2.3 高濃度オゾン利用基準の研究 策定 省エネルギー型廃水処理技術開発 ( 事後評価 ) 分科会 資料 6-3-1 2.3.1 高濃度オゾンガスの安全性の研究 産業技術総合研究所爆発安全研究センター P. 1 研究の目的 目標 目的 ) 高濃度オゾンの実用化において課題となる安全性を解明 オゾンは以下の式に示すように分解による発熱が大きい不安定な物質であり 温度 圧力変動や機械的 熱的 電気的衝撃などにより急激な爆発を生じることが指摘されている なお 爆発とは 圧力の急激な発生と爆音の発生を伴う現象を意味する O 3 3/2 O 2 - H = 142.7 kj/mol (2.97 kj/g) 目標 ) オゾンの爆発性に関する基礎的特性 オゾンの生成や利用における爆発危険性を調べ 高濃度オゾンガスの安全な取り扱いに資するデータの集積を行う 材料適合性 爆発誘起要因 放電 エネルギー 不純物混入の影響 事業原簿 P.41 P. 2
材料の耐オゾン性 ( 金属材料 ) オゾンによる材料の腐食性は オゾンの使用条件 ( 水溶液であるか ガスであるか 濃度 温度 共存物等 ) に影響される ここでは 金属 ガラス 合成樹脂等に関して耐オゾン性を検討した 金属の場合 金 白金は耐性がある 100 vol% オゾンに常温 常圧で暴露させた場合 ステンレス鋼 (SUS316) アルミニウムは耐性があり ニッケル 銅 真鍮は 表面は酸化されるものの変質 劣化なく使用できる ( 銀は変質 劣化する ) 一方で 銅 ニッケル 錫はかなり耐食性があるが アルミニウム 亜鉛 真鍮は腐食されるとの報告もある また SUS316は 4.5 vol% オゾンガス ( 曝露 1 週間 ) と20 ppmオゾン水 ( 曝露 2~10 日間 ) により劣化することも報告されている また 金属酸化物を表面につくると これによって材料のオゾン耐食性を増し オゾンの貯蔵に適することもある 事業原簿 P.41 P. 3 材料の耐オゾン性 ( 金属材料以外 ) 有機材料ではテフロン 無機材料では石英ガラスおよび無アルカリガラスがオゾン耐食性を有する 一方 バイトンゴムおよびニトリルゴムは 変質 劣化する シリコン エチレン - プロピレン フッ化シリコン クロロフルオロカーボン (CFC) フルオロカーボン (HFC) 等は耐性があり ネオプレンは若干耐性が劣る アルミナ - シリカ系セラミックスは 4.5 vol% オゾンガスにより腐食しないが 20 ppm オゾン水により Al と Si 原子が幾分溶出することが報じられている これらをもとに 実験においては1 回の実験を短時間で終えることを勘案し 実験装置として SUS316 テフロン 石英ガラス シリコン等の素材を使用することとした 事業原簿 P.41 P. 4
オゾンの分解に関する要因 オゾンの分解性はオゾンの濃度によって異なり また 温度 圧力変動や 機械的 熱的 電気的な衝撃 振動などを加えると急激な爆発を発生するので これらの条件がオゾンの分解に及ぼす影響を知ることが重要となる このほか オゾンを生成する際の酸素の純度 不純物の種類 混入する有機化合物の量などもオゾンの爆発性に大きく影響する 高濃度オゾンの利用を検討する場合 オゾナイザーによるオゾンの発生からオゾンを濃縮 放出するプロセスまでの安全性を考えなければならない このため 10 vol.% 程度 ~50 vol.% 程度以上の濃度範囲のオゾンガスを対象として分解性を検討することが必要になる オゾンの分解性についてはこれまでに幾つかの報告があるものの 実験条件の詳細 ( 圧力 温度 爆発誘起エネルギーの大きさ等 ) が不明であるケースや データの異なる報告があり オゾンの分解性について正確で確実な情報が必要である 事業原簿 P.41 P. 5 オゾンの爆発性の評価 オゾンの爆発を引き起こす誘因として その特性を把握し易く 再現性の大きなもの その起源の生成が容易であるもの等を用いると 実験 解析が容易となる この観点をもとに 放電は物性解析が比較的容易で 再現性も優れていることから 本研究では爆発誘起要因として 放電を用いた オゾン濃度と放電特性が如何に爆発に関係するかに注目して検討を行った 従来の研究より 概ね10 vol% 程度以下であれば爆発する可能性が非常に低いことが解明されており 一般に10vol% 以下の濃度での利用が広く行われている それ以上の高濃度のオゾンに関しては爆発性を検討した例が多くはなく 詳細については不明な点があるので できる限り高い濃度のオゾンについて爆発性のデータを収集する必要がある 本研究においては オゾンを濃縮することにより高濃度のオゾンを発生させ その爆発性を検討した 事業原簿 P.41 P. 6
