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ゆゆこかいじ
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1 体力科学第 62 巻第 3 号 (2013) DOI: /jspfsm 原著女子バスケットボール選手の年代による身体機能の差 ~ 中学生と高校生に対するメディカルチェック結果から ~ 加賀谷善教 1 2, 中條智志 Differences in dynamic alignment and flexibility between junior high-school and high-school female basketball players Yoshinori Kagaya 1 and Satoshi Nakajo 2 1 昭和大学保健医療学部, 神奈川県横浜市緑区十日市場町 1865 (School of Nursing & Rehabilitation Sciences, Showa University, 1865 Tokaichiba-cho, Midori-ku, Yokohama, Kanagawa , Japan) 2 JFAアカデミー福島, 静岡県御殿場市神山 719 時之栖別館 (JFA Academy Fukushima, 719 Kamiyama, Gotenba, Shizuoka , Japan) Received: January 4, 2013 / Accepted: March 28, 2013 Abstract To identify athletes at a higher risk of anterior cruciate ligament (ACL) injury, we developed a video-based screening test focused on hip abductor and rearfoot function. However, age differences in hip or reafoot motion as a contributor to dynamic knee valgus remains unclear. The purpose of this study was to determine how age differences contribute to hip or reafoot motions. Eighty-three female basketball players (41 junior high-school and 42 highschool students) agreed to participate in this study. Participants were measured for hip rotation angle, tibial rotation angle, ankle dorsi-flexion angle, navicular drop and general joint laxity. Subjects also performed single-legged squatting and drop landing from a 30 cm box. Knee-in distance (KID) and Hip-out distance (HOD) were measured using 2-dimensional video images filmed at 30 Hz. Additionally, Dynamic Trendelenburg Test (DTT) and Heel-Floor Test (HFT) were performed. The prevalence of HFT-positive in junior high-school and high-school athletes were not statistically different. DTT-positive during landing was more prevalent in junior high-school athletes than in high-school athletes (P<0.05). high-school athletes demonstrated greater HOD values in squatting than high-school athletes (P<0.05). The range of motion in high-school athletes was significantly greater than in junior high-school athletes in tibial external rotation, hip internal and external rotation (p<0.01). The navicular drop in junior high-school athletes was significantly greater than in high-school athletes (p<0.01), however the navicular height was greater in high-school