2 資産 地域 時間等を分散して投資することを基本とし 短期的には市場価格の変動等はあるものの 長い投資期間を活かして より安定的に より効率的に収益を獲得し 併せて 年金給付に必要な流動性を確保する 分散投資 一つの籠に卵を盛るな という西洋のことわざがありますが 年金積立金の運用に限らず 一般に

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( 参考 ) と直近四半期末の資産構成割合について 乖離許容幅 資産構成割合 ( 平成 27(2015) 年 12 月末 ) 国内債券 35% ±10% 37.76% 国内株式 25% ±9% 23.35% 外国債券 15% ±4% 13.50% 外国株式 25% ±8% 22.82% 短期資産 -

平成 29 年度 厚生年金保険法第七十九条の八第二項に基づく国家公務員共済組合連合会にかかる管理積立金の管理及び運用の状況についての評価の結果 概要 平成 30 年 12 月 財務省主計局給与共済課

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

企業年金におけるスチュワードシップ・コード の受入れ促進に向けて

1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

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グローバルな潮流キーワードは Sustainability と Inclusiveness 日本のガバナンス改革と米国の株主至上主義からの反省 あるべき姿 過去 過去 いわゆる日本的経営 ( 株主軽視 ) 幅広いステークホルダーとの協働 ( 株主 従業員 顧客 取引先等々 ) アングロサクソン型資本

資料1 平成28年度厚生年金保険法第79条の8第2項に基づく地方公務員共済組合連合会に係る管理積立金の管理及び運用の状況についての評価の結果(概要)

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1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

共済事業団をいう 以下同じ ) が共同して モデルポートフォリオを定めるとともに 連合会は モデルポートフォリオを参酌して 長期的な観点からの資産構成割合 ( 以下 基本ポートフォリオ という ) を策定し 管理積立金の管理及び運用を行う (2) 運用の目標 リスク管理等 1 運用の目標管理積立金の

る 連合会は 管理運用の方針の策定及び変更等退職等年金給付調整積立金の管理及び運用に係る専門的事項を検討する場合には 資金運用委員会の専門的知見を活用する 3 退職等年金給付調整積立金の管理及び運用におけるリスク管理連合会は 連合会を除く管理運用機関 ( 組合 市町村連合会及び連合会をいう 以下同じ

2018 年度第 3 四半期運用状況 ( 速報 ) 年金積立金は長期的な運用を行うものであり その運用状況も長期的に判断することが必要ですが 国民の皆様に対して適時適切な情報提供を行う観点から 作成 公表が義務付けられている事業年度ごとの業務概況書のほか 四半期ごとに運用状況の速報として公表を行うも

(資料4)運用機関とのコミュニケーションの取り方や情報開示の方法等(案).pdf

有識者会議提言後の対応 好循環実現のための経済対策 好循環実現のための経済対策 ( 平成 25 年 12 月 5 日閣議決定 ) において 有識者会議の提言を踏まえ 厚生労働省等の関係省庁において 各資金の規模 性格に応じ 長期的な健全性の確保に留意しつつ 必要な施策を迅速かつ着実に実施すべく所要の

ピクテ・インカム・コレクション・ファンド(毎月分配型)


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第 3 国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項 1. 年金積立金の管理及び運用の基本的な方針年金積立金の運用は 年金積立金が被保険者から徴収された保険料の一部であり かつ 将来の年金給付の貴重な財源となるものであることに特に留意し 専ら被保険者の利益のために 長期的な観点から

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2. 運用の目標 リスク管理及び運用手法 (1) 運用の目標年金積立金の運用は 厚生年金保険法第 2 条の4 第 1 項及び国民年金法第 4 条の3 第 1 項に規定する財政の現況及び見通しを踏まえ 保険給付に必要な流動性を確保しつつ 長期的に積立金の実質的な運用利回り ( 積立金の運用利回りから名

退職等年金給付積立金等の管理運用の方針

GPIF

< 目的 > 専ら被保険者の利益 にはそぐわない目的で運用が行われるとの懸念を払拭し 運用に対する国民の信頼を高める 運用の多様化 高度化が進む中で 適切にリスクを管理しつつ 機動的な対応を可能に GPIF ガバナンス強化のイメージ ( 案 ) < 方向性 > 1 独任制から合議制への転換基本ポート

