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1 概 況

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平成22年7月30日

平成19年6月 

平成 22 年度エネルギー消費統計結果概要 経済産業省資源エネルギー庁平成 24 年 4 月 エネルギー種別に見ると 最終エネルギー消費総量の 37.5% が燃料 54.8% が電力 7.4% が熱となっています 調査の対象となった非製造業 製造業 ( 石油等消費動態統計対象事業所を除く ) 業務部

平成22年7月30日

3 地域別の業種リストを確認 対象業種の判断は 日本標準産業分類のに基づいて行われます 経営力向上計画の 2 事業分野と事業分野別指針 欄の 事業分野 ( ) が 次ページ以降の7 都府県別の業種リストにおける対象業種 ( ) に該当するかどうかを確認して下さい 経営力向上計画の 事業分野 ( )

平成 21 年経済センサス 基礎調査確報集計結果 (2) 産業分類別 - 従業者数 ( 単位 : 人 %) 北海道 全国 従業者数従業者数 (*2 (*2 A~S 全産業 A~R 全産業 (S 公務を除く )

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29 歳以下 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6~69 歳 7 歳以上 2 万円未満 2 万円以 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 28 年度 29 年度 21 年度 211 年度 212 年度 213 年度 214 年度 215 年度 216 年度

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2 / 6 不安が生じたため 景気は腰折れをしてしまった 確かに 97 年度は消費増税以外の負担増もあったため 消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない しかし 前回 2014 年の消費税率 3% の引き上げは それだけで8 兆円以上の負担増になり 家計にも相当大きな負担がのしかかった

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握の問題 執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討する 複数税率の導入について 財源の問題 対象範囲の限定 中小事業者の事務負担等を含め様々な角度から総合的に検討する 施策の実現までの間の暫定的及び臨時的な措置として 簡素な給付措置を実施する つまり 低所得者対策として 給付付き税額

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(1) 駆け込み需要とその反動 前回増税時の駆け込み需要は 12 兆円程度 14 年 4 月に消費税率が 5% から 8% に上昇した際に 駆け込み需要とその反動はどの程度発生したのか 財 サービス分類別にその規模を試算する 図表 1 耐久財を中心に増税前後の消費に大きな波前回増税時の駆け込み需要と

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本稿の分析目的 本稿では 平成 6 4 月に実施された消費増税による産業活動への影響について 前回の消費増税時 ( 平成 9 ) あるいはリーマンショック時にみられた産業活動への影響と比較しながら考察する 特に 前回増税時との比較においては 増税の前平均からの変動を比較することで 6 4 月に実施さ

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概要 アニメ映画 ルドルフとイッパイアッテナ 君の名は 聲の形 に関する岐阜県への聖地巡礼者は約 103 万人 岐阜県での消費額は 230 億円 当該消費が岐阜県経済に与える経済波及効果は 直接効果で約 163 億円 総合効果はその 1.55 倍の 253 億円 図表 2 聖地巡礼による経済波及効果

平成10年7月8日

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78 成蹊大学経済学部論集第 44 巻第 1 号 (2013 年 7 月 ) % % 40%

2019 年 3 月 13 日 ( 水 ) HRI 株式会社百五総合研究所 < 調査結果報告 > 新名神開通による三重県内への観光消費がもたらす経済波及効果は年間約 480 億円 株式会社百五総合研究所では 3 月 17 日に新名神高速道路の 新四日市 JCT- 亀山西 JCT ( 以下 新名神 )

本資料は 様々な世帯類型ごとに公的サービスによる受益と一定の負担の関係について その傾向を概括的に見るために 試行的に簡易に計算した結果である 例えば 下記の通り 負担 に含まれていない税等もある こうしたことから ここでの計算結果から得られる ネット受益 ( 受益 - 負担 ) の数値については

