JR EAST Technical Review No

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ありさひらみね
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1 JR-EAST Innovation 2015 パネルディスカッション IoT AI が変える未来の鉄道のオペレーション Future prospects of railways via IoT and AI パネリスト : 法政大学社会学部社会政策科学科大学院公共政策研究科准教授糸久正人氏 BMW Japan デベロップメントジャパン本部長ルッツロートハルト氏コマツ ICTソリューション本部ビジネスイノベーションセンター所長浅田寿士氏ソフトバンク株式会社常務執行役員 ( 法人事業統括副統括兼技術統括副統括 ) 佐藤貞弘氏東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻特任教授島村誠氏コーディネーター : 東日本旅客鉄道株式会社執行役員総合企画本部技術企画部長兼 JR 東日本研究開発センター所長横山淳 1. 社会の変化 IoT AI 時代 ( 横山 ) パネルディスカッションのテーマは IoT AI が変える未来の鉄道のオペレーションになります最初に現在世の中で起こっている事象を私から簡単に紹介致しますこれから本格的な I ot 時代が始まり物がネット接続する個数これが現在 200 億個で 2020 年には500 億個ぐらいになると言われていますムーアの法則の代表例ですが C P Uの集積度つまりコンピューターの性能も指数関数的に伸びると予想されています JR EAST Technical Review-No.54 29

2 ペッパーやワトソンに代表されるロボティクスも発展していますチェスや将棋の世界ではコンピューターが人間の能力を超える時代になってきましたこのような急速な技術の発展に加えて日本は本格的な人口減少時代を迎えましたこのような社会状況で本格的にIoT AI 時代を迎えるということはどういう意味を持っているのかまず糸久先生から解説をお願い致します ( 糸久氏 ) 社会の変化とビジネスモデルという観点からお話致します最初に強調したいことは IoT A I 時代とは産業革命であるということです産業革命の影響は全ての産業に及びます糸久正人氏法政大学社会学部社会政策科学科および同大学大学院公共政策研究科准教授 2005 年東京大学経済学部卒業 2007 年同大学院経済学研究科修士課程修了後 2011 年同博士課程東京大学ものづくり経営研究センター特任助教を経て 2013 年 4 月から現職専門は技術とイノベーションのマネジメント自動車産業を中心に欧州米国アジアアフリカとフィールドワークを行っている主な論文著書 : 標準化に対するユーザーとサプライヤーのコンセンサスオーバーラップ型製品開発におけるフロントローディングの効果複雑性の増大と系列システムの進化コアテキスト生産管理私が3 年前にケニアのマサイ村に行ったとき今やマサイ族の人たちもスマートフォンを使っていましたスマートフォンを使ってナイロビにいる親戚に観光で稼いだお金を電子マネーで送金をしているのです BOP 市場でも急速にIoT 化が進んでいます第 4 次産業革命の本質は人工知能による新たな価ご存じのように第 1 次産業革命は蒸気機関という値の実現にあるとみていますキーテクノロジーをベースとして機械生産が始まりました第 2 次産業革命では石油電力をベースにベルトコンベアによる大量生産方式が確立し大量消費社会が到来しました第 3 次産業革命のキーテクノロジーはITですそして今第 4 次産業革命の時代に直面していますこのキーテクノロジーが今回のテーマの IoT とAIになります工場のスマート化だけでなくロボット自動運転の車など新しい製品サービスが提供されると想定されます 30 JR EAST Technical Review-No.54

