日本の生産性の弱点 | 第一生命経済研究所

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こうだいうえや
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1 Economic Trends 経済関連レポートの生産性の弱点発表日 :2018 年 6 月 8 日 ( 金 ) ~ 大きく伸びるところを伸ばす発想が大切 ~ ( 注 ) 本稿は主に生産本部の労働生産性の国際比較 (2017 年版 ) を基礎データとしている第一生命経済研究所経済調査部担当熊野英生 ( : ) の生産性を他の G7 諸国と比べるとが最も低いこの図式は新しいものではなく昔からそうだったのである局面比較をすると世界的に好景気のときは差がつきにくいがリーマンショックのような時期にはの低下が大きくなる業種別にはどの国も製造業と情報通信で伸び代を稼ぎサービス卸小売では全体を高めることができていないは情報通信の伸びが鈍くサービス分野でのマイナス幅が大きいことが他国との差をつくっている 1 時間あたり 4,694 円の生産性の時間当たり労働生産性は OECD 加盟国 35 か国中で 2016 年は 20 位 (46.0 ドル購買力平価ドル / 円で換算すると 4,694 円 ) である ( 図表 1) これは (6 位 ) の生産性 (69.6 ドル 7,079 円 ) に対して 2/3 (66.3%) の水準となるしばしばの生産性を上昇させようという話題になるとが G7 の中での生産性は最下位であることが指摘されるこの順位はもっと対象国を広げて世界銀行の 151 か国で調べた 1 人当たり就業者の労働生産性でみても 27 位とさほど変わらない世界銀行のデータではよりも上位にカタールサウジアラビア UAE といった産油国や香港シンガポールのような都市国家がくる OECD ベースでよりも上位にいる先進主要国や他の欧州諸国はやはり世界銀行のデータでもよりも上位なのである筆者が関心があるのはランキングの高さではなくの生産性が他国と比べてどのような課題を抱えているのかという点である働きアイルランドルクセンブルグノルウェーベルギーデンマーク (6 位 ) オランダ方改革が言われて久しいがの生産性を引き上げていこうとするときに何がの生産性を相対的に低い状態にしてきたのかという点は今ひとつはっきりと見据えられていない気がするスイスオーストリアスウェーデンフィンランドオーストラリアスペイン OECD 平均アイスランド ( 20 位 ) スロベニアニュージーランド出所 : 生産性本部 ( 図表 1) 時間当たり労働生産性 ( 2016 年 ) $0 $25 $50 $75 $ OECD 加盟国 35 カ国色付きは G7 諸国購買力平価換算昔からの生産性順位は低かったあまり強調されていない事実だがの生産性がOECD 加盟国の中で順位が低いという状況は今も昔も変わりがない特に時間当たりの生産性で比較すると 1980 年代後半からずっと今まで 19~21 位で低迷しているまたの生産性の水準も対比で 66% 前後であるという関係も一定であるつまりが相対的に低い生産性であるという点は今に始まった訳ではなく昔から課題として改善されてこなかったというこ - 1 -

