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1 表面プラズモン共鳴免疫センサによる 爆薬成分の高感度検出 2014 九州大学大学院システム情報科学府 電気電子工学専攻 矢田部塁

2 目次 第 1 章序章 諸言 本研究における背景と目的 主な爆薬成分 バイオセンサ 表面プラズモン共鳴 (SPR) センサ 表面プラズモン共鳴 (Surface Plasmon Resonance ; SPR) SPR センサ SPR センサの特徴 本研究で用いた SPR センサと実験方法 自己組織化単分子膜 (SAM) SAM の作製方法 SAM の自己組織化メカニズム及び特徴 アミンカップリング反応 抗原抗体反応 抗体 抗体の作製方法 本論文の構成 i

3 第 2 章 爆発物の検出方法 諸言 爆発物探知装置に求められる性能 高感度検出についての検討 測定方式 間接競合法 置換法 タンパク質の非特異吸着 測定に影響を及ぼすその他の要因 章のまとめ 第 3 章 RDX の高感度検出 諸言 RDX 抗体の作製 センサ表面の作製 RDX の高感度検出 章のまとめ 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 諸言 ii

4 4.2 ポリビニルアミンの作製 ポリビニルアミンを用いたセンサチップの作製 ポリビニルアミン ポリビニルホルムアミド共重合体の作製 ポリビニルアミン ポリビニルホルムアミド共重合体を用いた 非特異吸着性抑制 TNT の高感度検出 章のまとめ 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いた センサ表面による TNT の高感度検出 諸言 原子移動ラジカル重合 諸言 特徴と反応メカニズム 還元剤による触媒の再活性化プロセス 重合反応に影響を与える要因 表面開始原子移動ラジカル重合 センサ表面の作製方法 MES と DEAEM による混合ポリマー表面 混合ポリマーによるセンサ表面の作製 モノマー混合比と非特異吸着性評価 混合 SAM による親和性制御 iii

5 5.4.4 TNT の高感度検出 まとめ MES と HEMA による混合ポリマー表面 混合ポリマーによるセンサ表面の作製 モノマー混合比と非特異吸着性評価 モノマー混合比による親和性制御 TNT の高感度検出 まとめ 章のまとめ 第 6 章本論文のまとめ 本研究の総括 今後の課題と展望 謝辞 参考文献 iv

6 表目次 表 1-1 主な爆薬成分... 6 表 2-1 間接競合法の定式化に用いたパラメータ 表 3-1 各種物質と RDX 抗体との結合能力 表 3-2 各センサチップの非特異吸着評価 表 3-3 間接競合法の測定条件と検出限界 表 5-1 MES:DEAEM モル比最適化 表 5-2 混合 SAM による poly-mes-co-deaem 表面の抗体結合量 表 5-3 混合 SAM ポリマー表面と抗体の親和性 表 5-4 センサ表面毎の検出限界 表 5-5 poly-mes-co-hema 表面の ATRP 反応条件 表 5-6 混合ポリマーの混合比と親和性 表 5-7 混合ポリマー表面の検出限界 v

7 図目次 図 1-1 RDX および TNT の化学構造... 5 図 1-2 空気と金属表面の分散関係 図 1-3 クレッチマン配置 図 1-4 クレッチマン配置での金属表面の分散関係 図 1-5 入射角度と反射光強度 図 1-6 SPR センサの光学系とフローセルの断面図 図 1-7 GE Healthcare 製 Biacore J の構成 図 1-8 Au 表面へのアルカンチオール SAM の吸着サイトと断面図 図 1-9 表面への機能性官能基の導入 図 1-10 アミンカップリングのメカニズム 図 1-11 IgG 抗体の構造 図 1-12 抗体の親和性 図 2-1 間接競合法のセンサグラムと実験の様子 図 2-2 抗体と類似物質の親和性と結合率の関係 図 2-3 抗体濃度と結合率の関係 図 2-4 置換法のセンサグラム 図 3-1 RDX およびその類似物質の構造 図 3-2 RDX の検出のためのセンサ表面の作製 図 3-3 間接競合法による RDX の検出実験のセンサグラム 図 3-4 RDX 濃度とセンサ出力の検量線 図 4-1 ポリビニルアミンの作製ステップ vi

8 図 4-2 VA 図 4-3 ポリビニルアミンを用いたポリマー表面の作製工程 図 4-4 poly-vam 表面と EDA 表面の SPR センサグラム 図 4-5 poly-vam 表面への TNT 抗体 ビオチン抗体吸着量 図 4-6 poly-vam 表面の非特異吸着性評価 図 4-7 各加水分解条件における FTIR スペクトルデータ 図 における加水分解時間と加水分解率 図 4-9 加水分解率とゼータ電位の関係 図 4-10 TNT 抗体とビオチン抗体の吸着量比較 図 4-11 TNT 抗体とビオチン抗体の吸着量の比率 図 4-12 間接競合法による TNT 濃度と結合率の検量線 図 5-1 ATRP 反応の反応式 図 5-2 ATRP 反応状態遷移図 図 5-3 AGET-ATRP 反応状態遷移図 図 5-4 アスコルビン酸による還元作用 図 5-5 触媒と還元剤の比を変化させた時の重合反応 図 5-6 有機分子の構造と反応定数 KATRP の大小関係 ( 計算 ) 図 5-7 配位子の構造と反応定数 KATRP[ M -1 s -1 ] 図 5-8 SI-(AGET)ATRP を用いた SPR センサチップの作製手順 図 5-9 センサ表面の作製に用いたモノマーの構造 図 5-10 poly-mes-co-deaem 表面の非特異吸着評価 図 5-11 DTBU と HEg3UT の構造 図 5-12 混合 SAM ポリマー表面と抗体の解離速度定数と検出限界 図 5-13 各 TNT 濃度における抗体結合率の検量線 vii

9 図 5-14 センサ表面の作製に用いたモノマーの構造 図 5-15 poly-mes-co-hema ポリマー表面の非特異吸着評価 図 5-16 poly-mes-co-hema センサ表面での間接競合法のセンサグラム例 図 5-17 一価結合, 二価結合の模式図 ( 仮説 ) 図 5-18 モノマー組成と解離速度定数及び検出限界 図 5-19 MES:HEMA=1:100, 1:1000 の検量線 図 6-1 抗原応答性ポリマー表面 viii

10 第 1 章序章 第 1 章序章 1.1 諸言 近年, 爆発物の脅威が増している. 特に 2001 年 9 月 11 日のアメリカ同時多発テロ以降, 世界では爆弾を使用したテロ事件が頻発し多くの人々が犠牲になっている. このような事件では空港や駅, ショッピングモールなどの人が集まる場所に爆弾が仕掛けられる. この様な事件を防ぐために数多くの監視カメラ等が設置されている. しかし事件後の真相究明には役立っているが予防には必ずしも効果的ではない. この様な問題を解決するためには爆発物の匂いを簡単かつ高精度に検出できる装置が必要となる. そのような装置が監視カメラの様に多数設置されれば爆発物の運搬を検出できるため爆発物を使用した犯罪行為を予防できると考えられる. その様な装置を開発する上で本研究では表面プラズモン共鳴と抗原抗体反応という二つの原理を組み合わせた表面プラズモン共鳴免疫センサに注目し, そのセンサ表面の研究開発を行った

11 第 1 章序章 1.2 本研究における背景と目的 目標とする爆発物検出装置に求められる性能には第一に高感度 高信頼性がある. 爆発物の様な低分子量有機物質の測定方法として一般的に用いられるのはガスクロマトグラフィ質量分析装置 (GC-MS) や高速液体クロマトグラフィー (HPLC) などがあげられる. これらの分析は適切な装置と手順を用いて熟練者が行えば高感度 高信頼性を実現できるが, 測定には時間がかかる. また測定による得られるデータが複雑なためにその解釈に熟練を要する. その他にはニトロ化合物や硝酸エステルなどの爆薬分子は電子親和力が高いことを利用してイオン化した上でイオンモビリティ検出器 (IMS) や質量分析器 (MS) で検出する方法もある 1). またこの爆発物検出装置は空港や商業施設, イベント会場などでの使用が想定されるため, 求められる性能として低コスト 可搬性 測定の簡便性などもある. これらを総合して鑑みると爆発物探知犬を用いる方法が現在では合理的であるといえる. その為, 爆発物探知犬の機能を代替する装置が開発できれば実用に足りる爆発物検出装置が開発できると考えられる. これらの性能を満たすべく我々は表面プラズモン共鳴という現象を用いた表面プラズモン共鳴センサ (SPR センサ ) と抗原抗体反応に注目した. この SPR センサではセンサ表面の屈折率変化を高感度に検出できる. このためセンサ表面でなんらかの物質の吸着などの物理的 化学的な変化が起こるとそれに伴う表面の屈折率変化を SPR センサでは検出できる. 屈折率変化を測定しているに過ぎないのでセンサ応答としては単純なデータが得られるが, その一方で吸着している物質の種類やなぜその屈折率変化が起こっているのかを SPR センサ単体で解明することはできない. そこで生物が持つ異物認識機能である抗原抗体反応と組み合わせる. 抗原抗体反応を担う抗体は特定の物質を認識する選択性 - 2 -

12 第 1 章序章 に優れるため, その原理を用いれば信頼性の高い測定が可能となる. 一般に抗原抗体反応を利用して特定の物質の検出を行う場合, 抗体に蛍光体などの標識を行う必要がある. しかし SPR センサと組み合わせることでその様な操作も不要となる. そしてセンサ表面に抗原抗体反応を起こす様な仕組みを作ることで抗原抗体反応を屈折率変化として高感度に検出可能なセンサを作ることが出来る. この SPR 免疫センサを用いれば高感度 高信頼性 測定が簡便 装置が低コストという特徴をもつセンサを開発できると考えられる. 我々の研究室ではこの SPR 免疫センサを用いて様々な物質の高感度検出を行っている. 爆発物に関しても TNP, TNT, DNP, RDX などの複数種類の検出を行っている 2-10). また装置を試作し拭き取りによって TNT を回収し 1 分以内に検出可能であることを実証している 11). 本研究においては主に高感度化を目標にセンサ表面の開発を行った. 高感度な測定が可能になることでセンサとして高度化するだけでなく, 測定時間の短縮にもつながる. 本研究ではポリマー表面を用いてセンサの高感度化を目指した. 我々の従来のセンサでは抗原抗体反応を起こすサイトをセンサ表面上に二次元的に配置してきた. 一方, SPR センサが利用する表面プラズモン共鳴による共鳴電場は表面から指数関数的に減少しながら約 100nm の範囲に広がっており, SPR センサではこの範囲の屈折率変化を検出することが出来る. そのため抗原抗体反応の反応場を三次元的に配置できれば反応場の増加により信号の増強が可能となると考えられる. 本研究ではポリマー上に抗原抗体反応の反応場を固定することでこの三次元化を試みた

13 第 1 章序章 1.3 主な爆薬成分 爆薬は軍用のほか鉱山や工事現場などでも用いられている. その一覧を表 1-1 に示す 12). この様に爆薬は分子内に硝酸塩, 硝酸エステル結合, ニトロ基, ニトラミン類などを持つ物が多い. 特に芳香族ニトロ化合物は軍用爆薬として用いられる. 本研究ではその中で RDX と TNT の検出を行う. 以下にその物性を示す. TNT ; 2,4,6-trinitrotoluene 分子量:227 結晶 : 淡黄色柱状昌 融点 :80.7 溶解度:130 g/ml ( 水 20 ) 12.3mg/ml (95% エタノール 20 ) ベンゼン, エーテルに易溶 RDX ; research department explosive (1,3,5-trinitroperhydro- 1,3,5-triazine) 分子量:222 結晶 : 無色結晶 融点 :205.5 RDX および TNT の化学構造を図 1-1 に示す

14 第 1 章序章 TNT ; 2,4,6-trinitrotoluene RDX ; research department explosive (1,3,5-trinitroperhydro- 1,3,5-triazine) 図 1-1 RDX および TNT の化学構造 - 5 -

15 第 1 章序章 表 1-1 主な爆薬成分 12) 化合物の種類 化合物名 略号 含有する主な爆薬名 ニトログリコール EGDN ダイナマイト液体爆薬 ダイナマイト 硝酸エステル ニトログリセリン NG 無煙火薬液体爆薬 ペンスリット PETN プラスチック爆薬 ニトロセルロース NC ダイナマイト無煙火薬 硝酸アンモニウム AN 硝安油剤爆薬含水爆薬 硝酸塩 硝酸カリウム 黒色火薬, 玩具煙火 硝酸ナトリウム 含水爆薬 硝酸尿素 UN 手製爆薬 塩素酸塩 塩素酸カリウム黒色火薬, 玩具煙火塩素酸ナトリウム手製爆薬 過塩素酸塩 過塩素酸カリウム黒色火薬, 玩具煙火過塩素酸アンモニウム AP ロケット推進薬 ジニトロトルエン DNT ダイナマイト 2,4-ジニトロフェノール 2,4-DN Ph 爆薬原料 ニトロ化合物 トリニトロトルエン TNT 軍用爆薬 テトリル Tetryl 軍用爆薬 ピクリン酸 PA 軍用爆薬 ニトロメタン NM 液体爆薬 ニトラミン ヘキソーゲン RDX プラスチック爆薬オクトーゲン HMX プラスチック爆薬 探知剤 2,3-ジメチル-2,3-ジニトロブタン DMNB プラスチック爆薬 可燃物 硫黄 S 黒色火薬, 玩具煙火 有機過酸化物 トリアセトントリパーオキサイド TATP 手製爆薬ヘキサメチレントリパーオキサイドジアミン HMTD 手製爆薬 - 6 -

16 第 1 章序章 1.4 バイオセンサ 生物起源の分子認識機構を利用したセンサで酵素や特定の受容体タンパク質を用いたものや免疫システムや微生物を用いたものもある. これらは特定の分子や構造に対して選択的な親和性を持っており目的物質と相互作用することで構造が変化したり化学的なポテンシャルが変化したりする. 良く用いられている ELISA (Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay) では蛍光体や酵素または放射性同位体で標識された抗体を使用して目的物質の定量を行う. 標識された抗体が目的物質と相互作用を行い, 抗体の標識物質を発色や発光, 放射線を測定にて定量することで目的物質の定量を行っている. 一方でこの様な抗体の標識を必要としない方法として SPR (Surface Plasmon Resonance) 法や QCM(Quartz Crystal Microbalance) 法がある. SPR 法においてはセンサ表面への物質の吸着に伴う表面の屈折率変化を共鳴角変化として出力し, QCM 法においては水晶振動子電極表面での質量変化を共振周波数変化として出力している. 本研究においては抗原抗体反応を SPR センサで検出した. この時用いる抗体は目標物質の構造を認識できるため高い選択性を持っているだけでなく高い親和性も有しており, これにより高感度測定も可能となる. これらの反応を高感度な屈折率計である SPR センサによって検出を行う. SPR センサの詳しい原理について次に述べる

