法学 ( 法律学入門 ) A 第 1 2 回司法制度 ( 6 ) 講義資料 1. 刑事訴訟の流れ 犯罪発生から公判手続まで ( 1 ) 犯罪の発生 犯罪捜査を始めるのは 被害届の提出や職務質問 検視 ( 変死の疑いのある死体の調査 ) などがある また 捜査機関に対して犯罪事実を申告し処罰を求めるための制度として ( 1 ) や告発がある ( 1 ) 犯罪被害者やその親族などが申告する場合告発 第三者が申告する場合 * 親告罪 ( 1 ) がないと公訴できない犯罪 ( 2 ) 捜査 犯罪捜査は任意捜査が原則 取調べ 出頭要求 実況見分 職務質問 所持品検査 任意同行など ( 2 ) 主義 逮捕 捜索 差押えなど 強制的に捜査活動を行う場合には 裁判官が発する ( 2 ) が必要 ( 憲法 3 3 3 5 条 ) ( 3 ) 被疑者の逮捕 犯人逮捕にも原則として裁判官の発する ( 2 ) が必要である ( 憲法 3 3 条 ) この 場合の逮捕のことを 通常逮捕という ただし 現行犯逮捕と緊急逮捕の例外がある 逮捕のときに 被疑者に対して 犯罪事実の要旨と弁護人依頼権のあることを告知 しなければならず さらに弁解の機会を与えなければならない ( 憲法 3 4 条 ) ( 4 ) 逮捕後の被疑者について 警察官が逮捕して 身柄を拘束した場合 ( 留置 ) 4 8 時間以内に検察官に身柄を引渡す ( 送致 ) か するかを決めなければならない * 微罪処分 ( 3 ) 被疑者の身柄を 刑事施設に拘束すること 検察官は送致後 2 4 時間以内に 裁判官に対して ( 3 ) を請求するか するかを決めなければならない ( 3 ) を決定する手続は公開 ( 憲法 3 4 条 ) ( 3 ) が認められた場合 1 0 日が限度であるが 1 度だけ 1 0 日の延長が認められる * 別件逮捕 勾留の問題 ( 3 ) が決まった場合 被疑者は 原則 拘置所で身柄が拘束される ただし 警察の留置所で身柄が拘束される例が実際には多い ( 3 ) されない場合でも 在宅で任意に取り調べ等を受けることになる 公訴までの期間に 検察官は犯罪事実を立証するための証拠を調べることになる 被疑者の取調べ 証人 鑑定など 証拠品等を探したり ( 捜索 ) 押収したり ( 差押え ) する場合 検証や身体検査も令状が必要となる ( 憲法 3 5 条 ) 弁護人を選任できない人に対しては 国選弁護人をつける ( 憲法 3 4 条 3 7 条 ) * 当番弁護士制度接見交通権 弁護人は 被疑者 被告人と立会人なしに接見できる権利がある 被疑者は自分に不利益な供述を強要されない ( 憲法 3 8 条 )( = 黙秘権 ) 取調べ時の拷問などは 当然に禁止である ( 憲法 3 6 条 ) ( 5 ) 公訴の提起後 公訴の提起後 被疑者は ( 4 ) と呼ばれるようになる ( 4 ) は 公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する ( 憲法 3 7 条 ) 高田事件 ( 最高裁昭和 4 7 年 1 2 月 2 0 日 ) 被疑者の身柄が勾留されていない状態で公訴される場合は在宅起訴と呼ばれる 公訴提起後は 2 ヶ月の勾留延長が認められるが 特別な理由がない限りは保釈が許されなければならない 保釈とは 住居限定や保証金の納付を条件として 勾留されている被告人の身柄の拘束を解く制度のことである 平成 1 7 年から公判前整理手続が実施されている 刑事裁判の充実 迅速化を図るため 第 1 回公判期日前に事件の争点及び証拠を整理するための公判準備のための制度 - 1 -
