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1 ( 平成 30 年 10 月 5 日 ) 平成 30 年度安全衛生講習会 重大事故を防ぐためのリスクアセスメント 化学物質のリスクアセスメント実施システムの運用と現状 安全衛生推進機構副機構長 専任教授 宮崎隆文

2 本日の安全衛生講習会 はじめに : 平成 30 年度全国衛生週間 化学物質のリスクアセスメント (CRA) 実施 岡山大学の CRA 実施状況

3 平成 30 年度全国労働衛生週間 (10 月 /1 日 ~7 日 ) ~H30 年度のスローガン ( 第 69 回 )~ こころとからだの健康づくりみんなで進める働き方改革 目的 : こころとからだ両方の健康づくりを進め 職場で一丸となって働き方改革を進めることで 誰もが安心して健康に働ける職場を目指す現状 : 長時間労働者やメンタルヘルス不調者に対する面接指導などが受けられる環境の整備や病気を抱えた労働者の治療と仕事の両立支援を社会的にサポートする仕組みの整備 化学物質対策としては ラベル表示 安全データシート (SDS) の交付 入手の徹底 ~H29 年度のスローガン ( 第 68 回 )~ 働き方改革で見直そうみんなが輝く健康職場 治療と仕事の両立支援の推進や改正労働安全衛生法に基づくラベル表示や安全データシート (SDS) の公布といった化学物質による健康障害防止対策の徹底 ストレスチェック制度を含むメンタ ルヘルス対策や過重労働対策の推進

4 大学における安全 衛生 大学における先端的な研究教育活動が活発化する際 大事故を防ぎ でき るだけ小さなダメ - ジとするには 日頃の安全衛生活動が重要です 安全 : 許容できないリスクがないこと 安全といえば 一切危険は存在しない という絶対安全を考えている人が多い 衛生 : 健康の維持と向上および疾病の予防と治療 Health is a dynamic state of complete physical, mental, spiritual and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity. (by WHO) 健康とは肉体的にも 精神的にも そして社会的にも すべてが満たされた状態

5 労働安全衛生法における罰則 安衛法の罰則 : 両罰規定 労働安全衛生法第 122 条では 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人 使用人その他の従事者が その法人又は人の業務に関して 第 116 条 第 117 条 第 119 条又は第 120 条の違反行為をしたときは 行為者を罰するほか その法人又は人に対しても 各本条の罰金刑を科する と規定されている 行為者 だけでなく 監督している 事業 ( 責任 ) 者 も罰せられる

6 試薬廃棄で疾患 により提訴 ( ) 教官指示で実験室の廃試薬の処理 : 有毒ガス発生 体調不良 廃試薬処理後に 閉塞性気管支炎 肺気腫を発症 (2016) (2017) ( ) 当時の指導者に対して 安全配慮義務を怠ったとして 大学側を訴えた ( 約 3 億円の損害賠償を要求 ) 係争中 岡山大学では 実験廃液は 環境管理センタ - を経由して処理されており 実 験系廃棄物 ( 固形物 ) は種類別に分別して 専門業者にて処理する事になっ ています 学内では 廃試薬 ( 固体 ) と廃液を混合することを禁止しています

7 重大災害発生の背後 ( 労働災害における経験則 ) ハインリッヒの法則 1 重傷 29 軽傷 失敗に学ぶ! 1 件の重傷災害発生の背後には 29 の軽傷や軽微事故が起こっており さらに 300 のヒヤリ ハット事例がある そして その背後には多数の不安全状態と不安全行動があると考えられている 300 ヒヤリハット 事故発生に係る重要な手がかりがある! 不安全状態不安全行動 出来れば この現状を把握して 事前に対処したい! リスクアセスメント

8 リスクアセスメント実施の流れ ステップ1 化学物質などによる危険性または有害性の特定 ( 法第 57 条の3 第 1 項 ) ステップ2 特定された危険性または有害性によるリスクの見積り ( 安衛則第 34 条の2の7 第 2 項 ) ステップ3 リスク見積りに基づくリスク低減措置の内容の検討 ( 法第 57 条の3 第 1 項 ) リスクアセスメント 労働者 (= 構成員 ) の参画 の重要性!! ステップ 4 リスク低減措置の実施 ( 法第 57 条の3 第 2 項努力義務 ) ステップ 5 リスクアセスメント結果の労働者への周知 ( 安衛則第 57 条の2の8)