17 第 1 章序章 1.5 表面プラズモン共鳴 (SPR) センサ 表面プラズモン共鳴 (Surface Plasmon Resonance ; SPR) 13) プラズマとは荷電粒子が雲のように分布し自由に動き回ることが出来る状態を指す. 一般的には気体が電離した状態を指し, 太陽の様な恒星や雷の様なものから蛍光灯の様な放電管の内部もプラズマとなっている. 一方で金属では自由電子が存在し内部を自由に動くことが出来るため, 金属での自由電子も一種のプラズマといえる. この自由電子は瞬間的にみると密度が高い部分と低い部分が存在し, それぞれが負と正に帯電するため疎密波として振動している. この様な電子の集団での疎密波を量子化する場合, これをプラズモンと呼ぶ. この疎密波は縦波であるため横波である電磁波とは電場の向きが異なり結合しない. しかし金属の表面では状況が異なる. 真空中に金属の表面がある場合を考える. この場合, 電子の疎密波によって真空中にそれに応じた電磁波が染み出ることになる. この様にプラズモンの伝番に付随して表面に電磁波が現れる時, これを表面プラズモン ポラリトンと呼ぶ. 一般にはポラリトンは省略され表面プラズモンと呼ぶ. この表面プラズモンは常に電磁波 ( 光 ) を伴うがこの電磁波は遠方へは伝番されないため, 目では観察されない. 表面プラズモンは横波であるため外部からの電磁波と結合可能であるが, 通常の光とは結合しない. 表面プラズモンがフォトンと結合するためにはエネルギーが一致するだけでなく運動量も一致している必要がある. これは波に置き換えると振動数と波数で, これらの関係を分散関係と呼ぶ. 真空中での金属表面におけるフォトンと表面プラズモンの分散関係を図 1-2 に示す. 光の振動数 - 8 -

18 第 1 章序章 を, 波長を λ, 角振動数を, 波数を k, 光の速度を c とすると, 真空中の光の 分散関係は次の式になる. c = νλ = ω k λ = ω 2π, ν = 2π k (1.1) この式より と k の関係は係数が光速 c の比例関係となるので図 1-2 の分散関係 は直線となる. 一方で表面プラズモンの分散関係は次の式になる. k = ω c ε m (ω) ε s(ω) ε m (ω) + ε s (ω) (1.2) εm は金属の誘電率でεs は金属の接している物質の誘電率となり, 真空の場合はεs=1 となる. この様に二つの分散関係は =k=0 以外で交わることはなく, 表面プラズモンの分散関係は光の分散関係の右側に現れる. その為, 通常の光と表面プラズモンは共鳴しない. 次に屈折率 n のプリズムを使用して図 1-3 の様な光学系の場合を考える. その時の分散関係を図 1-4 に示す. 金属に接している物質の誘電率はプリズムの誘電率になるため光の分散関係は傾きが c/n となり表面プラズモンの分散関係も右側に傾くが, それでも両者が交わることはない. 一方で臨界角以上の角度でプリズム側から金薄膜に光を入射するとプリズム 金薄膜界面で全反射が起きる. この時, 入射側の反対側にエバネッセント場が形成される. このエバネッセント場による光は図の縦方向には伝搬することなく, その電界強度は距離に対して指数関数的に減衰し, 目では観察することはできない. このエバネッセント場の分散関係は図 1-4 の通りで通常の光の分散関係に対して右側に位置し, 表面プラズモンの分散関係と交わる点を持つ. よってエバネッセント場を利用することで表面プラズモンが励起可能となる. この時エバネッセント場に影響を与えるのは p 偏向 (TM 波 ) のみで共鳴が起き - 9 -

19 第 1 章序章 ているときの波数と角振動数を ksp, ωsp とすると次の式になる. k sp = ω sp c n sinθ (1.3) このように臨界角以上で入射光の入射角度 θ を変化させることでエバネッセン ト波の分散関係を表面プラズモンの分散関係と一致させて表面プラズモン共鳴 を起こすことが出来る. 角振動数 光の分散関係 ( 傾き :c) 表面プラズモンの分散関係 図 1-2 空気と金属表面の分散関係 波数 k

20 第 1 章序章 エバネッセント場 θ 表面プラズモンによる電場 金薄膜 (40~50nm) プリズム 入射光 反射光 図 1-3 クレッチマン配置 エバネッセント波の分散関係 角振動数 sp 光の分散関係 ( 傾き :c) 光の分散関係 ( 傾き :c/n) 表面プラズモンの分散関係 k sp 波数 k 青線 : 空気 金属界面の分散関係 赤線 : プリズム 金属界面の分散関係 図 1-4 クレッチマン配置での金属表面の分散関係

21 第 1 章序章 SPR センサ 高屈折率なプリズムを介して金薄膜上に臨界角以上の角度で光を入射すると 薄膜 プリズム界面で全反射が起きる. そのため反射光を測定すると強い光強度 が得られる. 一方で入射角度を変化させ表面プラズモン共鳴の条件が整うと入 射光のエネルギーは表面プラズモンの励起に使用され, 反射光強度は弱くなる. そのため入射角と反射光強度の関係は図 1-5 のようになる. 表面プラズモンの 分散関係は式 (1.2) からわかるように金属とその表面の誘電率に依存している. SPR センサで測定を行う際, 金属自体の誘電率は測定中に変化することはない ため一定と考えると, 表面プラズモンの分散関係を決定づけているのは表面の 誘電率となる. この表面の誘電率変化の影響を受ける表面プラズモンの分散関 係に対して入射光の角度を変化させてエバネッセント波の分散関係を一致させ ると共鳴させることが出来る. この時の角度を共鳴角と呼ぶ. この共鳴角の変 化はすなわちセンサ表面の誘電率の変化と等しくなる. この共鳴角を高精度に 求めることが出来れば表面の誘電率変化を高感度に検出できる. 反射光強度 共鳴角 入射角度 [ ] 図 1-5 入射角度と反射光強度

22 第 1 章序章 SPR センサの特徴 SPR センサでは何らかの方法で共鳴角を測定する必要があるが, 一般的に行われているのはクレッチマン配置の光学系で, 入射光を楔状にして反射光を映像素子で検出する方法である. その概略を図 1-6 に示す. 入射光を楔状にすることで入射角度が連続的に変化する様々な光線を同時に入射でき, 反射光を映像素子で観察すると共鳴角にあたる光線は吸収されるため画像の特定の場所に暗線が現れる. この暗線が現れる場所を画像処理で求める事で共鳴角を測定できる. この様に共鳴角を画像として測定できるためリアルタイム測定が可能になる. この表面の誘電率変化を高感度にリアルタイムで測定できる特徴を生かして物質の表面への吸着などをリアルタイムに測定できる. このためタンパク質間の相互作用や生物由来物質を用いた測定などにも用いられる. 一般にこれらの物質を測定する場合は蛍光体や放射線マーカーなどを用いて物質に標識を行い, この標識を手掛かりに測定を行う. しかし SPR センサの場合は相互作用をする物質の一方をセンサ表面に固定することでもう一方との相互作用 ( 吸着 ) を直接検出可能であるため, 標識が必要とならない. また測定が行われるのはセンサ表面の極近傍の領域の誘電率変化であるため, 測定に必要な検体の絶対量も微量で済む. これは非常に高価で大量に準備できない場合も多い生物由来物質の測定においては利点であることが多い. これらの特徴から表面プラズモン共鳴自体は極めて物理的な現象であるにもかかわらず SPR センサは生化学の分野で多く用いられる

23 第 1 章序章 フローセル 金薄膜 (40~50nm) プリズム SPR の吸収による暗線 点光源 入射光 反射光 図 1-6 SPR センサの光学系とフローセルの断面図

24 第 1 章序章 本研究で用いた SPR センサと実験方法 本研究においては GE ヘルスケア製 BiacoreJ を用いた. その構成を図 1-7 に示す. この装置はクレッチマン配置の光学系を持ち測定を行うセンサ表面上はフローセルになっており, 溶液をその流路に流通させることで測定を行う. フローセルのサイズは L:2.4mm, W:0.5mm, H:0.1mm である. また共鳴角測定の分解能は 10-4 であり, これはタンパク質の吸着量に換算すると 1pg/cm 2 の吸着量にあたる 14). フローセルでの実験にはランニングバッファとして HBS-T 溶液を用いた. HBS-T 溶液は 10 mm HEPES(2-[4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazinyl]-ethane sulfonic acid), 150 mm NaCl, 0.005vol% Tween 20 の混合溶液で ph=7.4 であった. 測定は 25 で行われた. 流速は 10 l/min または 30 l/min が用いられた. 図 1-7 GE Healthcare 製 Biacore J の構成

25 第 1 章序章 1.6 自己組織化単分子膜 (SAM) 15,16) 自己組織化単分子膜 (self-assembled monolayer; SAM) とは金属基板やシリコン基板などを溶液に浸漬することでその表面上に形成される単分子膜である. 本研究においては金属 ( 金 ) 基板をチオールまたはジスルフィド化合物の溶液に浸漬することで金属 チオール結合を用いて自動的に表面に形成されるものを指す. この単分子膜は配向性が高く, また金属 チオール結合の強さも静電相互作用と共有結合の中間程度と比較的安定であるため, バイオセンサの表面修飾技術として良く用いられる SAM の作製方法 SAM を作製するには基板となる金属またはその薄膜が付いた基板を洗浄し表面の有機物の汚染を取り除く. 次にチオールまたはジスルフィドを持つ化合物のエタノール溶液 ( 濃度 1 mm 程度 ) に基板を浸漬する. するとチオール 金属結合を介して表面の金属元素と結合する. この反応は速く最初の数秒から数分で金属の表面はほとんど覆われるが, この段階では分子の配向性が低く, 膜として安定ではない. その後, 約 24 時間程度で分子の配向性が高く緻密な単分子膜が形成される. 反応は室温付近で行われることが多い. この様な膜の分子は金表面で ( 3 3 )R30 構造をしており, その構造を図 1-8 に示す通り表面に対して垂直から約 30 傾いて形成されている

26 第 1 章序章 Au S 30 図 1-8 Au 表面へのアルカンチオール SAM の吸着サイトと断面図 SAM の自己組織化メカニズム及び特徴 SAM が自己組織化されるメカニズムのドライビングフォースは複数存在する. 第一は硫黄と金属間の親和性である. 硫黄 金属の相互作用は約 45kcal/mol で, 準共有結合レベルの安定な結合が形成される ( 炭素 炭素間の強さは約 83kcal/mol). 次に重要なものは SAM の分子のアルキル鎖同士に働くファンデルワールス力による疎水性相互作用である. この相互作用は分子を表面から垂直に対して傾けることで表面エネルギーを最小化させることができる. またこの相互作用はアルキル鎖がある程度長い場合に現れ, 一般に炭素鎖が 10 以上でこの相互作用が顕著になる. またこの効果のため複数種類の SAM 試薬を混合して SAM を形成した場合, アルキル鎖が長い方の分子が優先的に吸着し, 試薬の混合比と SAM 中の化合物の混合比は同じにならない. これらの事を勘案すると

27 第 1 章序章 炭素鎖が 10 以上のアルカンチオール ( またはビスアルカンジスルフィド ) 化合物を用いることで安定な SAM を形成できる. SAM では単分子膜が表面に高い配向性で形成されることを利用して表面に様々な機能を導入できる. これはチオール基とはアルキル鎖を介して逆側に機能性官能基を持つアルカンチオール化合物を用いることで達成できる. この時の模式図を図 1-9 に示す. R の部分の官能基を変化させることで様々な表面を作ることが出来る. 例えばメチル基の場合であれば疎水性の表面を作ることが出来, ヒドロキシル基の場合であれば親水性の表面を作ることが出来る. アミノ基やカルボキシル基を用いれば他の化合物やタンパク質などを固定できる表面を作ることが出来る. この様に様々な官能基を末端に持つチオール化合物を用いることで様々な機能性表面を作製することが出来る. R= H, CH, NH 2, CH 3,...etc Head Group R R R S S S Substrate Thiol C 13 チオール 図 1-9 表面への機能性官能基の導入

28 第 1 章序章 1.7 アミンカップリング反応 17) 本研究ではセンサ表面の作製にアミンカップリング反応を用いる. この反応を利用すると一級のアミノ基とカルボキシル基を結合させてアミド結合を作ることが出来る. すなわちアミノ基を持つ化合物とカルボキシル基を持つ化合物を結合させることが出来る. 一例を挙げるならばカルボキシル基を SAM によってセンサ表面に導入した場合, このアミンカップリングによってアミノ基を持つ類似物質をセンサ表面に導入できる. このアミンカップリングの反応機序を図 1-10 に示す. このアミンカップリングに用いる試薬は他にもあるが本研究では N ヒドロスクシンイミド (N-hydroxysuccinimide; NHS) と EDC(1-Ethyl-3-[3-imethylaminopropyl]carbodiimide HCl) を用いている. カルボキシル基を持つ化合物と NHS/EDC 混合液を混合するとまず EDC とカルボキシル基が反応する. この反応は速いが得られた中間体の寿命も短く水により加水分解される. また一部の中間体はそのまま一級アミンと反応しアミド結合を作る. カルボキシル基と EDC の中間体は NHS と反応し NHS エステルを作る. この NHS エステルも加水分解を受けやすいが, 水を避ければ比較的安定である. 次にこの NHS エステルに脱プロトン化した一級のアミンが反応しアミドを形成する. ここで重要なのは反応する一級アミンは脱プロトン状態であることである. すなわち水溶液では反応は酸性よりもアルカリ性で起きやすくなる. しかし強アルカリ性では NHS エステルが加水分解を受けやすくなる. そのため低分子同士のアミドを作る場合は ph=8.5 程度の水溶液を用いる. また NHS や EDC は水の影響を受けやすいのでその水溶液は冷凍状態で保存する必要があり, 使用直前に常温に戻し, 常温に戻した後は速やかに使用されるべきである

