バイオガス事業推進協議会第 2 回バイオガス事業経営研究会 山田バイオマスプラントの取組みと液肥利用の課題 2015 年 1 月 23 日株式会社和郷相原秀基
メタン発酵プラントの取組みと液肥利用の課題 1 メタン発酵プラントの維持管理について a. エネルギーとしてのガス生産 b. 速効性肥料としての消化液生産 2 消化液肥と野菜生産現場のリンクについて 3 植物工場とメタン発酵槽の可能性について
バイオガス バイオガス流量 脱硫後のバイオガス流量の積算 流速 バイオガス濃度分析 60% メタン CH4 40% 二酸化炭素 CO2 系外へ : 二酸化炭素 CO2 原料 発酵槽の温度 34~37 を維持 ( 一般は 30~37 ) 系外へ : 水分 系外へ : 硫化水素 3000ppm ph 測定 ph:7.2~7.7( 一般 6.5~8.2) EC 測定 アンモニア態窒素に相関 含水率計 TS 98% 含水率 ガスタンク : 98% メタン ph 測定 ph:3.6~4.0 含水率計 TS バイオ消化液肥 95% 含水率 98%: 水分消化液 投入量 無機物 (N P K) 有機物 ( 未分解 C 炭素 3 4~9m3 / 日 ) CH4
メタン発酵槽
脱硫
バイオガス (PSA とガス貯蔵 )
バイオガスでの発電機
メタン発酵で肥料成分で変化するのは 主にタンパク質からの窒素 有機物 微細化 加水分解 酸生成酢酸生成メタン生成 有 機 物 炭水化物 タンパク質 脂質 単糖 アミノ酸 高級脂肪酸 揮発性脂肪酸酪酸プロピオン酸酢酸水素 ( 菌体 ) 揮発性脂肪酸吉草酸酪酸プロピオン酸酢酸水素 ( 菌体 ) 吉草酸酪酸プロピオン酸 ( 高級脂肪酸 ) 酢酸水素 ( 菌体 ) 酢酸水素 ( 菌体 ) 酢酸水素 メタン ( 菌体 )
メタン発酵消化液の成分 ( 山田バイオマスプラントの例 ) 原料が乳牛ふん尿 (50%)+ 野菜残渣 (50%) の場合 成分 消化液 1t あたりの含有量 含水率 97.4 % ph 7.4 EC 1.4 S/m 全窒素 1,800 mg/l (0.18%) 1.8 kg アンモニア 730mg/L 態窒素 (0.073%) 0.73 kg 硝酸態窒素 <1 mg/l (<0.01%) 0 kg リン酸 1,000mg/L (0.10%) 1.0 kg カリ 3,100 mg/l (0.31%) 3.1 kg 消化液は速効性の窒素成分を含み, 化学肥料を代替できる. ( 農工研, 中村氏資料 )
メタン発酵プラントの取組みと液肥利用の課題 1 メタン発酵プラントの維持管理について エネルギーとしてのガス生産 速効性肥料としての消化液生産 2 消化液肥と野菜生産現場のリンクについて 3 植物工場とメタン発酵槽の可能性について
畑での消化液肥散布
散布方法と実績 液体肥料の日量の生産量は 4t から 6t で 和郷園での消化液散布の肥料投入設定は 10a あたり T-N 計算で 10kg を基準としている 300 250 200 150 2007 液肥散布量 (t) 2008 液肥散布量 (t) 2009 液肥散布量 (t) 100 50 0 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 消化液の散布量
消化液の利点 ( 液体 ) 液体であればバキューム車による送液であり 堆肥などでの大型シャベルやダンプなどの特殊操作はあまりないので 運用の利点にもつながる たい肥 液肥 13
消化液の利点 ( 液体 ) 液体であればバキューム車による送液であり 堆肥などでの大型シャベルやダンプなどの特殊操作はあまりないので 運用の利点にもつながる たい肥 液肥
散布機器の適正サイズ 圃場の面積や農道の幅と 輸送 散布の車両のサイズが重要 運用の際にも 効率面で大きな違いがでる 最適な機械サイズの検討が必要
地域の皆様との環境コミュニケーション 環境コミュニケーション の視点を取り入れ 外部への消化液肥を液体肥料としての認知度を上げる活動を行う
消化液肥の出荷野菜への利用 1 土壌分析 を行い 前作の残留肥料を確認後 消化液肥 +α での液肥利用を考える 2 α は他の肥料を入れて 作物ごとの 肥料要求量 を満たすように 調整して利用することでリサイクル利用 出荷予定日時に製品重になるように計画 畑作 は消化液肥 10kg 入れて 肥料を加える 水田 は消化液肥を量を絞って散布利用する
1 土壌分析による残肥の確認 施肥設計ソフトの画面
2 レタスの場合 消化液肥 だけでは 同じ日数では出荷重に到達できない ( 時間かければ栽培できるが 納入時期に間に合わず ) 消化液肥 + 鶏糞堆肥 ( 適量 ) 消化液肥 + 鶏糞堆肥 ( 適量の 1/2 量 ) 消化液肥 のみ ( 出荷重量でない )
