056 ベーチェット病

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どく拡張する ( 中毒性巨大結腸症 ) こともあります. このような場合には緊急に手術が必要です. また 大腸癌になった場合にも手術が必要になります. 内科的治療が効きにくい難治例や重症例の場合にも 内科的治療のバランスの点から手術を選択することがあります. 手術の方法は 大腸全摘ですが 肛門を残す

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通常の単純化学物質による薬剤の約 2 倍の分子量をもちます. 当初, 移植時の拒絶反応抑制薬として認可され, 後にアトピー性皮膚炎, 重症筋無力症, 関節リウマチ, ループス腎炎へも適用が拡大しました. タクロリムスの効果機序は, 当初,T 細胞のサイトカイン産生を抑制するということで説明されました

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スライド 1

学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot

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56 ベーチェット病 概要 1. 概要 口腔粘膜のアフタ性潰瘍 皮膚症状 眼のぶどう膜炎 外陰部潰瘍を主症状とし 急性炎症性発作を繰り 返すことを特徴とする 2. 原因病因は未だ不明であるが 本病は特定の内的遺伝要因のもとに何らかの外的環境要因が作用して発症する多因子疾患と考えられている 本病は人種を超えて HLA-B51 抗原と顕著に相関することが知られており 本病の疾患感受性を規定している遺伝要因の少なくとも一つは HLA-B51 対立遺伝子であると考えられる 3. 症状 (1) 主症状ア口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍境界鮮明な浅い有痛性潰瘍で 口唇粘膜 頬粘膜 舌 さらに歯肉などの口腔粘膜に出現する 初発症状のことが多く 再発を繰り返し ほぼ必発である イ皮膚症状下腿に好発する結節性紅斑 皮下の血栓性静脈炎 顔面 頚部 背部などにみられる毛嚢炎様皮疹又は痤瘡様皮疹など ウ眼症状両眼性に侵されるぶどう膜炎が主体 症状は発作性に生じ 結膜充血 眼痛 視力低下 視野障害などをきたす エ外陰部潰瘍有痛性の境界鮮明なアフタ性潰瘍で 男性では陰嚢 陰茎 女性では大小陰唇に好発する (2) 副症状関節炎以外の副症状の出現頻度は多くないものの 特に腸管型 血管型 神経型ベーチェット病は生命に脅威をもたらしうる警戒すべきものであり 特殊病型に分類されている 関節炎 副睾丸炎 消化器病変 血管病変及び中枢神経病変がある 消化器病変は典型的には回盲部潰瘍で 炎症性腸疾患との鑑別がしばしば問題になる 血管病変は動静脈系 肺血管系に分布し 動脈瘤や静脈血栓をきたす 中枢神経病変は 髄膜炎 脳幹脳炎を発症する急性型と 片麻痺 小脳症状 錐体路症状など神経症状に認知症などの精神症状をきたす慢性進行型に大別される 4. 治療法 (1) 生活指導齲歯予防などの口腔内ケア 疲労 ストレスの回避 (2) 薬物治療 1 眼症状 : 軽度の前眼部発作時は副腎皮質ステロイドと散瞳薬の点眼を用いる 重度の前眼部発作時には点眼治療に加え 副腎皮質ステロイドの結膜下注射を行う 網膜ぶどう膜炎型には水溶性ステロイドの後部テノン囊下注射を行う またステロイドの全身投与を行う場合もある 眼発作が頻発する症例では 通常はコルヒチンから開始し 効果不十分であればシクロスポリンへの変更 またはインフリキシマブの導入を行う 副作用などのためシクロスポリンの導入が難しい症例や 視機能障害が懸念される重症例には インフリキシマブの早期導入を行う 1

