小児科研修プログラム

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10) 異物誤飲に対して胃洗浄などの適切な処置ができる 2. 習得すべき検査手技 1) 一般小児の静脈採血ができる 2) 指導医の元で腰椎穿刺および骨髄穿刺ができる 3) 年齢に応じたマンシェットを選択し 正しく血圧測定ができる 4) 胸部単純 X 線写真で肺炎 胸水の貯留 無気肺 肺気腫 気胸の所

長野県立こども病院研修プログラム


月 6 日金 幼児期の子どもの健康障害と看護 2 川崎病幼児期の子どもの健康障害と看護 3 髄膜炎 月 13 日金 C401 学童期の子どもの健康障害と看護 2 糖尿病学童期の子どもの健康障害と看護 3 紫斑病看護過程 3 まとめネフローゼ症候群の子

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5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

B-31 小児科 ( 選択必修 ) プログラム 1 概要 選択必修 5 科の中から小児科を 1 ヵ月選択する場合のプログラムである 指導責任者 : 宇都宮靖 2 目標 (1) 中央病院 GIO 将来遭遇しうるいかなる状況においても思いやりを持ちながら良質な全人的医療を行うために 県の基幹病院での研修

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10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

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第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 採択結果演題一覧

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診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

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5 月 18 日 5 新生児の呼吸障害 GIO: 新生児期に生じる呼吸障害の病態の特徴を説明でき 胸部 XPから診断できる SBO: 1. 新生児呼吸障害の病態に基づく症状の特徴を説明できる 2. RDSの病態を知り 診断でき その治療法について説明できる 3. 新生児一過性多呼吸の特徴を説明できる

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はじめに この 成人 T 細胞白血病リンパ腫 (ATLL) の治療日記 は を服用される患者さんが 服用状況 体調の変化 検査結果の経過などを記録するための冊子です は 催奇形性があり サリドマイドの同類薬です は 胎児 ( お腹の赤ちゃん ) に障害を起こす可能性があります 生まれてくる赤ちゃんに

透析看護の基本知識項目チェック確認確認終了 腎不全の病態と治療方法腎不全腎臓の構造と働き急性腎不全と慢性腎不全の病態腎不全の原疾患の病態慢性腎不全の病期と治療方法血液透析の特色腹膜透析の特色腎不全の特色 透析療法の仕組み血液透析の原理ダイアライザーの種類 適応 選択透析液供給装置の機能透析液の組成抗

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2009年8月17日

脂質異常症を診断できる 高尿酸血症を診断できる C. 症状 病態の経験 1. 頻度の高い症状 a 全身倦怠感 b 体重減少 体重増加 c 尿量異常 2. 緊急を要する病態 a 低血糖 b 糖尿性ケトアシドーシス 高浸透圧高血糖症候群 c 甲状腺クリーゼ d 副腎クリーゼ 副腎不全 e 粘液水腫性昏睡

2014 年 10 月 30 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会② My favorite signs 9 ざらざらの皮膚 全身性溶血連鎖球菌感染症の皮膚症状 たじり皮膚科医院 院長 田尻 明彦 はじめに 全身性溶血連鎖球菌感染症は A 群β溶連菌が口蓋扁桃や皮膚に感染することにより 全 身にい

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10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

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2017 年 9 月 画像診断部 中央放射線科 造影剤投与マニュアル ver 2.0 本マニュアルは ESUR 造影剤ガイドライン version 9.0(ESUR: 欧州泌尿生殖器放射線学会 ) などを参照し 前マニュアルを改訂して作成した ( 前マニュアル作成 2014 年 3 月 今回の改訂

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割合が10% 前後となっています 新生児期以降は 4-5ヶ月頃から頻度が増加します ( 図 1) 原因菌に関しては 本邦ではインフルエンザ菌が原因となる頻度がもっとも高く 50% 以上を占めています 次いで肺炎球菌が20~30% と多く インフルエンザ菌と肺炎球菌で 原因菌の80% 近くを占めていま