29 第 1 章序章 赤 : 原料 ( アミノ基 カルボキシル基 ) 青 : 生成物 ( アミド ) 橙 : 中間体緑 : カップリング剤 (NHS/EDC) 紫 : 副生成物 図 1-10 アミンカップリングのメカニズム

30 第 1 章序章 1.8 抗原抗体反応 生物は体内に侵入した異物に対応するために様々な防御機構を持っている. その中で脊椎動物は複雑な防御機構を持っており, これを免疫と呼ぶ. この免疫システムの中で異物を認識し, これらを排出したり無害化したりするために働く免疫反応を抗原抗体反応と呼ぶ. この抗原抗体反応の主役は抗体タンパク質で, 免疫系は様々な種類の異物に対応した抗体を持っている. この抗体に対応する異物を抗原と呼ぶ. この抗体の抗原に対する認識能力を用いて様々なバイオセンシングに用いられている 抗体 抗体は体内に侵入した異物に対して B 細胞が産生するタンパク質で, その異物 ( 抗原 ) に対して特異的に結合することで異物の毒性を無力化したり体外への排出の手助けをしたりする. 抗体はイムノグロブリン (Ig) と呼ばれ, 可変領域と定常領域に分けられる. 可変領域は抗原結合にかかわる部分で, 抗体によって様々な多様性を持つ. 定常領域は抗体の種類によって IgG, IgM, IgA, IgD, IgE に分類できる. ここでは最も多く本研究で用いる IgG について述べる. IgG は 4 本のポリペプチドがジスルフィド結合を介して接続された構造を持ち, その可変領域と定常領域はそれぞれ Fab(fragment, antigen binding) 領域と Fc(fragment, crystallizable) 領域と呼ばれる. その模式図を図 1-11 に示す. IgG 抗体は2つの Fab フラグメントの先端で分子を認識し特異的な吸着を起こ

31 第 1 章序章 すことが出来る. 抗体は通常, 分子量約 5000 以上の高分子の異物に対して産生される. しかし単一の抗体は高分子全体の構造を認識しているわけではなく, 高分子のごく一部の構造を認識して吸着する. 抗体が認識する抗原部位をエピトープと呼ぶ. 抗体はファンデルワールス力, 静電相互作用, 水素結合, 芳香族性相互作用などの非共有結合を用いて抗原を認識している. これは抗原を鍵とするならば対応する鍵穴の様な関係で表すことが出来る. その為, 抗原によく似た構造を持つ部位にも結合してしまう特徴がある. この時, 抗体は抗原と結合するがその親和性は弱くなる. この様な様子を図 1-12 に示す. この様に抗体は抗原の小さな領域の化学構造を認識して抗原と結合している

32 第 1 章序章 C H 2 C H 3 S S S S C H 2 C H 3 図 1-11 IgG 抗体の構造 抗体の抗原結合サイト 抗原 親和性が高い場合 親和性が低い場合 図 1-12 抗体の親和性

33 第 1 章序章 抗体の作製方法 18) 脊椎動物の体内に異物が侵入すると免疫細胞の一つの B 細胞によって抗体は産生される. B 細胞は多種多様の種類の物が存在し, 一種類の B 細胞は一種類の抗体を作成することが出来る. 異物が侵入した際, その異物の化学構造に対応可能な抗体を産生できる B 細胞が増殖し, 抗体を産生する. 抗体はその異物の分子量が約 5000 以上の時に産生される. しかし抗体のエピトープ部位は異物の小さな領域であるため, そのような異物に対しては複数種類の抗体が産生される. 抗体は作製方法でポリクローナル抗体とモノクローナル抗体に分けられる. ポリクローナル抗体は免疫原となる物質を動物に注射して抗体を産生させた後にその血漿中の抗体を精製して得られる抗体である. 抗原に対して複数種の抗体を持つため親和性が高いが, 抗体溶液を一度使い切ると同じ抗体溶液は得られず実験での再現性に劣るという欠点がある. 一方で モノクローナル抗体を用いるとこの様な欠点を克服できる 抗体を産生する B 細胞を培養できれば同じ抗体を産生できるが, B 細胞は生体外で長期にわたって生存できない. そこで無限に増殖可能なミエローマ細胞と B 細胞を融合させてハイブリドーマ細胞とすると生体外で培養できるため同じ抗体を継続的に得ることが出来る. これをモノクローナル抗体と呼ぶ. モノクローナル抗体の作製手順は次の様になる. まず動物に抗原を免疫して抗体の産生を確認した後, 脾臓を取出し, 個々の細胞まで細分化し, その懸濁液を得る. 次に脾臓細胞の懸濁液とミエローマ細胞とをポリエチレングリコール 6000 などを用いて融合させる. 次にこの各種細胞の混合溶液を分離用培地で育成する この分離用培地はハイブリドーマ細胞のみ選択的に育成可能なもの

34 第 1 章序章 を使用する 次にここで得られたハイブリドーマ細胞溶液をマイクロタイタープレート上に分散させ, 培養する. 次に各ウェルの上清の抗体活性を測定する. 活性の高いウェルを選択し, 再び分離用培地に分散させて培養する. この分散と選別を繰り返し, モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を得る. これらは無限に増殖できるので, 必要に応じて増殖させ抗体を産生させれば同じ構造の抗体を安定的に得られる. 一方で抗体の種類が 1 種類しかいないので抗原との親和性が低い場合が少なくない. しかし同じ構造の抗体が得られるメリットは大きくモノクローナル抗体が用いられることは多い. 分子量が約 5000 未満の分子が異物として動物の体内に侵入しても抗体は産生されない. 一方で抗体のエピトープ部はその様な高分子全体の構造ではなく, 全体に対して極一部の構造である. そのため低分子に対して抗体を産生できれば抗体を使用した選択性の高い分子認識が可能となる. その方法としてタンパク質などの分子量の大きな物質に低分子の目的物質またはその類似物質を結合させて免疫することで低分子の抗体を得ることが出来る. この時, 使用されるタンパク質としては卵白アルブミン (VA; 分子量 45,000), ウシ血清アルブミン (BSA; 分子量 67,000), スカシ貝ヘモシアニン (KLH; 分子量 100,000~450,000) などがある. この様な方法で低分子物質の抗体が得られた時, その低分子の事をハプテン ( 抗原類似物質 ) と呼ぶ. 本研究で用いた TNT 抗体 (Strategic Biosolutions 製 ) は TNT の類似物質である TNP-glycine と KLH タンパク質を結合させた複合体をマウスに免疫して得られたモノクローナル抗体である

35 第 1 章序章 1.9 本論文の構成 本論文は本章を含めて以下の章で構成される. 第 1 章序章第 2 章爆発物の検出方法第 3 章 RDX の高感度検出第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出第 6 章本論文のまとめ第 1 章では本研究の背景と本研究で用いる SPR センサの原理や装置の説明, 表面修飾に用いる SAM やアミンカップリング反応の説明, 測定原理として用いる抗原抗体反応の説明などを行う. 第 2 章では爆発物の検出方法について述べる. 検出に影響を与える要因や具体的な測定方法である間接競合法や置換法の説明を行う. 第 3 章では RDX の抗体を作製し, RDX の検出を行う. 第 4 章ではラジカル重合を用いて作製したポリマーによるセンサ表面について述べる. ここではポリマーの作製条件と非特異吸着性を評価し TNT の高感度検出を行う. 第 5 章では表面開始原子移動ラジカル重合を用いて作製したセンサ表面について述べる. まず表面の作製に用いている原子移動ラジカル重合についてメカニズムや影響を与える要因について説明する. また混合モノマーや混合 SAM を用いての非特異吸着抑制や抗体とセンサ表面の親和性制御と TNT の高感度検出についても述べる. 第 6 章では本論文の総括と今後の展望について述べる

36 第 2 章爆発物の検出方法 第 2 章 爆発物の検出方法 2.1 諸言 本章では SPR 免疫センサを用いて爆発物の検出を行う場合に必要となる性能や具体的な方法について述べる. SPR センサは高感度な屈折率計で, センサ表面での物質の相互作用を検出することが出来る. しかし RDX や TNT 分子の様な低分子との相互作用は屈折率変化が小さく SPR センサにおいても直接検出することが難しい. また SPR センサ自体には表面で起こる相互作用に関して選択性はない. そこで選択性を持ち相互作用による屈折率変化が大きい抗体の吸着を用いる. 本研究では抗原抗体反応の抗体とセンサ表面の相互作用を用いて RDX や TNT を間接的に検出するが, その方法についても述べる

37 第 2 章爆発物の検出方法 2.2 爆発物探知装置に求められる性能 爆発物探知装置にとって最も重要な性能は即応性, 感度, 選択性である. 一般に感度や選択性は即応性とトレードオフの関係にある. そのため測定に時間をかけると感度を高めることが出来るが, 逆に言えば即応性を犠牲にしない方法で感度や選択性を高めることが出来れば, それらを犠牲にして即応性を高めることもできる. それ以外に重要な性能は測定の正確性や簡便性である. 正確性は測定の信頼性である. 誤検出を繰り返す様な測定装置ではその検出に信頼がおけず装置として使用できない. これを防ぐには機器のセルフチェック機能や校正用試薬によるキャリブレーションが必要になる. 簡便性は装置の操作やデータ解析の簡便性である. 簡便性が無ければ検査員の育成に時間とコストがかかる上, 誤検出の可能性も高くなる. また即応性にも関係してくる. これらの要求に応えるべく, 我々は RDX や TNT 抗体を用いた SPR 免疫センサを用いた

38 第 2 章爆発物の検出方法 2.3 高感度検出についての検討 SPR センサと抗原抗体反応を用いて低分子を高感度に検出するには多種多様なパラメータを制御する必要がある. まず SPR センサの方では測定に用いるランニングバッファの種類やその扱い, また流速なども影響を与える. 低分子物質の表面への吸着に伴う誘電率変化は小さいので, それを補う測定法も必要となる. 抗原抗体反応の特異的な結合を用いて検出を行うため, その様な反応によらない表面への吸着である非特異吸着なども測定に影響を与える. このセクションではそれらについて述べる 測定方式 RDX や TNT の分子量は数百と低く, 抗体をセンサ表面に固定して RDX や TNT 分子を抗原として表面に直接吸着させたとしても屈折率変化が小さいため SPR センサで検出することは難しい. そこでセンサ表面には抗原の類似物質を固定して抗原 抗体と類似物質 抗体の親和性の差を利用し, 表面に対する抗体の吸着特性を SPR センサで測定することで間接的に抗原の検出を行う. この研究では間接競合法 (indirect competitive assay) 19) と置換法 (displacement assay) 20,21) を用いた. 間接競合法は高感度の検出に向いている一方で測定時間が長く, 置換法は測定時間が短いが感度は低い. 次にこれらについて述べる

39 第 2 章爆発物の検出方法 間接競合法 間接競合法では抗原類似物質への抗体の結合が抗原の存在によって競合することを用いる. すなわち抗原が存在すると抗体は抗原類似物質よりも抗原に吸着しやすくなり, 抗原類似物質を固定しているセンサ表面には抗体は吸着しにくくなる. この時, 表面に吸着している抗体の量から抗原濃度を推定する. 次に具体的な方法を述べる. 間接競合法ではある一定濃度の抗体溶液を使用する. 抗体溶液は SPR 測定に用いるランニングバッファを溶媒として作製する. まず最終濃度の倍の濃度の抗体溶液を用意する. この溶液と同容量のランニングバッファを混合させ抗体溶液を作製する. 同様に最終濃度の倍の抗体溶液と最終濃度の倍の抗原溶液を 1:1 で混合させて抗体抗原混合溶液を作製する. この抗体抗原混合溶液は抗原分子と抗体を結合させるため必要に応じて一定時間静置する ( インキュベーション ). 測定においてはまず抗体溶液をセンサ表面に流通させる. この時, センサ表面の類似物質に抗体が結合しセンサグラムが上昇する. 一定時間の流通の後, 流通前後のセンサグラム変化を 0として記録する. 次に再生溶液を流通させてセンサ表面から抗体を解離させる. その後, 抗体抗原混合溶液を先ほどと同じ時間流通させて流通前後のセンサグラム変化を 1 として記録する. この時, 抗体抗原混合溶液では抗原濃度に応じて抗体が抗原分子と結合している. この様な抗体は表面と結合しないため抗原濃度に応じて表面へ結合する抗体の量は小さくなる. この時のセンサグラムと実験の概要を図 2-1 に示す. この 1/ 0 の比を結合率 (Bond Percentage) と呼ぶ. この結合率を各抗原濃度で測定し検量線を作成する. また各濃度で 3 回の測定を行う. 検出限界は最も低濃度の抗原溶液での測定値の標準偏差の 3 倍から求める

40 第 2 章爆発物の検出方法 Sensorgram 0 1 抗原抗原類似物質抗体 時間 抗体のみフロー 再生 抗体 + 再生 TNT フロー 抗体のみフロー 再生 抗体 + 再生 TNT フロー 抗体のみフロー 再生 図 2-1 間接競合法のセンサグラムと実験の様子 次に間接競合法で測定に影響を与える要因を探るためにモデル化を試みる. 間接競合法における抗原と抗体の濃度の関係は Piehler らによって報告されている 22). この報告では抗原と抗体の親和性と抗原, 抗体, 抗原抗体複合体の濃度を用いて定式化されている. しかし我々のセンサでは抗原と抗体の親和性だけでなく抗原類似物質と抗体の親和性も重要である. そこで抗原類似物質の要素を含めて定式化を試みた. ただし簡単化のため抗体と抗原 抗原類似物質の結合

41 第 2 章爆発物の検出方法 は簡単化のため一価のみとした. また抗原 抗体および抗原類似物質 抗体の結合量は平衡状態であるとした. これは実際の測定においては溶液の流通時間を無限時間としたことに対応する. 定式化に用いるパラメータを表 2-1 に示す. まず平衡の関係から次の式が導かれる. C abag C ab C ag = K 1 (2.1) C abhap C ab C hap = K 2 (2.2) 次に抗原 抗体 抗原類似物質の総量は一定であるから次の式が導かれる. C ab,0 = C ab + C abag + C abhap (2.3) C ag,0 = C ag + C abag (2.4) C hap,0 = C hap + C abhap (2.5) 最終的に SPR センサの信号として出力されるのは類似物質に結合した抗体なの で Cabhap を求める必要があるが, ここではまず Cab を求める. まず式 (2.1)(2.2) を 用いて連立方程式 (2.3)(2.4)(2.5) は次の様に書き換えられる. C ab,0 = C ab + K 1 C ab C ag + K 2 C ab C hap (2.6) C ag,0 = C ag + K 1 C ab C ag (2.7) C hap,0 = C hap + K 2 C ab C hap (2.8)

