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テイカ製薬株式会社 社内資料

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平成14年度研究報告

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日本内科学会雑誌第98巻第12号

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第15回日本臨床腫瘍学会 記録集

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炎症 免疫系門クラスター 143 科目クラスター炎症 免疫系クラスター 授業科目名免疫 アレルギー学 実習 専担当者名 責任者廣川誠 分担者植木 重治, 大杉義征 単位数 1 単位 ( 選択 ) 開講時間帯 18:00~21:00 中央検査部カンファレンスルーム 1. 免疫 アレルギー学総論, 細胞

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ストレスが高尿酸血症の発症に関与するメカニズムを解明 ポイント これまで マウス拘束ストレスモデルの解析で ストレスは内臓脂肪に慢性炎症を引き起こし インスリン抵抗性 血栓症の原因となることを示してきました マウス拘束ストレスモデルの解析を行ったところ ストレスは xanthine oxidored

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第1回肝炎診療ガイドライン作成委員会議事要旨(案)

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B型肝炎ウイルスのキャリアで免疫抑制・化学療法を受ける患者さんへ

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2006 PKDFCJ

減量・コース投与期間短縮の基準

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共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

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なくて 脳以外の場所で起きている感染が 例えばサイトカインやケモカイン 酸化ストレスなどによって間接的に脳の障害を起こすもの これにはインフルエンザ脳症やH HV-6による脳症などが含まれます 三つ目には 例えば感染の後 自己免疫によって起きてくる 感染後の自己免疫性の脳症 脳炎がありますが これは

プログラム

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

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CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

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ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

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様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 21 年 月 日現在 研究種目 : 若手研究 (B) 研究期間 :27~28 課題番号 :1979933 研究課題名 ( 和文 ) 新規 NF-kB 選択的阻害剤 による急性膵炎の重症化および多臓器不全の抑制 研究課題名 ( 英文 ) Inhibition of severity of acute pancreatitis and MOF by a novel NF-kB inhibitior,. 研究代表者細田充主 (HOSODA MITSUCHIKA) 北海道大学 北海道大学病院 医員研究者番号 :4443931 研究成果の概要 : セルレインによる急性膵炎モデルで 新規 NF-kB 選択的阻害剤 を用いて 重症化 多臓器不全の抑制効果について検討した セルレイン膵炎を誘導することはできたが による膵炎の抑制は血清学的にも 組織学的にも効果がなかった そのため 多臓器不全モデルのセルレイン膵炎と LPS による致死率モデルを検討したが モデルの確立には至らなかった また 膵炎の程度 多臓器障害の程度を血清 組織学的に評価したが による抑制効果は認められなかった 交付額 ( 金額単位 : 円 ) 直接経費 間接経費 合計 27 年度 1,8, 1,8, 28 年度 1,, 4, 1,9, 年度年度年度総計 3,3, 4, 3,7, 研究分野 : 医試薬学科研費の分科 細目 : 外科系臨床医学 消化器外科学キーワード :NF-κB 急性膵炎 多臓器不全 1. 研究開始当初の背景重症急性膵炎は良性疾患でありながら致命率は高く 予後不良の疾患であることから 1991 年に難病に指定され 23 年には急性膵炎の診療ガイドラインが発行され実際的な診療指針を提供するに至っている しかし 重症例では抗生物質 蛋白分解酵素阻害剤 持続動注療法 持続血液濾過透析などの特殊療法を施行しても致死率は 1~2% と高率で いまだに有効な治療法が確立されていないのが現状である 最近 急性膵炎の重症化機序に免疫能障害の関与が示唆されており 急性膵炎により産生された炎症性 mediator が 発症後早期の全身性反応症候群 (SIRS) による臓器障害を惹起する この炎症性 mediator の代表例が IL-1,IL-6,TNF-α などのサイトカイン ケモカイン 一酸化窒素 (NO) であり その産生の調節に関与しているのが NF-κB と呼ばれる転写因子である この NF-κB は DNA に直接結合し様々な炎症性 mediator の産生を引き起こすため ( 図 1) NF-κB の抑制が急性炎症による SIRS の病態を沈静化させ さらには引き続き起こる急性肺障害 (ARDS) 急性膵炎の死因として重要な多臓器不全症候群 (MODS) への進行抑制に寄与すると示唆されている ( 図 2)