2 となのだすると次にの生産性は長期不況で伸びが低かったことが海外との差をつくったのではないかという見方が浮かんでくるその点は確かにそうだろうの成長ペースに鈍さがあったことは間違いないそれでも細かく 5 年ごとの成長ペースを確認すると 2000~2004 年 2010 ~2014 年はそれなりに高い伸びを保持している ( 図表 2) この期間には欧米と差はつかなかった問題は 90 年代後半の金融危機や 2005 ~2009 年の間に起こったリーマンショックのときにペースダウンが大きく他の G7 諸国との差がついたことがあると考えられる敗けるときに大きく敗けて勝ったとしても大勝できない図式であるこれからは長期で安定した状態での定常的成長ペースを高めなくてはやとの差を埋めることは難しい 20 年間の累計 (1995~2015 年 ) で計算するととは 12% ポイントとは 9% ポイントカナダとは 5% ポイントの差がついている今後を考えるとは長い目でみた潜在成長率を 0~1% の範囲から 1% 台半ばくらいに引き上げることが課題となろう現在 2016 年のデータではの上位には G7 の中でイギリスがいるとの差は (10.4% ポイント ) (14.6% ポイント ) (17.6% ポイント ) もある潜在成長率を +1% 引き上げても当分は G7 で最下位という順位は少し逆転できそうにないそれでもベースになる潜在成長スピードを引き上げるという課題については変わらないなおもうひとつ課題として注目しておくことは労働時間のことであるやは労働時間当たりの生産性は高いが就業者 1 人当たりでみると順位は下がるこれはの 1 人当たり労働時間が比較的短いということがあるは就業者でみて 1 人当たり 1,713 時間 (2016 年 ) と以前よりも短くなっている雇用者ベースでみると過去 10 年間で 5% も短縮されたここには非正規化の影響もあろう今後が 1 人当たりの労働時間を長くすることを求めていくことができないとすれば非正規労働者を含めて時間当たりの生産性を高めることにフォーカスを絞っていく必要があることは明らかだ働き方改革というスローガンを使うとき労働時間を短くして女性高齢者の労働参加を促すことも大切だが時間当たりの生産性を高める視点もさらに重視すべきことを強調してもよいはずだ 1995 ~1999 年の平均 2000 ~2004 年の平均 ( 図表 2)G7 諸国の期間別生産性上昇 0.7 就業 1 人当たり実質労働生産性の変化率 % ~2009 年の平均 ~2014 年の平均出所 : 生産性本部 (%) (%) 海外と比べたときのの生産性の生産性を知るために業種別に1 人当たり就業者の労働生産性を分析して比較してみた ( 図表 3) G7 諸国の中での生産性は頭ひとつ抜け出しているそのを基準にするとのみならず欧州諸国でさえ色褪せてみえるモデルでは事業のグローバル化を進めてオフショアリングアウトソーシングをして製造コストを下げることを得意とする巨大 IT 企業が自分たちのビジネスの基準をつくってその - 2 -

3 プラットホームを拡大させて事業収益を生むがそれをそのまま真似しようとしてもできないし欧州諸国でも無理だろうモデルとしては特殊だとみられるアウトプットされた生産性ではの 2/3 しかないと言われてもが特殊である以上簡単にに追い付け追い越せとは話を進められない ( 図表 3) 海外諸外国の業種別生産性 1 人当たり就業者の名目生産性ドル 2015 年全体製造運輸情報通信建設卸小売サービス農業 1,191 1,409 1, ,523 1, オーストラリア 1, オランダ , , スペイン韓国ポーランドトルコメキシコ注 : 国連 ILO 資料より筆者作成サービスは表示された業種以外のその他の平均として計算むしろと似ていてよりも生産性を高めることに成功している国の路線を見習う方が現実的だろうまずの特徴は次の 3 点に集約できる (1) 製造業に強みがあるただよりも製造業の生産性が高い国はもっとある (2) 建設卸小売といった内需型は生産性が高くない (3) 運輸通信は資本集約的であり各国ともに比べてより生産性が高いその点は製造業よりも運輸通信の生産性は高いが相対比較ではの方が製造業よりもずっと運輸通信の生産性が高い本当はサービスの生産性を各国比較したいが本表ではサービスの中に他の様々な業種が混在している不動産金融保険もこのカテゴリーに混在していることもあって厳密な分析がしにくい製造業の生産性が高く建設卸小売の生産性が低い点でははに似ている韓国は生産性がトータルで低いがに似ているとも言える韓国は製造業が以上に他のセクターよりも生産性が高くなっているはや韓国のように製造業を牽引役として全体の生産性を伸ばすことはできそうだ製造業だけに絞った生産性の各国別ランキングでは 1990 年代から 2000 年頃まではの製造業は 1 位だったことがある 2000 年代以降 IT 化が進んでいく中で米企業が業界の覇権を握っていき対照的にはそれまでの存在感を低下させていった高齢化という重荷の建設卸小売の生産性が低い点はどのように考えればよいのだろうかこの点は内需の弱さだと言い換えることができる卸小売に注目するとの内需は高齢化によって高い成長を望むことができない現在勤労者の賃上げを進めることで個人消費のパイを膨らまそうとしているただ勤労者の消ギリシャスウェーデンスペインオーストリアスイスオーストラリアロシア韓国台湾タイ中国メキシコ ( 図表 4)65 歳以上人口が人口全体に占める割合出所 : 国連 2017 年の中位推計 (%)

