<4D F736F F D20926E906B838A E82C688D38E758C8892E82E646F63>

Size: px

Start display at page:

Download "<4D F736F F D20926E906B838A E82C688D38E758C8892E82E646F63>"

かねろうやがい
5 years ago
Views:

1 地震リスクと意志決定京都大学大学院林康裕兵庫県南部地震においては古い木造住宅の倒壊によって多くの人命が失われたこのため自治体の地震被害想定では築 3 年以上の古い木造住宅の被害を多く見積もる方法 ( 建築年代で区分された被害関数 ) が用いられその被害想定結果に基づいて地域防災計画が策定されている自ずと古い木造住宅を危険視する考えが行政にも住民にも植え付けられていっている様に感じる兵庫県南部地震後既に 12 年が経過した 2 年後には兵庫県南部地震を経験した木造住宅は全て築 3 年以上の古い住宅となってしまう古い住宅は本当に危険なのか? 現時点での新しい住宅や古い住宅に施した耐震補強は地震発生時に本当に有効で安全なのだろうか? そろそろ地震に対する備え方についてパラダイムシフトすべき時期に来ている 1) のではないだろうか? 日本の住宅の平均寿命は 26~43 年で人の寿命や地震の再現期間に比べてかなり短い例えば南海トラフにおけるプレート境界型の巨大地震である南海地震や東南海地震の長期予測によれば 3 年後の発生確率で 5~6% と予想されている地震発生が 3 年後と仮定すれば 3 年程度しか保たない対策や 3 年程度しか住まない住宅であれば過疎高齢化の進む地方の住民が投資するとは思えない耐震化を促進するにはまずは地域が持続発展可能で住宅も長寿命であることが不可欠であるずっと住んでいたくなる魅力ある地域古くても使えるすまいや長く使える地震対策が必要とされている一方再現期間の短く発生が切迫している宮城県沖地震 ( 再現期間は約 37 年 ) の想定被災地には築 15 年以上の木造住宅も珍しくないしかしこのような古い住宅は既に幾度も過去の宮城県沖地震を経験して耐えている必ずしも古い住宅が危険とは言えず実際に高い耐震性能を有する古い住宅も多いことも分かってきた 1,2) 地震リスク分析とは将来発生する可能性のある大地震が保有資産にもたらす経済的な損失の大きさとその発生確率を分析することで地震に備えて損得勘定を計算して意志決定の根拠付けとしようとすることである高齢者が自分の大切な息子や孫の安全のためとはいえ投資を促進するにはそれなりの投資効果が示される必要がある古い危険であるはずなのに区別ができていない地震対策を施さなくて良い古い住宅を速やかに高精度で特定できる技術と将来の地震発生確率や建物の劣化も見越した対 3) 策の経済的効果を評価する技術が必要とされているそして何よりも大切な息子や孫が住み続けたいそして地震から守りたいと思える地域を作っていく必要がある行政的な支援も耐震化だけでなく持続性へと方向を変えるべき時期に来ていると考えている [ 参考文献 ] 1) 林康裕 : 木造住宅の地震被害率と建築年代の関係に関する考察 - 兵庫県南部地震と鳥取県西部地震の被害経験を踏まえて-, 日本建築学会総合論文誌, No.2, pp.71-75, ) 清水秀丸, 林康裕, 鈴木祥之, 斎藤幸雄, 後藤正美 :23 年 7 月 26 日宮城県北部の地震による被災木造住宅の構造的特徴と耐震性能, 日本建築学会構造系論文集, No.598, pp.43-49, ) 林康裕, 更谷安紀子, 森井雄史 : 木造住宅の経年劣化と地域地震環境を考慮した地震時損傷度予測手法, 日本建築学会構造系論文集, No.615, ( 掲載予定 )