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己炎症性疾患と言います 具体的な症例それでは狭義の自己炎症性疾患の具体的な症例を 2 つほどご紹介致しましょう 症例は 12 歳の女性ですが 発熱 右下腹部痛を主訴に受診されました 理学所見で右下腹部に圧痛があり 血液検査で CRP 及び白血球上昇をみとめ 急性虫垂炎と診断 外科手術を受けました し

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報告は 523 人 (14. 5) で前週比 9 と減少した 例年同時期の定点あたり平均値 * (16. ) の約 9 割である 日南 (37. 3) 小林(26. 3) 保健所からの報告が多く 年齢別では 1 歳から 4 歳が全体 の約 4 割を占めた 発生状況 ( 宮崎県 ) 定

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平成18年度九州歯科大学附属病院 歯科医師臨床研修プログラム

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頻度の高い症状 自ら診療し 鑑別診断を行うこと 1) 全身倦怠感 2) 不眠 3) 食欲不振 4) 体重減少 体重増加 5) 浮腫 6) リンパ節腫脹 7) 発疹 8) 黄疸 9) 発熱 10) 頭痛 11) めまい 12) 失神 13) けいれん発作 14) 視力障害 視野狭窄 15) 結膜の充血

平成 28 年 10 月 17 日 平成 28 年度の認定看護師教育基準カリキュラムから排尿自立指導料の所定の研修として認めら れることとなりました 平成 28 年度研修生から 排泄自立指導料 算定要件 施設基準を満たすことができます 下部尿路機能障害を有する患者に対して 病棟でのケアや多職種チーム

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今週前週今週前週 2/18~2/24 インフルエンザ ヘルパンギーナ 4 4 RS ウイルス感染症 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 7 4 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

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東邦大学医療センター大橋病院臨床研修プログラム 大橋 必修科目 内科 (6 ヶ月 ) 1 目的と特徴 GIO 東邦大学医療センター大橋病院内科学講座がそれぞれの専門領域の特徴を活かしつつ 内科全体の経験目標を達成するために研修を行う 日常臨床における症状と身体所見 簡単な検査から鑑別診断を的確に行い

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は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

種の評価基準により分類示の包括侵襲性指行為の看護師が行う医行為の範囲に関する基本的な考え方 ( たたき台 ) 指示のレベル : 指示の包括性 (1) 実施する医行為の内容 実施時期について多少の判断は伴うが 指示内容と医行為が1 対 1で対応するもの 指示内容 実施時期ともに個別具体的であるもの 例

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抗がん剤を受けられる皆様へ

2. 平成 9 年遠隔診療通知の 別表 に掲げられている遠隔診療の対象及び内 容は 平成 9 年遠隔診療通知の 2 留意事項 (3) イ に示しているとお り 例示であること 3. 平成 9 年遠隔診療通知の 1 基本的考え方 において 診療は 医師又は歯科医師と患者が直接対面して行われることが基本

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改訂後改訂前 << 効能 効果に関連する使用上の注意 >> 関節リウマチ 1. 過去の治療において 少なくとも1 剤の抗リウマチ薬 ( 生物製剤を除く ) 等による適切な治療を行っても 疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること 2. 本剤とアバタセプト ( 遺伝子組換え ) の併用は行わな

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はじめに 連携パス とは 地域のと大阪市立総合医療センターの医師が あなたの治療経過を共有できる 治療計画表 のことです 連携パス を活用し と総合医療センターの医師が協力して あなたの治療を行います 病状が落ち着いているときの投薬や日常の診療はが行い 専門的な治療や定期的な検査は総合医療センターが

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サーバリックス の効果について 1 サーバリックス の接種対象者は 10 歳以上の女性です 2 サーバリックス は 臨床試験により 15~25 歳の女性に対する HPV 16 型と 18 型の感染や 前がん病変の発症を予防する効果が確認されています 10~15 歳の女児および

