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6 線 維 芽 細 胞 の 成 長 ならびに 形 態 変 化 に 対 する 磁 場 の 影 響 とメカニズム 解 明 (Influence of magnetic fields on the growth and morphological change of fibroblastic cell) 埼 玉 大 学 理 工 学 研 究 科 若 狭 雅 信 背 景 および 目 的 生 物 に 対 する 磁 場 の 影 響 ( 例 えば, 高 周 波 電 磁 波 の 人 体 におよぼす 影 響 や 渡 り 鳥 の 方 向 認 識 な ど)は, 化 学 生 物 物 理 の 研 究 分 野 にまたがる, 人 類 にとって 重 要 な 研 究 課 題 である 特 に, 磁 場 の 健 康 利 用 を 考 えるとき,メカニズムを 含 む 完 全 な 理 解 が 必 要 不 可 欠 である 磁 場 が 生 物 に 影 響 を およぼすとき, 原 因 としては 磁 気 エネルギー, 異 方 性 磁 気 力, 電 子 スピン 多 重 度 に 対 する 量 子 効 果 などが 考 えられるが, 残 念 ながらメカニズムは 殆 ど 解 明 されていない そこで, 動 物 細 胞 のうち 最 も 基 本 的 かつ 重 要 な,iPS 細 胞 の 材 料 にもなる 線 維 芽 細 胞 に 対 する 磁 場 の 影 響 を, 静 磁 場 (5 T) およびパルス 強 磁 場 ( 20 T,2 ms)を 用 いて 研 究 することを 計 画 した 具 体 的 には,マウス 由 来 の 線 維 芽 細 胞 (NIH3T3)を 用 いて, 増 殖 ( 速 度 )ならびに 形 態 変 化 ( 密 度, 分 岐,アスペクト 比 )を 検 討 した 方 法 培 地 としてDMEM(GIBCO)にFBS(BIO WHITTAKER)を10% 添 加 したものを 用 い, 常 法 に 従 い 細 胞 濃 度 を cells/mlおよび cells/mlに 調 整 した 溶 液 を 準 備 した この 溶 液 を 小 型 シャーレに1 ml 播 種 し, 後 述 するガラ ス 製 インキュベーターを 用 いて, 超 電 導 磁 石 ボア 内 と 地 磁 気 下 で 細 胞 培 養 をおこなった パルス 磁 場 の 場 合 は 磁 場 印 加 時 間 が 短 いので,ガラス 製 インキュベーターは 用 いず, 水 分 を 飽 和 させた CO2 5%,Air 95% 混 合 気 体 雰 囲 気 下, 滅 菌 状 態 を 保 つための 通 気 性 シール(BM Bio Aera Seal) で 小 型 シャーレを 密 封 した 培 養 後 の 細 胞 数 の 評 価 は, 以 下 の 手 順 でおこなった (1) 培 地 を 取 り 除 き,PBS( 日 水 製 薬 )で 洗 浄 後,PBS, 0.25%トリプシン 溶 液,0.02% EDTA 溶 液 を 加 え,しばらくインキュベーターに 静 置 (2) 新 鮮 な 培 地 を5 ml 加 えてからピッペッティングし, 遠 心 チューブ(STOCKWEEL)に 採 集 (3) 遠 心 分 離 後, 上 清 を 除 去 して 新 鮮 な 培 地 に 細 胞 を 分 散 (4) 細 胞 が 分 散 した 溶 液 の 細 胞 数 を, 血 球 計 算 盤 (フックスローゼンタール 型 )を 用 いて 計 数 結 果 と 考 察 1. 超 伝 導 磁 石 用 の 特 殊 インキュベーターの 開 発 超 電 導 磁 石 ボア 内 で 細 胞 培 養 が 可 能 なシステム を 開 発 した 超 電 導 磁 石 のボア 径 は60 mmと 狭 く,さらに 内 部 では 強 磁 場 が 発 生 している し たがって, 市 販 されている 細 胞 培 養 用 のインキュ 3

7 ベーターを 使 用 することができない そのため, 新 たに 小 型 インキュベーターを 作 製 した 作 製 し たインキュベーターの 写 真 をFig. 1 に 示 す この インキュベーターは 磁 場 の 影 響 がほとんどないガ ラス 製 である また インキュベーターは 二 重 構 造 になっており, 冷 却 水 循 環 装 置 を 用 いることで 内 部 温 度 を 細 胞 培 養 に 適 切 な37± 0.2 に 保 つこ とができる 超 電 導 磁 石 内 部 は 断 熱 されているの で,ボア 表 面 は3 と 低 温 である 超 電 導 磁 石 ボ ア 内 に 設 置 した 小 型 インキュベーターへの 温 度 の 影 響 を 減 らすために, 熱 伝 導 率 が 低 く, 非 磁 性 で あるアクリルパイプをインキュベーターの 保 温 ジャケットとして 利 用 し, 小 型 インキュベーター の 保 温 性 を 高 めた そして, 水 分 を 飽 和 させた CO2 5%,Air 95% 混 合 気 体 を 小 型 インキュベー ターに 供 給 することで 細 胞 培 養 を 可 能 とした Fig. 2. 各 位 置 における 磁 束 密 度 Fig. 3. 各 位 置 における 相 対 細 胞 数 Fig. 1. ガラス 製 インキュベーター 小 型 シャーレの 位 置 と 磁 束 密 度 の 分 布 をFig. 2 に 示 す それぞれの 小 型 シャーレ 中 央 における 磁 束 密 度, 磁 場 勾 配, 磁 気 力 をTable 1に 示 す 次 に 超 伝 導 磁 石 中 と 地 磁 気 下 での 培 養 条 件 が 同 一 で あるかを 評 価 するために, 超 電 導 磁 石 ボア 内 で 磁 場 を 印 加 せずに24 時 間 培 養 した 細 胞 と 地 磁 気 下 で24 時 間 培 養 した 細 胞 の 細 胞 数 (N )を 比 較 した 細 胞 数 の 比 較 は 相 対 細 胞 数 (R = N ボア 内 /N 地 磁 気 下 ) でおこなった 結 果 をFig 3. に 示 す どの 位 置 で もR は1.00± 0.02であり, 磁 場 を 印 加 していない ボア 内 と 地 磁 気 下 は 同 一 条 件 であると 評 価 ができ た よって, 本 装 置 により 磁 場 の 影 響 を 正 しく 評 価 できると 結 論 した Table 1. 各 位 置 における 磁 束 密 度, 磁 場 勾 配, 磁 気 力 2. 強 磁 場 による 細 胞 数 の 変 化 cells / ml の 細 胞 分 散 溶 液 を 小 型 シャーレに1 ml 播 種 後, 強 磁 場 下 および 地 磁 気 下 で24 時 間 培 養 した この 条 件 での 結 果 をFig. 4 に 示 す 地 磁 気 下 条 件 をcontrolと 表 記 した ControlとEでは 統 計 的 に 優 位 な 差 (P <0.01)が あった AからDの 条 件 では 統 計 的 に 有 意 な 差 は 確 認 できなかったが,DではControlよりもわず かに 減 少 していていた また, 磁 場 印 加 時 間 を 変 4

8 化 させて24 時 間 培 養 を 行 うと, 磁 場 の 影 響 は 播 種 直 後 に 大 きく 現 れることが 解 った このことか ら, 線 維 芽 細 胞 が 増 殖 するために 培 地 底 面 に 張 り 付 くまで,もしくは 張 り 付 く 初 期 段 階 に 磁 気 力 の 影 響 が 出 たと 解 釈 できる 一 方, 磁 場 による 形 態 変 化 ( 密 度, 分 岐,アスペクト 比 )は 明 確 には 観 測 されなかった これは, 培 養 後 に 形 態 観 測 を 行 っているので, 細 胞 数 に 対 する 磁 場 の 影 響 と 矛 盾 しないと 考 える (2) 松 井 弘 貴, 坂 井 貴 文, 若 狭 雅 信,マウス 線 維 芽 細 胞 NIH3T3の 成 長 に 対 する 強 磁 場 の 影 響, 第 92 回 春 季 年 会 ( 慶 応 義 塾 大 学 日 吉 キャンパス,2012 年 3 月 25 日 3 月 28 日 ) Fig. 4. 各 位 置 における 培 養 後 の 細 胞 ( 初 期 細 胞 数 : cells / plate, 培 養 時 間 : 強 磁 場 下 24 時 間 ) パルス 磁 場 については, 印 加 回 数 ならびに 試 行 回 数 が 少 なかったために, 実 験 誤 差 が 大 きく 明 確 な 細 胞 数 の 変 化 は 観 測 できなかった そこで,パ ルス 磁 場 下 についても 培 養 条 件 の 制 御 を 検 討 し, さらに 磁 場 印 加 回 数 を 増 やして 実 験 を 試 みる 予 定 である 今 回 の 研 究 で, 線 維 芽 細 胞 の 増 殖 が 磁 場 により 抑 制 されることが 明 らかなになった 今 後 は, 物 理 化 学 手 法 を 駆 使 してメカニズム 解 明 を 目 指 したい 学 会 発 表 (1) 松 井 弘 貴, 坂 井 貴 文, 若 狭 雅 信,マウス 繊 維 芽 細 胞 の 成 長 に 対 する 強 磁 場 の 影 響, 第 6 回 磁 気 科 学 会 年 会 ( 東 京 大 学 山 上 会 館, 2011 年 9 月 26 日 9 月 28 日 ) 5