図 1 NF-kB により誘導される炎症性 mediator 1 サイトカイン産生の上昇 あるいは 2 NF-κB の活性上昇とによるサイトカイン産生抑制 NF-κB 活性抑制効果の評価を行う (2) 急性膵炎重症化モデルにおける致死 図 2 急性膵炎による多臓器不全とNF-kBの関与 2. 研究の目的新規 NF-kB 選択的阻害剤のDehydroxym ethylepoxyquinomicin() を用いて 急性膵炎の抑制 MODSへの進行の抑制を試み 重症化の機序 MODSのメカニズムとNF-kBの関与を解明し 新規の重症急性膵炎抑制法の基礎的開発法を検討することである 3. 研究の方法 (1) 急性膵炎の重症化因子に対する による抑制効果の検討 (In vitro) 分離予定細胞 :1 腺房細胞 2 肺胞マ 率の検討 1~12 週齢の C7BL/6J マウスを用いて急性膵炎による多臓器不全を発症させる 急性膵炎はコレシストキニン analog のセルレインを ug/kg の投与量を1 時間おきに7 回腹腔内投与する その2 時間後に LPS を 1mg/kg の投与量で静脈内投与することで2 次感染を模倣し多臓器不全を発症させる 膵炎発症前 (prophylactic group) あるいは発症後 (treatment group) に を 12mg/kg の投与量で腹腔内投与し致死率の改善効果について検討した 4. 研究成果 (1) 急性膵炎の重症化と多臓器不全の機序と NF-kB との関与を解明するため 新規 NF-kB 選択的阻害剤 を用いて セルレイン (Cn) 膵炎モデルで検討した まず C7BL6/J マウスを用いて Cn 急性膵炎を作製した コレシストキニン analog である Cn を 1 時間おきに 6 回腹腔内投与 (ip) することで急性膵炎が起きていることを確認した による急性膵炎の抑制効果を検討するため まず Cn 投与 2 時間前にマウスに を 12mg/kg の用量で ip し ( 予防的投与群 :pro) 文献上言われている膵炎のピークである Cn 初回投与 12 時間後に血清 組織学的検討を行ったが 血清の lipase では 群に比較し やや低かったものの有意の抑制を認めず amylase は有意の抑制をみなかった ( 図 3) そこで 犠牲死の時間を変えて検討したが いずれも 群と比較して差がなかった そこで 投与時間を Cn 最終投与後 2 時間に変更し ( 治療的投与群 :tre) 血清 組織学的検討を行った しかし 予防的投与群と同様に血清, 組織とも膵炎の程度は 群と同程度で膵炎を抑制することは出来なかった ( 図 3) クロファージ 3 好中球上記細胞を分離し セルレインまたは LPSあるいは両者による刺激に対する反応と 添加による下記因子の活性抑制を評価する 評価項目 :1cytokine(IL-1 / IL-6 / TNFα / IL-1 /TGF-β) 2NF-κB(EMSA) 上記各細胞における各種刺激に対する 3 2 2 1 Lipase Cn(tre) cont Cn(tre) Cn(pro) cont Cn(pro)

U/L 7 6 4 3 2 1 Amylase Cn(tre) cont Cn(tre) Cn(pro) cont Cn(pro) (3) さらに 全身への影響として肝機能 腎機能の指標として, GPT, LDH, BUN, を測定したがいずれも予防 治療的投与 測定時間に関わらず と同程度であった ( 図 6) 2 1 図 3 Cn 膵炎後アミラーゼ リパーゼ Cont: (2) また 組織学的検討においても膵炎の程度 ( 空砲化 壊死性変化 浮腫 ) は 予防 治療的投与群に関わらず 群と同程度であった ( 図 4) A: (12h) pro GPT 2 2 1 12h 1h 3h 7h 9h 18h 24h mg/dl.2.18.16.14.12.1.8.6.4.2 図 Cn 膵炎後肝腎機能評価 ( 予防的投与群 ) B: (12h) pro 4 3 2 1 GPT 1 図 4 Cn 膵炎後組織学的評価 12 時間後予防的投与群 A: コントロール B: 投与群 mg/dl.2.16.12.8.4 1h 3h 7h 9h 12h 図 6 Cn 膵炎後肝腎機能評価 ( 治療的投与群 )