athletes (p<0.01). Player s age is an important consideration in ACL injury preventative conditioning. Jpn J Phys Fitness Sports Med, 62(3): (2013) Keywords : prevention of ACL injury, dynamic knee valgus, Dynamic Trendelenburg Test, Heel-Floor Test, navicular drop はじめに膝前十字靭帯 (ACL) 損傷は, バスケットボールにおいてはジャンプの着地や方向転換などで受傷する非接触型損傷が約 70% を占め 1), 男性に比べ女性が 3 ~ 5 倍の発生率である 2).ACL 損傷の好発年齢に関して, 岩噌ら 3) はACL 損傷と診断された2,819 名の受傷時年齢分布を調査し, 非接触型損傷は16 歳をピークに21 歳ぐらいまでは高い数値を維持しつつ年齢とともに漸減することを示した.de Loesら 4) の14~20 歳を対象にした調査では, 女性は16 歳が最も多いと報告された. また, 中学生バスケットボール選手 20,358 名を対象にした疫学調査では, 膝 ACL 損傷発生率は 2 年生と 3 年生間で有意な増加を示した 5). 膝 ACL 損傷の受傷機転に関しては, 膝関節浅屈曲位の外反で重心が後方に位置している場合が多く 6,7), 特にジャンプ着地時の膝外反角度増大がACL 損傷の危険因子と認識されている 7). しかし,ACL 損傷は思春期に好発する外傷で, 成長に伴い身体機能は変化しているにも関わらず, 年代に応じた予防トレーニングの重要性に着目

2 208 加賀谷, 中條した報告は必ずしも多くはない.Hewettら 8) は, 後期思春期の女性は前期思春期と比べて着地後の最大外反角度が有意に大きいことを報告した.Yuら 9) も,11~16 歳の女性のストップ & ジャンプ動作時の膝外反偏位量は年齢とともに増大することを示した. 一方,Barber-Westin ら 10) は, 9 ~17 歳の女性 916 名に対しドロップジャンプテストを実施しknee separation distanceを比較したが, 年齢による差は認められなかった. ACL 損傷のリスクを有する選手に対しては, スクリーニングテストを実施することで身体的問題を早期に発見し, 予防プログラムを実践することが効果的と考えられている.Noyesら 11) は両大転子間距離に対する両膝蓋骨中央間距離の割合を求める方法でスクリーニングを行い,Hewett & Myerら 12) はbox-drop testで膝外反が生じる選手にはwall-jump などのジャンプ系トレーニングを行わせている. 我々は, バスケットボール選手に対するメディカルチェックの中で,Knee in distance(kid) とHip out distance(hod) を用いて動作時の膝外反量を評価している. 股関節外転筋機能の低下している動的 Trendelenburgテスト (DTT) 陽性群は KIDおよび HOD ともに大きくなるのに対し, 後足部機能が低下している Heel-Floor Test(HFT) 陽性群はKIDは大きくなるが HOD は小さくなるため 13-15), 動的機能評価から身体機能に見合ったトレーニングを提供している. これらの指標を用いた性差に関しては, 男女間で股関節外転筋機能や後足部機能に差はないが, 足関節背屈角度が小さく, 股関節内旋の大きな女子は, 男子に比べ膝外反量が大きいことを報告し 15),ACL 損傷を含めた外傷予防プログラム作成に反映させてきた. しかし, 中学生から高校生にかけての思春期では, 成長に伴い身体機能は変化しており, 年代に応じた予防トレーニングの提供は,ACL 損傷の予防にとって重要な課題と考える. そこで, 今回は, 女子バスケットボール選手に対するメディカルチェック結果から, 中学生と高校生の身体機能の差を明らかにすることで, 年代による外傷予防プログラム作成の一助とすることを目的とした. 研究方法対象対象は協力の得られた女子バスケットボール部 7 校で, 中学生 41 名 82 肢 ( 年齢 :13.8±0.7 歳, 身長 :155.1 ±6.1cm, 体重 :44.9±5.6kg), 高校生 42 名 82 肢 ( 年齢 : 17.0±0.5 歳, 身長 :159.4±5.2cm, 体重 :50.9±5.5kg) とした (Table 1). オスグット-シュラッター病を含む膝関節慢性外傷の既往は中学生 7 名, 高校生 7 名であった. ACL 損傷の既往は高校生 2 名で, 両名とも受傷は中学生時代であった. 現在, バスケットボール競技上プレーに支障をきたす痛みはなかったが,ACL 損傷側については測定肢から除外した. また, 過去 5 年間のACL 発生数は中学校 2 件, 高校 3 件であった. 本研究は昭和大学保健医療学部倫理委員会の承認を得た後に, 被験者および保護者, 指導者に本研究の主旨を説明し, 内容を十分に理解した上で書面にて同意を得た. 