( 6 ) 公判手続 別紙も参照 公判 = 裁判所 検察官 被告人 ( と弁護人 ) が出廷して 法廷で行われる裁判手続 通常の公訴 = 公判請求 通常の刑事訴訟 = 公判 例外 略式手続 即決裁判手続 簡易公判手続 公判の過程 1 冒頭手続 人定質問 起訴状朗読 黙秘権等の告知 罪状認否 2 証拠調手続 最初に検察官と弁護人双方が冒頭陳述を行い それぞれが裁判で 立証しようとする事実や法律上の主張について明らかにする 3 弁論手続 まず 検察官は事実及び法律の適用について意見を述べ ( 論告 ) 求める刑の重さを明らかにする ( 求刑 ) 次に弁護人が意見を陳述する ( 弁論 ) 最後に被告人が意見を陳述する ( 最終陳述 ) 4 判決言渡し 刑事被告人に保障されている権利 被告人の弁護人依頼権 ( 憲法 3 7 条 ) 証人審問をする権利 ( 憲法 3 7 条 ) 必要な証人を喚問する権利 ( 憲法 3 7 条 ) 不利益な供述を強要されない ( 黙秘権 )( 憲法 3 8 条 ) ( 7 ) 判決とその後 判決は 公判法廷における宣告によりなされ 効力発生 有罪判決で 懲役や禁錮など自由刑の場合には 逮捕されてから判決が確定するまで勾留 ( 未決勾留 ) の日数の全部または一部が刑期に算入されることがある 判決に不服がある場合は 上訴 ( 控訴 上告 ) 判決確定後であっても 一定の要件を満たす重大な理由がある場合 ( 証拠 証言 自白の虚偽や新たな証拠の発見など ) に有罪判決を受けた者が再審を請求することができる 再審の結果 無罪判決が下された事例が複数存在する これは警察の自白偏重捜査などが原因で ( 5 ) ( 無実なのに犯罪者と扱われること ) が生じてしまうためである ( 例えば 足利事件 東電 OL 殺人事件など ) 無罪が確定した者に対して 刑事補償請求権 ( 憲法 4 0 条 ) が認められる * 住居の不可侵 ( 35 条 ) について 捜索 押収は 捜索する場所 押収する物が明示された各別の令状によらなければならず 令状は 正当な理由 に基づき 権限を有する官憲 によって発せられなければならないということ 令状のない捜索 押収や 合理的理由によらない単なる当て推量による捜索 押収は許されない ただし 現行犯逮捕の場合は 令状なしでも可能 2. 法廷傍聴に行くための準備 現代社会と法の夏期課題のために 1 行く予定の裁判所の行き方を調べるには見学 傍聴案内 http://www.courts.go.jp/kengaku/saibansyo_joho/index.html 所在地 電話 http://www.courts.go.jp/map_tel/index.html * なお Googleで検索すると 住所 電話番号が表記され 地図も表示できます たぶん その方がてっとり早いと思います 2 傍聴のコツ 裁判所の規模により多少異なるが 刑事事件だけでも一日に複数の裁判が行われるので午前中から行って 一日かけて傍聴してまわることをお勧めする 裁判所の玄関あるいは 1 階のロビーなど かならずどこかに 開廷表 があるので まず それを探すこと ( わからなかったら職員に聞いてみるとよい ) 開廷表に記載されている内容は 事件 法廷の場所 時間 被告人の名前 ( 民事の場合は原告も ) 裁判官の名前 手続の段階などである 刑事事件は犯罪名が記載されているので見分けやすいと思う おすすめは 手続の段階に 新件 審理 などの記載があるもの 判決 と記載されているものは 単に判決宣告のみのため 事件の内容が全く分からない = 報告書に書きにくいですので あまりおすすめできません - 2 -