42 第 2 章爆発物の検出方法 表 2-1 間接競合法の定式化に用いたパラメータ Cab Cag Chap Cab,0 Cag,0 Chap,0 Cabag Cabhap K1 K2 平衡時の抗原 類似物質と結合していない抗体濃度平衡時の抗体に結合していない抗原濃度平衡時の抗体に結合していない類似物質濃度初期の抗体濃度初期の抗原濃度初期の類似物質濃度平衡時の抗体抗原複合体濃度平衡時の抗体抗原類似物質複合体濃度抗体と抗原の結合定数抗体と抗原類似物質の結合定数 連立方程式 (2.6)(2.7)(2.8) を Cab に対して一つにまとめると次の様になる. K 1 K 2 C ab 3 + {K 1 + K 2 + K 1 K 2 (C ag,0 + C hap,0 C ab,0 )}C ab 2 + {K 1 (C ag,0 C ab,0 ) + K 2 (C hap,0 C ab,0 ) + 1}C ab C ab,0 = 0 (2.9) この式を Cab について解を求める. 解は複雑であるため記述は省略する. そして 式 (2.2)(2.5) から得られる次式で Cabhap に変換する. C abhap = K 2C ab C hap,0 K 2 C ab +1 (2.10)

43 第 2 章爆発物の検出方法 得られた式に対して K1 = M -1, Chap,0 = 10-8 mol/l, Cab,0 = 100 ppb (ng/ml) と固定し, 抗体と類似物質の親和性を表す K2 = 10 8, 10 9, 10 10, 10 11, M -1 と変化させた場合の検量線のシミュレーション結果を図 2-2 に示す. また K1 = M -1, Chap,0 = 10-8 mol/l, K2 = 10 8 M -1 と固定し, 用いる抗体濃度を表す Cab,0 = 1, 10, 100, 1000, ppb (ng/ml) と変化させた場合の結果を図 2-3 に示す. これらが示すのは抗体と類似物質の親和性が抗体と抗原の親和性より低いほど高感度に検出できることを意味する. また用いる抗体も低濃度の方が高感度検出に有利なことが分かる. しかしこのシミュレーションでは SPR 測定の信号の誤差等が全く考慮されていない. 抗体と類似物質の親和性や用いる抗体濃度が低すぎる場合はセンサ表面に吸着する抗体の量が少なくなるため, センサ応答が小さくなり SN 比が低くなる. そのためノイズの影響が増大し測定値の標準偏差が大きくなることで検出限界が結果的に上昇してしまい, 高感度検出が難しくなると想定される. これらの事から間接競合法において抗体との親和性がなるべく低いセンサ表面を作成し低濃度の抗体溶液を使用して測定すれば高感度検出が可能となると考えられる

44 結合率 第 2 章爆発物の検出方法 結合率 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% K2=1e8 K2=1e9 K2=1e10 K2=1e11 K2=1e 測定対象濃度 [ppt] 固定 :K1 = M -1, Chap,0 = 10-8 mol/l, Cab,0 = 100 ppb (ng/ml) 変化 :K2 = 10 8, 10 9, 10 10, 10 11, M -1 図 2-2 抗体と類似物質の親和性と結合率の関係 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% Cab=1 ppb Cab=10 ppb Cab=100 ppb Cab=1000 ppb Cab=10000 ppb 測定対象濃度 [ppt] 固定 :K1=10 10 M -1, Chap,0=10-8 mol/l, K2=10 8 M -1 変化 :Cab,0=1, 10, 100, 1000, ppb (ng/ml) 図 2-3 抗体濃度と結合率の関係

45 第 2 章爆発物の検出方法 置換法 置換法はセンサ表面に結合した抗体を自然解離させる際に周囲の抗原濃度に応じて解離速度が変化することを利用して抗原濃度を測定している. 図 2-4 にその概略を示す. まず抗体をセンサ表面に結合させるために抗体溶液を表面に流通させる. この時, 抗体溶液の濃度と流通時間に応じてセンサ表面に抗体が結合する. 次に抗体溶液の流通を止めてランニングバッファを流通させる. するとランニングバッファ中に抗体は含まれないためセンサ表面に結合している抗体はその結合定数に応じて平衡状態になるべく解離を始める. この時, 抗体は解離 再結合を繰り返しながら解離して行く. 一方, ここである濃度の抗原溶液を流通させる. すると解離した抗体の一部は抗原分子と結合する. 抗原分子と結合した抗体はセンサ表面の類似物質と再結合しにくくなる. その為, 流通させる抗原の濃度に応じて解離速度が速くなる. この抗体の解離速度や一定時間の解離量から抗原濃度を推定する. 次に具体的な方法を述べる. まず抗体溶液をセンサ表面に一定時間流通させる. 抗体溶液流通終了後, ランニングバッファを一定時間流通させる. 一定時間経過後のセンサグラムを pre とし, 抗原溶液の流通を開始する. そして抗原溶液の流通終了直後のセンサグラムを post とする. ここで i= post/ pre とする (i=0,1,2,3 ; それぞれの抗原濃度. i=0 の時, 抗原の濃度は 0). これらの値から ( 0 i) / 0 を解離率 (Displacement Ratio) と呼ぶ. 測定は各濃度で 3 回行いその平均値で検量線を作成する. また 0( 抗原濃度は 0) の標準偏差の 3 倍から検出限界を求める

46 第 2 章爆発物の検出方法 Sensorgram 0 1 抗原抗原類似物質抗体 時間 図 2-4 置換法のセンサグラム 置換法の測定に影響を与えるパラメータを明らかにするために置換法のモデル化を試みる. この試みは Yasuura らによって既に行われているので, そのモデルを用いる 23). 置換法で抗原を検出する際に用いるデータは抗体の解離速度または一定時間の解離量から求めるため平衡ではない. 間接競合法の時と同じパラメータを使用するが濃度に関しては時間に対する微分方程式となる. しかしこれは三体問題となり解析的に解を得ることはできない. そこで計算を簡単にするためセンサ表面近傍の層とそれ以外のバルクな層の二つの領域に分けて計算している. センサ表面近傍層では流路の流れが止まっているので抗原が存在せず, 抗体のみ拡散で濃度が変化する領域となる. バルク層では抗体が抗原と結合するが, 遊離している抗原濃度は常に一定で, 遊離抗体と抗原抗体複合体の濃度が変化する. そしてバルク層の遊離抗体の濃度がセンサ表面近傍層の抗体濃度の影響を受けるモデルとなっている. 詳しい計算過程は省略するが, 結論としては間接競合法と同じでセンサ表面と抗体の親和性は低いほど良く, 用いる抗体濃度は低い方が良い. しかし実

47 第 2 章爆発物の検出方法 際にはこれも間接競合法の時と同様で程度の問題となる. 低すぎる親和性では抗体の信号がノイズに隠れて見えにくくなる. また低すぎる抗体濃度ではノイズの影響もさることながらセンサ表面に結合している抗体が少ないため解離速度が小さくなる問題がある. 置換法は解離速度変化で抗原濃度を判断するため解離速度が大きいほど低濃度の抗原を検出しやすくなる. これは間接競合法以上にシミュレーション結果と矛盾することになる. そのため, 間接競合法においても置換法においてもシミュレーション上はセンサ表面と抗体の低い親和性と低い抗体濃度が高感度検出に重要になるが, 実際はどちらも親和性や抗体濃度が低すぎるとセンサのノイズの影響が大きくなり高感度測定が難しくなる. さらに置換法は表面に接合している抗体の量が多い方が高感度検出に有利ということもあり, これが間接競合法に比べて感度が低い原因だと考えられる タンパク質の非特異吸着 本研究では抗体が SPR センサ表面の抗原類似物質に対して特異的に結合し, 抗原の存在によってその特異的な結合が妨げられることによって抗原の検出を行っている. すなわち抗体は特異的な結合のみによって SPR センサ表面に結合していることが重要である. そのためこの結合によらない非特異的な吸着があると SPR センサでは特異的な結合と非特異的な吸着を区別できないため, 結果として抗原の検出は難しくなる. 検出に使用する抗体はタンパク質の一種で, タンパク質はアミノ酸からできているので等電点を持ち, また分子内に疎水的な部分や親水的な部分を持つ. 等電点を持つため水溶液の ph によって正または負に帯電する. その時, 仮にセンサ表面が逆の電荷に帯電していると静電的

48 第 2 章爆発物の検出方法 な相互作用でそのタンパク質はセンサ表面に吸着する. また水中においては疎水的な領域同士が会合した方がエネルギー的に安定なためセンサ表面に疎水的な領域があるとタンパク質の持つ疎水的な領域と会合してしまい, その疎水的な相互作用で吸着が起こる. この様な抗原抗体反応の特異的結合によらない吸着の事を非特異吸着と呼ぶ. まず疎水性相互作用による非特異吸着を防ぐにはセンサ表面を親水性にする必要がある. 水の様な極性の大きな溶媒に対して親和性を高くするにはセンサ表面に分極の大きな構造を導入する必要がある. 最も単純なものであれば用いる溶液の ph で電離するような官能基を表面に導入することで親水性とすることが出来る. しかしこの方法の場合は表面が正または負に帯電するため静電相互作用による非特異吸着が起こる可能性がある. そこでヒドロキシル基やエチレングリコール構造の様な分極の大きい構造を表面に導入することで電気的に中性な条件で親水性を得ることもできる. この様な非特異的吸着性はウシ血清アルブミン (Bovine Serum Albumin; BSA) やリゾチーム (Lysozyme) を用いることで評価することが出来る 24). BSA はウシの血清中に含まれる分子量約 のタンパク質で, 中性水溶液中では負に帯電しているためセンサ表面に流通させるとセンサ表面が疎水性または電気的に正に帯電している際に非特異吸着を起こす. リゾチームは卵白などに含まれる分子量約 の酵素で, 中性水溶液中では正に帯電しているためセンサ表面が疎水性または電気的に負に帯電している際に非特異吸着を起こす. この様なタンパク質と目的物質の抗体を流通させて抗体のみが結合できるセンサ表面を作製することが高感度検出にとって重要となる

49 第 2 章爆発物の検出方法 測定に影響を及ぼすその他の要因 抗原 抗体の親和性と類似物質 抗体の親和性の大小関係やセンサ表面への抗体の非特異的吸着が検出に影響を及ぼすことはこれまで述べた. ここではその他の要因について述べる. まず SPR センサではセンサグラムの絶対値ではなく実験前後のセンサグラムの相対値をセンサ出力とする. そのため実験前のセンサグラムの絶対値が安定していない場合はセンサ出力の誤差が大きくなる. そのためセンサグラムを安定させる必要がある. このセンサグラムの安定性だが実験中, 徐々に変化して行く場合と表面への抗体溶液の流通, 再生溶液による抗体の解離の実験サイクル毎に変化する場合がある. 前者の原因はよくわかっていないが 10wt% のドデシルスルホン酸ナトリウム (Sodium Dodecyl Sulfonate; SDS) を流通させると改善されることがある. 後者の場合は主にランニングバッファの溶存酸素の影響と再生溶液の影響がある. ランニングバッファは水溶液で水は酸素を溶かしやすい性質がある. 溶存酸素は SPR のセンサグラムにスパイク状の信号となって現れ, 影響を与える. その為, ランニングバッファは使用前に 2 時間程度の真空脱気が必要になる他, 実験が 3~4 時間以上になる際は空気中からの酸素の再溶解を防ぐ手だてが必要になる. 具体的にはランニングバッファの容器を窒素でバブリングするか測定系をすべて窒素雰囲気中で行う必要がある. また可能ならばオンライン脱気装置などで随時脱気すれば測定が安定すると考えられる. また実験に使用する再生溶液も選定が必要である. 再生溶液は抗体が抗原のエピトープ部位との結合に使用している静電的な相互作用を働かなくすることで抗原抗体反応の吸着を解離させる. この方法として溶液の ph を変えて抗体の電荷状態を変える物 ( 酸や塩基 ), 高塩強度で静電相互作用を打ち消す物 ( 塩化ナトリウム, 塩化マグネシウムなど ), 界面

50 第 2 章爆発物の検出方法 活性剤で静電相互作用や疎水性相互作用を阻害する物 (SDS, Tween20 など ), キレート剤で静電相互作用を阻害する物 ( エチレンジアミン四酢酸 ; ethylenediaminetetraacetic acid; EDTA), 抗体の3 次元構造を壊す物 ( グアニジン塩酸塩 ) などがある. 新しい種類のセンサ表面を作製した際は適切な再生溶液の選定を最初にすべきである. 適切でない場合, 抗体の結合 解離の度に結合量が減少して行く場合がある

51 第 2 章爆発物の検出方法 章のまとめ この章では爆発物の具体的な検出方法と SPR 免疫センサで検出を行う際にセンサ表面に求められる性能を検討した. まず SPR センサで RDX や TNT の分子を検出するにはこれらの分子量が小さく吸着による誘電率変化が小さいため, 直接検出は難しい. そこで RDX や TNT を抗原としてこれらの類似物質をセンサ表面に固定することでこれら抗体が表面に吸着でき, 抗原分子の濃度によってその結合を阻害できる表面を作製した. 具体的な測定方法として間接競合法と置換法を用いた. 間接競合法は抗体のみの溶液をセンサ表面に流通させた時に比べて抗体と抗原の混合溶液を流通させた時の方が表面への抗体結合量が低くなることを用いて測定している. 置換法は表面に抗体を抗原抗体反応で結合させた後, 流通させる抗原溶液の濃度によって抗体の表面からの解離速度が大きくなることを用いて測定を行っている. またこれらの方法に関してモデルを作成してどのような測定条件が高感度検出に適しているかを検討した. その結果は抗体と低い親和性を持つセンサ表面を作製して低濃度の抗体を用いて測定を行うことが高感度検出に有利であることが示唆されたが, 実際の測定では誤差の影響があるのでそれらが低すぎても良くないことも示唆された. また高感度検出に影響を与える要因として抗体の表面への非特異吸着を抑制することも重要である