和郷園で栽培した品目実績 ( 野菜以外も含む ) オオバ カボチャ ギニアグラス キュウリ ゴボウ コマツナ サトイモ サンチュ シバ ( 芝生 ) ジャガイモ ショウガ ソルガム ダイコン ニンジン ハス ブロッコリー ホウレンソウ ミツバ ミニハクサイ ムギ ヤマトイモ ラッカセイ レタス 飼料稲 水稲 キャベツ エダマメ
今後の消化液利用について 消化液 +α で 足りない肥料は補って野菜を生産する 消化液を利用しやすい 受け入れやすい体制を整える 生産者の要望をかなえる 散布条件と散布量 マーケットで求められているものを検討して 有機肥料にも登録できる速効性肥料の消化液を経営者である生産者が選択できる状況を構築する
メタン発酵プラントの取組みと液肥利用の課題 1 メタン発酵プラントの維持管理について エネルギーとしてのガス生産 速効性肥料としての消化液生産 2 消化液肥と野菜生産現場のリンクについて 3 植物工場とメタン発酵槽の可能性について
バイオマスと植物工場 食品事業者 食品加工業者運搬業者和郷園 和郷 食材 生ごみ 産業廃棄物収集運搬 リサイクルセンター 野菜 植物工場 メタンガス発電再生可能エネルギー 生ゴミ液化 破砕機 圃場 液体肥料 メタン発酵 生ゴミ液化
人工光型植物工場 ( 結球レタス栽培 ) 農林水産省植物工場実証 展示 研修事業千葉大学拠点 ( 柏の葉キャンハ ス )
植物工場で生産される野菜の例 ( 生産される作物により 残さ量は異なる ) 結球レタス ラディッキオ類 彩り 香り はもっと身近になれる素材 ビート類 ( バルバビエートラ ) 彩りのきれいなイタリア野菜 サラダに ピザに パスタに 赤キャベツ ホウレンソウ類 ( スイスチャード ) 薬味ネギ セロリ類 コールラビ
農業施設からの残渣処理について 近年の企業による農業参入が多くなり 産業としての農業施設 ( 農業ハウス ) から排出される残渣の適正な廃棄物処理が必要となった 既存の処理方法 と 新たな処理方法 を比較して これからの農業ハウスへの導入について トマトハウスを例として 説明と今後の課題の整理 1 既存の処理方法 ( 産業廃棄物としての燃焼処理 重量での評価 ) 2 新たな処理方法 ( 微生物分解での現場処理 成分での評価 ) 3 今後の課題 ( 重量ではなく成分 ( 有機物負荷 ) による適正な評価へ )
農業用ハウス ( 太陽光利用型植物工場 ) 27
トマトの部位ごとの残渣処理について ( 既存処理と新たな処理の最適化ポイント ) トマトの残渣は 作替えで排出される 茎 根 に関しては 繊維の含有率が高く 残渣の大半が処理機内部に残存する可能性がある 一度に大量の排出されることもあり 可溶化処理は困難である 一方 日常管理で排出される 芽 葉 果実 に関しては 通常の野菜と同じ性状であり 問題なく可溶化での処理が可能である ( 葉の短い繊維質や種子は残存する ) トマトハウス 茎や根は繊維長く通常の廃棄物処理 摘芽 + 摘葉 + 果実が処理可能である 茎 根を可溶化処理すると 投入タイミング 一度に作替えし 大量 (300t) に排出するため 新たな処理方法 ( 可溶化処理 ) には向かない 植物体の特徴 繊維が長いため 破砕が必要 機械に絡まり 内にかなり残存か よって 新たな処理方法 は適さず 既存の処理方法 が適する 芽 葉 果実を可溶化処理すると 投入タイミング 1 日 35kg/10a であり 想定では 1.5t/ 日 植物体の特徴 繊維は少々残存する可能性あり 果実の種子は機械内に残存か よって 芽 葉 果実は 新たな処理方法 ( 可溶化微生物分解処理方法 ) により残渣処理が可能である
追記 農業施設からの残渣処理について ハウスが多い郊外でのメタン発酵案 ハウスなどが多い郊外では 排水をメタン発酵により肥料化の可能性を試験する方向性もある その際は 肥料成分評価のため排液の濃縮が必要 沈降分離で濃い部分を農業利用 薄い部分を再生水利用か トマトハウス その他 既存の処理 生トマト 1 摘芽 2 摘葉 3 果実 乾燥トマト 有機物 散水 投入 可溶化 新規分解処理 重さや体積は違えど 有機物負荷は同じ ハウスの多い郊外の場合 資源としての利用も検討される トマト残渣のため 再利用の詳細検討が必要である 排水を沈降分離し濃縮する メタン発酵 肥料 N P K のバランス植物由来成分微生物生産物 評価 肥料として 後処理 ( 嫌気発酵 ) 嫌気発酵で液体肥料を作る場合 肥料成分評価のため成分濃縮をする 濃縮により処理槽サイズの縮小 沈降分離 濃縮の際にも メタン発酵負荷 沈降上澄み水の評価は 有機物負荷の確認必要 投入野菜の注意 野菜は分解が進んでいないため 見た目の悪いが分解進んだ動物のふん尿よりも 有機物負荷が高い 含水率が変動しても有機物負荷は変化しない ( 例 : 生トマトと乾燥トマト ) メタン発酵により 農業資材として再利用する場合は 疑義資材にならないように 肥料としては原料の成分を検討しながら検討が必要