報告特集 2: 国際人道支援の今日の課題 (1) 著者 : ドミニクシュティルハルト 赤十字国際委員会(ICRC) 事業局長 訳 : 赤十字国際委員会 (ICRC) 駐日事務所 多様化する戦闘 代償を払わされるのは民間人武装グループの細分化が進み 敵対する紛争当事者の戦力に圧倒的な差が見られるなど

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2 報告特集 2: 国際人道支援の今日の課題 (1) 著者 : ドミニクシュティルハルト 赤十字国際委員会(ICRC) 事業局長 訳 : 赤十字国際委員会 (ICRC) 駐日事務所 多様化する戦闘 代償を払わされるのは民間人武装グループの細分化が進み 敵対する紛争当事者の戦力に圧倒的な差が見られるなど 2014 年は紛争の力学に様々な特徴を見ることができます 社会や国内システムの崩壊に加えて 医療スタッフや患者 医療施設を標的とした執拗な攻撃が続き 戦闘の犠牲を強いられている人々の苦しみは増しています 戦闘の地域化が進む一方で 数十年にわたり繰り返される暴力に対して国際社会は有効な手だてを打ち出せずにいます また 公平で中立な人道支援を行う上で 私たちも様々な課題を突き付けられました 人道ニーズは多様化し いまだとどまることをしりません 中東の一角では情勢の混乱が続いています イラクとシリアアラブ共和国 ( 以下シリア ) でイスラミックステート ( 以下 IS) が台頭したことで近隣諸国に深刻な影響が及び 中東から遠く離れた国々にも動揺が広がりました いまでは 国際的な戦いに発展しています シリアでは 紛争が始まって以来 数万人が命を失い 650 万人が避難を余儀なくされました また300 万人以上が国外に難を逃れ 第二次世界大戦終結以降最大の難民危機となっています 2014 年の年明けから情勢が悪化したイラクでは 何千もの一般市民が命 を落とし 約 180 万人が家を後にしました また IS の台頭と並行して リビアやマリ ナイジェリア ソマリア イエメンなどでも様々な武装勢力が活動を活発化 暴力が横行し 治安の悪化する地域が拡大しました 地域住民は瀕死の重傷を負い なかには 対テロ作戦に巻き込まれて身を危険にさらすなど 住民は高い犠牲を払わされています 民族やナショナリズム あるいは宗教の違いから生まれる憎しみと 貴重な資源の争奪戦が 紛争や暴力 昨今の敵対行動を生み出す原因となっています その結果 アフガニスタンや中央アフリカ共和国 ( 以下 CAR) コンゴ民主共和国( 以下 DRC) リビア マリ ソマリア 南スーダン イエメンなどで 多くの一般市民が再び犠牲となりました パレスチナ自治区では新しい和平プロセスへの望みが失せ ガザ地区での戦闘で代償を払わされたのも やはり数千の市民でした ウクライナ東部でも 新たな軍事衝突が甚大な被害をもたらしました ここまで列挙した戦闘以外に 人々から忘れ去られた戦いもたくさんあります 暴力の横行によって多くの人が住居や収入の糧を捨て 住み慣れた土地を離れ 長期にわたる避難を余儀なくされています 国内避難民や海外へ逃れた難民 庇護申請者の数は この二年で急増し 2013 年には 85

3 第二次世界大戦以降初めて5000万人を超えまし アフガニスタンやコロンビア DRC イラク た うち 国内にとどまる避難民が過半数を占め レバノン ミャンマー ソマリア スリランカ ます この傾向は CAR やイラク ナイジェリア シリアでは 支援内容と規模を拡充 CAR の農 南スーダンで人道状況が悪化した2014年にも見ら 村地域やマリ北部 ナイジェリア北部 ウクライ れました また より明るい未来を求めて国外へ ナ東部 イエメンなどでは 他の支援団体が治安 脱出した数十万もの移民も 道中に極めて弱い立 