠全般, 睡眠の質および日中の覚醒困難が改善したこと 37), 同様にPD 軽症例を中心に日中の眠気の改善されたなどである 38).Selegiline の覚醒作用として,L amphetamine,l methamphetamine への代謝,MAO A の抑制, ドパミン増強効果, カテコールアミン再取り込み抑制, ドパミン受容体抑制によるドパミン放出と合成の増加, ノルアドレナリン セロトニン代謝の部分的抑制, 夜間の睡眠の改善, 運動症状の改善, ドパミン作動薬の減量効果などが推察されている 37, 38). 6. 筋強直性ジストロフィーに続発する過眠症筋強直性ジストロフィー (myotonic dystrophy type 1:DM1) は, 第 19 染色体の DMPK 遺伝子 (19q13.2 q13.3) 内の CTG リピートの延長による遺伝子異常によりミオトニアをはじめとする特有の筋症状以外にも多臓器に障害がみられる全身性疾患であり, 常染色体優性遺伝を示す. 睡眠に関連した症候は, 多元性あるいは heterogenous なもので, 特発性過眠症 ( 例 : 長時間睡眠, 入眠困難, 熟睡感の減少, 夜間覚醒時の疼痛感, 朝の睡眠慣性の遷延, 食後の覚醒維持の低下および午睡による眠気が改善しない ), あるいはナルコレプシー ( 例 : 入眠時幻覚,SOREMPがみられること) に類似した表現型が存在する 1, 39). 本症の眠気は主観的な評価と客観的な評価が乖離することがある 40). また本症に睡眠関連呼吸障害を合併することがあり 1, 40), 過眠症状の原因にもなりうるがこれとは関係なく過眠症状がみられることがあり, 中枢神経系の障害 ( 例 : 脳幹逢線核セロトニン神経系, 視床背内側核, 視床下部外側オレキシン神経系 ), 性格的要因 ( 例 : モチベーションの低下 無欲および無関心 ) および認知機能の低下などが関与している可能性がある 40). DM1 の過眠症状に対する治療は 2006 年 Chochrane Database Syst Revによると精神刺激薬のルーチンでの使用のエビデンスはないが 41),modafinilの有効性を示した報告が散見されている 42~44). おわりに中枢性過眠症群の標準的治療について神経内科領域で対応することが多い, ナルコレプシー, 特発性過眠症,KLS, 身体疾患による過眠症 ( 特にPD, 筋強直性ジストロフィー ) について概説した. 各疾患に対する治療におけるエビデンスレベルの高いものは少なく, エキスパートオピニオンによるコンセンサスステートメントあるいは地道なエビデンスレベルの高い臨床試験の集積を期待したい. [ 註 ] 一般名 商品名 modafinil モディオダール 589

18 methylphenidate リタリン pemoline ベタナミン clomipramine アナフラニール milnacipran トレドミン zolpidem tartrate マイスリー eszopiclone ルネスタ 文献 1)American Academy of Sleep Medicine : International classification of sleep disorders, 3rd ed. Darien, IL : American Academy of Sleep Medicine, 2014, pp 2) ナルコレプシーの診断 治療ガイドライン, 日本睡眠学会 HP ( 3) 日本睡眠学会ナルコレプシークリニカルクエスチョン ( 一般用 Q&A 20 問 ), 日本睡眠学会 HP( narcolepsy_cq_ippan_ pdf) 4) 日本睡眠学会認定委員会睡眠障害診療ガイド ワーキンググループ監修 : 睡眠障害診療ガイド, 文光堂, 東京,2011,48 58pp 5) 吉田祥, 本多真, 井上雄一ほか : 過眠症の診断 治療 連携ガイドライン. 睡眠医療 2 : , )Morgenthaler TI, Kapur VK, Brown TS et al : Standards of Practice Committee of the American Academy of Sleep Medicine. Practice parameters for the treatment of narcolepsy and other hypersomnias of central origin. Sleep 30 : , )Wise MS, Arand DL, Auger RR et al; American Academy of Sleep Medicine : Treatment of narcolepsy and other hypersomnias of central origin. Sleep. 30 : , )Berry RB, Brooks R, Gamaldo CE et al for the American Academy of Sleep Medicine : The AASM Manual for the Scoring of Sleep and Associated Events : Rules, Terminology, and Technical Specifications, Version Darien, IL : American Academy of Sleep Medicine, )Hirshkowitz M, Whiton K, Albert SM et al : National Sleep Foundation's sleep time duration recommendations : methodology and results summary. Sleep Health 1 : 40 43, )Thorpy M : Therapeutic advances in narcolepsy. Sleep Med 8 : , )Rogers AE, Aldrich MS, Berrios AM et al : Compliance with stimulant medications in patients with narcolepsy. Sleep 20 : 28 33, ) 高橋康郎 : クライネ レビン症候群 ( 反復性過眠症 ). 日臨 66 : , ) 高橋康郎 : 周期性傾眠症の臨床的研究. 精神誌 67 : , )Arnulf I, Rico TJ, Mignot E : Diagnosis, disease course, and management of patients with Kleine Levin syndrome. Lancet Neurol 11 : , )Arnulf I, Zeitzer JM, File J et al : Kleine Levin syndrome : A systematic review of 186 cases in the literature. Brain 128 : , )Arnulf I, Lin L, Gadoth N et al : Kleine Levin syndrome : a systematic study of 108 patients. Ann Neurol 63 : , )Mayer G, Leonhard E, Krieg J et al : Endocrinological and polysomnographic findings in Kleine Levin syndrome : no evidence for hypothalamic and circadian dysfunction. Sleep 21 : , )Gadoth N, Kesler A, Vainstein G et al : Clinical and polysomnographic characteristics of 34 patients with Kleine Levin syndrome. J Sleep Res 10 : , )Huang YS, Lin YH, Guilleminault C : Polysomnography in Kleine Levin syndrome. Neurology 70 : , )Oliveira MM, Conti C, Saconato H et al : Pharmacological treatment for Kleine Levin Syndrome. Cochrane Database Syst Rev. CD006685, 2009 Apr 15 21)Leu Semenescu S, Le Corvec T, Groos E et al : Lithium therapy in Kleine Levin syndrome : An open label, controlled study in 130 patients. Neurology 85 : , ) 堀口淳, 稲見康司, 西松央一ほか : パーキンソン病の睡眠覚醒障害. 臨神経 30 : , )Garcia Borreguero D, Larrosa O, Bravo M : Parkinson's disease and sleep. Sleep Med Rev 7 : , )Ondo WG, Dat Vuong K, Khan H et al : Daytime sleepiness and other sleep disorders in Parkinson's disease. Neurology 7 : , )Suzuki K, Miyamoto T, Miyamoto M et al : Excessive daytime sleepiness and sleep episodes in Japanese patients with Parkinson's disease. J Neurol Sci 71 : 47 52, ) 宮本雅之, 平田幸一, 鈴木圭輔ほか :Parkinson 病における睡眠障害の病態とその対応. 