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211 年 2 月 25 日発行 TVI( タス空室インデックス )( 過去 2 年推移 ) ポイント 全域 23 区市部神奈川県埼玉県千葉県 年月 東京都全域 23 区市部 神奈川県 埼玉県 千葉県 29 年 1 月

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2. 改正の趣旨 背景税制面では 配偶者のパート収入が103 万円を超えても世帯の手取りが逆転しないよう控除額を段階的に減少させる 配偶者特別控除 の導入により 103 万円の壁 は解消されている 他方 企業の配偶者手当の支給基準の援用や心理的な壁として 103 万円の壁 が作用し パート収入を10

新規文書1

Transcription:

消費税増税による家計および企業への負担等について 消費税増税にあたっての経済動向は 前出のレポートでみたところだが ここでは 消費税が家計や企業に与える影響について 別の角度から考察する 家計消費については 世帯が負担する消費税の額や割合が 増税によって収入区分別にどう変化するのかを推計する 企業においては 産業連関表を使って 民間消費支出の減少が生産や雇用にどのような影響を与えるのかを試算する また 最近行われたアンケート調査から 消費税増税が企業に及ぼすマインドの変化を探る < ポイント > 1 消費税 10% のとき税負担額は平均的な世帯で約 37 万円消費税の負担額は収入が多い世帯ほど大きくなるが 逆に 収入に占める消費税の負担割合は収入が少ない世帯ほど大きくなる傾向がみられる 平均が含まれる収入 600~700 万円の世帯における消費税 10% 負担額は年間およそ 37 万円と推計された 2 低所得の世帯ほど増税の負担は大きい消費税には収入が少ないほど負担率が高くなる 逆進性 がある 平均と低所得の世帯を比べると 10% のとき収入に占める消費税の負担率はおよそ3 倍と試算される 今回の増税における低所得者への対応が注目される 3 試算では民間消費支出が5% 減少すると GDP はおよそ2% 縮小産業連関表を用いて試算すると 消費税の増税によって 本県の民間消費支出が5% 減少したと仮定した場合 県内需要の減少とそれによる波及効果の減少により 産出額全体の 1.77% が減少 付加価値ベースではGDP の2.03% に相当すると推計される 4 生産減少の影響を受けやすいのは商業などのサービス部門さらに 消費税の増税によって消費が5% 減少したと仮定した場合に 部門別で影響が及ぶのは 住宅賃貸料 ( 帰属家賃 ) 商業 などであった 特に商業では 生産だけでなく雇用者数にも影響が及ぶことが懸念される 5 企業へのアンケートでは増税が業績に 悪影響 が約 7 割 消費税率引き上げによる業績への影響 については 69.8% が かなり悪影響 悪影響 と回答 また 消費税率の引き上げに際して28.1% が 設備投資の前倒しを実施 する一方で 設備投資を中止する と回答した企業が 7.4% あった - 1 -

1 家計における消費税増税の負担 平成 21 年に実施された 全国消費実態調査 ( 総務省 ) 調査結果の新潟県分を用いて 本県の世帯が負担する消費税の金額を試算する 2 人以上の世帯の年間収入別の消費税負担を 消費税 5% では 年間の消費支出 5/105 10% の場合は 年間の消費支出 10/110 として計算した ( 図 1-1) ( 平均的な世帯における消費税 10% 負担額は年間およそ37 万円 ) 全体として 消費税の負担額 ( 棒グラフ ) は 右上がりで収入が多い世帯ほど大きくなるが 逆に 収入に占める消費税の負担割合 ( 折れ線グラフ ) は 右下がりで収入が少ない世帯ほど大きくなる傾向がみられる このうち 平均的な世帯として 収入の平均が含まれる600~700 万円の世帯を見ると 消費支出が年間 408 万 8 千円で 5% のとき消費税を 19 万 5 千円支払ったと試算される これはこの層の平均年間収入 649 万 6 千円の 3.0% に相当する金額であったが 消費税が 10% に引き上げられた時 消費水準が変わらないと仮定すれば 負担額は37 万 2 千円となり 収入の5.7% が消費税として徴収される この時 増税によって負担額は17 万 7 千円増加している また 収入が 200 万円未満の世帯の場合 消費支出が年間 232 万 9 千円であり 5% のとき消費税が 11 万 1 千円 この層の平均年間収入 133 万 7 千円の 8.3% 相当だったのが 10% では負担額 21 万 2 千円 収入の15.8% が消費税負担となり 10 万 1 千円の負担増となる この2つを比較すると 200 万円未満の世帯では 仕事をリタイアした高齢者が多いと推測されるため 収入の他に貯蓄なども合わせて収入以上の消費をしているとみられる 消費税増税による負担額の増加分は 600~700 万円の世帯に比べて7 万 6 千円少ないが 収入に占める割合は3 倍近いことから 負担感は大きくなっている ( 表 1-1) - 2 -