悪化を理由に撤退した後も現場に残って活動を続 場に追いやられ 様々な試練を経験しています けました 一方 リビアでは 職員の安全が確保 その多くは途中で命を落とし その運命さえも残 されなかったため 活動規模を縮小せざるを得ま された親族に伝えることができません せんでした スーダンでは 2 9月まで業務の 組織化されたギャング集団による犯罪行為は 世界各地の都市部や大都市の治安を脅かし続けま 中断が余儀なくされるなど 一年の大半を活動で きぬまま過ごしました した 凄惨な暴力行為が数多くの死傷者を出し 私たちの活動の強みは 以下です 地域コミュニティに悪影響を与えただけでなく 犠牲を強いられている人々に寄り添い 主 紛争当事者全てと定期的に非公開の意見交 要なステークホルダーに接触できること 巻き込まれた家族や住民全体に長きにわたる爪痕 を残しました 人道支援が困難に直面した大きな出来事もあり 換を行い 非国家武装勢力や宗教勢力との ました 高まる一方の人道ニーズに追い付けず 関係も構築されているため 紛争の犠牲を 安全が確保できない状況にも陥りました 西アフ 強いられている人々へのアクセスを確保で リカで大流行したエボラ出血熱への対応では 複 きるだけでなく 国際人道法や人道原則の 数の危機が同時多発的に起きたため 国際国内 違反を未然に防げること の支援組織の人手不足が浮き彫りとなりました 危機に対して迅速に対応できること 臨機応変に 物資の手配運搬や職員の配 各国の赤十字社 赤新月社と連携が図れる 2014年の活動総括 そして課題 置に対応できること こと 2014年もこれまで同様 ICRC は国際赤十字 赤新月運動 以下赤十字運動 のパートナーと協 複雑化した紛争の現場では 支援を必要とする 力して 紛争やその他の暴力を伴う事態で犠牲を 人たちのもとへ辿り着くまでに多くの困難が伴い 強いられている何百万もの人々を保護支援して ます 2014年は 安全確保の面でも苦労した一年 きました 特に 社会的に最も弱い立場に置かれ でした CAR やリビア ウクライナで3名の同 ている人特有のニーズに応えられるよう力を尽く 僚が命を落とし マリでは職員5名が誘拐され しました 私たちは 事業計画を実行するだけで のちに釈放されました シリアで2013年に拘束さ なく 同時多発的に起きる数々の危機にも対応し れた3名の職員に関しては 何の進展もないまま ました その一環として ガザ地区やフィリピン 一年が過ぎています 現場で連携している赤十字 南スーダン ウクライナ そしてエボラ危機に見 赤新月社のボランティアも多くの犠牲を払いまし 舞われた西アフリカ全土において緊急事態に対応 た なかでも シリアアラブ赤新月社は 紛争 可能な態勢を整え ICRC から約80名 各国赤十 が始まってから2014年末までに40名の職員を失い 字赤新月社から19名の救援要員を派遣しました ました 86

4 そうした状況下で 私たち ICRC は 当初の活 合いました 動予算1281億1040万円 11億440万スイスフラン ICRC の現地代表部の多くは 包括的な医療 と 追加支援231億6520万円 1億9970万スイス サービスや被拘束者への医療ケア 身体のリハビ フラン を現場が必要とする事業に充て 人道支 リテーションプログラムを拡充し 組織の医療戦 援を確実に行うことができました 国際社会に追 略 年実施 を推し進めています 医 加支援を要請した数は11回と前例がなく それら 療支援や戦傷外科のニーズは 人道被害の頻度に は CAR やイスラエルパレスチナ自治区 モス 左右されます 私たちは CAR や DRC ガザ地 クワ地域代表部 対ウクライナ支援 フィリピン 区 南スーダンに外科チームを派遣 施設が破 南スーダン 追加支援要請2回 シリア 中東 壊されたり 職員が攻撃に巻き込まれるなど 