高濃度オゾンの生成 約 10 vol% 程度で発生するオゾンを濃縮する方法として 吸着剤に吸収させて濃縮する方法 低温でいったん液化して濃縮する方法 溶媒を使って溶解させて濃縮する方法などがある 本研究においては 比較的少量で高濃度のオゾンを安全に取り出すことができる シリカゲルを用いたオゾン吸着法を採用した 吸着法により 酸素中約 10vol% のオゾンを原料として (1) 吸着工程 (2) 濃縮工程 (3) 脱着工程の3ステップを経ることにより所定の濃度のオゾンを生成することができた 事業原簿 P.41 P. 7 高濃度オゾン製造システム PI Catalyst unit for ozone decomposition Vent TI Vacuum pump Commercial ozone generator Ozone storage vessel 99.999% Oxygen Ozone adsorption column Dry ice bath 事業原簿 P.41 P. 8
オゾン爆発実験システム >80%-ozone storage vessel PI Catalyst unit for ozone decomposition Vacuum pump Vent Explosion chamber Oscilloscope 99.999%-oxygen cylinder Measurement unit for trigger energy PC 事業原簿 P.41 P. 9 オゾン爆発における濃度と圧力の関係 Total pressure [torr] 1000 800 600 400 200 Explosion Explosion No explosion 0 0 20 40 60 80 100 Ozone concentration [vol%] 事業原簿 P.41 P. 10
オゾン爆発における最小起爆エネルギー Minimum trigger energy (mj) 200 180 160 140 120 100 80 60 40 20 38 76 200 760 0 0 5 10 15 20 25 30 Ozone concentration (vol.%) Journal of Loss Prevention in the Process Industries, 18, 465(2005) 発表事業原簿 P.41 P. 11 最小起爆エネルギーのオゾン分圧依存 Journal of Loss Prevention in the Process Industries, 18, 465(2005) 発表事業原簿 P.41 P. 12
放電電極先端角度と起爆エネルギーの関係 Minimum trigger energy (mj) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 1/20 Total pressure : 200torr No explosion at 14.3vol.% Explosion at 14.3vol.% No explosion at 12.4vol.% Explosion at 12.4vol.% 0 30 60 90 120 Tip angle (degree) Journal of Loss Prevention in the Process Industries, 18, 465(2005) 発表 事業原簿 P.41 P. 13 放電持続時間と起爆エネルギーの関係 Ignition energy (mj) 16 14 Explosion 12 10 8 No explosion 6 4 No Explosion at 14.3 vol.% 2 Explosion at 14.3 vol.% 0 0 50 100 150 Spark duration (µs) Journal of Loss Prevention in the Process Industries, 18, 465(2005) 発表事業原簿 P.41 P. 14
