31009 ビタミン C の保存と損失に関する研究 要旨実験 Ⅰ: ビタミン C が時間や熱などの影響を受けて損失することを知り どのような状態に置くとより損失するのか追及することを目的とする カボチャを用い インドフェノール法 ( 中和滴定 ) でビタミン C 量の変化を求めようとしたところ 結果に誤差が生じ正確な値を導くことができなかった そこで より精密に値を求めることができるヒドラジン法 ( 吸光度によってビタミン C 量を測定する ) を適用することにした また カボチャは大きさ 形など条件を統一するのが難しいとわかった為 ジャガイモに変更した 実験 Ⅱ: 焼く 煮沸の各方法において 加熱時間によるビタミン C 量の変化を調べるというもの 調べた結果 焼くと煮沸では どちらも時間とともにビタミン C 量が減少し ビタミン C が水溶性であることから 焼くより茹でるほうが損失する量が多いということが分かった 実験 Ⅲ: ジャガイモと小松菜を用いて 冷凍保存によるビタミン c 含有量の変化を調べた 生と煮沸したものを それぞれ小分けにし冷凍庫で保存した 保存直前 保存 2 週間後 4 週間後 6 週間後 それぞれビタミン C の含有量測定し グラフを作成した 1. 目的 ビタミン C 量の変化を調べる 2. 使用した器具実験 Ⅰ (1) コニカルビーカービュレットメスフラスコホールピペット (2) 1% デンプン水溶液 100ml L-アスコルビン酸標準溶液 100ml 0.1% ヨウ素ヨウ化カリウム水溶液 200ml カボチャ実験 Ⅱ (1) ホモゲナイザー 遠心分離機 分光光度計 恒温水槽 (2)5% メタリン酸 0.1% インドフェノール溶液 2% チオ尿素 メタリン酸溶液 85% 硫酸溶液 2%2,4-ジニトロフェニルヒドラジン DNP 溶液 アスコルビン酸標準溶液 ジャガイモ 3. 研究 実験の手順実験 Ⅰ (1) カボチャを冷蔵 冷凍の2つの方法で保存する (2) L-アスコルビン酸標準溶液をホールピペットを用いて三角フラスコに入れ デンプン水溶液を加える 09-1
( 滴定を3 回行うため 同じものを3 個作る ) (3) ヨウ素ヨウ化カリウム水溶液をビュレットに入れ 滴下を行う ( 中和滴定 ) (4) 青紫色に変色した時点を終了とする (5) 用意したカボチャの3 倍量の水を入れ ミキサーで液状にし デンプン水溶液を加える ( 同じものを3 個作る ) (6) ヨウ素ヨウ化カリウム水溶液をビュレットに入れ 滴下を行う ( 中和滴定 ) (7) 青紫色に変色した時点を終了とする 上記の実験から L- アスコルビン酸の結果を基準として カボチャ水溶液の変化を比べる * 使用したヨウ素ヨウ化カリウムの量から カボチャに含まれるビタミン C の量を求める 実験 Ⅱ (1) 試料の精秤 : 試料 ( ジャガイモ ) を厚さ 5 mm 質量を 5gに統一し それぞれ加熱 煮沸する 加熱時間 5 分 10 分 煮沸時間 100ml の蒸留水の入ったビーカーにいれ 5 10 分煮沸させる ( 写真 2) 5% メタリン酸を試料の5 倍量加え ホモゲナイザーにて摩砕後 遠心分離して上澄み液を得る 残渣に 5% メタリン酸溶液を加えて洗浄し 再び遠心分離して上澄み液を得る (2) 定容 : 上澄み液をあわせ 5% メタリン酸で 100ml に定容し 試料溶液とする (3) 酸化 : 試験管を試料の (a) 層ビタミン C 定量用 (b)dda( 酸化型ビタミン C) 定量用 (d) 空試験用の 3 本 (c) 各標準液のビタミン C 定量用 (e) 空試験用の2 本 ( 濃度の異なる標準液を測定する時は数本 ) 用意する (a),(c) には インドフェノール溶液 1 滴を混和し 液が紅色になったのを確かめる (a)~(e) に表 1 の試薬を順次添加してよく混和する (4) オサゾンの生成 :(a)~(c) の定量用の試験管にふたをして 37 の恒温水槽で 3 時間温置してオサゾンを生成させる (5) オサゾンの溶解 : 氷水中で冷却しながら (a)~(e) の試験管に 85% 硫酸溶液を徐々に加えて よく混和する さらに (d) (e) は氷水中で DNP 溶液を加えて よく混和する ( 画像 1) (6) 吸光度測定 : 分光光度計で波長 520nm における吸光度 Aa~Ae を測定する (7) 検量線作成 : 各ビタミン C 標準溶液 (2.5~25μg/ml) の吸光度 Ac からそれぞれの空試験用の吸光度 Ae を引いた値より 検量線を作成する (8) 計算 : 試料中の総ビタミン C および酸化型ビタミン C 量は それぞれの吸光度から空試験の吸光度を引いた値より 検量線から求める 試料 100g 中のビタミン C( mg ) 量は 次式によって求める 総ビタミン C( mg /100g)=C1 D/1000 100/S 酸化型ビタミン C( mg /100g)=C2 D/1000 100/S 還元型ビタミン C( mg /100g)= 総ビタミン C 量 ( mg /100g)- 酸化型ビタミン C 量 ( mg /100g) D1 : 検量線から求めた総ビタミン C のビタミン C 量 (μg) D : 試料溶液の総量 (ml) 09-2