医 広域 エジプト イラク ヨルダン レバノンが 療支援は頻繁に中断せざるをえず ガザ地区や南 対象 への支援に割り当てられました 1スイ スーダン シリア ウクライナの人々は 医療サー スフラン =116円で換算 ビスへのアクセスが限られる事態となりました 多様化の一途を辿る紛争や その他の暴力を伴 約60カ所の代表部が ICRC が主導する Health う事態への対応を求められるなか 適切かつ時宜 Care in Danger 危機にさらされる医療活動 プ にかなった支援を提供するよう努めました 私た ロジェクトで掲げられた目標を達成すべく活動し ちの活動は 緊急支援から 初期の紛争後復興支 ました 国際人道法を周知させることで医療への 援 生計の立て直しなど多岐にわたります 最も 攻撃を予防し 人道法違反や侵害に関して関係当 適切な支援を行えるよう 年齢や性別 その他の 局と非公開で話し合う機会を持ちました また 属性を考慮し 現場の最前線で多様な集団の特定 赤十字運動のパートナーや医療業界とは 医療ス のニーズに応えてきました また 提供するプロ タッフや患者をいかに保護していくかについて話 グラムの質や整合性の確保にも注力し 住民が支 し合いました 紛争下の性暴力問題では 被害者のニーズを 援プログラムの設計から実行 監査まで可能な限 より深く理解し 適切に対応すべく 組織全体 り参画できるようにしました 国内避難民や難民 移民 被拘束者や元被拘束 での取り組みを強化しました CAR やコロンビ 者 行方不明者の家族のニーズに応えるためには ア DRC マリ ソマリアでは 新規の活動を 分野横断的な取り組みが求められます 支援内容 始めたり 既存の活動については強化を図りまし は 安全な水や衛生設備 医療サービスや精神的 た また アフガニスタンやメキシコ パプア なケア 生計の手段 法律行政手続きに関する ニューギニア 南スーダン シリア危機の影響を サポートの提供など多岐にわたります それらと 受けている国では 事業査定を実施 国内法や国 並行して 複数の国地域で起きている敵対行為 家の行政能力を分析し 性暴力問題に対応する上 をモニタリング ガザ地区や南スーダン シリア で何が不足しているのかを見極める包括的なツー の危機においては 複数の紛争当事者それぞれと ルを2014年の終わりに立ち上げました 情報の収 二者間で対話できる環境を構築してきました ま 集分析要約が数カ国で進んでいます さらに た アフガニスタンやエルサルバドル エチオピ ICRC 職員向けには 性暴力の予防と問題対処に ア イラク ミャンマー ソマリア ジンバブエ 必要な支援プログラムを確定し実行できるよう では 拘束されて自由を奪われている人々を訪問 訓練能力開発ツールを開発し 導入しました し 構造的かつ長期的な問題について当局と話し 87 活動内容を改善し より効果的に支援を届け

5 犠牲を強いられている人々へのアクセスを確保す しました 対話をする当事者の層も厚くなりまし るために 私たちは革新的な解決策を模索し 現 た さらに 人道支援と政治安全保障のアジェ 場で多くのプロジェクトを試験的に実施しまし ンダが結びつけられることもありました 私たち た 例えば 遠隔医療の推進やモバイル機器を活 は こうしたうねりの中で奮闘し 支援を必要と 用したモニタリングなどです メキシコでは 社 している人々に寄り添うという使命を忠実に実行 会的弱者である移民の情報収集や彼らへの支援に しました タブレットコンピューターを活用 アフガニ スタンやアゼルバイジャン CAR コロンビア アフリカ ジョージア マリ ソマリア タジキスタンなど の代表部では モバイル機器を導入し 支援を必 リビアからナイジェリアまでの一帯と 南スー 要としている人々に向けた広報活動や データの