3 M a r c h, 2 0 1 2 東京 23 区賃貸マンション市場の動き 2 経済トレンド ウォッチ 4 不動産市場トレンド ウォッチ 6 東京都内の J REIT 保有賃貸マンションの稼働状況 8 本レポートに関するお問い合わせ先 みずほ信託銀行株式会社不動産企画部下山田英介 TEL.03-3274-9079( 代表 )
東京 23 区賃貸マンション市場の動き 東京 23 区では 単身者の増加などを背景に賃貸マンション (3 階建て以上の民営借家共同住宅 ) の居住世帯数が著 しく増加しており 国勢調査によると 2010 年 10 月現在 122.7 万世帯 ( 総数の約 28%) が賃貸マンションに居住しています ( 本紙 2 月号に関連レポートを掲載 ) 今回は 東京 23 区における賃貸マンション市場の最近の動きを紹介します 2012 年の入退去シーズン始めの成約数は堅調に推移 はじめに 東京 23 区における賃貸住宅全体の成約状 況の推移を概観します ( 図表 1) アットホーム ( 株 ) の市場統計 ( データベースは貸家仲介業者間で流通する登録物件情報 ) に基づき 東京 23 区における賃貸住宅の成約数変動率 ( 前年同月比 ) の推移をみると 東日本大震災が発生した 2011 年 3 月と 4 月は 5% 弱の下落となりました しかし この 2ヵ月を除くと 大震災前に入退去シーズン ( 例年 1 月 3 月頃 ) 入りした 2011 年 1 月と 2 月および 5 月以降は連続して上昇しています また 2012 年の入退去シーズン始めの 1 月も 引き続き成約数が前年同月を上回り 前年同月比 8.9% の上昇となっています 図表 1 首都圏における賃貸住宅成約数変動率の推移 注 : 集計対象は居住用賃貸物件 ( 共同住宅の他に一戸建て等を含む ) 中古賃貸マンションの 1 戸当たり平均成約賃料は下落傾向 直近の 2012 年 1 月は下落率が縮小 同統計により 賃貸マンションの 1 戸当たり平均成約賃料の推移をみると 2011 年 1 月以降 中古は 10.5 11.6 万円 新築は 10.1 15.7 万円で 中古は新築に比べ安定的に推移しています ( 図表 2 右 ) 中古の 1 戸当たり平均成約賃料 ( 図表 2 右 ) と 1 戸当たり平均成約面積 ( 図表 2 左 ) の変動状況 ( 前年同月比 ) をみると いずれも 2011 年 1 月以降 下落 ( 面積は縮小 ) 傾向で推移しています 1 戸当たり平均成約賃料の下落率は 2011 年 10 月から12 月にかけて 8.0 9.0% に拡大しましたが 年明けの 2012 年 1 月には 3.1% に縮小しています 新築賃貸マンションは 1 戸当たり平均成約面積が広がる傾向 新築賃貸マンションは 2011 年 2 月と 9 10 月を除き 1 戸当たり平均成約面積が拡大傾向で推移しています ( 図表 2 左 ) 大震災後の 5 7 月は 家族向けの新築成約数が一時的に増加し 1 戸当たり平均成約賃料 1 戸当たり平均成約面積ともに前年同月比が大幅に上昇 ( 面積は拡大 ) しました 9 月以降 1 戸当たり平均成約賃料は弱含みとなりましたが 中古と同様 2012 年 1 月には下落率が2.4% に縮小しています 図表 2 東京 23 区における賃貸マンションの 1 戸当たり平均成約面積 1 戸当たり平均成約賃料の推移 1 戸当たり平均成約面積 1 戸当たり平均成約賃料 注 : 2012 年 1 月の値は集計対象が一部改定されたため表示していない 前年同月比の値は改定後と同条件で算出されており概ね連続性がある 図表 1 2の資料 : アットホーム ( 株 ) News Release< 首都圏の居住用賃貸物件 > に基づき都市未来総合研究所作成 2 2012, March みずほ信託銀行不動産マーケットレポート
