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れれとこたに
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1 紹介知られざる小さきハンターアシナガバエの世界 Tiny predatory flies - Introduction of Dolichopodidae 熊澤辰徳 * Tatsunori KUMAZAWA* 知られざるハエの世界ハエときいてどんなイメージが浮かぶでしょうか汚い場所にブンブン飛び回って気持ち悪い台所や風呂場回りにいるコバエを退治したいといったイメージをお持ちのかたも多いのではないでしょうか人家近くに現れるハエの仲間に対していい印象を持つ人はあまり多くないでしょう生物学的にはハエやアブカの仲間はすべてまとめてハエ目 ( 双翅目 Diptera) という大きなグループに分類されていますハエ目の種は世界に約 120,000 種日本では知られているだけで 7,500 種以上の種がいますしかし害虫になる一部のハエ目を除いて研究は遅れており毎年多くの新種が報告されているほか膨大な数の未知種がいるとされています本記事で紹介するアシナガバエも研究が進んでいない知られざるハエ目の一つです脚の長いアブアシナガバエアシナガバエはアシナガバエ科 Dolichopodidae に属する種の総称で名前のとおり脚が非常に長い種を多く含む一群ですとはいっても分類学的にはアブに近い仲間です実はハエ目ではこうした名前の不一致が時々見られアブ類に分類されるアシナガバエやオドリバエハエ類に分類されるハナアブやアタマアブさらにはカやガガンボに近い仲間なのに見た目のせいかハエの名がつくグループ ( チョウバエキノコバエケバエなど ) などもいますさてアシナガバエは草むらや湿った土がある場ホソアシナガバエ亜科の仲間 Sciapodinae sp. すらっとした体に透明感のある体色でハエのイメージに合わないと感じられるかもしれません所渓流や海岸樹木の幹など様々な環境にいます体長は 1mm ~ 1cm 程度ですが成虫幼虫ともに主に微小な昆虫やダニ等を餌とするれっきとしたハンターです身近にもいる小さな宝石アシナガバエは小さくて目立たない上近づくと素早く逃げられやすい昆虫ですしかし実は意外に身近な昆虫でわれわれの身の回りでも見つけることができますアシナガバエは草むらや湿った土がある場所渓流や海岸樹木の幹など様々な環境に多様な種がいますその中には公園や道路の植え込み街路樹などで見られる種もいますアシナガバエはその脚の長さのほかに多くの種で美しい体色をもつことが特徴です光沢のある * 大阪市立自然史博物館外来研究員 - 5 -

2 ニッチェライフ Vol. 3 (Dec. 2015) 金緑色や透き通るような黄色の種が知られており葉の上などにいると小粒な体でも目を惹きます未知なるアシナガバエを探せアシナガバエの種数は極めて多く世界で 7600 種を越える種が知られています (Grichanov, 2014) 日本からはこれまでに 100 種程度が知られていますが ( 桝永 2014) 未知種を含めると 500 種程度が生息していると推測されていますつまりまだ数百種の未知なるアシナガバエが日本にいるのですどこかでアシナガバエの仲間を見つけて調べても種の名前までわかることは少ないのが現状ですそこで今回は市街地やその近郊など身近な場所で見つけやすいアシナガバエを中心に簡単な解説と大まかな見分けかたを紹介しますアシナガバエの特徴アシナガバエの特徴として次のような点が挙げられますなお以下の特徴はあくまで区別しやすい点のみを取り上げており以下に当てはまるからといってアシナガバエだと断定はできませんまた以下と異なる特徴をもつアシナガバエもいますのであくまで参考程度にしてください多く姿もよく似ているものがあります翅脈の特徴などが異なり区別できますキノコバエ類脚が長い種が多く特にナミキノコバエ科 Mycetophilidae の一部は見た目の印象が似ています触角がアシナガバエより長く節に分かれていることなどで見分けられますなおハエという名前が付きますが分類学的にはカに近い仲間ですミギワバエ類アシナガバエと同様の湿地によく見られるハエで肉眼では小型のアシナガバエと区別しにくいですがアシナガバエにない触角の枝わかれがあるなど細かな特徴が違うので判別できますナミキノコバエの仲間 Boletina nigricans ヒラウキフネミギワバエ Setacera breviventris 体色は金緑色暗色黄色銀色など金属光沢をもつものが多い翅の脈が比較的単純 ( 右図 ) 脚が体長の割に長いコヒゲナガクボヒゲアシナガバエ Syntormon violovitshi の翅アシナガバエと間違えやすいのはこれらの特徴に比較的当てはまり生息環境も似た次のような仲間ですヤリバエ類春先に河川敷などに現れるハエで全体的な雰囲気がややアシナガバエに似ているため初めは混同するかもしれませんクモスケヤリバエしかし翅先がとがる点な Lonchoptera stackelbergi ど異なる部分も多いため慣れてくれば見間違えることはなくなるでしょうオドリバエ類アシナガバエと分類学的に近縁なオドリバエ科 Empididae とセダカバエ科 Hybotidae はアシナガバエと同じような環境にいることもハイイロケミャクシブキバエ Trichoclinocera fuscipennis 身近なアシナガバエ次のページから市街地や低地でも見つけやすい種を中心に解説していますなお各属の種数については Grichanov (2014) および桝永 (2014) を参考にしています - 6 -

