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KDDI 総研 R&A 2007 年 4 月第 1 号記事のポイントサマリー主な登場者 2006 年のクリスマス商戦では米国の携帯電話キャリアは軒並みスマートフォンのラインアップを並べ 10 月から11 月にかけてはほとんど毎週のように新しいスマートフォンの発表が相次いだブラックベリー中毒が一種の社会現象ともなる一方年初にApple 社がiPhoneを発表したことで

1 KDDI 総研 R&A 2007 年 4 月第 1 号記事のポイントサマリー主な登場者 2006 年のクリスマス商戦では米国の携帯電話キャリアは軒並みスマートフォンのラインアップを並べ 10 月から11 月にかけてはほとんど毎週のように新しいスマートフォンの発表が相次いだブラックベリー中毒が一種の社会現象ともなる一方年初にApple 社がiPhoneを発表したことでスマートフォンの市場が新しいフェーズにはいった本稿ではこうした米国におけるスマートフォン人気の背景と今後の影響について考察する ( なお本稿に掲げた写真は特に記載していない場合はすべて各社提供の画像である ) Research in Motion Palm Apple Motorola Cingular/AT&T Verizon SprintNextel T-Mobile Treo700wx 撮影 : 海部美知スマートフォン Blackberry Treo iphone MotoQ Pearl メール PIM キーワード Windows Mobile Symbian PalmOS ipod itunes Chocolate ARPU Sidekick MySpace Web2.0 Blackjack 地域米国執筆者エノテックコンサルティング CEO 海部美知 (mkaifu@earthlink.net) 1 スマートフォンの急成長世界中で話題を独占するApple iphoneをスマートフォンと呼ぶのが適切かどうか議論は分かれているが 1 月に発表されたこのiPodとスマートフォンのハイブリッド端末がここしばらく続く米国のスマートフォンブームの流れの一つと位置づけられることは間違いない米国でのスマートフォンとは技術的に厳密な定義でなく報道などで使われる通俗定義を使えばアルファベットのキーボードのある電話端末のことを指す OSを搭載しない安価な Blackberry Pearl PAGE 1 of 16

メール端末のこともスマートフォンに含めることもあり含まない場合もある欧州での定義は Symbian OSを搭載した高機能携帯端末でありフォームファクターはアルファベットキーボードのない通常の携帯電話のものが多いが米国の通俗定義は欧州での定義とは異なる米国のスマートフォンとしては RIM Blackberryと Palm Treoが代表的だが

2 メール端末のこともスマートフォンに含めることもあり含まない場合もある欧州での定義は Symbian OSを搭載した高機能携帯端末でありフォームファクターはアルファベットキーボードのない通常の携帯電話のものが多いが米国の通俗定義は欧州での定義とは異なる米国のスマートフォンとしては RIM Blackberryと Palm Treoが代表的だが調査会社によってはどちらかをあえてスマートフォンのカテゴリーから外して PDA と呼ぶこともありまた世界のスマートフォン市場と言う場合には欧州型のものを含め Moto Q るのが普通でこのためNokiaが世界トップのメーカーとされるが米国で言うスマートフォンとしてはごく最近参入したばかりであるこのように米国の通俗定義と世界での業界定義が異なっているため統計数字などを見る場合には注意が必要である 2006 年春にMotorolaが薄型のフォームファクターが特徴のMotoQを発売してスマートフォン市場に参入従来のBlackberryとTreoの寡占市場に変化の兆しが現れた 9 月には業界トップのBlackberryで新しくプロシューマー ( 上位消費者個人事業主プロフェッショナルなど ) 向けの安価モデルPearlが発売されたこれを皮切りにプロシューマー向けの一段低い価格帯のスマートフォンが秋から冬にかけて次々と発表された ( 図表 1 参照 ) 図表 1 最近のスマートフォン発売状況発売時期モデル名メーカーキャリア *1 *1 発売時価格現在価格 2005 年 9 月 Treo 700w (Windows Mobile version) Palm Sprint $ 年 1 月 Treo 700w (Windows Mobile version) Palm Verizon Wireless $ 年 5 月 Motorola Q Motorola Verizon Wireless $ $ 年 6 月 Sidekick 3 *2 T-Mobile $ $ 年 7 月 Chocolate LG Verizon Wireless $ $ 年 9 月 Treo 700wx (upgraded version of 700w) Palm Sprint $ $ 年 9 月 Blackberry Pearl RIM T-Mobile $ *3 $ 年 10 月 Dash HTC T-Mobile $ $ 年 11 月 Cingular 8525 Cingular Cingular $ $ 年 11 月 Blackjack Samsung Cingular $ $ * 年 11 月 Treo680 Palm Cingular $ $ 年 11 月 env LG Verizon Wiress $ $ 年 12 月 Blackberry Pearl RIM Cingular $ $ 年 1 月 Motorola Q Motorola Sprint $ $ 年 2 月 Treo 700wx (upgraded version of 700w) Palm Verizon Wireless $ $ 年 6 月 *5 iphone Apple $499 *6 - *1: 価格は2 年契約ディスカウントまたは / およびリベート込みの価格 *2: Sidekickは2002 年 10 月 Sidekick IIは2004 年 8 月に発売された *3: 発売時の価格が $149.99としている記事もある *4: Blackjack (Refurb) は $ *5: 米国での発売予定ヨーロッパでは2007 年末アジアでは2008 年に発売予定 *6: 4GBモデルの予定価格 8GBモデルは $599の予定 PAGE 2 of 16

