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1 津 田 塾 大 学 国 際 関 係 研 究 所 所 報 49 号 8 Microsoft Word で 文 献 管 理 - 多 言 語 化 ソフトウェアを 再 地 域 化 する 徒 労 - 多 賀 吉 隆 1. はじめに この 文 章 は 多 言 語 文 書 作 成 ツールとして の Microsoft Word ( 以 下 MS Word) の 文 献 管 理 機 能 のスタイルに 小 規 模 な 改 造 をすること を 断 念 して ゼロから 書 き 直 すことを 選 んだ 理 由 を 説 明 している 1.1 文 献 管 理 ソフトウェア MS Word の2007 以 降 のヴァージョンには 文 献 管 理 機 能 が 組 み 込 まれている 通 常 文 献 管 理 ソフトウェア もしくは 引 用 管 理 ソフト ウェアと 呼 ばれるものには 次 のような 機 能 がある (1) a. 論 文 提 出 先 のスタイルに 合 わせた 出 典 注 を 作 る b. 論 文 提 出 先 のスタイルに 合 わせた 参 考 文 献 表 を 作 る c. 書 き 直 しに 応 じて それらを 対 応 させ つつ 更 新 する 何 度 も 書 き 直 しをする 文 書 では つけなけ ればならない 出 典 注 が 変 わっていく それに 対 応 して 参 考 文 献 表 の 項 目 も 変 わっていく しかも 論 文 を 提 出 する 先 ごとに 出 典 注 と 参 考 文 献 表 の 書 き 方 を 変 えなければならない と ても 面 倒 である しかし 面 倒 であっても 規 則 通 りであれば かなり 自 動 化 できる そこ で 文 献 管 理 ソフトウェアの 出 番 である 1) こ のようなソフトウェアの 代 表 的 なものとして プロプライエタリなものでは Thomson Reuter 社 の EndNote[1] Elsevier 社 の Mendeley[2] フリー/オープンなものでは BibTEX[3] Zotero [4] があげられる LaTEX 向 けの BibTEX を 除 くと これらのソフトウェアの 多 くは ワー ドプロセッサ アプリケーションと 組 合 せて 使 うことになる 実 際 上 にあげた EndNote Mendeley Zotero には MS Word 向 けの 拡 張 機 能 (アドイン アドオン プラグイン) がある ただし これらの 拡 張 機 能 はだいたい MS Word の 文 献 管 理 機 能 と 協 調 していない それぞれの 文 献 管 理 ソフトウェアには 多 くの 文 献 スタイル 向 けの 設 定 が 用 意 されてい る また 文 献 スタイルをカスタマイズする ツールも 用 意 されていることも 多 い 例 えば Mendeley や Zotero は 出 力 をカスタマイズす るために CSL(Citation Style Language) を 使 っ ているが 文 献 スタイルのレポジトリがソフ トウェア 開 発 用 のウェブサービス GitHub 上 に ある[5] MS Word に 組 み 込 まれた 文 献 管 理 機 能 には 付 属 のスタイルは 少 ないが サードパーティ のものがいろいろある 例 えば BibWord プ ロジェトは 多 くの 設 定 を 提 供 し カスタマイ ズするツールも 用 意 している [6] ところが BibWord による 設 定 は 英 語 向 けになっていて 多 言 語 化 を 考 慮 していない 1.2 国 際 化 と 多 言 語 化 されたソフトウェアな のに Microsoft Offce 2007 以 降 では 国 際 化 (internationalization, i18n) され その 中 で 地 域 化 (localization, L10n) されている つまり ソフトウェアの 基 本 部 分 は 同 じであり それ に 設 定 を 追 加 することで それぞれの 地 域 言 語 に 対 応 させている さらに 多 言 語 化 (multilingualization, m17n) がされている つま り 複 数 の 言 語 を 同 時 に 使 うことができる そのため 使 用 する 言 語 の 言 語 オプション (language pack) を 追 加 していけば 多 言 語 文 書 でも 困 らないはずである 実 際 MS Word の 文 献 管 理 機 能 も 多 言 語 化 されている しかし 基 本 的 な 方 針 がそうな っていることと 仕 様 や 実 装 がそうなってい