3 特集記事 4 Special feature article いろいろな機器がインターネットに繋がりセンシングされるそうなってくるとビッグデータがクラウド上に構築されるこのビッグデータと照合する形で機械学習がなされ人工知能がどんどん成長し予測精度が向上します次は人工知能を使ってどんな製品サービスが可能かということですが独ジーメンスの分類によると自動運転も含む自立型ロボットやチェスや将棋など専門家の知識を代替したエキスパートシステムこれにより人間系でやっている生産管理などこれらは随分と楽になることが考えられますその他 Siriみたいなデジタルアシストや人工知能による組込システムが考えられますルッツロートハルト氏 BMW Japan デベロップメントジャパン本部長 1991 年ドイツのミュンヘン工科大学で工学学士号を取得組込みデバイス関連プロジェクトのコンサルタントとして 4 年にわたり従事したのち 1995 年からは BMW Japan の多岐にわたる R&D 業務で管理職として勤務 2007 年から同社ミュンヘン本社の電気電子自動車アーキテクチャ部門のジェネラルマネージャーを務めた 2012 年より BMW Japan R&D 部門を統括している 2. 最先端の取組み企業戦略 ( 横山 ) ありがとうございましたそれではパネリストの方から事例を紹介して頂きますまず B M W Japanのロートハルト様から経営戦略についてお話頂きます B M Wの戦略は持続可能なモビリティを柱に C O2 削減を含む低環境負荷を推進していますリサイクル可能で軽量高剛性のカーボンファイバーを採用した今までになかった車の基本的な構造などが代表例ですこの他生産プロセスで発生する CO2や水資源の使用も大幅に減らし例えば電気自動車の組立て過程 ( ロートハルト氏 ) IoT や AI に代表される技術が自動車業界にとってどのような変化をもたらすかお話させで使用する電気は全て工場に設置した風力発電で賄っていますて頂きます JR EAST Technical Review-No.54 31

4 これからの持続可能なモビリティを考える上で重要な自動車の所有を超えるサービスも提供していますホーム充電の機器の提供を含む電気自動車をより便利にする 360 度エレクトリックやチャージナウ充電位置の情報サービスであるチャージポイントやチャージマスターこの他パーキングサービスであるパークナウやジャストパークカーシェアリングサービスであるドライブナウやアルファシティーに力を入れていますこの他自動車と直接関係はないサービスとして家族の位置情報サービスのライフや経路検索サービスのムービットがあります BMW グループはモビリティソリューショ ( 横山 ) ありがとうございました BMW ですら車の所有を越える新しいサービスを考えているとのこと次はコマツの浅田様お願い致しますンの生産者から提供者に変貌します自動車がスマートフォンとコミュニケーションできるなら他の車と情報通信も可能です車がIoTのTになるわけですこのサービスの課題はコストパフォーマンスですコストにも影響しますが通信方法の互換性の課題もあります周波数やプロトコルを標準化できない限り手ごろな価格でのサービスの提供はで ( 浅田氏 ) コマツは建設機械メーカーですコマツは IoT M2Mを比較的以前から実施してきましたこれはGPS 等のセンサーを建設機械に載せその情報をモバイル地上波携帯網もしくは衛星網を使ってオフィスに伝送するものです我々はこれをコムトラックスと呼んでいますきません既に走る曲がる止まるなど自動運転技術はもう難しくないレベルにあると言えます G o ogle カーも年からカリフォルニアで一般道路を走っていますし, ほとんどのメーカーにおいても高速道路で自動運転のデモを実施しました BMWにおいても昨年立体駐車場での無人の自動駐車のデモを実施しましたこのように BMWとしては自動運転が容易なケースや安全性をより高める場合にこの技術を使うつもりでいますこのように運転支援技術が徐々に改善され完全自動運転技術に発展するシナリオはもう既に見えていますあとはコネクティドドライブで路車間通信と車車間通信という技術が加えられると自動車がクラウドにつながり車のビジネスモデルが変わるのは間違いないと感じております皆様も覚えてらっしゃるかもしれませんが 20 年ほど前にニュースで毎週のように街で稼動している建設機械が夜間に盗まれそれを使って ATMを壊してお金を盗む事件がありましたそれがきっかけになり建設機械にGPSを付けて携帯網との通信接続を行うことを導入しました現在約 40 万台の建設機械が世界で動いています 32 JR EAST Technical Review-No.54