神経治療 31 : , )Frucht S, Rogers JD, Greene PE et al : Falling asleep at the wheel : motor vehicle mishaps in persons taking pramipexole and ropinirole. Neurology 52 : , )Paus S, Brecht HM, Koster J et al : Sleep attacks, daytime sleepiness, and dopamine agonists in Parkinson's disease. Mov Disord 18 : , )Ondo WG, Dat Vuong K, Khan H et al : Daytime sleepiness and other sleep disorders in Parkinson's disease. Neurology 57 : , )Paus S, Brecht HM, Koster J et al : Sleep attacks, daytime sleepiness, and dopamine agonists in Parkinson's disease. Mov Disord 18 : , )Trenkwalder C, Kies B, Rudzinska MF et al : Rotigotine effects on early morning motor function and sleep in Parkinson's disease : a double blind, randomized, placebo controlled study (RECOVER). Mov Disord 26 : 90 99, )Dusek P, Busková J, Růzicka E et al : Effects of ropinirole prolonged release on sleep disturbances and daytime sleepiness in Parkinson disease. Clin Neuropharmacol 33 : , )Neikrug AB, Liu L, Avanzino JA et al : Continuous positive airway pressure improves sleep and daytime sleepiness in patients with Parkinson disease and sleep apnea. Sleep 37 : , )Högl B, Saletu M, Brandauer E et al : Modafinil for the treatment of daytime sleepiness in Parkinson's disease : A double blind, randomized, crossover, placebo controlled polygraphic trial. Sleep 25 : , )Adler CH, Caviness JN, Hentz JG et al : Randomized trial of modafinil for treating subjective daytime sleepiness in patients with Parkinson's disease. Mov Disord 18 : , 590

19 )Ondo WG, Fayle R, Atassi F et al : Modafinil for daytime somnolence in Parkinson's disease : double blind, placebo controlled parallel trial. J Neurol Neurosurg Psychiatry 76 : , ) 野村哲志, 安田雄, 柏原健一ほか :Parkinson 病の睡眠障害に対するSelegilineの効果. 神経治療 24 : , ) 柏原健一, 今村貴樹 :Parkinson 病患者の日中の眠気に対する selegilineの効果. 神経治療 28 : , ) 宮本雅之, 宮本智之, 平田幸一 : 睡眠呼吸障害と神経疾患. 睡眠学 ( 日本睡眠学会編 ),2009, 朝倉書店, 東京, pp. 40)Laberge L, Begin P, Dauvilliers Y et al : A polysomnographic study of daytime sleepiness in myotonic dystrophy type 1. J Neurol Neurosurg Psychiatry 80 : , )Annane D, Moore DH, Barnes PR et al : Psychostimulants for hypersomnia (excessive daytime sleepiness) in myotonic dystrophy. Cochrane Database Syst Rev. CD003218, 2006 Jul 19 Review 42)Damian MS, Gerlach A, Schmidt F et al : Modafinil for excessive daytime sleepiness in myotonic dystrophy. Neurology 56 : , )MacDonald JR, Hill JD, Tarnopolsky MA : Modafinil reduces excessive somnolence and enhances mood in patients with myotonic dystrophy. Neurology 59 : , )Talbot K, Stradling J, Crosby J et al : Reduction in excessive daytime sleepiness by modafinil in patients with myotonic dystrophy. Neuromuscul Disord 13 : , 2003 IV 脳血管障害と睡眠異常はじめに脳血管障害に関わる睡眠障害は,Cheyne Stokes 呼吸 (Cheyne Stokes respiration:csr) に代表される中枢性睡眠時無呼吸 (central sleep apnea:csa) や閉塞性睡眠時無呼吸 (obstructive sleep apnea:osa) などの睡眠呼吸障害 (sleep disordered breathing: SDB), 不眠や過眠などの睡眠覚醒障害, 概日リズム障害の他レストレスレッグス症候群 / 周期性四肢運動などの睡眠関連運動障害がある.SDBは睡眠中の呼吸および換気障害をまとめた広義語であり, OSAやCSAが含まれる (Table 1). またOSAは高血圧や脂質異常症と同様に治療可能な脳血管障害の危険因子であり, さらに脳血管障害発症後のSDBは機能予後との関連が示されており, 脳血管障害の一次 二次予防の観点から重要である (Table 2). 1. 閉塞性睡眠時無呼吸の症状と診断日中の眠気はOSAの主要な症状の一つである. 主観的な眠気の評価にはEpworth Sleepiness Scale(ESS) が最も広く使用されており, 様々な8つの状況下で生じる日中の眠気を8 項目 ( 各項目 0~3 点 ) で評価し,10もしくは11 点以上を病的な過眠とする. しかし, 同等の重症度を示すOSA 患者において日中の眠気を示さない場合もあり, 家族からのいびきや睡眠時無呼吸の聴取は重要である.OSA のリスクとして肥満の他に下顎後退, 小下顎, 短頸, 狭咽頭腔といった顎顔面形態の異常が関与している.2005 年に改訂された睡眠障害国際分類第 2 版では,OSA は日中の眠気, 爽快感のない睡眠, 疲労感や喘ぎや窒息感で覚醒するといったSDB 関連症状に加え, 睡眠ポリグラフ検査上のapnea hypopnea index(ahi) が 5/h 以上, または自覚症状に関わらずAHI 15/h 以上となっている. Table 1 睡眠用語の定義 用語 定義 無呼吸 少なくとも10 秒の気流停止. 通常, 動脈血酸素飽和度の低下を伴う. 低呼吸 少なくとも基線の30 50% の気流の減少. 通常, 動脈血酸素飽和度の低下や覚醒反応を伴う. 覚醒無呼吸低呼吸指数 (Apnea hypopnea index:ahi) 閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸中枢性睡眠時無呼吸低呼吸睡眠時無呼吸症候群 エプワース眠気尺度 (Epworth Sleepiness Scale:ESS) 睡眠ポリグラフ検査不眠概日リズムアクチグラフィーレストレスレッグス症候群 周期性四肢運動 3 15 秒続く睡眠から覚醒した状態 1 時間あたりの無呼吸と低呼吸の数であり, 睡眠時無呼吸の重症度の指標 睡眠中の上気道の完全もしくは不全な虚脱による無呼吸や低呼吸 呼吸筋の換気努力を伴わない ( または不十分 ) 睡眠中の無呼吸や低呼吸 少なくとも 5/h 以上の AHI があり, いびき, 呼吸停止, 不眠, 熟眠感の欠如, 日中の過度の眠気, 疲労などの症状がある 日中の 8 つの異なる状況下における自覚的な眠気 ( 各項目 0 3 点 ) を評価する質問票.10 点以上が眠気ありと判定する 脳波, 眼球運動図, 筋電図, 心電図, 呼吸センサーの装着により睡眠状態を他覚的に評価する検査 入眠困難, 睡眠維持困難, 早朝覚醒などの症状をみとめる 約 24 時間周期の生理現象 時計型の機器の連続装着により体の動きを検出し, 長期にわたる睡眠覚醒リズムの評価に用いられる 下肢を動かしたいという衝動, 不快な感覚があり, 症状は安静時や夕方 夜に悪化し, 運動で改善する感覚運動障害. 日中または睡眠中に生じる四肢 ( 下肢が多い ) の律動的な運動. 睡眠開始や睡眠の持続を妨げる場合がある 文献 15 より改変引用 591