2 9 津 田 塾 大 学 国 際 関 係 研 究 所 報 第 48 号 ることは 別 のことである 私 が 確 認 した 範 囲 では アメリカ 英 語 で 使 う 場 合 を 除 くと 文 献 管 理 機 能 にはいろいろ な 表 現 の 問 題 がある それは 日 本 語 で 使 用 す ると かなりひどい その 理 由 は 言 語 表 現 と 書 記 変 種 の 伝 統 にどのような 多 様 性 がある かを 十 分 に 考 慮 に 入 れていないことによると 考 えざるをえない そのことについて 実 装 と 仕 様 の 両 面 で 主 に 日 本 語 について 説 明 してい く なお この 文 書 は Windows 7 上 の MS Word 2007 Windows 8.1 上 の MS Word 2013にもと づいて 書 かれている 2) 2 文 献 管 理 機 能 の 概 要 2.1 界 面 MS Word 2007 以 降 の 日 本 語 版 であれば 参 考 資 料 のタブの 中 に 引 用 文 献 と 文 献 目 録 グループがある 使 用 する 文 献 は 資 料 文 献 の 管 理 から 登 録 することができる 登 録 さ れた 文 献 については 引 用 文 献 の 挿 入 から 選 択 することで 出 典 注 を 文 書 の 中 に 加 えるこ とができる また 参 考 文 献 表 は 文 献 目 録 から 挿 入 することができる 出 典 注 と 参 考 文 献 表 のスタイルは 選 択 がで きる 心 理 学 の APA 文 学 の MLA 歴 史 学 な どの Chicago 計 算 機 科 学 の IEEE などが 事 前 に 準 備 されている 3) 付 属 するスタイルは MS Word のヴァージョンにより 異 なる また 同 名 のスタイルであっても 修 正 が 加 えられて いるので 異 なるふるまいをすることもある 資 料 文 献 の 作 成 編 集 では 言 語 の 選 択 がで きる 実 際 には 言 語 と 国 地 域 の 対 の 選 択 になっている 私 たちが 最 低 限 必 要 とする 日 本 語 ( 日 本 ) 英 語 (アメリカ) 以 外 にも 追 加 することができる 校 閲 タブの 言 語 校 正 グループ 内 の 言 語 の 選 択 で 選 んだも のが 追 加 される 挿 入 された 出 典 注 を 選 択 し て さらにメニューを 表 示 すると 引 用 文 献 の 表 示 がある これを 選 択 すると 出 典 注 に ページ を 追 加 したり 著 者 年 タ イトル を 表 示 しないことにしたりすること ができる ただし このときのふるまいは それぞれのスタイルの 実 装 による 2.2 実 装 と 仕 様 スタイルごとの 設 定 の 本 体 は 関 数 型 言 語 で 書 かれたプログラムが 書 かれたテキストフ ァイルである それを 出 典 注 や 参 考 文 献 表 を 出 力 するときに MS Word が 逐 次 解 釈 して 実 行 していく そのため 適 切 にプログラムを 書 け ば お 望 みの 文 献 スタイルを 作 ることができ る Microsoft Offce 2007 以 降 つまりヴァージョ ン 12 以 降 では Offce Open XML File Formats という 規 格 によっている[7] これは XML (Extended Markup Language) で 書 かれた 複 数 のファイルを ZIP でアーカイヴしているもの である 文 献 管 理 のフォーマットについては Part I の22.6 Bibliography に 書 かれている な お XML は 情 報 を 枝 分 れした 木 構 造 をテキ ストファイルで 表 現 するためのマークアップ の 規 格 である XML の 形 にな っ てい る 書 誌 情 報 は MS Word に 組 み 込 まれた XSL 変 換 が 文 献 スタイル ごとの XSL ファイルを 解 釈 実 行 することで HTML (HyperText Markup Language) に 書 換 え られ 文 書 の 中 に 出 典 注 もしくは 参 考 文 献 表 として 挿 入 される 文 献 スタイルごとに XSL 変 換 のスクリプト は Windows では WINWORD.EXE があるフ ォルダーの 下 にある Bibliography〵Style フォル ダーに Macintosh であれば MS Word のパッケ ージ コンテンツの 下 位 の Contents/Resources/ Sytle/ にある そのためスタイルを 追 加 修 正 するには 管 理 者 権 限 が 必 要 であった なお Offce 2013 以 降 では ユーザーデータの 下 位 の フォルダーに 置 けるようになっている 出 典 注 を XSL 変 換 するばあい 書 誌 情 報 は /b:citation/b:source の 下 にある 取 得 できるの は 処 理 している 単 独 の 文 献 に 関 するものだけ である このとき 地 域 化 についての 情 報 は /b:citation/b:locals/b:local[@lcid]