3 Niche Life Vol. 3 (Dec. 2015) 身近で見られるアシナガバエたち公園草地マダラホソアシナガバエ ( マダラアシナガバエ ) Condylostylus nebulosus (Matsumura, 1916) 林や茂み植え込み庭先などでもっとも普通に見られるアシナガバエの仲間です葉の上にいることが多く金緑色の体に模様のある翅という特徴的な体つきから春から夏にかけて葉の上をよく見ていたら見つかることが多くありますただし脚や交尾器の形に違いがある近似種が 2,3 種いるため確実にこの種だと言うためにはそうした特徴を確かめる必要がありますマダラホソアシナガバエ Condylostylus nebulosus 世界には 250 種を超える仲間がいますウデゲヒメホソアシナガバエ Amblypsilopus pilosus (Negrobov, 1977) ( 上 ) ウデゲヒメホソアシナガバエ Amblypsilopus pilosus のオスヒメホソアシナガバエの仲間は世界中で 300 種以上が知られており日本にも多数の未記録種がいるとされています ( 右 ) オスは前脚の第 1 第 2 ふ節に刺毛の列がありこれが和名の由来になっていますこの刺毛を持たない A. janatus という近似種が日本にいるとされますが詳細は不明なおメスはこの特徴を持たないため他種との区別は困難マダラホソアシナガバエと同じく葉の上をせわしなく歩いていることが多い種で比較的よく見られます体色が金緑色でオスの前脚に短い毛が密集するところがあればこの種である可能性がありますただしこの種に似た種は日本でも多数確認されており研究途上のためその詳細はほとんどわかっていませんそのため写真から安易にこの種だと断定することは通常は出来ませんちなみに古くからの図鑑にアシナガキンバエ Dolichopus nitidus という種がアシナガバエ科の代表としてよく掲載されていたためかブログなどでこの種やその近縁種が誤ってアシナガキンバエとして紹介さアシナガキンバエ Dolichopus れている例が多数あ nitidus の標本体色や体つきがりますホームペーまるで違います翅にある雷マークのような脈が特徴ただジなどでアシナガキしアシナガキンバエに似た種ンバエと言う名前でも日本に数十種は確実におり紹介されている写真この翅脈ならアシナガキンバエだと即断はできませんには注意が必要です - 7 -

