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☆配布資料_熊本地震検証

2 物的支援の実施について 物資については 各避難所への搬送などの課題が指摘されているが 被災自治体には地震発生直後から国や周辺自治体等による物資供給が行われていたため 都など他地域への支援要請は限定的であった こうした状況にあって 都は 区市町村等関係機関との緊密な連携により被災地からの要請に基づ

第 1 章熊本地震の概要 執筆 : 阿部直樹 ( 国立研究開発法人防災科学技術研究所 ) 1-1 熊本地震動の概要 2016 年 4 月 14 日 21 時 26 分頃 熊本県熊本地方の深さ約 11km を震源とする M6.5 の地震が発生し 熊本県上益城郡益城町において震度 7を観測した また約

アンケート調査の概要 目的東南海 南海地震発生時の業務継続について 四国内の各市町村における取り組み状況や課題等を把握し 今後の地域防災力の強化に資することを目的としてアンケート調査を実施 実施時期平成 21 年 11 月 回答数 徳島県 24 市町村 香川県 17 市町 愛媛県 20 市町 高知県

30 第 1 部現地における災害応急活動 阿蘇大橋付近の被害状況 ( 熊本県阿蘇郡南阿蘇村 ) 熊本城の被害状況 ( 熊本県熊本市 ) 2

平成17年7月11日(月)

資料1 受援計画策定ガイドラインの構成イメージ

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特集大規模自然災害からの復旧 復興 参考 警察が検視により確認している死者数 50 名 災害による負傷の悪化または避難生活等における身体的負担による死者数 106 名 6 月 日に発生した豪雨による被害のうち熊本地震と関連が認められた死者数 5 名建物被害全壊 8,360 棟, 半壊 3

<ハード対策の実態 > また ハード対策についてみると 防災設備として必要性が高いとされている非常用電源 電話不通時の代替通信機能 燃料備蓄が整備されている 道の駅 は 宮城など3 県内 57 駅のうち それぞれ45.6%(26 駅 ) 22.8%(13 駅 ) 17.5%(10 駅 ) といずれも

平成 28 年熊本地震における対応 平成 28 年熊本地震 ( 前震 :4/14 本震 :4/16) において 電力 ガス等の分野で供給支障等の被害が発生 関係事業者が広域的な資機材 人員の融通を実施するなど 迅速な復旧に努めた結果 当初の想定よりも 早期の復旧が実現 また 復旧見通しを早い段階で提

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スライド 1

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4:10 防災科学技術研究所第 2 回災害対策本部会議を開催 各班による状況報告による情報共有等を実施 9:34 防災科学技術研究所第 3 回災害対策本部会議を開催 各班による状況報告による情報共有等を実施 11:50 防災科学技術研究所職員が熊本県庁 ( 熊本県災害対策本部 ) に到着 16:00

H ■再発防止策総務課修正版(最終)_Ⅰはじめに

職員の運営能力の強化 避難所担当職員研修の実施 全庁対象の避難所担当職員研修(5 回開催で約 400 名参加 ) 区毎の避難所担当職員研修 男女共同参画の視点に立った避難所づくり 共助による災害時要援護者支援の取り組みについて説明 各区災害対策本部との連絡 避難所内の課題解決の調整など 地域団体等へ

奈良県ライフライン 情報共有発信マニュアル 第 3.3 版 平成 24 年 7 月 奈良県ライフライン防災対策連絡会

資料4_1いじめ防止対策推進法(概要)

3部第 3 部災害復興計画 ( 仮題 ) 第 4 章震災復興マニュアルのしくみ 第 4 章東京都震災復興マニュアルのしくみ 東京都震災復興マニュアル ( 以下 震災復興マニュアル という ) は 都市復興マニュアル ( 平成 9 年 ) と 生活復興マニュアル ( 平成 10 年 ) を統合し 復興

第3回検討会_質の向上WG検討状況報告

(溶け込み)大阪事務所BCP【実施要領】


持続可能な教育の質の向上をめざして ~ 教員の多忙化解消プラン に基づく取組について ~ 平成 30 年 3 月 愛知県教育委員会

文部科学省では 被災者の生活再建に関連して 就学援助のほか 教員やスクールカウンセラー ボランティアの配置を充実することにより 子供たちの学習支援や心のケアに向けた対応を行っています 被災児童生徒就学支援等事業 (H30 予算額 ( 案 ) 52 億円 (H29 予算額 62 億円 )) 東日本大震