1 乖離幅が許容範囲を超えた場合 乖離状況が是正されるよう資産の移受管によりリバランスを行う 2 上記 1にかかわらず 積立水準の変化 マーケットの変動 マーケットインパクト 取引コスト等 総合的に判断したうえで 乖離状況が是正されるようリバランスを行うことができる 3 上記 1 2に基づくリバラン

○ 問合せ先専用フリーダイヤル

2018年度年金資産運用状況(速報).pdf

公的年金 運用益 15 兆円株上昇で過去最高昨年度 朝日新聞 2015 年 7 月 11 日 厚生年金と国民年金の積立金の運用益が2014 年度は15 兆 2922 億円に上った 積立金の自主運用を始めた01 年度以降の最高益を記録 昨年 10 月末に株式で運用する比率を高めたことが背景にある 年金

受益者の皆様へ 平成 28 年 2 月 15 日 弊社投資信託の基準価額の下落について 平素より弊社投資信託をご愛顧賜り 厚くお礼申しあげます さて 先週末 2 月 12 日 ( 金 ) 以下のファンドの基準価額が 前営業日の基準価額に対して 5% 以上下落しており その要因につきましてご報告いたし

公的年金制度について 制度の持続可能性を高め 将来の世代の給付水準の確保等を図るため 持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく社会経済情勢の変化に対応した保障機能の強化 より安全で効率的な年金積立金の管理及び運用のための年金積立金管理運用独立行政法人の組織等の見直し等の

⑧(第1回参考資料)積立金の運用状況v2

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【IR付属資料2】120116地方公共団体の基金に係る資金の性質に応じた運用手法について

2018 平成30 年度第2四半期 GPIFの運用実績 2001年度 平成 年度 平成 年度 平成 年度 2005年度 2006年度 2007年度 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 20

Microsoft Word - <公表版>H29資金管理方針

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【11】ゼロからわかる『債券・金利』_1704.indd

検査の背景及び実施状況 1 参議院からの検査要請の内容 (1) 検査の対象年金積立金管理運用独立行政法人等 (2) 検査の内容年金積立金 ( 厚生年金及び国民年金 ) の管理運用に係る契約の状況等に関する次の各事項 年金積立金の管理運用に係る業務の状況 契約方式等の状況 委託先機関におけ


2016( 平成 28) 年度 業務概況書会見 理事長髙橋則広 2017( 平成 29)07.07

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日本株市場を泳ぐ 5 頭のクジラ SMBC 日興証券株式会社投資情報部 2016 年 10 月 4 日更新版

ための手段を 指名 報酬委員会の設置に限定する必要はない 仮に 現状では 独立社外取締役の適切な関与 助言 が得られてないという指摘があるのならば まず 委員会を設置していない会社において 独立社外取締役の適切な関与 助言 が十分得られていないのか 事実を検証すべきである (2) また 東証一部上場

る法律 ( 平成 28 年法律第 104 号 ) による年金積立金管理運用独立行政法人法 ( 平成 16 年法律第 105 号 以下 法 という ) の改正に伴い 1 独任制から合議制への転換 2 意思決定 監督 と 執行 の分離 執行部の責任と権限の明確化を目的として 平成 29 年 10 月 1


2. 年金額改定の仕組み 年金額はその実質的な価値を維持するため 毎年度 物価や賃金の変動率に応じて改定される 具体的には 既に年金を受給している 既裁定者 は物価変動率に応じて改定され 年金を受給し始める 新規裁定者 は名目手取り賃金変動率に応じて改定される ( 図表 2 上 ) また 現在は 少

< 予算計画 > ( 単位 : 百万円 ) 区 別 年金特別会計厚生年金勘定寄託金年金特別会計国民年金勘定寄託金 中期計画予算 ( 平成 22~26 年度 ) 169,200 96,700 平成 25 年度予算 0 17,500 厚生年金勘定より受入国民年金勘定より受入承継資金運用勘定より受入 20

日本円単位型特別勘定月次運用レポート 単位型特別勘定の運用方針等 2018 年 12 月末現在 主として円建ての債券に投資することにより 満期時の所定の金額の確保を目指しながら 中長期的に高い投資成果をあげることを目標とします 基本保険金額と同額の成果を目指す 安定運用部分 と 株式市場の環境に応じ

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第 1 四半期運用実績 ( 概要 ) 運用利回り +1.54% 収益率 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1.02% 実現収益率 ( )) 運用収益額 +3,222 億円 総合収益額 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1,862 億円 実現収益額 ( )) 運用資産残高 ( 第 1 四半期末 )