2 皮膚粘膜症状 : 口腔内アフタ性潰瘍 陰部潰瘍には副腎ステロイド局所軟膏 コルヒチンなどの内服 3 関節炎 : コルヒチン 非ステロイド性消炎薬による対症療法 効果がない場合には 副腎皮質ステロイド投与 4 血管病変 : 副腎皮質ステロイドと免疫抑制薬の併用を主体とする 5 腸管病変 : 副腎皮質ステロイドとメサラジンなどを使用し 難治性の場合はアダリムマブなどの TNF 阻害薬を使用する 腸管穿孔 出血は手術適応 6 中枢神経病変 : 脳幹脳炎 髄膜炎などの急性期の炎症は副腎皮質ステロイド治療に反応し 改善することが多い 一方 精神症状 人格変化などが主体とした慢性進行型にはメトトレキセート週一回投与の有効性が報告されている 5. 予後眼症状や特殊病型がない場合は 一般に予後は悪くない 眼病変は かつて糖尿病眼症に次ぐ成人失明の原因であったが インフリキシマブが使用されるようにより 大きく改善している 腸管型に対しても TNF 阻害薬が使用されるほか 血管型 神経型においても TNF 阻害薬の治験が進行しており 有効性が期待されている 要件の判定に必要な事項 1. 患者数 ( 平成 24 年度医療受給者証保持者数 ) 18,636 人 2. 発病の機構不明 ( 遺伝素因と環境因子 ( 外因 ) の関連が示唆されている ) 3. 効果的な治療方法未確立 4. 長期の療養必要 ( 各種臓器合併症を有する ) 5. 診断基準あり 6. 重症度分類ベーチェット病の重症度基準を用いて Ⅱ 度以上を対象とする 情報提供元 臨床調査研究分野 ベーチェット病に関する調査研究 研究代表者横浜市立大学教授石ヶ坪良明 < 診断基準 > 厚生労働省ベーチェット病診断基準 (2010 年小改訂 ) 完全型 不全型及び特殊病変を対象とする 1. 主要項目 (1) 主症状 1 口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍 2 皮膚症状 (a) 結節性紅斑様皮疹 (b) 皮下の血栓性静脈炎 2

(c) 毛嚢炎様皮疹 痤瘡様皮疹参考所見 : 皮膚の被刺激性亢進 3 眼症状 (a) 虹彩毛様体炎 (b) 網膜ぶどう膜炎 ( 網脈絡膜炎 ) (c) 以下の所見があれば (a) (b) に準じる (a) (b) を経過したと思われる虹彩後癒着 水晶体上色素沈着 網脈絡膜萎縮 視神経萎縮 併発白内障 続発緑内障 眼球癆 4 外陰部潰瘍 (2) 副症状 1 変形や硬直を伴わない関節炎 2 副睾丸炎 3 回盲部潰瘍で代表される消化器病変 4 血管病変 5 中等度以上の中枢神経病変 (3) 病型診断の基準 1 完全型 : 経過中に (1) 主症状のうち 4 項目が出現したもの 2 不全型 : (a) 経過中に (1) 主症状のうち 3 項目 あるいは (1) 主症状のうち 2 項目と (2) 副症状のうち 2 項目が出現したもの (b) 経過中に定型的眼症状とその他の (1) 主症状のうち 1 項目 あるいは (2) 副症状のうち 2 項目が出現したもの 3 疑い : 主症状の一部が出現するが 不全型の条件を満たさないもの 及び定型的な副症状が反復あるいは増悪するもの 4 特殊型 : 完全型又は不全型の基準を満たし 下のいずれかの病変を伴う場合を特殊型と定義し 以下のように分類する (a) 腸管 ( 型 ) ベーチェット病 内視鏡で病変 ( 部位を含む ) を確認する (b) 血管 ( 型 ) ベーチェット病 動脈瘤 動脈閉塞 深部静脈血栓症 肺塞栓のいずれかを確認する (c) 神経 ( 型 ) ベーチェット病 髄膜炎 脳幹脳炎など急激な炎症性病態を呈する急性型と体幹失調 精神症状が緩徐に進行する慢性進行型のいずれかを確認する 2. 検査所見 参考となる検査所見 ( 必須ではない ) (1) 皮膚の針反応の陰 陽性 20~22G の比較的太い注射針を用いること (2) 炎症反応赤沈値の亢進 血清 CRP の陽性化 末梢血白血球数の増加 補体価の上昇 (3) HLA-B51 の陽性 ( 約 60%) A26( 約 30%) (4) 病理所見急性期の結節性紅斑様皮疹では 中隔性脂肪組織炎で 浸潤細胞は多核白血球と単核球である 初期に多核球が多いが 単核球の浸潤が中心で いわゆるリンパ球性血管炎の像をとる 全身的血管炎の可能性を示唆する壊死性血管炎を伴うこともあるので その有無をみる (5) 神経型の診断においては 髄液検査における細胞増多 IL-6 増加 MRI の画像所見 ( フレア画像での高信号域や脳幹の萎縮像 ) を参考とする 3. 参考事項 (1) 主症状 副症状とも 非典型例は取り上げない (2) 皮膚症状の (a) (b) (c) はいずれでも多発すれば 1 項目でもよく 眼症状も (a) (b) 3