3 津 田 塾 大 学 国 際 関 係 研 究 所 所 報 49 号 10 表 1 書 誌 情 報 の 種 類 について 日 本 語 の 例 SourceType 使 用 された 日 本 語 期 待 される 日 本 語 の 例 JournalArticle 雑 誌 / 定 期 刊 行 物 の 記 事 学 術 雑 誌 論 文 ArticleInAPeriodical 新 聞 記 事 定 期 刊 行 物 記 事 ConferenceProceedings 会 議 議 事 録 予 稿 集 論 文 大 会 発 表 論 文 にある LCID 属 性 には マイクロソフト 社 で 地 域 化 情 報 を 示 す 番 号 であるロケール ID を 指 定 する それは アメリカ 英 語 であれば1033 日 本 語 であれば1041である 一 方 参 考 文 献 表 を XSL 変 換 するばあい 書 誌 情 報 は /b:bibliography/b:source の 下 にある 取 得 でき るのは 処 理 する 文 献 すべてについての 情 報 である 地 域 化 についての 情 報 はやはり に あ る この 下 に 言 語 ごとの 表 現 の 訳 プログ ラムのふるまいを 変 えるスイッチの 値 などが 置 かれている XSL 変 換 は ヴァージョン1.0 にもとづき Microsoft 社 独 自 の 拡 張 もある ただし VBA や Javascript C#などのスクリプ ト 言 語 をもちいて XSL の 関 数 を 拡 張 する 機 能 は 無 効 にされている 4) 文 書 に 挿 入 するときの HTML では CSS(Cascading Style Sheets)も 使 え る 例 えば ある 部 分 をイタリック 体 にする ことは i 要 素 をもちいることでも なんらか の 要 素 の style 属 性 で font-style に italic を 指 定 することでもできる ただし CSS の 実 装 は 不 十 分 である style 属 性 の text-transform で uppercase を 指 定 した 場 合 に 大 文 字 になるが lowercase を 指 定 し て も 小 文 字 に な ら ず capitalize を 指 定 しても 最 初 が 大 文 字 にならな い 5) 3 変 な 地 域 化 ここでは ロケール ID が1033 つまり 日 本 語 のばあいの 地 域 化 情 報 がどのように 変 かを 説 明 する 3.1 訳 語 の 選 択 書 誌 情 報 を 入 力 する 資 料 文 献 の 管 理 の ウィンドウで 使 われる 日 本 語 が 特 に 変 である 具 体 的 には 書 誌 情 報 の 種 類 がそうである 主 なものを 表 1にあげる その 他 の 書 誌 情 報 フィールドで 大 きな 問 題 になりそうなのは Case 訴 訟 情 報 の 中 の Reporter である これが 記 者 と 訳 されてい るが 判 例 集 としなければ 誤 解 されるであ ろう /*/b:locals/b:local[@lcid] の 下 にある 地 域 化 情 報 の 訳 語 は 誤 解 を 招 くものはあまりな いが 慣 行 と 異 なるものはやはり 多 い 例 え ば b:strings/b:writercap とその 複 数 形 用 であ る b:strings/b:writerscap はそれぞれ 著 者 共 同 著 者 になっている しかし これは 映 画 やテレビ 番 組 の 脚 本 家 を 意 味 するので とも に 脚 本 であることが 期 待 される 3.2 引 用 符 の 選 択 スタイルに 固 有 でない 約 物 やプログラムの ふるまいを 変 えるスイッチの 値 は /*/b:locals/b:local[@lcid]/b:general の 下 に 置 か れ て い る 記 事 や 論 文 を 囲 む た め に b:openquote と b:closequote がある アメリカ 英 語 1033では 両 者 とも U+0022 (QUOTATION MARK) が 指 定 されているが 日 本 語 ではそれぞれ U+201C (LEFT DOUBLE QUOTATION