測定方法柔軟性の測定柔軟性は, 全身弛緩性 (GJL) と東大式関節角度計を用いた関節可動域 (ROM) の測定を行った. ROMは, 膝関節屈曲荷重位での足関節背屈 (DF), 背臥位股関節膝関節 90 位での股関節内旋 (IR), 股関節外旋 (ER) を計測した. 下腿外旋 (TFA) 角度はTillman ら 16) のThigh-foot angle 測定方法を参考に, 腹臥位で膝関節を90 屈曲し大腿中央の延長線と踵中央から第 2 趾を通る足底がなす角度を計測した. 舟状骨高の測定被験者の舟状骨結節にマーキングし, 座位非荷重位でスケールを用いて舟状骨高を測定した. 同様に, 立位荷重位でも舟状骨高を計測し, 非荷重と荷重位の差を求めNavicular drop(nd) を算出した. 動的アライメントの評価直径 9 mm のフラットマーカーを被検者の両上前腸骨棘, 膝蓋骨中央, 母趾先端, アキレス腱付着部中央の計 8 か所に貼付し, 片脚スクワット (Squatting) と30cm 台からの片脚着地 (Landing) を実施した. 動作中, デジタルビデオカメラを対象者の3.5m 前方および後方に設置し, 前額面画像を30Hzにて撮影した. なお, ビデオカメラは30cm 台の前額面と水平にし, レンズ中心が平均的身長の被検者の膝およびアキレス腱付着部となるよう調整した. Squattingは, 膝関節屈曲 60 位を関節角度計で計測し被検者に十分な練習を行わせた上で, 両手は後ろで組み, 股関節は屈曲せずに膝を屈曲して片脚バランスを保 Table 1. Physical characteristics of the participants n= limbs n=42 82 limbs Age ( ys ) ** Height ( cm ) ** Body weight ( kg ) ** Values are presented as mean±standard deviation. Significant difference between the generation (**p<0.01)

中学生と高校生の身体機能の差 209 つよう指示した. 片脚立位から膝を約 60 屈曲し, 静止立位に戻るという一連の動作を安定して行うことができた成功試技 1 回が計測されるまで実施した. Landingは, 両手は後ろで組み, 片脚で立った30cm 台から上方前方に飛び出すことのないよう,30cm 前方に設置した着地点に同側の片脚でバランスを保ちつつ降りるよう指示した.

3 中学生と高校生の身体機能の差 209 つよう指示した. 片脚立位から膝を約 60 屈曲し, 静止立位に戻るという一連の動作を安定して行うことができた成功試技 1 回が計測されるまで実施した. Landingは, 両手は後ろで組み, 片脚で立った30cm 台から上方前方に飛び出すことのないよう,30cm 前方に設置した着地点に同側の片脚でバランスを保ちつつ降りるよう指示した. 片脚立位から安定して片脚で着地するという動作ができた成功試技 1 回が計測されるまで実施した. データ解析得られた二次元画像は,Dartfish Software 4.5 ProSuite Version(Dartfish 社製 ) を用いて,SquattingおよびLanding 時に膝が最大外反した時点のKIDと HODを分析した.KIDは上前腸骨棘と膝蓋骨中心を結んだ延長線と母趾中央部の足部縦軸延長線上との距離を前額面上で計測した値を用いた (Fig. 1).HOD は上前腸骨棘を通る床への垂線と母趾中央部の足部縦軸延長線上との距離を前額面上で計測した (Fig. 1). 股関節外転筋機能の評価は,DTTを用い,Squatting およびLanding 時に対側骨盤が水平位より下降する者を陽性, 水平または挙上するものを陰性と判断した (Fig. 2). また, 後足部機能の評価は,HFTを用い,Squatting およびLanding 時に踵骨が 5 以上外反する者を陽性と判定した (Fig. 2). 統計的手法 GJLについては,Mann-WhitneyのU 検定を用いて中学生と高校生を比較した.ROMおよびアーチ高に関しては,Student s T testを用いた. 二次元動作解析で得られたSquatting およびLanding 時のKIDとHODは距離測定のため, 身長で補正した値 KID/H およびHOD/H を算出し, 中学生と高校生の比較はt testを用いた.dttおよびhft 陽性率の差に関しては, クロス表を用いた出現率の差の検定を行い,Fisher s testで有意差を求めた. 統計処理は, 統計解析ソフトウェア (SPSS ver for windows) を使用し, 有意水準は危険率 5 % 未満とした. 結果柔軟性の測定結果 (Table 2) GJLは中学生が1.8±1.2 点, 高校生は1.7±1.1 点で統計学的に有意な差は認められなかった.ROMに関しては,DFは中学生 42.7±8.1( ), 高校生 44.7±6.1( ),TFAは中学生 32.2±7.4( ), 高校生 47.9±9.9( ),IRは中学生 36.3±11.8( ), 高校生 48.8± 12.1( ),ERは中学生 44.4±7.6( ), 高校生 50.2±10.8( ) であった.DFについては統計学的に有意差は認められなかったものの,TFA,IR およびERは中学生が高校生に比し有意に小さかった (P<0.01). 