4 ニッチェライフ Vol. 3 (Dec. 2015) アマネアシナガバエの仲間 Gymnopternus sp. 春先から秋口ごろまで湿った土の上などで非常によく見られます公園などでも雨上がりの濡れた地面などをよく見ていると発見できるでしょうおそらく幼虫が湿った土で育つと思われますが観察例があまりないので詳細は不明ですそもそもこの仲間は身近に多数見られるにも関わらず日本どころか世界に何種いるかもハッキリわかっていません日本からは名前未確定の種がいくつも見つかっていますがその研究はほとんど進んでいませんよく似た見た目のクチヒゲアシナガバエ属 Hercostomus という別のグループの種もありこの写真に似たアシナガバエを見つけても確実な名前をつけづらいのが現状ですアマネアシナガバエの仲間 Gymnopternus sp. 体長は 3-4mm ほどで日陰の湿った土の上などでよく見られますが交尾器の形や脚の色が異なる種も多く種名は確定できません全世界では 130 種程度が知られますがこの仲間の分類は世界的に研究が遅れていますチビアシナガバエの仲間 Chrysotus sp. 草むらや湿った地面の近くなどで普通に見られる小型のアシナガバエの仲間です黒っぽい体色で他の種よりは目立ちにくいですが葉の上などで他の小昆虫を食べている様子などが観察できますアマネアシナガバエと同様に研究がまだ進んでおらず種名まで確実に調べるのは困難ですクボヒゲアシナガバエの仲間チビアシナガバエの仲間 Chrysotus sp. 体長は 2mm ほどで葉の上などでよく見られます時には頭を葉にぶつけながら獲物に襲い掛かって捕食している姿が見られます世界に 400 種以上の仲間がおり多様性が高いグループです Syntormon sp. クボヒゲアシナガバエの仲間はオスの触角に指上の窪んだ箇所がありこれが和名の由来になっています世界で 100 種以上日本にはこれまでに 6 種が知られいくつかの種は市街地でも見られます成虫の活動時期は詳しくわかっていませんが他のアシナガバエが少なくなる秋にも比較的よく見られネブトクボヒゲアシナガバエコヒゲナガクボヒゲア Syntormon flexibilis のようにシナガバエ Syntormon 成虫で越冬していると考え violovitshi オス頭部られている種もいますクボヒゲアシナガバエの仲間 Syntormon sp. 人家の壁に止まっていた個体比較的おとなしく観察しやすいです - 8 -

5 Niche Life Vol. 3 (Dec. 2015) 樹木キマモリアシナガバエの仲間 Medetera sp. 春から夏にかけて木や岩肌コンクリートなどを眺めているとじっと止まっているのを見つけられます体長 2mm ほどの小型のアシコンクリートに止まったキマモリアシナガバエの仲間 Medetera sp. ナガバエで体色頭を上げて止まったまま獲物をは暗色であるため待っていますあまり目立ちません同じ場所にこだわる習性があるのか逃げてしまってもまた同じような所に戻ってくることもよくあります世界で 328 種日本には 15 種ほどが知られますキイロアシナガバエの仲間 Neurigona sp 森林で木の樹皮を見ると黄色い体色のキイロアシナガバエの仲間を見かけることがありますホソアシナガバエの仲間と並んで特に脚が長く体色が淡黄色で美麗な仲間です世界で 150 種以上がおり日本ではこれまでに 4 種が知られますがまだ複数の未記録種がいると見込まれています水辺河川海岸ミギワアシナガバエ Thinophilus longipilus Negrobov, 1971 河川や田んぼなどにいる水辺のアシナガバエです成虫は砂や泥の上を歩きユスリカの幼虫などを引き双翅目の幼虫を食べるミギワアシずり出して食べまナガバエ Thinophilus longipilus す夏には各地の川などで比較的普通に見られますが近年初めて正式に記録され種名が明らかになりました ( 田悟, 2010; Negrobov et al., 2014) なお他によく似たススバネミギワアシナガバエ Thinophilus nigripennis という種も日本におりオスの中脚の剛毛や交尾器の形で区別できます世界には約 120 種の仲間がいますカワラホソアシナガバエ Sciapus nervosus (Lehmann, 1822) 体長 1cm 近くになる比較的大型のアシナガバエです春先に現れ河川近くの草むらなどをふわふわと飛んでいますカワラホソアシナガオスの交尾器が長く伸びる点バエ Sciapus nervosus ( 熊澤吉田 2014) などで比較的区別しやすい種です他にも近縁な種が日本にいますが研究は進んでいませんホソミャクナミイソアシナガバエ Conchopus rectus Takagi, 1965 キイロアシナガバエの仲間 Neurigona sp. フラッシュを使って撮影すると光が当たった瞬間に飛び跳ねてしまい何も写っていない写真を量産することになります海岸の波打ち際にはイソアシナガバエの仲間 (Conchopus, Acymatopus, Thambemyia など複数属 ) が見られることがあります本種はそのなかでも比較的よく見られる種ですナミイソアシナガバエの仲間は日本に 17 種が知られており翅脈が極端に - 9 -