窒素ガスがオゾンの起爆エネルギーに及ぼす影響 Minimum trigger energy (mj) 30 25 20 15 10 5 Ozone concentration: 14.7vol% (in Ooxygen) 2 +N 2 ) Total pressure: 200Torr No explosion Explosion 0 0 20 40 60 80 100 N 2 concentration (vol%) 事業原簿 P.41 P. 15 炭酸ガスがオゾンの起爆エネルギーに及ぼす影響 Minimum trigger energy (mj) 30 25 20 15 10 5 0 Ozone concentration: 14.7vol% (in Ooxygen) 2 +CO 2 ) Total pressure: 200Torr No explosion Explosion 0 20 40 60 80 100 CO 2 concentration (vol%) 事業原簿 P.41 P. 16
水素ガスとメタンガスがオゾンの起爆エネルギーに及ぼす影響 混入物なし 60 mj 混入物 混入物濃度 (vol%) 0.1 0.2 0.5 H 2 25 mj 8 mj 1 mj CH 4 25 10 1 圧力 200Torr オゾン濃度 14.7vol%( 酸素中 ) 事業原簿 P.41 P. 17 まとめ オゾンの爆発に関する要因を調べ 爆発実験を行った結果 次の点が明らかとなった (1) 不動態化処理を行ったステンレス鋼 テフロン 石英ガラス シリコン等の素材はオゾン耐食性がある (2) 交流高圧放電による着火では 大気圧下 酸素中のオゾン濃度約 10-11vol% が爆発限界で それより高濃度になると爆発する 圧力が低下すると爆発限界が上昇し 爆発しにくくなる 圧力 10Torr では爆発限界濃度は約 80vol% である (3) 低圧でオゾン濃度が低い場合は起爆に大きなエネルギーを要する つまり 低圧 低濃度ほど安全性は高い (4) 不純物の混入により 混合ガスの爆発性が高くなる 窒素 二酸化炭素のような不活性ガスが混入しても混入量の増加とともに徐々に最小起爆エネルギーが低下する 水素 メタンが混入すると起爆エネルギーは著しく低下する エチレン ベンゼンが混入すると放電の前に自然発火する 事業原簿 P.42 P. 18
2.3 高濃度オゾン利用基準の研究 策定 省エネルギー型廃水処理技術開発 ( 事後評価 ) 分科会 資料 6-3-2 2.3.2 オゾン利用の安全性評価と利用規準の研究 ( 財 ) 造水促進センター高濃度オゾン利用研究専門委員会委員長杉光英俊事務局小池壯一郎 1 研究の背景 世界的にオゾン利用の安全規準なし不安定で使用時に製造 設備の管理不可欠 2001 年高濃度オゾン利用研究開始従来 20g/m 3 200g/m 3 材質劣化 漏洩監視 管理 事業原簿 P43 2
目的 オゾン利用設備普及 オゾンの用途拡大高濃度オゾンの利用 リスクの増大 爆発漏洩被曝環境破壊 リスクの削減 知識の普及最低限守るべきことは何か オゾン利用に関する安全管理規準 作成 普及 事業原簿 P43 3 調査 研究のフローチャート オゾンはどこでどの様に使われているかリスクはどこにあるかリスクの大きさはどの程度か リスク管理はどうあるべきか 国内の例海外の例 知見の集約規準に盛り込むべき内容理解しやすい記述方法法律との適合性 オゾン利用に関する安全管理規準作成 検証実態と離れていないか遵守するのに難はないか 啓蒙 普及 講習会の開催英文作成 標準化 ( 将来 ) 事業原簿 P43 4
安全管理基準目次 1 章 総論 ( 目的適用性質緊急措置 ) 2 章 設備製造に係わる者が遵守すべき規準 3 章 販売設置に係わる者が遵守すべき規準 4 章 使用者が遵守すべき規準 5 章チェックリスト例 付録関連資料 事業原簿 P43 5 第 1 章総論 1.1 目的この規準はオゾンを適切 かつ安全な使用に資することを目的とする 1.2 適用オゾン発生設備 オゾン反応設備 排オゾン分解設備 およびこれら設備の一部または全部から構成されたオゾン処理設備の製造 販売流通および使用に係わる者に適用される 事業原簿 P43 6
