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カーボカウント 大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学川村智行 (Tomoyuki Kawamura) 広瀬正和 (Masakazu Hirose) 大阪市立大学付属病院栄養部藤本浩毅 (Hiroki Fujimoto) 野井香梨 (Kaori Noi) <はじめに> カーボカウントは糖尿病における食事療法 インスリン調整法の一つです 食物の中で最も急激な血糖上昇を来すのが炭水化物であるという事実から食事中の炭水化物量を計算して糖尿病の食事管理に利用します 1 型糖尿病患者でも 2 型糖尿病患者においても利用可能な方法であり 1 型糖尿病の大規模な合併症調査である The Diabetes Control and Complications Trial(DCCT) の食事療法としても利用されており欧米では一般的に利用されています 日本でも超速効型インスリンやインスリンポンプ療法の普及により カーボカウントの重要性は高まってきました 炭水化物量に主に注目して その量と血糖値から食前のインスリン量を決定することで ある程度自由度を持った食生活が可能となります 次頁よりカーボカウントの実際の利用方法について述べます 1 1 カーボとは? 2 インスリン / カーボ比 3 インスリン効果値 4 目標血糖値を決めること 5 1~4を利用してインスリン量を決定する 6 インスリン / カーボ比とインスリン効果値の決定 調整法 7 基礎インスリン量を調整すること 8 カーボカウントを行うことの注意点とコツ これらを利用して是非皆さんもカーボカウントを行ってください 日本においてカーボカウントのテキストがなかったため 当科で 2007 年より 2 冊のカーボカウントの指導書を出版しています こちらも参考にしてください

1 1 カーボとは? 炭水化物量の単位を カーボ といい アメリカでは1カーボ= 炭水化物 15g となっています しかし 我々は計算のしやすさから炭水化物 10g を 1 カーボとして計算しています 以後本文では 1 カーボ= 炭水化物 10g として記述しますので注意してください <なぜ 1 カーボ= 炭水化物 10g?> 当科では 4~5 年前からカーボカウントを患者さんに指導しています 当初は我々も 1 カーボ=15g で指導を行っていましたが 1 カーボ=15g では 2 つの問題点がありました 一つは食品交換表との関係です 食品交換表では 1 単位 =80kcal で食事管理を行います 炭水化物 1g で 4kcal ですので 80kcal のすべて炭水化物であるとすると 20g の炭水化物を含む事になり 1 カーボが 15g だと 1 単位分 (20g) の炭水化物は 1.33 カーボとなり計算が面倒になります 二つ目の問題点は計算が面倒であるという点です お菓子のラベルを見て炭水化物が 40g 入っていた時に 1 カーボ=15g だと何カーボになるのかすぐに計算できません ( 答えは 2.66 カーボ) 1 カーボが炭水化物 10g だと 4 カーボだとすぐにわかります この 2 点とドイツでは 1 カーボ= 炭水化物 10g で指導を行っている事などから 当科でも 1 カーボ = 炭水化物 10g へ変更したところ 患者さんの計算が大変スムーズになりました 以上の事から当科では 1 カーボ=10g として計算するほうがよいと考えます 2インスリン / カーボ比インスリン / カーボ比とは1カーボの炭水化物に対して必要な超速効型インスリンの量です 例えば インスリン / カーボ比 =1.5 の人が 6 カーボの食事を摂る場合は 6 1.5=9.0 となり超速効型インスリン 9 単位必要となります インスリン / カーボ比はひとによって違うので個々に設定します 3インスリン効果値 ( 補正インスリン ) インスリン効果値とは 1 単位の超速効型インスリンで低下する血糖値を表します インスリン効果値 30 の人は 1 単位の超速効型インスリンの投与で約 4 時間後に血糖値が 30mg/dl 低下すると考えます インスリン / カーボ比では食事に対するインスリン量を決定しますが 食前血糖値が高かった場合には食後血糖値を下げる為に 更にインスリンを追加投与します この高血糖を目標血糖値までに下げるためのインスリンを補正インスリンと呼びます 例えば インスリン効果値 60 の人が食前血糖値 300mg/dl であった場合 食後に 120mg/dl まで低下させようと思った場合には食事に対するインスリンに加えて 2 単位の追加が必要になります

