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我が国の将来宇宙輸送システムに関する動向 ( 民間 ) 安価な小型ロケット開発や再使用型のサブオービタル飛行用スペースプレーンの実現を目指した研究開発が実施されている サブオービタル飛行用スペースプレーンに関する取組 完全再使用型弾道宇宙往還機 (PD エアロスペース株式会社 ) パルス燃焼技術によるジェット燃焼モード / ロケット燃焼モード切り替えエンジンを搭載し に離陸して高度 100km まで到達し 帰還するスペースプレーンの開発を目指す サブオービタル飛行による宇宙旅行 観測 実験等と 多目的地球観測を想定 PD エアロスペース 小型ロケット開発に関する取組 HASTIC DARPA CAMUI ロケット (HASTIC 北海道宇宙科学技術創生センター ) 固液ハイブリッド燃焼を利用したエンジンにより 低価格 ( 従来の小型固体燃料ロケットに比べて打上げ価格 10 分の 1) 安全 低環境負荷の小型ロケット開発を目指す 観測 微小重力実験 衛星部品の動作確認などに利用 CAMUI 型ハイブリッドエンジン 小型液体燃料ロケット (SNS 株式会社 ) 独自開発の小型液体燃料ロケットエンジンにより 超小型衛星軌道投入用ロケット ULSLV(Ultra Light Space Launch Vehicle) の開発を目指す 2013 年に推力 500kgf 級ロケットの打ち上げに成功 ( 到達高度 6535m) 北海道大樹町役場 500kgf 級ロケットすずかぜの打ち上げ 25

将来宇宙輸送システムの性能諸元 各国において使用目的に応じたシステム構想が検討され 実用化に向けた研究が進められている Launcher One ( 米国 ) Dream Chaser ( 米国 ) Reusable Falcon ( 米国 ) Lynx Mk III ( 米国 ) SKYLON ( 英国 ) Spece Liner ( 欧州 ) SOAR ( 欧州 ) JAXA リファレンスシステム ( 日本 ) Virgin Galactic SNC SpaceX SpaceX Reaction Engines XCOR Aerospace DLR Swiss Space Systems 運用開始 2016 年 ~ 2016 年 ~ 不明 2014 年 ~ 2022 年 ~ 2050 年頃 2018 年 ~ 2040 年頃 方式 3 段式 (SpaceshipTwo 母機 +2 段式使い切り ) TSTO 1 段 :Atlas V 2 段 : 再使用オービタ TSTO TSTO SSTO TSTO ( 二地点間サブオービタル機 ) 3 段式 1 段 :A300 2 段 : 再使用ブースタ 3 段 : 固体使い切り 打上能力 225kg 乗員 1 名 + 乗客 6 名不明 650kg 12 トン乗客 50 名 250kg 乗員 8 名 離陸方式 着陸方式 推進薬 + 空中発射 ( 母機のみ ) LOX/ ケロシン ( 使い切りロケット ) 垂直垂直垂直垂直 垂直 N 2 O 4 /HTPD ( 再使用オービタ ) 垂直 LOX/RP-1 ( オービタ ブースタ ) LOX/ ケロシン 空気 /LH2 LOX/LH2 ( オービタ ブースタ ) (1 段 2 段 ) TSTO LOX/LH2 不明 LOX/ エタノール エンジン 不明 ハイブリッドエンジン Merlin 1D エンジン XR-5K18 RBCC 2 機 (SABRE) 二段燃焼サイクル 不明 ロケット ( サイクルは検討中 ) 推力不明不明 1 段 :70.4 トン 9 2 段 :70.4 トン 1 1.3 トン 4 138 トン ( 空気 ) 184 トン (LOX) 1 段 :225 トン 9 2 段 :231 トン 2 不明 1 段 :250 トン 5 2 段 :24 トン 3 TSTO: 二段式宇宙輸送機 SSTO: 単段式宇宙輸送機 LOX: 液体酸素 N 2 O 4 : 四酸化二窒素 HTPD: 末端ヒドロキシル基ポリブタジエン系 RP 1: ケロシン系燃料の一種 LH2: 液体水素 JAXA 提供情報 26