表 1-1 平均的な世帯と低所得世帯との比較 年収 600~700 万円の世帯年収 200 万円未満の世帯差 年間収入 649.6 万円 133.7 万円 515.9 万円 年間消費支出 408.8 万円 232.9 万円 175.9 万円 5% 消費税負担額 19.5 万円 11.1 万円 8.4 万円 10% 消費税負担額 37.2 万円 21.2 万円 16.0 万円 消費税負担増額 17.7 万円 10.1 万円 7.6 万円 5% 消費税年収比 3.0% 8.3% 5.3% 10% 消費税年収比 5.7% 15.8% 10.1% 消費税年収比の差 2.7%P 7.5%P 4.8%P 注 : 消費税負担増額 =10% 消費税負担額 -5% 消費税負担額 消費税年収比の差 =10% 消費税年収比 -5% 消費税年収比資料 : 総務省 平成 21 年全国消費実態調査 ( 低所得の世帯ほど増税の負担は大きい ) このように 収入が少ない人ほど負担率が高くなることは 逆進性 と呼ばれる 収入の少ない人ほど負担率が低く 収入が多い人ほど負担率が高くなる 累進性 である直接税などとは対照的である この逆進性を緩和するために 過去においては 平成元年および9 年の増税のとき 増税の実施と同時に 臨時福祉給付金 として 収入の少ない高齢者などの低所得者に1 万円を給付する措置が取られている 今回の増税に際しても 低所得者への対応がどのような形で取られるかが注目される 収入が少ない人ほど負担感が大きくなるのは 生活する上での食料品や日用品などの消費額は一定の割合で必要となる中で 消費税は収入の多い少ないにかかわらず消費全般に対して一律に課税されることが要因の1つと考えられている 諸外国では この逆進性を緩和するために 食料品などの生活必需品の消費税率を軽減する措置が取られている国がある ( 図 1-2) - 3 -