2. 防災拠点の代替施設の指定防災拠点施設が被災し使用不能となれば 災害対策本部等が設置できず 活動体制全体に遅れが生じ 迅速な災害対応を指揮することが困難となるとともに 災害対応以外の業務 ( 通常業務 ) を行うことも困難となるため 代替施設での対応が必要となります そのため 防災拠点施設におい

3 歯科医療 ( 救護 ) 対策 管内の歯科医療機関の所在地等のリスト整理 緊急連絡網整備 管内の災害拠点病院 救護病院等の緊急時連絡先の確認 歯科関連医薬品の整備 ( 含そう剤等 ) 自治会 住民への情報伝達方法の確認 病院及び歯科診療所での災害準備の周知広報 - 2 -

第 5 部 南海トラフ地震防災対策推進計画

教員の専門性向上第 3 章 教員の専門性向上 第1 研修の充実 2 人材の有効活用 3 採用前からの人材養成 3章43

平成 23 年度 東日本大震災における学校等の対応等に関する調査 報告書 平成 24 年 3 月 文部科学省

4 被災生活の環境整備主な修正概要 避難所毎に運営マニュアルを作成し 避難所の良好な生活環境を確保するための運営基準等を明確にしておく 避難所運営マニュアルの作成 訓練等を通じて 住民の避難所の運営管理に必要な知識の普及に努める 県 DMAT( 災害時派遣医療チーム ) の活動終了以降の医療提供体制

①H28公表資料p.1~2

第 1 章実施計画の適用について 1. 実施計画の位置づけ (1) この 南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画 に基づく宮崎県実施計画 ( 以下 実施計画 という ) は 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法 ( 平成 14 年法律第 92 号 以下 特措法 と

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学校の危機管理マニュアル作成の手引

「南九州から南西諸島における総合的防災研究の推進と地域防災体制の構築」報告書

東日本大震災からの復旧・復興~人づくりから始まる創造的復興~ 2

目次 Ⅰ 福島県教育委員会経験者研修 Ⅰ 実施要項 1 Ⅱ 高等学校経験者研修 Ⅰ 研修概要 1 研修体系 2 研修の目的 研修の内容等 4 研修の計画及び実施 運営等 4 5 研修の留意点 4 表 1 高等学校経験者研修 Ⅰ の流れ 5 表 2 高等学校経験者研修 Ⅰ 提出書類一覧 5 Ⅲ 高等学

高齢者福祉施設でのみんなの体操等実演会 講師派遣実施要領 1 目的社会福祉法人等が運営する高齢者福祉施設に入所されているみなさんや当該施設でケアにあたる皆さんの健康の維持 向上のために みんなの体操等を活用して健康の保持増進等のため みんなの体操等実演会を実施するもの 2 スキーム施設に入所されてい

資 料 1

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161019_発表資料_後日訂正版_HP用

Taro-07_学校体育・健康教育(学

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避難所講演資料

2 活断層との関係 第 1 章熊本地震の概要第 1 節熊本地震の発生状況や特徴等 2 活断層との関係 熊本地震の地震活動領域には 布田川断層帯 日奈久断層帯が存在しており 国の地震調査研究推進本部地震調査委員会によると M6.5 の前震は日奈久断層帯の高野 白旗区間の活動 M7.3 の本震は布田川断

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九州における 道の駅 に関する調査 - 災害時の避難者への対応を中心としてー ( 計画概要 ) 調査の背景等 道の駅 は 平成 16 年 10 月の新潟県中越地震 23 年 3 月の東日本大震災において 被災者の避難場所 被災情報等の発信や被災地救援のための様々な支援の拠点として活用されたことなどか

防災マニュアル項目

第 1 章 危機管理とは 1 1 目的 2 分類 3 対象とする危機の内容 4 体制 5 対応 6 原因の分析と評価 7 見直しの観点 第 2 章 初動対応編 6 1 交通事故発生時の対応 2 事故 ( けが等 ) 発生時の対応 3 病気等 ( 学校において予防すべき感染症含む ) 発生時の対応 4

東京事務所版 BCP 実施要領目次応急頁 < 第 1グループ> 直ちに実施する業務 1 事務所における死傷者の救護や搬送 応急救護を行う一時的な救護スペースの設置 運営 備蓄の設置 医療機関への搬送 1 2 事務所に緊急避難してきた県民や旅行者等への対応 避難 一次避難スペースの運営 指定避難所への


【資料2】緊急提言(委員意見反映)

