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公 的 年金を補完して ゆとりあるセカンドライフを実 現するために は 計 画 的 な 資金準備 が必要です 老後の生活費って どれくらい 必要なんですか 60歳以上の夫婦で月額24万円 くらいかな? 収入は 公的年金を中心に 平均収入は月額22万円くらいだ 月額2万の マイナスか いやいやいや 税

生活福祉研レポートの雛形

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質問 1 11 月 30 日は厚生労働省が制定した 年金の日 だとご存じですか? あなたは 毎年届く ねんきん定期便 を確認していますか? ( 回答者数 :10,442 名 ) 知っている と回答した方は 8.3% 約 9 割は 知らない と回答 毎年の ねんきん定期便 を確認している方は約 7 割

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このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

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29 歳以下 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6~69 歳 7 歳以上 2 万円未満 2 万円以 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度 21 年度 211 年度 212 年度 213 年度 214 年度 215 年度 216 年度

TERG

20 金融資産目標残高 今後の金融商品の保有希望 元本割れを起こす可能性があるが 収益性の高いと見込まれる金融商品の保有 日常的な支払い ( 買い物代金等 ) の主な資金決済手段 日常的な支払い ( 買い物代金等 ) の主な資金決済手段 ( 続き )

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金のみの場合は年収 28 万円以上 1 年金収入以外の所得がある場合は合計所得金額 2 16 万円以上が対象となる ただし 合計所得金額が16 万円以上であっても 同一世帯の介護保険の第 1 号被保険者 (65 歳以上 ) の年金収入やその他の合計所得が単身世帯で28 万円 2 人以上世帯で346

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2. 特例水準解消後の年金額以下では 特例水準の段階的な解消による年金額の変化を確認する なお 特例水準の解消により実際に引き下げられる額については 法律で定められた計算方法により年金額を計算することに加え 端数処理等の理由により203 年 9 月の年金額に所定の減額率を乗じた額と完全に一致するもの

図表 II-39 都市別 世帯主年齢階級別 固定資産税等額 所得税 社会保険料等額 消 費支出額 居住コスト 年間貯蓄額 ( 住宅ローン無し世帯 ) 単位 :% 東京都特別区 (n=68) 30 代以下 (n=100) 40 代

事例検証 事例 1 37 歳の会社員の夫が死亡し 専業主婦の妻と子ども (2 歳 ) が遺される場合ガイドブック P10 計算例 1 P3 事例 2 42 歳の会社員の夫が死亡し 専業主婦の妻と子ども (7 歳 4 歳 ) が遺される場合 P4 事例 3 事例 3A 事例 3B 53 歳の会社員の夫


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日本の富裕層は 122 万世帯、純金融資産総額は272 兆円

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ったと判断します なお 一時的に認定基準月額以上の収入がある月があっても 認定基準年額を超えるまでの間は認定できます また 勤務した月の給与が翌月以降に支払われる場合でも 原則 勤務月の収入として取扱います 継続して認定できる事例 認定基準月額未満であるので 継続して認定できます 認定基準月額以上の

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( 参考 ) と直近四半期末の資産構成割合について 乖離許容幅 資産構成割合 ( 平成 27(2015) 年 12 月末 ) 国内債券 35% ±10% 37.76% 国内株式 25% ±9% 23.35% 外国債券 15% ±4% 13.50% 外国株式 25% ±8% 22.82% 短期資産 -

いずれも 賃金上昇率により保険料負担額や年金給付額を65 歳時点の価格に換算し 年金給付総額を保険料負担総額で除した 給付負担倍率 の試算結果である なお 厚生年金保険料は労使折半であるが 以下では 全ての試算で負担額に事業主負担は含んでいない 図表 年財政検証の経済前提 将来の経済状

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質問 1 企業 団体にお勤めの方への質問 あなたの職場では定年は何歳ですか?( 回答者数 :3,741 名 ) 定年は 60 歳 と回答した方が 63.9% と最も多かった 従業員数の少ない職場ほど 定年は 65 歳 70 歳 と回答した方の割合が多く シニア活用 が進んでいる 定年の年齢 < 従業