酸化チオ尿素 メタリン酸溶液 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0 オサゾン温置反応 (37 3 時間 ) 冷蔵庫溶解C2 : 検量線から求めた酸化型ビタミン C のビタミン C 量 (μg) S : 試料の採取量 (g) 表 1 ヒドラジン法によるビタミン C 定量の試薬添加量 (ml) 試薬 試料総 (a) 試料 DDA (b) 標準総 (c) 試料空 d) 標準空 (e) 試料溶液 2.0 2.0-2.0 - 各ビタミン C 標準溶液 - - 2.0-2.0 インドフェノール溶液 1 滴 - 1 滴 - - 生成DNP 溶液 1.0 1.0 1.0 - - 85% 硫酸溶液 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 DNP 溶液 - - - 1.0 1.0 吸光度 (520 nm ) Aa Ab Ac Ad Ae 滴定 ( 写真 1) 煮沸 ( 写真 2) 恒温温置 分光光度計 画像 1 09-3
実験 Ⅲ 実験方法 : 実験 Ⅱと同様にヒドラジン法を用いる 実験試料 : ジャガイモ 小松菜 * ジャガイモ (1) 皮をむき半分に切って 1L の水道水で冷時より 30 分間加熱する (2) それと生の状態のものをそれぞれ 10gずつ小分けにし ポリエチレン製袋にいれ 冷凍庫で保存した 保存期間は2 週間 4 週間 6 週間とする * 小松菜 (1)5 倍重量の沸騰水道水で 30 秒間加熱し 流水で冷却後手絞りする (2) それと生の状態のものをそれぞれ 10gずつ小分けにし ポリエチレン製袋にいれ 冷凍庫で保存した 保存期間は2 週間 4 週間 6 週間とする 4. 結果 実験 Ⅰ ビタミン C 量変化 ビタミン C 量 50 40 30 20 10 0 1 2 3 5 週間 冷蔵冷凍 冷蔵の場合 1 週間から 2 週間にかけて ビタミン C 量が減少している 冷凍も同様に減少しているが 3 週間から 5 週間にかけて 増加している 実験 Ⅱ (1) 基準吸光度グラフ 09-4
(2) 結果 検量線から値をもとめた結果 生の状態のじゃがいもと調理後のものを比べると ビタミン C 量が減少している また ただ加熱する 焼く よりも水とともに加熱する 煮沸 の方が 減少量が大きい ともに 時間の経過によっても減少した 実験 Ⅲ (1) 吸光度グラフ実験 Ⅱと同様のものを使用する (2) 結果冷凍保存におけるビタミンc 含量の変化 ジャガイモより小松菜のほうが ビタミン c 含量が多い どちらも 生のまま冷凍保存するよりも 煮沸した後の保存したほうが減少量の推移が緩やかである ジャガイモのほうが 煮沸後のビタミン c 含量の減少が少ない 5. 結果に対する考察 わかったこと 09-5
実験 Ⅰ 冷凍より冷蔵のほうが 減少量が少ない しかし 3 週間目から増加している これは 中和滴定の方法に不備があったことによるものだと考えられる よってもっと精密に調べることができる方法を探すことが 必要である 実験 Ⅱ ビタミン C は熱に弱く 水溶性であるので 焼く 煮沸 の方法で減少する 煮沸 の方が減少量が大きい ビタミン C は 加熱時間によっても損失量が増加する 実験 Ⅲ 小松菜の方がジャガイモよりビタミン C 量は多いが ジャガイモの場合主成分であるデンプンにビタミン C が守られるため加熱による損失は少ないことが分かっている 生のまま冷凍保存するよりも煮沸後の方が減少量が緩やかであったことから 生で冷凍保存することは適していないと分かった また 小松菜のような葉野菜など デンプンを含まない野菜は ゆでた時の損失量が比較的大きいが 保存中は減少量が緩やかになる傾向がみられたことから やはり一度加熱処理してから冷凍保存する方がビタミン C 量を保つうえではよいと分かった 5 感想実験 Ⅰでは インドフェノール法を用いたが 目分量に差があったため 実験結果に誤差が生じてしまった 途中までは順調だったが 残念だった これを踏まえ ヒドラジン法に変更した 手間と時間がかかったが より正確な値が出て うれしかった なかなか思うような値が出ず焦ったが 何度も同じ実験を繰り返したことで 予想したような値が出て ほっとした この実験を通して 日常生活の中にも活かすことができるビタミン C についての知識を得られたので良かった 実験に協力して頂いた岐阜女子大学舘和彦先生に感謝します 7 参考文献 引用文献 山口美代子 樋上純子 : 園田学園女子大学論文集 30-Ⅱ(1995) 元山正 : 調理科学ノート 09-6