9 磁 性 ナノ 粒 子 を 用 いた 腫 瘍 部 位 造 影 画 像 化 への 光 音 響 技 術 の 適 用 (Application of photo-acoustic imaging for contrast enhanced imaging of tumor cell using magnetic nano particles) 防 衛 医 科 大 学 校 医 用 工 学 講 座 平 沢 壮 目 的 腫 瘍 部 位 の 早 期 発 見 及 び 質 的 診 断 を 目 的 とし た, 分 子 イメージング 技 術 に 関 する 研 究 が, 様 々 な 医 用 画 像 診 断 モダリティを 用 いて 行 われてい る.MRIにおいては, 磁 性 酸 化 鉄 粒 子 (SPIO)が 肝 腫 瘍 の 局 在 用 の 造 影 剤 として 既 に 実 用 化 されてい る. 一 方, 光 音 響 画 像 化 技 術 は, 光 を 吸 収 する 物 質 ( 光 吸 収 体 )にナノ 秒 パルスレーザー 光 を 照 射 す ると,レーザー 光 を 吸 収 した 光 吸 収 体 が 発 熱 し, 熱 弾 性 過 程 を 経 て 超 音 波 ( 光 音 響 信 号 )を 発 生 す る 光 音 響 現 象 を 利 用 した 画 像 診 断 技 術 である. 本 技 術 では 多 様 な 物 質 を 造 影 剤 として 使 用 可 能 なた め, 新 しい 分 子 イメージング 技 術 として 注 目 を 集 めている. 本 研 究 では,SPIOを 光 音 響 画 像 化 技 術 で 選 択 的 に 画 像 化 する 技 術 の 開 発 を 目 的 とする. 光 音 響 画 像 化 技 術 と 他 のモ ダ リ テ ィ と の 比 較 表 を Table1に 示 す. 本 法 は 全 身 の 撮 像 は 困 難 である が, 小 型 な 装 置 で 高 速 に 撮 像 が 可 能 である.この ため, 全 身 を 撮 像 可 能 なMRIと 同 じ 造 影 剤 を 画 像 化 することにより, 術 前 に 撮 像 したMRI 画 像 との 術 中 での 比 較 など 相 補 的 に 利 用 できる. 本 研 究 で はSPIOの 磁 気 的 特 性 を 利 用 し, 外 部 磁 場 に 対 す る 反 応 の 周 囲 組 織 との 差 異 を 基 に,SPIOを 選 択 的 に 画 像 化 する 手 法 を 提 案 し,その 有 効 性 につい て 検 討 した. 方 法 SPIOの 外 部 磁 場 への 感 受 性 を 光 音 響 法 で 検 出 できることを 検 証 するために, 光 音 響 信 号 計 測 実 験 を 行 った. 実 験 用 サンプルとして,Table 2の SPIOを 用 いた.これらのサンプルの 光 吸 収 スペ クトルをFig. 1に 示 す.サンプルは, 内 径 0.5 mm, 外 径 0.6 mmのシリコンチューブに 封 入 し, チューブの 両 端 を 固 定 して 脱 気 水 中 に 配 置 した. 光 音 響 信 号 を 発 生 するための 励 起 光 源 として, 波 長 可 変 チタンサファイアレーザーを 用 いた (LT2242, Lotis Tii). 励 起 光 は, 生 体 を 対 象 とし た 深 部 イメージングに 適 する720 nmの 近 赤 外 光 とした. 光 源 が 出 力 したレーザー 光 は, 光 ファイ バを 介 して 照 射 した Fig.2に 本 研 究 にて 最 適 化 した 実 験 系 を 示 す. サンプルが 発 生 する 光 音 響 信 号 は, 独 自 に 設 計 し たリング 状 のP(VDF-TrFE) 製 の 圧 電 素 子 を 有 する 超 音 波 センサ( 外 径 4 mm, 内 径 0.6 mm)にて 計 測 した. 本 素 子 の 中 央 に 光 ファイバを 通 して 配 置 した.サンプルに 印 加 する 外 部 磁 場 は, 外 径 30 mm, 内 径 10 mm, 長 さ30 mm, 表 面 磁 束 密 度 Tの 円 筒 型 ネオジム 磁 石 で 発 生 し, 超 音 波 6

10 センサを 磁 石 の 中 に 通 して 配 置 した.この 配 置 は, 事 前 の 基 礎 検 討 により, 高 磁 場 を 撮 像 領 域 に 印 加 するために 最 適 化 した 配 置 である. 超 音 波 センサ の 検 出 面 をサンプルから15 mm 離 して 配 置 し, 磁 石 のみをzステージに 移 動 し,このときの 信 号 強 度 の 変 化 率 及 び 信 号 到 達 時 間 の 変 化 を 観 測 し た. 信 号 到 達 時 間 は 超 音 波 の 伝 達 時 間 に 相 当 する ため, 音 速 を 乗 ずることにより 撮 像 対 象 の 深 さに 換 算 できる. さらに 磁 石 とセンサとを 自 動 ステージにて 同 時 に 走 査 することにより, 断 層 画 像 を 取 得 した. 色 素 とSPIOとを 並 べて 配 置 したファントムを 対 象 に, 磁 場 印 加 前 後 にそれぞれ 取 得 した 断 層 画 像 に 対 して 差 分 処 理 を 施 すことによりSPIOのみを 強 調 画 像 化 できることを 検 証 した. 実 験 用 色 素 とし て,SPIO (Resovist)と 同 等 の 光 吸 収 係 数 となるよ うに 希 釈 した 黒 インクを 用 いた 結 果 SPIOを 対 象 に 超 音 波 センサの 検 出 面 から 磁 石 表 面 までの 距 離 を 変 化 させて 受 信 した 光 音 響 信 号 Fig. 3に 示 す.Fig. 3より, 磁 石 をサンプルに 近 づけることにより, 光 音 響 信 号 の 強 度 が 増 強 され, 信 号 の 到 達 時 間 が 短 くなることが 確 認 された.こ のことから, 本 法 によりSPIOの 外 部 磁 場 に 対 す る 反 応 を 検 出 可 能 なことが 確 認 された. さらに, 自 動 ステージでの 走 査 により 取 得 した 画 像 をFig. 4に 示 す. 本 画 像 より,チューブに 封 入 したSPIOを 画 像 化 できることが 検 証 された. さらに, 磁 場 印 加 前 後 に 取 得 した 光 音 響 画 像 の 差 分 を 計 算 することより,SPIOのみを 抽 出 する 手 法 について 検 証 した.Fig. 5に,Fig. 4に 示 す 画 像 のラインごとの 最 大 値 のグラフを 示 す. 本 グラ フより, 差 分 処 理 によるSPIOの 信 号 強 度 はほ とんど 減 少 しないが, 黒 インクの 信 号 強 度 は 抑 制 された.この 結 果 より, 差 分 画 像 と 差 分 前 の 画 像 とを 比 較 することにより,SPIOのみを 画 像 化 で きることが 確 認 された. 考 察 Fig. 3に 示 す 外 部 磁 場 の 印 加 による 光 音 響 信 号 の 変 化 のうち, 光 音 響 信 号 の 強 度 増 強 はサンプル の 光 吸 収 係 数 の 増 加 を 示 しており, 外 部 磁 場 の 影 響 でチューブ 内 においてSPIOの 濃 度 勾 配 が 生 じ, 撮 像 領 域 におけるSPIO 濃 度 が 高 まったことに 由 来 すると 考 えらえる.また, 信 号 の 到 達 時 間 の 短 縮 は, 外 部 磁 場 によるシリコンチューブの 変 位 を 反 映 していると 考 えられる.このうち 後 者 は, 本 実 験 では 周 囲 組 織 が 水 であるため 機 械 的 抵 抗 が 少 なく 大 きな 変 異 が 得 られたが, 生 体 を 対 象 とする 場 合 には 変 位 は 減 少 すると 考 えられる. 一 方 で, 前 者 は 生 体 を 対 象 とする 場 合 にも 等 しく 生 じると 考 えられる. 生 体 内 での 磁 場 の 減 衰 は 水 中 とほぼ 同 等 と 考 えられるため, 深 さ30 mmの 領 域 にお いても 信 号 強 度 の 増 加 は 生 じると 考 えられる.こ のため,Fig. 4に 示 す 手 法 にて 差 分 画 像 を 算 出 す ることにより 生 体 を 対 象 とした 場 合 にもSPIOを 識 別 可 能 と 考 えられる. 本 研 究 では,SPIOを 特 異 的 に 画 像 化 する 手 法 を 開 発 し, 高 感 度 にSPIOを 抽 出 するために 実 験 系 を 最 適 化 し,SPIOと 他 の 色 素 とを 識 別 可 能 な ことを 実 験 的 に 示 しており, 本 研 究 の 目 的 を 達 成 したと 考 える. 発 表 1) T. Hirasawa, M. Ishihara, K. Tsujita, K. Hirota, K. Irisawa, M. Kitagaki, M. Fujita, and M. Kikuchi, Continuous wavelet-transform analysis of photo-acoustic signal waveform to determine optical absorption coefficient. Proc. of SPIE, : p ) T. Hirasawa, M. Ishihara, M. Fujita, M. Kitagaki, N. Otani, A. Horiguchi and M. Kikuchi, Verification of selective imaging using photoacousic technique using animal model. J. JSLSM, 2011,.32(3): p334 7

11 参 考 文 献 1) Hu, S. and L.V. Wang, Photoacoustic imaging and characterization of the microvasculature. J Biomed Opt, (1): p 図 と 表 Table 1 光 音 響 画 像 化 技 術 と 既 存 の 医 用 画 像 診 断 技 術 との 比 較 [1] Table2 本 研 究 で 使 用 した 磁 性 酸 化 鉄 粒 子 Fig.1 磁 性 酸 化 鉄 粒 子 の 光 吸 収 スペクトル Fig. 2 本 研 究 にて 最 適 化 した 測 定 系 8

12 Fig.3 超 音 波 センサの 検 出 面 と 磁 石 平 面 との 間 の 距 離 を 変 化 させて 取 得 した 磁 性 酸 化 鉄 粒 子 (EMG707)が 発 生 する 光 音 響 信 号 の 時 間 波 形. Fig.4 ファントムを 対 象 に 取 得 した 光 音 響 画 像.(a) 磁 場 印 加 前 (38 mm),(b) 磁 場 印 加 後 (0 mm), 及 び(a)と(b)との 差 分 絶 対 値 画 像. Fig.5 光 音 響 画 像 のラインごとの 最 大 値 のプロット. 差 分 処 理 により 黒 インクが 発 生 する 信 号 が 抑 制 されている. 9

