Japan Academy of Personal Finance パーソナルファイナンス研究 No.1 パーソナルファイナンスと地域産業活性化のための産業施策北海道のワイン産業振興策と 6 次産業化渡部なつ希東京大学大学院飯田隆雄札幌大学要旨北海道では 20 年前まではほんの数社

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しじんのたけ
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1 北海道のワイン産業振興策と 6 次産業化渡部なつ希東京大学大学院飯田隆雄札幌大学要旨北海道では 20 年前まではほんの数社に過ぎなかったワイナリーが 2013 年時点では約 20 社にまで増加している本稿では日本で販売されているワイン全体の約 4% でしかない純国産ブドウ原料 100% のワインすなわちワイン生産地域でブドウを栽培しそのブドウでワインを製造し販売するといった産業としてのワイン生産を柱とする経済振興政策が地域経済の発展及び人口の定着を目標とするときに必ず問題となるファイナンスの視点から分析するまずワイン製造会社が付加価値の高い商品群を生産できるようにファイナンスの仕組みを工夫する事により波及倍率の低い農業生産 0.57 とその他食品部門 0.52 土木建設や金融サービス部門の 0.89 公共サービスの 1.02 など地域の産業構造による波及効果の偏りを考慮しながら地域経済にも貢献できるような施策を考察するそこで平成 17 年度北海道地域産業連関表を用いて経済波及効果と雇用効果をシミュレーションすることによってそこに内在する様々な問題点を明示し解決策を提案することにより今まで以上に経済的に豊になる施策を提案しようとする試みであるその結果北海道にとって高付加価値ワインの生産と六次産業化は不可欠である必要とされる資金調達手段として補助金や金融機関を通じた制度融資の効果も大きいが財政を投入しないで自由に活用できる投資資金も効果が大きく今後活用すべき制度と考えられる具体的には (1) 各ワイン会社が土壌改良などでファイナンスしてもそれほど波及倍率が高くなるわけではない (2) 政府補助金金融機関の借入匿名組合方式の投資資金をそれぞれ投入して経済効果をシミュレーションしたがそれほど波及倍率が高くなったわけではない (3) 六次産業化の育成施策としてワイナリーがレストランやホテルを併設したとして新規施策に投入する資金を政府と民間がお互いの得意とする部分でファイナンスすることによりより効果的な経済効果が得られる (4) オーガニックワインはブドウ栽培はじめ一連の製造工程に於いて人手がかかる分人口の地域定着向上に大きく寄与できると期待される 7

1 はじめに日本のワイン産業は 1923 年創業で 88 年の歴史がある山梨県の甲州ワインが質量共にトップである第 2 位は北海道であるがその歴史といえばはこだてワインの 38 年が最長の部類であり 50 年の歴史の差がある北海道産ワインの現状は世界のワイン市場で認められた2~3のワイナリー以外ほとんど熟成期間の短いテーブルワインであり

2 1 はじめに日本のワイン産業は 1923 年創業で 88 年の歴史がある山梨県の甲州ワインが質量共にトップである第 2 位は北海道であるがその歴史といえばはこだてワインの 38 年が最長の部類であり 50 年の歴史の差がある北海道産ワインの現状は世界のワイン市場で認められた2~3のワイナリー以外ほとんど熟成期間の短いテーブルワインであり充分な熟成期間を経た付加価値の高いヴィンティジになりうるワイン商品が少ないしかし土壌も気候もブドウの生産に比較的適しており果樹農家の後継者不足による耕地放棄も後押しして余市町や三笠市岩見沢市を中心に新規のワイナリーが増加している実際 20 年前まではほんの数社に過ぎなかったワイナリーが 2013 年時点では約 20 社にまで増加しているしかしながら安いブドウジュースを国外から輸入して発酵した国内産ワインや国外から輸入したワインをブレンドして生産した国産ワインなど 1,000 円前後の単価の安いテーブルワインが生産量も販売量も主流であるのも現状である 1 本稿では日本で販売されているワイン全体の約 