J REIT 保有賃貸マンションの平均稼働率はワンルームとコンパクトタイプが堅調 次に J REIT( 上場不動産投資信託 ) 保有資産の運用情報データベース ReiTREDA( リートレーダー ) により賃貸マンション ( 主に6 階建以上の高層物件 ) の稼働率の推移をみてみます ( 図表 3) J REITが東京 23 区内に保有する賃貸マンションの平均稼働率は 2009 年 12 月期を底に上昇傾向に転じ 2011 年 6 月期 9 月期にはワンルームとコンパクトタイプがほぼリーマン ショック前の水準に回復しました しかし 賃料総額が大きいファミリータイプは大震災後の 2011 年 6 月期以降 平均稼働率が下落に転じています 一方 平均賃料収入単価は下落傾向が続いていますが ワンルームは稼働率の上昇に伴って横ばいに変化しています ( 図表 3) 小世帯向けの新規供給戸数は減少傾向 貸家共同住宅 (1.2 階建てを含む ) の新設着工戸数の推移をみると 2009 年から 3 年連続減少し 2011 年は 3.2 万戸となりました ( 図表 4) これは過去 10 年間 (2001 ~2010 年 ) の年平均着工戸数 (4.7 万戸 ) に比べ 1.5 万戸少ない水準です 住戸面積 ( 共用部分を含む 1 戸当たり延べ床面積 ) 別にみると 小世帯化が進むすう勢 ( 図 5) とは異なり 2009 年以降 比較的小さい 21~30m2 と 31~40m2 の減少が顕著です 2011 年に着工した物件の多くは 2012 年に市場に供給されますので 2012 年は単身 夫婦世帯など小世帯向けのワンルームや コンパクトタイプのうち比較的小面積の物件については新規供給戸数が減少傾向で推移するものと見込まれます ( 以上 都市未来総合研究所黒須良次 ) 図表 3 東京 23 区における J-REIT 保有賃貸マンションの平均稼働率 平均賃料収入単価の推移 注 1: 平均稼働率 ( 稼働率 = 実際賃貸床面積 賃貸可能床面積 ) は 期中 (6ヵ月間 ) の単純平均値 2011 年 12 月期は見込値 注 2: 平均賃料収入単価は 賃貸床面積 1m2当たりの家賃 共益費等の収入単価の期中の単純平均値 2011 年 12 月期は見込値 注 3: 集計対象は2011 年 9 月末現在保有する住居専用型の物件 ( 賃料保証 固定賃料を除く ) で 直近 5 半期連続して開示データがあるもの 注 4: ワンルームは概ね 30m2未満 コンパクトは概ね 30 40m2前後で 各投資法人の開示資料に即して区分したもの 資料 : 都市未来総合研究所 ReiTREDA( リートレーダー ) に基づき作成 図表 4 東京 23 区の貸家共同住宅着工戸数の推移図表 5 東京 23 区の 1 世帯当たり平均人員の推移 注 1:( ) 内は各年の合計 貸家共同住宅は一部に公的住宅を含む 注 2: 凡例の住戸面積は 共用部分を含む 1 戸当たり延べ床面積を示す 資料 : 国土交通省 建築着工統計 に基づき都市未来総合研究所作成 注 1: 世帯全体は 住宅に住む世帯全体 ( 間借り世帯等を除く ) 注 2: 賃貸マンションと賃貸アパートは 各々の民営借家世帯の値 資料 : 総務省 国勢調査 に基づき都市未来総合研究所作成 みずほ信託銀行不動産マーケットレポート 2012, March 3
経済トレンド ウォッチ 景気の動向 ( 全国 ) 図 1 景気動向指数 注 : 図の指数は第 10 次改定の値 資料 : 内閣府 景気動向指数 図 2 景気ウオッチャーの景気判断指数 資料 : 内閣府 景気ウォッチャー調査 図 3 企業の業況判断指数 注 : 大企業 は資本金 10 億円以上 中堅企業 は資本金 1 億円以上 10 億円未満 中小企業 は資本金 2 千万円以上 1 億円未満 2012 年 3 月は 2011 年 12 月調査時点の 先行き の値 資料 : 日本銀行 全国企業短期経済観測調査 ( 短観 ) データ概要 図 1 景気動向指数の CI 指数 :CI 指数は 景気の拡大 後退の大きさやテンポを示す (CI: コンポジット インデックス ) 景気先行指数は 景気一致指数より数ヶ月先行して動き 景気を予知するための指数 景気一致指数は 実際の景気動向とほぼ一致して動き 景気の現状を示す指数 景気遅行指数は 景気一致指数より数ヶ月遅れて動き 景気の変化を確認する指数 図 2 景気ウオッチャーの景気判断指数 : 景気の動きに敏感な職業の人を景気ウオッチャーに選び 街中の景気の現状や先行き (2,3ヶ月先 ) について 景気ウオッチャーの判断による景気の方向性を示す指数 (DI 指数 :50 = 変わらない 横ばい 50より高い = 良くなる 50より低い = 悪くなる ) 図 3 企業の業況判断指数 : 業況が 良い と答えた企業の割合から 悪い と答えた企業の割合を引いた値を業況判断指数とするもの 良い と 悪い の回答割合が同じ場合は 0 となる 4 2012, March みずほ信託銀行不動産マーケットレポート