52 第 3 章 RDX の高感度検出 第 3 章 RDX の高感度検出 10) 3.1 諸言 これまで爆薬成分の検出として TNT の検出を行ってきた. しかし TNT よりも威力が高く, 一方, 化学的には安定であるために衝撃や火気などではほとんど爆発することがないプラスチック爆弾 ( コンポジション C4) も良く用いられる. これに含まれる爆薬成分は RDX (research department explosive; 1,3,5-trinitroperhydro- 1,3,5-triazine) である. この RDX の検出も行えることは爆発物検出について有用である. しかし本研究の様な SPR 免疫センサでは検出対象の抗体を使用するが, この RDX の抗体は一般に流通しておらず, 入手は困難である. そこでオリジナルの抗 RDX モノクローナル抗体を作製した. これまでの研究からオリゴエチレングリコールを用いると非特異吸着が抑制できることが分かっているので 5), オリゴエチレングリコール鎖を持つ SAM を用いて類似物質を固定したセンサ表面を作製し, これらを用いて RDX の検出を行った

53 第 3 章 RDX の高感度検出 3.2 RDX 抗体の作製 ここでは抗体の作製について述べる. まず類似物質として 2 種類用意した. これらと RDX の構造を図 3-1 に示す. RDX 抗体を得るために類似物質の一つである RDXa1 とスカシ貝ヘモシアニン (KLH; 分子量 100,000~450,000) をアミンカップリングで結合させコンジュゲートを作製した. 得られたコンジュゲートをラットに免疫し, セクション の方法でモノクローナル抗体を得た. 得られた抗 RDX ラットモノクローナル抗体の交差反応を調べるために各種物質との結合能力 ( 親和性 ) を間接競合 ELISA 法で確認した. RDX との結合能力を 100% として規格化し交差反応率とした. その結果を表 3-1 に示す. この様にコンジュゲートの作製に用いた RDXa1 に最も強く結合する. また類似物質の一つである RDXa2 も RDX よりも強く結合する. TNT にもわずかに結合する. この様に RDX およびその類似物質に結合できる RDX 抗体が得られた

54 第 3 章 RDX の高感度検出 RDX 分子量 : RDXa1 分子量 : RDXa2 分子量 : 図 3-1 RDX およびその類似物質の構造

55 第 3 章 RDX の高感度検出 表 3-1 各種物質と RDX 抗体との結合能力 化合物 交差反応率 [ % ] RDX 100 RDXa RDXa2 397 TNT(2,4,6-トリニトロトルエン ) ,3-ジニトロトルエン N/A 2,4-ジニトロトルエン N/A 2,6-ジニトロトルエン N/A 2-アミノ-4,6-ジニトロトルエン N/A 4-アミノ-2,6-ジニトロトルエン N/A

56 第 3 章 RDX の高感度検出 3.3 センサ表面の作製 次に RDX を SPR 免疫センサで検出するために RDX 類似物質が固定されたセンサ表面を作製した. センサチップの作製には SIA Kit Au(GE ヘルスケアバイオサイエンス ) を用いた. このチップはガラス基板上に約 2nm の Cr とその上に約 50nm の金の薄膜があり, この金薄膜上にセンサ表面を作製する. その作成手順を図 3-2 に示す. まずチップをアセトン, エタノール, 2-プロパノール, 純水の順番で超音波洗浄を行う. 次に水 : アンモニア水 : 過酸化水素水 =5:1:1 の割合の混合液に浸漬し 分の処理を行う (SC-1: StandardClean-1, RCA 洗浄の前工程 ). 次に純水でリンスした後, 1 mm PEG6-CH aromatic dialkanethiol in エタノール溶液に 時間浸漬し金表面上にカルボキシル基末端の SAM を形成した. その後, エタノールでの超音波洗浄の後, 純水でリンスしたチップを 0.4 M EDC 水溶液と 0.1 M NHS 水溶液を 1:1 で混合した溶液に 30 分間浸漬し SAM のカルボキシル基を NHS エステルとして活性化させた. この作業と同時に 10 mm RDXa2 (in DMF) と 0.4 M EDC 水溶液と 0.1 M NHS (in DMF) を 1:1:1 で混合し 60 分間静置することで RDXa2 のカルボキシル基を活性化させた. SAM のカルボキシル基を活性化させた後, 100 mm エチレンジアミン水溶液 (ph 8.5) をセンサ表面に 30 分間流通させてカルボキシル基と結合させて SAM のカルボキシル基をアミノ基に変換した. その後, 活性化させた RDXa2 溶液をセンサ表面に 60 分間流通させてセンサ表面のアミノ基と結合させて RDXa2 をセンサ表面に固定した. このセンサ表面を Sensor Chip (B) とした. 次に比較対象として市販の CM5(GE ヘルスケア製 ) チップを用いてセンサ表面を作製した. CM5 は側鎖にカルボキシル基を持つシクロデキストランの

57 第 3 章 RDX の高感度検出 表面となっており, Sensor Chip (B) と同様にアミンカップリングを用いてエチ レンジアミンでカルボキシル基をアミノ基に変換した上で RDXa2 を固定した. このセンサ表面を Sensor Chip (A) とした. H C H C N C N C 1 mm PEG6-aromatic dialkanethiol in ethanol at R.T. for 24 h 0.4 M EDC / 0.1M NHS at R.T. for 30 min (CH2)6 S (CH2)6 S (CH2)6 S (CH2)6 S (CH2)6 S (CH2)6 S (CH2)6 S (CH2)6 S Gold thin layer 2N N N N2 2N N2 N N 2N C NHC2H4NH 2N N2 N N 2N C NHC2H4NH 100 mm ethylendiamine in ph 8.5 borate buffer at R.T. for 30 min NHC2H4NH2 NHC2H4NH2 2N CN C C C C R.T. for 60 min R.T. for 60 min 0.4 M EDC in Milli Q / 0.1M NHS in DMF at R.T. for 60 min 2N N N N2 (CH2)6 (CH2)6 (CH2)6 (CH2)6 (CH2)6 (CH2)6 (CH2)6 (CH2)6 2N CH S S S S S S S S 図 3-2 RDX の検出のためのセンサ表面の作製

58 第 3 章 RDX の高感度検出 3.4 RDX の高感度検出 このセンサチップ上に BSA とリゾチームの溶液を流通させて非特異吸着量を SPR センサで確認した. その結果を表 3-2 に示す. Sensor Chip (B) にて非特異吸着を抑制できた. このセンサチップ (B) を用いて間接競合法にて RDX の検出を行った. 測定に用いる抗体溶液の濃度やインキュベーション時間を変化させてそれぞれ検出限界を測定した. インキュベーション時間とは抗体溶液と抗原溶液を混合させた後, 実際にセンサ表面に流通されるまでの時間を指す. この時間で抗体は抗原と吸着する. その結果を表 3-3 に示す. この様に条件 (iii) の時に最も高感度で測定でき, その検出限界は 40 ppt だった. この時の SPR センサのセンサグラムを図 3-3 に示す. またこのセンサ出力による RDX 濃度に対する検量線を図 3-4 に示す. この様に得られた抗体に対して適切なセンサ表面を作製し, 抗体濃度や溶液の流通量, インキュベーション時間を変化させることで RDX の高感度検出が実現できた

59 第 3 章 RDX の高感度検出 Sensor Chip 表 3-2 各センサチップの非特異吸着評価 Fabrication BSA Process [ R.U. ] Lysozyme [ R.U. ] (A) CM5-ethylenediamine-RDXa (B) PEG6-ethylenediamine-RDXa 表 3-3 間接競合法の測定条件と検出限界 条件 抗体濃度 流通量 インキュベーション時間 検出限界 [ ppb ] [ L ] [ min ] [ ppt ] (i) (ii) (iii)

60 第 3 章 RDX の高感度検出 Response (RU) ppt 10ppt 100ppt Antibody Antibody + RDX Regeneration 1ppb 10ppb Time (s) (a) Response (RU) Antibody Antibody + 1ppt RDX Antibody + 10ppt RDX Antibody + 100ppt RDX Antibody + 1ppb RDX Antibody + 10ppb RDX Time (s) 300 (b) 図 3-3 間接競合法による RDX の検出実験のセンサグラム

61 第 3 章 RDX の高感度検出 100 Bound percentage (%) min incubation 0min incubation RDX concentration [pg/ml(ppt)] 図 3-4 RDX 濃度とセンサ出力の検量線

62 第 3 章 RDX の高感度検出 章のまとめ RDX を検出するためにまず抗体を用意した. 抗体は RDX 類似物質である RDXa1 と KLH のコンジュゲートをラットに免疫しハイブリドーマ細胞を得ることでモノクローナル抗体として得られた. 次にこの RDX 抗体の結合能力を調べた結果, 類似物質の中では RDXa2 が比較的弱い親和性を持っていることが分かった. この RDXa2 を CM5 表面と PEG6-CH アロマティックジアルカンチオール SAM 表面に固定しそれぞれ Sensor Chip (A),(B) とした. これらの非特異吸着を評価したところ Sensor Chip (B) の非特異吸着が少ないことが分かった. このセンサ表面を用いて間接競合法にて RDX の検出を行ったところ, 抗体濃度 40 ppb, 溶液流通量 60 L, インキュベーション時間 0 min の条件にて最も検出限界が小さくなり, 40 ppt であった

63 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 第 4 章 ラジカル重合によるビニル系ポリマーを 用いた TNT の高感度検出 25) 4.1 諸言 この章ではポリマーを用いてセンサ表面を作製しそのポリマー上に TNT 類似物質を固定したポリマー表面について述べる. ポリマー表面では類似物質が 3 次元的に配置され 2 次元的に配置した時よりも SPR センサでの出力に寄与する領域が広くなり, 微小な変化に対して敏感な反応が得られることが期待される. ここではビニル系ポリマーの一つであるポリビニルホルムアミドとポリビニルアミンを用いた. ポリビニルホルムアミドは N ビニルホルムアミドからラジカル重合によって作製され, ポリビニルアミンはポリビニルホルムアミドから加水分解で作製される. これらのポリマーの共重合体を用いて非特異吸着を抑制し TNT の高感度検出を試みた

64 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 4.2 ポリビニルアミンの作製 ポリビニルアミン (poly-vam) はモノマーから直接得ることはできない. そのためポリ N ビニルホルムアミド (poly-nvf) を作製した後, それを加水分解することで得られる 26). その過程を図 4-1 に示す. まず N ビニルホルムアミド (NVF) とアゾ系反応開始剤である VA-044( 図 4-2) を MilliQ 水に溶解させた後, 溶存酸素を除去するために 1.5 時間の脱気を行った. 次にこれらの水溶液をモル比で NVF:VA-044=3000:1 になる様に混合し, 反応温度 60, 反応時間 24 時間の条件で重合を行うことで poly-nvf が得られた. 次に得られた poly-nvf を精製するため 25% エタノール水溶液に溶解させた後, アセトンを加えて樹脂状のポリマーを析出させた. この樹脂状の固形物を水に溶かし-80 で凍結させた後, 凍結乾燥を行いスポンジ状の poly-nvf を得た. この poly-nvf を 2M NaH 水溶液に 2wt% の濃度で溶解させ 80 4 時間の加水分解を行い poly-vam 水溶液を得た. 次にこの水溶液は透析チューブを用いて透析を行うことで, 未反応の NaH や反応生成物を除去した. 次にこの水溶液を凍結乾燥しスポンジ状の polyvam を得た

65 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 VA044 Hydrolysis NVF poly-nvf 図 4-1 ポリビニルアミンの作製ステップ poly-vam 図 4-2 VA

66 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 4.3 ポリビニルアミンを用いたセンサチップの作製 センサチップの作製には SIA Kit Au(GE ヘルスケアバイオサイエンス ) を用いた. このチップはガラス基板上に約 2nm の Cr とその上に約 50nm の金の薄膜があり, この金薄膜上にセンサ表面を作製する. その作成手順を図 4-3 に示す. まずチップをアセトン, エタノール, 2-プロパノール, 純水の順番で超音波洗浄を行った. 次に水 : アンモニア水 : 過酸化水素水 =5:1:1 の割合の混合液に浸漬し 分の処理を行った (SC-1: StandardClean-1, RCA 洗浄の前工程 ). 次に純水でリンスした後, 1 mm PEG6-CH aromatic dialkanethiol in エタノール溶液に 時間浸漬し金表面上にカルボキシル基末端の SAM を形成した. その後, エタノールでの超音波洗浄の後, 純水でリンスしたチップを 0.4 M EDC 水溶液と 0.1 M NHS 水溶液を 1:1 で混合した溶液に 1 時間浸漬し SAM のカルボキシル基を NHS エステルとして活性化させた. 次に純水でリンスした後, 50 mg/ml の poly-vam 水溶液に 1 時間浸漬することで poly-vam のアミノ基が表面の活性化カルボキシル基と反応し poly-vam がセンサ表面に固定された. またこの作業と同時に 10 mm ジニトロフェニルグリシン (dinitrophenylglycine; DNP-Gly) (in DMF; dimethylformamide) 溶液と 0.4 M EDC 水溶液と 0.1 M NHS (in DMF) 溶液をそれぞれ 1:1:1 の割合で混合させて DNP-Gly のカルボキシル基を NHS 活性化させ活性化 DNP-Gly 溶液を作製した. 次に poly-vam が固定されたチップをこの活性化 DNP-Gly 溶液に 1 時間浸漬し DNP-Gly を poly-vam のアミノ基と反応させた. これらの作製ステップから TNT 抗体が特異的に結合する DNP-Gly が 3 次元的に存在する表面を作製できた. この poly-vam 表面の TNT 抗体の吸着量を評価した. 比較対象として

67 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 poly-vam の代わりに両端に一級のアミノ基を持つ低分子化合物のエチレンジアミン (ethylenediamine;eda) を用いてセンサチップを作製した. これらを比較した結果を図 4-4 に示す. poly-vam 表面のチップは EDA 表面のチップに比べて 5 倍程度の高い抗体吸着量が得られた. 一方で, この poly-vam 表面に対して本来吸着しないはずのビオチン抗体を流通させたところ, TNT 抗体の吸着量の約 3 割の吸着が観測された ( 図 4-5). そこで BSA とリゾチームを用いて非特異吸着性の評価を行った. その結果を図 4-6 に示す. 図に示してある Zp はゼータ電位でリゾチームと BSA の水溶液に対して測定を行った. この値からそれぞれ正と負に帯電していることが分かる. この結果から poly-vam 表面に対してリゾチームは吸着しにくいが BSA は吸着しやすいことが分かった. poly-vam はポリマー鎖中に多数のアミノ基を持っている. このアミノ基を用いて SAM 表面と DNP-Gly と結合している. しかし未反応のアミノ基が残っており, これがプロトン化 (-NH3 + ) することで正に帯電し, 負に帯電している BSA が吸着したと考えられる. これを抑制するにはプロトン化しているアミノ基を減らす必要がある

