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附則この要領は 平成 4 年 1 月 16 日より施行する この要領は 平成 12 年 4 月 3 日より施行する この要領は 平成 30 年 4 月 1 日より施行する 2

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資料 2 農業データ連携基盤の構築について 農業データ連携基盤 (WAGRI) WAGRI とは 農業データプラットフォームが 様々なデータやサービスを連環させる 輪 となり 様々なコミュニティのさらなる調和を促す 和 となることで 農業分野にイノベーションを引き起こすことへの期待から生まれた造語

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蛋白質含量 (%) タンパク含量 グルテン物性と加工用途 高い 中華用 パン用北米産 ブレンド用ゆめちから うどん用オーストラリア産国内産小麦菓子用北米産 強い 薄力 中力 強力 超強力 グルテンの強さ ( 池田 2011 を改変 ) 小麦粉の加工用途に

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5 議事録 (1) 申請内容の説明ア水稲うるちもみ及び玄米 姫ごのみ の新規設定について ( 申請書等に基づき 及び酒見 ( 俊 ) が説明 ) イ水稲うるちもみ及び玄米 ちくし90 号 の新規設定について ( 申請書等に基づき 舛添及び大津が説明 ) ウ普通大粒大麦 はるか二条 の新規設定について

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1 課題 目標 山陽小野田市のうち 山陽地区においては 5 つの集落営農法人が設立されている 小麦については新たに栽培開始する法人と作付面積を拡大させる法人があり これらの経営体質強化や収量向上等のため 既存資源の活用のシステム化を図る 山陽地区 水稲 大豆 小麦 野菜 農業生産法人 A 新規 農業

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国産粗飼料増産対策事業実施要綱 16 生畜第 4388 号平成 17 年 4 月 1 日農林水産事務次官依命通知 改正 平成 18 年 4 月 5 日 17 生畜第 3156 号 改正 平成 20 年 4 月 1 日 19 生畜第 2447 号 改正 平成 21 年 4 月 1 日 20 生畜第 1

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平成 21 年度農政課題解決研修 多収穫米品種の生産 利用技術 平成 21 年 7 月 7 日 ~9 日 独立行政法人農業 食品産業技術総合研究機構 作物研究所

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めに必要な情報を提供するとともに 2 関係者一体となった契約栽培等の需要と直結した生産を推進していく また 生産者の収益性向上につながる地域の気候風土を活かした特色ある野菜等園芸作物への作付を促進し 産地づくりを進めていくため 生産者への作付誘導のインセンティブとなる産地交付金を戦略的に活用していく

取組の詳細 作期の異なる品種導入による作期分散 記載例 品種名や収穫時期等について 26 年度に比べ作期が分散することが確認できるよう記載 主食用米について 新たに導入する品種 継続使用する品種全てを記載 26 年度と 27 年度の品種ごとの作付面積を記載し 下に合計作付面積を記載 ( 行が足りない

岡山県農業研報 8:13-17(2017) 13 稲作経営の規模拡大過程とその対応 岡山県の事例から 河田員宏 Scale Expansion Process of Rice Farm Management and Its Response :A Case Study in Okayama Pref

2 作物ごとの取組方針 (1) 主食用米本県産米は 県産 ヒノヒカリ が 平成 22 年から平成 27 年まで 米の食味ランキングで6 年連続特 Aの評価を獲得するなど 高品質米をアピールするブランド化を図りながら 生産数量目標に沿った作付けの推進を図る また 平成 30 年からの米政策改革の着実な

出席者名簿 委員及び幹事役職 氏名 所属及び職名 会長 齋藤満保 宮城大学食産業学部教授 委員 菅原悟 全国農業協同組合連合会宮城県本部米穀部長 委員 井城克廣 公益社団法人みやぎ農業振興公社常務理事 委員 高澤まき子 仙台白百合女子大学人間学部健康栄養学科准教授 委員 川口尚 東北農政局生産部長

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図、表、写真等

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( 2 ) 平成 24 年 4 月 1 日茨城県穀物改良第 243 号 2. 早生で大粒 良質な水稲新品種 ひたち 34 号 の特性と栽培のポイント 本県の水稲品種は コシヒカリ を主とする中生品種の作付けが大半を占めており 収穫作業等の集中が問題となっています このため 作業分散を図る上で コシヒ

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目 次 はじめに 1 Ⅰ. 麦を巡る情勢 1 1. 種類と用途 1 2. 作付面積と地域性 2 3. 麦作制度 政策の改正 2 II. 売れる麦に向けた技術開発 3 1. 小麦 実需と産地のニーズに応える新品種 4 日本めん用 4 (1) 見ておいしく 食べてうまい加工適性 4 (2) 日本めん用新