20 Table 2 睡眠障害と心血管疾患, 脳血管障害の関係を示す疫学調査 研究 デザイン n 転帰 OR/HR(95% CI) 閉塞性睡眠時無呼吸 SHHS ; Shahar et al, 2001 横断 6424 心不全 冠動脈疾患 脳血管障害 2.4( ) 1.3( ) 1.6( ) WSC ; Arzt et al, 2005 横断 1475 脳血管障害 3.8( ) Yaggi et al, 2005 前向き 1022 脳血管障害 / 死亡 2.0( ) Munoz et al, 2006 前向き 394 脳血管障害 2.5( ) SHHS ; Redine et al, 2010 前向き 5422 脳血管障害 男性 2.9( ) 女性 1.2( ) MESA ; Yeboah et al, 2011 前向き 5338 心血管イベント ( 脳血管障害, 心筋梗塞 など ) 心血管イベントによる死亡 不眠症 ARIC ; Phillips and Mannino, 2007 前向き 高血圧 心血管疾患 vs. 習慣性いびき 1.91( ) vs. 健常群 2.16( ) vs. 習慣性いびき 2.70( ) vs. 健常群 2.71( ) 1.2( ) 1.5( ) Vgontzas et al, 2009 横断 1741 高血圧 睡眠時間 <5 時間 vs. >6 時間 5.1( ) Chien et al, 2010 前向き 3430 冠動脈疾患 / 脳血管障害死亡 レストレスレッグス症候群 SHHS ; Winkelman et al, 2008 横断 3433 高血圧 冠動脈疾患 冠動脈疾患 / 脳血管障害 WSC ; Winkelman et al, 2006 横断 2821 高血圧 冠動脈疾患 / 脳血管障害 Ulfberg et al, 2001 横断 2608 心血管疾患 高血圧 1.8( ) 1.7( ) 1.3( ) 2.2( ) 2.4( ) 1.3( ) 2.6( ) 2.5( ) 1.5( ) 文献 15 より改変引用 SHHS:Sleep Heart Health Study,WSC:Wisconsin Sleep Cohort,MESA:Multi Ethnic Study of Atherosclerosis ARIC:Atherosclerosis Risk In Communities,OR: オッズ比,HR: ハザード比,95%CI:95% 信頼区間 一方,OSAを予測するスクリーニング質問票としてBerlin Questionnaire がある. 本評価では,1 いびきが少なくとも週に3 回ある,2 日中の眠気が週に3 回以上, または運転中に眠ってしまったことがある,3 高血圧がある, またはBMI 30kg/m 2 以上, のうち, 2 項目以上が当てはまる場合,OSAのリスクが高いとされている. 2. 閉塞性睡眠時無呼吸と脳血管障害リスク因子の関連 OSAは二次性高血圧の主要な原因であるほか, 糖尿病や肥満との関連もあり, 血管障害の危険因子である. 約 6000 名を対象としたSleep Heart Health Study(SHHS) 1) では,AHI>15/h 群は,AHI<15 群と比較し, 交錯因子補正後も高血圧のリスクが高い傾向を示し, さらには難治性高血圧を呈する事が知られている 2). また,OSA はインスリン抵抗性ならびにコルチゾールレベルの上昇を来たし,2 型糖尿病と密接に関係しているほか 3), 肥満を生じることが知られている. また,OSAは卵円孔開存症を介した奇異性脳塞栓症との関連が示唆されている. 無呼吸により胸腔内圧が増加することが一つの要因であると推察されるが, より詳細な検討が望まれている 4). 一方, OSAは睡眠中の不整脈出現 増悪を来す可能性があり, とくに洞停止および心室性期外収縮の出現が報告されている 5). さらに, 心機能が保たれている発作性ないし持続性心房細動を有する若年から中年 者では,OSA(AHI>15/h) が62% と対照群の38% に比べて高率に認められ, 交錯因子調節後においてもOSAと心房細動との関連は有意であり 6), 比較的高齢の心房細動患者を対象にした研究においても同様な報告がなされている 7). このような不整脈はrapid eye movement(rem) 睡眠時に増悪することが知られているほか, 自覚症状のある心房細動の出現は, その4 割以上が真夜中から午前 8 時に生じ,OSAの治療により不整脈の改善または軽快が得られている. また,MRIを用いた日本人の検討では, 中等症から重症のOSAでは無症候性脳梗塞が 25% に存在するが, 軽症例ではわずか6% のみであり,OSAは早期の脳血管障害を来している可能性が指摘されているほか 8), 頸動脈病変との関連も示唆さている 9). 3. 独立した脳血管障害発症リスクである閉塞性睡眠時無呼吸前述したようにOSAは高血圧や糖尿病, 不整脈といった脳卒中の危険因子を有する事が多い. 加えて習慣性いびきとOSA は中年および高齢者における脳血管障害の独立した危険因子であると報告されている. しかし,5338 例を対象とし平均 7.5 年追跡したMESA 研究 10) では, 交錯因子を補正した結果 SDB 群は習慣性いびき群と比較し, 有意に脳血管障害, 心筋梗塞を含む心血管イベント (hazard ratio(hr)1.91,95%ci: ;p=0.007) および心血管イ 592

21 Fig. 1 睡眠障害, 血管疾患と脳血管障害との関係睡眠障害は血管性機構を促進し, 血管性機構は睡眠障害を引き起こしたり, 悪化させる. 睡眠関連機構は危険因子 ( 高血圧など ) や無症候性血管疾患 ( 脳白質病変, 頸動脈疾患 ) に関与する. また睡眠関連機構は脳血管障害の発症にも直接的に関与している. ( 文献 15より改変引用 ) / - ベントによる死亡 (HR 2.70,95%CI: ;p=0.007) が高率であり, 正常対照群と比較しても心血管イベント発症 (HR 2.16, 95%CI: ; p=0.003) および死亡 (HR 2.71, 95%CI: ;p=0.002) が有意に多く認められた. しかし習慣性いびき群は正常対照群と差はみられなかった. この他,6000 例を対象としたSHHSの横断研究では,OSAは1.6 倍 (odds ratio(or)1.6,95%ci: ),1475 例を対象とした Wisconsin Sleep Cohort study 11) におけるAHI 20 例は 3.8 倍 (OR 3.8;95%CI: ) であり, 別の報告においても独立した脳血管障害または死亡のリスク因子であった (HR 3.3;95% CI: ) 12). 一方, 性別でみると,OSAの重症度に関わらず, 男性は脳血管障害の増加と関連がみられたが, 女性は無関係であった 13). また脳血管障害患者ではその72% がAHI>25のOSAを有しており, とくに原因不明の脳血管障害ではOSAの有病率が高いと報告されている 14). このようなOSAが脳血管障害の原因になる要因としては, 前述した奇異性脳塞栓症に加え, 血小板の活性化, さらには無呼吸による脳血流の低下と自動調節能の障害, および酸素飽和度の低下に伴う酸化ストレスによる内皮障害や, 閉塞イベントに伴う血圧変動ならびに夜間高血圧とそれに続く乱流や血管壁へのずり応力増大といった原因が示唆されている 15) (Fig. 1). このようなメカニズムは脳白質や小血管への障害を来たし, 不可逆的な構造変化を来す可能性がある. また, 急性期脳血管障害では約 7% に脳内盗血現象がみられるが,OSAでは閉塞イベント時の二酸化炭素上昇と酸素濃度の低下により, 本現象の引き金になると推察されている 15). 4. 中枢性睡眠時無呼吸と脳卒中 CSAは, 咽頭レベルの閉塞ではない, 呼吸努力によらない10 秒以上の呼吸停止で定義される. 代表的なCSRは反復する中枢性無呼吸と過換気を1 時間で10 回以上繰り返す 周期性ゆらぎ であり, 呼吸量が漸増, 漸減するものであり, 慢性心不全, 腎疾患などの重症度の高い身体疾患でみられる他, 脳血管障害発症による結果, 出現することがある. また, 急性期脳血管障害ではCSAの頻度が増加するが, 亜急性期には改善を示し発症から数ヶ月で消失する 16). 一方,CSRは心原性脳塞栓症のリスクである心不全と関連しており 5),AHIと頭部 MRI 上の白質高信号変化の増加および無症候性頸動脈病変との相関が示されている 15). 5. 不眠, 睡眠時間と脳血管障害との関係睡眠障害国際分類第 2 版において, 不眠症はA) 入眠障害, 睡眠維持困難, 早朝覚醒, 慢性的な睡眠の質の低下などの訴えに加えて, B) 適切な睡眠の機会や環境下においても症状が生じる,C) 日中の障害 : 日中の倦怠感, 眠気, 易怒性, 記憶または集中力の欠如などの存在と定義される. 不眠症は死亡と心血管死との関連が示されており 16),5 時間未満の睡眠は (OR 5.1;95%CI: ) および2 型糖尿病 (OR 2.95;95%CI: ) の危険因子となる 17, 18). 疫学調査では, 他の睡眠症状とは独立して,1 日 7 時間睡眠は最も死亡率が低く,8 時間以上または6 時間未満では死亡率が増加しており, 短時間睡眠 (HR 1.2;95%CI: ) および長時間睡眠 (HR 1.7;95%CI: ) が虚血性脳血管障害の予測因子とされている 19). 短時間睡眠ではインスリン感受性の障害や, 交感神経系 593

22 Table 3 治療のエビデンス 推奨 エビデンスレベル 閉塞性睡眠時無呼吸 男性は全ての重症度, 女性は AHI>25の閉塞性睡眠時無呼吸は脳血管障害の一次予防の観点から治療を開始すべきである全ての脳血管障害患者は閉塞性睡眠時無呼吸のリスクによって分類されるべきである閉塞性睡眠時無呼吸のリスクが高い急性期脳血管障害患者は発症 12 週以降にPSGを施行すべきである体位療法は閉塞性睡眠時無呼吸のある, または疑われる急性期脳血管障害患者における代替治療となりえる中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸のある脳血管障害患者は脳血管障害の二次予防の観点から連日の CPAP 治療が推奨される B A B B B 不眠症 短時間型睡眠導入剤や認知行動療法は慢性不眠症の第一選択となる治療法である. しかし, 脳血管障害患者を対象とした試験はない C 概日リズム障害 異常な血圧低下パターンのある患者には時間降圧療法により心血管疾患や脳血管障害のリスクを軽減すべきである B レストレスレッグス症候群 / 周期性四肢運動 基底核, 放線冠や錐体路障害のある脳血管障害患者では RLS をスクリーニングすべきである 脳血管障害後の週に 2 回以上の RLS 症状 ( 周期性四肢運動合併の有無に関わらず ) は不眠, 睡眠の分断, 日中の障害をきたすため, 脳血管障害の機能回復を高めるために適切に治療すべきである. B C 文献 15より改変引用 AHI: 無呼吸低呼吸指数,PSG: 睡眠ポリグラフ検査,CPAP: 持続陽圧呼吸,RLS: レストレスレッグス症候群エビデンスレベル :A 強いエビデンスがある,B エビデンスはあるが一致していない,C エビデンスはない の緊張およびコルチゾールレベルの増加により炎症性マーカーの変動が要因と推察されている. 6. 概日リズム障害と脳血管障害視床下部に存在する視交叉上核により深部体温, メラトニンや血圧などの生体内の代表的な内因性リズム ( 概日リズム ) が形成され, 光や食事といった外的要因に同調し,24 時間の周期を示している. 代表的な概日リズム障害は交代制勤務者 ( シフトワーカー ) にみられやすい. 睡眠時間の短縮や夜間業務によるストレスなどから血圧が上昇し, さらには肥満や糖尿病, 心血管疾患, 死亡といった健康被害を来すことが知られているが, 概日リズム障害と脳血管障害との関連は明らかにはなっていない. しかし, 約 8 万人の女性看護師を対象とした検討では, 交錯因子の補正後においても, シフトワークにより5 年に4% の割合で脳血管障害のリスクが増加することが報告されている 20). 