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冷え込む韓国のシニア消費

2 社会保障 2.1 社会保障 2.2 医療保険 2.3 年金保険 2.4 介護保険 2.5 労災保険 2.6 雇用保険 介護保険は社会保険を構成する 1 つです 介護保険制度の仕組みや給付について説明していきます 介護保険制度 介護保険制度は 高齢者の介護を社会全体で支えるための制度

目次 第 1 章調査概要 調査の目的 調査の方法... 1 第 2 章分析内容 世帯主年齢階級別の世帯数割合 世帯主年齢階級別の等価可処分所得 世帯主年齢階級別の等価所得 拠出金の内訳 世帯主年齢階級別

平成 29 年 1 月度実施実技試験 ( 保険顧客資産相談業務 ) 73

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野村資本市場研究所|確定拠出年金の拠出限度額引き上げは十分か (PDF)

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2 累計 収入階級別 各都市とも 概ね収入額が高いほども高い 特別区は 世帯収入階級別に見ると 他都市に比べてが特に高いとは言えない 階級では 大阪市が最もが高くなっている については 各都市とも世帯収入階級別の傾向は類似しているが 特別区と大阪市が 若干 多摩地域や横浜市よりも高い 東京都特別区

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老後のための資産形成 4 代以下に赤信号 < 要旨 > 老後の生活資金として必要な貯蓄残高を高齢世帯の平均的な家計収支データを用い て試算すると 夫婦共に健康な世帯でおよそ 2,2 万円になる 現在 3 代 ~ 代の資産形成層世帯が これまでと同じペースで貯蓄の積み増しを続 けた場合 6 代時点の予想貯蓄残高はこの 2,2 万円に届かない見込みである 不足 額は 現在 代の世帯では 13 万円程度だが 4 代の世帯では 72 万円 3 代の世 帯では 88 万円と 若い世代ほど老後資金確保への道は険しいと言えそうだ 資産形成層 の年齢については明確な定義はないが 本稿では 3 代 ~ 代 とした なお 本文中の試算は取得可能な統計データに基づき 平均的とされる家計収支のデータを基 に試算したものである 1. 老後資金として必要な貯蓄残高は? 長寿化の進行が続き 人生 1 年時代 が現実味を帯びる中 老後の生活資金 や 資産形成 への関心が高まっている では 実際に老後資金として必要な貯蓄残高 言い換えれば年金生活に入ってから死亡するまでに必要な資金はいくらぐらいなのか 総務省 家計調査 のデータを元に試算してみた 世帯主が 6 歳以上の無職世帯 (2 人以上世帯 ) の 1 ヶ月の収入は 年金などの社会保障給付が 17.6 万円 その他の収入が 2.9 万円で合計 2. 万円 これに対し支出は 消費支出が 23.8 図表 1 6 代以上無職世帯の家計収支 ( 月額 ) 3 実収入 実支出 2 6.1 万円 2 その他収入 2.9 1 1 実収入 2. 万円 年金等社会保障給付 17.6 可処分所得 17.7 万円 消費支出 23.8 実支出 26.6 万円 非消費支出 2.8 ( 資料 ) 総務省 家計調査 (217 年 ) より三井住友信託銀行調査部作成 1

