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ことを呼びかけます Q4. ミサイルが落下する可能性がある との情報伝達があった場合は どうすれば良いのでしょうか A4. 屋外にいる場合 近くの建物 ( できれば頑丈な建物 ) の中又は地下に避難してください 近くに適当な建物等がない場合は 物陰に身を隠すか地面に伏せ頭部を守ってください 屋内にい

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平成 29 年 12 月 第 768 号 Florida Japan Aerospace Summit 米国フロリダ州の航空宇宙産業界と日本の航空宇宙産業界が交流するイベント (FJAS: Florida Japan Aerospace Summit) が去る10 月 25 日 ( 水 )~27 日 ( 金 ) の3 日間 フロリダ州オーランドを中心に開催された このイベント ( 主に宇宙分野部分 ) に参加する機会を得たので概要を紹介する 1. 合同会合このFlorida Japan Aerospace SummitはJETRO アトランタ 在マイアミ総領事館及びフロリダ州の関係機関が協力して主催したイベントで 航空業界と宇宙業界から合わせて日本側 : 約 30 名 米国フロリダ側 : 約 40 名の参加があった 主な日本側の参加者は在マイアミ日本国総領事岡庭健様 JETRO JAXA 新事業促進部 産業界からはIHIエアロスペース 京セラ 双日アメリカ 兼松 USA 旭化成 沖電線 三菱ケミカル 田中貴金属 JUKI アメリカ等である まず1 日目は 航空と宇宙合同での会合がオーランド国際空港のHyatt Regencyホテルで行われた 岡庭マイアミ総領事とBuddy Dyer オーランド市長から歓迎の挨拶があった 引き続き 1Space Florida( フロリダ州政府による宇宙産業活性化機構 : 説明概要 : フロリダは個人の所得税ゼロ 企業の新工場建設など活動が活発化している ) 2Enterprise Florida Inc.( フロリダ州の経済発展を目指す フロリダ州と民間企業のpublic-private partnership: 説明概要 : 土地 従業員候補の情報提供可能 フロリダには航空宇宙企業が 2,200 社 93,800 名以上の従業員が在住している ) 3 University of Central Florida( 説明概要 : NASAスピンオフの手助けや次世代リーダの育成を実施 ) 4JAXA( 新産業促進部仁田久美氏 )( 説明概要 :JAXAの宇宙開発と産業促進活動 ) と5 当工業会 ( 説明概要 : 我が国の航空宇宙産業 ) のプレゼンテーションにより フロリダ州と日本の航空宇宙産業の特徴が紹介された 在マイアミ日本国総領事岡庭健氏 Mayor Buddy Dyer, City of Orlando 35

工業会活動 合同会合の様子 JAXA 仁田久美氏 BRIDG 合同見学会参加者 2. 合同見学会 (BRIDG) ネットワーキングランチの後 航空 宇宙合同での見学会として オーランド近郊の非営利コンソーシアムBRIDGを訪問した BRIDGは2017 年 3 月に最先端のスマートセンサー開発の拠点施設 ( 床面積約 9,800m 2 うちクリーンルーム約 3,600m 2 ) を建設し 現時点の従業員は約 30 名である このクリーンルームの入室には防塵服の着用を行うが エアシャワーは設置されておらず 清浄な空気を流すことが重要とのこと 現時点で施設は出来たばかりであり 施設入居者はまだ少ない状況であるが徐々に充実する予定とのこと 死の谷ともいわれるアイデアと産業のギャップに橋をかける意味で BRIDG と名付けられているとのことである 3. B to B 2 日目は 航空と宇宙に分かれ 日米企業のB to Bが開催された 宇宙は ケネディ宇宙センター (KSC: Kennedy Space Center) 内のExploration Park 本部事務棟 (Space Life and Sciences Lab) にお 36