これらのモデルの個々の販売状況はまだ正確な発表はないがスマートフォン全体の売れ行きは急成長しているとの見方が一般的である In-Statでは 2004~5 年にかけて世界のスマートフォン販売台数は3 倍となり 2006 年前半だけでも前年比 50% 増となっているとしている ( 脚注 1) NPDグループによると 2006 年 11 月一ヶ月の米国のスマートフォン販売数は787,507 台で

3 これらのモデルの個々の販売状況はまだ正確な発表はないがスマートフォン全体の売れ行きは急成長しているとの見方が一般的である In-Statでは 2004~5 年にかけて世界のスマートフォン販売台数は3 倍となり 2006 年前半だけでも前年比 50% 増となっているとしている ( 脚注 1) NPDグループによると 2006 年 11 月一ヶ月の米国のスマートフォン販売数は787,507 台で前年同月の220,796 台から大幅に増えている ( 脚注 2) トップシェアを持つRIM 社では Pearlの好調も貢献して急速に伸びており 2006 年 12 月の発表では累積ユーザー数 700 万人 ( 世界 ) に達している ( 脚注 3) ( 図表 2 参照 ) 図表 2 Blackberry 加入者数推移ブラックベリー加入者数推移 ( 世界 ) 百万人 Q07 ぺージャー型 Blackberry (RIM 社財務資料をもとに作成 ) 2 スマートフォン市場の沿革スマートフォンの歴史は実は古い Blackberryを提供するカナダのResearch In Motion(RIM) 社は1984 年の創業であり当初は音声電話機能のないアルファ ( 脚注 1) In-Stat プレスリリース 2006 年 11 月 20 日 ( ( 脚注 2) Wall Street Journal 2007 年 1 月 13 日 ( 脚注 3) Wall Street Journal 2006 年 12 月 22 日 RIM 社の会計年度末は 2 月のため 3Q07 は 2006 年 12 月にあたる PAGE 3 of 16

ページャー ( アルファベットと数字を入力できるポケベル ) の発展形のメール端末であった一方米国のPalm( 当時は別会社であったHandspring) 社は 1997 年に PalmOSのPDA( 通信機能なし ) に電話モジュールを装着する最初のスマートフォン ( 脚注 ) を発売している 2002 年には RIMが最初の音声電話対応 Blackberry Palm

4 ページャー ( アルファベットと数字を入力できるポケベル ) の発展形のメール端末であった一方米国のPalm( 当時は別会社であったHandspring) 社は 1997 年に PalmOSのPDA( 通信機能なし ) に電話モジュールを装着する最初のスマートフォン ( 脚注 ) を発売している 2002 年には RIMが最初の音声電話対応 Blackberry Palm が電話機能を内蔵した新モデルTreoを発売して携帯電話とPDA メール端末が本格的な融合時代を迎えた 2002 年は携帯電話キャリア各社が次世代ネットワーク (CDMA1x GSM GPRS) へのアップグレードがほぼ完了した年でもあるそれまでユーザーの端末買い替えを嫌ってきた米国のキャリアが新ネットワーク対応の端末への切り替えを促進するため買い替え促進に転じ急速にカラー液晶や和音着メロなどの高機能端末を投入し始めたキャリアのスマートフォン対応が進んだのもその一環としてみることができるその後徐々に対応キャリアを広げていき両者とも主要携帯キャリアすべてに対応したのが2004 年でこの年からスマートフォンの急成長が始まる HPなどいくつか異なる端末もあったが主役は引き続きBlackberryとPalmの2 社である Blackberryは端末 OS メール管理サービスまで一体で提供するビジネスモデルで長い歴史で培った企業への販売ルートを生かし PalmはPalmOSの種々の蓄積を生かしてメールとPIM(Personal Information Management カレンダーやアドレス帳 ) の利用を主体として販売を伸ばしたそれまでは使い勝手の悪さからあまり利用されてこなかった Microsoft Windows Mobile(WM) も 2005 年後半から2006 年にかけて最新バージョン5.0 対応の端末が出始めたこれまで敵対関係であったPalmでも OS 部門を分離売却したのに伴い WM 対応のTreoを発売従来はBlackberryの独自 OSか PalmOS 初代スマートフォン Handspring Visor ( 電話モジュールつき ) しかなかったものが WMが実用レベルに達したことから WM 対応の端末が数多く出現する環境が整ったすなわち 2006 年のスマートフォン新モデルブームの直接の引き金は Microsoftが引いたということが言える 3 スマートフォンの OS 米国のスマートフォンではハードウェアとOSの関係は大体図表 3のようになっている ( 脚注 ) イラスト出典 : PAGE 4 of 16