4% でしかない純国産ブドウ原料 100% のワインすなわち地域に於いてブドウを栽培生産しそこで純国産ワインを製造し販売するといった産業としてのワイン生産を柱とする経済振興政策が地域経済の発展及び人口定着を目標とするときの問題点を明らかにしようとする試みである北海道における新規参入のワイナリーはブドウ栽培農家とワイン醸造業及び販売者が一体となった六次産業化の生産者が主流になりつつある 2 これらを地域の主要産業として定着させ豊かな地域を育てて行く為の効果的な施策を考察する上で特にファイナンスの視点から分析する事は大変重要と思われる従ってまずワイン製造会社が付加価値の高い商品群を生産できるようにファイナンスの仕組みを工夫する事により波及倍率の低い農業生産 0.57 とその他食品部門 0.52 土木建設や金融サービス部門の 0.89 公共サービスの 1.02 など地域の産業構造による波及効果の偏りを考慮しながら地域経済にも貢献できるような施策を考察するそこでまず北海道において平成 17 年度北海道地域産業連関表 3 を用いて経済波及効果と雇用効果をシミュレーションすることによってそこに内在する様々な問題点を明示し解決策を提案することにより今まで以上に経済的に豊になる施策を提案しようとする試みである 2 ワイナリーの六次産業化 2 1. 六次産業について六次産業化とは第一次産業である農林水産業を基礎に農林水産物を加工する第二次産業さらにその加工品を軸としたサービス観光産業 ( 第三次産業 ) を地域的に結合し個別地域の総合産地化活性化を構築しようとするものである六次産業化とは第一次産業第二次産業第三次産業を合計もしくは積算すると六次になるからである北海道のような第一次産業と第三次産業が多く第二次産業が少ない地域ではとりわけ六次産業化構想を前面に出した対策が必要と考えられている図 2 1 産業区分と六次産業 8

3 2 2. 六次産業化の先進事例ドイツ Besen のケースここではワイナリーとレストランの併設についてドイツの Besen の事例に注目する 4 Besen は Besenwirtschaften の略語で日本語ではベーセンと表記する Besen は日本語に訳せば箒 ( ほうき ) の意味でワイン農家が玄関前や看板の飾りに使われているワインのほかにシンプルな伝統食の提供もしておりワイン農家レストランともいえるこれはドイツに存在するワイン直売の特別な形態であり地域によって呼び名が異なる Baden-Wurttemberg 州の Wurttemberg 地方では一般的に使用されているこの伝統は紀元 800 年頃にカール大帝によって初めてワイン農家に自家の居間でワインを販売する権利が与えられた時期からとされており現在に至る何世紀にもわたって貧困のシンボルであった Besen の役割は大きく変化してきているその歴史的発展過程においてワイン農家の協同組合の役割が非常に大きい貧困の脱出においてだけではなくレストランバーパブなどワインを取り扱う業者との間の合意の成功を導いたそのことによって結果的に Besen 農家ワイン協同組合飲食業界が暗黙の了解のように地方ワインの販売に協力することになっている今日において経済のグローバル化の影響を受けつつもなお8 割近いワインの地域内消費が実現されている現在も Besen は依然としてワイン農家の販売戦略の一つでありその地域における社会的な場観光の場として活かすことが出来るしたがって Besen は伝統文化の象徴とワインの直売としての販売形態といった新しい意味合いを有するようになった農家レストランがまだ少ない日本において地域に根付き伝統文化を生かした地産地消をベースとした地域活性化および地域間交流を志向するこれらの事例が参考となるこでは Iida(2012) の枠組みを応用し (2) 数値データはもっぱら公的機関が公表しているデータを利用した (3) 最終需要の推計で公表データを利用できないケースは北海道ワインとはこだてワインの大手 2 社からのインタビュー結果に依存した 2009 年度の北海道のワイン生産量 2,356kl 平均単価を 750ml 当たり 1,000 円と仮定する総売上高推計値は 3,141,333 本 1,000 円 = 3,141,333,000 