5 特集記事 4 Special feature article 浅田寿士氏コマツ ICTソリューション本部ビジネスイノベーションセンター所長 1991 年大阪大学大学院機械工学専攻修了小松製作所入社研究本部にて産業用溶接ロボットシステム半導体製造装置用ロボットなどの研究開発に従事その後油機開発センターにて建設機械用油圧機器の開発研究本部にて建設機械の省エネ技術の研究開発情報化施工用建設機械の研究開発機械データによる機械稼動および施工の見える化の研究などを経て現職このダントツサービスダントツソリューションというのはよりお客さまの現場に即したものをお客さま目線で先取りするということですコマツはコスト低減に対する支援や生産性向上に対する支援などお客さまへの支援活動に注力しています我々はビッグデータとテレマティクスを使いお客さまにここが非効率な部分ですと情報を差し上げお客さまと一緒になって現場オペレーションを改善しています我々はこれをダントツサービスと呼んでいます最善の商品をダントツ商品最善の使い方をダントツサービスとするとダントツソリューションは無人ダンプトラック情報化施行のスマートコンストラクションになりますまずは基本となるダントツ商品というものを我々はお客さまに提供しますここの一番上にありますように Together We Innovate GEMBA Worldwide ということでお客さまの現場でのイノベーションをやっていこうということですところがものづくりの売り切りだけでは良くないねということで最近ダントツサービスやダントツソリューションというものを導入してきました JR EAST Technical Review-No.54 33

6 これはオートメーション化された機械もしくは半自動の機械ですがこういう自動機械やマネジメントシステムにこの最善の使い方をインプリメントし従来 ( 佐藤氏 ) 今日はひとり同僚を連れてまいりましたペッパーになりますやあペッパー今日はわざわざありがとうは直接コマツには関係性が無いと思われていたお客さまの実施業務をも同時に最適化しお客さまにとってのゴールに向けて併走していくということが我々はダ ( ペッパー ) 佐藤さんお疲れ様です僕と一緒に JR 体操でリフレッシュしませんかントツソリューションだと考えています ( 佐藤氏 ) ぜひお願いしたいですね ( ペッパー ) 皆様今日も元気に J R 体操を行いましょう ( 佐藤氏 ) JR にお勤めの方はよくご存じの体操だと聞いております ( ペッパーが JR 体操を行う ) 全くコマツが関係ない仕事をするわけではなく実はこれらはデータで繋がっていますこれをコマツが実施してデータドリブンな支援サービスを展開しております ( 横山 ) コムトラックスは非常に有名ですがやはり始められた頃は社内でいろいろな議論があったかと思いますが ( 佐藤氏 ) ペッパーどうもありがとうではこれから私どもソフトバンクの IC T 戦略ということで今ご覧頂きましたロボティクスそれから AI を中心にお話をさせて頂きます ( 浅田氏 ) テレマティクス機器は当時は非常に高価でした提供する付加価値の将来性がイメージされてなく社内から非常に強い反対があったと聞いておりますその中で当時の役員がトップダウンでこれはサービスに使うんだということを決めて標準装備したということでその当時の役員の判断が素晴らしかったと考えています ( 横山 ) なるほどありがとうございました次にソフトバンクの佐藤様からプレゼンをお願いしたいと思います 34 JR EAST Technical Review-No.54