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小・中学校における学校選択制等の実施状況について(平成24年10月1日現在)

た ( 派遣員数 4 名 ) (2) 全国知事会は 大分県等と連携しながら 引き続き情報共有に努めるとともに 各都道府県に対し 知事会の対応状況等を連絡することとしている (3) 全国知事会は 被災市町村と支援県によるカウンターパート方式による支援を決定 (4) 熊本県への救護班の派遣について 36

内閣府自殺対策推進室提出資料 平成 23 年 6 月 15 日内閣府自殺対策推進室内閣府経済社会総合研究所自殺分析班警察庁厚生労働省 東日本大震災に関連する自殺の実態把握について 平成 23 年 3 月 11 日に発災した東日本大震災に関連する自殺の実態把握について 以下 のとおり実施する 1. 定

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各省庁等における業務継続計画に係る取組状況調査 調査の目的 各省庁等における現在の業務継続計画に係る取組状況を把握し 東日本大震災等を受けた 今後の業務継続計画の改善策を検討するための資料とする 調査の対象 中央省庁業務継続連絡調整会議構成機関 オブザーバー機関 29 機関 構成員 :23 機関内閣

( 県の責務 ) 第三条県は 地震防災に関する総合的な施策を策定し 及びこれを実施する責務を有する 2 県は 市町村 自主防災組織その他防災関係機関等と連携して 地震防災対策を推進しなければならない 3 県は 地震に関する調査及び研究を行い その成果を県民 事業者及び市町村に公表するとともに 地震防

岐阜県手話言語の普及及び障害の特性に応じた意思疎通手段の利用の促進に関 する条例 目次前文第一章総則 ( 第一条 - 第八条 ) 第二章基本的施策の推進 ( 第九条 - 第十六条 ) 附則 ( 前文 ) 手話が言語であることは 障害者の権利に関する条約において世界的に認められており わが国においても

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情報コーナー用

00 表紙・目次

( 社会福祉施設用作成例 ) (4) 施設管理者は, 緊急時連絡網により職員に連絡を取りましょう (5) 施設管理者は, 入所者の人数や, 避難に必要な車両や資機材等を確認し, 人員の派遣等が必要な場合は, 市 ( 町 ) 災害対策本部に要請してください (6) 避難先で使用する物資, 資機材等を準

国の法令改正等の反映近年行われた国の法令改正や防災基本計画の修正内容を反映しました 市町村が 指定緊急避難場所及び指定避難所の指定を進めることを追加 市町村が 被災者の被害状況 配慮事項等を一元的に集約した被災者台帳を作成し 総合的かつ効果的な支援の実施に努めることを追加 首都直下地震対策特別措置法

新規文書1

大津市避難所運営マニュアル

基本方針1 小・中学校で、子どもたちの学力を最大限に伸ばします

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02-01 ビジョンの基本的考え方

4 副校長 教頭の長時間業務改善への取組 学校内施設 ( 校舎等 ) の鍵の開閉は 副校長 教頭のみが行うこととせず 全教職員等で協力して行います ( 警備員が配置されている学校においては そのシステムを適切に活用します ) 児童生徒の登校時間については 学校と県教育委員会 市町村教育委員会が連携し

<4D F736F F F696E74202D E9197BF E63189F18DD08A518BD98B7D8E9691D491CE8F888AD68C578FC892A D89EF8B636E2E B8CDD8AB B83685D>

事務連絡 平成 29 年 10 月 25 日 建設業団体の長殿 国土交通省土地 建設産業局建設業課長 平成 28 年熊本地震の被災地域での建設工事等における 予定価格の適切な設定等について 公共工事の予定価格の設定については 市場における労務及び資材等の最新の実勢価格を適切に反映させつつ 実際の施工

2014年度_三木地区概要

福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律 について <1. 特定復興再生拠点区域の復興及び再生を推進するための計画制度の創設 > 従来 帰還困難区域は 将来にわたって居住を制限することを原則とした区域 として設定 平成 29 年 5 月復興庁 地元からの要望や与党からの提言を踏まえ 1 帰還困難区

目次 はじめに P3 1 災害 緊急の範囲 P3 2 時間と場所を考慮した対応の必要性 P3 3 時間ごとの対応 P4 4 場所ごとの対応 P5 5 デジタルサイネージの提供コンテンツ P6 6 緊急時を意識したデジタルサイネージシステム P6 7 情報の切替 復帰の条件 P7 8 緊急運用体制 P