舟状骨高の測定結果 (Table 3) 非荷重位で測定した舟状骨高は中学生 40.0±4.7(mm), 高校生 45.9±6.3(mm) で, 荷重位との差であるNDは中学生 5.1±3.0(mm), 高校生 3.0±3.4(mm) であった. 中学生の舟状骨高は高校生に比べて低いにもかかわらず,NDは中学生が有意に大きかった (P<0.01). ASIS The center of the patella hallux a. b. a b Fig. 1 Analysis of dynamic alignment using 2D motion analysis We measured HOD and KID during drop landing. (a) HOD, distance from hallux to the projection of the anterior superior iliac spine (ASIS)on the floor. (b)kid, distance from hallux to the point where the line connecting the center of the patella and ASIS intersects the floor. Fig. 2 Evaluation of the function of hip abductors and hindfoot We evaluated dynamic hip and hindfoot stability by Dynamic Trendelenburg Test (DTT)and Heel-Floor Test (HFT)during single-leg squatting and landing. a. DTT was considered positive if the non-weightbearing pelvis was descended lower than the weightbearing pelvis. b. HFT was considered positive if 5 or greater rearfoot pronation was observerd.

4 210 加賀谷, 中條 Table 2. Comparison of flexibility high school athletes were less flexibility of TFA, Hip IR and ER than high school athletes. GJL ns Ankle DF ( ) ns TFA ( ) ** Hip IR ( ) ** ER ( ) ** TFA: Thigh Foot Angle ns: not significant, **P<0.01 Table 3. Comparison of navicular height high school athletes were greater navicular drop regardless of lower navivular height than high school athletes. navicular height ( mm) ** ND ( mm) ** ND: navicular drop **P<0.01 KID/HおよびHOD/Hの比較 (Table 4) Squatting 時の KID/Hは中学生 6.0±2.9, 高校生 5.6±2.4,Landing 時の KID/Hは中学生 7.6±3.9, 高校生 7.5±3.6で中学生と高校生で差はなかった. Squatting 時のHOD/Hは中学生 8.4±1.1, 高校生 8.8± 1.0で中学生が高校生に比し有意に小さかった (P<0.05). また,Landing 時のKID/Hは中学生 9.9±1.6, 高校生 10.0 ±1.2で中学生と高校生で差はなかった. DTTおよびHFTの陽性率比較 (Fig. 3) Squatting 時に対側骨盤が下降するDTT 陽性群は中学生 28 肢 ( 陽性率 34.2%), 高校生 25 肢 ( 陽性率 30.1%) であった. また, Landing 時のDTT 陽性群は中学生 37 肢 ( 陽性率 46.3%), 高校生 22 肢 ( 陽性率 26.8%) であった.DTT 陽性率は Landing 時に中学生が有意に高かったが,Squatting 時で差はなかった. Squatting 時に踵骨外反が 5 以上生じるHFT 陽性群は中学生 27 肢 ( 陽性率 32.9%), 高校生 21 肢 ( 陽性率 25.3%) であった. また,Landing 時のHFT 陽性群は, 中学生 39 肢 ( 陽性率 48.8%), 高校生 37 肢 ( 陽性率 45.1%) であった. HFT 陽性率は,Squatting 時に中学生で高い傾向は認められたが, 統計的に差はなかった. 