個人消費活性化に対する九州企業の意識調査

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1 2017/2/10 福岡支店住所 : 福岡市中央区舞鶴 電話 : ( 情報部 ) URL: 現状の個人消費 企業の約 4 割が 悪い と認識 ~ 消費の回復時期 早期回復を見込む企業は 1 割未満 ~ はじめに 2016 年 11 月実施の TDB 景気動向調査の特別企画 2017 年の景気見通しに対する企業の意識調査 において 景気回復に必要な政策として 個人消費拡大策 が 5 年連続でトップとなった 国内総生産 (GDP) の約 6 割を占める個人消費の拡大は 本格的な景気回復に欠かせない要素となっている そこで 帝国データバンクは 個人消費活性化に対する企業の見解について調査を実施した 本調査は TDB 景気動向調査 2016 年 12 月調査とともに行った 調査期間は 2017 年 1 月 18 日 ~1 月 31 日 調査対象は九州 沖縄地区の 1,973 社で 有効回答企業数は 731 社 ( 回答率 37.1%) 調査結果 ( 要旨 ) 1. 現在の個人消費動向 悪い と回答した企業は 42.6% となり 4 割を超えた ( 悪い は 非常に悪い 悪い やや悪い の合計 ) 他方 良い は 12.6% にとどまる ただし全国での結果と比較すると 悪い の割合が 9.3 ポイント低い一方で 良い の割合が 3.9 ポイント高く 個人消費動向をプラスにとらえている企業の割合が高い 2. 過去に実施された消費活性化策で効果のあった政策は エコカー減税 補助金 (39.8%) が最高 2 位は 所得税減税 (39.6%) 3 位は 住宅ローン減税 (30.7%) となり 減税にともなう消費者の負担軽減策が上位に さらに プレミアム付商品券 エコポイント制度 と付加サービスが得られる政策が続いた 3. 個人消費活性化には 賃金の増加 (75.2%) が突出 以下 個人所得税の減税 が 4 割台 将来不安の払拭( 年金など ) 企業業績の改善 が 3 割台で続く 4. 個人消費の回復時期 長期的に回復する見込みはない が 23.4% 2 年後 (12.7%) 3 年後以降 (12.7%) と 4 社に 1 社は回復時期を 2 年以上先と見込む 1 年以内は 1 割未満 TEIKOKU DATABANK, LTD. 1

2 1. 個人消費 企業の約 4 割が 悪い とみる 現在の個人消費動向についてどのように感じているか尋ねたところ 悪い と回答した企業が 42.6% となり 4 割を超えた ( 悪い は 非常に悪い 悪い やや悪い の合計) 他方 良い ( 非常に良い 良い やや良い の合計) は 12.6% だったほか どちらともいえない は 40.1% で 悪い とほぼ拮抗する結果となった 他方 非常に良い と回答した企業は 0.0% (0 社 ) 良い も 1.4% にとどまり 個人消費動向について企業は非常に厳しくみている様子がうかがえる ただし全国での結果と比較すると 悪い の割合が 9.3 ポイント低い一方で 良い の割合が 3.9 ポイント高く 個人消費動向をプラスにとらえている企業の割合が高いという結果となった 業界別に 悪い の割合をみると 農 林 水産 が 70.0% で最も高く 不動産 (52.4%) 小売 (52.3%) が続いた 消費者と直接接する小売業の危機感の高さが際立つ結果となった 消費動向が 悪い とみている企業からは 年金問題など将来的な不安から個人の消費意欲は低調に推移 今後も改善が見通せない ( 飲食料品卸売業 福岡県 ) や 衣食住は十分に足りていることと将来への不安から消費が活性化していないのでは ( 娯楽サービス 福岡県 ) など 将来への不安が消費意欲を削いでいると指摘する意見が見られた また 中小企業では 給料の大幅な引上げが無理で実質収入の増加が見込めないため消費の増加が予想しにくい ( 建設 大分県 ) や 賃金の上昇が低いうえ 将来の為の貯蓄にまわっており 全体的に節約志向 ( 専門商現在の個人消費の動向品小売 福岡県 ) といった 賃金の伸び悩みが購買意欲の低下につながっているという声分からないも多くみられた 4.8% 良い とみている企業からは 観光需要 良い 12.6% は旺盛で 個人消費には明るさが見受けられる ( 自動車 同部品小売業 沖縄県 ) ネットでの消費拡大 観光を含むサービス業の景気 悪い 42.6% どちらともの良さは個人消費によるものである ( 広告関いえない 40.1% 連業 大分県 ) など 観光需要が個人消費を支えているとの指摘も見られた また 震災特需から消費は良い ( 不動産 熊本県 ) や 地震にともなう仕事が増えている ( 建設 熊本注 1: 良い は 非常に良い 良い やや良い の合計 県 ) など 熊本地震の復興需要が個人消費に結 悪い は 非常に悪い 悪い やや悪い の合計注 2: 母数は有効回答企業 709 社びついているとみるコメントが熊本県では散見される TEIKOKU DATABANK, LTD. 2