4 目標血糖値を決めること補正インスリンの為の目標血糖値も調整が必要です インスリン / カーボ比 インスリン効果値を自分できちんと把握している場合は目標血糖値を 100~120mg/dl に設定しても良いですが カーボカウントを始めるときや眠前の高血糖時に行う補正の時などは安全性のために少し高めに設定し 150mg/dl くらいにしておくのが良いと考えます また低年齢の場合も 120~150mg/dl 程度で良いと考えます 普段でもクラブ活動の前などは高めに設定したりする工夫が必要です 5 1~4を利用してインスリン量を決定する ( 図 ) にインスリン / カーボ比 インスリン効果値を利用した食事摂取時のインスリン量の調整方法を示します インスリン / カーボ比を利用して食事中のカーボ量に従い食事に対するインスリン量を決定します また 食前の血糖値が高い場合には目標血糖値まで下げる為にインスリン効果値を利用して補正インスリンを加えて それらの合計インスリン量を注射します インスリン / カーボ比 インスリン効果値は各患者さんによって違いますので 調整は主治医の先生とよく相談しておこなってください

6 インスリン / カーボ比 インスリン効果値の決定 調整法 A: 最も簡便に開始する方法 インスリン/ カーボ比 :1.0 インスリン効果値:50 または インスリン/ カーボ比 :0.5 インスリン効果値:100 から始める とにかく簡単にはじめたい場合 上記のインスリン / カーボ比 インスリン効果値で簡単にはじめてください 大阪市立大学小児科の 1 型糖尿病患者さんの結果から 1 日総インスリン量が 20 単位以上ある場合はインスリン / カーボ比が 1.0 インスリン効果値が 50 であった患者さんが多かったので 最初から複雑な計算をするより 最初は計算しやすい単純なインスリン / カーボ比 インスリン効果値ではじめてみるのが良いと考えます 欧米の報告でも 1 型糖尿病患者さんでは炭水化物 10g あたり 1 単位必要であった患者さんが多いとありますので まず インスリン / カーボ比 :1 からはじめて血糖値の推移を見てから細かく調整していくのが良いです 発症して間もない患者さんでインスリン量が少ない場合や 低年齢の患者さんでインスリン量が少ない場合はインスリン / カーボ比を 1.0 にしてもインスリン量が多く低血糖のリスクが高い場合がありますのでインスリン / カーボ比 :0.5 インスリン効果値 100 から始めたほうが安全です B: 実際の食事 インスリン注射からインスリン / カーボ比とインスリン効果値を求める 実際の食事からインスリン / カーボ比を求めるある食事をとって 食前の血糖値と食後の血糖値がほぼ同じであった場合 その時の食事中カーボ量とインスリン量がきちんと合致していると考えます 例えば 食前血糖値が 120mg/dl で 10 カーボの食事をとった場合に超速効型インスリンを 8 単位注射したとします 食後 3 時間後に食前の 120mg/dl に戻っていれば その人は 10 カーボでインスリン 8 単位必要となり 1 カーボ=0.8 単位となるので インスリン / カーボ比 :0.8 となります この方法の場合 食事中のカーボ量がわかっている食事を摂取する必要があります 実際のインスリン投与からインスリン効果値を求める直接的にインスリン効果値を測定するには高血糖時に実際に超速効型インスリンのみを数単位注射して確認する方法が確実です 例えば血糖値が 280mg/dl であった時に 3 単位の超速効型インスリンを注射してみたところ 3 時間後に 130mg/dl まで低下した場合は 3 単位で 150mg/dl 低下したので 1 単位では 50mg/dl となり その人のインスリン効果値は 50 と計算できます

この方法で確認する時の注意点は過量のインスリン投与による低血糖に注意することと 前の食事やインスリンの影響がない時間帯に行うことです 直前の食事 インスリン投与から 3 時間以上経過している時間に行ってください そのためには日中であれば昼食後の 15 時 ~18 時が一番適しています 特に低年齢の患者さんの場合は 1 単位で 100~200mg/dl 下がる場合もあるので 注意して行ってください C:500 ルール (50 ルール ) 1800 ルールから求める 500 ルール 500 (1 日の総インスリン量 )= 超速効型インスリン 1 単位に必要な炭水化物のグラム数 500 ルールで超速効型インスリン 1 単位に対する炭水化物グラムが計算できます 例えば 1 日インスリン量が 25 単位であれば 500 25=20 となり 20 グラムの炭水化物で 1 単位が必要ということになります つまり 1 カーボで超速効型インスリン 0.5 単位が必要 (=インスリン / カーボ比 0.5) となります 500 ルールはインスリン 1 単位に必要な炭水化物のグラムで計算されますので すこし計算が面倒になります 簡単に 1 カーボで超速効型インスリンが何単位必要か ( インスリン / カーボ比 ) を計算する為に我々は 50 ルールを利用しています 50 ルール (1 日総インスリン量 ) 50=インスリン/ カーボ比 50 ルールでは直接インスリン / カーボ比が計算されます 1 日総インスリン量が 60 単位の場合 60 50=1.2 となり 1 カーボで超速効型インスリン 1.2 単位必要となります 1800 ルールインスリン効果値の目安を算出する計算式として 1800 ルールがあります 1800 (1 日インスリン量 )=インスリン効果値となります たとえば 1 日インスリン量が 30 単位の人の場合は 1800 30=60 となりインスリン効果値 60 と計算できます この式は目安としてのインスリン効果値を算出するので実際にはこの値で追加インスリン投与を行ってみて調整することが必要です 500 ルール 1800 ルールはあくまで 目安 としてインスリン / カーボ比 インスリン効果値を求めるものです 実際にはこれらの式で計算される値と違う場合はよくありますので ルールにこだわらずに実際の血糖値変動に応じて随時インスリン / カーボ比 インスリン効果値を調整していくことが重要です 最初にはじめる時の見当をつける程度の式と思っておいてください