ダン スーダン ソマリア CAR DRC では 収集分析に利用しています ヨルダンやレバノ 不安定な情勢や出口の見えない紛争のために 何 ン ソマリアでは 支援の受け手が 携帯電話や 百万もの人が家族と引き離されました ギニアや ATM カードを使って生計を立て直すための現金 リベリア シエラレオネなど 何年も続いた紛争 を受け取れる仕組みを立ち上げました フィリピ から立ち上がろうと必死だった西アフリカ地域 ンの収容所当局は ウェブベースのソフトウェア は エボラ出血熱によって打撃を受けました さ やタブレットコンピューターを駆使して 被拘 まざまな危機に対応した結果 2014年の活動規模 束者の処遇や環境をモニタリングし 施設の維持 上位10カ国のうち 5カ国がアフリカ大陸の国々 管理を行っています で占められました 一年以上も紛争が続いている南スーダンでは 私たちの活動の大半は 紛争当事国に拠点を置 く赤十字赤新月社だけでなく 赤十字運動の枠 平和調停と国家建設の先行きが不透明なままで 組み内外で調整され 連携する各国赤十字赤新 す 何十万もの人が 命をつなぐために必要と 月社との協力があって遂行されました エボラ危 なる支援やサービスを求めています ICRC は南 機の対応においては 国際赤十字赤新月社連盟 スーダン赤十字社と協力して包括的な支援に取り の主導の下 各国赤十字赤新月社と ICRC はと 組み 農村地域に力を注ぎました 80万人以上に もに活動しました 国境なき医師団 MSF や 食料を届け ジョングレイ州とユニティ州など一 世界保健機構 WHO とも密接に協力しました 部地域では 支援した道具や農作物の種で農業が アフガニスタンやバングラデシュ マリ メキシ 再開されました 戦闘で家族と引き離された1万 コ フィリピン そして移民が押し寄せているヨー 4000人が身内と連絡が取れるようになりました ロッパ諸国においては 赤十字運動内に敷かれた 紛争で深刻な被害を受けた医療サービスに代わっ 強固な協力体制が 効果的かつ時宜に合った人道 て移動外科チームを派遣し 約3900件の手術を実 支援を可能にしています 施しました 人道支援の分野は2014年 大きなうねりに飲み 情勢が悪化したナイジェリア北東部でも住民に 込まれ 試練の多い年となりました 高まる一方 多数の死傷者が出ました ボコハラムによる武 の人道ニーズに私たちの対応能力が試されたり 力攻撃は 隣国カメルーンにまで飛び火し チャ 人道支援が政治的要素を帯びることで 公平かつ ドやニジェールにも危機が拡大する恐れが強まっ 中立な活動をまっとうすることが難しくなったり ています 何万もの人が日常的に避難を迫られて 88

6 いるため 私たちはナイジェリア北部での活動を て継続されました 強化し 現地の赤十字社と協力して緊急支援にあ たっています 死傷者を安全な場所へ移動させ アジア 近隣国に難を逃れた人も含めて避難民を支援しま アジア大洋州地域では 紛争に端を発する人 した 特に CAR では人道的な取り組みが難航しまし 道ニーズへの対応に加え 中国 インド そして た 反政府武装勢力セレカの元戦闘員とキリスト 日本とは 人道問題および今後の対応策について 教系民兵組織アンチバラカの戦闘は止む気配がな より踏み込んだ対話をすることに重点を置きまし く 全土でコミュニティ間の衝突が先鋭化してい た ICRC にとって南スーダン シリアに次ぐ活動 ます 性暴力を含む一般市民に対する暴力行為 家屋や生計手段の破壊 救援要員に対する武力攻 規模となったアフガニスタンでは 選挙の準備期 撃 その他の国際人道法の侵害が ほぼ毎日行わ 間中も武力攻撃が収まる気配がなく 死傷者の数 れているのが現状です 私たちは 武器を携帯す が増え続けました 傷病者や義手義足を必要と る者に対して暴力行為を止めるよう呼びかけると