68 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 図 4-3 ポリビニルアミンを用いたポリマー表面の作製工程 SensorResponse [R.U.] flow 25 ppm anti-tnt-igg for 2min polyvam + DNP-Gly EDA + DNP-Gly Time [s] 図 4-4 poly-vam 表面と EDA 表面の SPR センサグラム

69 SensorResponse [R.U.] Sensor Response [ R.U.] 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 ppm anti-tnt-igg 2min 25ppm anti-biotin-igg 2min (specific /non-specific adsorption) (non-specific adsorption) 図 4-5 poly-vam 表面への TNT 抗体 ビオチン抗体吸着量 ppm Lysozyme 2min Ζp = mv (ph:7 25 ) 1000ppm BSA 2min Ζp = mv (ph:7 25 ) 図 4-6 poly-vam 表面の非特異吸着性評価

70 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 4.4 ポリビニルアミン ポリビニルホルムアミド共重合体 の作製 前セクションにて poly-vam 表面では未反応のアミノ基がプロトン化することで表面が正に帯電し非特異吸着が起きていることを示した. それを防ぐには帯電を減らす必要がある. 水溶液の中ではプロトン化が起こるかどうかは ph で決まっている. しかし ph を変化させると抗原抗体反応が起きにくくなるので ph を変えることはできない. そこで未反応のアミノ基を減少させる必要がある. まず考えられるのはポリマーのアミノ基と DNP-Gly の反応率を上昇させることであるが, 反応温度 時間 回数 反応溶媒変更など数々のパラメータを変更して実験を試みたが現状よりも上昇させることが出来なかった. そのためポリマー鎖中に元々存在するアミノ基の絶対数を減らすことで, 未反応のアミノ基の絶対数を減らし, 帯電を抑制することを試みた. poly-vam のアミノ基の絶対数を減らすためにその前駆体である poly-nvf を加水分解する際の加水分解率を制御しポリビニルアミン ポリ N ビニルホルムアミド共重合体 (poly-vam-co-nvf) とすることでアミノ基の数を減少させた. 加水分解の条件は 2M NaH 水溶液に 2wt% の濃度で溶解させ, 温度 50 で 0, 5, 10, 20, 30, 60, 120, 240 分と温度 80 で 240 分の加水分解を行った. 作製した poly-vam-co-nvf の加水分解率を測定するためフーリエ変換赤外分光計 (Fourier Transform Infrared Spectroscopy; FTIR) 測定を行い 得られたスペクトルデータからアミド由来の吸収と一級アミン由来の吸収を比較することで加水分解率の計算を行った 27). PerkinElmer 製 Frontier Gold FTIR を用いて全反射測定法 (Attenuated Total Reflection; ATR) を用いてペレット状サンプルを測定

71 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 することでスペクトル得た. このスペクトルに対して ATR 補正を行い, 2920cm -1 のポリマー主鎖の C-H 伸縮振動による吸収帯を用いて規格化を行った. そのスペクトルデータを図 4-7 に示す. 図では赤色で示しているものは加水分解量が低いため poly-nvf の割合が多くなっており, 青色で示しているものは加水分解が進み poly-vam が多くなっている. poly-nvf のアミド結合由来の吸収ピークである 1650cm -1 (C= 伸縮振動 ) や 1530 cm -1 (N-H 変角振動 ), 少し弱いが 1430 cm -1 (C-N 伸縮振動 ) などに注目すると加水分解が進むにつれてピークが弱くなる. 一方で加水分解量が低い場合には小さすぎて観測されないが, 加水分解が進むと1580 cm -1 (N-Hはさみ変角振動) のピークが現れる. このN-H はさみ変角振動は一級アミンにみられるもので poly-vam の側鎖のアミノ基由来だと考えられる. 加水分解条件 50 0 分を 0%, 分を 100% と仮定し, それぞれの吸収ピークの形状が正規分布になると仮定した上でアミド由来の C= 伸縮運動, N-H 変角振動と一級アミン由来の N-H はさみ変角振動の信号強度をフィッティングによって求め, そこから加水分解率を計算した. その結果を図 4-8 に示す. この様に反応時間を制御することで poly-nvf の加水分解率を制御でき, 様々な比率の poly-vam-co-nvf を作製することが出来た. 次に作製した poly-vam-co-nvf の水中での電荷状態を確認するため, poly-vam-co-nvf を 1wt% の水溶液にしてゼータ電位の測定を行った. 測定は Malvern Instruments 製 Zetasizer Nano を用いて行った. その結果を図 4-9 に示す. 加水分解率が大きくなるとゼータ電位は正の方向に大きくなっている. これは一級のアミノ基が増えることでプロトン化したアミノ基が増えたためだと考えられる. 逆に言えば加水分解率を制御することでポリマーの正の帯電を制御することが出来た

72 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 赤 : 加水分解率低い 青 : 加水分解率高い Hydrolysis [ % ] C= 伸縮 N-H 変角 ( はさみ ) N-H 変角 赤字 :poly-nvf 青字 :poly-vam 0min(50 ) 5min(50 ) Absorbance 10min(50 ) 20min(50 ) 30min(50 ) 60min(50 ) 120min(50 ) 240min(50 ) min(80 ) Wave Number [cm -1 ] 図 4-7 各加水分解条件における FTIR スペクトルデータ 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 2wt% 2M NaH Time [min] 図 における加水分解時間と加水分解率

73 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 Zetapotential [ mv ] % 20% 40% 60% 80% 100% Hydrolysis [ % ] 図 4-9 加水分解率とゼータ電位の関係

74 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 4.5 ポリビニルアミン ポリビニルホルムアミド共重合体 を用いた非特異吸着性抑制 加水分解率を制御することでポリマーの電荷状態をコントロールした poly-vam-co-nvf を用いてセンサ表面を作製し TNT 抗体とビオチン抗体を用いて非特異吸着の評価を行った. 表面には TNT 類似物質として DNP-Gly が固定してあるので TNT 抗体は抗原抗体反応による特異的な結合と非特異吸着による結合のどちらの原理でもセンサ表面に吸着できる. 一方, ビオチン抗体はセンサ表面には非特異吸着でしか吸着しない. TNT 抗体とビオチン抗体を濃度 25 ppm で 2 分間センサ表面に流通させて SPR センサの応答を測定した. この結果を図 4-10 に示す. またこのデータからビオチン抗体の吸着量と TNT 抗体の吸着量の比率を計算した結果を図 4-11 に示す. まずビオチンの抗体結合量に注目すると加水分解率とともに結合量は減少する. これは表面のポリマーの未反応アミノ基が減少し帯電が減少したため, 非特異吸着が減少したと考えられる. 一方, TNT 抗体の結合量は加水分解率が 40~90% の時はあまり変わらない. しかし 28%, 23% では明らかに結合量が減少する. これは二つの可能性が考えられる. 一つ目は加水分解率を増加させるとポリマー鎖の側鎖のアミノ基の数が増加して行くが, 加水分解率 3 割以上では DNP-Gly とアミノ基の反応率がそれ以上上昇していない可能性がある. この場合, ポリマー鎖に固定される DNP-Gly の数が変化しないため TNT 抗体の結合量が変化していない可能性がある. 二つ目は加水分解率を増加させた時, ポリマー鎖に固定される DNP-Gly の数は上昇するが, 抗体の大きさが約 10 nm とポリマー鎖に比べてかなり大きいため必要以上に類似物質が高密度に存在しても

75 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 結合量に影響しない可能性がある. 加水分解率が低い条件では TNT 抗体の結合量が低くなっているがセンサの誤差等を考えても加水分解率 28% の場合でも抗体結合量としては十分な値が得られている. この様に加水分解率を制御することで非特異吸着を抑制しつつ抗体と抗原抗体反応を起こすことができるセンサ表面を作製できた

76 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 Sensor Response [ R.U. ] AB/AT [ % ] % 28% 41% 52% 67% 81% 92% Hydrolysis [ % ] anti - TNT - IgG (specific/non-specific adsorption) anti - Biotin - IgG (non-specific adsorption) 図 4-10 TNT 抗体とビオチン抗体の吸着量比較 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% 0% 20% 40% 60% 80% 100% Hydrolysis [ % ] AB:adsorption of anti-biotin-igg (non-specific adsorption) AT:adsorption of anti-tnt-igg(specific/non-specific adsorption)

77 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 図 4-11 TNT 抗体とビオチン抗体の吸着量の比率 4.6 TNT の高感度検出 加水分解率を制御することで poly-vam-co-nvf を作製し, 加水分解率が低いポリマーを用いることで非特異吸着を抑制できた. この時作製したポリマーの中で最も加水分解率が低い加水分解 23% の poly-vam-co-nvf を用いてセンサ表面を作製し, TNT の高感度検出を試みた. まず SPR 測定は 25 で行われた. フローセルの流速は 30 l/min だった. 再生溶液は 3M NaCl 水溶液を用いた. 検出方法は間接競合法を用いた. その結果得られた検量線を図 4-12 に示す. 測定は各濃度に対して 3 回行われ, その中で最低濃度の標準偏差の 3 倍より検出限界は 28 ppt となった. これは 2 次元的に類似物質を固定した場合の約 80 ppt に比べて検出限界が低くなっているが, 類似物質を 3 次元的に固定することで SPR の変化に寄与する場所が増え, わずかな変化にも敏感になったためだと考えられる

78 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 100% Bound percentage [ % ] 80% 60% 40% 20% 0% TNT concentration [pg/ml (ppt)] 図 4-12 間接競合法による TNT 濃度と結合率の検量線

79 第 4 章ラジカル重合によるビニル系ポリマーを用いた TNT の高感度検出 章のまとめ TNT 類似物質の 3 次元的に配置したセンサ表面を作製するために側鎖にアミノ基を持つ親水性ポリマーである poly-vam を作製した. この poly-vam をセンサ表面に固定した上で poly-vam 上に類似物質を固定することで抗体の結合サイトを 3 次元的に配置した. このセンサ表面に対して TNT 抗体溶液を流通したところ高い結合量が得られたが, 表面に結合しないはずのビオチン抗体溶液を流通させたところ表面への結合がみられた. そのためセンサ表面での非特異的な吸着が起きていることが示唆された. そこで BSA とリゾチームの溶液をセンサ表面に流通させたところ, リゾチームはあまり吸着せず BSA の吸着が顕著だった. リゾチームは正に BSA は負に帯電しているため表面は正に帯電している可能性があった. その原因として poly-vam 上に残っている未反応のアミノ基がプロトン化されて正に帯電していることが考えられた. この正の帯電を抑制するために poly-vam 作製時の加水分解率を制御して poly-vam-co-nvf とすることでポリマーの帯電が抑えられ非特異吸着が抑制できるのではと考えた. 加水分解率が約 30% 以下の poly-vam-co-nvf を用いることで非特異吸着を抑制できた. 加水分解率 23% の poly-vam-co-nvf を用いてセンサを作製し TNT の検出を行ったところ検出限界は 28 ppt となった

80 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 第 5 章 表面開始原子移動ラジカル重合を用いた センサ表面による TNT の高感度検出 5.1 諸言 この章では表面開始原子移動ラジカル重合 (Surface Initiated-Atom Transfer Radical Polymerization; SI-ATRP) を用いたポリマー表面について述べる. SI-ATRP は表面開始重合の一つで反応開始剤となる物質を何らかの形で固定しそこにモノマーを含む反応溶液を接触させると反応開始剤を起点に直鎖状ポリマーが成長する重合法である. この重合法は適切な条件を選ぶことで重合停止反応が起き難くでき, 反応液を除去しても成長点は休止状態となる. ここにもう一度反応溶液を接触させると重合反応を再開することが出来る. その為, ラジカル重合で難しかったポリマー鎖の長さの制御ができる. また別のモノマーを含む反応溶液を使用すれば異種のポリマーを直列に接合させることもできる. この様に SI-ATRP を用いて表面を作製することで様々な構造を持った表面を作ることが出来る

81 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 5.2 原子移動ラジカル重合 28,29, 30) 諸言 ここではまず SI-ATRP の重合反応である ATRP の説明を行う. ATRP は名前が示す通りにラジカル重合の一種である. 前章で用いた反応開始剤で発生したラジカルを起点として連鎖反応で重合が行われる通常のラジカル重合に比べて反応が制御しやすく, 精密ラジカル重合 (Controlled Radical Polymerization; CRP) ないしリビングラジカル重合 (Living Radical Polymerization; LRP) と呼ばれるものの一つである. 他の CRP では可逆的付加 開裂連鎖移動重合 (Reversible Addition / Fragmentation Chain Transfer Polymerization; RAFT) やニトロキシドを介した重合 (Nitroxide-Mediated Polymerization; NMP) などがあり, いずれの重合法もリビング重合である. ラジカル重合は開始反応, 成長反応, 停止反応, 連鎖移動反応で表すことができる 31). 開始反応は熱や光, 放射線, または開始剤の分解によって得られる一次ラジカルによって起こされる. 開始反応によって生成された一次ラジカルはモノマーの炭素間二重結合を攻撃し成長ラジカルとなりモノマーの付加反応を連鎖的に繰り返すことで成長反応となりポリマーが成長する. 一方でこの成長ラジカル同士の結合や一次ラジカルとの結合などによって停止反応が起きる. また成長ラジカルが他の物質に移動する連鎖移動反応も起きる. 連鎖移動反応では成長しているポリマー自体の成長は停止するがラジカルは他の物質に移動するので全体のラジカル濃度は変化しない. ラジカル重合ではこのラジカルの濃度が重要で, 低すぎる時は重合反応自体が起きにくくなり, 高すぎる時は停