物価 雇用 金利等の動向 ( 全国 ) 図 4 物価指数 注 : 国内企業物価指数の 1 月は速報値 資料 : 総務省 消費者物価指数 日本銀行 企業物価指数 図 5 雇用情勢 注 : 図の値は季節調査値 完全失業率の 2011 年 3 月から 8 月は 岩手県 宮城県 福島県を除く全国の結果 (1 月は速報値 ) 資料 : 総務省 労働力調査 厚生労働省 職業安定業務統計 図 6 主要金利 資料 : 日本銀行 金融経済統計 日本相互証券及び住宅金融支援機構ホームページ公表資料 データ概要 図 4 消費者物価指数 : 全国の家計に係る財及びサービスの価格等を総合した物価を時系列的に測定する指数 国内企業物価指数 : 企業間で取引される国内向け国内生産品の価格水準を示す指数 図 5 完全失業率 : 労働力人口 (15 歳以上で働く意志をもつ人 ) に占める完全失業者の割合 完全失業者は一定期間中に収入を伴う仕事に従事しなかった人で 実際に求職活動を行った人 有効求人倍率 : 公共職業安定所で扱う求職者 1 人に対する求人数 図 6 長期固定金利型住宅ローン : 民間金融機関と住宅金融支援機構の提携商品 フラット 35 の借入金利の最高 都市銀行住宅ローン ( 変動 ) : 個人向け都市銀行住宅ローンの変動金利型の基準金利 長期プライムレート : 民間金融機関が信用力の高い企業に資金を 1 年以上貸付ける際の基準となる貸出金利 長期国債新発債流通利回り : 金融機関や機関投資家などの間で取引される長期国債新発債の利回り みずほ信託銀行不動産マーケットレポート 2012, March 5
不動産市場トレンド ウォッチ 東京圏 図 1 住宅地 商業地の地価 ( 平均変動率 : 前年同月比 ) 注 : 各年 7 月 1 日現在の地価の対前年変動率の平均 資料 : 国土交通省 平成 23 年都道府県地価調査 図 2 賃貸マンションの成約賃料 (1 戸当たり平均成約賃料の前年同月比 ) 注 : 成約賃料は 成約物件全体の平均値 資料 : アットホーム ( 株 ) ニュースリリース : 首都圏の居住用賃貸物件 図 3 J-REIT 保有賃貸マンションの NOI 評価額利回り [ 運用時 NOI 利回り ] 注 : 各投資法人の 2011 年 11 月末までの決算資料による 資料 : 都市未来総合研究所 ReiTREDA( リートレーダー ) データ概要 図 1 地価の平均変動率 : 都道府県地価調査に基づく各年 7 月 1 日現在の地価の対前年平均変動率 都道府県地価調査は 国土利用計画法施行令に基づき 都道府県知事が毎年 7 月 1 日における調査地点の正常価格を不動産鑑定士の鑑定評価を求めた上で判定するもの 図 2 1 戸当たり平均成約賃料 : 不動産総合情報サービス会社 アットホーム ( 株 ) に募集登録し 成約した賃貸マンション ( 新築を含む全成約物件 ) の1 戸当たり成約賃料の平均値 図 3 NOI 評価額利回り :NOI 評価額利回りは J-REIT( 上場不動産投資信託 ) の全投資法人が保有する住居専用型賃貸マンションの期末鑑定評価額に対する直近 1 年間の純収益 (NOI) の割合を示す 図は地域別に物件毎 ( 賃料保証 固定賃料の物件を除く ) の NOI 評価額利回りを単純平均したもの 6 2012, March みずほ信託銀行不動産マーケットレポート
主要大都市 ( 札幌 仙台 名古屋 京都 大阪 神戸 福岡 ) 図 4 住宅地 商業地の地価 ( 平均変動率 : 前年同月比 ) 注 : 各年 7 月 1 日現在の地価の対前年変動率の平均 資料 : 国土交通省 平成 23 年都道府県地価調査 図 5 賃貸マンションの募集賃料 (1 戸当たり平均募集賃料 :1R 1K 1DK タイプ ) 注 : 募集賃料は 各大都市の中心部 ( 下記参照 ) における過去 6 ヵ月の平均値 資料 : アットホーム ( 株 ) ホームページ公表統計資料 図 6 J-REIT 保有賃貸マンションの NOI 評価額利回り [ 運用時 NOI 利回り ] 注 : 各投資法人の 2011 年 11 月末までの決算資料による 資料 : 都市未来総合研究所 ReiTREDA( リートレーダー ) データ概要 図 4 地価の平均変動率 : 都道府県地価調査に基づく各年 7 月 1 日現在の地価の対前年平均変動率 都道府県地価調査は 国土利用計画法施行令に基づき 