日本金属学会誌第 80 巻第 1 号 (016)70 75 特集 固体中の水素と材料特性 錯体水素化物固体電解質と硫化物ガラス固体電解質のハイブリッド利用による室温動作可能な 4V 級バルク型全固体リチウム二次電池の開発 宇根本篤 1 野上玄器 田沢勝 谷口貢 折茂慎一 1,3 1 東北大学原子分子材料科学高等研究機構 (WPI AIMR) 三菱ガス化学株式会社新潟研究所 3 東北大学金属材料研究所 J. Japan Inst. Met. Mater. Vol. 80, No. 1 (016),pp.70 75 Special Issue on Hydrogen and Materials Characteristic in Solids III 016 The Japan Institute of Metals and Materials Development of 4 V Class Bulk Type All Solid State Lithium Rechargeable Batteries by a Combined Use of Complex Hydride and Sulfide Electrolytes for Room Temperature Operation Atsushi Unemoto 1,GenkiNogami, Masaru Tazawa, Mitsugu Taniguchi and Shin ichi Orimo 1,3 1 WPI Advanced Institute for Materials Research, Tohoku University, Sendai 980 8577 Mitsubishi Gas Chemicals Co., Ltd., Niigata 950 311 3 Institute for Materials Research, Tohoku University, Sendai 980 8577 We have operated a 4 V class bulk type, all solid state LiCoO /Li battery at room temperature. The composition consisted of a Li 4 (BH 4 ) 3 I complex hydride electrolyte for the electrolyte layer, and a 80Li S0P S 5 sulfide glass for an electrolyte in the positive electrode layer. The battery assembled exhibited a 9 mah g -1 initial discharge capacity at 98 K and 0.1 C. The discharge capacity for the 0 th cycle remained as high as 83 mah g -1, corresponding to a capacity retention ratio of nearly 90. [doi:10.30/jinstmet.jd01601] (Received March, 016; Accepted May, 016; Published July 1, 016) Keywords: complex hydride electrolyte, sulfide electrolyte, bulk type, all solid state battery, room temperature operation 1. 緒言 高水素密度材料である錯体水素化物は, 水素貯蔵 1,), リチウム貯蔵 3,4), および 高速イオン伝導 5 7) といった, エネルギー貯蔵 変換に関連した高い機能性を有する材料群である. 典型的な錯体水素化物である LiBH 4 は, 昇温に伴って 390 K 付近で低温相である正方晶から高温相である六方晶へ構造相転移する 8). この高温相では,log(s/S cm -1 ) =-3 を上回る高いリチウムイオン伝導率を示す 5). 錯体水素化物は, その構成元素に軽元素を選ぶことができるため, 軽量材料を設計することができる. また, リチウムイオンの輸率はほぼ 1 である. 最も卑な電位を有し, 高容量である金属リチウム電極と安定な界面を形成する. 結晶構造中の水素は, 錯イオンの中心元素との強固な共有結合によって安定化されており, 想定される電池の動作温度範囲では熱分解しにくく, 耐熱性に優れる. また, 塑性変形しやすいため, 室温での一軸加圧のみで電解質の緻密体が作製でき, 電極と密着した界面が容易に形成できるといった特長を有する 5 7). Corresponding author, E mail: unemoto@imr.tohoku.ac.jp 近年, この LiBH 4 高温相をはじめとした, 錯体水素化物系固体電解質を利用したバルク型全固体リチウムイオン二次電池の研究開発に関する報告が活発になされている.LiBH 4 は還元剤としても使用されているように, 還元力が強い. このため, 金属リチウムとは安定な界面を形成する 5 7) 一方, LiCoO といった酸化力の強い高電位正極活物質を還元分解して電池の安定動作を阻害する. この課題に対しては, Li 3 PO 4 などを電極活物質の表面へ被覆して, 錯体水素化物固体電解質との直接接触を防ぐことにより, 電池の繰り返し動作が可能となることが Takahashi らから報告されている 9,10). 