82 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 止反応や連鎖移動反応が起きやすくなる. ラジカル重合では開始剤の種類や溶媒によって得られるポリマーの構造は変化しない一方で, 上記の成長反応や停止反応, 連鎖移動反応の起こりやすさはモノマーの構造によって決まるため, モノマーの種類を変えずに得られるポリマーの構造を変化させることは困難である. また一本のポリマー鎖単体の成長反応は 0.1~10 秒程度しか持続しないため反応時間によって分子量を制御することはできない. そこでこの様な困難を解決するために考え出されたのが上記のリビングラジカル重合で, いずれの方法もラジカル重合の反応に再開可能な停止反応 ( 休止反応 ) という要素を加えることで重合反応の制御を試みている. 具体的には成長反応と休止反応の平衡を休止反応側に偏らせることで成長ラジカルの濃度を低くし停止反応や連鎖移動反応を起きにくくしている. その為, ポリマーの分子量は時間とともに増加し分子量分布も狭いポリマーが得られる. 本研究では反応開始剤の機能を備えた SAM 試薬が容易に入手可能で汎用性が高い ATRP を用いて表面作製を行った

83 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 特徴と反応メカニズム ATRP の反応にはモノマー, 反応開始剤, 遷移金属イオン, 配位子とこれらを溶解する溶媒が必要となる ( モノマーが溶媒となる場合もある ). ATRP はモノマーの構造によって反応速度が大きく違うため, 反応条件に拘束がある場合はモノマーを選ぶ必要がある. 一般に本研究で使用するメタクリル系のモノマーでは反応が速い. 反応開始剤にはハロゲン化アルキル化合物が用いられる. ハロゲン化メチルプロピオン酸エステルが用いられることが多い. ハロゲンは臭素または塩素で, 臭素は反応性が高いが塩素は安定性が高い. 遷移金属イオンは二つの酸化数を持つ物を使用する. コバルトイオンや鉄イオンを使用する場合もあるが, 銅イオンが用いられる場合が多い. 配位子は遷移金属イオンに配位結合する有機分子でアミン系化合物が用いられる. 遷移金属イオンに配位子が配位したものを ATRP においては触媒と呼ぶ. 一つの触媒には二つの状態があり, ここではそれぞれ状態の触媒を低酸化数触媒と高酸化数触媒と呼ぶ. 配位子は遷移金属イオンの溶媒への溶解度や配位金属イオンによる重合の触媒能力に大きく影響する. 次に具体的な重合反応メカニズムを説明する. まず低酸化数触媒が反応開始剤のハロゲン原子を引き抜き, 高酸化数触媒ハロゲン原子複合体となる (Activation). ハロゲン原子を引き抜かれた開始剤はハロゲン原子が存在した場所に一次ラジカルが発生する. 一次ラジカルとモノマーが反応すると成長反応 (Propagation) が起き, ポリマーが成長する. 成長ポリマー端に存在する成長ラジカルが高酸化数触媒ハロゲン原子複合体と反応するとハロゲン原子が付加されて成長ラジカルは消滅し, 触媒は低酸化数触媒になる (Deactivation). ハロゲンが付加されたポリマーの成長点は反応休止状態になっており, 再び低酸化数

84 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 触媒と反応すると先ほどと同様に成長ラジカルが発生し, 成長反応が起きる. これらの反応の平衡は図 5-1 の式で表すことができる. またこれらの状態遷移図を図 5-2 に示す. この様な反応の他に副反応が存在する. 一つ目は低酸化数触媒が反応溶液中の溶存酸素などによって酸化され高酸化数触媒となってしまう反応である. その為, 酸素が存在する場合, ATRP の反応が起きにくくなる. 二つ目は停止反応 (Termination) でこれは通常のラジカル重合と同じである. ATRP では休止反応 (Deactivation) と成長ラジカル生成反応 (Activation) の平衡が休止反応側に偏る様に条件を設定するが, 例えば低酸化数触媒の濃度が高く反応活性が高い配位子を使用した場合には成長ラジカル生成反応が優位になり成長ラジカルの濃度が高くなる. すると通常のラジカル重合に近くなり, 停止反応や連鎖移動反応が起きやすくなる. この二つの副反応の他にはこの図には示していないが触媒が金属イオンと配位子分子に分解する反応もある. K ET Mt n+ / L Mt (n+1)+ X / L + e - K EA X * + e - X - K BH R-X R * + X * K X X - + Mt (n+1)+ / L Mt (n+1)+ X / L 図 5-1 ATRP 反応の反応式

85 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 図 5-2 ATRP 反応状態遷移図

86 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 還元剤による触媒の再活性化プロセス ATRP では高酸化数触媒の作用で休止反応が起き成長ラジカルの濃度を低く抑えることが出来るため, 停止反応や連鎖移動反応が起きにくく重合を制御しやすいという特徴を持つ. 一方で, 成長ラジカル生成反応に係わる低酸化数触媒は溶媒中の溶存酸素によって酸化され高酸化数触媒に容易に変化する. すなわち溶媒中に酸素があると重合反応が起き難くなる. そのため反応系から厳密に酸素を除去する必要がある. この問題を解決するためいくつかの手法が提案されている. アゾビスイソブチロニトリル (azobisisobutyronitrile; AIBN) の様なアゾ系反応開始剤を用いて一次ラジカルを発生させ, 高酸化数触媒を重合活性のある低酸化数触媒に変化させる方法は ICAR(Initiatorsvfor Continuous Activator Regeneration) を呼ばれる. しかしこの方法には問題点があり, それはラジカル重合の反応開始剤を使用するので ATRP ではない普通のラジカル重合が副反応として起きる. この様な問題を起こさずに触媒を活性化させる方法として還元剤を用いる方法がある. この方法は AGET(Activators Generated by Electron Transfer) または ARGET(Activators Regenerated by Electron Transfer) と呼ばれる. 還元剤は重合反応に寄与しないため副反応を抑えることが出来る. この還元プロセスを加えた AGET-ATRP の状態遷移図を図 5-3 に示す. 用いられる還元剤として 2-エチルヘキサン酸スズ (II), アスコルビン酸 ( ビタミン C), トリエチルアミン, ヒドラジン誘導体, 銅金属などが用いられる. この研究ではアスコルビン酸を用いた. アスコルビン酸はビタミン C と呼ばれ, 食品の酸化防止剤にも用いられ, 溶媒に対して溶解性も良く入手が容易な物質である. その還元作用を示す化学式を図 5-4 に示す. この様にアスコルビン酸がデヒド

87 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 ロアスコルビン酸に変化する際に放出する電子を高酸化数触媒が受け取ることで低酸化数触媒に変化する. このアスコルビン酸の作用で溶存酸素存在下でも ATRP が可能となる. ただしアスコルビン酸は高酸化数触媒と反応すると消費されるので, その濃度が重合反応時間よって減少する. そのため安定的に重合を行うにはある程度の濃度のアスコルビン酸が必要になる. しかしその濃度が高すぎると今度は停止反応が起きやすくなる. これは過剰な還元剤が高酸化数触媒の濃度を必要以上に低下させる. 高酸化数触媒は重合反応に対して不活性ではあるが, 休止反応に必要となる. そのためアスコルビン酸の濃度が高すぎると高酸化数触媒の濃度が低くなり休止反応が起き難くなる. すると成長ラジカルの濃度が高くなり, 結果として重合速度は速くなるが停止反応が起きやすくなる. この様にアスコルビン酸の濃度は反応時間に伴い減少するので, ある程度高い濃度が必要になるが, 高すぎると停止反応が起きやすくなる. この様に触媒と還元剤のモル比を変えた時のポリマー成長を図 5-5 に示す. この図で示されているのはあるモノマーを用いて SI-ATRP を行った際のポリマー層の厚みである. ATRP においては反応度に対応する. この様に触媒と還元剤のモル比によって反応度にピークがある. このピークの位置はモノマーの種類や触媒によって変化するため, これは一例である. ピークに対して触媒が少ない側の重合反応は休止反応によって律速されている. そのため重合終了後も反応液を新しくするか還元剤を新たに投入すれば成長を再開できる. ピークに対して触媒が多い側の重合反応は停止反応によって律速されている. こちらの条件では重合を再開できないので制御が難しくなる. これらの事から制御性良く重合を行うにはこのグラフのピークの左側の条件で重合を行う必要がある

88 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 図 5-3 AGET-ATRP 反応状態遷移図 図 5-4 アスコルビン酸による還元作用

89 ポリマー膜厚 [ nm ] 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 アスコルビン酸 / 触媒モル比 モノマー ; MES:DEAEM=1:3 触媒 ;PMDETA:CuBr2=1:1 モノマー : 触媒 =500:1 SI-ATRP(40 10 分 ) 前後のポリマー膜厚変化 図 5-5 触媒と還元剤の比を変化させた時の重合反応

90 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 重合反応に影響を与える要因 ATRP ではポリマーの構造を制御できる重合法だが重合反応に影響を与えるパラメータは多いため, 新たなモノマーを使用して重合を行う際には数多くの実験を必要とする. まずモノマーの種類, 混合モノマーであればその混合比によって反応速度が全く異なる. 反応速度が速すぎる場合は停止反応が起きやすいため重合制御が難しくなる. 反応速度が遅すぎる場合はポリマーを得ること自体が難しくなる. 適切な反応速度を得るために溶媒や触媒の種類, モノマーや触媒の濃度や混合比などを変更することで重合条件を変更する必要がある. モノマーや開始剤上に存在する臭素原子が触媒によって解離し成長ラジカルが発生する反応と臭素原子が付加されて休止状態になる反応の反応定数 KATRP がどのような値になるかが計算されている. その結果を図 5-6 に示す. この値は 図の左下にある臭化メチルプロピオン酸メチルの臭素原子の解離による KATRP で標準化してある. この様にモノマーや開始剤の構造によって KATRP は大きく違う. このため触媒の配位子の種類や触媒濃度を変更することで適切な反応速度に調節する必要がある. 次に触媒の配位子とKATRPの関係を図 5-7に示す. この値は触媒として CuBr を用い, モノマーは ethl-2-bromoisobutyrate を用い反応温度は 35 である. この様に配位子を変更することで反応速度を制御することが出来る. 分子量の大きなポリマーを得たい時, その反応時間はおのずと長くなる. するとポリマーの作製終了までに停止反応が起きる可能性も高くなる. 停止反応は一度でも起こるとそのポリマー鎖は成長を再開できないため, そのリスクを最小限にする必要がある. しかし短時間で成長させるために反応速度を早くし過ぎても停止反応が起きるリスクが高くなる. そのため新しい種類のポリマーを作製する際は様々な配位子を用いて様々な触媒濃度で実験し最適な

91 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 組み合わせを見つけることが重要となる. 図 5-6 有機分子の構造と反応定数 KATRP の大小関係 ( 計算 )

92 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 N[2,3,2] 1.2 x 10-3 Bpy dnbpy 0.6 PMDETA 2.7 TPMA 62 ME 6 TREN 450 DMCBCy 710 図 5-7 配位子の構造と反応定数 KATRP[ M -1 s -1 ] 触媒 :CuBr 溶媒 : アセトニトリルモノマー :ethl-2-bromoisobutyrate 反応温度 :

93 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 表面開始原子移動ラジカル重合 重合反応の開始剤となる化合物を基板やナノ粒子の表面に固定し, そこを起点にリビング重合を行うことで表面から直鎖状ポリマーが成長し, ポリマー表面を作製することが出来る. リビングラジカル重合はどれも休止反応を導入することで成長ラジカルの濃度を低くし反応のリビング性を得ている. そのため表面開始重合の様に反応開始剤が表面に高濃度で存在する場合でも成長ラジカルの濃度を低くできるため, 表面から直鎖状ポリマーを成長可能としている. この研究では ATRP を用いて表面開始原子移動ラジカル重合を行った. この様な研究はバイオセンサの分野で多く行われており, ポリマーブラシと呼ばれる 32-35). また SI-ATRP では反応時間でポリマー層の厚みを調節できるだけでなくモノマーを変更することで複数種類のポリマーを直列に接続することも出来る. この様な性質を利用して様々な機能を持つ表面が開発されている. 例えば親水性のモノマーを用いて表面へのタンパク質の吸着を抑制する防汚性ポリマー表面の研究などが行われている. SI-ATRP を用いれば様々な構造の表面を作製できる

94 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 5.3 センサ表面の作製方法 センサチップの作製には前章と同様に SIA Kit Au を用いた. その作製手順を図 5-8 に示す. まずチップをアセトン, エタノール, 2-プロパノール, 純水の順番で超音波洗浄を行う. 次に水 : アンモニア水 : 過酸化水素水 =5:1:1 の割合の混合液に浸漬し 分の処理を行った. 次に純水でリンスした後, 1 mm Bis[2-(2 -bromoisobutyryloxy)undecyl]disulfide (DTBU) in エタノール溶液に 時間浸漬し金表面上に臭化メチルプロピオン酸エステル末端を持つ SAM を形成した. 次にエタノール中での超音波洗浄後, 窒素ブローにて乾燥を行った. これ以降の作業は窒素が充てんされたグローブバッグ内で行った. グローブバッグには常に窒素が注入され陽圧状態にすることで酸素を除去した. 次にモノマー溶液 (in DMF), 触媒溶液 (in DMF), アスコルビン酸 (in DMF) を準備し, 使用前に 1.5 時間の脱気を行った. 図 5-8 ではこれらの一例として次の様な反応溶液を用いた. モノマーとしてカルボキシル基を側鎖に持つ MES (mono-2-(methacryloyloxy)ethylsuccinate), 触媒として CuCl2 TPMA (tris(2-pyridylmethyl)amine) 混合溶液 (in DMF) を用いた. これらの溶液は反応直前に混合され ATRP 反応溶液となる. DTBU の SAM が形成された金基板を ATRP 反応溶液に浸すことで DTBU から直鎖状ポリマーが成長し始める. 反応温度は40 とした. 所定時間反応後, 基板をDMFで洗浄することで反応は停止させた. 基板上に成長したポリマー層の厚みは分光エリプソメトリー SpecEl-2000-VIS (Mikropack 製 ) を用いて測定した. 次に基板を 0.4 M EDC (in water)/ 0.1 M NHS (in DMF) に 60 分間浸漬することでポリマー側鎖のカルボキシル基を NHS エステルとして活性化させた. 次に DMF でリンスした後, TNT 類似物質である DNP-hdrz (2,4-dinitrophenyl-e-aminocaproyl-NHNH2)