する患者 被拘束者といった社会的に弱い立場に 同時に 被拘束者を訪問し 国内避難民に対して 追いやられた人に対し 包括的な支援を届けまし 支援物資を配付しました また 一次医療や緊急 た 隣国パキスタンのペシャワールで12月に起き 医療を提供する施設をサポートし 2つの外科 た学校襲撃事件は 住民の苦しみと国が抱える課 チームを派遣しました 題を再び浮き彫りにしました ICRC は パキス DRC やマリ ソマリア スーダンも危機的状 況に見舞われています スーダンでは 2月に当 タン赤新月社の活動を支援しながら現地のニーズ に応えています 局から活動停止を言い渡されたために 2014年の スリランカでは 紛争の負の遺産として残る人 計画の完全な実施には至りませんでした しかし 道ニーズに対応 かつて戦闘が繰り広げられてい 年の後半には当局と合意し 活動が再開されてい た地域では 社会的に弱い立場にいる人々の生計 ます DRC では 東部のコミュニティが攻撃に の立て直しを支援し 被拘束者の訪問や行方不明 晒され続け 何千もの人が家族から引き離され避 の身内を持つ家族のサポートに力を注ぎました 難を余儀なくされる事態が続いています 私たち バングラデシュの一部地域では 現地の赤新月社 は 生活必需品の配付に加えて 病院や医療セン と協力して コミュニティ間の争いや政治がらみ ターを支援 それらには 性暴力の被害者への特 の戦闘に巻き込まれて負傷した人々を治療 また 別なケアを提供する施設も含まれます また 子 緊急支援に加えて 住民の生活再建のため 現金 どもたち 特に武器携帯者とかつて行動を共にし 支給による経済支援を行いました ミャンマーで ていた少年少女を家族と再会させ 再び地域社会 は コミュニティ間の争いや暴力を伴う事態に巻 に戻れるよう支援しました き込まれた人々のニーズに対応し 同国赤十字社 リビアでは体制移行が頓挫し 国が混乱に陥り とともに医療を含めたさまざまな支援を提供 被 ました そのため 職員の安全確保が難しくなり 拘束者の訪問も進み 収容所内の生活環境の向上 国際スタッフは一時的にチュニジアに拠点を移さ に取り組む当局をサポートしました フィリピン ざるを得ませんでした そのため 緊急支援活動 では 同国中部を横断した台風30号による大規模 はリビア赤新月社と協力して現地スタッフによっ な被害に対して 赤十字運動の各パートナーと緊 89

7 密な連携をとりながら 一年を通して緊急支援活 力を伴う事態によって引き起こされる人道上の問 動や初期復興支援活動を実施 その際 前年の台 題に対応し 緊張状態が続く地域の住民に対し 風24号への対応から学んだ教訓が役立ちました て基本的サービスへのアクセスを保障してきまし た 中南米やバルカン諸国 コーカサス地方では ヨーロッパと北米南米大陸 行方不明者の家族に対して分野横断的な支援を実 施しました キューバにあるグァンタナモ米軍基 ウクライナ東部の紛争は 組織にとって最大の 地の収容施設に拘束されている人々を訪問し 複 懸念の一つとなりました 特に 厳しい寒さの冬 数の国地域の収容当局と協力して 施設内の環 に武力衝突が勃発したことで 人道危機の拡大に 境を向上させました ブリュッセル ベルギー やロンドン 英国 拍車がかかりました 私たちは活動の規模を拡大 し 社会的に弱い立場に置かれた人々に手が差し パリ フランス モスクワ ロシア ワシント 伸べられるよう あらゆる関係者と協議しました ン アメリカ合衆国 の代表部は 世間の関心を そうした状況下で 私たちは仲間の一人をドネツ 集めている紛争や議題について 政府当局やシン クで失い 活動を一時中断 年末から再び動き出 クタンクと積極的に意見を交わしました しました 和平協定が結ばれる兆しが見えてきたコロンビ 中東 アですが 