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確定拠出年金(DC)における継続投資教育の効果

とリスク とは とは 運用を行った結果得られる損益です 収益がプラスでもマイナスでも 投資したからの差額がとなります パターン 1 が変動せずに 利息等の収益金を得た場合 利息等 パターン2 投資した商品の価格が上昇した場合 とリスクの関係 運用するときには低いリスクで高いを得ることが最も望ましいの

国家公務員共済組合連合会 厚生年金保険給付積立金の令和元年度第 1 四半期運用状況 第 1 四半期末の運用資産額は 6 兆 7,376 億円となりました 第 1 四半期の収益額は 実現収益額が 512 億円 総合収益額が 128 億円となりました 第 1 四半期の収益率は 実現収益率 ( 期間率 )

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ご留意いただく事項

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運用商品一覧 作成日 :2019 年 10 月 8 日 規約名 フジ アスティ企業型確定拠出年金 運営管理機関名 第一生命保険株式会社 < 商品ラインアップの選定 > 選定理由 複数の資産に分散投資を行うバランス型投資信託と 基本 4 資産 ( 国内外の株式 債券 ) を投資対象とする単一資産型投資

「つみたてNISA」専用商品の取扱開始について

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本日のご説明内容 1. GPIFにおけるオルタナティブ投資 及びその手法についての考え方 2. 今回の公募内容 3. 運用機関への役割期待 4. 今後のスケジュール 5. Q&A 2

Microsoft PowerPoint - (資料2-7)暫定評価説明資料

年金積立金管理運用独立行政法人 平成21年度第3四半期運用状況

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運用商品ラインアップ 運用商品の詳細および最新の運用実績等については ホームページからご確認ください 区分 商品 コード パッシブ型 商品名 セレクション 日本インデックス 信託財産 信託報酬率 年率 税込 留保額 商品概要 主に日本のに投資します % 委託会社 商品 コード

野村資本市場研究所|公的年金持続可能性の鍵を握る成長戦略の成否-平成26年財政検証結果から考える-(PDF)

円貨建て債券が 15 年変動利付国債である場合には その利子は 10 年国債の金利の上昇 低下に連動して増減しますので このような特性から 15 年変動利付国債の価格は 必ずしも上記のような金利水準の変化に対応して変動するわけではありません 円貨建て債券の発行体または債券の発行体または円貨建て債券の

平成28年度公金管理運用計画

日本の低金利の状況が続く中 外貨の好金利で運用し 当面の間 なるべく ふやす 外貨への関心が高まっているのをご存知ですか そして将来は たくわえた資産を 実は 家計における外貨資産は20年で約4倍に増加しています 商商商商品品品品パパパパンンンンフフフフレレレレッッッットトトト 詳細は P.25-2

社会保障 税一体改革大綱(平成24 年2月17 日閣議決定)社会保障 税一体改革における年金制度改革と残された課題 < 一体改革で成立した法律 > 年金機能強化法 ( 平成 24 年 8 月 10 日成立 ) 基礎年金国庫負担 2 分の1の恒久化 : 平成 26 年 4 月 ~ 受給資格期間の短縮

2 / 5 ファンドマネージャーのコメント 現時点での投資判断を示したものであり 将来の市況環境の変動等を保証するものではありません < 運用経過 > ダイワ マネーアセット マザーファンドを組み入れることで 安定運用を行いました < 今後の運用方針 > 今後につきましても 安定運用を継続して行って

変額個人年金保険 ( 米ドル建 ) 特別勘定運用レポート 2019 年 2 月発行 (2019 年 1 月末基準 ) ~ ご案内 ~ < 特別勘定運用レポートについて> 当レポートは 特別勘定の運用概況や運用実績をお知らせするためのものです 当レポートは 変額個人年金保険 ( 米ドル建 ) の生命保

平成 30 年度 厚生年金保険給付組合積立金 運用報告書

4. つみたてNISA 商品のおもな選定理由について (1) つみたてNISA は長期運用 資産分散 時間分散により 投資リスクを低減しながらリターンを目指す制度であることから 商品選定にあたっては 長期運用と資産分散の観点を重視しました (2) 複数の投資信託商品を購入いただき組合せるのではなく

1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

1. 平成 29 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 : 日銀の金融緩和が継続される中 期初から 9 月上旬にかけては 北朝鮮のミサイル発射や核実験に伴う地政学的リスクの高まりなどから 10 年国債利回りは一時的にマイナスまで低下しました その後 株価指数の上昇 円