防災業務計画 株式会社ローソン

平成27年度 文部科学白書

kihonhousin6.doc

地震被害予測システムにより建物被災度を予測 また 携帯電話と地図を利用した 被害情報集約システム では GPS 機能と地理情報システムとの連係により 現在位置周辺にある同社施工済物件を検索し 物件や周辺の被害状況を文字 静止画 動画を添付して報告することができる これら被害情報を地理情報システムに集

自己点検・評価表

た ( 派遣員数 4 名 ) (2) 全国知事会は 大分県等と連携しながら 引き続き情報共有に努めるとともに 各都道府県に対し 知事会の対応状況等を連絡することとしている (3) 全国知事会は 被災市町村と支援県によるカウンターパート方式による支援を決定 (4) 熊本県への救護班の派遣について 36

愛媛県学力向上5か年計画

の復旧状況に関する長期的な見通しを可能な限り明らかにしながら 復旧の段階に 応じた役割の分析を行う 5) 交通事業者ヒアリング調査沿線地域に関係する交通事業者 ( 鉄道事業者 2 社 バス事業者 2 社 タクシー事業者 2 社その他 ) に聞き取り調査を行い 定性的な利用特性や地域の公共交通の問題点

宅地の補修工事に関する費用の貸付 被害建物に関する相談窓口 応急仮設住宅の提供 被災者生活再建支援金 住宅の応急修理制度 住宅の補修工事に関する費用の貸付 ( り災証明書の提出が必要です ) 被災家屋等


はじめに 道では 北海道行政基本条例 に基づき 道政の基本的な方向を総合的に示す計画として 新 北海道総合計画 を策定し 政策展開の基本方向の一つとして 安心で心豊かな北海道ライフスタイル を掲げ 安全 安心な生活の確保 に向け 防災 減災の体制づくり を進めています 保健福祉部では 特に 子ども

p.1~2◇◇Ⅰ調査の概要、Ⅱ公表について、Ⅲ_1教科に対する調査の結果_0821_2改訂

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2016年(平成28年) 熊本地震

英語教育改善プラン

1 東日本大震災での多くの被害が発生!! 平成 23 年 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は 三陸沖を震源としたマグニ チュード 9.0 仙台市内での最大震度 6 強 宮城野区 という巨大な地震でした 東部沿岸地域では 推定 7.1m 仙台港 もの津波により 家屋の浸水やライフラ

組織目標シート 平成 28 年度 部局 教育委員会事務局局長吉田久芳 1. 部局の使命 児童 生徒一人ひとりを大切にし 豊かな人間性と人間関係を築く力を育むとともに 自ら学び考え行動する子どもの育成を図る学校教育を推進する 市民生活が豊かで活力のあるものになるよう 市民が生涯を通して学習し学び続ける

大規模災害時における罹災証明書の交付等に関する実態調査-平成28年熊本地震を中心として-

地震発生後の九州地方整備局の活動 4 月 16 日の夜明け 本震の後に再度調査を実施しておりま す その際は 道路崩壊の調査 土砂崩壊の箇所の調査 被 災地に入るための安全ルートの確認等を実施しております 次に九州地方整備局の活動について紹介させていただき ます まず最初に地震発生後の初動体制につい

45 宮崎県

Transcription:

熊本地震の対応に関する検証報告書 C2010 熊本県くまモン 平成 30 年 3 月 熊本県教育庁

はじめに 平成 28 年 4 月に発生した熊本地震では 本県は14 日 ( 前震 ) と16 日 ( 本震 ) の2 度にわたり震度 7の激震に襲われました 多くの方が亡くなられ 建築物 ライフライン 道路 鉄道 農業用施設等にも大きな被害が発生し 今なお 40,383 人 (H30.1.31 現在 ) の方が仮設住宅やみなし仮設住宅に住んでおられます 改めて 亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに 被災された皆様に御見舞いを申し上げます また 発災直後から国 自治体 ボランティアの方々を始め 全国の皆様から多大な支援を賜り 心から感謝申し上げます 熊本地震では 学校施設等も多数被災し 教育庁や学校現場の教職員が様々な対応を迫られることとなりました 県内の公立小 中 高校等の約 3 分の2で休校の措置がとられ 被害の大きかった学校の中には 他校に間借りしての学校再開や自校の体育館やテント内での授業実施を強いられた学校もあります 地震によりメンタル面の変化が見られた児童生徒や教職員に対する心のケアも必要となりました また 多くの学校が 避難所に指定されているか否かにかかわらず 発災直後から地域住民の避難所となり 避難所閉鎖まで教職員が運営に従事した学校もあります 教育庁や各学校においては これまで他県の災害や本県の過去の災害の状況等を参考に 災害に対する備えを行って参りました しかし 熊本地震のように強い地震に対しては 必ずしも備えが十分ではなかったことが明らかとなり これは私たちの大きな反省点です 例えば 避難所については あらかじめ行政 自治組織 学校等の間でその運営に関する取決めを行い 訓練も実施するようにしておけば もっと円滑に運営できた避難所があったことと思います 本県では 平成 28 年 8 月に 平成 28 年熊本地震からの復旧 復興プラン を 同 12 月に 熊本復旧 復興 4カ年戦略 を策定し 県民の総力を結集して 創造的な復興 に取り組んでいます 教育庁及び各学校等においても これまでの地震対応の反省を踏まえた防災体制を強化する取組みの推進に向けて また 地震の被害や地震対応の実情等を記録し 後世に伝えるため 本書を作成しました 今後 教育や防災分野をはじめ関係の皆様とこの検証結果を共有し 災害発生時の児童 生徒の安全確保 地域住民の避難 学校の再開等が円滑に行われるよう対策を進めて参り ます また 本書が 支援を頂いた皆様等の防災力向上の一助にもなれば幸いです 平成 30 年 3 月熊本県教育長 宮尾千加子

熊本地震対応検証報告書の概要報告書作成の目的教育庁や各学校等において 今後 更なる取組みを推進するにあたり 地震対応の課題や今後の取組方針等を明らかにする必要があるため 検証を行い報告書にまとめる 検証の期間 平成 28 年 4 月 14 日 ( 前震発生日 ) から平成 29 年 12 月 31 日まで 検証の方法 教育庁や他団体等が行った調査の結果や報告書等を検証の材料とした (1) 教育庁が調査又は作成したもの 熊本地震における各学校の対応等に関する調査( 平成 28 年 7 月 ) 平成 28 年熊本地震からの教育復興に向けた中間報告 ( 平成 28 年 9 月 ) 県立学校における避難所運営の状況調査( 平成 29 年 2 月 ) 平成 28 年熊本地震の記録 ~ 特別支援学校の対応と教訓 ~( 平成 29 年 3 月 ) 熊本地震における教育庁及び学校の災害対応に関する調査( 平成 29 年 3 月 ) 熊本地震からの復興に向けた記録集( 平成 29 年 3 月 : 阿蘇教育事務所作成 ) 小中高校計 8 校に対するヒアリング ( 平成 29 年 5 月 ) 学校の地震対応の詳細把握が目的 熊本市 南阿蘇村 益城町の計 8 校 (2) 他団体等が調査又は作成したもの 熊本地震の被害を踏まえた学校施設の整備について 緊急提言 ( 平成 28 年 7 月 : 熊本地震の被害を踏まえた学校施設の整備に関する検討会 < 文部科学省 >) 熊本地震における課題と対策に関する調査( 平成 28 年 7 月 : 県小中学校長会 ) 熊本地震への対応に関する調査( 平成 28 年 7 月 ) 熊本市中学校長会が全市立中学校に照会 平成 28 年熊本地震防災教育実践事例集 ( 平成 29 年 3 月 : 阿蘇市教育委員会 ) (3) 市町村教育委員会への意見照会 市町村の視点も取り入れるため 本書の案の段階で 熊本地震による被害の大きかった4 市町村の教育委員会に本書案に対する意見を照会した 凡例 熊本地震: 平成 28 年 4 月 14 日午後 9 時 26 分及び同月 16 日午前 1 時 25 分に発生した熊本県熊本地方を震源地とする地震並びにその後の関連する地震 前震: 平成 28 年 4 月 14 日午後 9 時 26 分に発生した熊本県熊本地方を震源地とする地震 本震: 平成 29 年 4 月 16 日午前 1 時 25 分に発生した熊本県熊本地方を震源地とする地震 初動期: 発災から概ね 1 週間以内の段階を指す 応急期: 発災から概ね 2 週目から 1 ケ月間の段階を指す 復旧期: 発災から概ね 1 ケ月以降の段階を指す