MARK) U+201D (RIGHT DOUBLE QUOTATION MARK) が 指 定 されている しかし 日 本 語 で 期 待 される のは U+300C(LEFT CORNER BRACKET) U+300D(RIGHT CORNER BRACKET)であ る 6) 書 籍 のタイトルについては 英 語 ではイタ リック 体 にするので b:noitalics に no が 置 か れている 日 本 語 ではこれに yes が 置 かれ イ タリック 体 にはしない 書 籍 のタイトルのた めに b:titleopen と b:titleclose があるが これ は 英 語 でも 日 本 語 でも 指 定 されていない 日 本 語 では それぞれ U+300E(LEFT WHITE CORNER BRACKET) U+300F (RIGHT

4 11 津 田 塾 大 学 国 際 関 係 研 究 所 報 第 48 号 WHITE CORNER BRACKET) が 期 待 される 3.3 人 名 の 列 挙 に 使 われる 属 性 出 典 注 や 参 考 文 献 表 で 著 者 を 区 切 るための b:authorsseparator がある これには,, (コン マと 空 白 ) が 入 っている しかし APA と 組 み 合 せることが 想 定 される 日 本 心 理 学 会 の 執 筆 の 手 びき でも Chicago(Turabian) スタイ ルと 組 み 合 せることが 想 定 される 学 術 論 文 の 技 法 でも U+30FB(KATAKANA MIDDLE DOT) が 使 われている [8, 9] 人 名 を 列 挙 するばあい 言 語 とスタイルの 組 合 せがいろいろある 英 語 のばあいだけで も 次 のように 分 かれる [10] ただし 必 ずし も MS Word がそう 出 力 してくれるわけではな い (2) a. Smithy, Alan, and Beth Smithy. (MLA) b. Smithy, Alan, and Smithy, Beth. (Chicago) c. Smithy, A., & Smithy, B. (APA) d. Smithy A, Smithy B. (Vancouver) MS Word では 地 域 化 情 報 の 中 でアメリカ 英 語 では b:general/b:noandbeforelastauthor が no に b:strings/b:anduncap が and に b:apa/b:beforelastatuhor が & に 設 定 され ている 日 本 語 のばあい 接 続 詞 を 使 わないので b:general/b:noandbeforelastauthor が yes に 設 定 されればいいはずである ところが これ は no に 設 定 されている それをごまかすため に b:strings/b:anduncap と b:apa/b:beforelastatuhor の 設 定 が 変 なものに なっている あい 論 文 の 著 者 が 一 次 的 な 責 任 者 で 文 献 項 目 の 最 初 に 置 かれる 多 くのスタイルでは 編 者 は 二 次 的 な 責 任 者 としてタイトルの 後 に 置 かれる 英 語 などでは 受 身 的 に Edited by を 編 者 に 先 行 させる これに 対 応 する 地 域 化 情 報 は b:strings/b:editedbycap であり 英 語 で は Edited by %1 に 設 定 されている %1のと ころに 編 者 の 名 前 を 入 れる そのため 日 本 語 では %1 編 と 設 定 されることが 期 待 される が 実 際 には 編 集 : %1 と 設 定 されている 号 数 は b:strings/b:numbershortcap に 英 語 で あれば No. %1 と 設 定 されている 日 本 語 で 期 待 されるのは %1 号 であるが 実 際 に は 第 %1 と 設 定 されている 3.5 フォーマットの 中 の 空 白 上 の 号 数 でも 実 は 問 題 になるのが 整 形 の ためのフォーマットの 中 に 不 要 な 半 角 の 空 白 (U+0020, SPACE) が 含 まれることである 例 えば 版 数 を 示 すためのフォーマット b:strings/b:editionshortuncap には 第 %1 版 が 入 れられている この 中 の%1には いわゆ る 半 角 数 字 が1つ 以 上 入 れられるはずである 和 文 と 欧 文 算 用 数 字 の 間 に 日 本 語 の 組 版 の 慣 行 としては 四 分 アキが 置 かれる[11, p. 