円となりこの数値を前提に分析を進める以下の表は上記表とグラフの根拠となるデータをまとめたものであるここでは 2005 年度から 2008 年度の北海道産と山梨県産ワインの価格内訳を表している記載した全てのワイナリーは輸入のバルクぶどう原料を使用せず国内産ぶどうのみ 100% を使用して生産された純国産ワインである以下のデータ (2005 ~ 2008) は国産 100% のぶどうのみを使用している北海道内と山梨県内のワイナリーの価格分布を表した北海道の特徴として 1,000 円未満のワインが 31.9% 1,000 円台が 59.9% 2,000 円台 4.9 % 3,000 ~ 5,000 円 2.4 % 5,000 円以上が 0.8% と 1,000 円台以上のワインの価格の分布が急激に減少しているしかし山梨県は 1,000 円未満が 0 % で 1,000 円台が 71 % 2,000 円台 14.3% 3,000 ~ 5,000 円 10.2% 5,000 円以上が 4.5% であり多少なりとも高付加価値のワインの製品開発を意識していることが推測出来るここでは具体的に 1,000 円未満が 0% 1,000 円台が 71% 2,000 円台 14.3% 3,000 ~ 5,000 円 10.2% 5,000 円以上が 4.5% 平均単価 1000 円台 71.0% 2,000 円台 14.3% 3,000 ~ 5,000 円未満 10.2% の生産ワインの価格帯構成比で増産計画をすると仮定する 3 シミュレーション分析 3 1. シミュレーション方法北海道開発局の平成 17 年度北海道産業連関表を用いて政策効果のシミュレーションをするこ 9

3 2. 政策内容振興施策 ( 政策 1) から ( 政策 62) のシミューレション分析を行う ( 政策 1). 北海道産ワインの販売の主体は熟成させない甘口ワインで単価 1,000 円前後と売価も低いそこで 1 年程度熟成した日本の国内小売価格が 2,500 円のワインを今までよりも 10% 増産した場合 ( 政策 2).

4 3 2. 政策内容振興施策 ( 政策 1) から ( 政策 62) のシミューレション分析を行う ( 政策 1). 北海道産ワインの販売の主体は熟成させない甘口ワインで単価 1,000 円前後と売価も低いそこで 1 年程度熟成した日本の国内小売価格が 2,500 円のワインを今までよりも 10% 増産した場合 ( 政策 2) 年度赤ワインブームもあって北海道のワイン生産量 4,965kl となったこのブームは一時的なものとなり以後生産量は回復していない当時の生産していたワインメーカーは倒産していないそこで 2000 年度当時の水準に生産量が回復した場合の ( 政策 1) のケースの推計をする ( 政策 3). ( 政策 2) における増産部分を日本でもっとも成功している甲州ワインの例に倣って価格帯構成比が同じような増産計画を施策するとする ( 政策 4). ( 政策 3) を前提にワイン製造会社が自主的に原材料費と人件費の 30% を土壌改良費に回すと仮定する ( 政策 5). ( 政策 4) を前提に政府は原材料費の 30% について土壌改良費に金融機関を通じて補助するとする金融機関は補助金の審査と経営のモニターを引き受けることによって補助額の 30% を政府から手数料として受け取ることが出来るとする実際の経営アドバイスと監督の実務は金融機関が指定したコンサルタント会社が引き受け金融機関の売上の 10% がコンサルタント会社の引受手数料となるなおこのケースではあくまで政府補助金での産業施策であるため金融機関 10