一方, 筆者らは,LiBH 4 固体電解質のみで電池作製を行う場合,TiS 7,11) や硫黄 1,13) といった, 低電位高容量型正極と金属リチウムを利用した電池構成が望ましいことを提案し, バルク型電池構成で繰り返し動作を実証した. LiBH 4 固体電解質を利用する電池構成では, その可動温度が相転移温度である 390 K 以上 8) に限られている. このため, より幅広い温度領域, とりわけ室温での繰り返し動作が可能な固体電解質の開発や電池構成の提案が望まれている. Maekawa らはこの課題に対し, ヨウ化リチウム LiI などのハロゲン化リチウムを LiBH 4 へ固溶することにより, 高温相を低温領域へ安定化させる方法を提案している. 例えば, J-STAGE Advance Publication date : July 1, 016
第 1 号錯体水素化物固体電解質と硫化物ガラス固体電解質のハイブリッド利用による室温動作可能な 4V 級バルク型全固体リチウム二次電池の開発 71 チウム電池を作製し, 室温において電池性能を評価した.. 実験方法 Li 4 (BH 4 ) 3 I 固体電解質はメカニカルミリングおよび熱処 Fig. 1 Lithium ionic conductivities as a function of inverse temperature: LiBH 5) 4, Li 4 (BH 4 ) 3 I 14), 3LiBH 4 LiCl 14) and 80Li S 0P S 5 (glass). Li 4 (BH 4 ) 3 I は Fig. 1 に示したように,300 K において log(s/s cm -1 )=-4.7 と高いリチウムイオン伝導率を示す 14).Sveinbjäornsson らは,Li 4 Ti 5 O 1 の多孔質薄膜電極と Li 13/16 (BH 4 ) 13/16 I 3/16 固体電解質, 金属リチウム電極を利用した全固体電池を作製し,333 K において繰り返し動作することを報告している 15).Yoshida らは最近,Li 4 (BH 4 ) 3 I 固体電解質を電極層内部で Li 4 Ti 5 O 1 と混合し, 電極層内部の電極担持量を増やしたバルク型の電池構成において, 室温 (96 K) だけでなく,43 K といった高温においても繰り返し動作が可能であることを報告している 16). このように, 還元力の強い錯体水素化物固体電解質であっても, その特長に基づいた適切な電池設計により, 室温での動作が可能であり, 高電位正極を備え, 繰り返し動作が可能なバルク型全固体リチウム電池が開発できる可能性がある. 代表的な硫化物固体電解質である Li S と P S 5 からなるガラス固体電解質は, 高いリチウムイオン伝導率を有する ( 例えば,80Li S 0P S 5 ガラス固体電解質の室温でのイオン伝導率および活性化エネルギーはそれぞれ log(s/s cm -1 )= -3.8 および 34 kj mol -1 である 17) ). 一連の材料は, 塑性変形性に優れるため, 室温での加圧のみで電池作製が可能である.4V 級正極 LiCoO を備えるバルク型全固体リチウム電池が室温において繰り返し動作することが報告されている 18). 硫化物系固体電解質と LiCoO の界面では, リチウムイオンが欠乏した空間電荷層が形成されて界面抵抗が高くなること 19 ), 電池の繰り返し動作に伴って, 構成元素の相互拡散により抵抗層が形成される 3) ことが報告されている. この課題は, 例えば LiNbO 3 などの固体電解質を LiCoO 表面へコーティングすることにより解決できる. 以上の内容を踏まえ, 本研究では, 錯体水素化物固体電解質と硫化物固体電解質をハイブリッド利用し, 室温での動作が可能な 4V 級バルク型全固体リチウム二次電池の開発を目的とした.4V 級正極 LiCoO 表面へ LiNbO 3 をおよそ 0 nm の厚みで被覆した正極活物質と, 金属リチウム負極を利用し, 正極層内部の固体電解質には 80Li S 0P S 5 を, 電解質層には Li 4 (BH 4 ) 3 I をそれぞれ利用したバルク型全固体リ 理を施すことにより合成した 14). 出発原料には LiBH 4 ( 90, シグマ アルドリッチ社製 ) および LiI(99.999, シグマ アルドリッチ社製 ) を使用した. これらの出発原料をあらかじめめのう乳鉢とめのう乳棒により混合した後, 内容量 45 ml のポットへ q7mmのボール 0 個とともに封入し, 回転速度 400 rpm にて 5 時間ミリング処理 (P 7, フリッチュ社製 ) を施した. 