5 図表 3 スマートフォンハードウェアと OS の関係 OS Blackberry Palm Windows Mobile Mac OS-X ハードウェア Blackberry, Blackberry Pearl Palm Treo Palm Treo, Moto Q, Samsung Blackjack Apple iphone Symbian Nokia E61/62 Blackberryの特徴はハードウェアだけでなく OSもサーバーも管理サービスもすべて自社で提供するビジネスモデルである ( 脚注 1) 販売数量がそれほど大きく見込めないスマートフォンでは端末販売だけで利益を上げるのは難しく企業を対象に縦方向統合サービスで単価を上げる方法が効果的であったこれにより顧客が他の端末に移りにくくする効果もあったしかしこの閉鎖型モデルのために Blackberry OS 対応のサードパーティソフトは少なくノウハウを持つ技術者も少ないため企業内で使われる業務ソフトに対応するのが一般的に難しいとされている現在ではエクセルやワードなどの添付書類対応はできるようになっており特定の業務アプリ以外の一般業務ソフトとメールといった誰でも使う最大公約数的なアプリケーションを中心としたシンプルなメール+PIM 機能を特徴としているこれに対し PalmOS ( 脚注 2) は単体 PDAの時代からサードパーティソフトが豊富に存在しパソコン側のPIMソフトも根強いユーザーがあったハードのデザインに加えてこうしたソフトの蓄積が強みであったのだが長いことバージョン更新が途絶えており長期的にPalmOSがきちんとサポートされるかどうかソフトメーカーは不安になり徐々に逃げているといわれる Accessによる買収後 PalmOS はいずれLinuxに統合する方向が打ち出されており移行がうまくいくかどうか注目される MicrosoftのWindows Mobile(WM) は Windowsを縮小して小さい画面に納めるという性格が強くモバイル専用で機能を絞ったBlackberryやPalmに比べて複雑で重くこのためにハードにも負担がかかり小型化や省電力がやりにくいという問題があったこのために対応ハードが少なくあっても大型で高額なために人気 ( 脚注 1) 建前上は Blackberry メール機能や Blackberry OS を他社ハードでも使えるようにしているが訴訟対策的な性格が強くあまり積極的なオープン化は行っていない ( 脚注 2) 保有会社 PalmSource は現在は Palm 社からスピンオフ売却され日本の Access 社の傘下となっている PAGE 5 of 16

6 がなかったしかし WM5.0での性能向上に加え上記のようなPalmの退潮傾向による空白状態が生じたため 2005 年頃からハードメーカーがWM 搭載に前向きに転じたこれらの新モデルは個人顧客に対するデザインや機能の競争という面では話題を集めたMotoQでも販売数の具体的な発表がなく店頭価格が大幅に下がっていることから苦戦していると見られ目立った人気モデルはまだ見えていないしかし Windowsサーバー導入も含めた企業販売ではセールスサイクルが長いためにまだ効果が見えないが 2007 年後半から2008 年頃にかけて徐々に市場に出回り始めるのではないかと思われる欧州ではトップ勢力のSymbianOSは米国では2006 年夏に発売されたNokia E62 が目立つ程度でその他はあまり出回っていないまた Apple iphoneは MacOS-X を搭載する予定であるなおスマートフォンの下位バージョンともいえる音声対応メール電話 (T-Mobile Sidekick Verizon envなど ) ではこれらの標準 OSを搭載しておらずワードエクセルや業務ソフトなどは扱えない Nokia E62 4 スマートフォン人気の背景米国のキャリアが一斉にスマートフォンをプッシュしだした背景にはいくつかの要因があると考えられいずれも米国の携帯電話業界全体の変化を反映している 4-1 携帯業界の統合寡占化 CingularによるAT&T Wirlessの買収 SprintによるNextelの大型買収のほか各社ともに地方の中小キャリアの買収を継続しているこのため 2000 年代初頭頃と比べて一社の加入者規模が一気に巨大化した 2000~01 年当時日本ではブラウザーサービスや写真メールの人気が沸騰してケータイ全盛時代を迎える一方米国ではテレコムバブル崩壊の低迷期に当たりデータ系サービスでも端末のレベルでも日本に大幅な遅れをとっていたこの当時 NTTドコモの加入者数は Verizon Cingularの両社を上回っていたしかしその後の統合により現在ではこれが逆転している ( 図表 4 参照 ) ここ数年の業界統合のスケールを理解してもらえると思う PAGE 6 of 16