一方, 正常者における血圧は,non REM 睡眠中に10~20% 低下するリズム (dipper type) を示すが, この dipping が消失する例では左室肥大や心筋梗塞, うっ血性心不全, 血管性認知症および脳血管障害といった末梢臓器障害を来すことが知られているほか, 異常な血圧変動は頭蓋内脳出血, 虚血性脳血管障害, 無症候性脳梗塞および脳血管障害による死亡との関連が報告されている. さらに急性期脳血管障害では, 血圧や体温の概日リズムが消失する例が存在し, 予後不良因子となる可能性が示唆されている 15). 7. 覚醒の障害 過眠脳血管障害患者において日中の過度の眠気と疲労は抑うつ, 不安や認知機能障害, リハビリテーションや生活の質にも影響する. 過度な日中の眠気と脳血管障害発症との関連を示す報告の他 21), 睡眠需要の増加 (8 時間以上 ) と死亡率との関連を示す報告が示され ている 22). 眠気や睡眠需要の増加と脳血管障害や死亡率との関連は, うつ病を含む社会背景因子の補正後も有意とされ, その原因は不明である. 脳血管障害後による過眠 (poststroke hypersomnia) の原因として傍正中視床梗塞が代表的であり, その他に中脳, 橋上部の梗塞においても報告されている. 視床下部, 両側視床, 腹側視床, 中脳被蓋部, 橋上部を通る上行性網様体賦活系の障害により覚醒系が障害され, 初期には昏睡 意識障害を呈し, 回復期に過眠が顕在化する場合も多い. 8. レストレスレッグス症候群 / 周期性四肢運動 Restless legs syndrome (RLS) や周期性四肢運動 (periodic limb movements in sleep:plms) などの睡眠関連運動障害と心血管疾患や脳血管障害との関連を示す報告がある.RLS は PLMS を 8 9 割と高率に合併し,PLMSでは睡眠中の交感神経活動が亢進し, 血圧および心拍数が変動することが原因の一つと考えられているが, この変化が脳血管障害の原因となる二次性高血圧を引き起こすのに十分かどうかについては議論されている 15). また, 虚血性脳血管障害発症後にRLSやPLMSが増悪ないし新たに出現する場合があり, 橋, 基底核, 放線冠病変との関与が報告されている.PLMSは脳卒中の既往がない対照群では13% であったのに対し, 脳血管障害の既往群では48% と高率に認められ 23), 発症 1ヶ月以内の脳血管障害では 12% にRLSが出現すると報告されている 24). 9. 睡眠障害の治療 SDBの治療について,OSA 軽症例では側臥位就寝や口腔内装置, 中等度から重度 OSA ではcontinuous positive airway pressure (CPAP) 療法が推奨される (Table 3). 本邦では睡眠ポリグラフ検査においてAHI 20 以上, 簡易睡眠検査においてAHI 40がCPAP 594

23 療法の適応となる.CPAP 療法は睡眠の質および夜間 日中の自覚症状の改善に加え, アドヒアランスが良い場合 ( 連日 4 時間以上の使用 ), 長期的には心血管イベントの発症を減少し, とくに有意な降圧効果を認める 25). また, 急性期脳血管障害におけるCPAP 導入に関する, 適切な開始時期やその有用性については未だ確立していない. さらには認知機能障害や運動障害により適切な導入が困難な例も少なくない. しかし, 発症 2ヶ月以降において,CPAPアドヒアランスが良い例では心血管疾患や脳血管障害による死亡率は減少しており 26),OSA 中等症以上では試みるべきであろう. また,CPAP 導入が困難な症例では体位変換 ( 側臥位就寝 ) を検討すべきである. 一方,CSA/CSRの治療にはCPAP 療法や酸素投与の他,Bilevel PAP や呼吸変動に対応するadaptive servo ventilation が有効である. 不眠に対しては, まずSDB や RLS/PLMS などを鑑別した後に, 短時間型睡眠導入薬の併用や睡眠習慣に対する認知行動療法を試みる. 脳血管障害後の血圧の概日変動消失に対しては, 就寝前の降圧薬投与による時間降圧療法が血圧パターンの正常化のみならず, 心 脳血管イベントによる死亡を有意に軽減したと報告されている. 日中の傾眠, 概日リズム睡眠障害に関しては, 時間とともに改善がみられる場合もあるが, 昼夜の区別を明確にし, アクチグラフィーを用いた評価も有用である. 文献 1)Nieto FJ, Young TB, Lind BK et al : Association of sleep disordered breathing, sleep apnea, and hypertension in a large community based study. Sleep Heart Health Study. JAMA 283 : , )Williams SK, Ravenell J, Jean Louis G et al : Resistant hypertension and sleep apnea : pathophysiologic insights and strategic management. Curr Diab Rep 11 : 64 69, )Rasche K, Keller T, Tautz B et al : Obstructive sleep apnea and type 2 diabetes. Eur J Med Res 15(supple.2) : , )Lau EM, Yee BJ, Grunstein RR et al : Patent foramen ovale and obstructive sleep apnea : a new association? Sleep Med Rev 14 : , )Somers VK, White DP, Amin R et al : Sleep apnea and cardiovascular disease : an American Heart Association/American College Of Cardiology Foundation Scientific Statement from the American Heart Association Council for High Blood Pressure Research Professional Education Committee, Council on Clinical Cardiology, Stroke Council, and Council On Cardiovascular Nursing. In collaboration with the National Heart, Lung, and Blood Institute National Center on Sleep Disorders Research (National Institutes of Health). Circulation 118 : , )Stevenson IH, Teichtahl H, Cunnington D et al : Prevalence of sleep disordered breathing in paroxysmal and persistent atrial fibrillation patients with normal left ventricular function. Eur Heart J 29 : , )Braga B, Poyares D, Cintra F et al : Sleep disordered breathing and chronic atrial fibrillation. Sleep Med 10 : , )Nishibayashi M, Miyamoto M, Miyamoto T et al : Correlation between severity of obstructive sleep apnea and prevalence of silent cerebrovascular lesions. J Clin Sleep Med 4 : , )Minoguchi K, Yokoe T, Tazaki T et al : Increased carotid intima media thickness and serum inflammatory markers in obstructive sleep apnea. Am J Respir Crit Care Med 172 : , )Yeboah J, Redline S, Johnson C et al : Association between sleep apnea, snoring, incident cardiovascular events and all cause mortality in an adult population : MESA. Atherosclerosis 219 : , )Arzt M, Young T, Finn L et al : Association of sleep disordered breathing and the occurrence of stroke. Am J Respir Crit Care Med 172 : , )Yaggi HK, Concato J, Kernan WN et al : Obstructive sleep apnea as a risk factor for stroke and death. N Engl J Med 353 : , )Redline S, Yenokyan G, Gottlieb DJ et al : Obstructive sleep apnea hypopnea and incident stroke : the sleep heart health study. Am J Respir Crit Care Med 182 : , )Johnson KG, Johnson DC : Frequency of sleep apnea in stroke and TIA patients : a meta analysis. J Clin Sleep Med 6 : , )Wallace DM, Ramos AR, Rundek T : Sleep disorders and stroke. Int J Stroke 7 : , )Chien KL, Chen PC, Hsu HC et al : Habitual sleep duration and insomnia and the risk of cardiovascular events and all cause death : report from a community based cohort. Sleep 33 : , )Vgontzas AN, Liao D, Bixler EO et al : Insomnia with objective short sleep