5 が倒産のリスクに対して担保する必要は生じない ( 政策 51) ( 政策 5) を前提に原材料費の 30% について土壌改良費 51,000 万円を金融機関から借入する銀行借り入れは借入金額が必ず土壌改良費に回ることが特徴である元利均等で年利 4% 返済期間 10 年で 51,000 万円借入した場合年間返済額 6,287,838 円支払うことになるこれは利益を圧迫するので利潤は ( 政策 5) の時より年間利子支払額 6,287,838 円分低くなるその後の毎年の支払額については今回無視する理由は経済効果などのシミュレーションは最初のインパクトを基に計測するからである ( 政策 52) ( 政策 5) を前提に匿名組合方式の投資資金で資金調達する資金調達額 51,000 万円匿名組合に支払う取扱手数料 5.5% と管理手数料 1.05% の1 年分の合計は資金調達のさいに同時に調達し総額 2,830.5 万円支払いに回るこれは金融サービスの売り上げとなる資金の回収はプロジェクト終了後となり利益の如何にかかわらずプロジェクトの総資産を分配するモノとするここで言う総資産とは土壌改良による売り上げ増加分に相当する ( 政策 6). ( 政策 3) を前提にワインメーカーがホテルとレストランを建設しサービスするために金融機関を通じて予想売上金額まで制度融資 ( 政府補助金 ) を投入する据え置き5 年返済期間は 20 年金利 4% 政府は借入利子率の4% 分を利子補給するまた信用保証協会を利用してデフォルトしたときの保障をする信用保証協会への手数料は銀行手数料に含まれるものとする経営の監督は融資金額の 30% の支払いを受けて指定のコンサルタント会社が行うこのケースでは政府は長期融資に対してあくまでも利子補給分の助成を実行する従って金融機関から借り入れた資金の返済義務が生じることからこの資金のデフォルトリスクに対応した仕組みが必要となった ( 政策 61) ( 政策 6) を前提に原材料費の 30% について土壌改良費を金融機関から借入するワインメーカーがホテルとレストランを建設しサービスするために金融機関を通じて売上金額まで制度融資を行う元利均等で返済期間は 20 年金利 4% ワインメーカーはコンサルタント会社にホテルとレストランのグランドデザインと設計をまかせ総費用の 20% を支払うものとする制度融資部の内ホテルレストランの建設費 20% 人件費 20% サービス業 50% 金融 6% サービス業 ( コンサルタント )3% 利潤 1% の寄与度があると仮定する元利均等で年利 4% 返済期間 20 年で 870,000 万円借入した場合年間返済額 625,371,696 円支払うことになるこれは利益を圧迫するので利潤は ( 政策 6) の時より年間利子支払額 625,371,696 円分低くなるその後の毎年の支払額については今回無視する理由は経済効果などのシミュレーションは最初のインパクトを基に計測するからである ( 政策 62) ( 政策 6) を前提に匿名組合方式の投資資金で資金調達する資金調達額 870,000 万円匿名組合に支払う取扱手数料 5.5% と管理手数料 1.05% の1 年分の合計は総額 482,850,000 円支払いに回るこれは金融サービスの売り上げに加算される資金の回収はプロジェクト終了後となり利益の如何にかかわらずプロジェクトの総資産を分配するモノとするここで言う総資産とは土壌改良による売り上げ増加分に相当する ( 政策 7) ( 政策 6) の内 30% のブドウがオーガニック生産に切り替えられ平均ワイン生産コストが 40% 上昇すると仮定するオーガニックワインの生産者は全量自分のホテルやレストランでこれらを提供するまたオーガニックにちなんでアトピーなどの対応できるように建築資材や家具食器類などの変更するものとする従って平均建設費は 30% 上昇するこの増加分は政府補助金の助成対象となって最終的に費用がカバーされるものとするシミュレーション計算のための按分表 ( 単位円 ) は以下のようになる 11

6 以下の表は経済波及効果と雇用効果のまとめである 12

7 4 結びにかえて 4 1. シミュレーション結果からの結論北海道にとって高付加価値ワインの生産と六次産業化は不可欠である必要とされる資金調達手段として補助金や金融機関を通じた制度融資の効果も大きいが財政を投入しないで自由に活用できる投資資金も効果が大きく今後活用すべき制度と考えられる具体的には (1) 単純なワイン増産施策は波及倍率が農業耕作部門 0.57 という低い数値からなる北海道独特の産業構造から効率的でない ( 政策 1~ 政策 4) (2) 六次産業化の育成施策が大切であるが各ワイン会社が土壌改良などでファイナンスしてもそれほど波及倍率が高くなるわけではない ( 政策 5) (3)( 政策 5) 政府補助金 ( 政策 51) 金融機関の借入 ( 