7 図表 4 日米主要キャリア加入者数推移百万人日米主要キャリア加入者数推移ベライゾンシンギュラー NTT DoCoMo KDDI ( 各社財務資料 TCAのデータをもとに作成 ) このことによりベンダーから見た端末販売の効率は格段に向上したトップのどれか一社への売り込みに成功すれば全米加入者の30% が潜在顧客となるこのためニッチマーケット向けの端末でも従来よりはずっと市場に出やすくなった全体的にここ数年で米国の携帯端末の魅力度が大幅に向上しているがこうした業界統合はその要因の一つと見られるスマートフォンは増えているといってもトップのBlackberry 加入者でも全米携帯加入者の3% 程度他のよりシェアの小さい端末を加えても多く見積もって数 % 以下のニッチ市場であるこのニッチ市場にこれだけの数のスマートフォンを維持する力があるかどうかは疑問視されておりある程度の淘汰は起こると思われるがそれでもベンダーがある程度強気で特徴あるモデルを出せるだけの環境は以前と比べて整ってきている従来は細分化されたキャリアでもまとまった出荷量を確保するためには業種別のニッチなアプリケーションよりも誰でも使うメール機能にフォーカスし見栄えよりもコストを重視した地味なデザインで機能も絞ったものにせざるを得なかったしかし最近ではCingular 一社で以前の2~3 社分に該当するため iphoneやblackberry Pearlのような高度な機能や美しいデザインのものも現実になってきたのである 4-2 ipod との競合日本と比べて米国の顕著な傾向は携帯電話とiPodの競合関係が当初から強いことである米国の携帯電話多機能化は ipodとの競争のために急速に立ち上がったという面もあり今後の方向性も ipodの動きが大きく影響を及ぼすと思われる日本では携帯ブラウザーサービスが広く普及したあとにiPodが入ってきたこと itunesでの楽曲販売番組販売を渋るレコード会社テレビ会社がまだ多いこと PAGE 7 of 16

8 ポッドキャスティング ( 脚注 1) の発達が米国ほどでないことなどの理由から携帯と競合するほどの力を持つに至らず全く別のニッチを形成しているしかし米国では高機能携帯端末が出揃って携帯ブラウザーサービスがある程度の立ち上がりを見せたのもスマートフォンの急成長が始まったのもすべて2004 年であり ipodが急速に販売を伸ばし始めたのも同時期である ( 図表 5 参照 ) ipodはユーザーが常時肌身離さず持ち歩くパーソナル娯楽端末としての地位を携帯やスマートフォンと競うだけでなく itunes Music Store(iTMS) がマイクロペイメントの課金プラットフォームとポッドキャスティングというニッチコンテンツも含めたパーソナル娯楽ポータルという役割を果たしておりこれも携帯コンテンツの課金能力 + 娯楽携帯サイトポータルと正面から競合している車社会の米国では双方向性の強い通信系の娯楽サービスでは運転中に操作することができず音楽ポッドキャストオーディオブック ( 脚注 2) などを流しっぱなしにできるiPodのほうがユーザーのニッチ時間のニーズに合っており現在までのところメインのパーソナル娯楽端末はiPodになっている ( 脚注 3) 図表 5 ipod 出荷台数推移 ipod 出荷台数推移百万台 Q03 1Q04 2Q04 3Q04 4Q04 1Q05 2Q05 3Q05 4Q05 1Q06 2Q06 3Q06 4Q06 1Q07 (Apple 社財務資料をもとに作成 ) ( 脚注 1) ipod などの音楽端末で聴けるダウンロード型インターネットラジオ無料でダウンロードでき itunes Music Storeなどにリストアップされている大手メディアの番組もあるが草の根型 (Web2.0 的 ) なユーザー制作番組に特徴がある映像によるビデオポッドキャストもある ( 脚注 2) 書籍を朗読した音声を録音したもの CD や MP3 で販売されており従来から本を読むかわりに通勤時間の運転中に聴くためなどによく使われている ( 脚注 3) Apple の会計年度末は 9 月のため例えば 2007 年第 1 四半期は 2006 年クリスマス商戦の時期にあたる PAGE 8 of 16

音楽だけでなく 2005 年秋にビデオiPodが発売され itmsでのテレビ番組ダウンロード販売が開始された頃携帯業界でもちょうどMediaFLOが実用化されこの時期から急激に動画配信や携帯テレビに関する動きが多くなった ipodと携帯電話は携帯映像機器の分野でも直接競合しているさらにビデオiPodでもすでに