捜査 被疑者の逮捕 48 時間 検察官への送致 24 時間 身柄拘束の必要あり 身柄拘束の必要なし 勾留の請求 請求が認められる 請求が認められない 10 日 勾留 最大 23 日 間 勾留延長の請求 請求が認められる 請求が認められない 10 日 勾留 公訴の提起 身柄拘束の必要あり 身柄拘束の必要なし 被告人として勾留 保釈
公判手続の流れ 公判請求 ( 刑訴 256) 裁判所受理 公判前整理手続 ( 刑訴 316 の 2~316 の 27) * 裁判員制度が適用される事件 争点が多岐にわたる複雑な事件等の場合に実施されます 第 1 回公判期日の指定等 ( 刑訴 273~276) ( 第 1 回公判期日 ) 人定質問 ( 規則 196) 冒頭手続 起訴状朗読 ( 刑訴 291Ⅰ) 黙秘権等の告知 ( 刑訴 291Ⅲ 前 規則 197) 被告人 弁護人の起訴事実に対する認否 ( 刑訴 291Ⅲ 後 ) 検察官の冒頭陳述 ( 刑訴 296) 即決裁判手続 ( 刑訴 350 の 8) 簡易公判手続 ( 刑訴 291 の 2 規則 197 の 2) 被告人 弁護人の冒頭陳述 ( 刑訴 316 の 30 規則 198) 期日間整理手続 ( 刑訴 316 の 28) 証拠調手続 公判前整理手続の結果の顕出 ( 刑訴 316の31Ⅰ 規則 217の29) ( 検察官の立証 ) * 公判前整理手続が実施された場合証拠調べ請求 ( 刑訴 298Ⅰ 規則 189) 被告人 弁護人の意見 ( 刑訴 326 規則 190Ⅱ) 証拠決定 ( 規則 190Ⅰ) 証人等 ( 刑訴 304) 証拠調べの実施 証拠書類等の提出 ( 刑訴 310) 証拠書類 ( 刑訴 305) 証拠物 ( 刑訴 306) 被告人調書等の請求 取調べ ( 刑訴 301) 被告人 弁護人の立証 ( 検察官の立証過程と同じ手続 ) 弁論手続 被告人質問 ( 刑訴 311) 論告 求刑 ( 刑訴 293Ⅰ) 弁論 ( 刑訴 293Ⅱ) 被告人の最終陳述 ( 規則 211) 被害者等の意見陳述 ( 刑訴 292 の 2) ( 結審 ) 判決宣告 ( 刑訴 431Ⅰ 342 規則 34 35) 有罪判決 無罪判決 管轄違いの判決 公訴棄却の判決 免訴の判決 ( 刑訴 335) ( 刑訴 336) ( 刑訴 329) ( 刑訴 338) ( 刑訴 337) 刑の免除 ( 刑訴 334) 刑の言渡し ( 刑訴 333) 執行猶予なし 執行猶予付き ( 注 ) 決定で裁判が終結する場合 1 公訴棄却刑訴 339Ⅰ 2 移送刑訴 19 332
裁判傍聴用メモ 裁判所名 : 地方裁判所 ( 支部 ) 傍聴日時 : 年 月 日 ( ) : ~ : 傍聴の法廷 : 第 号法廷 [ 合議 / 単独 ] 裁判員裁判か? : [ はい / いいえ ] ( 裁判員の構成 : 男 名 女 名 ) 裁判官氏名 : 裁判長 右陪席 左陪席 検察官氏名 : 事件名 ( 罪名 ): 被告人の身柄 : [ 勾留中 / 保釈中 / 在宅 ] 弁護人氏名 : [ 私選 / 国選 ] 公判の種類 : ( 該当するものにすべて ) [ 冒頭手続 / 証拠調べ / 被告人質問 / 論告 / 最終陳述 / 判決 ] 第 回公判 ( 公判の開始 : 終了 : ) 傍聴人の数 : 名 ( うち 証人 名 親族など 名 報道関係者 名 ) 事案と手続の概要 次回の公判期日 : 年月日 ( ) : から その他の特記事項 :