得られた粉末の X 線回折測定 (XRD, X'pert PRO, パナリティカル社製 ) およびラマン分光測定 (Nicolet Almega XR, サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 ) の結果から, 合成した試料からは LiBH 4 高温相 8) 以外のピークは現れなかった. Li 4 (BH 4 ) 3 I の酸化側での安定性を評価するため,TiS 正極と金属リチウム負極を利用したバルク型全固体リチウム電池を作製した. 筆者らはこれまで,TiS 正極, 金属リチウム負極および LiBH 4 を備えるバルク型全固体リチウムイオン電池が,393 K において 300 回以上繰り返し動作することを報告している 11). この結果を踏まえ, ヨウ素を含有する固体電解質が電池特性に及ぼす影響について検討するにあたり, 類似の電池構成で性能を比較するのが適切であると考えた. これに加え, 比較のために正極内で混合する固体電解質として LiBH 4 を用いた電池も作製した. TiS と Li 4 (BH 4 ) 3 I あるいは LiBH 4 がそれぞれ重量比 40 60 となるよう秤量して, めのう乳ばちとめのう乳棒により混合して混合正極とした.Li 4 (BH 4 ) 3 I あるいは LiBH 4 固体電解質粉末をそれぞれ 5 mg あるいは 0 mg 秤量して直径 8mmのダイスにセッティングし,60 MPa で一軸加圧した. この後, 前記混合正極を 6mg 秤量して固体電解質上に移動した後, 正極層と固体電解質層を密着させるため, 40 MPa でさらに一軸加圧することで, 正極層と固体電解質層の二層からなる緻密体を得た. 正極の反対側に金属リチウム箔を配置して負極とした. 測定温度は 393 K で, 放充電レートを 0.05 C( 電流密度 57 macm - ) として電池性能を評価した (580 Battery Test System, Scribner Associates 社製 ). 作製した全固体電池の外観や電気化学測定の構成については文献を参考にされたい 11 13). 電池測定前後の正極層について,Ga イオンビーム (FIB, FB00, 日立ハイテクノロジーズ社製 ) により断面を加工してから, 電解放射型走査電子顕微鏡 (FE SEM, SU9000, 日立ハイテクノロジーズ社製 ) およびエネルギー分散型 X 線分析装置 (EDX, Apollo XLT, アメテック社製 ) にてそれぞれ微細構造観察と元素分布測定を行った. 80Li S 0P S 5 ガラス固体電解質は既報 3) に倣ってメカニカルミリング法により合成した. すなわち,Li S(98, シグマ アルドリッチ社製 ) および P S 5 (99, シグマ アルドリッチ社製 ) の粉末を, めのう乳鉢とめのう乳棒を使用してあらかじめ混合しておき, 内容量 45 ml のジルコニアポットへ q5mmのジルコニアボール 160 個とともに封入し, 回
7 日本金属学会誌 (016) 第 80 巻 転速度 510 rpm にて 10 時間メカニカルミリング処理を施した. 得られた試料の XRD 測定では, 非晶質由来のハローパターンのみが現れ, 目的のガラス固体電解質が得られたことを確認した. 作製したガラス固体電解質のイオン伝導率を交流二端子法 (353 80 ケミカルインピーダンスメータ, 日置電機社製 ) により,98 から 43 K の温度範囲で評価した. LiCoO 表面へ, 転動流動コーティング装置 (MP 01, パウレック社製 ) を利用して,LiNbO 3 をコーティングした 19,0) ( 以下,LiNbO 3 coated LiCoO と表記する ). LiNbO 3 coated LiCoO と導電助剤のケチェンブラック (KB) および 80Li S 0P S 5 ガラス固体電解質を重量比 40 60 6 となるよう混合して正極合剤とした.Li 4 (BH 4 ) 3 I 固体電解質粉末を 101.1 mg 秤量して直径 10 mm のダイスにセッティングし,0 MPa でプレスした. この後, 正極合剤を 11.5 mg 秤量し, 先にプレスした固体電解質上に移動し, 40 MPa にて一軸成型した. 正極の反対側に金属リチウム箔を配置して負極とした. 電池測定は 97 K において, 充放電レート 0.1 C( 電流密度 73 macm - ) にて行った (VMP3, BioLogic 社製 ).LiNbO 3 coated LiCoO 正極と KB および Li 4 (BH 4 ) 3 I からなる混合物緻密体を作製し,Ga イオンビームにて断面加工した試料ついて,FE SEM および EDX を利用して微細構造観察と元素分布測定を行った. TiS +xli + +xe - Li x TiS ( 1 ) 右への反応は放電反応を, 左への反応は充電反応をそれぞれ表す.Li x TiS のリチウム濃度 x が 0 から 1 の範囲で変化する場合, 理論容量は 39 mah g -1 となる.Fig. 3(a) に, バルク型全固体電池 TiS /Li 4 (BH 4 ) 3 I Li 4 (BH 4 ) 3 I Li の放充電プロファイルを示した. 