都道府県知事が毎年 7 月 1 日における調査地点の正常価格を不動産鑑定士の鑑定評価を求めた上で判定するもの 図 5 1 戸当たり平均募集賃料 : 不動産総合情報サービス会社 アットホーム ( 株 ) に募集登録された賃貸マンション (1R 1K 1DKタイプ ) の1 戸当たり募集賃料の平均値 集計対象地域は以下の大都市の中心部 ( 札幌市中央区 仙台市青葉区 名古屋市中区 京都市北区 上京区 左京区 大阪市北区 中央区 神戸市中央区 福岡市中央区 ) 図 6 NOI 評価額利回り :NOI 評価額利回りは J-REIT( 上場不動産投資信託 ) の全投資法人が保有する住居専用型賃貸マンションの期末鑑定評価額に対する直近 1 年間の純収益 (NOI) の割合を示す 図は地域別に物件毎 ( 賃料保証 固定賃料の物件を除く ) の NOI 評価額利回りを単純平均したもの みずほ信託銀行不動産マーケットレポート 2012, March 7
東京都内の J-REIT 保有賃貸マンションの稼働状況 J-REIT( 上場不動産投資信託 ) 保有資産の運用履歴情報を統合したデータベース ReiTREDA( リートレーダー ) ( 都市未来総合研究所作成 ) を用い J-REIT が東京都内に保有する賃貸マンションの稼働状況をみてみます J-REIT が保有する賃貸マンション ( 住居専用型 ) の平均稼働率は リーマン ショック後の 2008 年 12 月期 (7~ 12 月 ) から 2009 年 12 月期にかけて 厳しい経済情勢の影響を受けほぼ一斉に下落しました ( 下図の左 ) 地域別にみると 都心 5 区 と 都下 ( 多摩地域 ) で下落幅が比較的大きくなっています しかし その後は景気の持ち直しに伴って全般的に回復傾向に転じています 東日本大震災発生後の 2011 年 9 月期 (4~9 月 ) の平均稼働率は 都心 5 区 で法人契約の解除等によりやや下落しましたが 周辺 18 区 ( 都心 5 区以外 ) と 都下 ではリーマン ショック前の水準付近で堅調に推移しています J-REIT 保有物件が多い 23 区内のワンルームタイプについて 最寄駅からの徒歩分別に平均稼働率の変動状況を比べてみると 徒歩 5 分未満 の駅近の物件は 5 分以上 10 分未満 の物件より下振れの幅が比較的小さく安定的に推移しています また コンパクトタイプは 徒歩 5 分未満 の下振れの幅が比較的大きいですが 91% 台で底打ちした後の回復ペースが比較的速く 2011 年 6 月期には 95% 台に回復しています ( 下図の右 ) 東京都内における J-REIT 保有賃貸マンションの平均稼働率の推移 < 東京都内の地域別 > <23 区のワンルーム及びコンパクトタイプ > 注 1: 都心 5 区 は千代田区 中央区 港区 新宿区 渋谷区 周辺 18 区 は都心 5 区以外の地域 注 2: 平均稼働率 ( 稼働率 = 実際賃貸床面積 賃貸可能床面積 ) は 期中 (6 ヵ月間 ) の単純平均値 注 3: ワンルームは概ね 30 m2未満 コンパクトは概ね 30~40 m2前後で 各投資法人の開示資料に即して区分したもの 注 4: 集計対象は 2011 年 9 月末現在保有する住居専用型の物件 ( 賃料保証 固定賃料を除く ) で 直近 5 半期連続して開示データがあるもの 資料 : ReiTREDA( リートレーダー ) に基づき都市未来総合研究所作成 不動産の仲介物件のご紹介 売却のご依頼やご相談はこちらへ お問合せ先 宅地建物取引業 : 届出第 2 号 所属団体 : 社団法人不動産協会 社団法人不動産流通経営協会 公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会加盟 みずほ信託銀行株式会社 不動産マーケットレポート 2012.3 発行みずほ信託銀行株式会社不動産企画部 103-8670 東京都中央区八重洲 1-2-1 http://www.mizuho-tb.co.jp/ 編集協力株式会社都市未来総合研究所 103-0027 東京都中央区日本橋 2-3-4 日本橋プラザビル 11 階 http://www.tmri.co.jp/ 本資料は参考情報の提供を目的とするものです 当行は読者に対し 本資料における法律 税務 会計上の取扱を助言 推奨もしくは保証するものではありません 本資料の全部または一部の無断複製 無断転載を禁じます