平成 29 年 12 月 第 768 号 B to B 会場の様子 いて 日本企業 10 社と米国企業約 10 社 ( Boeing Space Systems Harris OneWeb RUAG Space Division Vision Engineering 等 ) とのB to B 個別会談が行われた 1 回の面談時間が 20 分間と短時間ではあったが 参加企業からは有効な情報交換を行うことが出来たと好評であった このExploration Parkにおいて現時点で稼働しているのは事務棟のみであるが Blue Origin 社 ( ロケット製造 : 新規従業員 330 名 平均給与 8 万 9 千ドル ) の工場とOne Web 社 ( 小型の通信衛星製造 : 新規従業員 250 名 平均 給与 8 万 5 千ドル ) の工場が隣接して建設中で 完成間近とのことであった Blue Origin 社は Amazon 社のCEOジェフ ベゾス氏が立ち上げたロケットベンチャー企業で まずは弾道観光飛行用ロケット ( 打上げたロケットを垂直回収を行い 乗員用カプセルはパラシュート着陸させる ) 建設中の Blue Origin 社工場と New Glenn ロケット計画 ( 出典 :Blue Origin 社 ) 37

工業会活動 建設中の One Web 社工場と小型衛星 ( 出典 :One Web 社 ) を開発している それに加えて 大型の打上げロケットNew Glenn(2 段式と3 段式 どちらも第 1 段ロケットは垂直回収 ) を開発する予定である また One Web 社には日本のソフトバンクが約 1,000 億円の投資を行っており 約 150kgの小型の通信衛星を1 週間に15 機製造し 合計 900 機の地球低軌道 ( 高度約 1,200km ) コンステレーションを形成する計画である この コンステレーションにより 遅延が少ない高速のネットワーク回線を提供する予定である 4. その他関連施設見学 (1)NASAケネディ宇宙センター(KSC) ア ) ケネディ宇宙センターの南にはケープカナベラル空軍基地 (CCAFS:Cape Canaveral Air Force Station) が隣接してお KSC 射点 CCAFS 射点 KSC( 緑 : 地図上の北部及び西部 ) と CCAFS( 黄 : 南東部海岸 ) ( 出典 :NASA) 射点 SLC39A を改修して打上げられる SpaceX 社の Falcon Heavy ロケット構想図 ( 出典 :SpaceX) 38

平成 29 年 12 月 第 768 号 KSC 見学者集合写真 ( 前列中央左 : 岡庭総領事 中央右 Soto 下院議員 ) り 東の大西洋に望む形で複数のロケット射点 (Space Launch Complex) が設けられている KSCではスペースシャトルの打上げに使用されていた射点 SLC39AとSLC39B において それぞれSpaceX 社の次期ロケット (Falcon Heavy) 及びNASA 次期大型ロケット (SLS:Space Launch System) を打上げるために改修が行われていた KSCとCCAFSの射点では将来の計画を含め多くのロケットが打上げられる予定である 射点は北からSLC39B(NASA のSLS) SLC39A(SpaceX 社 Falcon9 将来 Falcon Heavy) SLC41(ULA 社 Atlas V 将来 Vulcan) SLC40( SpaceX 社 Falcon9) SLC37(ULA 社 Delta IV Delta IV Heavy) SLC13(SpaceX 社 Landing Zone 将来 Blue Origin 社 Landing Zone) SLC36( 将来 Blue Origin 社 New Glenn) SLC46(ATK 社 Minotaur) の順で利用が見込まれている イ )NASAは保有する特許を民間に活用してもらい産業化を行うTechnology Transfer Programを進めている これは特許だけではなく Technical Package( 試験データ ノウハウ等 ) を含み 一部新規作業をNASAの研究施設 (Lab) に依頼することもできる 15の分野で1,000 件以上の特許が民間で使用可能である 民間企業は特許の使用料 ( 一例 : ロイヤルティ5%) をNASAに支払うことが必要である なお このKSCと Lockheed Martin Orlando( 下記記載のシミュレータ部門 ) の見学には 本 FJASイベントの開催にご協力いただいたフロリダ州選出のSoto 下院議員が同行された 39