duration is associated with a high risk for hypertension. Sleep 32 : , )Vgontzas AN, Liao D, Pejovic S et al : Insomnia with objective short sleep duration is associated with type 2 diabetes : a population based study. Diabetes Care 32 : , )Gallicchio L, Kalesan B : Sleep duration and mortality : a systematic review and meta analysis. J Sleep Res 18 : , )Brown DL, Feskanich D, Sanchez BN et al : Rotating night shift work and the risk of ischemic stroke. Am J Epidemiol 169 : , )Boden Albala B, Roberts ET, Bazil C et al : Daytime sleepiness and risk of stroke and vascular disease : findings from the Northern Manhattan Study (NOMAS). Circ Cardiovasc Qual Outcomes 5 : , )Hublin C, Partinen M, Koskenvuo M et al : Sleep and mortality : a population based 22 year follow up study. Sleep 30 : , )Coelho FM, Georgsson H, Narayansingh M et al : Higher prevalence of periodic limb movements of sleep in patients with history of stroke. J Clin Sleep Med 6 : , )Lee SJ, Kim JS, Song IU et al : Poststroke restless legs syndrome and lesion location : anatomical considerations. Mov Disord 24 : 77 84, )Barbe F, Duran Cantolla J, Capote F et al : Long term effect 595

24 of continuous positive airway pressure in hypertensive patients with sleep apnea. Am J Respir Crit Care Med 181 : , )Martinez Garcia MA, Soler Cataluna JJ, Ejarque Martinez Letal: Continuous positive airway pressure treatment reduces mortality in patients with ischemic stroke and obstructive sleep apnea : a5 year follow up study. Am J Respir Crit Care Med 180 : 36 41, 2009 V 変性疾患と睡眠 V 1 認知症と不眠はじめに本邦では人口の高齢化が進んでおり,2013 年 65 歳以上の高齢者は 3186 万人で過去最多となり, 総人口に占める割合も25% となった. 結果, 日本人の4 人に1 人が高齢者となっている. 今後もさらに高齢化が進んでいく. 一般的に睡眠障害の有病率は加齢と共に急増し, 加齢による影響と共に身体疾患, 精神障害, 薬剤による影響, その他の睡眠障害の合併もみられる. 人口の高齢化と共に認知症の患者さんも激増している. 厚生労働科学研究における認知症の全国有病率推定値は15%(95% 信頼区間で12~17%) で, 全国の認知症有病者は約 439 万人 (95% 信頼区間で約 350~497 万人 ) と推定されている. 最も多いのはAlzheimer 病 (Alzheimer disease:ad) であり, 血管性認知症 (vascular dementia:vad),lewy 小体型認知症 (dementia with Lewy bodies:dlb) の順に頻度が多いと考えられている. 睡眠は認知機能において重要な役割を担っており, 睡眠の質や量の低下は一過性の認知機能の低下だけではなく, 中枢神経系の不可逆的変化を引き起こすと考えられている 1). 睡眠障害の程度と認知症の重症度の関連性は高いことが知られており, 睡眠障害を診断し治療することは重要である. 1. 高齢者の不眠加齢により夜間の睡眠時間の短縮, ステージ4を中心とする徐派深睡が著しい減少, ステージ1の浅い睡眠が増加等睡眠パターンは変化する. さらに, 就寝後 REM 睡眠が出現するまでの時間が短縮するが, 若年者に認められる明け方に向かって次第に REM 睡眠が長くなる傾向は失われ,REM 睡眠量は減少する. また, 日中の低活動などにより睡眠の必要性が低下し, 小さな刺激でも覚醒するので, 中途覚醒が増え, 再入眠にも時間を要するようになる. 生体リズム機構にも加齢が影響し, 早寝早起きの朝型に移行すると共に, 日中の居眠りが多い多相性睡眠となる. 睡眠習慣も変化し, 寝床で過ごす時間が延長し, 実質の睡眠時間が減少するので, 不眠を自覚しやすくなる. このように, 入眠困難, 中途覚醒, 早朝覚醒などの睡眠障害を起こしやすく, 熟眠感が得られず, 日中に眠気や倦怠感が生じ, 日常生活にも支障をきたすという悪循環に陥りやすくなる 2). 1) 高齢者不眠の特徴 (Table 1) 2) 高齢になると, 生体リズムに関わるメラトニンの分泌量が減少する為に不眠になりやすくなる. また, 尿濃縮能, 膀胱拡張機能が低下するため頻尿になり, 中途覚醒が多くなる. 高齢者の 25% から 40% に不眠を認める. 加齢と共に慢性疾患の有病率は増え, それらの身体疾患による痛み, かゆみ, 咳, 呼吸困難, 胸内苦悶なども不眠を引き起こす. うつ病, アルコール依存などの精神障害も不眠を引き起こしやすい. さらに, 高齢者では体重に占める水分の比率が低く, 腎臓の代謝能力, 肝臓の代謝能力が低下し, 薬物の血中濃度が上昇しやすく, 体内に長時間貯留する. そのため, 慢性疾患への加療として使用される薬物も不眠の原因になることがある. また高齢者は多数の薬剤を服用していることが多く薬剤交互作用を起こしやすいことも睡眠に悪影響を与える. その他の原因として睡眠疾患である睡眠時無呼吸症候群, レストレスレッグス症候群, 周期性四肢運動障害, レム期 596

25 Table 1 高齢者の睡眠の主な原因 1. 一過性の原因 : 急性の精神的ストレス ( 悲嘆, 恐怖, 不安, 怒り ), 環境の変化 ( 入院, 旅行, 騒音 ) 2. 不適当な睡眠習慣 3. 精神疾患 : うつ病, 不安障害, アルコール症, 統合失調症 4. 中枢神経疾患 : 脊髄小脳変性症, 認知症,Parkinson 病, 脳血管障害特発性周期性四肢運動 ( 夜間ミオクローヌス ), 致死性家族性不眠症 5. 全身疾患 : 睡眠時無呼吸症候群, 心不全, 呼吸不全, 消化性潰瘍, 夜間頻尿, 慢性疼痛 6. 概日リズム障害 : 睡眠相の前進 後退, 時差, 交代勤務 7. 薬物 : 睡眠薬,theophylline,β 遮断薬,phenytoin,L DOPA, 利尿薬 8. 嗜好品 : アルコール, カフェイン Table 2 高齢者の睡眠障害の治療 1. 原因薬物の中止 : ほかの薬物の開始も防止 2. 好ましい睡眠習慣の確立 3. 睡眠障害をきたす特定の疾患の治療夜間ミオクローヌス ( 短時間作用型ベンゾジアゼピン, ドパミン製剤 ) 睡眠時無呼吸 ( 体重減少, 禁煙,nasalCPAP) 4. 睡眠障害をもたらす内科疾患, 精神神経疾患の治療 5. 客観的治療効果のモニタリング Haponik EF and McCall WV. Sleep problems. In : Hazzard WR, et al. Principles of Geriatric Medicine and Gerontology 4th ed. McGraw Hill, New York, , より一部改編睡眠行動異常症なども原因となるが, これらは高齢者ほど頻度が増す傾向にある. 逆に, 不眠症や過眠症が肥満, 糖尿病, 高血圧, 高脂血症, 虚血性心疾患の増悪因子になることもわかっており, 対処の必要性がある. 2) 高齢者の不眠に対する治療 (Table 2) 3) 前述のように高齢者には多種の原因が考えられるため, 詳細な医療面接を行い正確な診断の上で適切な対応をする必要がある. 基礎疾患の治療や睡眠障害の要因除去を行い, 睡眠衛生教育が必要となる. 就寝前に入浴して身体を温める, 昼間に適度な運動をする, 夕暮れ時に日光に当たる, 昼寝を避ける, 就寝前のカフェインの摂取や飲酒を控える, 寝心地の良い寝具に替える, 窓を遮音 遮光する, 寝室の温度調整をする, 必要以上に早い時刻に就寝しない等の睡眠環境を整理する. その上で改善が得られない場合に, 睡眠薬の服用が必要になる. 適切な睡眠薬の使用により十分な睡眠をとることにより, 翌日の精神 運動機に良い影響を与える. 睡眠薬は一般に作用時間によって超短時間型 短時間型 中時間型 長時間型の 4 区分に分類され, 睡眠障害タイプ ( 入眠障害型 中途覚醒型 早朝覚醒型 熟眠障害型など ) によって選択します (Table 3). しかし, 睡眠障害をきたす特定の疾患にはそれぞれ特有の対処をする必要がある 4). 2. 