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基本 必修科目プログラム 内科研修プログラム 指導医 : 穂坂春彦 ( 循環器科 ) 神谷俊明 ( 神経内科 ) 大友学 ( 神経内科 ) 細田泰雄 ( 消化器科 ) 宮崎耕司 ( 内科 消化器科 ) 小林一夫 ( 脳神経外科 脳卒中診療指導 ) 期間 : 6ヶ月 総合目標 将来の専攻科にかかわらず

四消化器系 ( 口腔及び歯牙 を除く ) 五血液及び造血器系六腎臓 泌尿器系及び生殖器系 ( 二 ) 心筋障害又はその徴候がないこと ( 三 ) 冠動脈疾患又はその徴候がないこと ( 四 ) 航空業務に支障を来すおそれのある先天性心疾患がないこと ( 五 ) 航空業務に支障を来すおそれのある後天性弁

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中耳炎診療のすゝめ

顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

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小児科 (NICU 含 ) 研修プログラム 研修目標 小児科および小児科医の役割を理解し 小児医療を適切に行うために必要な基礎知識 技能 態度を習得する A 経験すべき診察法 検査 手技 1. 基本的な身体診察法 (1) 医療面接 指導 1) 小児ことに乳幼児に不安を与えないように接することができる 2) 小児ことに乳幼児とコミュニケーションが取れるようにする 3) 病児に痛いところ 気分の悪いところを示してもらうことができる 4) 保護者 ( 母親 ) から診断に必要な情報 子どもの状態が普段とどう違うか 違う点は何か などについて的確に聴取することができる 5) 保護者 ( 母親 ) に指導医とともに適切に病状を説明し 療養の指導ができる (2) 診察 1) 小児の身体測定 検温 血圧測定ができる 2) 小児の身体測定から 身体発育 精神発育 生活状況などが 年齢相当のものであるか判断できるようになる 3) 小児の発達 発育に応じた特徴を理解できる 4) まず 小児の全身を観察し その動作 行動 顔色 元気さ 発熱の有無 食欲の有無などから 正常な所見と異常な所見 緊急に対処が必要かどうかを把握して提示できるようにする 5) 視診により 顔貌と栄養状態を判断し 発疹 咳 呼吸困難 チアノーゼ 脱水症の有無を確認できる 6) 発疹のある患児では その所見を観察し記載できるようになる また 日常しばしば遭遇する発疹性疾患 ( 麻疹 風疹 突発性発疹 溶連菌感染症など ) の特徴と鑑別ができるようになる 7) 下痢病児では 便の症状 ( 粘膜性 水様性 血便 膿性便など ) 脱水症の有無を説明できる 8) 嘔吐や腹痛のある患児では重大な腹部所見を抽出し 病態を説明できる 9) 咳を主訴とする病児では 咳の出かた 咳の性質 頻度 呼吸困の有無とその判断の仕方を習得する 10) けいれんを判断できる また けいれんや意識障害のある病児では 大泉門の張り 髄膜刺激症状の有無を調べることができる 11) 理学的診察により胸部所見 ( 呼気 吸気の雑音 心音 心雑音とリズムの聴診 ) 腹部所見 ( 実質臓器および管腔臓器の聴診と触診 ) 頭頚部所見 ( 眼瞼 結膜 学童以上の小児眼底所見 外耳道 鼓膜 鼻腔口腔 咽頭 口腔粘膜 とくに乳幼児の咽頭の視診 ) 四肢 ( 筋 関節 ) の所見を的確に行い 記載ができるようになる