万円 税金や社会保険料などの非消費支出が 2.8 万円で合計 26.6 万円と 収入を 6.1 万円上回る この 6.1 万円が月々の ( 赤字額 ) であり 貯蓄を取り崩して補う必要がある ( 前頁図表 1) 夫婦世帯の老後資金として必要な貯蓄残高を 月々の 6.1 万円 12 ヶ月 年金生活開始後の生存年数 として計算すると 生存年数が 2 年の場合で 1,831 万円 3 年の場合は 2,198 万円となる ( 図表 2) 1 6 歳未満を対象としたアンケート調査の結果を見ると 老後の最低予想生活費 は月々 2~ 27 万円 老後の生活資金として準備しておきたい金融資産残高 は 2,1 万円 ~2,2 万円程度となっており 生存年数 3 年の場合の試算結果 2,198 万円と概ね一致している ( 図表 3) 生存年数 ( 年 ) 図表 2 老後資金として必要な貯蓄残高図表 3 老後の生活資金に関する意識調査の結果 ( 回答者 =6 歳未満 ) 月額 年額 必要貯蓄残高 a b c=b 12 c a 2 6.1 73.3 1,831 3 6.1 73.3 2,198 ( 資料 ) 図表 2 は総務省 家計調査 より三井住友信託銀行調査部試算 図表 3 は金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査 より三井住友信託銀行調査部作成 2. 年金制度変更で上がるハードル ( 万円 / 月 ) 3 3 2 2 1 1 2 2 2 2,19 2,1 2,19 27 2,289 老後の最低予想生活費 2 2,14 準備しておきたい金融資産残高 ( 右軸 ) 27 2,163 212 213 214 21 216 217 2, 2,4 2,3 2,2 2,1 2, 1,9 1,8 ( 年 ) 上記は 現行の年金制度を前提とした試算結果である 仮に 人口構造の変化などから年金制度が見直され 年金給付額の所得代替率 2 が引き下げられれば 老後資金として必要な貯蓄残高は増加することになる そこで 今後 1 年間は現行の所得代替率である 62.7% が維持され その後 % に引き下げられるという前提で考えると 3 高齢無職世帯における年金などの社会保障給付は最初の 1 年間が 17.6 万円でその後は 14. 万円に減少 月々の家計の ( 支出 - 収入 ) は最初の 1 年間が 6.1 万円 ( 前頁図表 1) でその後は 9.7 万円 ( 次頁図表 4) に増加することになる このケースでは 夫婦世帯の老後資金として必要な貯蓄残高は 6.1 万円 12 ヶ月 1 年 + 9.7 万円 12 ヶ月 ( 生存年数 -1 年 ) となり 年金生活に入ってから 2 年間生存する場合で 1 いずれも夫婦ともに生涯健康な場合の金額 要介護 要支援状態の期間があれば 介護費や医療費を中心に必要額は増加する 2 公的年金の給付水準を示す数値 年金支給額が現役世代の手取り収入額 ( 賞与込み ) の何パーセントになるかで示される 3 所得代替率は 実際には数回にわたり小刻みに引き下げられていくことになるが ここでは 62.7% % の引き下げに単純化して考える 2

2,472 万円 3 年間生存する場合では 3,2 万円と 年金制度変更がない場合と比べ 64 万円 ~8 万円ほど多くなる ( 図表 ) ラフな試算ではあるが 高齢夫婦世帯の老後の生活資金として必要な貯蓄残高は 現行の年金制度下では 2,2 万円 年金給付額の引き下げが実施された場合には 3, 万円程度と考えられよう 図表 4 6 代無職世帯の家計収支 < 所得代替率 % の場合 > ( 月額 ) 3 実収入 実支出 2 2 9.7 万円 1 1 実収入 16.9 万円 その他収入 2.9 年金等社会保障給付 14. 可処分所得 14.1 万円 消費支出 23.8 非消費支出 2.8 実支出 26.6 万円 生存年数 図表 老後資金として必要な貯蓄残高 <1 年後に所得代替率 % に引き下げの場合 > ( 年 ) 年金年金年金現行維持下年金減額下現行維持下減額下月額 年額 月額 年額 必要貯蓄残高 a+b a b c d=c 12 e f=e 12 d a+f b 2 1 1 6.1 73.3 9.7 116. 2,472 3 1 2 6.1 73.3 9.7 116. 3,2 ( 資料 ) 図表 4 図表 とも総務省 家計調査 厚生労働省 国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し より三井住友信託銀行調査部作成 試算 3. 4 代と 代の間に資産形成の進捗ギャップあり 続いて 現在 3 代から 7 代の各世代 4 が年金生活開始時点で老後資金として必要な貯蓄残高を保有できていたのか あるいはこのままいけば保有できそうなのかをみた 前述の通り 必要な貯蓄残高は 現行の年金制度が継続した場合で 2,2 万円 年金制度変更による給付額の減少を前提とすれば 3, 万円程度と考えられるが 年金制度変更については未確定であることから ここでは 2,2 万円 を想定した 4 総務省 全国消費実態調査 ( 調査は 年ごとで 214 年が最新 ) のデータを基にしていることから 214 年時点の XX 代 を 現在 XX 代 と標記している 各世代の誕生年は次頁図表 6 の凡例の通り 3