65] しかし この 四 分 アキは 組 版 /レンダリン グによるものであり 空 白 を 表 す 文 字 がない ことが 期 待 される 実 際 空 白 を 除 いた 方 が 望 ましいアキでレンダリングされる 4 多 様 性 を 無 視 した 仕 様 と 実 装 ここでは 個 別 の 地 域 化 の 設 定 ではなく 仕 様 と XSL の 実 装 で 地 域 化 に 問 題 が 起 こるもの を 扱 う 3.4 変 な 語 順 と 訳 語 地 域 化 情 報 で 語 順 が 変 わる 可 能 姓 があるも のは 言 語 表 現 自 体 が 設 定 されているのでは なく 文 字 列 を 組 立 てるためのフォーマット が 用 意 されているものがある フォーマット の 中 では%1などで 別 の 文 字 列 を 挿 入 する 位 置 を 示 している このようなものに 変 なものが 多 い 編 者 と 号 数 を 例 にあげる 論 文 集 のば 4.1 整 列 できない 文 献 管 理 ソフトウェアを 使 い 日 本 語 で 参 考 文 献 表 を 使 うときに 一 番 問 題 になるのは 望 ましい 順 番 つまりアイウエオ 順 やアルフ ァベット 順 で 整 列 できないことである これ は 文 字 列 だけから 読 み 方 が 確 定 できない 日 本 語 表 記 の 特 徴 による Zotero や Mendeley で 使 われている 文 献 管 理 ソフトウェアをカスタマ

5 津 田 塾 大 学 国 際 関 係 研 究 所 所 報 49 号 12 イズするための CSL (Citation Style Language) も 今 のところ 日 本 語 での 整 列 に 対 応 していな い [12] MS Word の 組 み 込 み 機 能 を 使 うばあ いでも 文 献 管 理 ソフトウェアの 拡 張 機 能 を 使 うばあいでも とりあえずの 解 決 法 は 文 献 目 録 を 固 定 テキストに 変 換 を 用 いて 通 常 のテキストにして カット アンド ペー ストで 整 列 することである なお 日 本 語 化 された BIBTEX では yomi フ ィールドを 追 加 することで 整 列 できるよう にしている 4.2 引 用 符 と 句 読 点 の 関 係 参 考 文 献 表 の 中 や 脚 注 尾 注 内 の 出 典 注 で は 引 用 符 がつくものに 意 味 の 区 分 のために 句 読 点 が 付 けたいばあいがある このばあい 下 のように4つの 選 択 肢 があるはずである (3) a. Article. ( 句 読 点 が 内 部 : アメリカ 英 語 ) b. Article. ( 句 読 点 が 外 部 : イギリス 英 語 など) c. 論 文 ( 句 読 点 を 省 略 : 日 本 語 の 多 くのスタイル) d. 論 文. ( 引 用 符 を 省 略 ) MS Word に 付 属 するスタイルのばあい 引 用 符 を 使 う Chicago スタイルなどでは a のよう に 実 装 されている 引 用 符 を 使 わない APA ス タイルなどでは 当 然 d のようになっている なお CSL では punctuation-in-quote というロケ ール オプションでこれに 対 応 しているが これが 二 値 なので 句 読 点 を 省 略 することには 対 応 していない[12] ここでは 書 記 言 語 の 多 様 性 を 考 慮 をした スイッチが 用 意 されていないので そのまま 多 様 性 を 考 慮 しない 実 装 になってしまってい る 4.3 語 順 の 固 定 語 順 が 言 語 ごとに 異 なるものでも 語 順 が 固 定 されているものもある 例 えば 出 典 注 に 加 えることができるページの 記 号 は 数 の 前 にのみ 置 くように 実 装 されている そのため 単 数 のばあいの b:strings/b:pageshort 複 数 の ば あ い の b:strings/b:pagescountinousshort[ sic] には 日 本 語 だと 両 方 とも ページ: が 入 れ られている そのため ページ: 3 のように 出 力 される 出 版 地 については /*/b:source の 下 に 都 市 の b:city 州 や 県 の b:stateprovince 国 や 地 域 の b:countryregion がある 必 須 あつかいされて いるのは b:city のみであるが 他 のものにも 値 があるばあい コンマで 区 切 って 昇 順 で 出 力 するように 実 装 されている そのため 府 中, 東 京 都 府 中, 広 島 県 のように 出 力 