考察我々は, 膝外反量の評価にKIDとHODを用い,DTT 陽性群はKIDおよびHODともに大きくなるのに対し, HFT 陽性群はKIDは大きくなるがHODは小さくなることを報告した 13-15). これらの動的機能評価を用いた性差に関しては, 男女間で股関節外転筋機能や後足部機能に差はないものの, 女子は男子に比べ膝外反量が大きいことを報告し 15),ACL 損傷を含めた外傷予防プログラム作成に反映させてきた. しかし,ACL 損傷が好発する思春期では成長に伴い身体機能は変化しており, 年代に応じた予防トレーニングの提供は重要である. そこで今回は, 女子バスケットボール選手に対するメディカルチェック結果から, 中学生と高校生の身体機能の差を明らかにし, 年代による予防プログラム作成の一助とすることを目的とした. GJLに関しては,ACL 損傷との関連性を指摘する報告が散見されるが 17, 18), 本研究結果においては中学生と高校生で有意差は認められなかった.Uhorchakら 17) は,859 名の士官候補生を 4 年間追跡した前向き調査で, ACL 損傷群のGJLが有意に高いことを示した. また, Motohashi 19) は両側 ACL 損傷群のGJLが3.3 点, 片側 ACL 損傷群が2.2 点で, 前者が有意に大きいことを報告しており, メディカルチェック項目としてGJLは除外できない. 年代の差についてShultzら 20) は, 9 ~18 歳の女子 173 名を対象に平均 10.9 歳,13.5 歳,17.7 歳の 3 群に分け, Joint Mobility Indexを用いて 9 点満点で比較した. その結果,GJLは各群 1.2 点,2.0 点,1.3 点であったが年代

中学生と高校生の身体機能の差 211 によって有意差はなかった. 本研究のGJLは中学生が1.8 点, 高校生が1.7 点で,Motohashi 19) の片側 ACL 損傷群ほどGJLは高くなく,Shultzら 20) と同様に年代で差がないという結果が得られた. ROMに関しては, 中学生のTFA,IRおよびERは有意に小さかったが,DFに差はなかった.

5 中学生と高校生の身体機能の差 211 によって有意差はなかった. 本研究のGJLは中学生が1.8 点, 高校生が1.7 点で,Motohashi 19) の片側 ACL 損傷群ほどGJLは高くなく,Shultzら 20) と同様に年代で差がないという結果が得られた. ROMに関しては, 中学生のTFA,IRおよびERは有意に小さかったが,DFに差はなかった. 股関節内外旋角度の年齢差については, 幼児期や幼年期をピークに徐々に減少し, 思春期ではほぼ横ばいとなる 21,22). また, Grimstonら 23) は 9 ~20 歳の女性 62 名の足関節 ROMを計測し, 背屈は 9 ~13 歳をピークに減少することを示したが, 14~16 歳の群と17~20 歳の群で有意差は認められていない. 本研究で得られたIRおよびERが諸家の報告と異なった要因については, 現世代の身体特徴や競技特性を反映している可能性もあるが, 他動的に測定した最大 ROMと動作に必要なROMは必ずしも一致しないため, 今回の結果が予防プログラム作成に寄与するかは断言できない. しかし, 股関節外旋や足関節背屈 ROMは, 低い姿勢を保ちながら行うスポーツにとっては重要で, 動作時の膝外反に影響を与えている可能性はあると思われる. 足部機能の年齢差に関しては,HFT 陽性率に差はないものの, 中学生は舟状骨高が低いにもかかわらずND は逆に大きかった.NDについては, 年代が進むにつれて有意に減少するとしたShultzら 20) の報告と一致したが,Woodford-Rogersら 24) は,ACL 損傷群のNDは5.0mm で非損傷群の3.0mmと比較し有意に大きいことを報告しており, 中学生の損傷リスクが高いことが示唆される. HFT 陽性率については年代間で差はなかったが, 藤井ら 25) は成長期のサッカー選手 59 名に対して行ったメディカルチェックから, 膝伸展位から約 30 度屈曲した際に後足部外反を呈する症例は 2 / 3 に達し, 足部アーチ機能が成熟していないために生じたと考察した. 一方で, 後足部外反とアーチ降下の関連については相関を認めない Table 4. Comparison of KID/H and HOD/H high school athletes were lower HOD/H values than high school athletes, whereas KID/H values were not significant between junior high school athletes and high school athletes. Squatting Landing KID /H ns ns HOD /H * ns ns: not significant, *P<0.05 Squatting DTT(+) DTT(-) HFT(+) HFT(-) ns ns Landing P<0.05 ns ns: no significant Fig. 3 The prevalence of DTT and HFT positive Fisher s exact test revealed significantly greater prevalence of DTT-positive while landingin junior high school athletes than in high school athletes.