D: その後のインスリン / カーボ比 インスリン効果値の調整カーボカウントを導入した後 季節や生活の変化に応じてインスリン / カーボ比 インスリン効果値の調整が必要になります 下図にインスリン / カーボ比の調整法について示します 超速効型インスリンの効果が切れる食後 3-4 時間後の血糖値が食前の血糖値より上昇することが続けばインスリン / カーボ比が少ないことになるのでインスリン / カーボ比を上げていき 自分に合ったインスリン / カーボ比を調整します 逆に食後の血糖値が食前の血糖値より低下すればインスリン / カーボ比が高すぎたことになるためインスリン / カーボ比を下げます 7 基礎インスリン量を調整すること 1~5を利用してカーボカウントを実践しますが インスリン / カーボ比とインスリン効果値をうまく利用するためには基礎インスリン量がきちんと調整されている必要があります 持効型インスリン ( ランタス レベミル ) やインスリンポンプの基礎注入量が少ないとインスリン / カーボ比が正しくても食後血糖値が上昇する事になり カーボカウントもうまくいきません まずは基礎インスリンの調整をきちんと行いましょう 基礎インスリンは食事 インスリンの影響がなければ血糖値は一定であるように調整を行います そのためには直前の食事 超速効型インスリン投与から 3 時間以上経過した時点での血糖値とその後の血糖値とを比較します 持効型インスリンを使用している場合は 眠前の血糖値と翌朝の血糖値がほぼ一定であるように量の調整を行いましょう まずは眠前の血糖値と翌朝の血糖値が一定になるようにインスリン量を調整した後に 眠前高血糖の場合はインスリン効果値を利用して超速効型インスリンで血糖の補正を行ってください 眠前の血糖値によって持効型インスリンの

量を増減しない事が重要です インスリンポンプを利用している場合は更に細かい基礎インスリンの調節が可能です 暁現象の影響があるかを判定するために 眠前と翌朝の血糖値以外に夜間の 3 時頃にも一度血糖値を測定しておいて血糖上昇する時間帯に合わせて基礎インスリン注入量を調整します 日中の基礎インスリンの調整は食事の影響があるためすこし難しいですが まずは昼食前のインスリンの効果が切れる昼食後 3~4 時間後の血糖値と夕食前の血糖値とを比較してほぼ同じようになるように基礎インスリン注入量を調整してください 8 カーボカウントを行うにあたっての注意点とコツ最後にカーボカウントを利用するにあたっての注意点とコツを以下に述べます インスリン / カーボ比とインスリン効果値は人によって違うと述べましたが 同じ人でも1 日のなかで違う場合がありますし その日の運動量によっても変わります 朝はインスリンが効きにくいため インスリン / カーボ比は高め インスリン効果値は低めに設定したり 昼から夕方にかけては学校や仕事に行くためインスリン / カーボ比をやや低めに設定しインスリン効果値を高めに設定するなどの工夫が必要です 激しい運動前や運動後はインスリン / カーボ比を低めに設定する工夫などがあるので それぞれ血糖値をみながら微調整をおこなってください カーボカウントは食事中の炭水化物量によってインスリン量を調整しますが 炭水化物だけを数えれば血糖値が完璧に安定するというわけではありません 脂肪や蛋白質の多い食事を摂った場合は食後数時間してから血糖値が徐々に上昇するので工夫が必要です その場合は食前のインスリンを速効型インスリンに変更したり 食後数時間後に血糖測定を行い インスリン効果値を利用して補正インスリンを追加するなどの対応が必要になることがあります また インスリンポンプ療法を行っている場合は食後数時間だけ基礎インスリン量を 0.1~0.2 単位 / h 増加させておく方法もあります < 食品のカーボ量を正しく読み取ること> カーボカウントを行うにあたって重要な事は正しいインスリン / カーボ比 インスリン効果値 ( 前述 ) を設定する事と 食品のカーボ量を正確に把握する事です すべての食事ではかりを利用して炭水化物量を測定するのが大変な場合は目の前の食事をみておよそ何カーボ入っているかの検討をつける事が重要です これにはトレーニングが必要であり 日頃からフードラベルを活用し カーボ量を把握することから始める事が重要です 食事中のカーボ量でやはり大半を占めるのは主食 ( 米 麺 パン ) ですので 主食のカーボ量を把握する事が最も重要です 米飯 150g で 5.5 カーボ 食パン (6 枚切り )1 枚で 3 カーボ うどん麺 1 玉 (200g)4.5 カーボであり 普段良く食べる主食のカーボ量を把握する事はとても重要です おかずでは卵 肉 魚など蛋白質の食品は 0 カーボでありカウントしないことが重要です 焼き魚は 0 カーボ 煮付けにすると調味料の分で 0.5~1.0 カーボになります おかずの中で炭水化物を多く含むいも類 フライ 揚げ物などの衣には注意が必要です 当科では食品のカーボ量を読み取る練習のためのフラッシュカードを出版していますので 是非利用してみてください