政策 52) 匿名組合方式の投資資金をそれぞれ投入して経済効果をシミュレーションしたがそれほど波及倍率が高くなったわけではない特に ( 政策 52) ではファイナンスの規模が比較的小規模であればファイナンス手数料が波及倍率を下げる原因となったかもしれない (4) 六次産業化の育成施策としてワイナリーがレストランやホテルを併設したとして新規施策に投入する資金を政府と民間がお互いの得意とする部分でファイナンスすることによりより効果的な経済効果が得られる ( 政策 6) (5)( 政策 5)( 政策 51)( 政策 52) 以上に将来の売り上げ規模を飛躍的に増加してファイナンス金額を増加し ( 政策 6) 政府補助金 ( 政策 61) 金融機関の借入 ( 政策 62) 匿名組合方式の投資資金をそれぞれの仕組みに従って投入した場合の経済波及効果をシミュレーションした結果投入資金が倍以上になったものの波及倍率が飛躍的に大きくなったとは言い難い (6)3 種類のファイナンスの方法を区別してシミュレーションしたが大きな違いが見当たらなかったがファイナンスまでの時間がかかるとか資金の利用自由度の幅が少ないとか充分な資金の調達額ではない等今一歩踏み込んだ問題点を充分に反映できていない等もう少し書類上から見えない問題点を明確にする作業が残った ( 政策 51)( 政策 52)( 政策 61)( 政策 62) (7) 公務公共サービス金融部門が波及倍率の高い北海道特有の産業構造から上記部門間の効率的な連携の必要性が明らかとなった (8) 農業部門や食品加工部門等の波及倍率が高くなるように産業構造を変化させるような施策も今後検討する余地があると考えられる (9)( 政策 7) オーガニックの生産物における経済効果は (6) のファイナンスの違いによる経済効果と大きな相違が無かったが地域に人口を定着させうる高い雇用効果が期待できる結果となり (8) における検討施策の一つと考えられる 4 2. 残された問題点 (1) 経済波及効果の計測は乗数効果の計測であるがプロジェクト成果の数値シミュレーションとして多く使われるので数値が一人歩きする傾向がある (2) 今回用いたプログラムは乗数効果を無限回ループさせて計算している従って経済波及効果などの結果は無限年後の最終結果である (3) ここでは平均消費性向を用いていることから結論の数値が大きめに出る傾向がある (4) 今回使用したデータは北海道ワインとはこだてワインの大手 2 社からのインタビュー結果に依存しており小規模ワイナリーの1 本あたりのコストの構成問屋を経由した場合の純利益や問屋を経由せず販売した場合の純利益が明確ではない小規模ワイナリーは少量生産で小売店や問屋に安定供給出来ないことから通常の商習慣の枠組みから外れてしまう従って客が多く集まるデパートや札幌中心部の酒屋に卸すことが大手ワイナリーより不利となっているこの実態と販売ルー 13

8 トの改善施策を見出し分析する必要があった (5) ワイン産業にまつわる近年の研究成果を本研究に積極的に取り入れる課題を残した例えば 1( ブドウ畑の呼称 ) ワインの価格とブドウ畑の耕作地呼称 (A.V.A.) の関係では Sub-A. V.A. ぶどう畑の方が土地の価格弾力性が高い 5 2( ワインメーカー ) ワインの作り手が有名ワイナリーから他のワイナリーに移動した時移動先のワイン価格が上昇する 6 3( 消費者動向 ) 高額ワインを低額で購入しようとする消費者の Search Cost は低い 7 4( 生産量と気温価格 ) 過去 200 年産出量に対して気温の影響は低く価格の影響は高い 8 等があるしかし現在日本でこの様な研究成果を利用してより深い分析をすることが出来ない理由は 1の様なぶどう畑に関する AOC や AVA の制度が日本には存在しない 2のような問題は存在するが公表されたデータが存在しない 3の場合も2と同様である 4のケースは日本には全くありえない事柄であるしかし今後 1のケースでは日本の有機無農薬の認証制度を利用して何らかの研究が出来るかどうかを今後模索したい 2~ 3は酒税のデータから分析出来る可能性があるが現在入手出来ていない状況である 3については消費者動向のアンケートによって今後分析出来る可能性がある * 