12) 小児疾患の理解に必要な症状と所見を正しくとらえ 理解するための基本的知識を習得し 主症状および救急の状態に対処できる能力を身につける 2. 基本的な臨床検査臨床経過 医療面接 理学的所見から得た情報をもとにして病態を知り診断を確定するため また病状の程度を確定するために必要な検査について 内科研修で行った検査の解釈の上に立って 小児特有の検査結果を解釈できるようになる あるいは検査を指示し専門家の意見に基づき解釈できるようになることが求められる (1) 一般尿検査 ( 尿沈渣顕微鏡検査を含む ) (2) 便検査 ( 潜血 虫卵検査 ) (3) 血算 白血球分画 ( 計算板の使用 白血球の形態的特徴の観察 ) (4) 血液型判定 交差適合検査 (5) 血液生化学検査 ( 肝機能 腎機能 電解質 代謝を含む ) (6) 血清免疫学的検査 ( 炎症マーカー ウイルス 細菌の血清学的診断 ゲノム診断 ) (7) 細菌培養 感受性試験 ( 臓器所見から細菌を推定し培養結果に対応させる ) (8) 髄液検査 ( 計算板による髄液細胞の算定を含む ) (9) 心電図 心超音波検査 (10) 脳波検査 頭部 CT スキャン 頭部 MRI 検査 (11) 単純 X 線検査 造影 X 線検査 (12) CT スキャン MRI 検査 (13) 呼吸機能検査 (14) 腹部超音波検査 3. 基本的手技小児ことに乳幼児の検査および治療の基本的な知識と手技を身につける A 必ず経験すべき項目 1) 単独または指導医のもとで乳幼児を含む小児の採血 皮下注射ができる 2) 指導医のもとで新生児 乳幼児を含む小児の静脈注射 点滴静注ができる 3) 指導医のもとで輸液 輸血および管理ができる 4) 新生児の光線療法の必要性の判断および指示ができる 5) パルスオキシメーターを装着できる B 経験することが望ましい項目 1) 指導医のもとで導尿ができる 2) 浣腸ができる 3) 指導医のもとで 注腸 高圧浣腸ができる 4) 指導医のもとで 胃洗浄ができる 5) 指導医のもとで 腰椎穿刺ができる 6) 指導医のもとで 新生児の臍肉芽の処置ができる 4. 薬物療法小児に用いる薬剤の知識と使用法 小児薬用量の計算法を身につける 1) 小児の体重別 体表面積別の薬用量を理解し それに基づいて一般薬剤 ( 抗生物質を含む ) の処方箋 指示書の作成ができる 2) 剤型の種類と使用法の理解ができ 処方箋 指示書の作成ができる

3) 乳幼児に対する薬剤の服用法 剤型ごとの使用法について 看護師に指示し 保護者 ( 母親 ) に説明できる 4) 基本的な薬剤の使用法を理解し 実際の処方ができる 5) 病児の年齢 疾患などに応じて輸液の適応を確定でき 輸液の種類 必要量を決めることができる B 成長発達に関する知識の習得と経験すべき症候 病態 疾患 1. 成長 発達と小児保健にかかわる項目 1) 母乳 調整乳 離乳食の知識と指導 2) 乳幼児期の体重 身長の増加と異常の発見 3) 予防接種の種類と実施方法および副反応の知識と対応法の理解 4) 発育に伴う体液生理の変化と電解質 酸塩基平衡に関する知識 5) 神経発達の評価と異常の検出 6) 育児にかかわる相談の受け手としての知識の習得 2. 一般症例 1) 体重増加不良 哺乳力低下 2) 発達の遅れ 3) 発熱 4) 脱水 浮腫 5) 発疹 湿疹 6) 黄疸 7) チアノーゼ 8) 貧血 9) 紫斑 出血傾向 10) けいれん 意識障害 11) 頭痛 12) 耳痛 13) 咽頭痛 口腔内の痛み 14) 咳 喘鳴 呼吸困難 15) 頚部腫瘤 リンパ節腫脹 16) 鼻出血 17) 便秘 下痢 血便 18) 腹痛 嘔吐 19) 四肢の疼痛 20) 夜尿 頻尿 21) 肥満 やせ 3. 頻度の高い あるいは重要な疾患 (A): 必ず経験すべき疾患で症例レポートを提出する (B): 経験することが望ましい疾患 (1) 新生児疾患 1) 低出生体重児 (A) 2) 新生児黄疸 (A)