2 揺れによる被害推定法の課題地震リスクと意思決定建物被害震度 6 強で老朽建物が最大 16~14 万棟全壊京都大学大学院教授林康裕推定地震動 ( 震度 ) 震度と被害率の関係構造別 ( 木造非木造 ) 建築年次別 (3 区分 ) 揺れによる被害推定法地域の特徴と災害の特性木造全壊率旧中地域によって被害は異なり備えも異なる首都圏と同じでは地震に対する十分な備えとならない地域が日常的に抱える課題の深刻化大都市の壊滅的被害 ( 大火災 ) 新たな災害パターン ( 帰宅難民 ) 新震度 6.4 過疎高齢化人口密集高層化阪神淡路大震災の経験は普遍的? 伝建地区建物 TKEHARA Osaka City HAGI 阪神淡路大震災の倒壊住宅 ISE & Owase 密集市街地建築年次別の被害と今後 ~ S37 S38 ~ S55 S56 ~ H7 ( 旧 ) ( 中 ) ( 新 ) 1995 ~ ~ ~ 27 ( 現在 ) ~ ~ ~ (15 年度 ) ~ 6 59 ~ ~ (3 年後 ) ~ ~ ~ 42 何年に発生する地震に備えようとするのか? 直下地震の再現期間と木造住宅の寿命の関係は? 1

床違棚床廊下和室 12 帖和室 6 帖和室 8 帖縁廊下茶の間取次通り庭芦屋市 ( 兵庫県南部地震 ) 日野町 ( 鳥取県西部地震

2313 1367 33 棟 ~25 ~5 ~6 ~7 ~8 ~9 91~ 112 14 7 46 89 122 9 棟 -1899-1925

宮野ほか ) 1% 9% 8% 6% 4% 3% 2% % 蟻害腐朽なし建物の維持管理全壊半壊軽微蟻害腐朽あり白蟻被害木造住宅と住民の寿命

141 建築ストック総数 / 年間新築建物数平均寿命 43 区間残存率推計法 ( 小松 2) 男性の平均寿命 79 75 76 H16 年厚生省調べ

日本の住宅の寿命は人の寿命地震の再現期間に比べてかなり短い地震の平均活動間隔宮城県沖地震約 37 年南海東南海地震約 1~15 年上町断層帯

築 15~2 年 ) YIY ( 被害中 :M37) YSH ( 軽微 : 築 15 年 ) 統計的な耐震性能 ( 耐力 ) のちがい 1 8 けた行

3 床違棚床廊下和室 12 帖和室 6 帖和室 8 帖縁廊下茶の間取次通り庭芦屋市 ( 兵庫県南部地震 ) 日野町 ( 鳥取県西部地震 ) 1% 建設年代別の木造被害率 9% 8% 6% 4% 3% 2% % 1% 9% 8% 6% 4% 3% 2% % 棟 ~25 ~5 ~6 ~7 ~8 ~9 91~ 棟一部損壊半壊全壊その他一部損壊半壊全壊蟻害腐朽と構造被害 ( 1995 兵庫県南部地震 : 宮野ほか ) 1% 9% 8% 6% 4% 3% 2% % 蟻害腐朽なし建物の維持管理全壊半壊軽微蟻害腐朽あり白蟻被害木造住宅と住民の寿命宮城県北部地震 (23/7/26) 日本アメリカイギリス備考滅失建物の平均年齢年度建設白書サイクル年数建築ストック総数 / 年間新築建物数平均寿命 43 区間残存率推計法 ( 小松 2) 男性の平均寿命 H16 年厚生省調べ女性の平均寿命滅失建物の平均年齢サイクル年数男性の平均寿命女性の平均寿命日本アメリカイギリス日本の住宅の寿命は人の寿命地震の再現期間に比べてかなり短い地震の平均活動間隔宮城県沖地震約 37 年南海東南海地震約 1~15 年上町断層帯 47 年矢本町数回の宮城県沖地震 ( 再現期間約 37 年 ) に耐えた古い住宅も多い YAS ( 軽微 : 築 2 以上 ) YOM ( 無被害 : 築 15~2 年 ) YIY ( 被害中 :M37) YSH ( 軽微 : 築 15 年 ) 統計的な耐震性能 ( 耐力 ) のちがい 1 8 けた行張り間密度関数 Cy ( 降伏せん断力係数 ) 間取り壁の配置によって耐力 ( 降伏せん断力係数 ) が異なる伝統的な木造住宅は地域によって異なる 1 密度関数けた行 Cy ( 降伏せん断力係数 ) 張り間宮城県民家和室 8 帖和室 1 帖和室 15 帖和室 15 帖和室 1 帖宮城県民家玄関和室 17.5 帖脱衣所洋間トイレ台所勝手口張間方向けた行方向 2