目次 はじめに報告書作成の目的検証の期間検証の方法凡例 第 1 章熊本地震の概要第 1 節熊本地震の発生状況や特徴等 1 熊本地震の発生状況 1 2 活断層との関係 2 3 熊本地震の特徴 5 第 2 節熊本地震による被害の概要 1 県全体の被害の概要 9 (1) 人的被害 (2) 物的被害 (3) 避難者 (4) 災害救助法等の適用 (5) 地震 津波被害想定調査との比較 2 教育分野における被害の概要 15 (1) 児童生徒及び教職員の被害 (2) 学校施設の被害 (3) 文教施設の被害 (4) 文化財の被害 第 2 章課題及び課題への対応等第 1 節初動期の対応 1 教育庁における対応 19 (1) 教育庁職員への連絡 参集及び登庁 (2) 執務室等の被害状況 (3) 災害対策本部教育対策部の設置 (4) 情報の発信 提供 2 学校等における対応 25 (1) 教職員への連絡 参集及び登校 (2) 児童生徒の安否確認 (3) 校内の被害状況把握 使用禁止区域の決定等 (4) 避難所開設における関係機関との連携 第 2 節教育庁における応急期の対応 35 (1) 業務執行体制の見直し (2) 職員の勤務シフト 服務関係の整理 (3) 各種情報の発信及び問合せへの対応 (4) 他県への人的支援の要請 支援受入れ (5) 教育庁から学校 市町村への人的支援

第 3 節学校等における応急期の対応 ( 避難所の運営等 ) 1 学校 ( 小中高等学校 ) 45 (1) 教職員による避難所対応等 (2) 避難所運営と関係者の役割分担 (3) 外部からの問合せ対応 (4) 学校再開に向けた関係機関との協議 2 学校 ( 特別支援学校 ) 55 3 その他の教育関係施設 59 第 4 節学校等における応急期の対応 ( 施設被害等 ) 61 (1) 地震前の耐震化の状況 (2) 被害状況の把握 (3) 施設の復旧状況 (4) 避難所としての機能強化 第 5 節教育庁における復旧期の対応 71 (1) 学校再開に向けた取組 ( 通学支援の検討 実施 ) (2) 防災教育の取組 (3) 被災者等への教職員住宅の提供 第 6 節学校における復旧期 ( 休校中 ) の対応 77 (1) 児童生徒の転出入の対応 (2) 施設 設備等の安全確認 教室等の確保 (3) 教科書 学用品等の供与 (4) 通学路の安全確保及び交通手段の確保 (5) 給食再開への対応 (6) 教職員のケア 第 7 節学校における復旧期 ( 学校再開後 ) の対応 89 (1) 通学支援 (2) 給食の確保 (3) 授業時数確保 学習支援 (ICT 活用等 ) (4) 児童生徒のケア (5) 教職員のケア (6) 保護者のケア (7) 防災教育の実施 (8) 学校防災マニュアルの見直し 第 8 節文教施設等の復旧期の対応 1 社会教育施設の復旧 109 2 体育施設の復旧 111 3 文化施設の復旧 113 4 教職員住宅の復旧 115

第 9 節文化財の復旧 117 (1) 市町村と連携した取組 (2) 文化財ドクター派遣事業の実施 (3) 文化財レスキュー事業の実施 (4) 被災文化財等復旧復興に係る経済界等からの支援及び基金の創設 (5) 熊本城の復旧 (6) 熊本城以外の文化財の復旧 第 10 節義援金 寄付金等の受入れ 129 第 11 節国への要望 131 第 3 章熊本地震への対応を踏まえた重点的な取組 133 (1) 児童生徒や教職員の防災に関する意識の向上及び災害対応能力の向上 (2) 防災に関する専門性を有する人材の育成 (3) 学校施設の安全性向上 関係機関との連携強化等 (4) 実際の災害を想定した危機管理体制の整備等 (5) 心のケア体制の整備 (6) 文化財の復旧 ( 参考資料 ) 参考 1 熊本地震クロノロジー 151 (1) 教育庁 (2) 学校 1 熊本市立託麻東小学校 2 益城町立益城中央小学校 3 西原村立西原中学校 4 南阿蘇村立南阿蘇中学校 5 熊本県立第二高等学校 6 熊本県立熊本かがやきの森支援学校 参考 2 学校 施設ごとの被害状況 ( 平成 29 年 12 月とりまとめ ) 273 資料 1 被災した公立学校一覧 資料 2 避難所となった公立学校一覧 資料 3 社会教育施設等の被害状況 資料 4 平成 28 年熊本地震による文化財への主な被害