9 化学物質のリスクアセスメントの実施 実施の対象 リスクアセスメント対象化学物質 (SDS 義務付け ) について リスク評価 ( リスクアセスメント (CRA)) を実施する 1 一定の危険性や有害性のある 673 種の使用前 2 対象物質の作業方法や手順を新規採用または変更時 3 現在使用している物質でも過去に CRA 結果がない なお 在庫のみで上記の対象物質の使用予定がないもの については CRA 実施はしなくてよい 使用量 使用頻度が多く 危険性 有害性の高い物質を優先実施

10 SDS に関する国内法 (H30 年 9 月末時点 ) SDS を義務付けしている法律は 以下の 3 つある 労働安全衛生法 ( 略称 : 安衛法 ) 化学物質排出把握管理促進法 ( 略称 : 化管法 ) 毒物及び劇物取締法 ( 略称 : 毒劇法 ) 該当法令対象物質数内訳 安衛法 ( 平成 28 年 6 月 ) + 33( 平成 30 年 7 月現在 ) 化管法 562 第 1 種指定化学物質 (462) 第 2 種指定化学物質 (100) 毒劇法 130 毒物 (28) 劇物 (93) 特定毒物 (9) 毒劇指定令 596 毒劇法別表以外の指定毒物 (112) 劇物 (474) 特定毒物 (10) ただし 同一事業者に同一の指定化学物質を継続的または反復して譲渡 提供する場合 受領者から請求された場合を除き 既に SDS が提供されている場合 SDS の提供を省略することができる

11 化学物質リスクアセスメント実施のフロ - チャ - ト 対象物質 保管のみ? 教育研究のために 大学および関連する事業場内に持ち込まれた 一定の危険性や有害性が認められた化学物質のリスクアセスメント (CRA) 実施が義務化された 673 物質 *1 Yes No 新規の取扱い? No 過去に CRA 実施? No CRA 実施 Yes Yes CRA 実施 作業内容 危険性や有害性の変更あり? No CRA 不要 Yes CRA 不要 *1 一般消費者の生活に供する製品は除外 1 薬事法に定められている医薬品 医薬部外品及び化粧品 2 農薬取締法に定められている農薬 3 労働者による取り扱いの過程において固体以外の状態にならず かつ 粉状または粒状にならない製品 4 対象物が密封された状態で取り扱われる製品 CRA 実施 使用する場合は 事前に CRA 実施 変更がある場合は 事前に CRA 実施

12 岡山大学化学物質のリスクアセスメント実施 報告書 確認システム システム操作のマニュアル ( 管理者用または実施者用 ) ( Chemical Risk Assessment Report Check System ) 通称 : クラリス (Version 1.1) 責任担当 : 安全衛生推進機構 協働担当 : 安全衛生部 情報統括センター

13 化学物質管理単位責任者及びその責任代行者 CRA 実施者 報告 ( 未確認 ) 化学物質管理単位責任者 事前登録 メンバ - 登録 (CRA 実施者 ) ( 注 ) CRA 報告書 ( 完了 提出 ) メンバ 登録 1 メンバ 登録 ➁ 責任代行者の指定 メンバ 登録 3 メンバ 登録 4 メンバ 登録 5 C R A 実施 ( 注 ) 化学物質のリスクアセスメント (CRA) が実施後の報告 ( 未確 認 ) は 責任者による リスク低減策 と リスク低減策の実施内 容 が追記されて 最終の 報告書 ( 完成 ) の提出される

14 化学物質のリスク管理の基本 Hazard Level (HL) Exposure Level (EL) 化学物質の人体へのリスクの大きさは 有害性 *1 の強さと ばく露 *2 の量で決まります 有害性 ばく露量 *1 有害性 : 悪影響の度合い *2 ばく露 : さらされる 吸ったり 触れたりする事 化学物質のリスク管理 の 2 つの要素 リスク低減の方法 1 リスク低減の方法 2 1 コントロ - ル 有害性 ばく露量 安全性 安全性 有害性 ばく露量 2 コントロ - ル 1 ばく露量の大きい用途では 有害性をどのくらい小さくするか 有害性の低い代替品への転換 2 有害性の高い化学物質は できるだけばく露しないようにする 有害物質の強制排気や保護具の着用

15 化学物質の危険有害性 ( 化学 ) 物質の中には 毒劇性や爆発性を有する物があり 少量でも死に至ることがある また 持続的に吸入が続くと 後に健康障害を起こすことがある 物質の危険有害性やその取扱法を知る! MSDS SDS または (Materials Safety Data Sheet) 物質の安全性デ-タシート