3) 呼吸窮迫症候群 (B) (2) 乳児疾患 1) おむつかぶれ (A) 2) 乳児湿疹 (A) 3) 伝染性膿痂疹 ( とびひ )(B) 4) 細菌性胃腸炎 (B) 5) 急性扁桃炎 気管支炎 細気管支炎 肺炎 (A) (3) アレルギー疾患 1) 小児気管支喘息 (A) 2) アトピー性皮膚炎 蕁麻疹 (A) 3) 食物アレルギー (A) (4) 神経疾患 1) てんかん (A) 2) 熱性けいれん (A) 3) 細菌性髄膜炎 脳炎 脳症 (B) (5) 腎疾患 1) 尿路感染症 (A) 2) ネフローゼ症候群 (B) 3) 急性腎炎 慢性腎炎 (B) (6) 先天性疾患 1) 心不全 (A) 2) 先天性心疾患 (B) (7) リウマチ性疾患 1) 川崎病 (A) 2) 若年性関節リウマチ 全身性エリテマトーデス (B) (8) 血液 悪性腫瘍 1) 貧血 (A) 2) 小児癌 白血病 (B) 3) 血小板減少症 紫斑病 (A) (9) 内分泌 代謝疾患 1) 糖尿病 (B) 2) 甲状腺機能低下症 ( クレチン病 ) (B) 3) 低身長 肥満 (A) (10) 発達障害 心身医学 1) 精神運動発達遅滞 言葉の遅れ (B) 2) 学習障害 注意力欠損障害 (B)

C 小児の救急医療小児に多い救急疾患の基本的知識と手技を身につける (A): 必ず経験すべき疾患で症例レポートを提出する (B): 経験することが望ましい疾患 (C): 機会があれば経験する疾患 (1) 脱水症の程度を判断でき 救急処置ができる (A) (2) 喘息発作の重症度を判断でき 中等症以下の病児の応急処置ができる (A) (3) けいれんの鑑別診断ができ けいれん状態の応急処置ができる (A) (4) 腸重積症を正しく診断し適切な対応が取れる (B) (5) 虫垂炎の診断と外科へのコンサルテーションができる (B) (6) 酸素療法ができる (A) (7) 気道確保 人工呼吸 胸骨圧迫式マッサージ 静脈確保 骨髄針留置 動脈ラインの確保などの蘇生術が行える (B) (8) その他の救急疾患 1) 心不全 (B) 2) 脳炎 脳症 髄膜炎 (B) 3) 救急咽頭炎 クループ症候群 (B) 4) アナフィラキシー ショック (B) 5) 急性腎不全 (C) 6) 異物誤飲 誤嚥 (B) 7) ネグレクト 被虐待児 (B) 8) 来院時心肺停止症例 (CPA) 乳幼児突然死症候群 (SIDS) (C) 9) 事故 ( 溺水 転落 中毒 熱傷など ) (A)

[ 医師紹介 ] 鈴木重雄 役 職 主任部長 指導責任者 卒業大学 福島県立医科大学 (S60 年卒 ) 専門分野 小児腎臓病 アレルギー学 内分泌学 日本腎臓学会指導医 日本アレルギー学会専門医 石橋直尚 役 職 部長 卒業大学 福島県立医科大学 (H2 年卒 ) 専門分野 新生児医療 日本周産期 新生児医学会専門医制度指導医 保科めぐみ 役 職 部長 卒業大学 大阪大学 (S63 年卒 ) 専門分野 小児神経 ( 発達障害 てんかん ) 望月いづみ 役 職 部長 卒業大学 福島県立医科大学 (H14 年卒 ) 専門分野 小児科一般 小児循環器 三島博 役 職 小児科診療顧問 卒業大学 福島県立医科大学 (S45 年卒 ) 専門分野 小児一般 小児神経 日本小児神経学会認定医 日本小児感染症学会認定 IFD

阿部優作 卒業大学 弘前大学 (H18 年卒 ) 専門分野 小児科