13 エレクトロスピニングにより 作 製 した 磁 性 足 場 材 料 による 局 所 磁 場 が 細 胞 培 養 へ 与 える 影 響 に 関 する 研 究 (Effect of local magnetic fields generated by electrospun magnetic scaffolds on cell culture) 大 阪 工 業 大 学 工 学 部 生 命 工 学 科 外 波 弘 之 目 的 生 体 は 一 般 に 非 磁 性 体 であり, 静 磁 場 の 生 体 へ の 影 響 はあまり 解 明 されていない.また 細 胞 レベ ルにおいても, 静 磁 場 および 変 動 磁 場 中 で 様 々な 条 件 下 において 細 胞 培 養 が 行 われているが, 電 流 電 圧 や 熱 に 比 して 大 きな 影 響 は 見 られていな い.しかしながら, 静 磁 界 により 大 きな 影 響 が 見 られた 研 究 として,Colettiらの 筋 肉 細 胞 の 分 化 促 進 を 行 ったものが 挙 げられ, 筋 肉 細 胞 が 静 磁 場 に 対 して 敏 感 に 応 答 することが 示 唆 された [1]. そこで 本 研 究 では, 細 胞 足 場 形 成 に 有 用 なエレ クトロスピニング 法 を 用 い 磁 性 を 有 する 足 場 を 作 製 し, 細 胞 に 近 接 した 位 置 から 複 雑 な 局 所 磁 場 を 与 え,その 影 響 を 検 討 することとした. 培 養 器 外 部 からの 静 磁 場 だけではなく, 細 胞 直 近 からの 局 所 的 静 磁 場 により,より 大 きな 応 答 を 期 待 するも のである. 方 法 エレクトロスピニング 法 を 用 いて2 種 類 の 磁 性 足 場 材 料 を 作 製 した. 一 方 は 粒 径 6 μmの 鉄 粉 を 含 有 するポリウレタン(PU) の 繊 維 が 集 積 したシー ト(PUFe)であり,もう 一 方 はコバルトニッケル (CoNi)からなる 繊 維 が 集 積 したシートである. PUFeについては,テトラヒドロフラン(THF)と ジメチルホルムアミド(DMF)を 体 積 分 率 が95:5 になるように 混 合 し,PU( 日 本 ミラクトラン 株 式 会 社 P22SNAT,20wt%)と 鉄 粉 ( φ6 m, 10wt%)を 加 えて 調 製 した 液 を 高 電 圧 (5~20 kv) を 印 加 しながらシリンジ 先 端 から 射 出 することで 作 製 した.また,CoNiシートについてはNasser らの 方 法 [2] に 従 い,ポリビニルアルコールの 水 溶 液 に, 酢 酸 コバルト(Ⅱ) 四 水 和 物 と 酢 酸 ニッケ ル(Ⅱ) 四 水 和 物 を 溶 解 させてエレクトロスピニン グを 行 い,シートを 乾 燥, 煆 焼 (かしょう)する ことで,コバルト(Co)とニッケル(Ni)の 合 金 繊 維 からなる 足 場 材 料 を 作 製 した. 作 製 したシートは 位 相 差 顕 微 鏡 および 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 (SEM) で 観 察 し, 繊 維 系 等 を 見 積 もった. こうして 得 られたシート 上 に, 未 分 化 マウス 筋 細 胞 株 であるC2C12 細 胞 を 播 種 し, 図 1に 示 す ように 永 久 磁 石 (85 ± 15 mt)を 配 置 した 条 件 下 で 培 養 を 行 った. 培 養 48 h 後 に 分 化 培 地 に 交 換 し, 一 定 期 間 培 養 後 のシートを 核 染 色 及 びアク チン 染 色 して, 蛍 光 顕 微 鏡 で 観 察 した. 図 1. 細 胞 培 養 時 の 永 久 磁 石 の 配 置. 10

14 結 果 と 考 察 作 製 したPUFeシートの 位 相 差 顕 微 鏡 像 とSEM 像 を 図 2に,250 でか 焼 して 作 製 したCoNiシートの SEM 像 を 図 3に 示 す. 図 2.PUFeシートの 位 相 差 顕 微 鏡 像 ( 左 )とSEM 像 ( 右 ). 図 でか 焼 して 作 製 したCoNiシートのSEM 像. 図 2の 位 相 差 像 から 鉄 粉 が 繊 維 中 に 埋 入 してい ることを 示 された.また,CoNiシートをか 焼 す る 際 の 温 度 管 理 を 適 当 に 行 うことにより, 磁 力 応 答 と 導 電 性 を 有 するCoNi 合 金 シートを 得 た. 図 3に 示 すように, 部 分 的 に 繊 維 の 断 裂 見 られたも のの, 直 径 100 nm 程 度 の 繊 維 構 造 が 残 存 してい ることが 確 認 された.また250 でか 焼 するこ とで, 磁 気 応 答 と 導 電 性 を 有 することが 分 かった. PUFeシート 上 に 未 分 化 マウス 筋 細 胞 株 である C2C12 細 胞 を 播 種 し, 静 磁 場 の 有 無 が 分 化 に 及 ぼす 影 響 を 観 察 するために, 核 染 色 及 びアクチン 染 色 して 各 日 数 で 観 察 を 行 った( 図 4). 接 着 細 胞 数 が 十 分 でなく,いずれの 場 合 も 筋 細 胞 の 融 合 分 化 は 見 られなかったが, 静 磁 場 が 存 在 する 条 件 下 においてのみアクチンが 染 色 され, 静 磁 場 が 存 在 しない 場 合 細 胞 死 が 疑 われた.また 鉄 粉 を 含 まないPUシートを 用 いた 場 合 も 細 胞 数 が 少 な く,さらにアクチンが 染 色 されず,PUFeシート で 静 磁 場 を 与 えた 場 合 にのみ 長 期 間 の 生 着 が 確 認 された.このことからPUFeシートによる 局 所 的 な 静 磁 場 がC2C12 細 胞 の 生 着 に 寄 与 したと 考 え られる. 11

15 培 養 48 h 後 培 養 96 h 後 培 養 240 h 後 静 磁 場 あり 静 磁 場 なし 図 4.PUFeシート 上 でのC2C12 細 胞 の 培 養. 青 色 は 核 染 色, 赤 色 はアクチン 染 色. またCoNi 合 金 シート 上 での 培 養 を 同 様 に 試 み たところ, 溶 出 金 属 イオンの 影 響 のためか 短 期 間 で 細 胞 死 が 確 認 され, 細 胞 培 養 に 使 用 するた めにはか 焼 条 件 の 再 検 討 が 必 要 と 思 われる. 今 後 は, 静 磁 場 による 筋 細 胞 の 分 化 促 進 を1 つの 目 標 として, 接 着 した 細 胞 の 密 度 を 上 げる ために, 材 料 組 成 やスピニング 条 件, 表 面 処 理 方 法 の 改 良 を 検 討 している. 12

16 文 献 [1] D. Coletti, L. Teodori, M. C. Albertini, M. Rocchi, Alessandro Pristera, M. Fini, M. Molinaro and S. Adamo, "Static Magnetic Fields Enhance Skeletal Muscle Differentiation In Vitro by Improving Myoblast Alignment." Cytometry Part A, 71A, pp (2007). [2] Nasser A. M.Barakat, Khalil A. Khalil, Ibrahim H. Mahmoud, Muzafar A. Kanjwal, Faheem A. Sheikh, and Hak Yong Kim, "CoNi Bimetallic Nanofibers by Electrospinning: Nickel-Based Soft Magnetic Material with Improved Magnetic Properties." J. Phys. Chem. C, 114, pp (2010). 13

17 ハイパーサーミア 応 用 のための 強 磁 性 体 金 属 内 包 カーボンナノチューブ 生 成 (Synthesis of carbon nanotubes filled with ferromagnetic metal and its application to hyperthermia) 三 重 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 佐 藤 英 樹 目 的 癌 はここ30 年 連 続 して 日 本 における 死 因 の 第 1 位 の 座 を 占 めており 安 価 で 効 果 的 な 癌 治 療 法 の 開 発 が 急 務 となっている 癌 治 療 法 の 一 つとして 磁 性 ナノ 微 粒 子 を 発 熱 体 として 組 織 内 に 注 入 し 外 部 からの 高 周 波 磁 場 印 加 によって 癌 組 織 のみを 局 所 的 に 加 温 する 磁 気 ハイパーサーミ アが 研 究 されている[1] この 方 法 では 非 侵 襲 的 であるため 患 者 の 負 担 が 少 ない MRIなどの 磁 性 を 利 用 した 粒 子 位 置 検 出 が 可 能 などの 利 点 が ある しかしながら 従 来 の 磁 性 ナノ 微 粒 子 では 発 熱 量 不 足 により 加 温 効 果 が 十 分 に 得 られておら ず 少 量 で 発 熱 効 率 が 高 く かつ 生 体 適 合 性 が 高 い 磁 性 ナノ 粒 子 材 料 の 開 発 が 不 可 欠 であった そ こで 本 研 究 では 磁 気 ハイパーサーミア 用 の 磁 性 ナノ 材 料 として 強 磁 性 体 内 包 カーボンナノ チューブ(carbon nanotube : CNT)[2]に 注 目 した CNTは 直 径 が 数 nmから 数 10nmで 炭 素 でで きた 六 角 網 面 (グラフェンシート)が 筒 状 になっ た 中 空 構 造 を 持 つ( 図 1) このCNTに 内 包 され た 強 磁 性 金 属 は グラフェン 層 に 包 まれているた め これが 保 護 層 となり 内 包 金 属 は 高 耐 候 性 が 期 待 できる( 図 2)[3] 本 研 究 では ハイパーサー ミア 応 用 に 適 した 強 磁 性 体 内 包 カーボンナノ チューブ(CNT) 合 成 方 法 の 確 立 を 目 指 し (1) CNT 内 への 強 磁 性 金 属 ( 鉄 :Fe)の 内 包 方 法 の 確 立 (2)Fe 内 包 CNTの 磁 気 特 性 制 御 (3)Fe 内 包 CNTの 合 成 量 向 上 (4)Fe 内 包 CNTの 発 熱 特 性 評 価 の4 項 目 ついて 評 価 を 行 った 図 1 カーボンナノチューブのグラフィクスイメージ. 図 2 強 磁 性 を 内 包 したカーボンナノチューブの 模 式 図. 14