初回放電容量は 49 mah g -1 であったのに対し, 回目の放電容量は 141 mah g -1 であった. この差の要因として, 電池の動作温度 393 K において, Li x TiS を形成する TiS と Li 4 (BH 4 ) 3 I の固相反応, すなわち自己放電反応が考えられる 7,11). 一方,15 回目の放電容量は 76 mah g -1 と, 繰り返し動作に伴って徐々に容量劣化 3. 結果および考察 電池測定前の正極層断面の FE SEM 像およびヨウ素, チタンおよび硫黄の分布をそれぞれ Fig. (a) (d) に示した. ここで見られるように, 室温での一軸加圧のみで成型したにもかかわらず, 正極活物質 TiS と固体電解質 Li 4 (BH 4 ) 3 I が密着しており, スムーズな電荷移動反応を促す界面が形成されていることがわかった. このような微細構造は,TiS と LiBH 4 からなる混合正極での界面と同様であり 7,11),LiBH 4 と LiI の固溶体 Li 4 (BH 4 ) 3 I であっても, 錯体水素化物が本来持つ優れた加工性 ( 塑性変形性 ) が失われないことを示している. TiS は, 以下の電気化学反応に従って電池反応が進行する 4,5). Fig. 3 Performance of the bulk type all solid state batteries operated at 393 K and 0.05 C: (a) TiS /Li 4 (BH 4 ) 3 I Li 4 (BH 4 ) 3 I Li, and (b) TiS /LiBH 4 Li 4 (BH 4 ) 3 I Li. Fig. Microstructure and element distributions of the composite positive electrode layer, TiS /Li 4 (BH 4 ) 3 I: Before the battery test; (a) cross sectional FE SEM image, and distributions of (b) I, (c) Ti and (d) S, and after the battery test; (e) cross sectional FE SEM image, and distributions of (f) I, (g) Ti and (h) S.
第 1 号錯体水素化物固体電解質と硫化物ガラス固体電解質のハイブリッド利用による室温動作可能な 4V 級バルク型全固体リチウム二次電池の開発 73 した. サイクル数の増加に伴って電圧降下が大きくなっていることから, 繰り返し電池動作中に電池内部の抵抗が大きくなり, この結果として, 放電容量が小さくなったことが考えられる. 正極層で混合する固体電解質を LiBH 4 としたバルク型全 固体電池では, 電池の動作温度である 393 K において TiS と LiBH 4 との固相反応により TiS へ Li がドープされるため ( 自己放電反応 ), 初回放電容量こそ 61 mah g -1 と低かったが, 回目の放電容量は 18 mah g -1 と理論容量に近い高い値が得られた. 初回充電時のみ, 容量は 419 mah g -1 と過充電となった. これは TiS と LiBH 4 の固相反応の進行が不十分であるために,TiS 表面で未反応の LiBH 4 が酸化分解したことが要因である 11).15 回目の放電容量は 0 mah g -1 と繰り返し動作に伴う顕著な容量劣化は見られなかった. このことは,Fig. 3(a) で見られたバルク型全固体 TiS /Li 4 (BH 4 ) 3 I Li 4 (BH 4 ) 3 I Li 電池のサイクル動作に伴う容量劣化が,TiS 正極と Li 4 (BH 4 ) 3 I 固体電解質界面の安定性に起因することを示唆している. 電池動作が TiS と Li 4 (BH 4 ) 3 I との界面安定性に及ぼす影響について, 電池動作後の正極層の微細構造および元素分布の観点から検討した.Fig. (e) (h) にそれぞれ, 電池試験後の正極層の断面 FE SEM 像と, ヨウ素, チタンおよび硫黄の元素分布を示した. 電池試験後には,TiS と Li 4 (BH 4 ) 3 I 界面にヨウ素が濃集していることがわかった. Fig. 3(a) に示した放充電プロファイルから, サイクル数の増加に伴って電圧降下が大きくなっていることから, Li 4 (BH 4 ) 3 I が TiS との固相反応により分解して界面近傍のヨウ素濃度が高まり, この結果として, ヨウ素を含む化合物が析出して高抵抗につながったことが考えられる. これを抑制して電池の安定動作を実現するためには, このような固相反応を抑制する固体電解質の利用が有効であることがわかった. 硫化物固体電解質を利用したこれまでの全固体電池に関する報告では,4V 級正極である LiCoO 表面へ固体電解質をコーティングして緩衝層とすることにより, 低抵抗かつ繰り返し動作可能なバルク型全固体電池が作製できることが報告されている 19 3). 