さ れる 4.4 人 名 の 処 理 人 名 の 処 理 には 界 面 にまず 問 題 がある 資 料 文 献 の 管 理 や 資 料 文 献 の 編 集 での 入 力 するときに 日 本 語 では 面 倒 になる 人 名 を 入 力 するばあい フィールドに 直 接 入 れるか 編 集 ボタンを 押 すと 現 れるサブウィンド ウで 姓 名 ミドルネーム に 分 けて 入 れるか どちらかになる 直 接 入 れるときに は MS Word が 部 分 部 分 に 分 解 している とこ ろが 個 人 名 の 分 解 は 言 語 の 設 定 によらない ので 例 えば 姓 名 の 間 に 空 白 がない 亜 蘭 純 子 であれば 全 体 が 姓 として 全 角 空 白 (U+ 3000, IDEOGRAPHIC SPACE) を 入 れた 亜 蘭 純 子 でも 全 体 が 姓 として 半 角 空 白 (U+00 20, SPACE) を 入 れた 亜 蘭 純 子 では 亜 蘭 が 名 純 子 が 姓 として 分 解 される 正 しく 分 解 してもらうにはコンマも 加 える 亜 蘭, 純 子 のようにすると 亜 蘭 が 姓 純 子 が 名 として 分 解 される なお 複 数 の 人 名 を 入 力 するには 個 人 名 間 を ; (U+003A, COLON) で 分 ける 人 名 を 処 理 する 仕 様 にも 問 題 があり それ は 欧 文 のばあいにも 表 面 化 する 各 文 献 の 責 任 者 は/*/b:Source/b:Author の 下 に 役 割 によって 著 者 b:author 編 者 b:editor 訳 者 b:translator などに 置 かれている 団 体 であれば b:corporate に 入 れられている 7) 人 名 が 入 るのは 各 役 割 の 下 にある b:namelist である この 中 に b:first b:middle b:last を そ れ ぞ れ 1 個 以 下 を 含 む b:person がある

6 13 津 田 塾 大 学 国 際 関 係 研 究 所 報 第 48 号 この 仕 様 の1つ 目 の 問 題 点 は ミドルネーム が1つ 以 下 であることが 想 定 されていることで ある 2つ 以 上 ミドルネームがあるばあいも b:middle に 全 て 入 れられてしまうが 各 スタイ ルのイニシャルの 実 装 では 最 初 のものしか 処 理 しない 2つ 目 の 問 題 点 は 姓 の 前 後 につく 小 辞 やタ イトルに 対 応 していないことである 前 につ く 小 辞 で 分 離 するもの 例 えば Ferdinand de Saussure の de をうまく 処 理 できない de Saussure を 姓 にすると 出 典 注 で (Saussure, 1876) のようなものを 出 せない Saussure を 姓 にすると 参 考 文 献 表 で Saussure, F. de のような 形 にできない 後 につくタイトル 例 えば Martin Luther King, Jr の Jr もう まく 処 理 できない King, Jr を 姓 にすると 出 典 注 で (King, 1959) のようなものを 出 せ ない また 直 接 入 力 をするときも 問 題 にな る Martin Luther King, Jr と 入 力 すると Martin Luther King が 姓 Jr が 名 として 分 解 される King, Jr, Martin Luther と 入 力 すると King が 姓 Jr, が 名 Martin Luther がミドルネームとして 分 解 される 5 文 献 スタイルの 違 い ここまでは MS Word の 文 献 管 理 機 能 の 多 言 語 化 と 地 域 化 の 問 題 点 を 述 べてきた しか し 英 語 の 主 要 文 献 スタイルとそれに 対 応 し ているはずの 日 本 語 の 文 献 スタイルに 違 いが ありすぎて 実 装 が 難 しいものもある APA の Publication Manual の 翻 訳 の 扱 い[13, p. 204] と 日 本 心 理 学 会 の 執 筆 投 稿 の 手 びき の 扱 い[8, pp. 25, 34] では 大 きく 異 なる 例 えば 出 典 注 で APA では (Piaget, 1970/1988) のように 訳 者 をつけないが 日 本 心 理 学 会 のでは (Hebb, 1972 白 井 他 訳 1975) のように 訳 者 もつけなければならない 8) 欧 文 の 文 献 スタイルでは 参 考 文 献 表 の 各 項 目 が 電 報 スタイルの 文 のつらなりのように