3 代から 7 代の つの世代の貯蓄の積み増し過程を図示すると図表 6 のようになる 各世代の 6 代時点の 1 世帯あたり貯蓄残高 ( 代以下の世代については予想残高 ) をみると 既に多くの人がリタイアしている現在 6 代と 7 代の世帯は老後資金として必要な残高 2,2 万円をほぼクリアしていた ( 図表 6 の と ) しかし 現在資産形成途上にある 3 代 ~ 代の世帯がこれまでと同じペースで貯蓄を積み上げていった場合 6 代時点の予想残高は 2,2 万円に達しない可能性が高い 彼ら資産形成層世帯の貯蓄残高は 3 代時点ではリタイア層世帯の残高を上回っているが その後の積み増しペースがリタイア層世帯よりかなり遅いためである 例えば 現在 6 代の世帯の 3 代時点の貯蓄残高は 433 万円であったが その後の 1 年間で 68 万円 更に次の 1 年間で 4 万円も貯蓄を積み増すことができ この結果 代時点の残高は 1,6 万円を超えた ( 同 ) これに対し 現在 代の世帯は 3 代時点の残高こそ 719 万円と 1 歳年上の世帯を 3 万円近く上回っていたものの 3 代から 4 代にかけての積み増し額が 4 万円 4 代から 代にかけての積み増し額が 48 万円と年上世帯より小幅に留まったため 4 代時点の貯蓄残高は 1,114 万円と 1 歳年上の世帯と同程度となり 代時点では年上世帯を下回った ( 同 ) 現在 4 代の世帯については 3 代時点の残高は 64 万円と 現在の 6 代が 3 代だった頃より 2 万円以上多かったが 3 代から 4 代の 1 年間で 28 万円しか積み増すことができず 4 代時点の残高は 93 万円と早くも年上世代に水をあけられている ( 同 ) 図表 6 世代別にみた世帯貯蓄残高の変化 (2 人以上世帯 ) 2, 2, 2,69 必要貯蓄残高 2,2 万円 1,643 1, 1,18 1,114 1,92 1,481 1,319 1, 719 93 現在 7 代 (193-44 生まれ ) 64 現在 6 代 (194-4 生まれ ) 現在 代 (19-64 生まれ ) 433 現在 4 代 (196-74 生まれ ) 現在 3 代 (197-84 生まれ ) 3 代未満 3 代 4 代 代 6 代 ( 注 ) 貯蓄残高 = 預貯金残高 + 有価証券残高 + 生命保険 積立型損害保険の掛金払い込み総額 ( 資料 ) 総務省 全国消費実態調査 より三井住友信託銀行調査部作成 預貯金残高 + 有価証券残高 + 生命保険 積立型損害保険の掛金払い込み総額 4

資産形成層の世帯が直近 1 年間と同じペースで貯蓄積み増しを続けた場合の6 代時点の予想貯蓄残高は 現在 代の世帯が 2,69 万円 ( 前頁図表 6 の ) 現在 4 代の世帯が 1,481 万円 ( 同 ) 現在 3 代の世帯が 1,319 万円 ( 同 * ) であり このままでは貯蓄残高が 2,2 万円に到達しないまま年金生活に突入することになる 2,2 万円という金額が 夫婦共に要介護状態にならず かつ現行の年金制度が維持された場合の いわば必要最低額であることを考えると 3 代 ~ 代の資産形成層において資産形成が順調に進んでいると言えないことは明らかだろう 現在 代の世帯は予想されるが 13 万円程度なので 今後の節約や資産形成努力いかんでは目標額クリアも期待できるが 現在 4 代と 3 代の世帯のはそれぞれ 72 万円と 88 万円であり 相当大幅な家計行動の見直しや運用環境の好転がない限り目標額への到達は難しい あくまでも各世代の 平均値 ベースの話だが 老後のための資産形成について 代には黄信号 4 代以下には赤信号が灯っており 同じ資産形成層の中でも 4 代と 代の間には資産形成の進捗ギャップができていると言えそうだ このように 3 代 ~ 代の世帯で資産形成がもたついている要因については 次号で考える ( 経済調査チーム青木美香 :Aoki_Mika@smtb.jp) 調査月報に掲載している内容は作成時点で入手可能なデータに基づき経済 金融情報を提供するものであり 投資勧誘を目的としたものではありません また 執筆者個人の見解であり 当社の公式見解を示すものではありません