3 ( 農 林 水産 現在の個人消費の動向 悪い 割合 ~ 業界別 サービス運輸 倉庫建設卸売製造小売不動産 20.0 金融 2. エコカー減税など減税に伴う消費者の負担軽減策が高評価を得る これまでに実施された消費活性化策のうち どのような政策で効果があったと思うか尋ねたと ころ エコカー減税 補助金 が 39.8% で最高となった ( 複数回答 以下同 ) ほか 所得税減 税 が 39% 台で続いた 次いで 住宅 ローン減税 が 3 割超となるなど 減税にともなう消費者の負担軽減策が上 過去の消費活性化策で効果があったと思う政策 ( 複数回答 ) 位にあがった さらに プレミアム付商品券 地域振興券 など 消費を行うことで付加サービスが得られる政策が続いた 企業の意見からは 将来の不安の緩和策 ( 特に社会保障 ) 貯蓄に回ってい エコカー減税 補助金所得税減税住宅ローン減税プレミアム付商品券地域振興券 (%) る収入は 老後の不安 将来に対する 6 エコポイント制度 20.5 ( 住宅エコポイントや家電エコポイント ) 安定が見えてくれば消費に回ると考え世代間の所得移転制度 る ( 化学品卸売 宮崎県 ) など 将来 ( 住宅や教育資金への贈与税非課税制度な への不安を解消する政策を求める声が複数見られた また 消費税を上げる 8 9 配当 譲渡所得課税の税率軽減子育て世帯臨時特例給付金 のでなく 減税を大幅にしてお金を流通させることが大事 ( 建設 福岡県 ) といった減税が先決だとする意見もみられた 10 定額給付金 11 環境関連の優遇策 ( 補助金など ) 12 臨時福祉給付金その他 効果のあった政策はない 14.1 注 : 母数は有効回答企業 709 社 TEIKOKU DATABANK, LTD. 3

4 3. 個人消費活性化に必要な条件 4 社に 3 社が 賃金の増加 をあげる 個人消費が活性化するために必要な条件はどのようなことだと思うか尋ねたところ 賃金の増加 が 75.2% で突出して高かった 以下 個人所得税の減税 が 4 割台で続き 将来不安の払拭 ( 年金など ) 企業業績の改善 が 3 割台となった また 消費税率の引き下げ も 22.1% となり 5 社に 1 社が個人消費活性化には消費税率引き下げも必要だと考えていることが分かった 企業からは 政府による給与引き上げ政策の継続的な取り組みにより より安心して消費できる環境が整ってくる ( 自動車小売 沖縄県 ) といった意見があがった 個人消費活性化に必要な条件 ( 上位 10 項目 複数回答 5 つまで ) (%) 1 賃金の増加 個人所得税の減税 将来不安の払拭 ( 年金など ) 企業業績の改善 若者 子育て世帯への支援拡充 消費税率の引き下げ 株価の上昇 就業者数の増加 人手不足の緩和 デフレ脱却 14.7 注 : 母数は有効回答企業 709 社 4. 消費の回復時期 早期回復を見込む企業は 1 割未満 4 割は 分からない と回答 今後 個人消費が本格的に回復する時期について尋ねたところ 長期的に回復する見込みはない が 23.4% と 個人消費の動向に悲観的な企業が 4 分の1に達した また 3 年後以降 (12.7%) と 2 年後 (12.7%) を合わせると 25.4% となり 4 社に 1 社は 2 年以上先になると見込んでいる さらに すでに回復している (3.2%) や 1 年後 (7.2%) など 短期での回復を見込む企業は 1 割に満たない しかし 分からない も 40.8% と最も多く 企業にとっても個人消費の先行きを想定することが困難であるという実態も見えてきた 分からない 40.8% 消費の回復時期 すでに回復している 3.2% 長期的に回復する見込みはない 23.4% 1 年後 7.2% 2 年後 12.7% 3 年後以降 12.7% 注 2: 母数は有効回答企業 709 社 TEIKOKU DATABANK, LTD. 4

5 まとめ 今後の国内景気は個人消費の動向がカギを握る 家計は先行き不安により支出を抑えようとする誘因が働く一方 消費が弱いままとなれば 年金や保険制度など他の政策にも影響を及ぼす可能性が高い こうしたなか 現在の個人消費について 企業の 4 割が 悪い と捉えている一方 良い は 1 割にすぎず 非常に厳しい見方をとっていることが浮き彫りとなった 他方 過去の消費活性化策では エコカー減税 補助金 や 所得税減税 住宅ローン減税 で効果が高かったと捉えている 直接的に消費を刺激する政策を評価する一方で 寄せられたコメントからは中長期的に生活が豊かになる政策も重視している様子もうかがえた 個人消費が活性化するために必要な条件では 賃金の増加 が突出しており 消費者の所得増加が最大の活性化策となる可能性が示唆される ただし 若年層を中心に財布のヒモが緩くなるためには 年金など将来不安が払拭されなければならない 早期に消費が回復すると見込む企業は少なく 依然として慎重な見方が根強く残っている一方で 4 割の企業が 分からない としており 個人消費の先行きが見通しがたい実態も明らかになった 個人消費活性化のためには 個々の企業や消費者だけでなく 政府による役割も大きく 消費活性化に向けた取り組みは日本社会全体で進めることが肝要であろう 内容に関する問い合わせ先 株式会社帝国データバンク福岡支店情報部担当 : 昌木裕司 TEL FAX 当レポートの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します 当レポートはプレスリリース用資料として作成しております 報道目的以外の利用につきましては 著作権法の範囲内でご利用いただき 私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます TEIKOKU DATABANK, LTD. 5