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資料報告

サイレージ用トウモロコシ一代雑種親自殖系統「Na65」の育成とその特性

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日本の先端農業IoT技術が海外進出、コロンビアの国際研究機関で「e-kakashi」の実証実験を開始

米消費量小麦消費量食料自給率 一人あたり年間消費量 ( キログラム ) カロリーベース食料自給率 ( % ) ( 昭和 40) 1975 ( 昭和 50) 1985 ( 昭和 60)

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研究報告 第68号掲載課題

排水対策の実施例 暗渠がある場合排水がよいほ場 排水が悪いほ場 周囲明渠 弾丸暗渠 心土破砕は 2 ~5m おきに行う 周囲明渠は深さ 30 cmを確保する 周囲明渠は排水口に確実に接続する 弾丸暗渠本暗渠 暗渠がない場合排水がよいほ場 排水がよく 長辺が長いほ場 100m 以 ほ場内排水溝は4 ~

10 ( 参考 ) 望まれる麦の品質 (1) 麦の種類と利用方法 麦種種類加工タンパク質含有量用途 強力小麦強力粉 12% 以上食パン 菓子パン 小麦 デュラム小麦 ( マカロニ小麦 ) セモリナ マカロニスパゲッティ 準強力小麦準強力粉 11~12% 中華めん 普通小麦 薄力小麦 中力粉 10~1

北病防第 平成 23 年 142 号 2 月 18 日 関係総合振興局産業振興部長 関係振興局産業振興部長 様 様 技術普及課長 病害虫防除所長 水稲いもち病防除の徹底について 水稲の重要病害であるいもち病は 平成 20 年以降 3 年連続して多発生し 平成 22 年の 葉いもち と 穂いもち の発


1 はじめに北海道の麦作には 二つの大きな目標があった 一つは 秋まき小麦の全道平均反収を一〇俵の大台に乗せること もう一つは E U 並みの反収一トンどりをめざすことである この数字は 決して夢のような話ではなかった 麦作農家のなかには 圃場の一部ではあるが一トンどりを実現したとの声があったし 実

仙台稲作情報令和元年 7 月 22 日 管内でいもち病の発生が確認されています低温 日照不足によりいもち病の発生が懸念されます 水面施用剤による予防と病斑発見時の茎葉散布による防除を行いましょう 1. 気象概況 仙台稲作情報 2019( 第 5 号 ) 宮城県仙台農業改良普及センター TEL:022

石川県水田フル活用ビジョン 1 地域の作物作付の現状 地域が抱える課題 水稲作付面積については 昭和 60 年の 37,700ha から 平成 25 年では 26,900ha と作付 面積で約 10,000ha 作付率で約 30% と大きく減少したものの 本県の耕地面積に占める水稲作 付面積の割合は

圃場試験場所 : 県農業研究センター 作物残留試験 ( C-N ) 圃場試験明細書 1/6 圃場試験明細書 1. 分析対象物質 およびその代謝物 2. 被験物質 (1) 名称 液剤 (2) 有効成分名および含有率 :10% (3) ロット番号 ABC 試験作物名オクラ品種名アーリーファ

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プレスリリース 平成 28 年 10 月 26 日農研機構 西日本向けの高アミロース水稲新品種 ふくのこ を育成 米粉麺の製造 販売など 6 次産業化への貢献が期待 - ポイント 西日本での栽培に適した高アミロースの水稲新品種 ふくのこ を育成しました アミロース 1) 含有率は 27% 前後で 米粉麺への加工に適します 従来の西日本向けの高アミロース品種 ホシユタカ の欠点を改良し 栽培や選別 精米が容易になりました さらに ホシユタカ より 3 割程度多収です 収穫時期は 西日本の主力品種である ヒノヒカリ とほぼ同じです 西日本でも高アミロース米の生産から米粉麺の製造 販売までが可能となり 6 次産業化のさらなる発展への貢献が期待されます 概要 1. 農研機構西日本農業研究センターは 西日本向けの高アミロース水稲新品種 ふくのこ を育成しました 2. アミロース含有率は 27% 前後で 米粉麺への加工に適します 3.1987 年に育成された西日本向けの高アミロース品種 ホシユタカ は 玄米の粒形が細長く また脱粒性もあることから 栽培や選別 精米などが難しいという欠点がありましたが ふくのこ の粒形は ヒノヒカリ と同等で 選別や精米には従来の施設 機械等が利用できます また 脱粒性も改良され 収量も ホシユタカ と比べて 3 割ほど多収になりました 4. 収穫時期は ヒノヒカリ とほぼ同じで 西日本など ヒノヒカリ の作付地帯で栽培可能です 5. これまで 栽培しやすい西日本向けの高アミロース品種がありませんでしたが ふくのこ の育成により 西日本でも 米粉麺などの高アミロース米を使った 6 次産業化が可能になります 予算 : 農林水産省委託プロジェクト 米粉に適した品種及び低コスト粉砕技術の開発 運営費交付金品種登録出願番号 : 第 30997 号 ( 平成 28 年 3 月 31 日出願 9 月 9 日出願公表 ) 問い合わせ先研究推進責任者 : 農研機構西日本農業研究センター所長竹中重仁研究担当者 : 同水田作研究領域水稲育種グループ主任研究員重宗明子広報担当者 : 同企画部産学連携室広報チーム長平野知子 TEL 084-923-5385 FAX 084-923-5215 プレス用 e-mail:toybox@ml.affrc.go.jp 本資料は筑波研究学園都市記者会 農政クラブ 農林記者会 農業技術クラブ 岡山県政クラブ 岡山県経済記者クラブ 広島県政クラブに配付しています 農研機構 ( のうけんきこう ) は 国立研究開発法人農業 食品産業技術総合研究機構のコミュニケーションネーム ( 通称 ) です 新聞 TV 等の報道でも当機構の名称としては 農研機構 のご使用をお願い申し上げます 1