6 ニッチェライフ Vol. 3 (Dec. 2015) 曲がった種や口が長く伸びた種などがいます日本産の種は三枝 (2008) で詳しく紹介されていますナミイソアシナガバエの仲間の分布域は日本を含むアジアに集中していますが日ホソミャクナミイ本に広く分布するキタナミイソアシナガバエ Conchopus rectus ソアシナガバエ C. borealis が ( 熊澤吉田 2014) 近年北米や南米の沿岸で発見され船の往来などによって日本から移入したと考えられています (Brooks and Cumming, 2009) おわりに Far East of Russia and Japan. International Journal of Dipterological Research 24(1) 桝永一宏 (2005) アシナガバエ科 In. 川合禎次谷田一三 ( 共編 ) 日本産水生昆虫科属種への検索東海大学出版会桝永一宏 (2014) アシナガバエ科 pp In: 中村剛之, 三枝豊平, 諏訪正明 ( 編 ) 日本昆虫目録第 8 巻双翅目 ( 第 1 部長角亜目 - 短角亜目無額嚢節 )pp.539 三枝豊平 (2008). アシナガバエ科. pp In 平嶋義宏森本桂 ( 監修 ) 新訂原色昆虫大圖鑑第 III 巻. 北隆館. pp pls. 田悟敏弘 (2010) 関東地方にて採集したアシナガバエ科の記録. はなあぶ 30(2) ここで取り上げた種は日本にいる種のごく一部に過ぎませんこれらの種以外にも近年になって日本に生息していることが明らかになった種や新種として記載された種が次々出てきていますしかしまだまだ多数の未知なるアシナガバエが日本に生息しているのは確実です身近な場所でアシナガバエを見つけることがあればぜひ立ち止まって目を留めてみてくださいひょっとすると誰も発見していない新種の可能性だって十分にあります参考文献 Brooks, S.E. and Cumming, J.M First record of a Japanese marine shore dolichopodid fly, Thambemyia (= Conchopus) borealis (Takagi), from the Neotropical Region (Diptera: Dolichopodidae). Zootaxa 2112: Grichanov, I. Ya Alphabetic list of generic and specific names of predatory flies of the epifamily Dolichopodoidae (Diptera). Plant Protection News, Suppl., No. 14. St.Petersburg, VIZR, 544 p. 熊澤辰徳吉田浩史 (2014) 兵庫県におけるアシナガバエ科の採集記録. はなあぶ Negrobov, O. P., Sato, M. Kumazawa, T. and Tago, T On the species Tachytrechus rubzovi Negrobov, 1976 (Dolichopodidae, Diptera) from the

1 巡目調査 ( 平成 3~7 年度 ) 2 巡目調査 ( 平成 8~12 年度 ) ゲンジボタルの確認された調査地区 (1 巡目調査 2 巡目調査 ) 6-61

1 巡目調査 ( 平成 3~7 年度 ) 2 巡目調査 ( 平成 8~12 年度 ) ゲンジボタルの確認された調査地区 (1 巡目調査 2 巡目調査 ) 6-61 6.5 注目すべき種の分布状況ここでは私たちにとって馴染み深い昆虫類の確認状況や水域と陸域との接点である水際域に特徴的な種の確認状況を整理しましたなお前回前々回調査との比較は調査の範囲や時期回数などの条件が必ずしも同一ではありませんまた移動性の高い種や限られた季節にしかみられない種もあることから比較結果は同一河川での消長を示すものではなく全国的な傾向を示したものですゲンジボタルとヘイケボタルの確認状況