転動流動コーティング装置により作製した LiNbO 3 coated LiCoO 粒子の FE SEM 像を Fig. 4(a) および (b) に, コバルト, ニオブ, 炭素およびヨウ素の元素マッピングをそれぞれ Fig. 4(c) (f) に示した. これらの結果から,LiCoO 表面へ, 厚みがおよそ 0 nm 程度の LiNbO 3 が均一にコーティングされていることがわかった. 本研究で作製した 80Li S0P S 5 ガラス固体電解質のリチウムイオン伝導率を Fig. 1 に示した.98 K におけるリチウムイオン伝導率と活性化エネルギーはそれぞれ log(s/s cm -1 )= -4.0 と 9 kj mol -1 であり, 既報 17) とよく一致していた. LiCoO は, 以下の電気化学反応に従って電池反応が進行する 6). LiCoO Li 1-x CoO +xli + +xe - ( ) 右への反応は充電反応を, 左への反応は放電反応をそれぞれ表す. 充電上限電圧を 4. V とした場合,x は 0 から 0.5 に変化することが知られており, この時の比容量は 137 mah Fig. 4 Microstructure of LiNbO 3 coated LiCoO in the Li 4 (BH 4 ) 3 I, KB and LiNbO 3 coated LiCoO 3 compact: (a) and (b) cross sectional FE SEM image, and distributions of (c) Co, (d) Nb, (e) Cand(f) I. g -1 に相当する. 作製した 4V 級バルク型全固体リチウム電池の 98 K での充放電プロファイルを Fig. 5(a) に, 放電容量とクーロン効率のサイクル依存性を Fig. 5(b) にそれぞれ示した. 当初の期待通り, 本研究で作製したバルク型電池は 4V 付近で電池動作した.LiCoO の Li 量変化に由来する充電および放電のプラトーがそれぞれ 4.05 V および 3.8 V 付近に現れた. 初回と 0 回目の放電容量はそれぞれ 9 mah g -1 および 83 mah g -1 であり, 放電容量維持率はおよそ 90 と顕著な容量劣化がなく繰り返し動作した. 初回のクーロン効率 (= 放電容量 / 充電容量 ) は 75 であったが, サイクル目以降は 97 から 100 の範囲で推移しており, 繰り返し動作に対して顕著な副反応が伴うことなく動作したことがわかった. 以上のように, 電気化学的安定性の異なる固体電解質をハイブリッド利用することにより, それぞれ単独の材料群だけでは動作困難な電池構成であっても繰り返し動作が可能であることがわかった. 川治らは最近, 錯体水素化物固体電解質と酸化物固体電解質を併用することで, 耐熱性に優れる硫黄フリーの 4V 級バルク型全固体リチウムイオン電池の動作を実証した 7). 最近,Li S P S 5 ガラスへ LiBH 4 を分散させた固体電解質は,98 K において log(s/s cm -1 )=-.8 と高いイオン伝導率を有することが報告された 8). 加えて, 見かけの組成 90LiBH 4 10P S 5 の結晶相は,300 K において,log(s/S cm -1 )=-3.0 のリチウムイオン伝導率を有することが報告された 9). これらの材料では, 少なくとも室温以上では構
74 日本金属学会誌 (016) 第 80 巻 Fig. 5 Performance of the bulk type all solid state battery, LiNbO 3 coated LiCoO /KB/80Li S 0P S 5 Li 4 (BH 4 ) 3 I Li, operated at 98Kand0.05C:(a) Typical charge discharge profiles, and (b) cycle performance. 造相転移に由来するイオン伝導率の不連続変化がない. このため, これらの固体電解質を使用することにより幅広い温度での電池駆動が可能な電池を作製できる可能性がある. 一方, [B 1 H 1 ] - や [CB 11 H 1 ] - に代表される籠状のクラスター型アニオンを含有する Closo borane 系あるいは Closo carbaborane 系錯体水素化物のなかで, 高いリチウムイオン伝導率 30 33) やナトリウムイオン伝導率 30,3 35) を有する材料が見つかっており, このような固体電解質を利用した全固体電池が動作実証されている 31,3). 錯体水素化物を基盤とする固体電解質開発では, 水素を含有する錯アニオンのダイナミクスがカチオン輸送速度と密接に関連している点に特徴がある 6,7,36 38). この知見を踏まえ, 結晶構造や組成の観点から材料の多様化が急速に進んでおり, 今後の発展が大いに期待される. 4. 結論本研究では, 錯体水素化物固体電解質と硫化物固体電解質をハイブリッド利用することにより, 室温での動作が可能な 4V 級バルク型全固体リチウムイオン二次電池の開発とその動作を実証した. 金属リチウム負極を使用するため, 固体電解質層には還元力の強い Li 4 (BH 4 ) 3 I を利用した.LiNbO 3 を LiCoO 粒子表面に 0 nm の厚みで均一コーティングし, 80Li S 0P S 5 ガラス固体電解質と導電助剤の KB を混合して正極層に利用した. この電池は 98 K, 充放電レート 0.1 C において繰り返し動作が可能であった. 