する なお 年間資金運用計画には 次の事項を記載する (1) 資金収支見込みア収入予定額 ( ア ) 負担金 ( イ ) 掛金 ( ウ ) 利息 利金 ( エ ) その他の収入イ支出予定額 ( ア ) 退職給付金 ( イ ) 繰入金外 ( ウ ) その他の支出ウ短期運用額エ投資運用額 (2) 資金運

1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

預金を確保しつつ 資金調達手段も確保する 収益性を示す指標として 営業利益率を採用し 営業利益率の目安となる数値を公表する 株主の皆様への還元については 持続的な成長による配当可能利益の増加により株主還元を増大することを基本とする 具体的な株主還元方針は 持続的な成長と企業価値向上を実現するための投

スチュワードシップ コード改訂に当たって 平成 29 年 5 月 29 日 スチュワードシップ コードに関する有識者検討会 1. 平成 26 年 2 月 26 日 日本版スチュワードシップ コードに関する有識者検討会 によりスチュワードシップ コードが策定されてから約 3 年が経過した この間 スチ

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マーケット環境の理解 Copyright(c) Akira Sugiyama all rights reserved 2

農業者年金の資金運用に関するアンケート 次の各問について あなたのお考え ( 率直なご印象で結構です ) に最も近い回答を 1つだけ選び 同封の回答用はがきの回答欄に記入 ( 該当する記号 ( 英字 ) を 印で囲んで ) の上 11 月 30 日 ( 水 ) までに切手を貼らずにポストに投函いただ

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夢のプレゼントの概要 (1) 仕組図 < イメージ図 > 円で目標設定タイプ 保険期間 10 年 (2) 主な取扱条件 米ドルで入金 3 万米ドル (1 米ドル単位 ) 最低豪ドルで入金 3 万豪ドル (1 豪ドル単位 ) 一時払保険料円で入金 300 万円 (10 万円単位 ) ( 基本保険金額

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GPIFのオルタナティブ投資について 現行中期計画( 基本ポートフォリオ ) における位置付け 分散投資によるリスクの低減や運用の効率化を進めるため 基本ポートフォリオにおいて オルタナティブ資産での運用について明記 ( 平成 26 年 10 月厚生労働大臣認可 ) 運用体制の整備に伴い管理 運用さ

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日本版スチュワードシップ コード についての第一生命の取組み 当社は 責任ある機関投資家 の諸原則 ( 日本版スチュワードシップ コード ) の趣旨に深く賛同し 受け入れることを表明し ます 当コードの原則 1 から 7 について 以下のような方針で取り組んでいきます 原則 1 機関投資家は スチュ

建設業退職金特別共済事業資産運用の基本方針

Microsoft Word _【再々修正】公表資料<厚生年金・国民年金の平成28年度収支決算の概要>

Transcription:

年金積立金管理運用独立行政法人の投資原則についてのご説明 1 年金事業の運営の安定に資するよう 専ら被保険者の利益のため 長期的な観点から 年金財政上必要な利回りを最低限のリスクで確保することを目標とする 我が国の公的年金制度 ( 厚生年金及び国民年金 ) は 現役世代の保険料負担で高齢者世代を支えるという世代間扶養の考え方を基本として運営されています 一方 少子高齢化が進む中で 現役世代の保険料のみで年金給付を賄うこととすると その負担が大きくなりすぎることから 一定の積立金を保有しつつ概ね100 年間で財政均衡を図る方式とし 財政均衡期間の終了時には給付費の 1 年分程度の積立金を保有することとし 積立金を活用して後世代の給付に充てるという財政見通しが立てられています この財政見通しで想定されている年金財政上必要な運用利回りを確保し 年金事業の運営の安定に資することが GPIFの使命であると考えています 言い換えれば 年金財政上必要な運用利回りを確保できないことが G PIFにおける最大のリスクです しかし 収益を確保するため むやみに高い収益を追求するような運用を行うわけではありません あくまでも長期的観点から年金財政上必要な運用利回りを確保することとしています GPIFは 資金規模が約 149 兆円 ( 平成 29 年 6 月現在 ) に及ぶ世界最大規模の年金運用機関です GPIFは 被保険者の利益を最優先とし 年金資産の価値保全を図りつつ 市場規模を考慮して投資行動を行います また 株価対策や経済対策のために年金積立金を利用することは絶対にありません GPIFは 専ら被保険者の利益のために運用することを誓います 1