どちらでもよい (3) 眼症状について虹彩毛様体炎 網膜ぶどう膜炎を経過したことが確実である虹彩後癒着 水晶体上色素沈着 網脈絡膜萎縮 視神経萎縮 併発白内障 続発緑内障 眼球癆は主症状として取り上げてよいが 病変の由来が不確実であれば参考所見とする (4) 副症状について副症状には鑑別すべき対象疾患が非常に多いことに留意せねばならない ( 鑑別診断の項参照 ) 鑑別診断が不十分な場合は参考所見とする (5) 炎症反応の全くないものは ベーチェット病として疑わしい また ベーチェット病では補体価の高値を伴うことが多いが γ グロブリンの著しい増量や 自己抗体陽性は むしろ膠原病などを疑う (6) 主要鑑別対象疾患 (a) 粘膜 皮膚 眼を侵す疾患多型滲出性紅斑 急性薬物中毒 ライター病 (b) ベーチェット病の主症状の 1 つをもつ疾患口腔粘膜症状 : 慢性再発性アフタ症 Lipschutz 陰部潰瘍皮膚症状 : 化膿性毛嚢炎 尋常性痤瘡 結節性紅斑 遊走性血栓性静脈炎 単発性血栓性静脈炎 スウィート病眼症状 : サルコイドーシス 細菌性および真菌性眼内炎 急性網膜壊死 サイトメガロウイルス網膜炎 HTLV-1 関連ぶどう膜炎 トキソプラズマ網膜炎 結核性ぶどう膜炎 梅毒性ぶどう膜炎 ヘルペス性虹彩炎 糖尿病虹彩炎 HLA-B27 関連ぶどう膜炎 仮面症候群 (c) ベーチェット病の主症状および副症状とまぎらわしい疾患口腔粘膜症状 : ヘルペス口唇 口内炎 ( 単純ヘルペスウイルス 1 型感染症 ) 外陰部潰瘍 : 単純ヘルペスウイルス 2 型感染症結節性紅斑様皮疹 : 結節性紅斑 バザン硬結性紅斑 サルコイドーシス スウィート病関節炎症状 : 関節リウマチ 全身性エリテマトーデス 強皮症などの膠原病 痛風 乾癬性関節症消化器症状 : 急性虫垂炎 感染性腸炎 クローン病 薬剤性腸炎 腸結核副睾丸炎 : 結核血管系症状 : 高安動脈炎 バージャー病 動脈硬化性動脈瘤中枢神経症状 : 感染症 アレルギー性の髄膜 脳 脊髄炎 全身性エリテマトーデス 脳 脊髄の腫瘍 血管障害 梅毒 多発性硬化症 精神疾患 サルコイドーシス 4

< 重症度分類 > Ⅱ 度以上を医療費助成の対象とする ベーチェット病の重症度基準 Stage 内容眼症状以外の主症状 ( 口腔粘膜のアフタ性潰瘍 皮膚症状 外陰部潰瘍 ) のみられるも Ⅰ の Stage Ⅰの症状に眼症状として虹彩毛様体炎が加わったもの Ⅱ Stage Ⅰの症状に関節炎や副睾丸炎が加わったもの Ⅲ 網脈絡膜炎がみられるもの失明の可能性があるか 失明に至った網脈絡膜炎およびその他の眼合併症を有するもの Ⅳ 活動性 ないし重度の後遺症を残す特殊病型 ( 腸管ベーチェット病 血管ベーチェット病 神経ベーチェット病 ) である生命予後に危険のある特殊病型ベーチェット病である Ⅴ 中等度以上の知能低下を有す進行性神経ベーチェット病である死亡 (a. ベーチェット病の症状に基づく原因 b. 合併症によるものなど 原因を記載する Ⅵ こと ) 注 1 StageⅠ Ⅱについては活動期 ( 下記参照 ) 病変が1 年間以上みられなければ 固定期 ( 寛解 ) と判定するが 判定基準に合わなくなった場合には固定期からはずす 2 失明とは 両眼の視力の和が 0.12 以下もしくは両眼の視野がそれぞれ 10 度以内のものをいう 3 ぶどう膜炎 皮下血栓性静脈炎 結節性紅斑様皮疹 外陰部潰瘍 ( 女性の性周期に連動したものは除く ) 関節炎症状 腸管潰瘍 進行性の中枢神経病変 進行性の血管病変 副睾丸炎のいずれかがみられ 理学所見 ( 眼科的診察所見を含む ) あるいは検査所見 ( 血清 CRP 血清補体価 髄液所見 腸管内視鏡所見など ) から炎症兆候が明らかなもの 診断基準及び重症度分類の適応における留意事項 1. 病名診断に用いる臨床症状 検査所見等に関して 診断基準上に特段の規定がない場合には いずれの時期のものを用いても差し支えない ( ただし 当該疾病の経過を示す臨床症状等であって 確認可能なものに限る ) 2. 治療開始後における重症度分類については 適切な医学的管理の下で治療が行われている状態で 直近 6ヵ月間で最も悪い状態を医師が判断することとする 3. なお 症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが 高額な医療を継続することが必要な者については 医療費助成の対象とする 5