6 212 加賀谷, 中條という報告も多い 26-28). 女子のpeak height velocityは11 歳頃と言われており, 本研究においても, 小学生などと比較するとHFT 陽性率に差が出るかもしれない. 股関節外転筋機能の年齢差に関しては,Landing 時の DTT 陽性率は中学生が有意に大きかったがSquatting では差がなかった. 我々が過去に実施した高校女子バスケットボール選手 88 名の調査では,DTT 陽性率は Squatting 28.0%,Landing 21.6% であり 13), 今回もほぼ同様の結果が得られた.Brentら 29) は,272 名の女子サッカー選手およびバスケットボール選手に対して,120 / secでの等速度性股関節外転筋力を測定し, 股関節外転筋力は年齢とともに増大することを報告した. 菊元ら 30) は大学女子バスケットボール選手 30 名を対象に,DTT 陽性例は膝内方偏位量が有意に増加するとともに股関節外転筋力が有意に低下することを示した. これらは, Landingのような負荷が大きい動作になると中学生は股関節外転筋で自重を支持できないことを意味しており, 中学生に対する股関節外転筋トレーニングの必要性が示唆された. 膝外反量の年齢差に関しては,Squatting 時のHOD/H は中学生が有意に小さかったが,Landing 時のHOD/Hや KID/Hに差はなかった. Hewettら 8) やYuら 9) は, 三次元動作解析を用いて膝外反量が年齢とともに増大することを示したが,Shultzら 20) は, 関節角度計を用いた二次元の測定を行い, 膝外反角度は年代が進むにつれて減少することを報告した. 一方,Barber-Westinら 10) は, ビデオカメラによる二次元画像からknee separation distance を比較し, 年齢による差が認められないことを示した. 我々が用いている解析方法も角度算出ではなく, 二次元画像からKID やHODという距離を指標としているため, 測定方法の差によって諸家の報告との違いが生じたと考えられた. また,HODは膝外反と下腿外旋を反映していることから 14),TFAが有意に大きい高校生は,Squat- tingのような動作ではhip outで対応するためhod/hが大きくなったと考えられる. 関節運動連鎖の観点からは足部回内に伴い下腿および大腿は内旋し, 膝は外反することが知られているが 31), NDの大きな中学生のHFT 出現率やKID は高校生と差がないため, 年代によっては運動連鎖に影響する要因は異なる可能性がある. しかし,DTT 陽性群はKIDおよび HODともに大きくなるのに対し,HFT 陽性群はKIDは大きくなるがHODは小さくなることから 13),DTTやHFT といった動的機能評価から身体機能に見合ったトレーニングを指導することは重要である. 膝外反の要因に関して, 股関節外転筋筋力だけでなく, 股関節外旋筋の影響を指摘する報告もあり 32,33), 今後は股関節外旋筋や体幹機能との関連性に着目した測定が必要かもしれない. 結我々は, 年代によるスポーツ外傷予防プログラム作成の一助とすることを目的とし, 中学生と高校生の身体機能を比較した. その結果,HFT 陽性率に差はないものの中学生のNDは有意に大きかった. また,Landing 時のDTT 陽性率は中学生が大きく,Squatting 時のHOD/ Hは中学生が小さかった. 高校生はTFAが大きいため, Squatting 動作をHip outで対応している可能性が考えられた.landingのような高負荷の動作では, 中学生は股関節外転筋で自重を支持できないため, 中学生に対する股関節外転筋トレーニングの必要性が示唆された. 今後は, 股関節外旋筋や体幹機能との関連性にも着目し, 年代に見合った効果的な予防プログラムの作成に寄与していきたい. 文 1)Agel J, Arendt E, Bershadsky B. Anterior cruciate ligament injury in national collegiate athletic association basketball and soccer: a 13-year review. Am J Sports Med 33: , )Gray J, Taunton JE, McKenzie DC, Clement DB, Mc- Conkey JP, Davidson RG. A survey of injuries to the anterior cruciate ligament of the knee in female basketball players. Int J Sports Med 6: , ) 岩噌弘志 : 非接触型膝前十字靭帯損傷の損傷頻度, 臨床スポーツ医学, 19: , )de Loes M, Dahlstedt LJ, Thomee R. A 7-year study on risks and costs of knee injuries in male and female youth participants in 12 sports. Scand J Med Sci Sports 10: 90-97, ) 鈴川仁人, 高橋佐江子, 永野康治, 玉置龍也, 丸山仁司, 矢野修司, 中嶋寛之 : 中学生バスケットボール選手の外傷に関する疫学的研究, 整スポ会誌, 29: 44-49, )Ford KR, Myer GD, Hewett