7 特集記事 4 Special feature article 日本はついに人口減少時代に入ったということでロボットとの共生は避けられないだろうと考えています 2040 年頃には100 億台ぐらいのロボットが我々と一緒に生活するようになって基本的に人類の全人口を越えるのではないかと想定しておりますこのペッパーでございますが感情を持ったロボットを目指しておりコミュニケーションに極めて特化したロボットでございます例えば駅での案内サービスなどもペッパーの想定される業務と考えられますこの他銀行の接客や受付とか養護介護施設であったりだとか店舗であったりウェディングであったりとコミュニケーションができるというだけで非常に多くの用途で人の代わりができる部分が見えてきました佐藤貞弘氏ソフトバンク株式会社常務執行役員 ( 法人事業統括副統括兼技術統括副統括 ) 2000 年米国大手 ISP からソフトバンクに入社後 IT ベンチャーのインキュベーション Yahoo!BB IP 電話サービスの開発 PSTN 電話サービスおとくラインの開発 I P ネットワーク上での各種サービスの開発を担当近年はソフトバンク各事業向けの仮想サービスプラットフォームの開発 IBM Watson 等の法人向け各種サービスの開発を担当更に現場対応の SE 部門の責任者として従事コグニティブコンピューティングの特徴の一つとして人間の言葉をそのまま解釈する自然言語解析がありますコンピューターですからビッグデータを扱い人がしゃべったことの意図を読み取って仮説を構築するさらには機械学習経験から学習を積んでいくという非常に新しい概念も入れた従来型の人工知能かもう一つは A I になります I BM のワトソンは人工知能 A I ではなくコグニティブだと認知するコンピューティングと I BM は言っておりますらちょっと一歩進んだものになりますしたがってペッパーとワトソンがセットになりうるということです我々の戦略上はそれぞれ単体でも使えるわけですが AI( ワトソン ) とロボティクス ( ペッパー ) というのは今後の日本の社会世の中を大きく変えていくテクノロジーになるだろうと我々は信じています社内ではソフトバンクブレインというプロジェクトが動いています社内の情報とかをワトソンに全部食べさせてワトソンに社内管理のエキスパートになってもらうプロジェクトですこの他コールセンターや保険会社人材派遣会社等で社内情報を一括管理してお客さまとのコミュニケーションを介してお勧め商品サービスの提供を行うことに使えるのではないかと現在様々なソフトバンクのお客さまと相談検証を進めているところです JR EAST Technical Review-No.54 35

8 ( 島村氏 ) 私からは鉄道の安全防災の話を例に説明させて頂きますソフトバンクはネット基盤の構築に力を注いできておりますがこれらワトソンペッパーはクラウドにつながっていまして新たなコンピューティングパワーを皆様にご提供し新たな世界観を実現したいと考えております絶えず進化し続けましょうということが我々のキーワードになっておりますこれが現在の J R 東日本の防災情報システムになりますこのシステムは JR になってから早い時期に他の鉄道に先駆けて導入しました機器とネットワークをつ ( 横山 ) 佐藤様それからペッパーありがとうございましたところでペッパーは月に何台ぐらい売れていますかないで指令でリアルタイムに機器の状態が見れ各機器に対してあらかじめ定めた物理量の値 ( 閾値 ) と比較して列車の運転制御方法を講じるというものですただし観測地点は大まかな離散的な配置になっ ( 佐藤氏 ) 月 1000 台ぐらいです毎月 1 日にウェブで募集をしていますが大体 1 分で毎回売り切れていますていますその後 JR 東日本の設備部が今から 10 年前と記憶していますが特に鉄道インフラの防災のためのセンシングを大々的に実施しようとイメージ図をプロのイラスト ( 横山 ) ありがとうございました IoT AI 時代は安全安心ということも一つのキーワードになります防災安全の専門家の島村先生からのプレゼンをお願レータに書いてもらった貴重な絵があります土木技術センターのイメージ図もありますが現地に行かずモニター画面で見ているイラストが載っていますいします 36 JR EAST Technical Review-No.54