工業会活動 (2)Lockheed Martin 社 Orlando 工場 ( シミュレータ部門 ) Lockheed Martin 社は全社の従業員約 97,000 人 約 70か国に支店を持ち 米国内には約 500 の拠点を有している 大きくは1 Aeronautics( 民間 防衛固定翼機 ) 2 Missile & Fire Control 3Rotary and Mission Systems( シコルスキーのヘリコプタ部門を買収した回転翼部門とシミュレータ ) 4 Space Systemsの4つの部門がある 今回訪問を行ったのはオーランドの東 Innovation Circleにあるシミュレータ部門で 2015 年 2 月にInnovation Demonstration Centerをオープンさせ 複数のシミュレータ (F-35コクピットシミュレータ F-16コクピットシミュレータ C-130 搭乗員シミュレータ HMMWV 機関銃シミュレータ等 ) を設置している コクピットシミュレータは コクピットの周囲に映像投影画面を配置して パイロット の各種の操作に応じて画面の映像が切り替わるもので 海外のエアショーなどでも展示されている また C-130 搭乗員シミュレータは ゴーグル型のシミュレータであり 航空機の整備個所に移動する 整備用のパネルを開ける 点検する等の操作がバーチャルで行えるものである このシミュレータ部門の売上は2017 年には 23 億ドル ( 約 2,500 億円 ) で 米国向け72% 海外向けが38% とのことである 5. Spaceport America フロリダイベントに合わせる形で ニューメキシコ州シエラ郡に所在する宇宙港 Spaceport Americaを見学する機会を得た 以下 その概要を紹介する (1)Spaceport Americaはニューメキシコ州が建設し 2011 年に米国連邦航空局 (FAA: Federal Aviation Administration) が認可した F-35 コクピットシミュレータ ( 出典 :Lockheed Martin 社 ) 40

平成 29 年 12 月 第 768 号 Spaceport America のハンガー ( 写真左下の円形の建物 ) と滑走路及び Virgin Galactic 社の弾道観光旅行を行う宇宙船 Spaceship-2 の飛行試験状況 ( 出典 :Virgin Galactic 社 ) 米国最初の商用の宇宙港である 1 長さ約 3.6km ( 幅 60m 南北方向) の滑走路と2 航空機 宇宙機を格納するハンガー ( ターミナルビル ) 及び3 管制棟が主な施設である また 垂直打上げロケット用の射点 ( コンクリートの円形パッドのみで 備え付けのランチャは無い ) から弾道ロケットの打上も可能である (2) テナントとしてはVirgin Galactic 社 ( 弾道観光旅行 : ジェット機の下に吊り下げられて滑走路から飛び立ち 空中発進して宇宙空間に到達するSpaceship-2の開発 ) UP Aerospace 社 ( 小型ロケット開発 ) 等があり その他の宇宙関係の試験 ( 現在はBoeing 社の有人宇宙カプセルStar Linerの気球による高空落下試験 ) も行われている (3)Spaceport Americaの周囲のほとんどはニューメキシコ州が所有する土地であり 近郊にはわずかに個人の牧場があるのみで 落下物による人的被害の確率はほとんどない また Spaceport Americaの東側は米陸軍が管轄する試験場 White Sands Missile Range (WSMR) である このWSMR 上空の民間航空機の飛行は禁止されているため Spaceport Americaにおける試験の空域調整は主にWSMRと行えばよいとの事である さらに打上げ後に落下物がある試験の場合 Spaceport Americaの敷地内に落下できない場合は WSMRのImpact Areaを借用することも可能であるとの事 上記の写真からも判る様に この土地は雨 41

工業会活動 の少ない砂漠気候である このため 1 年間で340 日が晴天で 試験に適していると言われる 但し Spaceport Americaの事務所が所在する南の近郊の町 (Las Cruces) からは車で1 時間半程度 北の近郊の町からも1 時間程度離れている 6. 所感スペースシャトルが2011 年に運用停止され フロリダではNASAや関連企業従業員の解雇 離職があったが ここにきてNASAの次期大型ロケットSLSの開発が行われている こと SpaceXに代表されるベンチャー系企業の活動が順調 活発となっていること等から ロケットの打上げ基地となっているフロリダに活況が戻りつつある また ベンチャー企業の活動を支援するためにオーランドのBRIDG KSCのExploration Park ニューメキシコ州のSpaceport America 等のインフラ作りが積極的に行われている これらインフラ投資には米国における安価な土地のメリットが生かされているが 我が国にとっても参考になる部分が大きいと感じる 一般社団法人日本航空宇宙工業会技術部 ( 宇宙担当 ) 宇治勝 42