2 企業における消費税増税の負担 ( 試算では民間消費支出が5% 減少すると GDPはおよそ2% 縮小 ) 消費税の増税によって 本県の民間消費支出額が5% 減少したと仮定した場合に 県内経済が受ける影響を 平成 17 年新潟県産業連関表を用いて試算した 平成 22 年度の産出額 15 兆 2,238 億円のうち 民間最終消費支出額 5 兆 2,504 億円の5% に相当する 2,625 億円分の消費が減少すると 県内産業に対する需要が 1,857 億円減少し 県内生産が 2,695 億円減少すると推計された これは産出額全体の 1.77 % にあたり 特にサービス部門の752 億円 不動産部門の734 億円などで減少額が大きくなっている また 2,695 億円のうち付加価値額 ( 家計外消費支出除く ) は 1,749 億円であり 22 年度の県内総生産 (GDP)8 兆 6,068 億円に占める割合は 2.03% となる 加えて 生産が減少すれば雇用も減少することになるが 各部門の県内生産額に応じた雇用者数の割合である 雇用係数 を県内生産減少額に乗じることで雇用減少数を求めると サービス部門で7,797 人 商業部門で 4,315 人に相当する雇用者が減少し 全体で16,336 人分になると推計される ( 表 2-1) 表 2-1 民間消費支出が5% 減少した時の県内生産への影響 ( 単位 : 百万円 人 ) 部門名 民間消費支出民間消費支出県内産業に対する県内生産減少額波及効果 (22 年度 ) 減少額 ( 5%) 需要減少額付加価値減少額 減少雇用数 農林水産業 1,547 992 2,539 1,437 100 鉱業 2 427 426 207 11 製造業 12,233 7,334 19,567 6,539 844 建設 0 5,286 5,286 2,394 420 電力 ガス 熱供給 水道 7,598 5,670 13,268 7,350 194 商業 24,574 7,374 31,948 21,076 4,315 金融 保険 10,764 9,898 20,662 12,669 913 不動産 62,370 10,980 73,350 63,986 198 運輸 7,377 6,090 13,467 5,798 929 情報通信 5,988 5,561 11,549 6,831 558 公務 808 477 1,285 1,053 55 サービス 52,408 22,825 75,234 45,719 7,797 分類不明 44 906 949 169 2 計 5,250,358 262,518 185,709 83,820 269,530 174,889 16,336 注 : 県内生産減少額には生産誘発による所得の増加が消費に転化する 2 次波及効果を含む資料 : 県統計課 平成 17 年新潟県産業連関表 (13 部門 ) - 4 -

( 商業 ( 卸売 小売 ) を中心にサービス業への影響が懸念される ) 次に 産業部門を細かく分けた産業連関表を用いて 先ほどと同様に消費税の増税によって消費が5% 減少したと仮定した場合に 生産の減少額 減少率および雇用の減少数の3つについて どの部門への影響が大きいのかを試算した 生産の減少額および減少率が最も大きくなったのは 住宅賃貸料 ( 帰属家賃 ) であった 帰属家賃 とは 持家の所有者が所有者自身に家賃を払っていると想定した場合の家賃の額のことであるため 実際に試算どおりに支出が減るわけではないが 住宅は生活する上で最も欠かせないものの1つであり 消費全体でのウエイトが大きいことを示している また 生産の減少額で2 番目 雇用の減少数において最上位となったのが 商業 であった 消費者が財やサービスを購入するには 卸売および小売という流通段階が生じるため 影響も必然的に広範囲になるとみられる 特に雇用の減少数の推計ではその数が突出しており 卸売業 小売業の雇用者への影響が懸念される この他には 金融 保険 飲食店 などが上位に入っており サービス の名前が付く部門が比較的上位にみられることから 生活に関連したサービス業において売上や雇用の面での影響が生じることが予想される ( 表 2-2) 表 2-2 民間消費支出が 5% 減少した時の各部門への影響 順位 生産減少額 ( 百万円 ) 生産額減少率 (%) 雇用減少数 ( 人 ) 部門 金額 部門名 減少率 部門名 減少数 1 住宅賃貸料 ( 帰属家賃 ) 65,247 住宅賃貸料 ( 帰属家賃 ) 6.0 商業 4,288 2 商業 31,748 住宅賃貸料 6.0 飲食店 1,724 3 金融 保険 20,070 その他の対個人サービス 5.0 金融 保険 887 4 飲食店 10,220 その他の公共サービス 4.8 社会保障 879 5 通信 9,206 洗濯 理容 美容 浴場業 4.7 その他の対事業所サービス 868 6 娯楽サービス 7,216 水道 4.4 その他の対個人サービス 842 7 住宅賃貸料 6,792 娯楽サービス 4.0 洗濯 理容 美容 浴場業 703 8 電力 6,758 ガス 熱供給 3.9 道路輸送 ( 除自家輸送 ) 695 9 その他の対個人サービス 6,366 通信 3.8 その他の公共サービス 602 10 医療 保健 6,267 社会保障 3.8 教育 560 11 その他の対事業所サービス 6,013 放送 3.7 医療 保健 521 12 社会保障 5,924 金融 保険 3.5 娯楽サービス 459 13 その他の公共サービス 5,557 鉄道輸送 3.5 建設補修 432 14 洗濯 理容 美容 浴場業 5,436 飲食店 3.4 通信 330 15 教育 5,404 映像 文字情報制作 2.9 自動車 機械修理 296 16 建設補修 5,401 建設補修 2.7 その他の食料品 284 17 道路輸送 ( 除自家輸送 ) 4,986 インターネット附随サービス 2.5 宿泊業 217 18 自動車 機械修理 4,785 運輸付帯サービス 2.3 介護 161 19 その他の食料品 4,376 自動車 機械修理 2.2 鉄道輸送 152 20 水道 3,177 商業 2.2 情報サービス 116 資料 : 県統計課 平成 17 年新潟県産業連関表 (104 部門 ) - 5 -