9 特集記事 4 Special feature article IoT AIをつなぐものとして防災安全においてもビックデータの活用が重要と考えておりますこれまでの鉄道の安全対策というのは過去に経験した事故だとか災害というものを二度と起こさせないために詳細な事後の検討を加えて対策をしてきました過去の経験が少ない想定できないものをあらかじめ予測するということは非常に困難なことです今後の新しいビッグデータの活用による防災対策安全対策の一つの代表的な活用の仕方としてはビックデータを用いた異常値の検出というところにあると思います簡単に言いますと全体データを残し今観測しているものが正常な値の分布からどれだけ離れているかということを正確に評価することです島村誠氏東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻特任教授 1978 年東京大学農学部林学科卒業同年日本国有鉄道入社 1987 年 JR 東日本入社 1990 年 JR 東日本安全研究所主任研究員 1991 年から1992 年までマサチューセッツ工科大学 (MIT) 研究員 2006 年 JR 東日本研究開発センター防災研究所所長主として鉄道土木構造物のメンテナンスおよび防災特に災害に対する列車運行管理の適正化に関する研究開発に取り組む 2013 年より現職現在 JR 東日本ではさらに進んだ面による異常気象の検知の研究を進めていますここに挙げましたドップラーレーダーによる探知システムというのはかなり実用化に近いところまで開発が進んでいると聞いてお私の研究室ではさらに新しい取り組みとしてドップラーライダーの観測による防災対策を勉強していますりますこれは京都大学の生存圏研究所と共同でやっていまドップラーレーダーを使って竜巻を起こす積乱雲の中の空気の流れを水滴の動きで捉えドップラー効果から検出してその進路方向を予測するもので危険な時刻に危険な方向にその竜巻の進路がある場合に運転規制を支援するというものですすがドップラーレーダーが空気中の水滴によるものですので実際に積乱雲が出た状態でないと検知できないのに対してこのドップラーライダーは空気の中のエアロゾルという細かいちりに対して同じことをやっていますので晴天時の雲が出ていないときの空気の動き竜巻になる前の予兆現象を検知することができるわけですこのデータを用いてスーパーコンピューターによるシミュレーションを組み合わせることで詳 JR EAST Technical Review-No.54 37

10 横山淳東日本旅客鉄道株式会社執行役員総合企画本部技術企画部長兼 JR 東日本研究開発センター所長東京工業大学土木工学科卒業 1981 年日本国有鉄道入社 1987 年 JR 東日本入社同社において仙台支社設備部長本社設備部次長 ( 保線担当 ) パリ事務所長 JR 東日本研究開発センターテクニカルセンター所長 2015 年より現職コンピューター側から我々人間に対していろんなことをサジェスチョンしてくれて今だけその人だけのカスタマイズされた情報を提供してくれる社会が予想されます細なエリアの例えば風況マップとか洪水の予測といったものが非常に高い精度で可能になると期待されています具体的な例は東海道本線でドップラーライダーによる観測をこの 10 月 20 日から開始したところです将来これを単独のドップラーライダーではなく複数のドップラーライダーを使って協調観測により列車毎に詳細な突風の観測警報発令にすることでより安全で合理的なシステムになることを期待しています次に産業界からみて気を付けなければいけないこととして真のニーズに基づくラディカルイノベーションこれは既存の技術が破壊されてしまうイノベーションが起こる可能性があるということですその結果例えば携帯電話でいうとノキアモトローラーソニーエリクソンからApple Google そしてシャオミへと主要企業がガラッと変わってしまったように産業構造の大転換が起こる可能性があります最後 3 点目はリスク社会がより一層先鋭化してくるだ 3. 社会の未来像鉄道の未来像 ( 横山 ) ありがとうございましたでは糸久先生これからの社会について我々企業が考えるべきことを解説いただけないでしょうかろうと思いますリスク社会というのはドイツの有名な社会学者ウルリッヒベックが提唱した概念です一つはリスクを空間的時間的に限定できない二つ目に多様なリスクの責任の所在を明確にできない三つ目が大規模なリスクの被害を補償できないこの 3 点を彼は挙げ ( 糸久氏 ) 三つの観点からどのような社会になるのかということをお話したいと思います I ot A I 時代を考えると幾つかの側面がありますが一つ大きな変化としてコンピューター側から我々人ていますいろんなものがネットにつながってしかも判断を人工知能でやるという社会になってきたら一体リスクをどのように捉えるのか誰が責任を持つのかなど非常に大きな問題になってくるだろうと考えられます間に作用する世界が到来しますアンビエント社会といいますひと昔前まではユビキタスという言葉がありました情報デバイスが至る所にあるという世界がユビキタス社会です例えばアンビエント社会だと 38 JR EAST Technical Review-No.54