使い切り型と再使用型宇宙輸送システムのコスト構造比較 再使用型システムでは 多数回の再使用により 1 回当たり製造費の負担 ( 減価償却費 ) が減る 間接運用費を減らすためには 信頼性の高いシステムとするとともに 再使用型に特有の飛行後整備を効率的に行い 高頻度の飛行を行えるようにすることが重要 直接運用費 使い切りロケットの打ち上げコスト 間接運用費打ち上げ作業液ガス費製造費 1) 間接運用費には 一般管理費 設計維持 ( 不具合等に対応するための技術者の維持 ) 設備保全が含まれる また 事業として行う場合には 広告 宣伝 販促活動 乗客サービス等の費用が含まれる 2) 打ち上げ作業には 機体組立 ( 点検含む ) 衛星系支援 打ち上げ運用等が含まれる 3) ここでの減価償却費とは 製造費を再使用できる回数で割ったもの 4) スペースシャトルでは 1 飛行当たりの間接運用費が 200 億円程度と莫大であった (1994 年のデータ 出典 :NASA/TP-2005-211519) 信頼性の低いサブシステムの継続的な改良 安全やミッション保証のための解析や審査会対応などのために多くの技術者を維持する必要があったものと考えられる 間接運用費 ( 1) コスト削減の方策 固定的な経費の削減 ( 4) 高頻度の飛行 再使用型システムの打ち上げコスト 飛行後整備 打ち上げ作業 ( 2) 液ガス費 減価償却費 ( 3) 整備性 運用性に優れたシステム 安価な推進薬製造費の低減 多回数の再使用 JAXA 提供情報 27

宇宙輸送システムのコスト予測 使い切り型ロケットは今後も打ち上げコスト低減が見込まれるが 現在から数分の一のコスト低減程度 一方 再使用型宇宙輸送システムは現在から数十分の一のコスト低減が目標として掲げられている 1000.0 100.0 スペースシャトル実績値 ( 米国 ) 打ち上げコスト[M$/t]) 1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 10.0 1.0 スペースシャトル当初目標 ( 米国 ) H Ⅱ( 日本 ) GSLV( インド ) SLS( 米国 ) H ⅡA( 日本 ) H ⅡB( 日本 ) Ariane5( 欧州 ) Delta4( 米国 ) Soyuz2( ロシア ) Atras5( 米国 ) Falcon9( 米国 ) Angara( ロシア ) 使い切り型ロケットのコスト予測 Skylon 目標 ( 英国 ) SpaceX 目標 ( 米国 ) 使い切り型ロケット再使用型宇宙輸送システム 0.1 大型の宇宙輸送システムについて記載 再使用型宇宙輸送システムのコスト目標 [ 年 ] 28 宇宙輸送システム部会のヒアリング資料等を基に宇宙戦略室で作成

輸送コストと年間総輸送需要の関係 分の一のコストの低減が実現されれば 宇宙輸送需要は飛躍的に拡大すると想定される NASA Commercial Space Transportation Study(CSTS) の分析 従来の延長の利用通信衛星 従来の延長の利用では 宇宙輸送コスト宇宙環境を利用した製造が現状の1/10で 需要が10 倍弱増えるとリモートセンシング政府系ミッションいう結果 需要予測は漸増 まだ実現していない利用 / 新しい利用付加価値のある輸送サービス ( 人と物資の普遍的な輸送 ) エンターテインメント 新しい市場においては 宇宙輸送コストスペースデブリマネジメント宇宙医療施設が現状の1/10になっても需要を拡大する多目的ビジネスパークことはできないが 1/100になると大規模エネルギー ( 宇宙太陽光発電 ) 資源探査 ( 月 LOX ヘリウム 3) な需要が見込まれる 広告)現在から数分の一の宇宙輸送コストの低減では宇宙輸送需要の大きな拡大は見込まれないが 数十 Commercial Space Transportation Study(CSTS) NASA 1997 地球低軌道への年間総投入量(t29 NASA CSTS を基に宇宙輸送システム長期ビジョンワーキンググループ作成