新品種育成の背景 経緯一般の良食味米 ( 中アミロース ) で作成した麺は ゆで麺の表面の粘りが強く 麺離れが悪いのに対し 高アミロース米は麺離れが良く 製麺適性が高いことから 北陸地域向けの 越のかおり 北海道向けの 北瑞穂 などがこれまでに育成され 米粉麺が製品化されています しかしながら これらの品種は 瀬戸内沿岸など温暖な地域では出穂時期が早すぎるため収量が低下しやすく また雀害にも遭いやすいので 温暖な地域での作付けには適しません 西日本向けの品種としては 1987 年に ホシユタカ が育成されていますが 一般の米と異なり 粒形が細長いために選別に専用の篩 ( ふるい ) が必要です また 国内で広く普及している籾摺機や精米機は 一般の米用に設計されているため ホシユタカ のような細長い米は砕けやすいという欠点があります さらに脱粒性 2) も有することから 栽培や選別 精米などが難しく 普及の妨げとなっていました そのため 西日本には他地域から高アミロース米を取り寄せて米粉麺を加工する業者もありましたが 地元で生産した米で米粉麺を製造し 販売する 6 次産業化への要望が高まっていました そこで ホシユタカ の欠点を改良し 西日本向けの多収の高アミロース品種 ふくのこ を育成しました 新品種 ふくのこ の特徴 1. 高アミロースで製麺適性に優れる 新潟 79 号 ( 後の こしのめんじまん ) と 多収で縞葉枯病抵抗性を持つ 関東 229 号 を交配して育成した品種です 2. アミロース含有率は ホシユタカ と同等の 27% 前後で ( 表 1) 米粉と水のみで米粉麺に加工した結果 製麺適性は親品種の こしのめんじまん と同等に良好で ベトナムの麺料理であるフォーなどへの調理が可能です ( 写真 1) 3. 玄米の粒形は ホシユタカ は 半紡錘形 であるのに対し ふくのこ は ヒノヒカリ と同様に 長円形 です また 玄米千粒重 玄米の粒大も ホシユタカ より大きく ヒノヒカリ と同等です ( 写真 2 表 1) そのため 選別や精米などは 従来の施設 機械等がそのまま利用できます また ホシユタカ は脱粒性が 中 でしたが ふくのこ は 難 に改良され ( 表 2) 収量性も ホシユタカ と比べると 3 割ほど多収です ( 表 1) 4. ヒノヒカリ と比較すると 育成地 ( 広島県福山市 ) では出穂期は 2 日ほど 成熟期は 4 日ほど早くなります ( 表 3 写真 3) 西日本の主力品種である ヒノヒカリ と収穫時期がほぼ同じであり ヒノヒカリ の作付地帯での栽培が可能です また 耐倒伏性は ヒノヒカリ より強く 縞葉枯病にも抵抗性があり いもち病にも強い特徴があります ( 表 2) 5. これらのことから 新品種 ふくのこ は西日本地域における米粉麺への取組拡大に貢献できると期待されます 栽培上の留意点 1. 穂発芽性が やや易 のため 適期刈り取りに努めて下さい 2. 白葉枯病に弱いため 常発地では防除を徹底して下さい 品種の名前の由来多彩で幸せな食卓の主役となれることを願って命名しました 2