本研究は 2013 年 10 月 12 日パーソナルファイナンス学会第 14 回全国大会で報告したものを加筆修正したものであるコメンテーターの杉江雅彦先生 ( 同志社大学名誉教授 ) には貴重な示唆を頂いたまた本稿は 2012 年度パーソナルファイナンス学会研究助成の成果の一部であるここに記してお礼申し上げるなお全ての誤りは筆者にあることもあわせて記載する注 1 鹿取 (2011) によると純国産ワインは年間約 100 万ケース弱輸入ワインも含めて日本で販売されているワイン全体の約 4% にしかならない 2 平成 23 年の北海道におけるワイン専用ぶどう生産量は 959.5t で日本全体の 22.2% である ( 農水省特産果樹生産動態等調査確報平成 23 年産特産果樹生産動態等調査 2011 年 estat/list.do?lid= )100% 北海道産ブドウでワインを生産する最大手の北海道ワイン以外で近年の代表的なものとしては山崎ワイナリーオチガビワイナリーその他小規模なテローワールとしてはナカザワビンヤードドーメーヌタカヒコ html などがある 3 ここでは (1) 産業連関表を使った経済効果についてのシミュレーション分析は数多くの研究成果がある例えば北海道経済連合会 (2006) 北海道新幹線札幌延伸に伴う効果と地域の課題調査報告書要約版 ( 委託先 : 北海道二十一世紀総合研究所 ) 平成 18 年 7 pp gr.jp/assets/files/pdf/teigen/2006_08sinkansen-youyaku. pdf 北海道経済連合会新千歳空港建設促進期成会新千歳空港関係自治体協議会 (2010) 新千歳空港 24 時間運用に伴う経済波及効果調査 ( 委託先 : 北海道二十一世紀総合研究所 ) 平成 22 年 1 月 pp all.pdf 社団法人北海道未来総合研究所 (2012) 2012 年北海道日本ハムファイターズの道内開催試合による経済効果平成 24 年 10 月 10 日 pp 等がある 4 Wenjing.L.(2009) "Besenwirtschaften" in Germany : A case study in Baden-Wurttemberg 総合政策 ( 岩手県立大学 ) Vol.10(2),pp 参照 5 R. Cross, A. J. Plantinga & R. N. Stavins (2011)A.E.R. 参照 6 D. A. Jaeger & K. Storchmann (2011)A.E.R. 参照 7 P. W. Roberts, M. Khaire, & C. I. Rider. (2011) A.E.R. 参照 8 J. Chevet, S. Lecocq & M.V. Janvier (2011) A.E.R. 参照 14

9 参考文献 Chevet, Jean-Michel, Sébastien Lecocq, Michael Visser Janvier (2011) Climate, Grapevine Phenology, Wine Production and Prices: Pauillac ( ) American Economic Review, Vol.101,No.3, pp Cross, Robin, Andrew J. Plantinga, and Robert N. Stavins (2011) What Is the Value of Terroir? American Economic Review: Papers & Proceedings, Vol.101,No.3, pp Goode, Jamie (2008) 梶山あゆみ訳ワインの科学河出書房新社 pp Iida,Takao, Akira Kato, Makoto Okamura(2012) Regulation Law and Regional Economic Effects, GLOBAL BUSINESS & ECONOMICS ANTHOLOGY, March 2012, pp Jaeger, David A. and Karl Storchmann.