16 GHS (Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals) 化学品の分類および表示に関する世界調和システム 爆発性 :Explosion 可燃性 :Flammable 支燃性 :Burnability Labelling 高圧ガス :High pressure Cy. 腐食性 :Saprophagous 強毒性 :St. Toxicity 注意 / 警告 : Caution 健康有害 :health hazard 環境有害 :Environmental Hazards

17 安全衛生推進機構ホームページへ移動 クリック

18 安全衛生推進機構ホームページへ移動 クリック

19 安全衛生推進機構 HP から クラリス の起動 カーソルを移動すると クラリス のマニュアル クラリス の起動

20 安全衛生推進機構 HP から クラリス の起動 岡大 ID とパスワードを入力

21 岡山大学化学物質のリスクアセスメント実施報告 確認システム 管理責任者のトップ画面 管理者以外は上段のみ 管理者は二段表示 システム管理者からのお知らせを必ず ご一読下さい! 研究室内のお知らせ欄です ご活用ください

22 岡山大学化学物質のリスクアセスメント実施報告 確認システム 最初に 報告 確認システムの管理責任者用 の初期画面から [ 管理単位 メンバー登録 ( 青枠 )] をクリックします 次の画面へ 管理者用

23 実際に システムを使いながら説明

24 使用作業名の付け方 のポイント リスクアセスメント対象物質の使用作業名 欄には 作業名を端的に表す タイトル部 と記号や通し番号を入れた 記号部 を組み込んだ 使用作業名 を入力する方が良いでしょう 使用作業名 : 新規化合物 Xの合成 -b-0001 タイトル部 記号部 化合物 X の合成実験で使用する化学物質 1 原料 A( 化学物質 ): 対象物質 = 毒性高 2 原料 B( 化学物質 ): 対象物質 = 毒性中 3 原料 C( 化学物質 ): 非対象物質 = 毒性低 4 溶媒 D( 化学物質 ): 対象物質 = 毒性中 5 触媒 E( 化学物質 ): 対象物質 = 毒性極高 原料精製 予備 本実験 分離 精製 1 の精製 (200ml 使用 ) 2 の精製 (100ml 使用 ) 4 の精製 (500ml 使用 ) a 50ml 反応 化合物 X + 新規物質 Y b 10ml 5 5ml 5ml 1ml X および Y の分離 精製ためのカラム (2 3L 使用 ) c リスクアセスメント対象物質を使用する作業において 以下の優先順位に基づいて実行する 危険 毒性の高い (5: タイトル -b-0001) や (1: タイトル -a-0003) 使用量の多い (2: タ イトル -c-0002) や (4: タイトル -a-0004) の順にリスクアセスメントを実施する

25 特定化学物質障害予防規則 ( 必須 ) 特別管理物質 (44 種 ) の種類と名称 使用記録の要保存 ジクロルベンジジン及びその塩 クロロホルム アルファ ナフチルアミン及びその塩 四塩化炭素 第 1 類 オルト トリジン及びその塩 1,4 ジオキサンジアニシジン及びその塩 1,2 ジクロロエタン ( 二塩化エチレン ) ベリリウム及びその化合物 1,2 ジクロロプロパン ベンゾトリクロリド ジクロロメタン ( 二塩化メチレン ) エチレンイミン スチレン エチレンオキシド 1,1,2,2 テトラクロロエタン ( 四塩化アセチレン ) 塩化ビニル テトラクロロエチレン ( パークロルエチレン ) クロロメチルメチルエーテル トリクロロエチレン 酸化プロピレンメチルイソブチルケトン第 2 類 3,3ʼ ジクロロ 4,4ʼ ジアミノジフェニルメタンオーラミン ジメチル 2,2 ジクロロビニルホスフェイト (DDVP) マゼンタ 第 2 類 1,1 ジメチルヒドラジン三酸化二アンチモンナフタレンインジウム化合物 ニッケルカルボニル クロム酸及びその塩 パラ ジメチルアミノアゾベンゼン コバルト及びその無機化合物 ベータ プロピオラクトン コールタール ベンゼン 重クロム酸及びその塩 ホルムアルデヒド ニッケル化合物 ( ニッケルカルボニルを除き 粉状の物に限る ) オルトートルイジン 砒素及びその化合物 ( アルシン及び砒化ガリウムを除く ) エチルベンゼン リフラクトリーセラミックファイバー

26 岡山大学化学物質のリスクアセスメント実施報告 確認システム ( 外部リンクへ ) [SDS 検索サイト ] から対象物質の危険 有害性情報 取扱い保管上の注意 ばく露 保護具などを確認して下さい 元の画面へ 管理者用