11 特集記事 4 Special feature article ( 横山 ) ありがとうございました今までのディスカッションを踏まえて未来の鉄道を考えてみたいと思いますアンビエント社会などを踏まえて実空間とクラウドを常時つなげ安全安心それからサービスマーケティングメンテナンスに関わるコスト構造エネルギー環境戦略をIoT AIで変革していきたいとこのように考えています次に我々が提供しているオペレーションサービスですねダイヤどおりに走らせるというのは当然ですが状況に応じてオンデマンドなオペレーションも考えていく必要があります混雑予測などをリアルタイムに取って必要によっては増発することをフレキシブルに実施するこういったことが必要だろうと考えられますそれから Door to Doorですねこれは真のニーズになりますがお客さまは家から出て駅まで来てそこから目的地まで行きます心地よいモビリティの提供がお客さまにとっての真のニーズだと思いますのでこれをいかにシームレスなモビリティとして提供できるかこういった観点が絶対必要だろうと考えています実際に Door to Doorにつきましては先ほどガリヴェル副総裁から説明がありましたようにパリ交通公団やドイツ鉄道がアプリによるナビゲーションを取り組んでおりますさらにフランス国鉄も取り組んでいますサービスではアンビエント環境の意味ですがクラウドコンピューターからカスタマイズされた今だけここだけ私だけの情報がリアルタイムにその人にサービスされるわけですこういったアンビエント社会にふ当然鉄道界としてこういった取り組みは必要と考えられますサービスつきましては先ほどのロボットの使用を考えておりますさわしい情報提供の実現そういったことを鉄道事業においても必要となってくると考えています 4. ディスカッション安心安全人の役割スピード & リーダーシップニーズの先取りエコシステム ( 横山 ) 以降 IoT AI 時代アンビエント社会を実現するための課題や重要点を議論していきたいと思います JR EAST Technical Review-No.54 39

12 ここにいくつかテーマを挙げてみました安全安心人の役割スピード & リーダーシップニーズの先取り社会的コンセンサスエコシステム安全とか防災におけるビッグデータの活用の一つとして非常にパワフルな基本的な使用方法になるのではないかと考えておりますですまずは安全安心についてです島村先生スペースシャトルのチャレンジャー号の事故について詳しく ( 横山 ) なるほど非常に示唆に富むお話です糸久先生さらに解説をお願いできますでしょうか解説願えないでしょうか ( 糸久氏 ) 基本的な考え方は品質工学の創始者田口玄一先生のマハラノビスタグチメソッド (MT 法 ) の考え方に近いのかなと思っています彼はトルストイのアンナカレーニナを引用して幸せな家族はどれも皆同じように見えますが不幸な家族にはそれぞれ不幸の形があるということで異常値の研究をやると想定外が多くなかなか真理を見いだせないこういうことを言っています ( 島村氏 ) この事故は大変有名な話ですこれは安全に対する意思決定の際のデータの扱い方になりますこの事故はスペースシャトルのブースターの Oリングが打ち上げ時の低温のために不具合があって燃料漏れを起こして爆発事故になりました NA SAの幹部には Oリングが不具合のあったフライトを温度の関数として表した図を提出しています確かに低い温度になると不具合数が多いとも言えますが正常データがありませんので最終的にはこれは必ずしも温度だけの問題ではないということで打ち上げが強行されて事故に至りましたこの下の図は正常データを加味したものです高温時には不具合はないことがわかりますこのような推論をするときには正常値と異常値の離れ具合を分析することで今まで経それよりも正常値をきちんと研究することの重要性を述べています正常値はいろんな単位で測れると思いますがそれを一つの尺度でまとめたのがマハラノビスの距離というものですこれを基準に閾値を超えたら故障の予兆として捉えることこのような安全安心の追究の仕方があるのではないかと考えられます験したことのない事故の予兆が科学的に抽出できるわけです 40 JR EAST Technical Review-No.54