第 1 章総論 適用範囲 設備の製造に係わる者 設備の販売 流通に係わる者 設備の使用に係わる者 事業原簿 P43 7 第 2 章 設備の製造に係わる者が遵守すべき規準 2.1 オゾン発生設備 2.2 オゾン反応設備 2.3 排オゾン分解設備 事業原簿 P43 8
オゾン処理設備の構成例 電源装置 原料気体供給装置 ブロアまたはコンプレッサ 冷却装置 除湿装置 オゾン発生装置 排気ブロア 缶体冷却装置 オゾン発生設備 オゾン反応設備 排オゾン分解設備 9 第 2 章 1 オゾン発生設備 2.1.1 規格認定製造能力に応じた規格 2.1.2 原料気体供給装置原料乾燥度 2.1.3 オゾン発生装置最高発生濃度 10vol%( 爆発安全限界 ) 2.1.4 電源装置手動緊急停止可能地震対策 10
構造材料石英ガラス 配管材料バイトン テフロンコート 要定期点検 第 2 章 2.2 オゾン反応設備 オゾン漏洩の防止 ( 負圧吸引等 ) 設計留意点 ( 逆流防止等 ) 表示 標識 ( 流体種類 方向 装置名 ) 材料の選択 ( 濃度別の例示 ) 11 第 2 章 2.2 (4) 材質 A 材 質 耐オゾン性材料評価 高濃度 低濃度 極低濃度 >100 >50 >1000 <200 <10 g/m 3 g/m 3 ppm ppm ppm SUS316L 要定期点検 1 SUS316 要定期点検 1 SUS304 要定期点検要定期点検 アルミ ( アルマイト処理 ) 要定期点検要定期点検 アルミ テフロン要定期点検 コンクリート要定期点検要定期点検 SUS316 要定期点検 SUS304 要定期点検 テフロン 要定期点検 硬質塩ビ (VP 管 ) シリコン内面テフロンコート シリコン 要定期点検 ウレタン ナイロン バイトン 要定期点検 1 溶接部は処理 ( 酸洗い 電解研磨 等 ) が必要 備考 平成 15 年度省エネルギー型廃水処理技術開発報告書 (NEDO) 12
パッキン材料シリコンスポンジ Oリンバイトン テフロンコート 要定期点検 グ配管継手塩ビ継手 ( 接着 ) 第 2 章 2.2 (4) 材質 B 材 質 耐オゾン性材料評価 高濃度 低濃度 極低濃度 >100 >50 >1000 <200 <10 g/m 3 g/m 3 ppm ppm ppm テフロン要定期点検 軟質テフロン要定期点検 バイトンゴム 要定期点検 シリコンゴム 要定期点検 塩ビゴム エチレンプロピレンゴム クロロプレンゴム ニトリルゴム ポリウレタンフォーム テフロン バイトン 要定期点検 SUS くい込み ねじ込み ( テフロンシール ) 溶接フランジ継手要定期点検 1 1 溶接部は処理 ( 酸洗い 電解研磨 等 ) が必要 備考 平成 15 年度省エネルギー型廃水処理技術開発報告書 (NEDO) 13 第 2 章 2.3 排オゾン分解設備 排出オゾン濃度 0.4ppm 以下 ( 曝露濃度は0.1ppm 以下 ) 流通を停止時の措置 窒素酸化物の除去 14
第 3 章販売 設置に係わる者が遵守すべき規準 3.1 輸入業者の責任 3.2 説明責任と安全指導安全マニュアルの交付 3.3 漏洩監視手段の設置設置の上引き渡すこと 3.4 連絡体制問題発生時の連絡先 15 第 4 章使用者が遵守すべき規準 4.1 安全管理者 4.2 安全管理者の役割 4.3 許容濃度の厳守 4.4 保護具の設置 4.5 消火器の設置 4.6 表示 標識 4.7 監視および記録 4.8 安全対策 4.9 オゾン漏洩時の措置 16
第 4 章 4.2 安全管理者 1 装置 機器の取り扱い説明書の整備 2 設備の運転管理マニュアルの整備 3 作業者の安全教育 4 点検 記録簿の整備 5 緊急時の措置 連絡体制の整備 6 事故報告他安全管理上必要な事項 17 第 5 章チェックリスト 機器 設備に応じた保守管理計画を定めておく 日常および定期の点検項目についてのチェックリストを作成し 記録を保管 18
今後の方向 基準制定 規格化 JIS 日本オゾン協会を中心に作業中 国際標準化 ISO 国際競争力強化のための世界戦略 国の施策としての取り組が不可欠 19