スペクトラムアナライザの基礎 Lite Product Introduction
スペクトラムアナライザとは? 電気信号を周波数別に 目に見える形で表示する測定器です 被測定信号に含まれる各周波数成分が 周波数軸上の対応した位置に 振幅の大きさとして表示されます スペアナと略して呼ばれています アンリツのスペアナラインナップ MS269x Series MS2830A MS272xT MS271xE 2
スペクトラムアナライザの表示方法 オシロスコープ波形 ある周波数を出すと 高調波成分も出てしまいます 波形が歪むので歪み成分とも呼ばれます 電力 0.11 mw (-9.6 dbm) スペクトラムアナライザ波形 周波数成分スペアナ出力電力換算値 基本波 -10 dbm 0.1 mw 2 次高調波 -20 dbm 0.0 1mw 3 次高調波 -54 dbm 4.0 nw ( 合計 ) 0.11 mw 3
タイムドメインと周波数ドメイン タイムドメイン 時間的な変化を見られます 信号の各成分が重なり 周波数分析が難しい 周波数ドメイン 複雑な信号の各成分を簡単に分離できます 低レベルの信号ひずみの検出ができます スプリアス成分の測定ができます 4
スペクトラムアナライザの原理 入力信号 ATT f IN f L MIX f IF IFフィルタ (RBW) 対数増幅器 縦軸信号 検波器 ビデオフィルタ (VBW) ローカル信号 f IN =f L ±f IF 式 1 横軸信号 ディスプレイ 横軸信号レベル 1V ( 右端 ) 0V ( 左端 ) Start S ローカル信号周波数 top 図 2-2 ローカル周波数対横軸信号レベル 掃引信号 ( ランプ ) 図 2-1 スーパーヘテロダイン方式 基本ブロック図 5
スペクトラムアナライザの原理 信号入力 A MHz ミキサ ミキサ出力 C MHz IF フィルタ フィルタ出力 D MHz Local 入力 B MHz 局部発振器 (Local Oscillator) C MHz:B+A and B-A B-A=D MHz: 固定 (IF 周波数 ) A=B-D D と B はスペアナ内部の信号なので既知であり 入力された A の信号が分かる 6
スペクトラムアナライザの原理 測定ポイント数は機種により異なる 選択可能の場合もある 501 や 1001 が多い最新では 10001 もある 管面周波数設定 Local 発振周波数 IF 周波数 0 MHz 50 MHz 100 MHz 150 MHz 200 MHz 10 MHz 60 MHz 110 MHz 160 MHz 210 MHz 10 MHz 10 MHz 10 MHz 10 MHz 10 MHz 全測定ポイントが 10 MHz という同一条件で測定される 7
スペクトラムアナライザの原理 周波数ダウンコンバートの方法 スーパーヘテロダイン 1 st Local 2 nd Local 3 rd Local Low-IF Local Local 周波数は入力周波数に近くスーパーヘテロダインの 3 段分を 1 段で落とす ダイレクトコンバージョン Local Local 周波数は入力周波数と同じ 8
設定項目 1. 設定項目 2. 周波数の設定 3. 振幅の設定 4. 分解能帯域幅 (RBW) ビデオフィルタ (VBW) 5. 掃引時間 (Sweep Time) 掃引時間と RBW 6. 減衰器 7. 検波モード 8. 時間軸の測定 9
スペクトラムアナライザの設定項目 1/2 (1) 周波数 (Frequency Span) Center Frequency /Span( 中心周波数 周波数幅 ) Start Frequency / Stop Frequency( 開始周波数 停止周波数 ) (2) 振幅 (Level Amplitude) Reference Level( 基準レヘ ル画面の一番上のレヘ ル ) Log Scale( 縦軸の 1 区分 division) Linear Scale Offset Correction( 補正値 ) Pre Amp(On/Off) (3) フィルタ BW Resolution Band Width ( 分解能帯域幅 ) Video Band Width( 映像帯域幅 ) 10
スペクトラムアナライザの設定項目 2/2 (4) 掃引速度 (Sweep Time) Repeat/single (5) 減衰器 (Attenuator) (6) 検波モード (Detector) Normal Positive Peak (Quasi-Peak) Negative Peak Sample RMS( 実効値 ) Average( 平均値 ) (7) 表示 データ処理 (Storage) Average Max Hold Min Hold (8) その他 Marker 機能 Measure 機能 Time 機能 ( 時間軸 ) Over Write 等 Trig/Gate 機能 11
周波数の設定 周波数 (Frequency Span) Center Frequency /Span( 中心周波数 周波数幅 ) Start Frequency / Stop Frequency( 開始周波数 停止周波数 ) Span スタート周波数 ストッフ 周波数 中心周波数 12