今後の予定 期待 1. 平成 28 年度より 岡山県内で栽培が始まっており 協定研究を行ってきた岡山市の ( 株 ) あいフーズ ( 住所 : 岡山市北区今 3 丁目 6-4 電話 :086-250-1418) で 米粉と水のみで製造した米粉麺の製品化が予定されています また 同じく協定研究を行ってきた特定非営利活動法人桃太郎ハンズチャレンジ事業部 就労継続支援 A 型 メンヤフォー ( 米麺の店 住所 : 岡山市北区今 2 丁目 18-15 電話 :086-250-1108) では ふくのこ を使用したフォー (1 食 690 円 ) を提供しています 2. ふくのこ について知っていただき ふくのこ の米の生産 米粉製品の製造 販売などをご検討いただくため 生産者 加工業者 小売業者 飲食店 料理研究家等の皆様を対象に ふくのこ の米粉麺のモニターを募集します 詳しくは 農研機構西日本農業研究センターホームページ (http://www.naro.affrc.go.jp/warc/) をご覧下さい 締め切りは 11 月 16 日です 応募多数の場合は抽選とさせていただきます 3. 炊飯米の粘りが少ないため カレーライスやエスニック料理などへの利用も期待できます 4. 西日本向けの ふくのこ の育成により 北海道の 北瑞穂 東北 ~ 北陸の あみちゃんまい 北陸 ~ 関東の 越のかおり と合わせ ほぼ全国で高アミロース米が栽培できるようになりました これを機に 米粉麺などの米粉製品の製造 販売等 6 次産業化のさらなる発展への貢献が期待されます 用語の解説 1) アミロースアミロペクチンと共にデンプンを構成する成分です デンプンは グルコース ( ブドウ糖 ) が直鎖状につながったアミロースと 分枝状につながったアミロペクチンから構成されます アミロース含有率が低いほど 炊飯米の粘りは強くなります 日本の一般的な良食味米品種のアミロース含有率は 15~20% 程度で ミルキークイーン などの粘りが強い低アミロース品種は 10% 程度 もち米は 0% です ふくのこ のアミロース含有率は 27% 程度なので 炊飯米の粘りは少なく 冷めるとポロポロとした食感になりますが 米粉麺の製造には適した特性です 2) 脱粒性籾が成熟過程で脱落する性質で 野生イネやインド型イネなどにみられます 脱穀作業が人力 畜力で行われる場合は ある程度脱粒する方が作業効率が良くなりますが 機械化されている場合は 脱粒性があると収穫ロスがあるため 品種改良により脱粒しづらい方向に改良されています 3

参考図 表 1. 収量および品質特性 玄米収量 (kg/a) 比較比率 (%) 玄米千粒重 (g) 玄米品質 玄米の粒形 玄米の粒大 アミロース含有率 (%) ふくのこ 64.4 130 21.6 5.4 長円形 中 27.6 ホシユタカ 49.4 100 18.1 4.1 半紡錘形 小 27.2 ヒノヒカリ 52.9 107 21.6 5.3 長円形 中 17.9 注 ) 農研機構西日本農研 ( 福山市 ) における成績 試験年次 :2012~2015 年 タンパク質含有率のみ 2014~2015 年の平均 平均移植日 :6 月 6 日栽植密度 :2012 2013 年は20.8 株 / m2 2014 2015 年は18.5 株 / m2施肥量 :2012 2013 年は0.73kg/a 2014 2015 年は0.92kg/a 玄米収量は ホシユタカ は1.6mm それ以外は1.8mmの篩で選別したときの値 玄米品質は 1( 上上 )~9( 下下 ) の9 段階で評価した 表 2. 耐性 耐病性 耐倒脱粒穂発いもち病抵抗性縞葉枯病白葉枯病伏性性芽性遺伝子型葉いもち穂いもち抵抗性抵抗性 ふくのこ 強 難 やや易 Pia,Pii やや強 強 抵抗性 弱 ホシユタカ 強 中 やや易 Pii,Pik 不明 不明 抵抗性 弱 ヒノヒカリ やや強 難 難 Pia,Pii 弱 やや弱 罹病性 やや弱 表 3. 生育特性 出穂期成熟期稈長穂長穂数倒伏 ( 月. 日 ) ( 月. 日 ) (cm) (cm) ( 本 / m2 ) 程度 ふくのこ 8.17 10.02 80 19.1 309 0.0 ホシユタカ 8.27 10.16 87 21.0 307 0.0 ヒノヒカリ 8.19 10.06 88 19.0 380 0.1 注 ) 表 1に同じ 倒伏程度 :0( 倒伏無 )~5( 完全倒伏 ) の6 段階で観察判定した 4

写真 1. ふくのこ の米粉麺を使用したフォー ( 写真提供特定非営利活動法人桃太郎ハンズチャレンジ事業部 ) 写真 2. ふくのこ の籾および玄米 ( 左から ふくのこ ヒノヒカリ ホシユタカ ) 写真 3. ふくのこ の圃場での草姿 ( 左 : ふくのこ 右 : ヒノヒカリ ) 5