27 岡山大学化学物質のリスクアセスメント実施報告 確認システム ( 外部リンクへ ) 左には福井大学版を例示していま す 使用にあたっては 利用説明 書 と 解説書 などを御一読下さい 次の画面へ 管理者用

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29 福井大学化学物質のリスクアセスメントマルチツ - ル 〇半定量的手法〇定性的手法少量 低頻度向け 〇判定量的手法 ( 中災防 ) 〇定性的手法 ( 中災防 ) 少量 低濃度向け手法 ( 厚生労働省 みずほ情報総研 ) 大学のような教育 研究での化学物質の使用の多くは 1Kg もしくは 1L 未満で あり 頻度も少ないため 少量 低濃度向け手法 を使ってリスク評価を行う 福井大学 (JISHA 方式 2019)

30 リスクレベル表示 現行の 5 段階 4 段階 (Ⅳ Ⅲ Ⅱ Ⅰ) に変更

31 岡山大学化学物質のリスクアセスメント実施報告 確認システム 記入内容を再確認し 最後に [ この内容で登録する ] ボタンを 押して下さい 次の画面へ 管理者用

32 岡山大学化学物質のリスクアセスメント実施報告 確認システム 記載例 1: 出来るだけ少量を使用し 反応終了後の反応残留物などは適切に廃棄処理します 記載例 2: 研究目的の遂行上 対象化学物質を直ぐに不使用や代替品に変えることは出来ません なお 局所排気装置の使用や保護具の着用を徹底します 今後 実験計画を見直す際に実験手法の見直しや代替品への転換などを検討します 記載例 3: リスク評価の結果 リスクは十分低いので 特に リスク低減策を検討しない 記載例 1: リスクアセスメント実施結果は 同様に取り扱う者に連絡 周知しました 記載例 2: リスクは十分に低いので 継続的に現状維持に努めます 記載例 3: 危険性のリスクが高いので 今すぐ 対象物質を使った作業を中止しました 次に 研究室の実情を考えながら 不使用 代替 少量 環境改善 手法改善などを考慮した リスク低減策 を自由記述し [ 保存する ] を押して記録して下さい さらに リスク低減策の実施内容 を自由記述して下さい なお 報告書の記録を削除する場合は [ 却下する ] を押して下さい また 低減策やその実施内容の記述を一旦中断する場合 最下段で [ 一時保存する ] を押して下さい 次の画面へ 管理者用

33 リスクアセスメント手順のまとめ 試薬ビンのラベルで (GHS 絵表示と注意喚起語 ) でリスクアセスメント実施を判断 簡易ツ-ルでリスクアセスメント実施 健康障害リスクレベルが十分に低いことを確認 高い場合は実験条件を見直して ばく露防止対策を実施

34 化学物質リスクアセスメント報告 確認システム 全体の流れ 化学物質管理責任者 : メンバ - 登録と追加 CRA 実施 化学物質管理単位メンバ -: 作業場所等の登録 化学物質管理単位メンバ -: リスクアセスメント実施 登録 化学物質管理責任者 : リスクセスメント実施 登録の内容確認 ( 承認または却下 ) 化学物質管理責任者 : リスクセスメント実施報告書の最終登録 ( 報告書の書き換え不能 ) 周知 管理単位メンバ -: リスクアセスメント最終報告書の確認 化学物質管理責任者 : リスクセスメント報告書の確認状況の把握

35 Q & A メンバ- 登録 ができない 報告書の削除ができない どのCRAツールが良いか 作業内容の変化 ( 使用量の増減 ) した場合の対応はどうするか すべての対象物質のリスクアセスメントを実施しなければならないか 誰がリスクアセスメントを実施するのか? 学生実験の場合には どのように対応すべきか リスクアセスメント実施内容の周知はどうするか 経年によりメンバ- 登録から外すにはどうすれば良いか デ-タを削除したいが どうすればデータ削除できるのか

36 岡山大学化学物質のリスクアセスメント実施報告 確認システム デ - タの削除は不可 ア - カイブ処理 ( 統計データから排除 )

37 最後に 化学物質のリスクアセスメントは 危険有害作業を行う前に実施して下さい 過去に 1 度もリスクアセスメントを実施していない 作業条件が大きく変更となった CRA の結果が残っていない などが実施の対象となります 今日の CRA では 簡易ツ - ルを使ったリスクアセスメント手法ですので 研究室で培った専門的な知識や経験も活かして 安全衛生に十分配慮した教育 研究を行うよう努めて下さい