振幅の設定 1/2 振幅 (Level Amplitude) リファレンスレベル一番上のライン ログスケール 13
振幅の設定 2/2 単位 :Unit 電力 W dbm 0 dbm = 1 mw dbm = 10*Log(X mw/1 mw) 電圧 V dbμv dbmv dbμv e.m.f 0 dbμv = 1 μv dbμv = 20*Log(XμV/1μV) 電界強度 W/m dbm / m dbμv/m 測定した値にアンテナ係数で補正した値 W = V( 電圧 )*I( 電流 ) W = (V * V) / 50 V = W * 50 I = V/R( 抵抗 ) R:50 オーム 14
分解能帯域幅 (RBW) * 測定法で必ず指定されます RBW の設定 :IF フィルタの 3 db 帯域幅の設定 MIX IF フィルタ (RBW) 検波器ビデオフィルタ (VBW) 入力信号 ATT f IN f IF 3 db 帯域幅 f IF IF フィルタ 15
分解能帯域幅 (RBW) * 測定法で必ず指定されます 選択度 = 60 db 帯域幅 3 db 帯域幅 ( 例 ) MS2830A の仕様 選択度 4.5:1 ( ガウス フィルタ Gaussian Filter) 狭い RBW を選択すると 3 db 帯域幅と 60 db 帯域幅がともに小さくなり周波数分解能が上がります よって ノイズフロアレベルも下がり 低い信号を見ることができます 16
ビデオフィルタ (VBW) * 測定法で必ず指定されます 雑音レベルに埋もれた微弱な信号を測定する場合に効果を発揮します ( 例 ) MS2830A の仕様 1 Hz~10 MHz,Off が選択可能 VBW 10 khz VBW 10 Hz VBW を低くすると雑音性の信号を除去できます しかし パルス的な信号を測定する場合には VBW を低くしすぎると信号が見えなくなります 17
掃引時間 (Sweep Time) ローカル信号の周波数が変化 = 管面左から右へ測定周波数が変化 周波数 Sweep または日本語で掃引 ( そういん ) と呼びます 掃引時間の設定は Span 幅 RBW VBW と関連しています f L ローカル信号 横軸信号 掃引信号 掃引 18
減衰器 ATT 最適入力レベルは ミキサ入力に信号を加えたとき 測定に影響を与えないひずみレベルを規定したものです 入力信号とひずみのレベル関係は 入力コネクタではなくミキサ入力レベルで規定されています よって入力信号は RF 減衰器で最適なミキサ入力レベルに減衰して測定します ここの信号レベル 入力信号 ATT MIX Local OSC. アンリツの代表的な最適レベル :-30 dbm 19
検波モードの選択 * 測定法で必ず指定されます Normal: ノーマル現在のサンプルポイントから次のサンプルポイントまでの間に存在する最大 最小レベルの両方を表示します Pos Peak: ポジティブピーク尖頭値 ( せんとうち ) 現在のサンプルから次のサンプルポイントまでに存在する最大レベルをホールドして表示します ノイズレベルに近い信号のピークを測定するときに有効です Sample: サンプル各サンプルポイントの瞬時の信号レベルを表示します 雑音レベル測定やタイムドメインなどで使用します Neg Peak: ネガティブピーク現在のサンプルポイントから次のサンプルポイントまでに存在する最小レベルをホールドし表示します 20
Trace Storage モードの選択 掃引ごとに同じ周波数のポイントごとに測定データを保存 (Storage) し 最大値 最小値 平均値などを表示する機能 表示モードとも言う Normal : ノーマル掃引ごとにトレースデータを更新し表示します 通常の測定に使います Max Hold : マックスホールド 最大値掃引ごとに 以前の横軸ポイントのトレースデータと新しいトレースデータの比較を行い 大きい方を表示します バースト信号の波形確認などに用います Min Hold : ミニマムホールド 最小値掃引ごとに 以前の横軸ポイントのトレースデータと新しいトレースデータの比較を行い 小さい方を表示します Lin Average : リニアアベレージ リニア平均 ワット平均ログ表示モード (dbm) において リニア値 (W) における平均化処理を行い 結果はログで表示されます Average : アベレージ Log 平均掃引ごとに 横軸ポイントにおいて平均化の演算を行い その結果を表示します Average:(-1 dbm+0 dbm+1 dbm)/3=0 dbm Lin Average:(0.78 mw+1 mw+1.26 mw)/3=1.01 mw 0.043 dbm 21
性能評価項目 1. 最適入力レベル 2. 最大入力レベル 3. 測定周波数範囲 4. 側波帯雑音 5. ダイナミックレンジ ( 平均雑音レベル 残留レスポンス ひずみ ) 6. 管面ダイナミックレンジ 22
最適入力レベル 最適入力レベルは ミキサ入力に信号を加えたとき 測定に影響を与えないひずみレベルを規定したものです 入力信号とひずみのレベル関係は 入力コネクタではなくミキサ入力レベルで規定されています よって入力信号は RF 減衰器で最適なミキサ入力レベルに減衰して測定します 入力信号 ここの信号レベル ATT MIX ( 例 ) MS2692A の仕様 Local OSC. 2 次高調波ひずみ <-90 dbc ( ミキサ入力 :-10 dbm) 23