一方でMotorola ROKR(iPod 搭載電話端末 ) やLG Chocolate ( 脚注 ) (Verizonの独自音楽配信サービス対応 ) などの ipodと直接競合する端末も登場した ROKRは評判が悪かったが Chocolateは若年層に人気があると言われているこうした長いライバル関係があるため

ipodとの競合を意識して発達してきている LG Chocolate 4-3 ARPU 対策米国全体の携帯平均 ARPUは世界の趨勢とは反対に 1998 年以来上昇を続けていたのだが 2006 年前半期で久しぶりに微減に転じた ( 図表 6 参照 ) ただし Verizon とCingularの上位 2

9 音楽だけでなく 2005 年秋にビデオiPodが発売され itmsでのテレビ番組ダウンロード販売が開始された頃携帯業界でもちょうどMediaFLOが実用化されこの時期から急激に動画配信や携帯テレビに関する動きが多くなった ipodと携帯電話は携帯映像機器の分野でも直接競合しているさらにビデオiPodでもすでに限定的ながらカレンダーやアドレス帳といったPIM 機能がある iphoneの発表は2007 年であるがいずれiPodが電話機能を搭載することは以前から予想されていた一般携帯電話端末よりも機能の高いスマートフォンでは MP3の音楽再生機能やカメラの搭載などマルチメディア端末化が急速に進んでおり一方でMotorola ROKR(iPod 搭載電話端末 ) やLG Chocolate ( 脚注 ) (Verizonの独自音楽配信サービス対応 ) などの ipodと直接競合する端末も登場した ROKRは評判が悪かったが Chocolateは若年層に人気があると言われているこうした長いライバル関係があるため iphoneの参入は米国で大きな話題となったのである従来はビジネス用に限定されていたスマートフォンであるが 2006 年秋からの新しいプロシューマー向けモデルではますます娯楽端末としての機能が強化され ipodと競合する部分が増えているブラウザーフォンも含めた米国の携帯端末市場はここ数年常に ipodとの競合を意識して発達してきている LG Chocolate 4-3 ARPU 対策米国全体の携帯平均 ARPUは世界の趨勢とは反対に 1998 年以来上昇を続けていたのだが 2006 年前半期で久しぶりに微減に転じた ( 図表 6 参照 ) ただし Verizon とCingularの上位 2 社ではARPU( プリペイドを除く ) は伸びており両社ともにデータARPUも順調に伸びており ( 図表 7 参照 ) データARPUが音声 ARPUの減少分を補っていると表明している ( 脚注 ) Chocolate はスマートフォンには通常含めないが娯楽多機能端末とビジネス用スマートフォンの間で共通の部分はますます増えており境目はあいまいになりつつある PAGE 9 of 16

10 図表 6 米国全体 ARPU の推移米国全体平均 ARPU 推移 $/ 月 (CTIA のデータにより作成 ) 出典 :CTIA 図表 7 主要キャリア Data ARPU の推移主要各社 Data ARPU 推移 $ Q Q Q Q Q Q Q Q 2006 Verizon Wireless Sprint Nextel Cingular Wireless T-Mobile ( 各社財務資料をもとに作成 ) 米国の上位キャリアは一般に低 ARPU 高 Churnのプリペイド顧客が増えるとアナリストの評価が低くなり株価に悪影響が出るため極力プリペイドを避けてきたしかし市場が飽和に近づくにつれ MVNO 経由などの形で徐々にプリペイド顧客が増える傾向にありこれにより平均が引き摺り下ろされることを避けるために高 ARPUの上方シフトの要因が必要となっている PAGE 10 of 16