<まずやってみること> カーボカウントをまず試してみる事が重要です 各食事のカーボ量を正確に読み取るためにはある程度のトレーニングが必要なので 最初に導入する際には炭水化物量の記載があるフードラベルを利用した間食 ( おやつ ) 時に試してみることから始めると導入しやすいです インスリン / カーボ比は一日のうちでも朝と夕方では違うことがあるため まずは一定にしてカーボカウントを行い 血糖値を見ながらインスリン / カーボ比 インスリン効果値を少しずつ増減させて調整を行ってみてください <カーボカウントに対する誤解 > 最後にカーボカウントで誤解しやすい点について述べます 炭水化物量をカウントすることでインスリン量を調整しますが 炭水化物の量さえ気にすれば 蛋白質 脂肪をどれだけ摂取してもよいというわけではありません 蛋白質 脂肪を過食してしまうと肥満になる可能性はあるので普段からバランスのよい食事を摂取することは重要です また逆に炭水化物を摂らないようにすることも間違いです 最近では低インスリンダイエットのように極端に炭水化物を制限する食生活も流行しています 炭水化物はブドウ糖に分解され血糖上昇をきたしインスリン分泌を高めます インスリン不足の状態では脂肪を分解する作用があるため 低インスリンダイエットでは炭水化物摂取量を減らし脂肪をエネルギーとして利用使用という方法です カーボカウントはやせるための方法ではなく また炭水化物摂取量を減らすことを勧める食事療法ではありません 必要な炭水化物を摂取し その量に応じてインスリン量を調整し 血糖コントロールを行う方法ですので注意してください

参考図書 1) 糖尿病のあなたへかんたんカーボカウント~ 豊かな食生活のために~ 改訂版 (2009) 大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学教室編川村智行 ( 編集責任 ) 大阪市立大学医学部附属病院栄養部 医薬ジャーナル社 A4 版 80 ページ定価 2520 円 2) 糖尿病患者のためのカーボフラッシュカード (2007) 大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学教室大阪市立大学医学部附属病院栄養部 編 医薬ジャーナル社 A5 変形判 112 ページ ( 食品写真 100 種 ) 定価 2625 円

< 参考文献 > 1) Franz MJ : Protein: metabolism and effect on blood glucose levels.diabetes Educ.23:643-651,1997 2) Leontos C : Implementing the American Diabetes Association's Nutrition Recommendations.J Am Osteopath Assoc103: S17-20,2003 3) Anderson EJ, Richardson M, Castle G, et al : Nutrition interventions for intensive therapy in the Diabetes Control and Complications Trial. The DCCT Research Group.J Am Diet Assoc93:768-772,1993 4) Walsh J,Roberts R,Varma C,et al : Using Insulin,Everything You Need for Success With Insulin.Torrey Pines Press,San Diego,139-162,2003 5) 大阪市立大学医学研究科発達小児医学教室編 : かんたんカーボカウント~ 豊かな食生活のために~. 東京 医薬ジャーナル社,2006 6) 川村智行広瀬正和 : インスリンポンプ療法とカーボカウンティング法 Diabetes Frontier 17:612-618,2006 7) Gillespie SJ, Kulkarni KD, Daly AE : Using carbohydrate counting in diabetes clinical practice.j Am Diet Assoc98:897-905,1998 8) Gregory RP, Davis DL : Use of carbohydrate counting for meal planning in type I diabetes.diabetes Educ 20:406-409,1994 9) The DCCT RESEARCH GROUP : Nutrition interventions for intensive therapy in the Diabetes Control and Complications Trial. J Am Diet Assoc 93:768-772,1993 10) R Rabasa-Lhoret, J Garon, H Langelier, et al : Effects of meal carbohydrate content on insulin requirements in Type 1 diabetic patients treated intensively with the basal-bolus (ultralente-regular)insulin regimen. Diabetes care22:667-673,1999