18 方 法 ワイヤのアスペクト 比 はおよそ32.4であった Feナノワイヤ 内 包 CNTの 成 長 方 法 は 以 下 の 通 りである あらかじめ 酸 化 膜 を 形 成 したSiウェハ の 表 面 に 真 空 蒸 着 法 によりによりFe 薄 膜 を2.0 nm 成 膜 したものをCNT 成 長 用 基 板 とした この 基 板 をCVD 装 置 ( 図 3)に 導 入 し 0.2 Pa 程 度 ま で 真 空 排 気 を 行 ったのち 管 内 をAr 置 換 する そ の 後 所 定 の 温 度 まで 昇 温 後 原 料 ガスを 導 入 し てCVDを 行 った 原 料 ガスとしてはAr 雰 囲 気 下 で 加 熱 昇 華 さ せたフェロセン(Fe(C5H5)2)ガスを 用 い これ をキャリアガスのアルゴンとともにリアクタ 内 に 導 入 しながら785 で10 分 間 のCVDを 行 った 成 長 したCNTの 評 価 は 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 (SEM) 観 察 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 (TEM) 観 察 ならびに 制 限 視 野 電 子 線 回 折 (SAED)により 行 った また 磁 気 特 性 の 測 定 は 試 料 振 動 型 磁 力 計 により 行 っ た 図 3 本 研 究 で 用 いたCVD 装 置 の 概 略 図. 結 果 および 考 察 図 4 成 長 したCNTのSEM 観 察 像. 図 5 CNTの (a) TEM 観 察 像 (b) SAED 像. 振 動 試 料 型 磁 力 計 により 磁 気 特 性 を 調 べたとこ ろ 明 瞭 な 磁 気 異 方 性 が 観 られ 面 直 方 向 につい ては 最 大 で 約 1.8 koe (143 ka/m)の 保 磁 力 が 得 られた( 図 6) 成 長 した 複 数 のCNTについて 制 限 視 野 電 子 線 回 折 像 の 観 察 を 行 ったところ 高 い 割 合 (50% 以 上 )でCNT 内 にFe 単 結 晶 が 内 包 され ていることが 確 認 され( 図 5(b)) 相 対 的 に 鉄 炭 化 物 の 内 包 が 少 なかった これが 保 磁 力 向 上 の 原 因 であると 推 測 され 磁 気 特 性 の 制 御 において CNTに 内 包 されるFeの 結 晶 状 態 が 重 要 な 役 割 を 果 たしていることが 明 らかになった 図 4に CVD 後 の 基 板 断 面 をSEMにより 観 察 し た 写 真 を 示 す 基 板 に 対 し 垂 直 に 配 向 成 長 した CNTが 確 認 される これらのCNTをTEMおよび SAEDにより 観 察 したところ その 直 径 は 約 nmに 分 布 しており その 空 洞 内 部 はほぼFe もしくはその 炭 化 物 により 満 たされていた( 図 5(a),(b)) CNTの 全 空 洞 体 積 に 占 めるFeの 体 積 (Fe 内 包 率 )はおよそ56%で 内 包 されるFeナノ 図 6 強 磁 性 内 包 カーボンナノチューブの 磁 化 曲 線. 15

19 成 長 量 増 加 実 験 では Si 基 板 にあらかじめ 形 成 するFe 層 を 一 度 大 気 中 で 強 制 酸 化 させ 酸 化 鉄 の 状 態 にすることにより Fe 内 包 CNTの 収 量 は 従 来 の 約 2 倍 まで 増 加 させることができることを 確 認 した これは 酸 化 によるFe 薄 膜 の 触 媒 活 性 向 上 によるものと 考 えられる 以 上 の 結 果 より Feナノワイヤ 内 包 CNTの 合 成 方 法 を 確 立 し またその 磁 気 特 性 制 御 が 行 える ことを 確 認 した これにより 従 来 よりも 広 範 囲 の 磁 気 特 性 制 御 が 可 能 となった しかしながら これらのCNTからの 発 熱 特 性 の 評 価 は 未 実 施 の 状 況 である これについては 現 在 評 価 準 備 並 びに 予 備 実 験 を 行 っているところであり 今 後 速 やか に 発 熱 特 性 評 価 を 行 い ハイパーサーミア 用 発 熱 体 としての 特 性 評 価 を 実 施 する 予 定 である 発 表 文 献 [1] I. Baker, Q. Zeng, W. Li and C.R. Sullivan, Heat deposition in iron oxide and iron nanoparticles for localized hyperthermia, J Appl Phys 99, 2006, 08H [2] Ado Jorio, G. Dresselhaus, M. S. Dresselhaus (Eds.), Carbon nanotubes: advanced topics in the synthesis, structure, properties and applications (Springer-Verlag, Berin Heidenberg, 2008). [3] S. Groudeva-Zotova, R. Kozhuharova, D. Elefant, T. Muhl, C.M. Schneider and I. Monch, Phase composition and magnetic characteristics of Fe-filled multi-walled carbon nanotubes, J Magn Magn Mater 306, 2006, (1) Atsushi Nagata, Hideki Sato, Yusuke Matsui, Tetsuya Kaneko, Yuji Fujiwara, "Magnetic properties of carbon nanotubes filled with ferromagnetic metals", The Eleventh International Symposium on Sputtering & Plasma Processes, Kyoto, Japan, (July, 2011) (2) Atsushi Nagata, Hideki Sato, Shunsuke Nakamura, Tetsuya Kaneko, Yuji Fujiwara, "Magnetic properties of carbon nanotubes filled with iron", 4th International Symposium on Advanced Plasma Science and its Applications for Nitrides and Nanomaterials, Aichi, Japan (March 7, 2012). (3) 長 田 篤 佐 藤 英 樹 中 村 峻 介 金 子 哲 也 藤 原 裕 司 鉄 内 包 カーボンナノチューブの 磁 気 特 性 2012 年 春 季 第 59 回 応 用 物 理 学 関 係 連 合 講 演 会 東 京 都 ( ) (4) Atsushi Nagata, Hideki Sato, Yusuke Matsui, Tetsuya Kaneko, Yuji Fujiwara, "Magnetic properties of carbon nanotubes filled with ferromagnetic metals", Vacuum, 掲 載 決 定. 16

20 磁 気 アルキメデス 効 果 による ラベルフリー3 次 元 生 体 組 織 再 構 築 法 の 開 発 (Novel Label-Free 3-Dimensional Tissue Reconstruction using Magneto- Archimedes Effect) 東 京 農 工 大 学 大 学 院 生 物 システム 応 用 科 学 府 秋 山 佳 丈 目 的 方 法 ヒトにおいてもES 細 胞 だけでなくiPS 細 胞 が 樹 立 され, 各 細 胞 への 分 化 技 術 が 確 立 されつつある のに 伴 い,ティシューエンジニアリングの 可 能 性 が 大 きく 広 がっている.これまでに,ポリ 乳 酸 等 の 生 分 解 性 ポリマーの 足 場 に 細 胞 を 播 種 すること で 組 織 の 再 構 築 が 行 われてきているが, 臨 床 応 用 が 行 われているのは, 皮 膚, 骨, 軟 骨, 膀 胱 など で, 比 較 的 単 純 な 組 織 構 造 と 生 理 機 能 を 有 してい るもののみであり,また 問 題 点 として, 足 場 内 で の 代 謝 不 良 による 細 胞 の 壊 死 や 分 解 物 による 炎 症 などが 問 題 となっている[1]. 生 体 は 微 弱 ながら 反 磁 性 を 示 し, 非 常 に 強 力 な 磁 場 勾 配 によって 浮 上 させることが 可 能 である [2]. 従 って, 生 体 を 構 成 する 細 胞 も 同 様 に 培 養 液 に 常 磁 性 化 合 物 を 添 加 し, 磁 気 アルキメデス 効 果 [3]を 用 いることで, 市 販 のネオジム 磁 石 程 度 の 磁 場 でも 細 胞 の 浮 遊 が 可 能 になると 考 えられ る.そこで, 新 たな3 次 元 組 織 構 築 法 として, 磁 気 アルキメデス 効 果 による 反 磁 性 を 利 用 した 細 胞 アセンブリ 法 の 有 用 性 の 検 証 を 行 う.まず, 細 胞 を 円 筒 形 状 に 凝 集 させるために 必 要 な 磁 場 を 有 限 要 素 法 による 解 析 により 求 める. まず, 磁 気 アルキメデス 効 果 を 用 いるためには, 強 磁 性 化 合 物 を 培 地 に 添 加 する 必 要 があるため の,その 毒 性 試 験 を 行 った. 細 胞 にはHepG2 ( 理 研 セルバンク)を, 強 磁 性 化 合 物 としては, Gd-DOTA(MRI 造 影 剤 マグネスコープ)を 用 い た. 各 濃 度 のGd-DOTAに 暴 露 後,24, 48, 72 時 間 後 の 細 胞 の 活 性 をWST-1(タカラバイオ)を 用 いて 評 価 した. 次 に, 中 空 円 筒 形 状 の 組 織 の 作 製 を 行 った. 細 胞 にはC2C12( 理 研 セルバンク)を 用 い, 培 地 にはGd-DOTAを40 mm 添 加 した. 作 製 手 順 を Fig. 1 に 示 す.まず, 細 胞 を 磁 気 アルキメデス 効 果 により, 心 棒 の 回 りに 凝 集 させた.そして, 細 胞 同 士 が 接 着 するように,そのまま1 日 間 培 養 を 行 った. 次 に, 心 棒 を 反 転 して, 細 胞 が 心 棒 全 体 を 覆 うまで 培 養 した 後 に, 心 棒 を 取 り 除 くことで 中 空 円 筒 形 状 の 組 織 を 得 た. Fig. 1 中 空 円 筒 形 状 の 組 織 の 作 製 方 法 17

21 結 果 考 察 発 表 細 胞 活 性 の 評 価 結 果 をFig. 2に 示 す.80 mmへ の 暴 露 において,48 時 間 以 内 では 顕 著 な 影 響 は 見 られなかったが,72 時 間 においては 対 照 実 験 と 比 較 し50% 以 下 となった. 一 方,40mMにおい ては,72 時 間 においても, 対 照 実 験 と 比 較 し 80% 以 上 の 活 性 を 保 っており,20および40 mm の 違 いは 小 さかったため, 以 下 の 実 験 においては, 終 濃 度 40 mmとなるようにgd-dotaを 添 加 する こととした. 次 に, 得 られた 中 空 円 筒 形 状 の 組 織 を, 生 細 胞 のみを 染 色 するカルセインで 染 色 し, 観 察 した.その 結 果,ほとんどの 細 胞 が 生 存 して いることが 確 認 出 来 た(Fig. 3). 以 上 のように, 磁 気 アルキメデス 効 果 を 用 いる ことで, 細 胞 を 標 識 すること 無 く,3 次 元 形 状 の 組 織 を 構 築 することが 可 能 であることが 示 され た. 本 研 究 で 作 製 した 組 織 は, 単 純 な 形 状 であっ たが, 今 後 電 磁 石 を 用 いるなどし, 動 的 な 磁 場 を 用 いることでより 複 雑 な 組 織 形 成 を 行 っていきた い. 1. Y. Akiyama and K. Morishima: "Label-free ultrarapid spheroid formation in microfluidic chip using magneto-archimedes effect," The 25th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems (MEMS 2012), Paris (France), pp (2012.1). 2. 秋 山 佳 丈, 森 島 圭 祐,"マイクロ 流 体 チップ 内 でのノンラベル 高 速 スフェロイドアレイ 形 成 " 第 21 回 インテリジェント 材 料 /システムシンポ ジウム, 東 京 女 子 医 科 大 学 ( 東 京 ),B08 ( ) 3. Y. Akiyama and K. Morishima: "Hollow cylinder-shaped tissue formed by magneto- Archimedes cellular assembly," Biofabrication 2011, Toyama (Japan), p. 43 ( ). 4. Y. Akiyama and K. Morishima, "Spheroid array formation by non-label cell manipulation using magneto-archimedes effect," The 23th International Symposium on Micro- NanoMechatronics and Human Science (MHS 2011), Nagoya (Japan), pp ( ). 文 献 [1] K. Jakab et al., "Tissue engineering by selfassembly and bio-printing of living cells." Biofabrication. 2(2), , Fig. 2 Gd-DOTAのWST-1を 使 った 細 胞 毒 性 アッセイの 結 果 (エラーバー: 標 準 偏 差, 試 験 回 数 :6 回 ) 80 mmにて48 時 間 の 暴 露 は, 顕 著 な 成 長 抑 制 効 果 が 見 られた. [2] M. V. Berry and A. K. Geim, "Of flying frogs and levitrons," European Journal of Physics, vol. 18, no. 4, pp , [3] Y. Ikezoe, et al., "Making water levitate," Nature, vol. 393, no. 6687, pp , Fig. 3 カルセインにて 生 細 胞 のみを 染 色 した 中 空 円 筒 形 状 組 織 の 蛍 光 画 像 ( 左 : 真 横 から, 右 : 真 上 から). 18