認知症の不眠前述のように, 高齢者は不眠を起こしやすいが, 認知症患者では通常の加齢変化がより強く表れるために強い不眠症状を呈している Table 3 わが国で使用されているベンゾジアゼピン系睡眠薬 作用時間一般名商品名 超短時間作用型 短時間作用型 中間作用型 長時間作用型 臨床用量 (mg) 消失半減期 ( 時間 ) ramelteon ロゼレム * 8 1~2 triazolam ハルシオン 0.125~0.5 2~4 zopiclone アモバン */ ルネスタ * 7.5~10 4 zolpidem マイスリー * 5~10 2 etizolam デパス 1~3 6 brotizolam レンドルミン 0.25~0.5 7 rilmazafone リスミー 1~2 10 lormetazepam エバミール ロラメット 1~2 10 nimetazepam エリミン 3~5 21 flunitrazepam ロヒプノール サイレース 0.5~2 24 estazolam ユーロジン 1~4 24 nitrazepam ベンザリン ネルボン 5~10 28 flurazepam ダルメート ベノジール 10~30 65 haloxazolam ソメリン 5~10 85 quazepam ドラール 15~30 36 * 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬 認知症患者も多く, 約 1/2に睡眠障害があり, 認知機能や生活機能に影響を与えている 5). ただし, 睡眠状態の主観評価ができない認知症患者が真に不眠症であるのか判断することは容易ではなく, 睡眠状態に関する情報は, 本人よりも家族から得られる場合が圧倒的に多く, よほど意識して聴取しない限りそれらは介護負担が伴う夜間不眠に関するものに偏向していると考えて間違いがない. 一方, 昼寝は介護者にとっては何らの負担にならないため, 陳述されることは稀であり, 結果として, 不眠や随伴行動異常を主訴とする患者の診察時には治療者は不眠症を連想しやすいが, この先入観によって誤った薬物治療を選択することがあり, 注意が必要である 6). しかし, 介護者の内, 約 2/3が睡眠障害を経験しており, 日常の睡眠の問題やうつ, 身体的な健康状態が大きな問題となっている 7). そのためにより適切な治療も必要となりますが, 不眠には多要因が関わっており, 以下, 認知症の病型毎に睡眠障害を概説する (Table 4) 8). 3. ADの不眠 ADは認知症の70% を占めると言われており 9),AD 患者の44% が何らかの不眠を呈する 10). 不眠は入眠時間の遅延, 徐派睡眠の減少, REM 睡眠の減少, 夜間中途覚醒の増加と共に昼寝の増加を特徴とする. 不眠はADの中期から晩期に興奮, 夜間せん妄, 徘徊, 日没症候群などの認知行動変化を引き起こす 11). ADの不眠に対しては夜間の睡眠確保や異常行動の抑制の為に睡眠薬や抗精神病薬が用いられている. しかしながら, 少なくともADの睡眠障害や行動障害に関しては, 臨床で頻用されている抗精神病薬の効果は極めて限定的であり, むしろ生命予後を悪化させる危険性が高く, 長期使用は慎むべきである 12). 同様に, 鎮静系抗うつ薬, benzodiazepineの本症に対する治療効果を支持するエビデンスも乏しい状態である. したがって, 確定診断がなされた後でも, 薬物療法を行う際には絶えずrisk benefit balanceを考慮する必要がある 13). 現状では,ADの不眠に対する治療薬の効果は乏しい. 薬物療法の効果は不十分な中, 高度照射療法が一番効果の高い治療と考えられている 14). 597

26 標準的神経治療 不眠 過眠と概日リズム障害 㠀ㄆ ㄆ Paavilainen P, et al. J Sleep Res 2005 Fig. 1 Table 4 認知症での睡眠覚醒パターン 主な認知症に関連した不眠 病型 Alzheimer病 血管性認知症 不眠 症状 行動障害 症状 系など広範な生理機能リズムの異常が併存する メラトニンは低振 幅となり 夜間血中 16 および脳脊髄液中 17 のメラトニン濃度は著し 不眠を起こす病態 このため 社会 く減少し 逆に日中の分泌抑制は不十分となる 18 睡眠潜時遅延 徐派睡眠減少 中途 早朝覚醒 頻回な昼寝 概日リズム障害 睡眠時無呼吸症候群 興奮 レストレスレッグス症候 混乱 日没症候群 群 夜間徘徊 夜間不穏 認知機能障害 睡眠の質低下 日中の傾眠 混乱 告では 健常者と比較して不規則な睡眠覚醒パターンを起こすこと このように 夜間不眠を呈する認知症を診察 も報告されている 19 する際に留意すべき疾患として 概日リズム睡眠障害の一型である 不規則型睡眠 覚醒タイプが挙げられる 概日リズム障害に対する 睡眠時無呼吸症候群 睡眠薬や鎮静系薬物は無効であり 一時的に夜間睡眠が確保された ようにみえても 薬物の体内蓄積や昼寝の増加により 長中期的に Lewy 小体型認知症 概日リズム障害 幻覚 中途覚醒 睡眠効率低下 入眠困難 レム睡眠行動障害 睡眠中の運動障害 呼吸障害 前頭側頭型認知症 睡眠相前進 睡眠相後退 睡眠効率低下 睡眠時間短縮 周期性四肢運動 言語障害 人格変化 制約の少ない場合や光の暴露が乏しい環境で不規則な睡眠覚醒パ 認知症患者の活動度を調べた報 ターンが出現する可能性がある 13 は睡眠 覚醒パターンがより不規則になり activity of daily living ADL が低下するケースが多い 生物時計機能を増強するために 介護者 看護者 家族が毎日定時に行う声かけ 食事 清拭 着替 え 入浴 作業療法やレクリエーション 音楽やマッサージなどの 感覚器官への物理的刺激が有効なときがある 車椅子を利用して散 歩を兼ねた日光浴を行う 日照暴露量が多い窓際のベットを利用す 高照度 るなどの生物時計の光同調を促す試みも効果を発揮する 13 光療法も有効な治療である 14 Zhou QP, et al. Curr Neurol Neurosci Rep 2012より一部改編 4. VaDの不眠 VaD の VaD は 2 番目に多い認知症で 17.4% と報告されている 9 不眠で主な特徴は睡眠時の上気道閉塞 いびき 日中の眠気等を伴 ADでは視交叉上核の変性 脱落のためその容積および総細胞数が う睡眠時無呼吸症候群 sleep apnea syndrome SAS が挙げられ この 著しく減少することが組織病理学的に明らかにされている 15 診断 る 一般高齢者での有病率は 20% 前後と考えられているが 20 結果 AD患者では睡眠障害と同時に自律神経系 内分泌系 循環器 基準として apnea hypopnea index AHI を 5 回/ h 以上とした場合 神経治療 Vol No

27 に認知症の 90% で認め,AHIを15 回 /h 以上とした場合には認知症の 63% に認めると報告されている 21). このように認知症に頻度の多い SASではあるが, 未診断, 未治療例が多い 22).SASは一般成人では閉塞型が多く, 脳梗塞をはじめとする脳循環障害のリスクを高めるが, 高齢者のSASでは中枢型の占める割合が増加し, 病態としては中枢性延髄呼吸障害が考えられている 10). 治療は経鼻持続陽圧呼吸器装置 (continuous positive airway pressure:ncpap) や下顎前方固定装置を用いた治療となるが, まずは適切な状況を評価する必要がある. 5. DLBの不眠 DLBはADよりも重度な睡眠障害を認めることが多く, 夜間不眠や睡眠中の運動症状, 日中の眠気が多い 23).DLBで中核になる不眠は REM 期睡眠行動異常症 (REM sleep behavior disorder:rbd) がある.RBDはREM 睡眠時に筋緊張低下機構が障害されるために, 夢内容に一致した異常行動が出現するもので,polysomnography (PSG) 上, 筋活動が十分抑制されず亢進した状態の REM sleep without atonia(rwa) が認められる.RBDは高齢者の 0.38~0.5% にみられると報告されているが 24),2005 年のDLB 改訂臨床診断基準で示唆的所見の 1つとしてRBDがあげられている 25).RBDはDLBにおいてもPDと同様に, 認知症やパーキンソニズムが出現する何年も前から出現し得ることが知られている 26). タウオパチーのADにおいてもRBD 診断基準を満たした剖検例が報告されているが 27), この症例は AD に Lewy 小体病 ¼DLB を合併していたと報告されている. このように,RBDはDLB 等のシクレイノパチーとの関連が示唆されている.RBDに対して他疾患と同様に clonaepamが有効だが, 認知機能やSASの悪化, 転倒について注意が必要である.DLB 症例においてはdonepezil 28) や memantine 29) の有用性も報告されているが, エビデンスは乏しい状況である. 6. 前頭側頭型認知症 (frontotemporal lobar degeneration: FTD) の不眠 FTDはPick 病などを含んだ初老期認知症であり, 遂行や言語の機能障害や進行性の行動異常が特徴である 10).FTDではしばしば活動性や概日のリズム障害がみられ,AD と比べても睡眠の分断化が強く,ADの不規則な概日リズムと異なって朝の活動性低下を伴った夜間の活動性上昇がみられる. そのため, 睡眠時間は短く, 睡眠効率も悪くなります 30). おわりに高齢者の特徴を含んだ認知症の不眠を概説した. これらの疾患は不眠が精神症状や身体機能低下を起こすことがあり, 対処が必要である. しかし, 多様な要因が関与している為, 介護者を含めて適切に評価上で対応する必要がある. しかし, 認知症の不眠に特有のエビデンスのある対処はないのが実状であり, 疾患の特異性からデーターの集積が望まれる. 文献 1)Jelicic M, Bosma H, Ponds RW et al : Subjective sleep problems in later life as predictors of cognitive decline. Report form the Maasticht Aging Study (MAAS). Int J Geritatr Psychiatry 17 : 73 77, ) 飯島節 : 不眠. 老年医学テキスト改訂第 3 版. メディカルビュー社, 東京,85 87,2008 3)Haponik EF, McCall WV : Sleep problems. In : Hazzard WR, et al. Principles of Geriatric Medicine and Gerontology 4th ed. McGraw Hill, New York, , ) 上島国利 : 認知症における睡眠障害の薬物療法を教えてください. 治療 93 : , )Foley DJ, Monjan AA, Brown SL et al : Sleep complaints among elderly persons : an epidemiological study of three communities. Sleep 18 : , )MuCurry SM, Logsdon RG, Teri L et al : Sleep disturbances in caregivers of persons with dementia : Contributing factors and treatment implications. Sleep Med Rev 11 : , ) 三島和夫 : 認知症にみられる睡眠障害と治療. 