2 資産 地域 時間等を分散して投資することを基本とし 短期的には市場価格の変動等はあるものの 長い投資期間を活かして より安定的に より効率的に収益を獲得し 併せて 年金給付に必要な流動性を確保する 分散投資 一つの籠に卵を盛るな という西洋のことわざがありますが 年金積立金の運用に限らず 一般に 大切な資金を安全かつ効率的に運用するためには 特性の異なる複数の資産に分散して投資を行うことが適切であり 効果的であることが国内外の経験則や投資理論から明らかにされています 債券や株式のように 収益率の動きが異なる複数の資産に適切に分散して投資を行うことにより 長期的には 同じ収益率を見込む場合でも 収益率の変動幅をより小さくすることができるということです GPIFは この分散投資を基本とします 各資産の投資の意義 債券投資では 一般に満期に額面で償還されることが期待できます 特に 国内債券は 年金給付に必要な自国通貨での現金収入をもたらす資産であるとともに流動性も高いことから年金積立金運用において重要な資産です しかし 株式投資に比べれば安全とされている公社債などの債券投資であっても 金利が上昇すると市場価格が下落し 損失が発生します また 物価や賃金の上昇を下回る金利での運用を続ければ 実質的な価値が目減りしていくことが避けられません 株式投資では 一般的に 東証株価指数など市場を幅広く反映する指数で見ると その収益率は経済成長に連動し 長期的に保有していれば安定的に高い収益を得ることが期待されます このように 株式投資では 長期に価値向上が期待されるものに投資をすることが基本となります しかし 短期的には 様々な要因により 市場価格 と 価値 に大きな乖離が発生することがあります 2

このほか 海外資産への投資では 海外の成長の果実を享受できる一方 為替相場の変動やその国の政治情勢の変化等によっても市場価格が変化します しかし このような市場価格の変動などを受け入れながらも 長期的には 1 変動する市場価格が本来の価値 ( ファンダメンタル バリュー ) に収れんすると期待できること 2 様々な資産を併せ持つことによる分散効果などが期待できることなどから 年金財政上必要な運用利回りを確保することにつながると考えています 長い投資期間を活かした運用 例えば いつでも現金が引き出せる普通預金の金利に比べ より長い期間運用する定期預金の金利のほうが高いように 一般的には 投資期間が長いほうがより高い収益を得ることができます また 投資期間が長ければ 不利な市場価格での資産売却を避け 有利な市場価格がつくまで待つことができます 私たちの年金積立金は 年金制度の財政見通しにおいて 当面は 大きく取り崩す必要がないため 比較的長い期間の投資を行うことが可能です この特徴を最大限に活かして より安定的に より効率的に収益を得てまいります 3

年金積立金の長期資金としての性格 年金財政については 政府は少なくとも5 年ごとに 財政の現況及び見通し ( いわゆる 財政検証 ) を作成し その健全性を検証しなければならないこととされています 平成 26 年 6 月に公表された最新の財政検証によれば 経済シナリオによって異なるものの 傾向的には 積立金の水準は しばらく低下したのち いったん上昇に転じ 概ね25 年後に最も高くなった後 100 年後に向けて継続的に低下していきます このため 積立金の水準が高く 継続的な取り崩しが始まる前まで ( 概ね 25 年間 ) はもとより その後も取り崩しに支障の出ない範囲内での長い期間の投資が可能であると考えています 年金給付に必要な流動性の確保 GPIFが運用する年金積立金は 国の年金特別会計において 年金給付に必要な資金が不足する場合には これに直ちに応じなければならないという重要な役割を担っています このため 年金特別会計で必要とされる資金に対応すべく 財政見通しを踏まえ 国内債券の元利金償還金を予め手当てしておくことや 想定外の場合に備えて換金性の高い資産を十分確保しておくことが重要であると考えています 4