22 低 周 波 磁 気 刺 激 による 視 覚 支 援 デバイスの 開 発 (Development of visual-assisting devices by ELF magnetic stimulations) 東 京 大 学 大 学 院 情 報 理 工 学 系 研 究 科 正 宗 賢 目 的 近 年 磁 気 刺 激 を 広 く 高 齢 者 障 害 者 の 医 療 お よび 生 活 支 援 に 役 立 てることに 期 待 が 高 まる 一 方 パルス 磁 界 による 脳 や 筋 への 刺 激 はコイルに 大 電 流 を 流 すリスクなどの 問 題 点 が 指 摘 される そこで 低 周 波 磁 気 刺 激 の 利 用 が 福 祉 機 器 への 実 用 化 において 有 望 視 されるが 現 状 でそれらの 開 発 は 殆 どなされていない 磁 気 環 境 問 題 における 指 標 の 一 つとされる 磁 気 閃 光 現 象 は 頭 部 を 交 流 磁 界 内 へ 置 いた 際 に 認 め られ 誘 導 電 流 による 網 膜 への 刺 激 が 閃 光 を 知 覚 させると 考 えられている [1-7] 近 年 では 電 気 刺 激 による 閃 光 現 象 を 視 神 経 の 再 生 治 療 に 応 用 する 例 も 見 られ この 治 療 に 低 周 波 磁 気 刺 激 を 代 用 す れば 電 気 刺 激 による 方 法 とは 違 って 痛 みを 伴 うこ とがない 即 ちこの 磁 気 閃 光 と 同 等 レベルの 低 周 波 磁 気 刺 激 の 利 用 は 福 祉 機 器 開 発 のための 重 要 な 一 手 段 となる 上 頭 部 磁 気 刺 激 システムの 改 良 が 医 療 福 祉 工 学 への 更 なる 発 展 につながるものと 期 待 される また 磁 気 閃 光 の 発 生 機 序 に 関 しては 未 だ 不 明 瞭 な 点 が 多 く そのメカニズムの 完 全 解 明 は 福 祉 機 器 開 発 のみならず 意 識 そのものの 解 明 に 重 要 な 知 見 を 与 えうる 可 能 性 がある そこで 本 研 究 では 磁 気 と 干 渉 しない 光 ファイバを 用 い て 脳 機 能 の 様 子 を 画 像 化 する 光 脳 機 能 イメージン グ 技 術 を 利 用 し 磁 気 閃 光 メカニズムの 解 明 およ び 高 齢 者 視 覚 障 害 者 を 対 象 とした 視 覚 支 援 デバ イスの 開 発 研 究 に 役 立 てることを 目 的 とした 方 法 実 験 に 用 いた 装 置 および 測 定 環 境 について 述 べ る. 視 覚 刺 激 用 の 光 源 として 汎 用 の 蛍 光 ランプを 眼 球 から20 cmの 距 離 に 配 置 し 1 計 測 セッ ションあたり 各 20 秒 の 安 定 状 態 刺 激 提 示 およ び 休 息 を3 回 繰 り 返 した 低 周 波 磁 気 刺 激 では 被 験 者 のこめかみ 部 に 対 し 眼 を 瞑 った 状 態 で 明 瞭 に 閃 光 を 確 認 しうる 位 置 へコイル 先 端 を 導 入 して 磁 気 刺 激 ( 網 膜 部 で10 mt) を 行 った その 製 作 コイル [8] をFig. 1に 示 す この 間 の 後 頭 部 の 血 流 変 化 を0.16 秒 間 隔 で サンプリングし 酸 素 化 ヘモグロビン (oxy-hb) 脱 酸 素 化 ヘモグロビン (deoxy-hb) および 総 ヘモ グロビン (total-hb) の 動 態 について paired-t 検 定 (P < 0.05) による 評 価 をおこなった 男 性 健 常 者 の 全 7 名 (20 歳 代 5 名 40 歳 代 1 名 お よび70 歳 代 1 名 視 覚 障 害 等 の 既 往 症 なし) 研 究 実 施 前 に ヒト 生 命 倫 理 に 関 わる 説 明 書 を 用 意 し 被 験 者 ( 研 究 協 力 者 )に 不 利 益 のないよう 詳 細 に 説 明 し 研 究 協 力 における 同 意 を 得 た また 研 究 協 力 はいつでも 辞 退 できることを 伝 えた 19

23 Fig. 1 Simplified coil system for magnetophosphenes. 測 定 条 件 として 室 温 23 湿 度 50%の 暗 室 内 における 開 眼 座 位 を 設 定 し 各 被 験 者 の 頭 部 に ホルダ 間 隔 30 mmの 全 頭 用 ファイバホルダを 装 着 した 次 いで 後 頭 葉 をカバーする 形 で5 4 (Fig. 2) に 配 置 した 直 射 型 の 送 光 および 受 光 ファ イバ 各 10 本 (31 ch) を 介 し 島 津 製 作 所 製 近 赤 外 光 脳 機 能 イメージング 装 置 FOIRE-3000/16 (Fig. 3) と 接 続 した Fig. 2 a) Probe geometry schematic. Red filled circles = sources, blue filled circles = detectors. b) Channel set up. Yellow filled squares = channel numbers. Fig. 3 Functional Near-Infrared Spectroscopy (fnirs, Shimadzu FOIRE-3000/16) 20

24 結 果 および 考 察 各 被 験 者 につき3セッションの 連 続 計 測 を 行 っ た 結 果 蛍 光 ランプによる 視 覚 刺 激 では 後 頭 部 プ ローブ7 番 を 中 心 とした 周 辺 チャネル 全 般 でoxy- Hb 濃 度 の 上 昇 が 確 認 された (Fig. 4) これらの チャネル 領 域 は 一 次 視 覚 野 に 相 当 する 部 位 を 網 羅 しており よって 視 覚 刺 激 により 有 意 に 賦 活 化 し たと 容 易 に 判 断 できる 特 にoxy-Hb 濃 度 上 昇 が 顕 著 だったのはチャネル であり それらの 殆 どでdeoxy-Hb 濃 度 の 微 増 が 観 察 された 一 方 チャネル17と22において はdeoxy-Hb 濃 度 の 減 少 が 認 められ 下 半 視 野 へ の 刺 激 でdeoxy-Hb 濃 度 が 減 少 する 報 告 [9] と 合 わせて 興 味 深 い 磁 気 閃 光 刺 激 においては 蛍 光 ランプによる 視 覚 刺 激 で 認 められたチャネルでの 有 意 な 賦 活 化 は 一 切 認 められなかった これは 今 回 用 いたコイル が 一 次 視 覚 野 の 賦 活 化 を 検 出 しうるレベルの 磁 場 強 度 に 達 していないことに 起 因 すると 推 測 され た 一 方 有 意 性 は 無 いがoxy-Hbの 上 昇 が 一 部 確 認 できるチャネルがプローブ 配 置 上 の 幾 つかで 存 在 し 一 次 視 覚 野 を 介 さない 経 路 での 賦 活 化 を 磁 気 閃 光 が 誘 導 する 可 能 性 が 示 された これらの 賦 活 化 が 磁 気 閃 光 刺 激 特 有 のものであるとすれ ば 上 丘 を 介 す 経 路 で 起 こる 盲 視 を 促 進 する ことで 視 覚 機 能 の 回 復 に 利 用 できると 期 待 され る 今 後 刺 激 コイルのさらなる 改 良 と 合 わせ 低 周 波 磁 気 刺 激 による 側 頭 部 および 頭 頂 部 におけ る 賦 活 化 について 詳 細 検 討 し 磁 気 閃 光 メカニズ ムの 解 明 と 視 覚 支 援 デバイスの 開 発 に 役 立 ててい きたい Fig. 4 Hb responses following visual stimulations. Top row = oxy-hb concentration changes, center row = deoxy-hb concentration changes, bottom row = total-hb concentration changes. 21

25 参 考 文 献 [1] M.A. d'arsonval, Dispositifs pour la mesure descourants altenatifs des toutes frequences, C.R. Acad. Sci., 48, , [2] M. Valentinuzzi, Theory of magnetophosphenes, Am. J. Med. Electronics, Apr- Jun, , [3] P. Lovsund, P.A. Oberg, Magnetophosphenes: a quantitative analysis, Med. Biol. Eng. Comput., 18, , [4] K. Dunlap, Visual sensation from the alternating magnetic field, Science, 33, 68-71, [5] C.E. Magnusson, H.C. Stevens, Visual sensations caused by changes in the strength of a magnetic field, Am. J. Physiol., 29, , [6] P. Lovsund, P.A. Oberg, Quantitative determination of threshold values of magnetophosphenes, International Symposium on the Biological Effects of Electromagnetic waves Air line, Va, Abstract K-2, [7] 小 倉 玄 多 氣 昌 生 雨 宮 好 文 相 本 篤 子 上 村 佳 嗣 磁 気 閃 光 の 閾 値 に 関 する 実 験 的 検 討 信 学 技 報 EMCJ, 94, 13-18, [8] 中 川 秀 紀 森 山 真 人 正 宗 賢 山 下 紘 正 小 谷 誠 土 肥 健 純 磁 気 閃 光 現 象 に 基 づく 低 周 波 磁 界 曝 露 の 生 体 影 響 に 関 する 検 討 生 活 生 命 支 援 医 療 福 祉 工 学 系 学 会 連 合 大 会 2010 講 演 論 文 集, , [9] 田 谷 修 一 郎 前 原 吾 朗 小 島 治 幸 刺 激 呈 示 視 野 に 対 応 した 後 頭 部 の 血 行 動 態 反 応 : 24 チャンネルNIRSによる 測 定 信 学 技 報 HIP, 106, 49-52,