精神経誌 114 : , )Zhou QP, Jung L, Richards KC : The management of sleep and circadian disturbance in patients with dementia. Curr Neurol Neurosci Rep 12 : , )Plassman BL, Langa KM, Fisher GG et al : Prevalence of dementia in the United States : the aging, demographics, and memory study. Neuroepidemiology 29 : , )Petit D, Montplasir J, Boeve BF : Alzheimer's disease and other dementias. In : Principles and Practice of Sleep Medicine. 5th ed. Elsevier Saunders; 2011 : This chapter provides a comprehensive review of dementias and treatment stratergies. 11)Lee JH, Bliwise DL, Ansari FP et al : Daytime sleepiness and functional impairment in Alzheimer disease. Am J Geristr Psychiatry 15 : , )Ballard C, Howard R : Neuroleptic drugs in dementa : benefits and harm. Nat Rev Neurosci 7 : , ) 三島和夫 : 認知症の睡眠問題. 老年期認知症研会誌 17 : , )Salami O, Lyketsos C, Rao V : Treatment of sleep disturbance in Alzheimer's dementia. Int J Geriatr Psychiatry 26 : , )Swaab DF, Fliters E, Partiman TS : The suprachiasmatic nucleus of the human brain in relation to sex, age and senile dementia. Brain Res 342 : 37 44, )Mishima K, Tozawa T, Satoh K et al : Melatonin serection rhythm disorders in patients with senile dementia of Alzheimer's type with distuberd sleep waking. Biol Psychiatry 45 : , )Liu RY, Zhou JN, van Heerikhuize J et al : Decreased melatonin levels in postmortem cerebrospinal fluid in relation to aging, Alzheimer's disease, and apolipoprotein E epsilon4/4 genotype. J Clin Endocrinol Metab 84 : , )Ohashi Y, Okamoto N, Uchida K et al : Daily rhythm of serum melatonin levels and effect of light exposure in patients with dementia of the Alzheimer's type. Biol Psychiatry 45 : , )Paacilainen P, Korhonen I, Lotjonen J et al : Circadian activity rhythm in demented and non demented nursing home residents measured by telemetric actigraphy. J Sleep Res 14 : 61 68, )Young T, Shahar E, Nieto FJ, Sleep Heart Health Study Research Group : Predictors of sleep disordered breathing in 599

28 community dwelling adults. Arch Intern Med 162 : , )Gaugler JE, Kane RE, Kane RA et al : Caregiving and institutionalization of cognitive impaired older people : utilizing dynamic predictors of change. J Sleep Res 4 : 15 20, )Tarasiuk A, Greenberg Dotan S, Simon Tuval T et al : The effect of obstructive sleep apnea on morbidity and health care utilization of middle aged and older adults. J Am Geristr Soc 56 : , )Deschenes CL, McCurry SM : Current treatments for sleep disturbances inindividuals with dementia. Curr Psychiatry Rep 11 : 20 26, )Trotti LM : REM sleep behaviour disorder in older individuals : epideimiology, pathophysiology and management. Drugs Aging 27 : , )Boeve BF, Silber MH, Ferman TJ et al : REM sleep behaviour disorder and degenerative dementia. An association likely reflecting Lewy body disease. Neurology 51 : , )Boeve BF, Silber MH, Ferman TJ : REM sleep behavior disorder in Parkinson's disease and dementia with Lewy body disease. Neurology 51 : , )Scheck CH, Garcia Rill E, Skinner RD et al : A case of REM sleep behavior disorder with autopsy confirmed Alzheimer's disease : Postmortem brain stem histochemical analyses. Biol Psychiatry 40 : , )Ringman JM, Simmons JH : Treatment of REM sleep behavior disorder with donepezil : A report of three cases. Neurology 55 : , )Larsson V, Aarsland D, Ballard C et al : The effect of memantine on sleep behaviour in dementia with Lewy bodies and Parkinson's disease dementia. Int J Geriatr Psychiatry 25 : , )Anderson KN, Hatfield C, Kipps C et al : Disturbed sleep and circadian patterns in frontotemporal dementia. Eur J Neurol 16 : , 2009 V 2 多系統萎縮症と睡眠異常はじめに多系統萎縮症 (multiple system atrophy:msa) の睡眠障害としては, 声帯開大不全に伴う睡眠呼吸障害 (sleep disordered breathing:sdb) 1) がよく知られているが, それ以外にも多彩な睡眠障害を呈する. また睡眠中に突然死を来すことが知られており, 突然死防止の対策も必要である. 本稿ではMSAの睡眠障害の特徴, および突然死の機序と対策について概説する. 1. 睡眠障害の特徴 1) 睡眠構造の変化 MSA では睡眠時間の短縮と睡眠の断片化に加え, 徐波睡眠や REM 睡眠の減少といった睡眠構造の変化が認められる 2). この原因としては,SDBのほか, 後述するREM 睡眠行動障害 (REM sleep behavior disorder:rbd), レストレスレッグス症候群 ( 下肢静止不能症候群,restless legs syndrome:rls) など, 多彩な要因が関与しているものと考えられる. 2) REM sleep behavior disorder(rbd) RBDはREM 睡眠期に生じる異常行動で,Parkinson 病 (Parkinson disease:pd) やLewy 小体型認知症といったαシヌクレイノパチーでしばしば認められる.RBDはMSAにおいて, 運動症状の出現以前にも生じうる非運動症状のひとつであり, 初発症状にもなりうる 3). 出現時期はMSAの発症直前, ないし発症時に限られ, 重症例は稀である 4). 対策としてはまずベッド周囲から危険なものを取り除くよう指導する. 治療薬としてはclonazepam の睡眠 30 分前の内服 (0.25mgから漸増) を第一選択とし, 高度のSDBを合併する場合はSDBの増悪を招きにくいzopiclone(3.75ないし7.5mg) を選択する ( グレードC1) 5). 3) Restless legs syndrome(rls) RLSは夜間, 安静時にじっとしていられない不快な感覚が四肢に出現するため, 入眠障害や日中の過眠症状 (excessive daytime sleepiness;eds) をきたす.PD ではしばしばRLS を合併することが知られているが 6),MSAではPDよりもRLSの頻度が高いとする報告が多く, 白人を対象として行われたSLEEMSA studyではmsa で28%,PDで14% の合併率と報告されている 7). 日本人の検討でも Gilman 分類のprobable MSA 25 名中 3 名 (12%) でRLSが認められた 8). 入眠障害を訴える重症例に対する治療法は確立しておらず, 通常の RLS と同様, ドパミンアゴニストやgabapentin enacarbil (gabapentinのプロドラッグで,gabapentinと比較し血中濃度が長時間保たれる ) が有効であるかは今後の検討を要する. 4) 睡眠時周期性四肢運動症 (periodic leg movements in sleep;plms) PLMSは睡眠中に周期的に反復する常同的な上下肢のミオクローヌス様の不随意運動で, 睡眠の妨げとなりうる. 診断の確定には終夜ポリソムノグラフィー (polysomnography:psg) の記録が必要で,1 時間に15 回以上の周期性四肢運動を認めた場合,PLMSと診断できる. 日本人の検討では,Gilman 分類の probable MSA 25 名中 11 名 (44%) で PLMS が認められている 8).MSA に合併する PLMS に対する治療法については不明であり, 通常の PLMS と同様, ドパミンアゴニストが有効であるかは今後の検討を要する. 600