なっていて 句 読 点 が 意 味 に 応 じて 使 われてい るが 日 本 語 の 文 献 スタイルでは 表 のように なっていて 句 読 点 があまり 使 われず 空 白 で 区 切 るものが 多 い 全 てないのであれば 地 域 化 情 報 の 部 分 の 修 正 で 済 む 可 能 性 もあるが 日 本 心 理 学 会 の 手 びき のように 出 版 年 の あとと 全 体 の 最 後 にのみピリオドが 必 要 なも のであれば [8] 対 応 は 面 倒 になる 6 多 言 語 化 を 妨 げない 再 地 域 化 の 試 み ここまで 述 べてきたように MS Word の 文 献 管 理 機 能 の 多 言 語 化 と 日 本 語 への 地 域 化 には いろいろな 問 題 がある とはいえ 独 立 した 文 献 管 理 ソフトウェアが 全 体 として 導 入 されて いない 本 学 の 環 境 では MS Word の 文 献 管 理 機 能 は 文 献 管 理 の 選 択 肢 から 外 すことができ ない そこで 多 言 語 化 を 意 識 した APA に 近 い 文 献 スタイルを 実 装 中 である 現 在 英 語 に ついては MS Word のものよりは 準 拠 性 が 高 い ものを 実 装 した 段 階 であるが 日 本 語 化 はま だ 途 中 である 9) ある 程 度 の 形 になった 段 階 で 公 開 したい 6.1 地 域 化 情 報 の 上 書 き 再 地 域 化 では 残 念 なことに 地 域 化 情 報 を コードの 中 に 含 まなければならなくなる そ れでもできるだけ 情 報 とコードを 分 離 するた めに 図 1のようなコーディングを 考 えている ある 変 数 に 上 書 きするための 地 域 化 情 報 と 既 存 の 地 域 化 情 報 のコピーを 束 縛 し ここか ら 情 報 を 得 るようにする こうすると 空 の 要 素 で 上 書 きすることもできる 6.2 参 考 文 献 表 の 整 列 日 本 語 化 で 一 番 問 題 になるのが 参 考 文 献 表 の 整 列 であろう これは MS Word 自 体 に 改 変 が 加 えられないので 入 力 に 工 夫 が 必 要 にな る 方 針 として2つ 考 えられる 1つ 目 は 何 らかのフィールド 例 えば 通 常 では 表 示 され ない b:comments フィールドに 読 みを 入 れ そ れを 処 理 するスタイルを 作 ることである 2つ 目 は 著 者 関 係 のフィールドに 特 別 な 印 を 付 けて 入 れ 整 列 向 けの 文 字 列 表 示 向 けの 文 字 列 を 区 別 する 処 理 をすることである 1つ 目 の 方 法 をとれば 他 の 文 献 スタイルで は 整 列 されないだけであるが 2つ 目 の 方 法 を とれば 他 の 文 献 スタイルでは 著 者 名 がうま

7 津 田 塾 大 学 国 際 関 係 研 究 所 所 報 49 号 14 く 表 示 されなくなる しかし 入 力 の 手 間 を 考 えると2つ 目 の 方 が 楽 である このばあい 名 前 入 力 の 文 字 数 制 限 (50 字 ) が 問 題 になる ことがどれくらいあるのかを 検 討 中 である 図 1 地 域 化 情 報 の 上 書 き <xsl:variable name="fixlocals"> <b:local LCID="1041"><!-- Japanese --> <b:general> <b:openquote> </b:openquote> <b:closequote> </b:closequote> <b:titleopen> </b:titleopen> <b:titleclose> </b:titleclose> <b:authorsseparator> </b:authorsseparator>... </b:general>... </b:local> <xsl:copy-of select="/*/b:locals/*"/> </xsl:variable> 7 おわりに MS Word の 文 献 管 理 機 能 は 多 言 語 化 を 考 慮 しているが 仕 様 と 実 装 にいろいろ 問 題 が あり 特 に 日 本 語 文 献 の 処 理 に 難 がありすぎ る とはいえ ほとんどの 学 生 や 同 僚 が 使 え るソフトウェアがこれしかないの 現 状 である 個 人 的 には 他 のソフトウェアを 使 ってくれな いものかと 思 うが そうなる 見 込 みがないの で 時 間 をみつけて 多 言 語 文 献 スタイルの 実 装 をしたい 注 1) さらに 先 進 国 の 中 央 図 書 館 のサイト 