(4) Cn 膵炎モデルでの による膵炎抑制効果は認められなかったことから Cn 膵炎後 LPS を腹腔内投与 (ip) し 致死モデルを作製した まず LPS の投与量による致死量を決定するため LPS 単剤による致死率を検討した 過剰投与にても致死が得られないため LPS の投与方法を ip より静脈内投与 (iv) へ変更した しかし 確実な致死率が得られないため マウスの種類を C7BL6 より BALB/c へ変更した その結果 安定した致死率が得られ LPS 投与量も 3mg/kg と決定した 重症急性膵炎モデル (Cn+LPS) による致死率を検討した Cn を 1 時間おきに 6 回 ip し その 2 時間後に LPS を iv する致死性急性膵炎モデルを検討した は Cn 投与終了時に 12mg/kg ip した しかし Cn+LPS モデルではコントロールでも全例生存してしまう結果となってしまった Cn LPS の溶解に用いている生理食塩水が Cn 投与 6 回で補液効果となってしまい 生存が得られたのではと考えられた () 血清学的評価では amylase,lipase のピークは Cn 初回投与後 9 時間で Cn 膵炎より早めにピークが来ていたが 特に逸脱量に相違はなかった また 治療群と 群でほぼ同程度であった ( 図 7) A: Cn+LPS Control 12h pro B: Cn+LPS 12h pro Amylase U/L 1 contorl Lipase 図 8 Cn+LPS 膵炎後組織学的評価 12 時間後予防的投与群 A: コントロール B: 投与群 12 1 8 6 4 2 co ntrol 図 7:Cn+LPS 膵炎後のアミラーゼ リパーゼおよび の予防的投与の検討 (6) また 組織学的検討においても膵炎の程度 ( 空砲化 壊死性変化 浮腫 ) は 群と同程度であった (7) 全身への影響として肝機能 腎機能 (, GPT, LDH, BUN, ) を評価したがいずれも測定時間に関わらず と同程度であった ( 図 9) の投与時期を変更 ( 予防的投与 治療的投与 ) しても変わらなかった また 組織学的評価において 肝細胞の balooning などの浮腫 炎症所見も と 群で同程度であった すなわち による Cn 膵炎における膵炎の重症化を抑制することはできなかった 3 3 2 2 1

GPT (3) 連携研究者なし 3 3 2 2 1 mg/dl.2.16.12.8.4 図 6 Cn+LPS 膵炎後肝腎機能評価 ( 治療的投与群 ). 主な発表論文等 ( 研究代表者 研究分担者及び連携研究者には下線 ) 雑誌論文 ( 計 件 ) 学会発表 ( 計 2 件 ) 1 日本臓器保存生物医学会 (H2.11.22) 高橋徹膵ラ氏島における新規 NF-kB 阻害薬 dehydroxymethylepoxyquinomicin( ) の IBMIR 及び免疫抑制効果について ( 六本木アカデミーヒルズ ) 2 第 2 回代用臓器 再生医学研究会 (H2.2.2) 高橋徹選択的 NFkB 阻害剤 のドナー投与によるマウス肝内膵島移植成績の改善効果北海道大学学術交流会館 ( 小講堂 ) 6. 研究組織 (1) 研究代表者細田主充 (HOSODA MITSUCHIKA) 北海道大学 北海道大学病院 医員研究者番号 :4443931 (2) 研究分担者藤堂省 (TODO SATORU) 北海道大学 医学研究科 教授研究者番号 :6136463 松下通明 (MATSUSHITA MICHIAKI) 北海道大学 保健科学研究院 教授研究者番号 :2242