木造住宅の建築年と分布棟数花折断層 - 25 251-5 51-75 琵琶湖 751-1 11 京大吉田Ｃ京大桂Ｃ京都駅

5 5 1 km 1981- 地震リスクへの備えリスクの低減リスクの低減被害の可能性を減らすリスクへリスクへの備えの備え

自己保険積立自己保険積立リスクの保有リスクの保有キャプティブ保険キャプティブ保険被害を見越した対策無策無策

長寿命木造住宅に用いられる技術技能が継承される仕組みの構築長期間にわたり住宅が機能し続けるための居住面積居住性能の確保リスクの種類

どのような木造住宅が危ない道路に面した開口の多い構面での大きな残留変形物理的長期耐用性の確保維持保全性更新の容易性の確保

規格の統一適切な修繕保守点検計画の策定維持管理等に必要な情報の保存可変性の確保入居世帯の家族構成

4 木造住宅の建築年と分布棟数花折断層琵琶湖京大吉田Ｃ京大桂Ｃ京都駅樫原断層勧修寺断層桃山断層黄檗断層宇治川断層 km 地震リスクへの備えリスクの低減リスクの低減被害の可能性を減らすリスクへリスクへの備えの備えリスクの転嫁リスクの転嫁予防予防耐震補強軽減軽減教育事後対応保険証券化保険証券化被害を容認し損失をカバー自己保険積立自己保険積立リスクの保有リスクの保有キャプティブ保険キャプティブ保険被害を見越した対策無策無策との変遷(川角他) 川角他) 木造住宅の長寿命化継承性持続性の確保地域の風土の文脈と調和した工法等の採用長寿命木造住宅に用いられる技術技能が継承される仕組みの構築長期間にわたり住宅が機能し続けるための居住面積居住性能の確保リスクの種類生命財産機能や程度によって備えが異なる有効でない耐震補強は自己保険積立などの機会を阻害する可能性もあるどのような木造住宅が危ない道路に面した開口の多い構面での大きな残留変形物理的長期耐用性の確保維持保全性更新の容易性の確保耐用年数の異なる部品部材同士の独立分離接続方法の工夫等一般流通しているもしくは地域で供給可能な部品部材の活用部材寸法規格の統一適切な修繕保守点検計画の策定維持管理等に必要な情報の保存可変性の確保入居世帯の家族構成生活様式等の変化に伴う使用形態の変更や改修などに容易に対応可能な平面断面構造計画等の採用入居世帯の家族構成生活様式等の変化に柔軟に対応できる間仕切壁等のインフィルシステムその他配慮することが望ましい事項住まい手の意識の啓発廃棄物の削減資源の有効活用新潟県中越地震 3

5 大阪北浜京都市伏見区京都市山科区京都市伏見区棟木の折れ? 大阪通天閣 4

6 通天閣周辺伊勢市大湊地区木造住宅の倒壊 ( 兵庫県南部地震 ) 地震発生の 2 年前に改築 ( 外壁屋根の補修 ) した木造住宅 ( 築 4 年超 ) の倒壊既存住宅耐震改修の対象地震リスクリスクに対する備え古い耐震性の低い耐震性の低い住宅地震リスクの高い住宅地震対策の方向性 : 耐震補強耐震補強 + 維持管理による長寿命化ただし耐震補強は必要だが困難非効率新築住宅再現期間の長い地震に備えた良好なストックの形成高耐震性能高耐久性な住宅地域の継承性持続性の確保地域の風土文化と調和した工法技術技能の継承日常課題の克服 5

マンション建替え時におけるコンテキスト効果について

マンション建替え時におけるコンテキスト効果についてプロスペクト理論とマンションの耐震性能の選択中川雅之齊藤誠建築物の耐震基準が意味するもの ( 新耐震基準 ) 1982 年から施行全住宅の 4 割が未だそれ以前の耐震基準に基づくもの阪神淡路大震災における建物倒壊被害の大部分がこの旧耐震基準に基づく建築物 ( 現行の耐震基準は何を保証するのか?) 震度 6 強の地震に対して倒壊しない強度を有しているしかし大地震に遭遇して倒壊しなかったとしても