29 5) SDB SDBは睡眠中に異常な呼吸を示す病態の総称である.MSAでは大きな低調の鼾や, 高調の喉頭喘鳴として観察される. 後者は初発症状となりうるほか, 進行すると日中にも出現する.MSA における PSG 所見として,1 無呼吸よりも低呼吸が主体であること,2 閉塞型が多いものの, 混合型や中枢型も認められること,3Cheyne Stokes 呼吸が出現しうること,4 無呼吸低呼吸指数 (apnea hypopnea index;ahi) のような上気道閉塞の重症度を示す指標は罹病期間とは相関しないことが報告されている 2). また喉頭内視鏡検査では,1 覚醒時にはほとんどの症例で上気道閉塞は見られないものの, 喉頭披裂筋の振戦様運動は声帯開大不全の予測に有用であること,2propofol による鎮静は負荷試験として有用で, 咽頭 ( 舌根, 軟口蓋 ), および喉頭レベル ( 喉頭蓋, 喉頭披裂筋, 声帯 ) における閉塞が, 一箇所ないし複数箇所に認められることが報告されている. またMSAに伴う喉頭喘鳴, 無呼吸, 酸素飽和度低下に対し, 非侵襲的陽圧換気療法 (noninvasive positive pressure ventilation: NPPV) は有効であるが ( エビデンスIII) 9), 長期的な効果については不明で, 経験的には長期間の継続が困難な症例が存在する. 6) EDS EDSは時に日常生活や社会生活に影響を及ぼす. 前述の SLEEMSA studyにおいて,msaでは健常者よりepworth 眠気尺度にて評価した EDS の頻度が高く (28% 対 2%),SDB を示唆する自覚症状と睡眠効率の低下が EDS の予測因子であった 7). 日本人の probable MSA 25 名に対して行った検討でも,EDS は 24% に認められた 8). MSAにおけるEDSの原因としては, 上述のRBD,RLS, 排尿障害 ( 頻尿や尿失禁 ), 夜間多尿, 運動症状に伴う寝返り困難等が関与するものと考えられ, 個々の症例ごとに原因を明らかにし, 対策を立てる必要がある. 2. 睡眠と突然死突然死の頻度, 原因を明らかにすることを目的として行われた日本人の probable MSA 47 名を対象とした前方視的研究では,5 年間の経過観察中の死亡者は 10 名で, 内訳は突然死が 7 名 (6 名が睡眠中に死亡 ), 肺炎, 窒息, 肺癌が各 1 名であった 10). この研究では高度のSDB(AHI>30) や高度の声帯開大不全を認める場合にはNPPV が行われ, 誤嚥性肺炎を繰り返す場合には気管切開術が行われたが, 突然死を来した7 例中, 気管切開術が2 名,NPPVが3 名で行われており, これらの治療では突然死を完全に防ぐことはできないこと, すなわち上気道閉塞以外の機序でも突然死が生じうることが明らかにされた. 突然死の機序としては, 以下の可能性が考えられる. 1) SDB, 喀痰, 食物による窒息 MSAにおける喉頭喘鳴の存在は突然死の危険性を増加させることが報告されているが 11), 原疾患に伴う声帯開大不全などの上気道閉塞が直接, 窒息死を引き起こすかは確証が得られていない. 一方, 気道感染症により喀痰量が増加した症例では, 喀痰による窒息死が起こる可能性がある. また食物誤嚥や嘔吐も窒息死を起こしうる. MSAでは食道内に食物が停滞し, アカラシア様の所見を呈することが報告されているが 12), 夕食後すぐに就寝し,NPPVを開始すると, 睡眠中に食物逆流を来す可能性がある. 嚥下造影検査では食道相まで観察し, 食道内残留を認める症例では, 夕食後すぐ臥床し, NPPVを開始することを避けるように指導する. 2) 中枢性呼吸調節障害 PSG 施行中に偶然, 中枢性呼吸調節障害を来たし, 突然死に至った症例が報告されている 13). その症例では睡眠時無呼吸を認めず, 呼吸周期の不整や失調性呼吸を経て多呼吸に変化し, 呼吸停止に至り, その約 5 分後に心停止していた. また突然死の3か月前のPSG にて, 睡眠中の著明な多呼吸 (53 回 / 分 ) と, それに引き続いて Cheyne Stokes 呼吸と進行性の高度の低酸素血症を呈した症例 14) も報告されていることから, 睡眠中の中枢性呼吸調節障害は突然死の原因となりうる. このような症例では気管切開術は無効であり, 突然死防止のためには睡眠中の人工呼吸器管理を要する ( グレード C1). 3) Floppy epiglottis(fe) FEは喉頭蓋基部の可動性が増し, 吸気時に喉頭蓋が気道奥に引き込まれる現象で, 成人ではMSA 2) のほか, 成人型 Alexander 病 15) や筋萎縮性側索硬化症 16) でも観察される.NPPVはFEに対し, 喉頭蓋を気道内に押し込むことで上気道閉塞を増強するおそれがある 17). NPPVが様々な部位での上気道閉塞に及ぼす影響を明らかにする目的で行われた喉頭内視鏡検査では (Fig. 1A) 17),NPPVは咽頭部や喉頭披裂筋, 声帯 (Fig. 1B, C) における閉塞を改善するが,FEでは一部の症例においてむしろ狭窄を増悪させた (Fig. 1D F) 17).FE の存在を喉頭内視鏡検査にて確認することが望ましいが, 困難な場合は,1NPPVを導入した直後に,SDBの増悪がないか夜間酸素飽和度モニターにて観察すること,2 経過中, 有効であったNPPVが, 途中から呼吸困難や酸素飽和度低下のため継続困難になった場合にはFEを合併した可能性を疑い,NPPVを中止する必要がある. 4) 心臓自律神経障害自律神経のゆらぎによる心拍数の周期性変動は心拍変動 (Heart rate variability;hrv) と呼ばれている.HRVは周波数領域と時間領域に分けて解析できるが, これらの指標は心筋梗塞後の突然死と関連することが報告されている 18).MSAでも周波数領域および時間領域のいずれのパラメーターも顕著に低下し, 交感神経および副交感神経活動の双方が減少すること, かつ複数のパラメーターと罹病期間 疾患重症度の間に負の相関を認めることが示されている 19). MSAにおいても心臓自律神経障害が突然死に関与している可能性がある. 5) 突然死防止を目指した治療アルゴリズム突然死の防止を目指した治療介入の有効性については, 十分なエビデンスはないものの, 高度の睡眠呼吸障害を呈する症例や, 誤嚥性肺炎を繰り返す症例に対しては, 評価後, 治療介入を検討する必要がある.Fig. 2に治療介入の一例を示す. 治療介入を行う対象としては,1 高度の SDB を呈する症例 (apnea hypopnea index (AHI)>30/hrなど),2 長時間の夜間酸素飽和度低下を呈する症例 ( 睡眠中のSpO 2 が 90% 未満となる時間の割合 >10% など ),3 高度の声帯開大不全を呈する症例 ( 覚醒時に声帯開大不全を認める症例, もしくはpropofol 鎮静下の吸気時に声帯開大を認めず, 両側声帯突起が接触している症例 ),4 繰り返す誤嚥を認める症例が候補となり,1から3に対してはNPPVを,4に対しては気管切開術を治療の選択肢として提示する ( グレードC1). 喉頭内視鏡検査は耳鼻科医と連携して行い, まず安静時における咽頭 喉頭部レベルの気道閉塞を確認する. この際, 声帯披裂部の振戦様の不随意運動は声帯開大不全の存在を示唆する所見として有用である. 次に,propofol 601

30 標準的神経治療 不眠 過眠と概日リズム障害 Fig. 1 上気道閉塞に対する NPPV による 加圧の影響 A NPPVのマスク インターフェイスに 小さな穴を開け 喉頭内視鏡を通し propofol 鎮静下に生じる上気道閉塞に対する 加圧の影響を確認する B 鎮静下に認 めた声帯開大不全 C CPAP 6cmH2 O の加圧による声帯開大不全の改善 D 覚醒 吸気時の喉頭蓋の位置 E propofol 鎮静下 吸気時の喉頭蓋の位置 F CPAP 6cmH2 O の 加 圧 に よ る floppy epiglottis の増悪 矢印で示すわずかな間隙の ため窒息は免れるが 酸素飽和度は著明に 低下する Fig. 2 治療アルゴリズム PSG polysomnography CPAP continuous positive airway pressure AHI apnea hypopnea index FE floppy epiglottis BiPAP bilevel positive airway pressure による鎮静下に 同様に咽頭 喉頭部レベルの気道閉塞の確認を行 つ BiPAP 等を CPAP モードで使用するという方法も考慮する ま う Fig. 3 Table 1 喉頭内視鏡検査にて上気道の高度の狭窄を た FE を認めた症例に対しては SDB の増悪や窒息を来す可能性を 認め PSG にて SDB が高度な場合 NPPV による介入を検討する 考え NPPV は行なわない グレード C1 現時点では propofol 鎮 NPPV の方法としては 一般に持続的陽圧呼吸 continuous posi- 静下における喉頭内視鏡検査以外には FE の合併を調べる方法が tive airway pressure CPAP にて開始することが多い ただし ないため 耳鼻科医 呼吸器内科医と連携し FEの有無を確認する CPAP は呼吸停止時のアラーム機能がないため アラーム機能を持 体制を作る必要がある 検査を行えない場合には 前述の通り 神経治療 Vol No

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