11 スマートフォンの顧客は平均よりも音声 ARPU データARPUともに高い優良顧客層でありこれまではそれほどARPUの多くなかった消費者顧客でも通常の携帯端末からスマートフォンに買い換えればメール用のデータ通信パッケージを契約するのが普通である企業向けはもちろんプロシューマー向けモデルのスマートフォンでも ARPU 対策として有効と期待されている 4-4 企業顧客対策携帯電話市場が飽和に近づき米国のキャリアは企業市場に力を入れつつあるスマートフォンのさきがけとなったBlackberryでは Blackberry Serverを企業に入れセキュリティ ( 端末を紛失した場合にデータをリモートで消去するなども含む ) やメールのアカウント管理などを行うことができまたRIMはこうした企業への直接販売ルートを握りメンテナンスを含む月額料金を受け取っているライバルのTreo の場合はこれと異なり一般携帯電話端末同様の小売が中心だが企業顧客向けのミドルウェア (Blackberry Server 同様の機能を提供する ) のGood Technology(2006 年 12 月にMotorolaが買収 ) が同様のサービスと販売ルートを持つ最近になって多数発売されたWM 対応機でもWindows Serverの導入を勧めることができ企業への食い込みを進めることができるこうした企業販売要員はRIMやGoodも持っているがそれほど数は多くないため最近はキャリアの企業販売部隊と分担共同して販売することが多くなっているキャリアとしてもその後のアップセル ( より高額なサービスやオプションを販売する ) の可能性も含めて小さいながらも有望なプロダクトとなっている 4-5 イメージ対策最近でこそ広い層に浸透したBlackberryであるが少し前までは Blackberryと言えば弁護士のイメージが強かった従来ウォール街ではボイスメールを中心とする音声通信を使い倒す文化があったが弁護士はその仕事の性格上自分の発信内容を文書で残す必要性が強くしかも出張先からでもメールの連絡を即時に受けさらに長文の文書をメールで返信するというニーズが高かったこのためボイスメール文化から最初にBlackberryへと移行したのがウォール街の弁護士だったのであるこれを見たウォール街のバンカーや企業幹部へも広がった米国人には使い慣れたアルファベットキーボードなのでやや年齢の高い層でもBlackberryでメールを打つことは簡単にできる携帯電話の番号ボタンを使って入力するSMSは慣れるのに時間もかかり省略語を使い安価な端末でも可能なため米国ではまだ若年層の文化に限定されている傾向があるが Blackberryはステータスの高い大人の使うものとしてより広い年齢層に定着している PAGE 11 of 16

12 このBlackberryの高ステータスはライバルのTreoにも広がりその後発売された新たなスマートフォンのモデルにも期待されているよりARPUの高い上位顧客への食い込みを進めるためにキャリアもこうした高ステータス端末であるスマートフォンの品揃えを増やしているのである 4-6 Web2.0 のモバイル展開日本ではすでにだいぶ以前から携帯から写真やテキストをブログにアップロードすることは普通に行われているが米国ではまだ比較的新しい現象であり特に写真のアップロードで徐々に広まりつつあるこれとは別にスマートフォンまたはスマートフォンに近い簡易ネット端末 ( 代表的なものはT-Mobile Sidekick) のフルブラウザー機能で MySpaceなどのSNS (Social Network Service) サイトを利用する使い方が若年層で広がっている Sidekickはワードやエクセルが扱えず企業では利用されていないがフルキーボードを備えた安価なメールネット端末で T-MobileではSidekickからのネット利用のうち30% はMySpaceであると表明している ( 脚注 ) 従来の企業ユーザーや弁護士ではあまりこうしたWeb2.0 的な使い方はしないが昨年秋以降に発売されたプロシューマー向けモデルは個人で購入する人が多くこうした使い方も多くなると見られている 5 フルブラウザー機能スマートフォンの用途としては初期から現在まで一貫してメールの送受信 ( プッシュ配信とキーボード入力を特徴とする ) がキラーアプリケーションである PIMも必ずついているが PIM 機能だけであったPDAは廃れてしまったブラウザーや業務用ソフトでの利用も話題にはなるが実際の利用はまだまだ進んでいないフルブラウザー機能でGoogleのような検索サイトやパソコンのウェブサイトを利用できキャリアポータルをバイパスしてしまうことを恐れて従来キャリアは限られた企業向けだけにスマートフォンを販売してきたしかし米国では日本型の会員制ブラウザーサービスが結局あまり大きく成長せずデータ売上げの大半はテキストメッセージと言われる状況が続いている一般携帯端末と比べてやや液晶が大きいとはいえパソコンでは普通の種々のプラグインが使えないこともありフルブラウザーといっても実際にはかなり不自然な表現しかできないまたネットワーク速度がまだ遅いためブラウザーの表示には大変時間がかかるこうしたことからスマートフォンでも引き続き利用目的はメールが大半でブラウザー ( 脚注 ) Wall Street Journal, 11/2/2007 PAGE 12 of 16

利用はまだ限定的と見られるキャリアはすでに音楽映像配信や検索広告ターゲット広告などへと重点をシフトし始めていることもありフルブラウザー端末の大衆化に対する抵抗が以前ほどなくなってきたものと思われるまた日本型ブラウザーサービスでの売上げが比較的多いCDMAキャリア2 社 (Verizon SprintNextel )

T-Mobileだけで販売されていたが同社では以前から安価で若年層向けのSidekickで人気を博しており Pearlのすぐあとにも同様の安価なDashを発売している Cingular/AT&Tでもクリスマス商戦ではSamsung Blackjack を目玉商品とし PearlやiPhoneもラインアップするなど GSM

(PIM メールブラウザー電話 ) を統合した機器である米国では Cingular/AT&Tと独占契約を結んでおり米国以外でも現在のところGSM 対応キャリアで提供を予定している Apple iphone iphoneは目の覚めるような斬新なインターフェース美しい画面電話機能と