3 消費税増税に関するアンケート調査 ( 企業へのアンケートでは増税が業績に 悪影響 という回答が約 7 割 ) 企業の意識については 帝国データバンク新潟支店が平成 24 年 7 月に実施した 消費税率引き上げに対する企業の意識調査 を参照する 調査対象は新潟県内の 486 社で 有効回答企業数は242 社 ( 回答率 49.8%) であった まず 消費税率引き上げによる業績への影響 については かなり悪影響 と回答したのが13.2% 悪影響 と回答した56.6% と合わせて69.8% が悪影響を懸念している 一方で 影響はない とした企業もあったものの その割合は11.2% と小さく 好影響 かなり好影響 と回答した企業はわずかであった ( 図 3-1) また 消費税率の引き上げに際して 自社の事務所や工場などの大規模な設備投資を前倒しして実施するかどうかについて 28.1% が 設備投資の前倒しを実施 するという回答であった一方で 設備投資を中止する と回答した企業が7.4% あった 他方 事務機器や備品などの小規模な設備投資は 前倒しして実施すると考えている企業が35.5% となり 大規模投資と比較して前倒しの回答が多くなった ( 図 3-2) この他にも 消費税率引き上げ後の国内消費動向については 9 割近くの企業が 縮小する と認識しており 消費マインドの悪化を懸念する声が多く挙がった また 今回予定されている二段階での税率引き上げについて 一段階の引き上げと比べて業績に与える影響度合いが 強まる と考える企業が4 社に1 社程度あり 初めての二段階引き上げが企業業績に影響を及ぼす可能性があることが示された - 6 -

4 5% 導入時の新潟県の経済状況最後に 消費税が3% から5% に増税された平成 9 年 4 月前後における新潟県の経済状況について 実質経済成長率と景気動向指数で確認する ( 実質経済成長率は増税後に一進一退 ) 消費税 5% への増税が導入される直前の平成 8 年度では 3.8% という高い成長率だったが 9 年度には 2.0% のマイナス成長に転じており その後も一進一退の状況が続いていた ( 景気動向指数 (CI 一致指数 ) が下げ止まったのは増税から1 年半後 ) 5% 導入時前後では 増税が実施される前の平成 8 年第 Ⅳ 四半期が 88.9と最も高い値を取っており 増税から6 四半期が経過した1 年半後 10 年第 Ⅳ 四半期に 58.7 と最も低い値を取っている 前回の増税では 下げ止まったタイミングが増税から1 年半後だったことになるが 今回の増税においては 初回の増税からちょうど1 年半後に2 回目の増税が予定されていることから 2 段階の増税が景気回復に与える影響が懸念される 5 おわりに消費税の増税は 家計にとっては消費税負担額の増加 企業にとっては消費の減少による生産 雇用 および設備投資の減少などが懸念されるので 増税の実施によって実際にどの程度の影響が及ぶのかが注目される - 7 -