初回および 0 回目の放電容量はそれぞれ 9 mah g -1 および 83 mah g -1 であり, 放電容量維持率はおよそ 90 と高安定な電池であった. 研究支援者の佐藤清人氏, 大宮晴美氏および割舟奈穂子氏に感謝の意を表します. 本研究は, 東北大学 WPI AIMR ターゲットプロジェクト 4, 東北大学金属材料研究所先端エネルギー材料理工共創センター, 科研費 基盤研究 (S)( 課題番号 50911) および科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発 (ALCA) により実施されました. 文 献 1) L. Schlapbach and A. Zäuttel: Nature 414(001) 353 358. ) S.Orimo,Y.Nakamori,J.R.Eliseo,A.Zäuttel and C. M. Jensen: Chem. Rev. 107(007) 4111 413. 3) W. Zaäƒdi, J. P. Bonnet, J. Zhang, F. Cuevas, M. Latroche, S. Couillaiud, J. L. Bobet, M. T. Sougrati, J. C. Jumas and L. Aymard:Int.J.HydrogenEnerg.38(013) 4798 4808. 4) J. Zhang, W. Zaäƒdi, V. Paul Boncour, K. Provost, A. Michalowicz, F. Cuevas, M. Latroche, S. Belin, J. P. Bonnet and L. Aymard: J. Mater. Chem. A 1(013) 4706 4717. 5) M. Matsuo, Y. Nakamori, S. Orimo, H. Maekawa and H. Takamura: Appl. Phys. Lett. 91(007) 4103. 6) M. Matsuo and S. Orimo: Adv. Energ. Mater. 1(011) 161 17. 7) A. Unemoto, M. Matsuo and S. Orimo: Adv. Funct. Mater. 4 (014) 67 79. 8) J Ph.Soulie,G.Renaudin,R.CernyandK.Yvon:J.Alloy Compd. 346(00) 00 05. 9) K.Takahashi,K.Hattori,T.Yamazaki,K.Takada,M.Matsuo, S. Orimo, H. Maekawa and J. Takamura: J. Power Sources 6 (013) 61 64. 10) K. Takahashi, H. Maekawa and H. Takamura: Solid State Ionics 6(014) 179 18. 11) A. Unemoto, T. Ikeshoji, S. Yasaku, M. Matsuo, V. Stavila, T. J.UdovicandS.Orimo:Chem.Mater.7(015) 5407 5416. 1) A. Unemoto, S. Yasaku, G. Nogami, M. Tazawa, M. Taniguchi, M. Matsuo, T. Ikeshoji and S. Orimo: Appl. Phys. Lett. 105 (014) 083901. 13) A. Unemoto, C. Chen, Z. Wang, M. Matsuo, T. Ikeshoji and S. Orimo: Nanotechnology 6(015) 54001. 14) H.Makekawa,M.Matsuo,H.Takamura,M.Ando,Y.Noda,T. Karahashi and S. Orimo: J. Am. Chem. Soc. 131(009) 894 895. 15) D. Sveinbjäornsson, A. S. Christiansen, R. Viskinde, P. Norby andt.vegge:j.electrochem.soc.161(014) A143 A1439. 16) K. Yoshida, S. Suzuki, J. Kawaji, A. Unemoto and S. Orimo: Solid State Ionics 85 (016) 96 100. 17) A. Hayashi, S. Hama, H. Morimoto, M. Tatsumisago and T. Minami:J.Am.Chem.Soc.84(001) 477 479. 18) A. Sakuda, A. Hayashi and M. Tatsumisago: Chem. Mater. (010) 949 956. 19) N. Ohta, K. Takada, L. Zhang, R. Ma, M. Osada and T. Sasaki: Adv. Mater. 