ビデオiPodとフルブラウザー端末としての表現力とユーザーインターフェースには驚いたがテキスト入力操作が難しそう ( 結局はスタイラス専用ペンを使わないとうまくできそうにない ) であると感じたスマートフォンが今でも圧倒的にメール入力端末であることを考えると決定的なマイナス点になると思われる

13 利用はまだ限定的と見られるキャリアはすでに音楽映像配信や検索広告ターゲット広告などへと重点をシフトし始めていることもありフルブラウザー端末の大衆化に対する抵抗が以前ほどなくなってきたものと思われるまた日本型ブラウザーサービスでの売上げが比較的多いCDMAキャリア2 社 (Verizon SprintNextel ) に対し GSM キャリア2 社 (Cingular/AT&T T-Mobile) は失うものが比較的少ないため顧客獲得のための目玉商品として上位 2 社がやや消極的なスマートフォンでも積極的に導入する傾向がある大衆型プロシューマー向けスマートフォンのトップを切ったBlackberry Pearlは当初 T-Mobileだけで販売されていたが同社では以前から安価で若年層向けのSidekickで人気を博しており Pearlのすぐあとにも同様の安価なDashを発売している Cingular/AT&Tでもクリスマス商戦ではSamsung Blackjack を目玉商品とし PearlやiPhoneもラインアップするなど GSM 陣営がプロシューマー向けスマートフォンには特に熱心である Samsung Blackjack 6 iphone の影響と Palm の凋落 1 月に発表されたAppleのiPhoneは米国だけでなく日本や世界でも大きな話題となったタッチスクリーン式フラットパネル全画面表示のインターフェースで ipodとスマートフォン (PIM メールブラウザー電話 ) を統合した機器である米国では Cingular/AT&Tと独占契約を結んでおり米国以外でも現在のところGSM 対応キャリアで提供を予定している Apple iphone iphoneは目の覚めるような斬新なインターフェース美しい画面電話機能と PIMのインテグレーションなどが注目を集めており一般の事前人気は高い一方で電話業界に詳しいプレスやアナリストの間では価格の高さテキスト入力のしにくさネットワークの遅さ (EDGEまでしか対応していない) 電池の持ち時間など通信端末としては問題が多いという見方も多い筆者の展示会でのプレゼンテーションを見た感想としてはビデオiPodとフルブラウザー端末としての表現力とユーザーインターフェースには驚いたがテキスト入力操作が難しそう ( 結局はスタイラス専用ペンを使わないとうまくできそうにない ) であると感じたスマートフォンが今でも圧倒的にメール入力端末であることを考えると決定的なマイナス点になると思われるこのためiPhoneはビデオiPodとしての役割が主スマートフォンは従という機器になると考える現在公表されているスペックではエクセルやワードのファイルを扱えないようでもありサーバーで堅牢なセキュリティ管理を行うわけでもないため企業向けスマートフォンとは明らかに異なる顧客層を狙っているこのため特に企業市場で強いBlackberryはあまり打撃を受けないと見られている PAGE 13 of 16

それよりも Appleのブランドや次世代 ipodとしての魅力などから新しいタイプの統合端末の市場を開拓することが期待されている携帯電話の限られた画面や番号キーに抵抗を感じて携帯データに興味をもっていなかった層のユーザーを刺激して携帯端末の新しい使い方を開拓する可能性がある一方企業用のサーバーや強力な営業部隊を持たず個人顧客向けの小売を中心とするPalmは

14 それよりも Appleのブランドや次世代 ipodとしての魅力などから新しいタイプの統合端末の市場を開拓することが期待されている携帯電話の限られた画面や番号キーに抵抗を感じて携帯データに興味をもっていなかった層のユーザーを刺激して携帯端末の新しい使い方を開拓する可能性がある一方企業用のサーバーや強力な営業部隊を持たず個人顧客向けの小売を中心とするPalmは iphoneと顧客層の重なりが大きく直撃を受ける可能性がある同社はBlackberryのような加入型サービスも持たずハードウェア販売だけに特化しているにもかかわらずハードの開発体制が弱くここ数年大きなモデルチェンジをしていない 2 年ほど前には武骨なBlackberryと比べてデザインがよいことが特徴で売上げを伸ばしていたがその後競合が増え Motorola QやBlackberry Pearlなどの最近の薄型モデルと比べていかにも厚ぼったく遅れたデザインになってしまった WM 対応機の発売が予定よりも遅れたことなどもあり 2006 年には業績が急激に悪化しているこのため企業売却の噂が強くなっており候補としてMotorolaやCiscoの名前が挙がっている Wall Street Journal 誌によると 2000 年に上場したときには市場価値 920 億ドルを誇った同社は現在売却されても20 億ドルに達するかどうかすら疑問視されているスマートフォン市場全体としては活気づいているがまだまだ小さい規模の市場にあまりに急激に参入が相次ぎすでに淘汰が起こり始めている 7 ブラックベリー孤児現象昨年 12 月 8 日のウォールストリートジャーナルに Blackberry Orphans( ブラックベリー孤児 ) というタイトルの記事が掲載されたお父さんお母さんたちが休みの日でも子供の目を盗んで Blackberryで延々とメールを打つという状況をさしており Crackberry( クラックベリー ) とも称されるBlackberryの中毒者が増えているというこれまで携帯やウェブの流行といえば若年層先導というのが相場であったが Blackberryに関してはお父さんお母さんの世代が担っているのが際立った特徴であるお父さんといっても必ずしも仕事のメールではなく例 Blackberry Pearl 赤色仕様えばアメリカンフットボールのファンタジーゲーム ( 自分の好きなプロ選手を集めて架空のチームを作り実 ( お母さん向け? 3/12/2007 発売 ) 際のリーグでのこれらの選手の戦績によってチームの得点を他の参加者と競うゲーム ) のトレード交渉をしているかもしれない PAGE 14 of 16