3 基本ポートフォリオを策定し 資産全体 各資産クラス 各運用受託機関等のそれぞれの段階でリスク管理を行うとともに パッシブ運用とアクティブ運用を併用し 資産クラスごとにベンチマーク収益率 ( 市場平均収益率 ) を確保しつつ 収益を生み出す投資機会の発掘に努める 基本ポートフォリオの策定 長期的に運用する場合には 短期的な市場の動向によって資産構成割合を頻繁に変更するよりも 基本ポートフォリオを決めて長期間維持していく方が 効率的で良い結果をもたらすことが知られています このような意味で 基本ポートフォリオの決定は GPIFにとって最重要の意思決定です このため GPIFでは理事長が基本ポートフォリオを含む中期計画を作成 変更するときは あらかじめ経営委員会の議決を経た上で 厚生労働大臣の認可を得ることとなっています 今回の基本ポートフォリオの見直しでは 長期的な観点から 年金財政上必要な運用利回りを最低限のリスクで確保することを目標として策定しました リスク管理 GPIFにおける最大のリスクは 年金財政上必要となる運用利回りを確保できないことです 一方 日常の運用業務において具体的に管理すべきリスク項目は 多岐にわたります 例えば 投資資産の市場リスク 流動性リスク 信用リスク カントリーリスクなどだけでなく 運用受託機関や資産管理機関に関するリスクや G PIFの運営に関するリスクなど投資プロセスやモニタリングの方法にも及びます これらの管理すべきリスクを 資産全体 各資産クラス 各運用受託機関等について あらかじめ洗い出し その上で その状況を定期的かつ必要に応じて監視します 5

更に 長期的な投資家として 経済環境の変化や運用の多様化に合わせて 新たに管理すべきリスク項目はないか等を常に検証し 柔軟かつ迅速に対処していきます ベンチマーク収益率 ( 市場平均収益率 ) の確保 金融市場では 多様な投資家が 様々な情報を利用し それぞれの動機に基づき 資産の取引を行っています 特に 情報が十分に行き渡り 多くの投資家によって膨大な量の取引が行われる 長い期間を想定すれば 先にも述べたとおり その市場価格は割安でも割高でもない本来の価値に収れんすると考えられます その意味で市場は概ね効率的だと言えます これは いわゆるパッシブ運用 ( 市場全体の時価の変動を表す指数に連動する運用 ) を支持する考え方であり 特に GPIFのように資金規模が大きく 長期的に運用する場合には有用です 一方 公表された情報であっても投資家に未だ十分に行き渡っていない場合や 不確かな情報で市場が過剰反応している場合 あるいは 市場参加者が少ない場合などには 市場価格が割安 割高に放置されている場合があります これは いわゆるアクティブ運用 ( 市場全体の時価の変動を表す指数から意図的に乖離することで超過収益を得る運用 ) や オルタナティブ投資の有効性を支持する考え方です GPIFでは パッシブ運用とアクティブ運用を併用し 資産クラスごとにベンチマーク収益率 ( 市場平均収益率 ) を確保しつつ 投資収益の源泉を十分に検証した上で 収益を生み出す投資機会の発掘に努めます 6

4 スチュワードシップ責任を果たすような様々な活動 (ESG( 環境 社会 ガバナンス ) を考慮した取り組みを含む ) を通じて被保険者のために中長期的な投資収益の拡大を図る 平成 26 年 2 月に金融庁の検討会から 日本版スチュワードシップ コード が示されました スチュワードシップ責任とは 機関投資家が 投資先の日本企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な 目的を持った対話 ( エンゲージメント ) などを通じて 当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより 顧客 受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任 を意味するとされています GPIF は 運用受託機関と投資先企業とのエンゲージメントを促進しています エンゲージメントによって中長期的な企業価値が向上し 市場全体の成長につながれば GPIF は投資リターンの改善という恩恵を受けられます GPIF は インベストメントチェーンにおいてこのような好循環の構築を目指すことで スチュワードシップ責任を果たします GPIF は 自ら実施が可能なものは自ら取り組み また 運用受託機関が実施する取組についてはその実施状況を把握 適切にモニタリングし 運用受託機関とエンゲージメントを行い 各年度の活動状況の概要を公表することを通じ GPIF として 自らのスチュワードシップ責任を果たします GPIF は スチュワードシップ責任を果たす様々な活動を通じて 被保険者のために中長期的な投資リターンの拡大を図り 年金制度の運営の安定に貢献するとの使命の達成に努めます その際には ESG( 環境 社会 ガバナンス ) についても考慮します それにより期待されるリスク低減効果については 投資期間が長期であればあるほど リスク調整後のリターンを改善する効果が期待されます 7

以上の投資原則を実行するため GPIF は その組織を更に整備し 国民の皆様の負託に全力でお応えしてまいります 投資原則に基づき投資方針を策定したとしても それを実践する組織にそ の能力がなければ 単なる絵に描いた餅になってしまいます GPIFは 組織として 高い専門性を発揮し 使命を果たしていくことが重要であると考えています このため 十分な人材を確保した上で 各人が自己研鑽に励み 組織の一体感を保ちつつ 一人ひとりの個性と能力が発揮されるよう努めます 8