26 ヒト 運 動 野 内 在 性 リズムの 生 理 的 意 義 の 反 復 磁 気 刺 激 による 解 明 : 反 復 磁 気 刺 激 のシナプス 可 塑 性 誘 導 の 機 序 解 明 を 目 指 して (Relationship between the stimulus frequencies of repetitive transcranial magnetic stimulation and the intrinsic rhythm of the human cortex in the cortical excitability changes) 東 京 大 学 医 学 部 附 属 病 院 神 経 内 科 花 島 律 子 目 的 方 法 経 頭 蓋 磁 気 刺 激 法 は ヒト 大 脳 内 の 神 経 を 非 侵 襲 的 に 刺 激 し 中 枢 神 経 の 興 奮 調 節 機 構 の 検 討 に 広 く 用 いられている 近 年 は 反 復 磁 気 刺 激 法 により 大 脳 の 興 奮 性 変 化 が 持 続 することが 注 目 を 集 めて いる この 長 期 興 奮 性 変 化 は 学 習 などに 関 与 す るシナプス 可 塑 性 変 化 であると 示 唆 され 神 経 疾 患 の 治 療 法 としても 期 待 される 刺 激 後 の 効 果 は 刺 激 周 波 数 により 変 化 するが その 関 係 性 は 未 だ 解 明 されていない 一 方 神 経 の 興 奮 性 には 部 位 ごとに 固 有 の 内 在 性 リズムあることが 近 年 注 目 さ れている ヒト 運 動 野 では 周 波 数 13 30Hz(β 帯 域 )および30 90Hz(γ 帯 域 )であると 知 ら れているが この 生 理 学 的 意 味 は 不 明 である 今 回 我 々は 外 的 刺 激 の 周 波 数 が 運 動 野 の 内 在 リズムと 一 致 した 場 合 どのような 興 奮 性 の 変 化 を 起 こすか 解 明 することを 目 的 とした 4 発 の 経 頭 蓋 磁 気 刺 激 を 外 的 刺 激 として 与 え 刺 激 周 波 数 による 大 脳 興 奮 性 変 化 を 検 討 し 促 通 を 起 こす 特 定 の 周 波 数 を 明 らかにして 内 在 リス 無 との 関 係 を 解 明 するのが 目 的 である これを 今 後 長 期 可 塑 性 に 最 適 な 反 復 磁 気 刺 激 の 周 波 数 の 解 明 につなげ ようとした 1. 4 発 の 経 頭 蓋 磁 気 刺 激 の 周 波 数 よる 皮 質 興 奮 性 の 変 化 の 検 証 被 検 者 は 健 常 ボランティア15 名 運 動 野 の 興 奮 性 の 指 標 は 単 発 磁 気 刺 激 に 対 する 対 側 手 指 筋 の 反 応 ( 運 動 誘 発 電 位 )の 振 幅 とした 4 発 の 磁 気 刺 激 は5msから100msの 一 定 の 刺 激 間 隔 で 与 えた( 即 ち10Hzから200Hz) 初 めの3 発 の 磁 気 刺 激 はその 刺 激 のみでは 運 動 誘 発 電 位 を 出 現 させ ない 運 動 閾 値 以 下 の 刺 激 強 度 として( 条 件 刺 激 ) 最 後 の1 発 の 刺 激 ( 試 験 刺 激 )は 運 動 誘 発 電 位 を 誘 発 する 強 度 とした 試 験 刺 激 単 発 による 運 動 誘 発 電 位 と 3 発 の 条 件 刺 激 を 先 行 させた 場 合 の 運 動 誘 発 電 位 の 振 幅 の 比 率 をとり どの 周 波 数 で 促 通 がみられるか 検 討 した また 刺 激 のリズムに 関 わる 変 化 であることを 示 すために 一 発 の 強 度 の 強 い 条 件 刺 激 の 効 果 と 比 較 した 2. 神 経 疾 患 への 応 用 大 脳 皮 質 のリズムに 変 化 が 生 じていると 示 唆 さ れている 神 経 疾 患 において 促 通 効 果 がおきる 周 波 数 が 変 化 しているか 検 討 した 対 象 は 皮 質 性 ミ オクローヌス6 名 パーキンソン 病 10 名 健 常 者 の 場 合 と 同 様 の4 発 の 経 頭 蓋 的 磁 気 刺 激 を 行 っ 23

27 た 更 に 促 通 が 起 きる 周 波 数 と 皮 質 内 抑 制 機 構 の 関 連 を 検 討 するために 磁 気 2 発 刺 激 法 により 運 動 野 抑 制 機 構 の 指 標 である 短 潜 時 抑 制 を 併 せて 検 査 した 一 発 の 運 動 野 閾 値 以 下 の 条 件 刺 激 を 1-5ms 試 験 刺 激 に 先 行 して 与 えて1-5msの 刺 激 間 隔 の 運 動 誘 発 電 位 の 振 幅 減 弱 が 誘 発 されるか 分 析 し た 結 果 1.4 発 の 経 頭 蓋 磁 気 刺 激 の 周 波 数 よる 皮 質 興 奮 性 の 変 化 の 検 証 4 発 の 磁 気 刺 激 の 刺 激 間 隔 7-8msと25msで 促 通 効 果 がみられた 刺 激 間 隔 7-8msの 促 通 効 果 は 1 発 の 強 度 の 強 い 条 件 刺 激 でも 誘 発 されたが 刺 激 間 隔 25msの 促 通 効 果 は 条 件 刺 激 が3 発 の 場 合 ( 即 ち40Hzの 刺 激 )でのみ 誘 発 された β 帯 域 の 刺 激 に 同 期 しやすくなっていると 考 えら れた この 結 果 は 脳 波 などで 皮 質 性 ミオクローヌ スではβ 帯 域 のリズムが 亢 進 していると 報 告 され ていることと 合 致 する 皮 質 性 ミオクローヌスは 介 在 ニューロンの 機 能 が 障 害 されるとされるが これにより 皮 質 内 の 抑 制 機 能 が 失 われるととも に 運 動 野 内 ネットワークに 変 化 を 起 こし 優 位 な 内 在 リズムがγ 帯 域 からβ 帯 域 に 移 行 しているの ではないかと 考 えられた 一 方 パーキンソン 病 では 基 底 核 の 機 能 異 常 により 基 底 核 内 在 リズムが 変 化 しているとされて いる 今 回 の 結 果 で 外 的 刺 激 による 促 通 効 果 が 失 われており 皮 質 でもリズムの 変 化 が 生 じている と 示 唆 された 皮 質 内 抑 制 機 構 は 保 たれているこ とから 皮 質 内 の 変 化 ではなく 基 底 核 などからの 間 接 的 に 生 じた 皮 質 リズムの 変 化 であると 推 察 さ れる 2. 神 経 疾 患 への 応 用 皮 質 性 ミオクローヌスでは25 ms(40hz)の4 発 の 磁 気 刺 激 では 促 通 がみられず 40ms 間 隔 の 刺 激 (20Hz)により 軽 度 の 促 通 が 生 じた 2 発 刺 激 による 皮 質 内 短 潜 時 抑 制 は 減 弱 していた 以 上 から 外 的 刺 激 の 周 波 数 を 内 在 リズムに 合 わ せると 促 通 が 起 きるのではないかと 示 唆 され 内 在 リズムの 変 化 の 分 析 に 用 いることができると 共 に 今 後 促 通 を 有 効 に 誘 導 するための 至 適 な 周 波 数 の 解 明 に 役 立 てられる 可 能 性 がある 一 方 パーキンソン 病 では 25 ms(40hz)を 含 め どの 周 波 数 でも4 発 の 磁 気 刺 激 では 促 通 効 果 はみられなかった 2 発 刺 激 による 皮 質 内 短 潜 時 抑 制 は 前 から 後 ろ 向 きの 電 流 を 誘 発 する 方 向 に 磁 気 刺 激 を 行 った 場 合 には 正 常 に 誘 発 された 考 察 健 常 者 では40Hzの4 発 の 経 頭 蓋 磁 気 刺 激 によ り 促 通 効 果 を 起 こすことが 示 された 40Hzの 外 的 刺 激 により 運 動 野 の 内 在 性 リズムの40Hzの γ 帯 域 の 周 波 数 と 同 期 して 促 通 が 起 こるのではな いかと 考 えられた また 皮 質 性 ミオクローヌスでは40Hzでは 促 通 はなく 25Hz 刺 激 で 促 通 が 見 られることから 発 表 1. 花 島 律 子 ら パーキンソン 病 における 後 ろ 向 き 誘 導 電 流 による 皮 質 内 抑 制 第 52 回 日 本 神 経 学 学 術 大 会 名 古 屋 2. 花 島 律 子 ら 皮 質 性 ミオクローヌスにおける 運 動 野 興 奮 リズムの 変 化 第 5 回 パーキンソン 病 運 動 障 害 疾 患 コングレス 東 京 3. 堤 涼 介 花 島 律 子 ら 経 頭 蓋 磁 気 刺 激 を 用 いた 皮 質 抑 制 機 能 の 相 互 作 用 に 関 する 検 討 第 41 回 日 本 臨 床 神 経 生 理 学 会 学 術 大 会 静 岡 4.Hanajima R et al. Intrinsic rhythm within the primary motor cortex in cortical myoclonus 15th International Congress of Parkinson`s Disorders and Movement Disorders,

28 Toronto 5.Shirota Y, Hanajima R et al. Transcranial magnetic stimulation over the cerebellum in ataxic and non-ataxic patients with progressive supranuclear palsy. The 4th International Symposium, Tokyo 文 献 Hanajima R et al. Short-interval intracortical inhibition in Parkinson's disease using anteriorposterior directed currents. Exp Brain Res. 2011;214(2):317 25