学 術 情 報 の 検 索 サイトなどが 主 な 文 献 管 理 ソフトウェア に 対 応 してきているので 書 誌 情 報 の 保 存 も 楽 になっている ただし MS Word 組 み 込 みの 文 献 管 理 機 能 に 対 応 したものは 私 の 知 る 範 囲 には ない 2) 動 作 確 認 はそういうものを 使 っているが この 文 書 自 体 は エディタとして Emacs 24を 用 い 組 版 に LaTEX 文 献 管 理 に BibTEX を 使 ってい る 3) そのスタイルが 用 意 されていることと 正 しく 実 装 されていることは 別 であり 言 語 の 選 択 を アメリカ 英 語 にしても 準 拠 性 が 低 いものもある 4) セキュリティの 観 点 からは 理 解 できるが スク リプト 言 語 から 取 得 できるはずの 文 字 の 属 性 に ついても 地 域 化 情 報 の 中 に 入 れておかなければ いけないので 言 語 処 理 がとても 面 倒 なことに なっている 5) XSL 変 換 へのスクリプト 言 語 による 拡 張 が 無 効 に なっていることとあいまって 地 域 化 情 報 に 大 文 字 で 始 まる 表 現 と 小 文 字 で 始 まる 表 現 の 両 方 が 必 要 になり やはり 面 倒 なことになっている 6) この 文 書 の 文 献 管 理 は 日 本 語 化 された LaTEX と BibTEX をもちい junsrt スタイルを 使 っているの で この 節 で 述 べるような 約 物 の 使 い 方 をして いない 7) 不 思 議 なことに MS Word の 界 面 の 実 装 では 団 体 名 がそれぞれに1つずつしか 入 れられない そ れに 合 わせて 各 スタイルの 実 装 も 団 体 が1つと いう 前 提 になっている 8) 私 の 確 認 した 範 囲 の 文 献 管 理 ソフトウェアでは 翻 訳 やリプリントのように 複 数 の 出 版 年 をもつ

8 15 津 田 塾 大 学 国 際 関 係 研 究 所 報 第 48 号 ものに 十 分 に 対 応 していないものばかりである 仕 様 では 対 応 していても 文 献 スタイルの 実 装 では 対 応 していないばあいもある 9) ただし 日 本 心 理 学 会 の 手 びき に 準 拠 する のは 難 しい 参 考 文 献 [1] Thomason Reuters. Endnote. endnote.com/. [2] Elsevier. Mendeley: Free reference manager and PDF organizer. mendeley.com/. [3] bibtex: Process bibliographies for LaTEX, etc. [4] Zotero. [5] Offcial repository for citation style language (CSL) citation styles. [6] Bibword: Microsoft word citation and bibliography styles. codeplex.com/. [7] ECMA International. Standard ecma376: Open offce xml file formats. org/publications/standards/ecma-376.htm. [8] 日 本 心 理 学 会. 執 筆 投 稿 の 手 びき 修 正 版, fixed.pdf. [9] 斉 藤 孝, 西 岡 達 裕. 学 術 論 文 の 技 法. 日 本 エディタースクール 出 版 部, 新 訂 版, [10] Charles Lipson. Cite Right: A Quick Guide to Citation Styles MLA, APA, Chicago, the Sciences, Professions, and More. The Chicago University Press [11] 日 本 エディタースクール( 編 ). 標 準 編 集 必 携. 日 本 エディタースクール 出 版 部, 第 2 版, [12] Rintze M. Zelle. Citation style language 1.0.1: Language specification, downloads/specification.html. [13] American Psychological Association. Publication Manual of the American Psychological Association. Author, 6th edition, 2010.