一方で 50年にわたって続いた内戦に 苦しむ人がいまだ存在しているのも事実です 私 最大規模の支援活動を行った南スーダンに次い たちは 農村地域における医療サービスの確保や で 二番目の活動規模となったのがシリアです 国内避難民への支援 性暴力の被害者のケアなど 同国およびエジプトやイラク ヨルダン レバノ コロンビア赤十字社とともに緊急長期的支援を ンといった周辺国での活動をサポートするため 行ってきました また 人質の解放や和平交渉に に 年の半ばに追加予算を要求しました シリア おいても 重要な役割を担っています 交渉の舞 アラブ赤新月社と連携し 数百万人を支援 地元 台となったキューバまで コロンビア革命軍の交 の水道局をサポートして1500万人以上 紛争前の 渉担当者に移動手段を提供し 交渉にあたる当事 人口の約65 に安全な水を届け 医療サービス 者に対して国際人道法上の懸念事項を提示し 助 を提供すると同時に シリア全土の50万人以上に 言を行いました 食料と生活必需品を毎月配付し 最近では 紛争 何千もの人が 中米を横断したり 北アフリカ の最前線でも支援を展開しています 訪問した被 や中東からヨーロッパへと避難する途中で命を落 拘束者は限られましたが 武装勢力側に捕らわれ としたりと 大規模な人口移動から生じる人道問 ている人も含めて国内の全ての被拘束者を訪問で 題や 行方不明者の家族のニーズに応えるのも きるよう当事者に働きかけています エジプトや ICRC の仕事です 中継地や目的地となる国に拠 イラク ヨルダン レバノンへ避難を余儀なくさ 点を置く赤十字赤新月社と連携し 家族の連絡 れた人々にも 緊急支援を届けました IS など 回復や 消息を絶った移住者の家族の支援 移動 幅広いネットワークを有する武装勢力と政府軍と 中のリスクや予防策の周知に努めました の衝突が激化しているイラクでは 戦闘によって 北米南米大陸 コーカサス地方 中央アジア 家を後にした人々へ多様なサービスを提供し 数 では 各国赤十字赤新月社とともに 紛争や暴 千もの被拘束者を定期的に訪問 イラクが過去に 90

8 関わった紛争が原因で行方不明になった何万人も 搬送 給水電力システムの緊急復旧作業 何万 の捜索にも携わりました もの国内避難民支援を実施 さらには 敵対行為 政治体制の移行が失敗に終わり 国内全土で戦 の記録を作成して実情を述べ 関係者に対して善 闘が激化しているイエメンでは 喫緊のニーズに 処を要請しました また 武力衝突の収束を受け 対応するだけでなく長期的な視野から人々をサ て 人々の生活再建支援に着手しました ポート 食料の配付や給水トラックの手配 病院 エ ジ プ ト や イ ラ ン ク ウ ェ ー ト な ど に あ る や一次医療センター 身体リハビリセンターへの ICRC 代表部での活動も広範囲におよび 人道問 支援 給水システムの整備など 私たちの活動は 題とその対応策をめぐって対話の場を持ちまし 多岐にわたりました 中立な立場を活かして事態 た に介入し 北部サアダのダマジから負傷者を避難 させ 医療スタッフ 施設を武力攻撃の対象とし 註 ないよう紛争当事者と対話を重ねました 1 ICRC Annual Report 2014, Operational イスラエルとパレスチナ自治区では 2014年夏 Highlights p88-91 にガザ地区で起きた戦闘によりインフラが破壊さ 和 訳 2014年 赤 十 字 国 際 委 員 会 ICRC れ 数多くの死傷者が出るなか 支援プログラム 年次報告 活動ハイライト 88-91頁 を敢行しました パレスチナ赤新月社とともにガ ザ地区に留まり 病院の支援や医療物資器具の 91

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