29 組 織 再 生 に 対 する 磁 場 作 用 の 研 究 血 液 循 環 系 に 着 目 して (Analysis and molecular characterization of muscular regenetation in Medaka.) 独 立 行 政 法 人 産 業 技 術 総 合 研 究 所 健 康 工 学 研 究 部 門 川 﨑 隆 史 < 目 的 > 磁 場 が 生 体 に 与 える 影 響 に 関 しては これまで に 多 くの 研 究 がなされてきたが 明 確 な 作 用 を 報 告 した 例 はほとんどない この 中 で 血 流 を 主 と する 循 環 系 に 対 する 作 用 が 強 く 示 唆 されてきたが これに 関 してさえも 作 用 を 決 定 付 ける 研 究 はない これまでの 研 究 で マウス ラット 等 の 生 物 個 体 を 用 いた 実 験 (in vivo)では 血 管 ( 血 流 ) 等 生 体 内 を 直 接 観 察 することができず 実 験 方 法 が 限 られるのが 現 状 である また 培 養 細 胞 を 用 い た 実 験 (in vitro)では 実 際 の 生 体 内 (in vivo)の 生 理 条 件 とはかけ 離 れた 環 境 での 実 験 となる そ こで 本 研 究 では 生 きた 状 態 で 生 体 内 での 経 過 観 察 が 可 能 である 利 点 を 有 する 小 型 魚 類 メダカを 用 いたアプローチにより 健 常 時 の 生 命 活 動 や 損 傷 治 癒 過 程 等 に 及 ぼす 静 磁 場 の 影 響 を 探 索 する < 方 法 > メダカの 静 磁 場 曝 露 血 球 速 度 心 拍 数 に 及 ぼす 影 響 を 評 価 する 実 験 に 関 しては 受 精 後 日 の 稚 魚 を その 他 の 実 験 に 関 しては 受 精 後 日 のメダカ 成 魚 を 用 いた メダカを 静 磁 場 下 で 保 持 するためにネオ ジウム 磁 石 を 固 定 した 磁 場 曝 露 装 置 (Fig.1)およ びその 中 に 挿 入 するメダカ 保 持 用 のセルを 作 製 し た 静 磁 場 の 強 度 はおよそ200mT とした また 水 温 は26.5 で 14 時 間 明 条 件 /10 時 間 暗 条 件 の 周 期 的 明 暗 条 件 の 中 で 飼 育 し 1 日 2 度 の 粉 餌 給 餌 を 行 った Fig. 1 静 磁 場 曝 露 装 置 静 磁 場 が 血 球 速 度 心 拍 数 に 及 ぼす 影 響 赤 血 球 を 可 視 化 した 遺 伝 子 導 入 (Tg)メダカ 系 統 pglobin:yfp(pgb:yfp)( 文 献 1)の 稚 魚 を 用 いた 受 精 後 から 実 験 で 使 用 するまで 静 磁 場 曝 露 下 の 条 件 でメダカ 胚 を 保 持 した メダカ をガラスボトム 皿 に 横 たえ 顕 微 鏡 ステージに 乗 せ 2 分 後 に 血 流 に 従 い 移 動 する 赤 血 球 の 画 像 の 撮 影 を 開 始 した ガラスボトム 皿 上 でも 磁 場 に 曝 露 できるよう 約 200mTの 磁 石 を 固 定 したリングを 作 製 し 必 要 に 応 じて 撮 影 用 のメ ダカの 横 に 置 いた 血 流 画 像 は 高 速 カメラ (CoolSNAP HQ, 日 本 ローパ)により 取 得 し 26

30 Fig.3に 従 って 解 析 し 赤 血 球 の 最 高 速 度 を 計 算 した また 心 拍 数 は 目 視 により30 秒 間 カウントした Fig. 2 メダカの 損 傷 とその 後 の 保 持 静 磁 場 が 血 管 の 再 生 に 及 ぼす 影 響 Tgメダカ 系 統 pgb:yfpを 用 いた 近 赤 外 レー ザ(550mT 67msec)を 照 射 することにより 筋 組 織 に 損 傷 を 起 こした(Fig.2) 損 傷 後 共 焦 点 レーザ 顕 微 鏡 を 用 い 損 傷 部 の 蛍 光 画 像 を 定 期 的 に 取 得 し Fig.4に 従 って 解 析 し 血 管 の 再 生 過 程 を 評 価 した 画 像 は z 軸 方 向 に10um 毎 に 100umの 深 さまで 撮 影 し z 軸 方 向 に 重 ね 合 わ せたものを 解 析 に 用 いた Fig.3 血 流 速 度 の 評 価 Tgメダカ:pGb:YFPの 血 流 に 伴 う 赤 血 球 の 移 動 を 尾 部 筋 組 織 において 蛍 光 動 画 撮 影 し フレーム 毎 の 特 定 の 赤 血 球 の 位 置 か ら 各 フレーム 間 での 赤 血 球 の 平 均 移 動 速 度 (v)を 計 算 し 測 定 時 間 内 での 最 大 速 度 を 算 出 し 各 条 件 での 血 球 速 度 とした Fig.4 血 管 再 生 の 評 価 Gb:YFP 損 傷 後 の 損 傷 部 付 近 の 蛍 光 画 像 を 共 焦 点 レーザ 顕 微 鏡 を 用 いて 撮 影 した z 軸 方 向 に 重 ね 合 わせた 蛍 光 画 像 を 無 償 解 析 ソフトImageJにより 二 値 化 した 損 傷 部 を 中 心 とした 半 径 250umの 範 囲 内 の 領 域 での 血 管 の 面 積 を 算 出 し 血 管 面 積 を 定 量 化 した イメージングMS 解 析 メダカSeeThrough 系 統 を 用 い 上 記 と 同 様 の 損 傷 を 起 こした 損 傷 後 4 日 目 損 傷 メダカ を 凍 結 後 損 傷 部 の 横 断 切 片 を 作 製 し 導 電 性 コートを 施 したスライドガラス 上 に 載 せた 乾 燥 後 イメージングMS 解 析 に 用 いた イメー ジングMS 解 析 は ブルカー ダルトニクス 株 式 会 社 で 行 った 27

31 < 結 果 > 静 磁 場 が 血 球 速 度 心 拍 数 に 及 ぼす 影 響 損 傷 後 静 磁 場 無 もしくは 有 環 境 下 で 保 持 した それぞれのメダカに 対 し 静 磁 場 無 もしくは 有 環 境 下 で 画 像 取 得 を 行 い それぞれの 群 に 対 する 血 流 解 析 を 方 法 に 示 したように 行 ったところ 静 磁 場 環 境 下 で 保 持 し 無 磁 場 で 撮 影 したもののみ 有 意 な 血 流 の 上 昇 がみられたが 他 の 条 件 に 関 しては 有 意 差 がみられなかった 心 拍 数 については す べての 群 に 関 して 有 意 差 は 見 られなかった (Fig.5) Fig.5 血 球 速 度 心 拍 数 に 及 ぼす 影 響 静 磁 場 が 血 管 の 再 生 に 及 ぼす 影 響 方 法 に 示 したように 損 傷 後 の 血 管 の 再 生 過 程 を 画 像 処 理 により 評 価 した 結 果 本 実 験 の 条 件 では 損 傷 後 2 週 間 程 度 で 再 生 の 速 度 ( 血 流 のある 血 管 の 増 加 速 度 )が 減 少 するため 主 に 再 生 速 度 が 速 い 期 間 である 損 傷 後 2 週 間 の 再 生 過 程 に 関 する 磁 場 の 効 果 を 検 討 した その 結 果 損 傷 後 の 静 磁 場 環 境 の 有 無 は 損 傷 部 付 近 の 血 管 再 生 過 程 に 対 し 特 に 影 響 を 与 えなかった (Fig.6) Fig.6 血 管 の 再 生 に 及 ぼす 影 響 イメージングMS 解 析 損 傷 後 4 日 目 のメダカの 損 傷 部 の 横 断 切 片 に 対 し イメージングMS 解 析 を 行 った 有 意 に 検 出 された 蛋 白 質 の 分 布 を 分 子 量 毎 にイメー ジングにより 表 示 した 結 果 分 子 量 6276 付 近 の 蛋 白 質 に 関 して 損 傷 部 に 特 異 的 な 発 現 が 見 ら れた しかし 磁 場 環 境 の 有 無 による 変 化 は 見 ら れなかった (Fig.7) 28

32 無 磁 場 飼 育 魚 の 切 片 像 ( 左 )とイメージング 像 ( 右 ) Fig.7 損 傷 部 切 片 に 対 するイメージングMS 解 析 損 傷 後 4 日 成 魚 の 損 傷 部 連 続 横 断 切 片 を 作 成 し イ メージングMS 解 析 を 行 った 有 意 に 検 出 された 分 子 量 の 蛋 白 質 に 関 し それぞれイメージを 作 成 した 無 磁 場 下 ( 上 図 )もしくは 磁 場 下 ( 下 図 )で 飼 育 した 各 損 傷 成 魚 に 関 して 明 視 野 像 ( 左 図 )とイメージング 像 ( 右 )を 示 した イメージング 像 は 損 傷 部 におい て 発 現 する 蛋 白 質 ( 分 子 量 約 6276; 緑 ) 背 骨 で 発 現 す 磁 場 下 飼 育 魚 の 切 片 像 ( 左 )とイメージング 像 ( 右 ) る 蛋 白 質 ( 分 子 量 約 7825; 赤 ) 全 体 的 に 発 現 する 蛋 白 質 ( 分 子 量 約 4734; 青 )の 各 分 布 をマージして 示 した 損 傷 部 において 発 現 する 蛋 白 質 の 発 現 量 は 見 かけ 上 磁 場 の 有 無 によって 変 化 しなかった スケールバー:2 mm < 考 察 > 本 研 究 では 個 体 が 生 きたまま 生 体 内 を 観 測 で きるメダカを 用 いることにより 高 等 動 物 では 容 易 に 実 現 できない 実 験 系 による 細 胞 組 織 レベル の 解 析 を 可 能 にすることにより 新 たな 知 見 を 得 られる 可 能 性 に 期 待 した しかし 血 管 血 流 に 関 する 実 験 および 損 傷 部 における 発 現 蛋 白 質 解 析 における 殆 どの 場 合 について 静 磁 場 の 有 意 な 影 響 がみられなかった 唯 一 血 流 速 度 に 関 して 静 磁 場 環 境 下 保 持 後 無 磁 場 で 撮 影 した 場 合 他 条 件 と 比 較 して 有 意 な 変 化 が 見 られた 静 磁 場 における 長 時 間 保 持 後 の 磁 場 除 去 の 影 響 も 考 えら れるが 原 因 を 特 定 するためには 更 なる 研 究 が 必 要 である 本 実 験 で は 実 験 に 用 い る 磁 場 を 静 磁 場 (200mT)に 設 定 して 実 験 を 行 った 実 験 的 に 静 磁 場 の 強 度 を 変 動 させたり 変 動 磁 場 を 用 いる ことが 安 易 に 行 いにくい 問 題 点 が 存 在 するが 今 後 の 課 題 として 静 磁 場 強 度 ( 磁 束 密 度 )を 変 動 パラメーターとしたり 変 動 磁 場 を 用 いること が 必 要 であると 考 える < 発 表 > 特 になし < 文 献 > 1.Maruyama K, Wang B, Ishikawa Y, Yasumasu S, Iuchi I. 1kbp 5' upstream sequence enables developmental stage-specific expressions of globin genes in the fish, medaka Oryzias latipes. Gene. 2012;492(1):