TE. Valgus knee motion during landing in high school female and male basketball playes. Med Sci Sports Exerc 35: , )Hewett TE, Myer GD, Ford KR, Heidt Jr RS, Colosimo AJ, McLean S, van den Bogert AJ, Paterno MV, Succop P. Biomechanical measures of neuromuscular control and valgus loading of the knee predict anterior cruciate ligament injury risk in female athletes. Am J Sports Med 33: , )Hewett TE, Myer GD, Ford KR, Heidt Jr RS, Colosimo AJ, McLean S, van den Bogert AJ, Paterno MV, Succop P. Decrease in neuromuscular control about the knee with in female athletes. Am J Sports Med 27 : , )Yu B, McClure SB, Onate JA, Guskiewicz KM, Kirkendal DT, Garrett WE. Age and Gender Effects on lower extremity kinematics of youth soccer players in a stop-junp task. Am J Sports Med 33: , )Barber-Westin SD, Noyes FR, Galloway M. Jump- 語献

7 中学生と高校生の身体機能の差 213 land characteristics and muscle strength development in young athletes: a gender comparison of 1140 athletes 9 to 17 years of age. Am J Sports Med 34: , )Noyes FR, Barber-Westin SD, Fleckenstein C, Walsh C, West J. The drop-jump screening test: Difference in lower limb control by gender and effect of neuromuscular training in female athletes. Am J Sports Med 33: , )Myer GD, Ford KR, Hewett TE. Methodoplogical approaches and rationale for training to prevent anterior cruciate ligament injuries in female athletes. Scand J Med Sci Sports 14: , ) 加賀谷善教, 西薗秀嗣, 藤井康成 : 高校女子バスケットボール選手の股関節外転筋後足部機能と Knee in および Hip out の関係について, 体力科学, 58: 55-62, ) 加賀谷善教, 川崎渉, 藤井康成, 西薗秀嗣 : 二次元画像で算出した Knee in distance および Hip outdistance の妥当性 ~ 片脚着地動作における三次元動作解析との比較から ~, 体力科学, 59: , ) 加賀谷善教, 藤井康成, 西薗秀嗣 : 高校バスケットボール選手に対するメディカルチェックの性差 ~ 膝外反量とその要因に関する検討 ~, 日本臨床スポーツ医学会誌, 17: , )Tillman MD, Bauer JA, Cauraugh JH, Trimble MH. Differences in lower extremity alignment between males and females: Potential predisposing factors for knee injury. J Sports Med Phys Fitness 45: , )Uhorchak JM, Scoville CR, Williams GN, Arciero RA, St.Pierre P, Tayor DC. Risk factors associated with noncontact injuryof the anterior cruciate ligament: A prospective four-year evaluation of 589 west point cadets. Am J Sports Med 31: , )Ramesh R, Von Arx O, Azzopardi T, Schranz PJ. The risk of anterior cruciate ligament rupture with generalised joint laxity. J Bone Joint Surg Br 87: , )Motohashi M. Profile of bilateral anterior cruciate ligament injuries: a retrospective follow-up study. J