13 特集記事 4 Special feature article ( 横山 ) 当社も正常なデータを含めて計測するビッグデータ時代にふさわしいことをやっていきます ( 浅田氏 ) 無人ダンプトラックの例ではオペレータがいなくなるわけですより創造的な仕事例えば鉱山現場ですとコースの設計やメンテナンスなどの人の判断が必要な部分に携わることになりますマネージャー層はお客さまの真のニーズの追究になりますし経営層はビジネスモデルを考え判断をトップダウンで実施することになります我が社ではコムトラックスの導入がまさにその判断でしたトップダウンでしか成し得ないものだと思っております ( 横山 ) ありがとうございました今の話を簡単にま 11 月から新しい車両が山手線を走ることになりますこの車両にはモニタリング装置をたくさん付けておりますので空調設備ドアとかいろいろなデータをモニタリングしながら走ります次は人の役割ですこういった時代になると単純に人の仕事が機械に奪われることが想定されますが糸久先生はどのようにお考えですかとめてみるとこのようになるかと思います糸久先生が言われたように人もの金が経営資源と言われていたものが人それからデータ AIというものがより中心になってくるであろうと経営者マネージャーホワイトカラー層などの役割は異なりますが A Iの力を借りながらまさに新しい価値の創造をしていくことになろうかと思います糸久先生これでいかがでしょうか ( 糸久氏 ) 従来経営資源はヒトモノカネと言われてきました IoT A I 時代を考えるとこれに加えてビッグデータとA Iが重要な資源になってくると思いますそのようなときヒトの役割はビッグデータ A Iを使ってどういうビジネス顧客の真のニーズを満たしていけばいいのかというより本質的な仕事にシフトしていきますそういった意味でヒトの役割はより一層重要になってくると考えております ( 横山 ) 浅田様コマツは先進的な取り組みをされていますが人の役割についてお考えはありますか ( 糸久氏 ) 経営層の中でビジネスモデルの構築がやはり一つの大きな課題になってくると思いますそしてもう一つ重要なことはアンビデクスタリティです日本語にあえて訳すなら両利きとか両刀使いとかそのようなニュアンスの言葉になります JR EAST Technical Review-No.54 41

14 ( 横山 ) 次はニーズの先取りですねロートハルト様お考えを説明いただけますか ( ロートハルト氏 ) 新しい車の開発に7 年程度かかりますその意味でニーズの先取りの期間は7 年になります今までですと技術の動向調査をやっていました車の材料 CPUのパワーとかこの他ビッグデータとか A I 技術の進捗も 7 年後を予測しますお客さまのニーズだけではなくて好みも大切であると考えていますそ片方は従来のものづくりを大切にし品質保証しながらしっかりやっていくことと同時にもう片方は IoT A I 時代のソフトウエアなどことづくりの進化に柔軟に対処することになりますものづくりとことづくりの進化スピードは全然違うわけですねこの二つのマネジメントモードを有し両利きの経営をしていかなけれこで将来の社会変化や好みを理解するためあるいは答えるために先ほど説明しましたムービットのようなアプリビジネスが重要になりますアプリの開発は車の開発期間に比べますと非常に短く顧客のニーズや好みのパターンの分析将来予測に A I を用いることは将来のビジネスには不可欠と考えていますばいけません ( 横山 ) 分かりました最後にエコシステムについ ( 横山 ) ソフトバンクの佐藤様は社内の技術開発て糸久先生にご説明をお願いしますでスピードが要求されるかと思いますがいかがでしょうか ( 糸久氏 ) ポイントはイノベーションの効率性あるいはイノベーションのスピードということになります真 ( 佐藤氏 ) 昨今ですとイノベーションのスピードが非常に速くて特にソフトウエアの世界ではディスラプティブなイノベーションがあっという間に起きます時間とお金をかけて開発してもいざ世の中に出そうとすると根底からひっくり返すようなイノベーションが別会社からのニーズを考えたとき全ての技術全ての特許を JR1 社で持っているかというとそれはないと思いますあるサービスを全て1 社でやろうと思ったら当然時間もかかりますし他社に先を越されてしまうことも考えられます出てきてしまうつぎ込んだリソースやお金をどうやって回収するのかということに直面をするわけです今必要とされるのは卓越したリーダーシップで価値のあるゴールを設定し逆算で現在からの工程が決められ技術開発を行うスタイルだと思います厳しいゴールに合わせこむことで多分スピード感を顧客の皆様から評価していただいているのかと思います 42 JR EAST Technical Review-No.54