15 なおウォール街はBlackberryのユーザーが多く自分たちが愛用するものであるためにお父さんお母さん世代のウォール街のアナリストやウォールストリートジャーナルの記者が必要以上にBlackberryなどのスマートフォンを高く評価したり多く記事を書いたりする傾向があるように見受けられるこのためスマートフォンに関する米国の記事を読む場合にはこのことに気をつけて全体の市場の中ではまだ極めてマイナーな存在であることを念頭におきながら読む必要がある執筆者コメント筆者は最近 BlackberryのプロシューマーモデルPearlを購入した音声電話に使うこともあるがメインの携帯電話は別のものを持ち歩いておりまた常時 ipod も持ち歩いている Pearlに関しては形状が小さくスタイリッシュであることに驚く人が多く持った感じや耳にあてて電話として利用するときの感覚は普通の携帯電話とほとんど変わらない実勢価格も200ドル程度まで下がっておりこの点でも大衆化の端緒に立っているといえるしかしプッシュメールやPIM 同期の設定ブラウザーの使い勝手などやはりパソコンを使い慣れてMS Outlookなどをすでに使いこなしているユーザーでないと難しくまだまだ一般消費者向けの製品ではないと感じられた一方 iphoneはテキスト入力や電話としての使い勝手などは実際に触ってみないとよくわからず製品の評価はまだなんともいえないが携帯映像端末や従来にないタイプの統合端末として新しい使い方が出てくる可能性がある特に BlackberryでもiPhoneでもウェブ系のアプリケーションの中では地図の表現力や使い勝手が向上しておりモバイルとの親和性の高い GPSと組み合わせた LBS(Location Based Service) や検索広告を組み合わせたビジネスが米国でもようやく立ち上がる可能性があると見ている AppleのiPhoneは全世界のシェア1% 台数で1000 万台を目標としている iphone よりも価格が安く実績の長いBlackberryユーザー数が700 万であることを考えると強気の数字であるしかし現在の成長ペースが続けば Blackberryは遠からず1000 万台の大台に乗ることになり異なる顧客層向けのiPhoneも価格やアプリケーションがこなれてくれば強いブランド力を生かしてこれに近い数字に達する可能性もあると思われるニッチ製品であるスマートフォンやiPhoneをあまり過大評価するのは禁物だが従来は若年層の文化に限られていた電話以外のことに使う使い方をより広い層に拡大したまたこの顧客層は購買力が高く時間をお金で買う人々であるため有料サービスを付加していく余地が大きい現在はまだメール利用が主体であるが固定インターネットでも最初はメールがユーザー数を拡大しこれにウェブが続いた今後自由度の高いスマートフォンのプラットフォームを利用して日本型のキャリアポータル会員制有料コンテンツサービスとは一線を画した新しい米国型の携帯文化やサービスが徐々に確立されていくと筆者は見ている PAGE 15 of 16

16 出典参考文献 The Wall Street Journal CTIA 年次統計著者略歴海部美知 ( かいふみち ) ENOTECH Consulting 社長本田技研工業ベインアンドカンパニー NTT America NextWave Telecomにて国際的な営業マーケティング事業開発コンサルティングを担当 1998 年に独立してENOTECH Consultingを設立日米双方の通信事業者での実務経験を通じて得たインサイダーとしての知識や人脈とシリコンバレー独特のプロフェッショナル人材のネットワークを活かし携帯ブロードバンドデジタルコンテンツ分野の専門家として委託調査市場分析企業戦略分析事業開発提携戦略アドバイスなどを行っている寄稿先としてインプレス社ケータイ白書ソキウスジャパン社オープンエンタープライズマガジン慶応大学デジタルメディアコンテンツ機構 DMC Review Online などがある会社ウェブサイト : ブログ : Tech Mom from Silicon Valley PAGE 16 of 16

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