(2011) Wine Retail Price Dispersion in the United States:Searching for Expensive Wines? American Economic Review: Papers & Proceedings, Vol.101, No.3, pp 加藤晃飯田隆雄岡村誠 (2007) ジンギスカンの経済波及効果地域と経済 ( 札幌大学経済学部地域経済研究所 ) 第 4 号 2007 年 3 月 pp 小長谷一之前川知史編 (2012) 経済効果入門地域活性化企画立案政策評価のルーツ日本評論社今喜典 (2012) 中小企業金融と地域振興東洋経済新報社 Miller,Ronald and Peter.Blair (2009) Input-Outoput Analysis Foundations and Extensions, Cambridge University Press. Roberts, Peter W., Mukti Khaire, and Christopher I. Rider (2011) Isolating the Symbolic Implications of Employee Mobility: Price Increases after Hiring Winemakers from Prominent Wineries American Economic Review: Papers & Proceedings, Vol.101, No.3, pp Wenjing L,.(2009) Besenwirtschaften" in Germany : A case study in Baden-Wurttemberg 総合政策 ( 岩手県立大学 )Vol.10(2), pp 資料北海道経済連合会 (2006) 北海道新幹線札幌延伸に伴う効果と地域の課題調査報告書要約版 ( 委託先 : 北海道二十一世紀総合研究所 ) 平成 18 年 7 pp sinkansen-youyaku.pdf 北海道経済連合会新千歳空港建設促進期成会新千歳空港関係自治体協議会 (2010) 新千歳空港 24 時間運用に伴う経済波及効果調査 ( 委託先 : 北海道二十一世紀総合研究所 ) 平成 22 年 1 月 pp all.pdf 社団法人北海道未来総合研究所 (2012) 2012 年北海道日本ハムファイターズの道内開催試合による経済効果平成 24 年 10 月 10 日 pp 国税庁 (2012) 酒のしおり酒類販売 ( 消費 ) 数量の推移 ( 平成 24 年 3 月 )pp 国税庁 (2009) 果実酒製造業の概況 ( ) 日本経済新聞 WEB 刊 (2011) ワインブーム再燃の予感国産評価高まる新興国から良質な低価格品も後押し産地研調査 9 月 11 日 V00C11A /?df=2 農林水産省 (2011) 確報平成 23 年産特産果樹生産動態等調査 2011 年特産果樹生産動態等調査農林水産省 (2009) ぶどう用途仕向実績調査都道府県別生産状況平成 19 年度特産果樹生産動態等調査総務省統計局 (2004) 平成 12 年産業連関表計数編 2004 年 6 月 html 総務省統計局 (2004) 第 2 表都市階級地方別 1 世帯当たり年平均 1か月間の収入と支出 ( 勤労者世帯 ) 北海道家計調査年報 2000 年 ~ 2004 年 ~ 2004np/ zuhyou/2nh0202.xls 総務省政策統括官 ( 統計基準担当 )(2009) 1 世帯当たり 1か月間の収入と支出家計調査 ( 家計収支編 ) 定額給付金記入の有無別の結果 ( 統計データ ) 総務省 2009 年 6 月 30 日. 15

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22原田氏_a_4.indd 55 2014 2.1 2.2 2.3 3.1 3.2 200 AAWE American Association of Wine Economics, http://www.wine-economics. org/ EuAWE European Association of Wine Economist, http://www. euawe.org/ 10 1991 VDQS Vineyard Data