33 全 頭 型 脳 磁 図 を 用 いた 統 合 失 調 症 の 感 覚 情 報 処 理 機 能 の 縦 断 研 究 (Longitudinal study of sensory information processing in schizophrenia using whole head 306-ch magentoencephalography) 九 州 大 学 大 学 院 医 学 研 究 院 臨 床 神 経 生 理 学 講 座 前 川 敏 彦 目 的 統 合 失 調 症 (SZ)は 思 考 と 知 覚 の 独 特 で 根 本 的 な 歪 曲 と 不 適 切 なあるいは 鈍 麻 した 感 情 で 特 徴 づけられる 原 因 不 明 で 以 前 は 早 発 痴 呆 と 呼 ばれた 予 後 不 良 の 精 神 疾 患 であるが,その 病 態 は 未 だに 十 分 には 解 明 されていない しかし,これまでの 精 力 的 な 研 究 からSZは 進 行 性 の 脳 疾 患 であり, 早 期 介 入 によって 疾 病 の 進 行 を 食 い 止 められる 可 能 性 が 見 いだされており,この 領 域 のトピックス のひとつは 早 期 発 見 のためのバイオマーカーの 同 定 である ところで,N-methyl-D-aspartate(NMDA) 受 容 体 拮 抗 薬 であるフェンシクリジン(PCP) 乱 用 者 はSZとよく 似 た 精 神 症 状 を 示 すことから,SZ の 病 態 仮 説 として グルタミン 酸 作 動 性 神 経 系 機 能 低 下 説 が 提 唱 されているが, 脳 波 を 用 いた 事 象 関 連 電 位 (ERP)の 一 成 分 である 聴 覚 ミスマッ チ 陰 性 電 位 (ammn)はグルタミン 酸 NMDA 型 受 容 体 機 能 を 反 映 していることが 知 られており, ammnとmri 構 造 画 像 解 析 を 組 み 合 わせた 研 究 によって, 慢 性 期 SZではaMMNの 減 衰 と 側 頭 葉 の 体 積 減 少 に 相 関 があることが 発 見 されている また,aMMNを 用 いたSZの 縦 断 研 究 では, 罹 病 期 間 と 陰 性 症 状 がaMMNの 振 幅 と 関 連 している ことが 報 告 されている これまでSZの 聴 覚 情 報 処 理 異 常 はaMMNを 指 標 としてよく 調 べられて きたが,SZの 感 覚 情 報 処 理 異 常 は 聴 覚 に 限 定 的 なものではなく, 視 覚 情 報 処 理 異 常 も 繰 り 返 し 報 告 されており,SZの 脳 機 能 異 常 を 解 明 する 上 で 感 覚 情 報 処 理 のマルチモダリティー 研 究 は 必 要 で ある 我 々は 先 行 研 究 において, 視 覚 MMN ( vmmn) が 視 覚 情 報 自 動 処 理 ( Visual Information Automatic Processing, VIAP)の 指 標 となること( 文 献 1), 慢 性 期 SZではvMMNが 減 衰 しており,vMMNが 服 薬 量 や 年 齢 に 相 関 し ていることを 発 見 した( 文 献 2) 先 行 研 究 から 慢 性 期 SZではvMMNが 減 衰 しており,SZのVIAP は 服 薬 量 や 年 齢 に 相 関 していることが 見 いだされ ているが,どの 時 期 から 異 常 が 出 現 するのかはわ かっていない 発 症 早 期 SZを 対 象 とすることで SZのVIAPを 縦 断 的 に 解 明 できる 本 研 究 では, 頭 蓋 骨 などの 構 造 物 の 影 響 を 受 け ずに, 脳 波 と 同 等 の 高 時 間 分 解 能 とMRI 同 等 の 高 空 間 分 解 能 で 大 脳 皮 質 の 神 経 活 動 を 磁 場 変 化 とし て 直 接 検 知 できる 全 頭 型 脳 磁 図 (306ch-MEG) を 用 いてvMMNの 磁 場 相 当 成 分 であるvMMFを 指 標 にして, 発 症 早 期 SZと 慢 性 期 SZのVIAPを 解 析 する 30

34 方 法 結 果 1. 対 象 対 象 は 初 発 統 合 失 調 症 ( 初 回 入 院 後 6か 月 以 内 の 患 者 ;FES) 群 と 慢 性 期 統 合 失 調 症 群 ( 初 回 入 院 後 1 年 以 上 で 完 全 寛 解 には 至 っていない 患 者 ; ChS)) 群 と 年 齢, 性 別, 利 き 手 を 一 致 させた 各 対 照 (NC) 群, 各 群 15 名 ( 計 60 名 ) 程 度 を 対 象 とする 図 1 H24 年 3 月 時 点 で 実 験 に 参 加 した 者 は17 人 (ChS:10 人, 全 員 右 利 き, 女 性 5 人, 男 性 5 人, 平 均 年 齢 41.6(25~47) 歳,NC:7 人, 全 員 右 利 き, 女 性 2 人, 男 性 5 人, 平 均 年 齢 36.4(26~47) 歳 )であった 行 動 指 標 とした 質 問 紙 の 正 答 率 は, ChS 群 :79.0%,NC 群 :93.6%,ボタン 押 しの 正 答 率 と 反 応 時 間 はそれぞれ,ChS 群 :93.7%, 478.2ms,NC 群 :97.3%, 466.8msといずれも NC 群 の 方 がChS 群 よりも 優 れている 傾 向 であっ た MEG 解 析 では, 両 群 とも 後 頭 部 に 限 局 して 誘 発 反 応 を 認 めたが( 図 2),N1m 反 応,vMMF 反 応 ともにChS 群 では 減 衰 傾 向 であった( 図 3) 2. 視 覚 実 験 条 件 被 験 者 にはシールドルーム 中 の 安 楽 椅 子 に 座 り,イヤホンからの 物 語 に 注 意 集 中 しながら 前 方 のスクリーン 中 心 を 固 視 するように 指 示 する 正 面 のスクリーンには2 種 類 のウインドミルパタン { 標 準 刺 激 (S), 逸 脱 刺 激 (D)}と 同 じ 大 きさの 白 色 円 形 刺 激 { 標 的 刺 激 (T)}を 呈 示 時 間 200 ms, 刺 激 間 隔 800 ms,8:1:1の 割 合 でランダムに 呈 示 し,Tでボタンを 押 すように 指 示 する( 図 1) 行 動 指 標 として,ボタン 押 しの 正 答 率, 反 応 時 間 を 計 測 し, 実 験 終 了 時 に 物 語 の 内 容 に 関 する 質 問 紙 により 被 験 者 の 注 意 が 物 語 の 内 容 とTの 同 定 に 向 いていたことを 確 認 する 実 験 中 は306ch MEGを 用 いて 持 続 して 脳 磁 場 を 記 録 する 図 2 図 3 最 大 の 反 応 を 示 したチャンネル 3. 記 録 と 解 析 得 られたMEGデータはオフライン 処 理 し, 刺 激 ごとに 加 算 平 均 を 行 い,Dに 対 する 反 応 からS に 対 する 反 応 を 引 算 してvMMFを 抽 出 した 先 行 研 究 からChS 群 ではvMMFが 減 衰 することが 予 想 される あらかじめ 撮 像 しておいた3T-MRI 画 像 上 にMEGデータを 重 ねてvMMFの 電 流 源 推 定 を 行 う 31

35 考 察 先 行 研 究 ( 文 献 2)から 予 想 された 通 り,ChS 群 はNC 群 よりも 行 動 パフォーマンスが 劣 り, vmmfも 減 衰 していた 本 研 究 によってChS, NC 両 群 において,vMMFは 後 頭 部 に 安 定 して 記 録 されたので, 今 後 はさらにFESを 対 象 に 研 究 を 進 めていく 予 定 である 発 表 1. 前 川 敏 彦,Margaret A. Niznikiewicz,Robert W. McCarley: 初 発 統 合 失 調 症 の 多 モダリ ティーERPs: Boston CIDAR Projectの 中 間 報 告. 第 41 回 日 本 臨 床 神 経 生 理 学 会,2011 年 11 月 12 日, 静 岡 市.( 優 秀 ポスター 賞 受 賞 ) 2. Toshihiko Maekawa, Toshiaki Onitsuka, Shozo Tobimatsu: Auditory and visual mismatch negativity in psychiatric disorders: A review. Current Psychiatry Reviews, 2012, 8, in press. 文 献 1. T. Maekawa, Y. Goto, N. Kinukawa, T. Taniwaki, S. Kanba, S. Tobimatsu: Functional characterization of mismatch negativity to a visual stimulus. Clin Neurophysiol 116(10): , 前 川 敏 彦, 平 野 昭 吾, 大 林 長 二, 平 野 羊 嗣, 鬼 塚 俊 明, 飛 松 省 三, 神 庭 重 信 : ミスマッチ 陰 性 電 位 を 用 いた 統 合 失 調 症 の 視 覚 情 報 自 動 処 理 過 程 の 検 討. 臨 床 脳 波 50: , T. Maekawa, S. Tobimatsu, N. Inada, N. Oribe, T. Onitsuka, S. Kanba, Y. Kamio: Top-down and bottom-up attention in high functioning autism spectrum disorder. Res Autism Spectrum Disord 5: ,

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