最大入力レベル 最大入力レベルは 入力回路部の損傷レベルを指します 規格値以上の電力を入力すると破損します 損傷レベル MIX 入力信号 ATT Local OSC. ( 例 ) MS2692A の仕様 +30 dbm( 入力 ATT 10 db) 24
測定周波数範囲 測定周波数範囲は IF フィルタの中心周波数とローカル発振器の周波数範囲によって決まります 入力信号周波数 = ローカル信号周波数 - IF 周波数 IF フィルタの出力は 入力信号とローカル信号が混合され IF フィルタの中心周波数 fc に一致したときに IF フィルタから出力され 画面に表示されます Input Signal (0~300 MHz) IF Filter (fc=200 MHz) (200 MHz) Local OSC. (200~500 MHz) f 25
側波帯雑音 内部のローカル信号源がもっている雑音で 波形のすそのところに現れます 側波帯雑音は信号純度を示し 近傍信号解析の性能はこの特性で決まります 分解能帯域幅 (RBW) を十分狭くし 高純度の信号を入力したとき 中心から何 khz 離れて何 db 落ちるかで規定されます ローカル信号源は 点線のスペクトラムが理想ですが 実際には実線のような側波帯雑音をもっています 近傍に A または B 信号があると側波帯雑音にマスクされて検出できなくなります Ideal 26
ダイナミックレンジ 雑音レベル 残留レスポンス ひずみのいずれにもわずらわされずに測定できる範囲を言いますが メーカー共通の定義がなく どこを基準にするかで値が違ってきます 1. 平均雑音レベル 2. 残留レスポンス 3. 2 次高調波ひずみ 4. 2 信号 3 次ひずみ 27
1. 平均雑音レベル 内部で発生する雑音は 熱雑音とトランジスタや IC など能動素子から発生する雑音が主要因です そのため平均雑音レベルは 測定できる入力信号の下限レベルになります 平均雑音レベルの表示方法は メーカーにより異なり測定条件で表示したり 1Hz 当たりに換算した値で表示されています Pn( 平均雑音 )=10log 10 (ktb)+n0 で計算されます k: ボルツマン定数 (1.38054 10-23 J/K),T: 絶対温度 (K) B:IF 帯域幅, N 0 : 雑音指数 ( 能動素子 ) ( 例 ) MS269xA の仕様平均雑音レベル < -155dBm/Hz (f 0 =2 GHz, ATT 0dB) 28
2. 残留レスポンス 入力信号を加えていないのに 画面上に入力信号があるように現れる現象を残留レスポンスと呼びます 原因は 内部で使っている各種発信器の基本波やその高調波が複雑に混合され IF 周波数と一致したときに現れます 平均雑音レベルは全周波数帯域に関係するのに対し 残留レスポンスは特定の周波数帯に現れ 測定できる入力信号の下限レベルに影響します ( 例 ) MS269xA の仕様 残留レスポンス < -100 dbm (f 0 =2 GHz 帯 ) 29
3. 2 次高調波ひずみ 入力ミキサに大きな振幅の入力信号が入力されると ミキサはひずみが発生して 入力信号の 2 倍 3 倍周波数の高調波が出てきます ( 例 ) MS269xA の仕様 2 次高調波ひずみ < -90 dbc (f 0 =2 GHz, ミキサ入力 -30 dbm) -30 dbm 10 db 90 dbc 20 db 30 db 基本波を 10 db 大きくすると 2 次高調波ひずみは 20 db 3 次高調波ひずみは 30 db 大きくなります f0 f2 f3 f0 f2 f3 30
4. 2 信号 3 次ひずみ 2 つの大きな振幅の近接した周波数の信号がミキサ入力に加わると 2 つの信号は相互に影響しあい 入力信号に含まれない周波数が現れます ( 例 ) MS269xA の仕様 2 信号 3 次ひずみ < -74 dbc (f 0 =2 GHz ミキサ入力 -15 dbm) -30dBm -89dBc 2f 1 -f 2 f 1 f 2 2f 2 -f 1 31
スペアナ使用上の注意事項 1. 測定前にキャリブレーションを行うこと 2. 設定条件により波形 測定値が変化する RBW VBW Sweep Time 検波モード 波形処理 (Avg 等 ) により波形測定値が変化する データの互換性には同一設定条件にて測定することが必須 3. ミキサへの過入力により信号が歪むディスプレイ上に表示されている信号以外にも信号が存在している場合があります ( 特にアンテナ使用の場合 キャリア信号を抑圧無しでスプリアスを測定する場合等 ) 適切な ATT およびフィルタを選択する必要有り 4. バースト信号の測定横軸測定ポイント数から 1 ポイントにバースト ON が入るように Sweep Time を設定する 時間軸で確認すると分かり易い 波形観測だけなら MaxHold 機能でも良い 32
2016-2 MG No. MS2830A-J-Z-4-(1.00)