15 特集記事 4 Special feature article そこでビジネスエコシステムをいかにして構築するのかというのがポイントになります今までは自分たちがいかに勝つかを考えてきたと思いますがそうではなくてパートナー企業といかに Win-Winの関係を結んで真のサービスを素早く提供していくかこういうことが重要になってくると考えられるわけです新しいプレーヤーが入ってきて新陳代謝が起こるそしてこのビジネスエコシステムの中でも特に重要なのが I ot とA I そしてビッグデータを核としたデジタルエコシステムというものでプラットフォームをベースにいろんなアプリケーションが展開されていくということが一つのポイントだと思いますその際に重要になってくるのはつながり方で ( 浅田氏 ) 現在他企業の皆様も同じようにトライされていますやはりリスクを負って早く着手するということが先行者利益になると思われます建設機械の盗難防止ということを一つのキーワードとして M 2M がスタートしたわけですけどもやり始めて分かる自分たちでさえ想像してなかった使い方というのが次から次へといろんなアイデアが出てくるわけですねこれっていうのはやはりやらないことには分からないっていうところがございますので今の時代皆同じことを考えるんだろうけれども先ほどのエコシステムのような体系を構築してできるだけ早く導入立ち上げをしていくっていうことが大事なことであろうと考えておりますこれは標準という形で提供されることが必要となりますいろいろなプレーヤーにプラットフォームに参入してもらい多様性を確保するその多様性がデジタルエコシステムによって実現され顧客の手元に届くことで個々の真のニーズに柔軟に答えることが可能とな 5. まとめ ( 横山 ) ありがとうございます時間がなくなってしまいました最後にこの議論のまとめを簡単にしたいと思いまするのです ( 横山 ) 他企業と Win-W i n の関係をつくりながら顧客から見ると新しい価値が次々と生まれていくこういったシステムをつくり上げるというのが重要だということですねありがとうございました多くの質問を頂いていますが時間の関係上 1つだけお聞きしますコマツの浅田様にですがコムトラックスは非常に有名でスマートコンストラクションも素晴らしいソリューションです他のライバル企業も実施されていると思いますがいかに差別化を図っていくかその辺についてのお考えをお教えください糸久先生のお話から IoT AI 社会の意味というのは産業革命と同じ全産業に及ぶアンビエント社会ラディカルイノベーションアウトカム社会で真のニーズを捉える必要があるということになりますまさに企業の再定義ビジネスモデルの構築こういったものが求められるということだろうということであります JR EAST Technical Review-No.54 43

16 いろいろな課題がありますが人の役割ということをお話ししましたけれども経営の中でデータを使い経営判断していくか新しいサービスを考えるかそして新しい価値の創造を目指して未来の顧客のニーズを捉えるということが必要だろうと考えております本日の議論を参考にさせていただいて鉄道の未来においてまさに Station to Station から Door to Door へまたアンビエント社会にふさわしいサービスの提供こういったことをぜひ考えていきたいと思いますこれでパネルディスカッションを終了させて頂きますご静聴ありがとうございました 44 JR EAST Technical Review-No.54

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JR EAST Technical Review No The Outline of JR-EAST Innovation 2015 JR-EAST Innovation 2015 IoT AI が変える未来の鉄道のオペレーション 2015 年 11 月 9 日ホテルメトロポリタン ( 池袋 ) にて JR-EAST Innovation2015 を開催し約 1,200 名の方にご来場頂いた東日本旅客鉄道株式会社 ( 以下 JR 東日本 ) では