18(006) 6 9. 0) N. Ohta, K. Takada, I. Sakaguchi, L. Zhang, R. Ma, K. Fukuda, M. Osada and T. Sasaki: Electrochem. Commun. 9(007) 1486 1490. 1) K. Takada: Acta Mater. 61(013) 759 770. ) J. Haruyama, K. Sodeyama, L. Han, K. Takada and Y. Tateyama: Chem. Mater. 6(014) 448 455. 3) A.Sakuda,A.HayashiandM.Tatsumisago:Sci.Rep.3(013) 61. 4) M. S. Whittingham: Science 19(1976) 116 117. 5) M. S. Whittingham: Prog. Solid State Chem. 1(1978) 41 99. 6) T. Ohzuku and A. Ueda: J. Electrochem. Soc. 141(1994) 97
第 1 号錯体水素化物固体電解質と硫化物ガラス固体電解質のハイブリッド利用による室温動作可能な 4V 級バルク型全固体リチウム二次電池の開発 75 977. 7) J. Kawaji, S. Suzuki, K. Yoshida, A. Unemoto and S. Orimo: Extended Abstracts of the 56 th Battery Symposium in Japan (015) pp. 463. 8) A. Yamauchi, A. Sakuda, A. Hayashi and M. Tatsumisago: J. Power Sources 44(013) 707 710. 9) A.Unemoto,H.Wu,T.J.Udovic,M.Matsuo,T.Ikeshojiand S. Orimo: Chem. Commun. 5(016) 564 566. 30) L. He, H. W. Li, H. Nakajima, N. Tumanov, Y. Filinchuk, S. J. Hwang, M. Sharma, H. Hageman and E. Akiba: Chem. Mater. 7(015) 5483 5486. 31) J. A. Teprovich Jr., H. Colon Mercado, A. L. Washington II, P. A. Ward, S. Greenway, D. M. Missimer, H. Hartman, J. Velten, J. H. Christian and R. Zidan: J. Mater. Chem. A 3(015) 853 859. 3) W.S.Tang,A.Unemoto,W.Zhou,V.Stavila,M.Matsuo,H. Wu,S.OrimoandT.J.Udovic:Energ.Environ.Sci.8(015) 3637 3645. 33) W.S.Tang,M.Matsuo,H.Wu,V.Stavila,W.Zhou,A.A. Talin, A. V. Soloninin, R. V. Skoryunov, O. A. Babanova, A. V. Skripov, A. Unemoto, S. Orimo and T. J. Udovic: Adv. Energ. Mater. (In press), DOI: 10.100/aenm.015037. 34) T. J. Udovic, M. Matsuo, A. Unemoto, N. Verdal, V. Stavila, A. V. Skripov, J. J. Rush, H. Takamura and S. Orimo: Chem. Commun. 50(014) 3750 375. 35) T.J.Udovic,M.Matsuo,W.S.Tang,H.Wu,V.Stavila,A.V. Soloninin, R. V. Skryunov, O. A. Babanova, A. V. Skripov, J. J. Rush,A.Unemoto,H.TakamuraandS.Orimo:Adv.Mater.6 (014) 76 766. 36) T. Ikeshoji, E. Tsuchida, K. Ikeda, M. Matsuo, H. W. Li, Y. Kawazoe and S. Orimo: Appl. Phys. Lett. 95(009) 1901. 37) T. Ikeshoji, E. Tsuchida, T. Morishita, K. Ikeda, M. Matsuo, Y. KawazoeandS.Orimo:Phys.Rev.B83(011) 144301. 38) P. Martelli, A. Remhof, A. Borgschulte, R. Ackermann, T. Sträassle,J.P.Embs,M.Ernst,M.Matsuo,S.OrimoandA. Zäuttel: J. Phys. Chem. A 115(011) 539 5334.