95 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 ( 10 mm in DMF) 溶液中に基板を 60 分間浸漬することで活性化カルボキシル基に DNP-hdrz のアミノ基を反応させ, ポリマー鎖の側鎖に DNP-hdrz を固定した. 次に DMF でリンスした後, 10 wt% ドデシルスルホン酸ナトリウム水溶液 (SDS) に基板を 60 分間浸漬し, 洗浄を行った. 最後に純水中に 12 時間浸漬し NHS エステルとなっている活性化カルボキシル基を加水分解し不活性化させた. この様な工程でセンサチップは作製された. 図 5-8 SI-(AGET)ATRP を用いた SPR センサチップの作製手順

96 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 5.4 MES と DEAEM による混合ポリマー表面 36) 前セクションでカルボキシル基を側鎖に持つ MES を使用したセンサ表面の作製法を説明したが, MES 単独ではカルボキシル基によって負に帯電するため非特異吸着が起きる. TNT を高感度に検出するためには非特異吸着を抑制する必要がある. そこで負の電荷を持つメタクリル酸系の MES に対して側鎖に三級アミノ基を持ちプロトン化されると正の電荷を持つメタクリル酸系の DEAEM(diethylaminoethylmethacrylate) を混合してポリマー表面を作製することで電気的に中性かつ親水性の表面を実現し非特異吸着の抑制を試みた. モノマーの構造を図 5-9 に示す. また ATRP の開始剤となる SAM 試薬とそうではない SAM 試薬を混合した混合 SAM を用いることでセンサ表面と抗体の親和性の制御を試みた. またこのセンサ表面を用いて TNT の高感度検出を行った. 図 5-9 センサ表面の作製に用いたモノマーの構造

97 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 混合ポリマーによるセンサ表面の作製 MES と DEAEM の混合モノマーを用いてポリマー表面を作製した. MES の正電荷を中和するモノマーとして DEAEM の様な三級アミンを用いたのは以下の理由である. DNP-hdrz を固定する前に NHS/EDC 溶液によって MES のカルボキシル基が活性化されるが, 一級アミンではこの活性化カルボキシル基と反応してしまうからである. その為, 活性化カルボキシル基とは反応しない三級アミンを側鎖に持つ DEAEM を用いた. MES と DEAEM を様々なモル比で混合し, それぞれの混合モノマーを使用して SPR センサチップを作製した. ATRP の反応溶液の内, 触媒溶液として 100 mm CuBr2 (in DMF), 100 mm PMDETA (N,N,N,N N -pentamethyldiethylenetriamine) (in DMF) を用いた. 還元剤として 100 mm アスコルビン酸 (in DMF) を用いた. 反応溶液はこれらの溶液をモル比がモノマー : 触媒 : 還元剤 =1000:2:1 となるように混合した. 反応時間はポリマー層の厚さが約 20 nm になるように調節した. この poly-mes-co-deaem 表面の MES の側鎖のカルボキシル基に DNP-hdrz を固定し TNT 抗体が結合できる表面を作製した

98 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 モノマー混合比と非特異吸着性評価 MES と DEAEM をモル比 MES:DEAEM=1:3, 2:2, 3:1 の 3 条件で混合し, ポリマー表面を作製した. 非特異吸着の評価には 25 ppm TNT 抗体, 1000 ppm リゾチーム, 1000 ppm BSA の HBS-T 溶液を 30 l/min で 2 分間センサ表面に流通させ, それぞれの吸着量を SPR センサで測定した. なお表面に吸着したタンパク質の解離は 50 mm NaH 水溶液を 2 分間表面へ流通させた. この吸着実験を各タンパク質に対して 3 回行い, その平均を求めた. 結果を図 5-10 に示す. まず MES:DEAEM=1:3 の条件ではリゾチームは吸着しないが BSA は吸着している. これはポリマー表面中に DEAEM が多く正に帯電しているため負に帯電している BSA が多く吸着し, 正に帯電しているリゾチームは吸着しない. MES:DEAEM=3:1 の条件はこれとは逆の結果になっている. これらから言えることは MES と DEAEM の混合比を変化させることでポリマー表面の帯電状態を制御できることである. MES:DEAEM=2:2 の条件では BSA が少し吸着しリゾチームは吸着していない. このことからポリマーの帯電状態を制御することで非特異吸着を抑制できることが分かった. またこの条件でも TNT 抗体は結合しているのでこれは抗原抗体反応によってポリマー上の DNP-hdrz に特異的に結合していると考えられる. 次に MES と DEAEM の比に関して詳細に最適化を行った. その結果を表 5-1 に示す. MES:DEAEM=23:17, 24:16, 25:15 の条件でリゾチームや BSA の非特異吸着が少なく TNT 抗体の結合量が多いポリマー表面を作製できている. MES の割合が少しだけ多い MES:DEAEM=27:13 ではリゾチームの吸着が起こり始めている. このため非特異吸着の少なさと TNT 抗体の結合量を多さから最適条件は MES:DEAEM=25:15 であるが, 条件が多少変化した場合の非特異吸

99 Sensor Response [ R.U. ] 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 着の危険性を考え, MES:DEAEM=24:16 を選択した. この様に DEAEM より MES の比率が大きい条件で最も非特異吸着が起き難くなる. MES のカルボキシル基は DNP-hdrz の固定に使用され, 未反応のカルボキシル基が DEAEM の三級アミンによって中和されて電気的に中性になると考えられる. そのため DNP-hdrz が固定される MES の量の分, DEAEM より MES を多くする必要があると考えられる. この様に MES と DEAEM の混合比を最適化することで非特異吸着を抑制しつつ抗原抗体反応を起こすセンサ表面を作製できた ppm anti-tnt antibody 1000ppm lysozyme ( + ) 1000ppm BSA ( - ) A; MES(-):DEAEM(+)=1:3 C; MES(-):DEAEM(+)=3:1 B; MES(-):DEAEM(+)=2:2 図 5-10 poly-mes-co-deaem 表面の非特異吸着評価

100 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 表 5-1 MES:DEAEM モル比最適化 SPR sensor response [ R.U. ] molar ratio 25ppm 1000ppm 1000ppm MES DEAEM anti-tnt IgG lysozyme BSA 混合 SAM による親和性制御 間接競合法や置換法で物質を検出するにあたってセンサ表面と TNT 抗体の親和性が重要になる. その親和性を制御するために混合 SAM を用いた. 一つは SI-ATRP において反応開始剤になる DTBU を用いた. もう一つは末端にヒドロキシル基を持つ 11-mercaptoundecanol triethyleneglycol ether (Hydroxyl EG3 undecanethiol; HEg3UT) を用いた. これらの構造を図 5-11 に示す. これらの試薬を混合し SAM を形成することで SI-ATRP の反応開始点の密度を変化させることが出来る. これらをモル比 DTBU:HEg3UT=1:10, 1:100, 1:1000, 1:10000, 1: で混合し最終的に 1 mm (in エタノール ) となる様に溶液を調整したうえで金表面に SAM を形成した. この混合 SAM 表面に対して MES:DEAEM=24:16 のモノマーを用いて poly-mes-co-deaem 表面を作製した. ATRP の反応時間は 300 秒と 600 秒の二つの条件を選択した. この反応時間で DTBU:HEg3UT=1:0 つまり DTBU のみの SAM に SI-ATRP を行った際のポ

101 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 リマー膜厚は 44 nm と 118 nm であった. そして混合 SAM の poly-mes-co-deaem ポリマー鎖に DNP-hdrz を固定した. この表面に 25 ppm の TNT 抗体溶液を 2 分間流通させ抗体の結合量の評価を行った. その結果を表 5-2 に示す. HEg3UT の割合が高くなるにつれて抗体の結合量が増している. これはポリマーの密度が低下し抗体がポリマー内部まで拡散できるようになったため結合量が増した可能性がある. また反応時間は 300 秒よりも 600 秒の方が高い抗体結合量の傾向がある. これはポリマーの鎖が長いため結合サイトの全体量が多いことが原因と考えられる. 次にこれらの混合 SAM ポリマー表面に対して 200 ppb の TNT 抗体溶液を 6 分間流通させ表面と結合させた後に 6 分間自然解離させて TNT 抗体との親和性を求めた. 結合速度定数 (Association Rate Constant), 解離速度定数 (Dissociation Rate Constant), および結合定数 (Association Constant) の算出には BIAevaluation software (version 3.2; GE Healthcare Bio-sciences) を用い, 1:1 (Langmuir) binding のモデルを適用して計算を行った. その結果を表 5-3 に示す. DTBU:HEg3UT 混合 SAM の混合比と解離速度定数の間に相関がみられる. HEg3UT の割合が大きくなると解離速度定数は小さくなる. これは先程の抗体結合量の結果と一致し, 解離速度が小さい条件ほど抗体結合量が大きくなっている. この様に ATRP の開始剤である SAM 試薬 DTBU とそうでない SAM 試薬 HEg3UT を混合させることで混合 SAM を作製し, これを用いて SI-ATRP で表面を作製することで親和性が制御できた. これはポリマー密度を低くすると抗体がポリマー内部まで拡散されやすくなり, 内部に侵入した抗体が表面から解離しにくくなるので, 解離速度定数が小さくなった可能性がある

102 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 図 5-11 DTBU と HEg3UT の構造 表 5-2 混合 SAM による poly-mes-co-deaem 表面の抗体結合量 Binding Amount of Anti-TNT Antibody [ R.U. ] DTBU:HEg3UT=1:x Polymerization Time [ s ] , , ,000 1, , ,000 1, ,

103 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 表 5-3 混合 SAM ポリマー表面と抗体の親和性 Association Dissociation DTBU: Association Polymerization Rate Rate HEg3UT Constant Time [ s ] Constant Constant =1:x Ka [Ms -1 ] Kd [s -1 KA [M] ] E E E E E E E E E E E E E E E E E E E E E E E E E E E E E E

104 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 TNT の高感度検出 混合 SAM を使用して親和性を制御したセンサチップを使用して間接競合法にて TNT の検出を行い, 検出限界を求めた. 測定には 100 ppb の抗体溶液を用い, センサ表面への流通時間は 6 分だった. チップの再生には 5 M のグアニジン塩酸塩水溶液が用いられた. その結果を表 5-4 に示す. また検出限界と解離速度定数の関係を図 5-12 に示す. この様に解離速度定数と検出限界に相関がみられ, 解離速度定数が大きくなるほど検出限界が小さくなった. これは親和性が低いほど高感度検出に有利になるという間接競合法の理論とも一致する. 次に SAM として DTBU:HEg3UT=1:10 の混合 SAM を用い, モノマーとして MES:DEAEM=24:16 の混合モノマーを用いてポリマー表面を作製した. ATRP の反応時間は 300 秒だった. このポリマー表面を用いて間接競合法にて TNT の検出を行った. この時に得られた検量線を図 5-13 に示す. 間接競合法における抗体の結合率の測定は各濃度 3 回行っている. 最も低濃度である 1 ppt の時の結合率の標準偏差の 3 倍から検出限界は 5.7 ppt となった. この様に混合ポリマーにて非特異吸着を抑制し, 混合 SAM にて親和性を制御することで TNT を高感度に検出できた

105 Limit of Detection [ppt] 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 表 5-4 センサ表面毎の検出限界 DTBU: Dissociation Polymerization LD HEg3UT Rate Constant Time [ s ] [ppt] =1:x Kd [s -1 ] E E E E E E E E E E E E E E-02 Dissociation rate constant [s -1 ] 図 5-12 混合 SAM ポリマー表面と抗体の解離速度定数と検出限界

106 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 100% Bound percentage [ % ] 80% 60% 40% 20% 0% TNT concentration [pg/ml (ppt)] 図 5-13 各 TNT 濃度における抗体結合率の検量線

107 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 まとめ SI-ATRP を用いて TNT 検出のためのセンサ表面を作製した. そのセンサ表面の非特異吸着を抑制するために, 負電荷を持つ MES と正電荷を持つ DEAEM を混合し, 電気的に中性かつ親水性のポリマー表面を作製した. そのポリマー表面と TNT 抗体の親和性を制御するためにポリマーの成長開始点となる SAM とそうでない SAM の混合 SAM を用いた. その混合比を変化させることで親和性を制御し, 間接競合法の測定より検出限界 5.7 ppt を得た. 今後は SI-ATRP の特徴を生かし異種のポリマーを直列に接続するなどしてポリマーの構造を変化させ新たなセンサ表面を作ることで, 新たな機能を持ったセンサを作製することが出来ると考えられる

108 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 5.5 MES と HEMA による混合ポリマー表面 37) 前セクションでは正と負の電荷を持つモノマーである DEAEM と MES を混合して電気的に中性かつ親水性の表面を作製した. TNT 類似物質は MES のカルボキシル基に固定した. この方法では TNT 類似物質の固定量はアミンカップリングの反応効率に依存する. そのためセンサ表面と TNT 抗体の親和性を制御する目的で TNT 類似物質の固定量を変化させたい場合はアミンカップリングの反応率を制御する必要がある. アミンカップリングは反応速度が速いため反応率を再現よく制御することは困難である. また制御できたとしても, 条件ごとに未反応のカルボキシル基の量が変化するため, MES と DEAEM の比も改めて最適化する必要がある. これらの事から DEAEM と MES の混合ポリマーでは TNT 類似物質の固定量を変化させるのは困難である. センサ表面と TNT 抗体の親和性を変化させる目的でポリマー上に固定される TNT 類似物質の量を変化させるため, MES と HEMA (2-hydroxyethylmethacrylate) の混合ポリマーを検討した. それぞれのモノマーの構造を図 5-13 に示す. MES はカルボキシル基を持つため負の電荷を持ち, TNT 類似物質の固定にも使用される. HEMA は側鎖にヒドロキシル基を持つため中性水溶液中では電気的に中性かつ親水性の性質を持つ. この MES と HEMA の混合モノマーより作製されたポリマー表面は弱く負に帯電する. これは MES の負の電荷が中和されていないためである. そのため非特異吸着が懸念される. しかし MES に対して HEMA の割合を大きくすることで負の帯電を弱め非特異吸着を抑制できるのではないかと考えた. また非特異吸着が少ない範囲で混合比を変化させることで TNT 抗体の結合サイトの密度を変化させ, 親和性の制御を試みた. そしてそのポリマー表面を用いて TNT の検出を行った

109 第 5 章表面開始原子移動ラジカル重合を用いたセンサ表面による TNT の高感度検出 図 5-14 センサ表面の作製に用いたモノマーの構造

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