再使用運用による宇宙輸送コストの低下 NASA や米空軍の試算によると 年間十数回以上の打上げを行う場合には再使用型宇宙輸送システムの方が使い切り型ロケットよりも低コストとなり SSPS 等の建造に必要な年間数百回の打ち上げを行う場合には 1 回あたりの打ち上げコストが数億円 ( 使い切り型ロケットに比べて数十分の一 ) まで低下する 所要マンパワー 年間運用経費 ( 全フライト合計 ) 1 回あたりの打ち上げ費用 使い切り型ロケット 部分再使用型宇宙輸送システム 完全再使用型宇宙輸送システム 50 回 100 回 150 回 200 回 50 回 100 回 150 回 200 回 50 回 100 回 150 回 200 回 James Michael Snead, Cost Estimates of Near-Term,Fully- Reusable Space Access Systems. (American Institute of Aeronautics and Astronautics, 2006) Highly Reusable Space Transportation Study Integration Task Force, An Operational Assessment of Concepts and Technologies for Highly Reusable Space Transportation. (NASA, 1998) 年間 200 回の再使用を行うと 再使用型宇宙輸送システムの打ち上げコストが 300 万 ~600 万ドル台まで低下することが見込まれる 30

現在の延長上にある宇宙利用の姿 (1/3) 中大型衛星の利用や宇宙探査などの従来の延長上にある宇宙利用として 小型 超小型衛星のコンステレーション運用や再使用型ロケットによる観測 実験の実現が想定される 再使用型ロケットによる観測 実験 従来は使い切りロケットによって行われていた宇宙観測や微小重力実験を再使用ロケットで実施 観測 実験機会の増大や これまでのロケットでは不可能だった実験 ( より柔軟な軌道 姿勢 速度等 ) を実現 JAXA で実験されている再使用観測ロケット 小型 超小型衛星のコンステレーション運用 災害監視 安全保障用途で 光学センサーや合成開口レーダーを搭載した小型衛星のコンステレーション運用を行う計画が各国政府で進められており 2010 年代中にも実現の見込み 米 Skybox 等の民間企業も超小型衛星を活用した安価な衛星情報サービスを展開 大規模なコンステレーション化により 大型衛星に匹敵する能力を持たせる構想 ( 例 :DARPA のシステム F6) もある システム F6 の概念図 DARPA 31

現在の延長上にある宇宙利用の姿 (2/3) 国際協働による有人宇宙探査に向けて技術検討を行うメカニズムである国際宇宙探査協働グループ (ISECG) は 2020 年代に月のラグランジェ点ステーションを設置することや 2030 年代以降に月面や火星に基地を設置することなどを 2013 年の Global Exploration Roadmap(GER) 第 2 版に盛り込んでいる JAXA 提供情報 32

現在の延長上にある宇宙利用の姿 (3/3)~ 各国の宇宙探査計画 ~ 米国及び中国は 月と火星への有人探査を目指している ロシアは火星への有人探査計画は無いが 月への有人探査に関心を持つ 欧州は月への有人探査計画は無いが 火星有人探査には関心あり ISS 低軌道月周辺 月小惑星火星 米国 探査への準備として位置付けており 2020 年以降も運用継続する方向で検討中 2021 年頃に有人探査を実施予定であるが 月周辺に留まるのか 月着陸するかは定かでない 尚 将来の有人月探査向け準備として 無人探査は継続実施 小惑星への探査計画はあるが 技術的状況に鑑み 小惑星を月周辺に持って来て探査する計画 2030 年代半ばに火星軌道 その後 火星着陸を目指す ロシア 探査への準備として ISS を位置付け ISS を拡張する計画があり 積極的に延長する方向で検討中 有人月探査に強い関心を持ち 2030 年代に有人月探査を実施予定 また 有人月面基地構想を持つ 無し 有人探査計画は無く 無人探査を実施 ESA 探査の準備として位置付け 但し コストが高額であるため ISS の 2020 年以降の延長については検討中 有人探査計画は無く 無人探査を実施 (ESA 独自の計画は予算化されず ロシアのプログラムに参画予定 ) 有人探査計画は無く 無人探査を実施 有人探査を実施する予定であるが ロボティクスを主張するフランスと有人を主張するドイツとの間で対立が続いている 中国 独自の宇宙ステーションを 2020 年迄に完成予定 2025 2030 年頃に有人探査を計画 また 時期は未定であるが 有人月面基地構想を持つとの報道もあり 無し 2050 年に有人火星探査を実現する目標を持つ インド有人輸送機を計画中無人探査を実施無人探査を実施予定無人探査を実施中 JAXA 提供情報 33