4 費は全体の約半分であり残りの半分は年金に主な所得を依存させるシニア層であるだから自ずと個人消費のパイは成長力が限られる各国の 65 歳以上の人口比率を見比べるといかにの内需に逆風が吹いているかがわかる ( 図表 4) このデータだけではわかりにくいが高齢化が進むとどうしても社会保障分野に雇用がシフトしていく流れになる医療福祉介護分野では長期時系列でみると緩やかに1 就業者当たりの生産性が低下しているの場合財政再建の要請もありシニアに給付される社会保障の支援を無制限には拡大できないそうした縛りが生産性のところにも響いてきているのだろうなおこの分野ではどこの国も生産性を高めることに成功できていない情報通信のメリット 2000 年代に入って IT 化が大きなテーマになったことは周知の事実であるでも IT 革命だと騒がれたその効果が生産性上昇という成果に結びついたかどうかは情報通信製造業金融保険サービスなど多岐に亘って調べる必要がある本稿ではそこまで厳密なことができないので情報通信に絞って考えると各国とも 2000 年代頃から情報通信で目立った生産性上昇があった 1995~2015 年で年平均した生産性上昇率は 5.4% 4.2% 3.2% 3.1% と高かった ( 図表 5) それに比べるとは 2.4% と低い IT 化のメリットをは他の G7 諸国に比べて追い風として十分に享受できていないところは残念なところである G7 諸国における生産性の牽引役として共通しているのは製造業と情報通信である建設卸小売不動産はいずれも伸びが低調である教育社会福祉サービスと娯楽対個人サービスはほとんど伸びないかマイナスであるはこうした伸びが期待しにくいサービス分野で他の G7 諸国よりも生産性を落としてしまっている多くの研究者はの生産性問題はサービスの生産性が伸びないしその水準が低いことを指摘するまた雇用拡大がサービスに集中していることもウエイトの変化として全体の生産性の押し下げに寄与していると言える本稿ではそうした通説だけでは説明が十分ではないことを強調したいまとめると (1) 他国が情報通信で生産性を伸ばしているときには他国ほど生産性を伸ばせなかったこと (2) 製造業はだけでなく他国も生産性を伸ばしていてはそこで他国と差をつけられなかったこと (3) どの国も内需型の卸小売や不動産教育社会福祉サービス娯楽対個人サービスでは全体を大きく押し上げられずにいるはそうした中高齢化の進行もあって教育社会福祉サービスと娯楽対個人サービスが足を引っ張る傾向が強まっている ( 図表 5)G7 諸国の業種別生産性上昇率 1 人当たりの実質労働生産性購買力平均換算ドルの変化率 % 1995~2015 年の平均全体製造建設卸小売情報通信金融保険不動産 ~2015 年の平均出所 : 生産性本部こうした差が他の G7 諸国との間にあることがにとってより明確に意識されるべき論点と言える先に時系列でみてリーマンショックのようなマイナス成長期には他国より生産性のマイナス幅が大きいことを指摘したなぜそうなるのかと言えばグローバルなショックで製造業が下押しされるときに他の内需部門がそのマイナスインパクトを吸収することができないからだろうは高齢化などを背景にそうした地力が乏しいそれが敗けるときには大きく敗ける原因となっている教育社会福祉サービス娯楽対個人サービス働き方改革は政治的には大切かもしれないがより分析的な視点で考えると 1 国の生産性を引き上げるには農業 - 4 -

5 産業育成も重要になるでは牽引役として製造業と情報通信という 2 分野をもっとパワフルにして両輪で全体を押し上げていく発想が不可欠となる政策面で強みを活かすためにもっと分析的な処方箋を構想することが望まれる - 5 -

国民 1 人当たり GDP (OECD 加盟国 ) ( 付表 2)OECD 加盟国の国民 1 人当たりGDP(2002~2009 年 ) 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 1 ルクセンブルク 58,709 ルクセンブルク 59,951 ルクセンブルク 64,016 ルクセンブル

国民 1 人当たり GDP (OECD 加盟国 ) ( 付表 1)OECD 加盟国の国民 1 人当たりGDP(1970 年 1975 年 1980 年 1985 年 1990 年 1995 年 2000 年 2001 年 ) 1970 年 1975 年 1980 年 1985 年 1 スイス 7,160 スイス 10,041 スイス 15,492 スイス 21,046 2 ルクセンブルク 5,447