Orthop Surg 12: , )Shultz SJ, Nguyen AD, Schmitz. Differences in lower extremity anatomical and postural characteristics in males and females between maturation groups. J Orthop Sports Phys Ther 638: , )Staheli LT, Corbett M, Wyss C, King H. Lowerextremity rotational problems in children. J Bone and Joint Surg 67-A: 39-47, ) 渡辺英夫, 尾方克己, 天野敏夫, 岡部とし子 : 健康日本人における四肢関節可動域について - 年令による変化 -, 日整会誌, 53: , )Grimston SK, Nigg BM, Hanley DA, Engsberg JR. Differences in ankle joint complex range of motion as a function of age. Foot Ankle 14: , )Woodford-Rogers B, Cyphert L, Deneger CR. Risk factors for anterior cruciate ligament injury in high school and college athletes. J Athl Train 29: , ) 藤井康成, 小倉雅, 東郷泰久, 山口聡, 福田隆一, 永濱良太, 栫博則, 小宮節郎 : 下肢アライメントの評価における動的 Heel-floor angle の有用性, 臨床スポーツ医学, 21: , )Pohl MB, Messenger N, Buckley JG. Forefoot, rearfoot and shank coupling: Effect of variations in speed and mode of gait. Gait Posture 25: , )Kawasaki W, Kagaya Y. Kinematic analysis of the calcaneus and a navicular during single leg squat. 7th APOSSM program book : 92, )Rathleff MS, Nielsen RG, Kersting UG. Navicula drop test ad modum Brody: does it show how the foot moves under dynamic conditions?. J Am Podiatr Med Assoc 102: 34-38, )Brent J, Myer GD, Ford KR, Patemo M, Hewett T. The effect of sex and age isokinetic hip abduction torques. J Sport Rehabil 18: (Epub), ) 菊元孝則, 加賀谷善教, 柴喜崇, 船橋立二 : 股関節外転筋力が膝関節アライメントに及ぼす影響, 理学療法学, 34: Suppl(2)456, )Khamis S, Yizhar Z. Effect of feet hyperpronation on pelvic alignment in a standing position. Gait Posture 25: , )Hollman JH, Ginos BE, Kozuchowski J, Vaughn AS, Krause DA, Youdas JW. Relationships between knee valgus, hip-muscle strength, and hip-muscle recruitment during a single-limb step-down. J Sport Rehabil 18: , )Willson JD, Ireland ML, Davis I. Core strength and lower extremity alignment during singleleg squats. Med Sci Sports Exerc 38: , 2006.

い膝関節間距離が変化することから, 膝足比率と同等の意味を有し, 片脚で計測可能な指標であるため, 3D 膝外反角度および 3D 膝外反モーメントを検出するために有用な二次元的指標の一つになるのではないかと考える. 本研究の目的は,DVJ における 3D 膝外反角度および 3D 膝外反モーメ

い膝関節間距離が変化することから, 膝足比率と同等の意味を有し, 片脚で計測可能な指標であるため, 3D 膝外反角度および 3D 膝外反モーメントを検出するために有用な二次元的指標の一つになるのではないかと考える. 本研究の目的は,DVJ における 3D 膝外反角度および 3D 膝外反モーメデジタルビデオカメラを用いた二次元的指標による膝前十字靱帯損傷リスクの検討馬場周 < 要約 > 女性の drop vertical jump(dvj) 中の膝外反角度およびモーメントの増加は膝前十字靱帯損傷リスクとされている. 二次元的指標の一つである膝関節足関節距離比率 ( 膝足比率 ) は, 三次元動作解析による (3D) 膝外反角度およびモーメントとの間に相関関係があるとされているが, 片脚ごとの計測はできない.